• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成27行ケ10073 審決取消請求事件 判例 商標

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y25
管理番号 1300658 
審判番号 取消2011-300881 
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-09-21 
確定日 2015-04-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第4799883号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成24年12月28日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成25年(行ケ)第10032号平成25年9月25日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4799883号商標(以下「本件商標」という。)は、「グラム」の片仮名及び「GRAM」の欧文字を上下二段に書してなり、平成15年6月1日に登録出願、第25類「被服,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),げた,草履類,仮装用衣服」を指定商品として、同16年9月3日に設定登録たものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成23年10月11日である。

第2 請求人の主張
請求人は、「商標法第50条第1項の規定により、本件商標は、その指定商品中、第25類『被服,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)』について登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を審判請求書、審判事件弁駁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において、要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証を提出した。
1 請求の理由
被請求人は、本件審判の請求の登録前に継続して3年以上日本国内において、本件商標をその指定商品中「被服,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)」について使用していない。したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定によりその登録の一部を取り消されるべきである。
なお、過去3年以内における使用の事実、あるいは不使用についての正当な理由の存在は被請求人において挙証されるべきである。
2 審判事件弁駁書における主張
(1)通常使用権の範囲について
通常使用権については、被請求人が東麗商事有限公司(以下「東麗商事」という。)に対して許諾した旨主張しているのみであって、その具体的な内容について、単なる製品の下請け製造をするだけなのか、本件商標を付した商品の販売も含むものかは不明である。
よって、通常使用権の範囲が不明である以上、東麗商事の行為が「通常使用権者による使用」にあたるか否か、何ら証明されていない。
(2)乙第1号証について
ア サン・メンズウェア株式会社(以下「サン・メンズウェア」という。)が小売店鋪に対して表示のタグ(以下、「タグ」を「下げ札」という場合がある。)を付けるよう指示しているということは、東麗商事が該当する製品を製造した段階では、表示の下げ札を付していなかったことを意味する。そうとすれば、本件製品に本件商標を付したのは、通常使用権者である東麗商事ではなく、サン・メンズウェアである。
よって、当該書証は、通常使用権者である東麗商事が本件商標を被服について使用したことを示す証拠にはなり得ない。
イ 乙第1号証上段の「S/No」はシリアルナンバーを意味すると思われ、表示の品番製品に対して表示のタグを付するよう指示していることは確認できる。
しかし、当該書証が、「サン・メンズウェアから小売店舗に対して送られている」事実(なお、被請求人は、口頭審理において、審判事件答弁書の第3頁第15行目に記載の、下げ札を付けるように指示した先について、「小売店舗」ではなく「東麗商事有限公司」と訂正する旨陳述した。)や、具体的な送付日については、何ら確認できない。当該書面がファクシミリで送信されていれば、書面上端に受信日時、送信元電話番号や送信元の表示等が印刷されるはずだが、その類の表示は確認できない。
しかも、サン・メンズウェアが使用したと主張する下げ札は、乙第6号証に付されているものであって、乙第1号証のものではない。
ウ 乙第2号証、乙第4号証及び乙第5号証について
乙第2号証、乙第4号証及び乙第5号証によれば、東麗商事とサン・メンズウェアとの間にダウンジャケット等の製造に関する取引があった事実は確認できるが、乙第1号証で示された下げ札が商標権者・通常使用権者及びサン・メンズウェアによって付されていない以上、これらの書証は本件商標の使用を示す証拠にはなり得ない。
なお、これらの書証中には、製品名について、乙第2号証では「ダウンロングJK」(「丈の長いダウンジャケット」を意味するものと思われる。)、乙第4号証及び乙第5号証では「DOWN JACKET(S)」とあるのみで、「GRAM」又は「グラム」の表示は何ら含まれていない。
よって、記載された製品の名称が「GRAM」又は「グラム」であるか否かは不明である。
エ 乙第3号証について
乙第3号証は、品番059826の製品サンプルの点検結果を連絡するためのサンプルチェック仕様書であり、当該書証により、「本件製品を製造する東麗商事が、少なくとも品番『059826』の製品について、遅くとも『2010年6月30日』までには本件製品をサン・メンズウェアに対して輸出していたことが明らかである。」とあるが、当該書証は、サン・メンズウェアから被請求人宛に送付されたものであり、書面中には東麗商事について何ら記載はない。
被請求人は、本商標権の使用権を東麗商事に許諾しているのであるから、サンプルチェックをするのは東麗商事となるはずであるが、許諾されたという通常使用権の内容が不明であるため、この状況下における被請求人の法的位置づけが不明である。
なお、当該書証において、当該製品の「ブランド名」として、「navy natural」と記載されているのが確認できる。これは、サン・メンズウェアがこのダウンジャケットのブランド名について、「GRAM」又は「グラム」ではなく「navy natural」と認識していたことを意味する。
