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審決分類 審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 登録しない W29
管理番号 1298393 
審判番号 不服2014-4360 
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-05 
確定日 2015-02-23 
事件の表示 商願2012-104205拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、「よっちゃばれ踊り」の文字を標準文字で表してなり、第29類に属する願書に記載されたとおりの商品を指定商品として、平成24年12月25日に登録出願され、その後、指定商品については、同25年5月13日付けの手続補正書により、第29類「食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,加工卵,乳製品,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ」に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、40年以上の長きに渡り山梨県民の間で親しまれている踊りの一つである『よっちゃばれ踊り』を表す語であり、これを出願人が自己の商標として採択、使用することは、地域の人々に不快な念を与え、さらに、『よっちゃばれ踊り』の名称を使用した観光振興や地域おこし等の公益的な施策の遂行を阻害することとなり、社会公共の利益に反するものとみるのが相当である。したがって、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第7号の趣旨について
商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(1)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(3)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(4)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである(知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10349号 平成18年9月20日判決言渡)。
以下、この趣旨にそって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するか否かについて検討する。
2 本願商標の商標法第4条第1項第7号該当性
(1)本願商標は、上記第1のとおり、「よっちゃばれ踊り」の文字からなるところ、「よっちゃばれ踊り」の文字については、原審において摘示した文献、新聞記事を含め、インターネットのウェブサイト等に、以下のような記載が見られる。
ア 甲府商工会議所「甲府商工会議所七十年史」(昭和56年9月15日発行)124?125頁に、「そのえびす講が、四十七年からはさらに、“みんなが参加するまつり”に変化した。この年、山梨版・阿波踊りをねらった“よっちゃばれ踊り”が登場、鳥追い姿の民謡好きの婦人たちが競って参加、小さい子供も参加して鳴子を鳴らしながら、市中を踊り回った。・・・特に『よっちゃばれ踊り』は、県民の新民踊として定着。五十四年の甲府商工会議所創立七十周年記念よっちゃばれ踊りコンクールには、十一企業連が参加。・・・五十五年の同コンクールには、十四連が参加した。このなかには『甲府商工会議所連』も加わり、・・・」との記載がある。
イ 財団法人国土地理協会「日本祭礼地図 V 付録・索引編」(昭和55年11月20日発行)の353頁において、「ここでいう不定期芸能とは、本書の採録基準となった広義の『まつり』、すなわち全国各地で旧来より伝承されてきた社寺の祭礼・民俗行事や新興の商工・観光祭など各種行事の際に演じられる民俗芸能であり、その公開日がはっきりしないものである。」との記載があり、361頁において、「山梨県」の項に、「よっちゃばれ踊 甲府市」との記載がある。
ウ レファレンス協同データベースのサイトにおいて、山梨県立図書館が2003年9月20日に作成したレファレンス事例として、「よっちゃばれ踊りについて知りたい」の質問に対し、「市民がお祭りで踊れる健康的な新民踊が欲しい、という願いから、山梨版阿波踊りをねらった『よっちゃばれ踊り』が1971(昭和46)年に制定された。武田軍配鳴子を使った、大人も子どもも明るく踊れる新民踊。甲府商店街連盟が全国から歌詞を募集した。詞は齋藤岳南氏のものが選ばれ、振り付けは花柳徳吉氏を中心とした。毎年11月に行われる甲府えびす講祭りでは、よっちゃばれ踊りコンクールが開催される。」との回答が記載されている。(http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000001006)
エ 甲府市のウェブサイト(http://www.city.kofu.yamanashi.jp)中の「甲府市のあゆみ」の項には、「昭和47年11月 よっちゃばれ踊り誕生、えびす講祭りで発表」の記載(http://www.city.kofu.yamanashi.jp/120kinen/ayumi3.htm)、「甲府大好きまつり」の項には、2011年9月29日更新として「甲府大好きまつりは、平成元年に市制施行100周年を記念して始められたお祭りです。音楽隊やチアリーダーを先頭に、甲府大好き音頭・よっちゃばれ踊りの浴衣の波と鳴子の音がパレードコースを埋めつくし、木遣り、山車、みこしが続きます。・・・」との記載(http://www.city.kofu.yamanashi.jp/welcome/saijiki/daisuki.html)、さらに「民謡・民舞の祭典」の項には、事業報告として「平成25年6月