そうとすれば、当該製品に「Gram」の下げ札を付するとすれば、製品自体のブランドとしてではなく、製品以外のものに関してブランドを表示する意図であることが推認される。
オ 乙第6号証について
乙第6号証に添付されている下げ札は、乙第1号証に記載された下げ札とは全く異なるものであり、本書証が「証明」するとしている内容に関して、対象となる具体的な製品の説明、その製品に関する納品書、請求書、領収書等の取引書類といった客観的な証拠は全く提出されていない。
本書証で確認できる事実は、サン・メンズウェアの代表者が所定の期間に添付の下げ札を付したダウンジャケットを販売していた事実について「宣言」した、ということのみであって、何ら客観的な証明がなされていない。
カ 下げ札に表示された商標と商品との関係
(ア)ダウンジャケット等の冬物衣料は、防寒が第一の目的であるが、軽量性、防風性、撥水性、透湿性といった付加的な機能が重視されることがある。そのため、被請求人のような繊維メーカーは、需要者のニーズにあった品質・特性を持つ新素材(織物等)の開発を進めて、衣料品製造業者に提供している。そのため、繊維メーカーの開発した素材を用いた衣服であることを表示し、そして、同時に当該衣服の製造者又は販売者が、素材を示す独自の商標を表示した別のラベルや衿ネーム等も付することが一般的に行われている。
(イ)甲第1号証の1頁目は、被請求人の繊維素材である「Gram celeb」を用いたダウンジャケットの商品写真である。本商品には「Gram celeb」の下げ札以外にも「D.C.E\premium\collection」と表示された下げ札が付されており、この表示が本製品の衿ネームにも付されていることから、ダウンジャケットの商品名は「D.C.E\premium\collection」であることが分かる。
そして、2頁目は、「Gram celeb」下げ札の裏面の写真である。ここには「東レの特殊軽量素材を使用して?」や「この商品は東レのせんいを使用しています。」と記載されていることから、この下げ札に表示された商標「Gram celeb」は、このダウンジャケット商品自体の商標としてではなく、このダウンジャケット商品に使用されている素材についての商標であることが分かる。
このような、繊維素材の下げ札と商品自体の下げ札を複数付する行為は、他の繊維メーカーにおいても一般的に行われている。
(ウ)以上のように、被服に下げ札が付されていたとしても、その下げ札に表示された商標が被服自体ではなく、その素材に関する商標として認識される場合は、その商標が指定商品「被服」について使用されているとはいえない。
キ したがって、仮に乙第1号証及び乙第6号証にて提出された下げ札が、権原のある者によって使用されていた場合であっても、依然としてこれらの下げ札に表示された商標は、その生地(素材)について使用されているにすぎず、本件商標の指定商品中、第25類「被服」についての使用には当たらない。
3 口頭審理陳述要領書における陳述
(1)東麗商事が通常使用権者であることについて
被請求人は、乙第7号証及び乙第8号証を提出して、東麗商事が被請求人のグループ会社であって、被請求人が、東麗商事に対して、本件商標権に基づく通常使用権を黙示的に許諾している旨主張する。
商標法第2条第3項各号にて商標の使用の定義が規定されているが、本件商標が商品商標であることと、被請求人が提出した証拠を考慮するに、該当する可能性があるのは同第1号及び第2号である。
同第1号については、仮に、東麗商事が中国において標章を付していたとすれば、それは我が国の商標法の適用外の行為である。また、同第2号については、東麗商事がサン・メンズウェアに納品した本件製品に下げ札が付されているか否かについて疑義があるため、同号に係る行為がなされた事実は証明されていない。よって、東麗商事が本件商標を使用していることについて、被請求人が提出した証拠によっては、まだ証明されていない。
乙第7号証として提出された東レ株式会社の中国向け「会社パンフレット」は、東レ株式会社と東麗商事とが、具体的にどのような関係にあるのか、また、両者が関連会社であるとしても、東麗商事は現地でどのような役割を担う存在であるのか不明である。
(2)乙第1号証の「下げ札」の原本の確認及び当該下げ札の作成から商品に付されるまでの経緯の証明について
ア 被請求人は、乙第11号証として乙第1号証の下げ札と同種のものを提出し、乙第12号証として当該下げ札に係る「付属品発注書」を提出した。被請求人は、これらをもって、東麗商事が下げ札の印刷を上海NAXISに依頼し、「その後、東麗商事が『下げ札』を本件製品に付した上で、サン・メンズウェアに対して本件製品を納品する」とその経緯を説明している。
しかし、被請求人は、答弁書第3頁において、乙第1号証は、「サン・メンズウェアから小売店舗に対して送られている。」と、正反対の説明を行っており(なお、被請求人は、口頭審理において、審判事件答弁書の第3頁第15行目に記載の、「サン・メンズウェアから小売店舗」を「サン・メンズウェアから東麗商事有限公司」と訂正する旨陳述した。)、東麗商事が「下げ札」を本件製品に付したことを客観的に示す証拠は何ら提出されていない。
イ 乙第12号証は、東麗商事が「GRAM(緑)」という「付属品」を発注したことが分かるのみであり、その「付属品」が「下げ札」であることは確認できない。しかも、仮にその「付属品」が「下げ札」であったとしても、その「下げ札」が本件製品に付された上でサン・メンズウェアに納品されたか否かは、この書証からは何ら証明されていない。
被請求人は、東麗商事が、「Gram」と表示された下げ札を本件製品に付して、取引先であるサン・メンズウェアに納品(譲渡)した旨を主張しているが、仮に、この下げ札が、東麗商事がサン・メンズウェアに対して譲渡される「被服」それ自体についてのものであったとすれば、この下げ札は、「東麗商事の『被服』であること」という商品の出所を示すために付されたこととなる。
そうとすれば、商品の出所として下げ札に表示されるのは東麗商事のはずであり、その商品(被服)を購入する側であるサン・メンズウェアの名称が下げ札に表示されることはあり得ない。
しかし、実際の下げ札には、商品の「輸入・発売元」として、サン・メンズウェアの名称が表示されており、サン・メンズウェアが輸入・販売した商品を、サン・メンズウェアが購入したことになってしまう。
以上、仮にこの下げ札が東麗商事により中国で付されていたとしても、この下げ札の表示内容から、東麗商事が「被服」について本件商標を使用していることを示す証拠にはなり得ない。
(3)乙第2号証において、「発注年月日」「発注者」「受注者」等が確認できる書面について
被請求人は、乙第13号証として、乙第2号証の「発注書」がサン・メンズウェアから東麗商事に送付される際の「eメール本文」の写しを提出した。
乙第2号証を見るに、第1頁については、「素材」欄に「2090M・Nyタフタ」や「KYS501・サテンツイル」と記載されており、eメール本文の記載と対応していることが分かる。
しかし、第2頁については、「素材」欄には「3450・フルダル」と記載されており、これについてはeメール本文で言及されていないため、このeメールは第1頁についてのみしか取扱っていない可能性があり、ひいては、乙第2号証の第2頁については、「発注年月日」「発注者」「受注者」等を確認することができない。
(4)乙第4号証及び乙第5号証に表示されている製品番号に対する数量の相違についての説明について
被請求人による「一般に、衣料品製造会社から卸売業者に対する縫製品の販売は、その納期により分割で納品することが通例となっている」という主張は理解できる。
被請求人は、「東麗商事から本件商標を付した本件製品がサン・メンズウェアに対して出荷されていることが理解できる」と主張するが、この主張は、東麗商事からサン・メンズウェアに対してとある商品が出荷されたことのみであって、本件製品に本件商標が付されているか否かについては何ら言及されていないため、被請求人の主張は不十分である。
4 平成24年8月31日付け上申書における主張
(1)被請求人の使用証明が成立していない理由
被請求人による証明事項を要件毎に分けると、本件商標と同一若しくは社会通念上同一の商標をその指定商品について、ア)商標法第2条第3項各号に示されたいずれかに該当する「使用」をしていること、イ)審判請求の登録前3年以内に使用していること、ウ)日本国内において使用していること、エ)商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが使用していること、に分けられる。
ア 「使用」をしていることについて
東麗商事がサン・メンズウェアに納品した本件製品に乙第6号証又は乙第11号証に示す下げ札が付されている事実を客観的に示す書証は提出されておらず、依然としてその証明がされてはいない。
イ 審判請求登録前3年以内に使用していること
被請求人は、平成24年7月26日の口頭審理において、審判事件答弁書における「乙第1号証はサン・メンズウェアから小売店舗に対して送られている『下げ札指示書』である。」という主張について、該「小売店舗」を「東麗商事」へと訂正すると主張した。
この点、主張内容を変更した被請求人は、その変更の事実を客観的に証明する必要がある。
また、請求人は、乙第1号証について、当該書面が実際に送付されている事実に加えて、具体的な送付日が不明であると指摘したが、被請求人は、これらの点について何ら主張・説明をしていない。
ウ 日本国内において使用していることについて
商標法第2条第3項第2号に係る行為が日本において行われているものか否かが問題となるが、東麗商事が本件製品に下げ札を付している事実が証明されていない以上、被請求人による日本国内における使用は認められない。
(2)平成24年8月15日付け上申書における被請求人の主張に対する反論
ア 乙第11号証の下げ札を本件商品に付して使用していることの証明、及び、「本件ダウンジャケットの製造・販売に関するODM契約」の詳細な説明について
被請求人がODMについて、「素材開発から縫製品企画、サプライチェーン構築までを担当するODM(企画提案型による相手先ブランドでの生産)事業」(乙20の2)や、「東レの機能製品・縫製品事業部門は、(略)企画提案型の縫製品ODM(相手先ブランドによる設計・生産)事業が順調に拡大」(乙20の3)と言及しているとおりに、ODMとは「相手先ブランドによる生産」という意味である。
そうとすれば、生産された商品のブランドは、必然的に「相手先ブランド」となるはずである。本件製品がODM生産されたということは、受託先である東麗商事は、サン・メンズウェアのブランドのダウンジャケットを製造したと考えるのが自然である。実際、答弁書にて説明された品番059826に係るダウンジャケットについて、乙第3号証「サンプルチェック仕様書」の「ブランド名」欄に「navy natural」という商品自体のブランド名が記載されていることは既に指摘したとおりである。
つまり、受託先である商標権者や東麗商事のブランドが、その商品自体のブランドとして表に出てくることはありえない。仮に受託先のブランドが登場する場合があるとしても、それは素材や生地、又は部品に関するものであるか、若しくは縫製品の委託製造というサービス(第40類「縫製」に該当)に関するものと理解されるのが自然である。
イ 本件製品のODM型生産に関する取引の実情について
乙第25号証には、「GRAM」の文字が表示されており、乙第6号証に添付されていた「超軽量企画グラム」の下げ札も表示されている。しかし、本書証は実際の製品が製造される前のプレゼンテーション資料であって、実際の商品に関する取引書類ではない。
よって、これに「GRAM」という表示があるとしても、実際の商品が存在しない時点のものであるから、これ自体が商標の使用に該当することはない。
むしろ、ODM型生産が「相手先ブランドによる生産」であることを考慮すれば、本書証において商標権者がサン・メンズウェアに提案しているのは、ダウンジャケットという商品(第25類「被服」に包含される商品)ではなく、縫製品の委託製造(第40類「縫製」に類似する役務)と理解するのが適切である。ODM型生産としてサン・メンズウェアのブランドとして販売するということは、商標権者が行う業務の本質はダウンジャケットの製造代行であって、商品の製造段階でサンプルチェックを行い、商品自体に付されたブランドの持ち主であり、輸入販売元として需要者に対して製品の品質保証を行うのは、サン・メンズウェアである。
ウ 被請求人は、「『サン・メンズウェア』は、本件製品に関する発注書を『東麗商事』に対して送付している。(中略)これにより、被請求人のODMブランドである『GRAM』ブランドのダウンジャケットが現に市場に流通していることが分かる。」と主張しているが、なぜ本件製品を発注したことで、「GRAM」ブランドのダウンジャケットが現に市場に流通していることになるのか、明らかに説明不足である。
エ 被請求人は、乙第14号証の1ないし12及び乙第15号証の1ないし12を提出したことによって、「被請求人のODMブランドである『GRAM』ブランドのダウンジャケットが現に市場に流通していることが分かる。」と主張しているが、これら書証には何ら「グラム」や「GRAM」の表示がされていない。
しかも、本件製品は、乙第3号証のサンプルチェック仕様書において、サン・メンズウェアが詳細にわたり出来栄えをチェックして商標権者に修正指示をしており、その品質管理について、サン・メンズウェアが大きな責任を担っていることが推認される。そして、商品自体に自身のブランドが表示されていることからすれば、商標権者がその商品の製造者であったとしても、それはサン・メンズウェアの管理下において行われているといっても過言ではない。このような状況である以上、商標権者が行っている業務があるとすれば、それは「縫製品の委託製造」という役務についてであり、その商品自体ではない。
5 まとめ
以上のように、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に請求に係る指定商品「被服」について、商標権者により我が国において使用されている事実はなく、いずれの証拠も、商標法第2条第3項各号に定める使用に該当しない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書、上申書及び回答書において、要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第33号証(枝番を含む。)及び乙第35号証ないし乙第54号証(枝番を含む。)を提出した。なお、乙第29号証ないし乙第33号証(枝番を含む。)及び乙第35号証ないし乙第54号証(枝番を含む。)は、平成25年(行ケ)第10032号事件において原告(本件審判の被請求人)が知的財産高等裁判所に提出した甲各号証である。
1 答弁の理由
本件商標は、請求に係る指定商品第25類「被服」について、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において継続して使用されているものである。
なお、本件商標は、「グラム」の片仮名を上段に、「GRAM」の欧文字を下段に二段併記により構成されるものであるが、その場合は、上段又は下段のいずれか一方を使用するときには、「登録商標の使用」といえる。
2 審判事件答弁書における主張
(1)本件商標を付した製品(以下「本件製品」という。)の流通経路について
被請求人は、本件商標に係る通常使用権を、商標権者の関連会社である東麗商事に対して許諾している。この東麗商事は、中華人民共和国上海市に存在し、本件製品を同国において製造し、我が国へ向けて同製品を輸出し、サン・メンズウェアに納品している。このサン・メンズウェアが本件製品を日本国内において販売しているものである。
このように、本件商標は、本件商標に係る通常使用権者によりその指定商品中、第25類「被服」について使用されていることは明らかである。
(2)書証について
ア 乙第1号証について
乙第1号証は、サン・メンズウェアから小売店舗に対して送られている「下げ札指示書」である(なお、被請求人は、口頭審理において、審判事件答弁書の第3頁第15行目に記載の、下げ札を付けるように指示した先について、「小売店舗」ではなく「東麗商事有限公司」と訂正する旨陳述した。)。この「下げ札指示書」の中央部に表わされている「下げ札」の写しには、「Gram」の英文字が左横書きに書されている。なお、この「Gram」の英文字は、本件商標と社会通念上同一の商標であるといえる。
さらに、衣料品を取り扱う業界においては、取引書類上は取扱製品を品番で表すことが通例となっているところ、この「下げ札指示書」によれば、本件製品の品番は、059900/059901/059825/059826/019805/629801/629826/629827/629828/629830/629840であることが明らかとなっている。
したがって、これらの品番の製品に本件商標と社会通念上同一の商標が使用されていることが分かる。
イ 乙第2号証について
乙第2号証は、サン・メンズウェアから東麗商事に対して発行されている「発注書」である。この「発注書」の上部には、本件製品を表す品番である「059825」「059826」「019805」「629801」「629826」「629827」「629828」「629830」「629840」が記載されている。このことから、サン・メンズウェアから東麗商事に対して本件製品の発注があったこと、及び、本件商標と社会通念上同一の商標が付されている本件製品の仕様書が一見して理解できる。
また、「発注書」の下部には、「売り先」として「OJ」「マックハウス」「パルスブレイン」「マイカル」との記載がある。このことから、本件製品が、サン・メンズウェアから「OJ」「マックハウス」「パルスブレイン」「マイカル」の各小売店舗に販売されたことが分かる。
ウ 乙第3号証について
乙第3号証は、サン・メンズウェアから商標権者に対して発行されている「サンプルチェック仕様書」である。この「サンプルチェック仕様書」の左上部には、本件製品を表す品番である「059826」が記載されている。さらに、右上部には「サンプルチェック仕様書」を記載した日付として「2010年6月30日」と記載されている。このことから、本件製品を製造する東麗商事が、少なくとも品番「059826」の製品について、遅くとも「2010年6月30日」までには本件製品をサン・メンズウェアに対して輸出していたことが明らかである。
エ 乙第4号証について
乙第4号証は、東麗商事とサン・メンズウェア間の「SALES CONTRACT」(販売契約書)である。この「SALES CONTRACT」の文字の下部には、当該販売契約が締結された日付として「JUNE 18,2010」の文字が記載されている。
さらに、中段の「ITEM」欄には、本件製品を表す品番である「059825」「059826」「019805」「629801」「629826」「629827」「629828」「629830」「629840」が記されている。これらのことから、要証期間内に通常使用権者である東麗商事とサン・メンズウェア間で本件製品に関する取引が現実にあったことが確認できる。
オ 乙第5号証について
乙第5号証は、東麗商事からサン・メンズウェアに対して発行されている「INVOICE」(請求書)である。この「INVOICE」の文字の右上部には、この日付として「16-Nov-10」の文字が記載されている。一般的に「16-Nov-10」の記載は、2010年11月16日と理解するのが妥当である。
さらに、中段の「DESCRIPTIONS OF GOODS」欄には、「DOWN JACKET」の文字の下に、本件製品を表す品番である「059901」「019805」「629801」「059826」が記されている。これらのことから、要証期間内に東麗商事とサン・メンズウェア間で本件製品に関する取引が現実にあったことが確認できる。
カ 乙第6号証について
乙第6号証は、サン・メンズウェアが本件製品を販売した事実を示す「証明書」である。この「証明書」には、要証期間以前の平成15年10月1日から当該証明書発行の日付である平成23年11月7日までサン・メンズウェアが本件製品を販売していた事実を示すものである。このことは、要証期間内にサン・メンズウェアが本件商標と社会通念上同一の商標を付した本件製品を販売していた事実を示すものである。
キ 以上のとおり、本件商標と社会通念上同一の商標を付した本件製品に関する取引書類は極めて多岐に渡るものである。このことは、本件製品が現実に取引されていることを直接的、又は、間接的に示すものである。
したがって、本件商標に係る通常使用権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に本件商標の指定商品中、第25類「被服」について本件商標を使用していることは明らかである。
3 口頭審理陳述要領書及び口頭審理における陳述
(1)東麗商事が通常使用権者であることの証明について
東麗商事は商標権者の関連会社であり、中華人民共和国上海市に存在し、本件製品の製造・輸出を担っている。
ここで、東麗商事が通常使用権者であることを間接的に証明すべく商標権者の中国向け「会社パンフレット」(乙7)及び「東レグループ海外ネットワーク」の写し(乙8)を提出する。
乙第7号証には、東麗商事を表す「東麗商事(上海)有限公司」(なお、「東麗」は簡体表示である。)の文字が商標権者100%出資の東レ(中国)投資有限公司の配下組織として中国語で表記されている。さらに、乙第8号証には、商標権者の連結子会社として「Toray Trading(Shanghai)Co,,Ltd.(TSL)」があることが表記されている。
これらの記載から、東麗商事は、グローバルな事業活動を行う商標権者を中心とする企業グループの一員といわなければならない。そのため、本件製品の取引に関して商標権者は、東麗商事に対して、本件商標権に基づく通常使用権を黙示的に許諾しているものといって差支えないものである。
なお、通常使用権に関する許諾契約書が不存在である場合であっても、通常使用権者であることの立証が可能であることについては、数多くの審判決例から自明である(乙9及び乙10の1ないし3)。
(2)乙第1号証の下げ札の作成から商品に付されるまでの経緯の説明について
本件商標が付された「下げ札の写し」を乙第11号証として、上海NAXISに対して下げ札の印刷依頼を行う際に作成した「付属品発注書」を乙第12号証として提出する。
乙第11号証中の下げ札は、乙第1号証中の下げ札と同種のものである。
乙第12号証は、東麗商事が、本件製品の「下げ札」の印刷を請け負っている上海NAXISに対して「下げ札」の発注を依頼する書面である。
これらの書証から明らかなとおり、「下げ札」については、東麗商事が上海NAXISに対して印刷を依頼し、東麗商事が上海NAXISから納品を受け、その後、東麗商事が「下げ札」を本件製品に付した上でサン・メンズウェアに対して本件製品を納品するというのが下げ札の作成から本件製品に付されるまでの経緯である。
(3)乙第2号証において「発注年月日」「発注者」「受注者」等が確認できる書面について
乙第2号証として提出した「発注書」がサン・メンズウェアから東麗商事に対して送付される際の添付元の「eメール本文」の写し(乙13)を提出する。
乙第13号証には、メールの発信元が「サン・メンズウェア株式会社 企画生産室 ○○」となっており、送信先が「東レ(株)上海 □様、東レ(株)上海 △様」となっている。また、本メールを送付した日時が右上部に「2010-04-30 12:41」と記載されている。
これらの内容から、顧客である「サン・メンズウェア」が通常使用権者である「東麗商事」に対して、要証期間である「平成22年4月30日」に本件製品の発注を行っている事実が存在していたことが分かる。
(4)乙第4号証及び乙第5号証に表示されている製品番号に対する数量の相違についての説明について
東麗商事からサン・メンズウェアに対する「パッキングリスト」の写し(乙第14号証の1ないし12)及び、この「パッキングリスト」に対応する「インボイス」の写し(乙第15号証の1ないし12)を提出する。
一般に、衣料品製造会社から卸売業者に対する縫製品の販売は、その納期により分割で納品することが通例となっている。
しかるところ、この乙第14号証の1(審決注:「乙第15号証の2」の誤記と思われる。)の該当部分には「90PCS」の文字が確認でき、さらに、これに対応する乙第15号証の1(審決注:「乙第14号証の2」の誤記と思われる。)の該当部分には「50」及び「40」の数字が確認でき、この数字を合算すると「90」となり、乙第14号証の1(審決注:「乙第15号証の2」の誤記と思われる。)の「90PCS」と同数となる。このように、全ての数字を合算すると「3,966PCS」となる。
なお、「4,050PCS」に84PCS不足しているが、当該不足分は入荷生地の数量不足又は不良品発生などから生ずる減産に起因するものである。
以上のことから、通常使用権者である東麗商事から本件商標を付した本件製品がサン・メンズウェアに対して出荷されていることが理解できる。
(5)口頭審理における陳述
ア 本件商標を使用したのは、本件商標の通常使用権者である東麗商事であって、商標権者でもサン・メンズウェアでもない。
イ 平成23年11月21日付け審判事件答弁書の第3頁第15行目に記載の「小売店舗」を「東麗商事」と訂正する。
(6)請求人の主張に対する反論
ア 請求人は、弁駁書において、「…、仮に乙第1号証及び乙第6号証にて提出された下げ札が、権限のある者によって使用された場合であっても、依然としてこれらの下げ札に表示された商標は、その生地(素材)について使用されているにすぎず、本件指定商品「被服」についての使用には当たらない。」旨述べているが、本件商標は「繊維」について使用されるものではなく、あくまで本件指定商品である「被服」について使用されているものである。
すなわち、衣料品業界に係る商品商標については、一つの商品に複数の出所標識が付されることは通常行われるものであり、その商品に付される商標が必ずしも一つに限られるものではない。
イ 確かに、乙第11号証の裏面部分には、甲第1号証の裏面部分と同様に「東レの特殊軽量素材を使用して、軽量感を実現。」及び「この商品は東レのせんいを使用しています。」の文言が表記されている。
しかしながら、これらの文字表記はいずれも「Gram」の文字が本件製品に用いられた「素材」又は「生地」の名称であることを記載も示唆もしていないため、これに接する需要者又は取引者が「Gram」の文字が「素材」又は「生地」についての出所を表示しているものとして認識又は把握するものではない。
ウ 以上のとおり、本件商標は、「繊維」について使用されるものではなく、本件指定商品である「被服」について使用されていることから、請求人の主張は失当である。
4 平成24年8月15日付け上申書における主張
(1)東麗商事の業務内容と使用許諾の内容について
乙第17号証は、東麗商事の会社概要である。乙第18号証の1は、東麗商事の「章程」(定款)であり、乙第18号証の2は、この「章程修正案」(定款修正書)である。
乙第18号証の2に示す「章程修正案」の第7条によると、「第7条会社経営範囲:1.国際貿易及び貿易コンサルティング、2.保税区企業間の貿易と区内貿易代理、3.区内商業性簡単加工、4.化工製品、化学繊維、樹脂、紙製品、紡織原料及び紡織製品(綿を除く)、機械電気設備、プラスチックとゴム及びそれらの製品、精密機器とその部品、建築材料(鋼材を除く)、皮革とその製品、金属製品の卸売り、炭素繊維及びその製品、セラミックス製品の卸売り、5.コミッション代理(競売を除く)、6.輸出入及びその関連業務」が東麗商事の業務内容であり、本件製品の取引については、1.の「国際貿易」、4.の「紡織製品(綿を除く)…の卸売り」及び6.の「輸出入及びその関連業務」がこれに該当する。
本件商標についての使用許諾の内容については、1)「東麗商事」が商標権者の子会社であり通常使用権者たる地位にあること、2)使用許諾についての契約書の提出がなくとも使用許諾がなされた事実を否定することにはならないこと、3)縫製品ビジネスの取引の実情の説明から、商標権者、東麗商事及びサン・メンズウェア間の取引の実情が明確にされていること、4)乙第19号証に示される「覚え書き」によって包括的な取引契約が商標権者と東麗商事との間で交わされていることから、本件商標についても黙示の使用許諾がなされているというべきである。
(2)本件ダウンジャケットの製造・販売等に関するODM契約について
ア 縫製品業界における「ODM型生産」の背景
近年、繊維及び衣料品を取り扱う業界においては、単に相手先ブランド商品の生産のみを行う「OEM型生産」から、商品企画、生産、流通までをも一手に担う「ODM型生産」へとビジネスモデルが変遷しつつあるのが取引の実情である。ここで、「ODM型生産」とは、例えば、受託先が商品企画から生産、その後の流通まで行い委託先に商品(完成品)を提供することを主な業態とする場合をいう。
イ 商標権者による「ODM型生産」の取り組み
繊維及び衣料品を取り扱う業界を取り巻くビジネスモデルが「ODM型生産」へと変遷しつつある中で、商標権者も、縫製品事業拡大の一環としてこの「ODM型生産」による縫製品ビジネスを展開し、その取り組みは、業界紙などで盛んに報道されたため、業界内で一定の認知を得ている(乙20の1ないし4)。
ウ 本件製品のODM型生産に関する取引の実情について
本件製品のODM型生産に関する事業については、商標権者が「GRAM」ダウンジャケットの企画提案、東麗商事が「GRAM」ダウンジャケットの(実質的な)生産、納品(受託先)、そして、サン・メンズウェアが「GRAM」ダウンジャケットの卸売による販売(委託先)と三者がそれぞれの役割を担っている。
このような、ODM型生産に基づくビジネスモデルの特殊性から小売店における本件ダウンジャケットについて、商標権者によるODMブランドとサン・メンズウェアが付した独自のブランドの二つのブランドが付された状態で、小売店で販売されていたとしても何ら不思議はなく、むしろこのような取引の実情こそが、ODM型生産に基づくビジネスモデルにおいては一般的なのである。
エ さらに、商標権者は、緑又はオレンジ色の下げ札を付した状態でダウンジャケットの取引があったことを示すサン・メンズウェアの証明書を乙第6号証の2として提出する。
これにより、乙第6号証添付のオレンジ色の下げ札及び乙第11号証(枝番含む。)の緑色の下げ札が付されたダウンジャケットに関する一連の取引の流れがサン・メンズウェアによって客観的に証明されている。これによっても、商標権者のODMブランドである「GRAM」ブランドのダウンジャケットが現に市場に流通していることが分かる。
オ 小括
以上に述べたように、商標権者のODMブランドである「GRAM」ブランドのダウンジャケットが、本件通常使用権者である「東麗商事」の生産・流通を介在して、現に市場に流通していることが分かる。
したがって、本件通常使用権者である「東麗商事」は、商標法第2条第3項各号に規定されている「使用」行為のうち、本件商標を付した本件製品を譲渡等の行為を行っているから「2号」の行為に該当する。
(3)乙第1号証「下げ札指示書」について
被請求人は、口頭審理において、審判事件答弁書の第3頁第15行目に記載の「小売店舗」を「東麗商事有限公司」と訂正した。
ODMの受託先である「サン・メンズウェア」からODMの委託先である「東麗商事」に対して、059900/059901/059825/059826/019805/629801/629826/629827/629828/629830/629840の品番からなるダウンジャケットについて、2010年7月14日に添付の下げ札(緑)を付するよう指示している事実である。この乙第1号証の指示に基づいて、「東麗商事」は、少なくとも「059826」なる品番のダウンジャケットに関しては、乙第11号証の下げ札(緑)が付された状態で、「サン・メンズウェア」に向けて輸出していることが容易に推認できる。
(4)結語
以上述べたように、本件商標は、通常使用権者である「東麗商事」によって、本件指定商品「被服」について使用(商標法第2条第3項第2号)されている。
5 平成26年4月14日付け回答書における主張
被請求人は、本件審判段階で提出した乙第1号証ないし乙第28号証に加え、訴訟段階において新たに追加提出した証拠と同一のもの(乙29号証ないし乙第54号証(枝番を含む。))を提出し、ダウンジャケットを含むダウンウェア(品番059826及び059825。以下、これらを併せて「本件商品」という。)に「Gram」の欧文字からなる商標(以下「本件使用商標」という。)を使用したことを証明する。なお、本件商品は、「被服」に含まれるものである。
(1)本件商品には、本件使用商標が表示された下げ札(以下「使用下げ札」という。)が付されていることが確認できる(乙29)。本件商品は、東麗商事によって現地における生産段階で使用下げ札その他のタグが付され、その後この状態のまま我が国に向けて輸出され、サン・メンズウェアに譲渡されたものである。
(2)本件商品の在庫証明書(乙30)は、サン・メンズウェアが委託している倉庫会社である株式会社エコーセンター(以下「エコーセンター」という。)によって、平成22年12月1日に作成されたものである。本書証により、少なくとも平成22年11月1日ないし同月30日の1か月間に渡ってエコーセンターの倉庫に使用下げ札が付された本件商品が保管されていたことを客観的に示す。
(3)サン・メンズウェアの代表者による陳述書(乙31)によれば、「下げ札指示書」(乙1)の記載内容のすべてについて明確な内容が陳述されている。
(4)本件商品の発注書(写)(乙32)によれば、サン・メンズウェアが2010年(平成22年)7月にタグ付けされた状態の本件商品の製造を、商標権者を経由して東麗商事に対して発注していた事実を確認できる。なお、「その他」欄に記載の「タグ付けして納品」の文言の「タグ」が使用下げ札を含む一連の下げ札を指し示すことは明らかである。
(5)「平成22年11月30日付請求書(写し)」(乙33)は、遅くとも平成22年11月30日には、本件商品について、現実にサン・メンズウェアと小売業者である株式会社マックハウス(以下「マックハウス」という。)との間で取引があったことを示すものである。これにより、サン・メンズウェアが小売業者に対して本件商品を販売した事実が容易に認められ得る。その結果として、使用下げ札が付された本件商品が転々流通することにより、本件商標が商標権者の商標として現実に機能していることが確認できる。
(6)以上述べたことを本件商品(品番059826及び059825)について、乙各号証に基づいて作成日付を時系列順に表すと、次のとおりとなる。
2010年(平成22年)4月30日 メール(乙13;乙2が添付。)
2010年6月18日 SALES CONTRACT(乙4;サン・メンズウェア及び東麗商事が締結。)
2010年7月14日 下げ札指示書(乙1;サン・メンズウェアから東麗商事に対する。)
2010年7月15日 付属品発注書による発注日(乙12;東麗商事から上海NAXISに対する。)
2010年7月23日 品番059825に関する発注書(乙32の2;サン・メンズウェアから東麗商事に対する。)
2010年7月28日 品番059826に関する発注書(乙32の1;サン・メンズウェアから東麗商事に対する。)
2010年8月10日 使用下げ札の納期(乙12;上海NAXISから東麗商事に対する。)
2010年11月16日 INVOICE(乙5;東麗商事からサン・メンズウェアに対する。)
2010年11月30日 請求書(乙33;サン・メンズウェアからマックハウスに対する。)
このように、本件商品に関する取引書類は、全て2010年(平成22年)に作成又は発行されたものである。そうとすれば、乙第1号証の下げ札指示書も2010年7月14日に発行されたものであることが容易に推認できる。
(7)洗濯表示(乙43、53)の表には、各々品番(「059825」又は「059826」)が記載され 、洗濯表示の裏の最下部に「中国製」との記載があるが、これは、本件商品が中華人民共和国上海市に在する東麗商事によって製造されたことを示唆するものである。
(8)本件使用商標は、使用下げ札に表されている(乙11、39、49)。
6 まとめ
以上、被請求人の提出に係る乙各号証を勘案すれば、本件商標が通常使用権者である東麗商事によって、本件審判の請求の登録前3年以内に、本件商標の指定商品中、第25類「被服」について、日本国内で継続して使用されているものである。そのため、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に基づいて、その登録を取り消されるべきものではなく、請求人による審判請求は理由がない。

第4 当審の判断
被請求人提出の乙各号証及びその主張によれば、本件商標の使用等について以下の事実が認められる。
1 被請求人提出の証拠(乙7、17?19、22)及び請求人の主張によれば、東麗商事(平成9年3月設立)に対し、本件商標の使用を許諾していたものと認められる。
したがって、東麗商事は、本件商標の通常使用権者であると認められる。
2 被請求人提出の証拠(乙2?6、14、15、20、30?33)及び請求人の主張によれば、東麗商事は、平成22年6月18日頃、サン・メンズウェアとの間で本件商品に関わる売買契約を締結し、ODM型生産により本件商品を生産し、同年10月から同年11月にかけて、これに本件使用商標が付された本件下げ札を付して日本国内所在のサン・メンズウェアにこれを譲渡したこと、同月頃、サン・メンズウエアが本件商品をマックハウスに販売したことが認められる。
そして、本件商品は、「被服」に属するものである。
したがって、東麗商事は、日本法人であるサン・メンズウェアに対し、本件使用商標を付した本件商品を譲渡し、その後日本国内において、本件商品を流通させたものと認められる。
なお、東麗商事は、被請求人の子会社の傘下にある中国法人であり、サン・メンズウェアからの発注を受け、ODM型生産により本件商品を中国において生産したものの、日本法人であるサン・メンズウェアにこれを譲渡したのであり、本件商品は、その後サン・メンズウェアからマックハウスに譲渡されて、日本国内において転々流通したものである。商標権者等が商品に付した商標は、その商品が転々流通した後においても、当該商標に手が加えられない限り、社会通念上は、当初、商品に商標を付した者による商標の使用であると解されるので、上記認定事実に照らすと、東麗商事は、日本国内において本件商標を使用したものということができる。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、本件指示書(乙1)のみでは、実際に本件下げ札が本件商品に付されたことが証明されたとはいえないし、本件指示書には宛先がなく、被請求人自身も、審判当初、本件指示書につき、サン・メンズウェアから小売店に対して送られたものであると主張し、その後サン・メンズウェアから東麗商事に向けて送られたものであるなどと主張を変遷させ、しかもその理由を説明していない、などと主張する。
しかし、本件指示書には、「S/No」との記載の後に本件商品の番号が記載された上でその下に本件下げ札が表示され、更にその下に「*去年のS/NO.056800に付けてたタグを全品番付けて下さい。」との記載があり、末尾に「サンメンズ 7/14」との記載がある。
そして、本件指示書末尾に「サンメンズ」と記載されているので、サン・メンズウェアが本件指示書を作成したとみて不自然ではないし、本件指示書には、本件下げ札が表示されていることからして、付すように依頼したタグは本件下げ札であるとみることができ、また、本件指示書には本件商品の製品番号が記載されているところ、上記2認定の本件商品の販売、納入時期に照らすと、「7/14」の記載は本件指示書の発行日であるとみるのが自然であるほか、サン・メンズウェア作成の本件商品の発注書(乙32)に、「タグ付けして納品」との記載があることに照らすと、本件指示書はサン・メンズウェアから東麗商事に宛てられたものであるとみるのが自然である。
以上に加え、サン・メンズウェアの代表者が、本件指示書について、「去年」の文言は2009年(平成21年)を指すこと、「S/NO.056800」とは東麗商事製造に係るダウン製品の品番であり、「S/NO.056800に付けてたタグ」とは本件指示書に表示された本件下げ札のことであること、「7/14」は2010年(平成22年)7月14日に本件指示書を発行したことを示すこと、本件指示書はサン・メンズウェアが東麗商事に向けて発行したものであること、本件商品には本件下げ札が付されていたことをそれぞれ陳述していること(乙31)も併せ考えると、本件指示書は、サン・メンズウェアが、東麗商事に対し、平成22年7月14日付けで、本件商品に本件下げ札を付するよう指示をしたことを示すものであること、東麗商事は、これに基づき本件商品に本件下げ札を付したことが認められるのであり、上記2認定のとおり、これをサン・メンズウェアに譲渡したものである。
また、被請求人が「小売店舗」を「東麗商事」に訂正すると陳述した点についても、そもそも、東麗商事が製造した本件商品を購入する立場のサン・メンズウェアが、小売店に対して本件下げ札を付すように依頼するとは考え難く、実際、上記認定のとおり、サン・メンズウェア作成の本件商品の発注書(乙32)にも、「タグ付けして納品」との記載があることや、本件の経緯も併せ考えると、本件指示書についてサン・メンズウェアから小売店に対して送られたものである旨の被請求人の主張は、むしろ錯誤等によりなされた事実に反するものであり、それが判明したために被請求人が主張を変更したものとみるのが自然である。そうすると、被請求人が主張を訂正したことが上記2の認定を左右するものであるとはいえない。
よって、請求人の上記主張を採用することはできない。
(2)請求人は、本件商品に付された本件商標は、被服ではなく本件商品に使用された素材を示すために用いられており、本件商標が被服に使用されたとはいえない旨主張する。
確かに、証拠(乙1、11、29、35?54)及び被請求人の主張によれば、本件商品には、本件下げ札のほかに、マックハウスの有する商標「navy natural」(以下「マックハウス商標」という。)を表示した襟ネームが付されていたのみならず、マックハウス商標の表示された下げ札や他の下げ札が付されていたことが認められる。
また、本件下げ札の表面には、「TORAY」の文字が表示され、中段には「非常に軽い」を意味する英語「Extra Light Weight」の欧文字と「Gram」の欧文字が一体的に表示されていること、裏面には、「非常に軽い特殊な素材が新たな快適性と機能性を提供します。」、「東レの特殊軽量素材を使用して、軽量感を実現。」などと記載され、下段には表面と同様に「Extra Light Weight」と一体化された「Gram」の文字が記載され、さらに、その下には「この商品は東レのせんいを使用しています。」と記載されていることが認められる(なお、乙11には、裏面に「輸入・発売元サン・メンズウエアー(株)」との記載があるが、乙39の2、41の2、49の2には上記記載はない。)。
以上によれば、本件商品がマックハウスの「navy natural」ブランドの製品であること、また、東レ(被請求人)の繊維である特殊な素材を使用することにより本件商品が上記の特徴を有することが認識され得るものといえる。
しかし、他方で、本件商品は、上記認定のとおり、東麗商事によりODM型生産され、サン・メンズウェアに譲渡されたものであり、本件下げ札は、その際に本件商品に付されたものである上、東麗商事がODM型生産をした本件商品に使用した東レの素材が非常に軽いため、ダウンジャケットである本件商品が、軽量感のあるソフトな風合いの機能性、快適性に優れるものであることを示すものであるとも解することができ、本件商品が東レの素材を使用した、「Gram」ブランドの衣類であるなどというように、被服である本件商品の出所及び品質等を示すものとして用いられているものとも理解し得るものである。このように、本件商品は、マックハウスの商品として、マックハウス商標が付されると共に、東麗商事により東レの特殊軽量素材の生地を使用してODM型生産された、軽量感のあるソフトな風合いの機能性、快適性に優れた衣類であることも表示するものとして、本件使用商標が付されて販売されたものであり、単に、本件商品に使用された素材を示すために、本件使用商標が本件商品に付されたものとみることは相当ではない。
よって、請求人の上記主張を採用することはできない。
4 本件商標は、「グラム」の片仮名と「GRAM」の欧文字を二段表記してなるものである。他方、本件使用商標は「Gram」の欧文字を表してなるものであり、本件商標の一部を英語表記に変更し、又は英語の小文字の表記に変更したものにすぎない。しかも、本件商標及び本件使用商標のいずれからも、「グラム」の称呼が生じ、「質量の単位であるグラム」の観念が生じる。
したがって、本件商標と本件使用商標は社会通念上同一の商標であるものと認められる。
5 結論
以上によれば、本件商標の通常使用権者である東麗商事は、本件審判の請求の登録前3年以内である平成22年10月から同年11月に、本件商標と社会通念上同一の商標である本件使用商標を表示した本件下げ札を付した本件商品を日本国内所在のサン・メンズウェアに譲渡し、さらに同月頃、サン・メンズウェアが本件商品をマックハウスに販売したものであるから、本件商標の指定商品中、第25類「被服」に本件商標を使用したものと認められる。
そうとすれば、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、その請求に係る指定商品「被服」について、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していることを証明したものであると認めることができる。
したがって本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2015-02-10 
結審通知日 2015-02-13 
審決日 2015-02-27 
出願番号 商願2003-48087(T2003-48087) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y25)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 石井 千里 
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 大森 健司
中束 としえ
登録日 2004-09-03 
登録番号 商標登録第4799883号(T4799883) 
商標の称呼 グラム 
代理人 内藤 通彦 
代理人 藤本 正紀 
代理人 長谷川 綱樹 
代理人 佐藤 大輔 
代理人 橘 哲男 
代理人 伊東 美穂 
代理人 土屋 亜紀子 
代理人 木村 吉宏 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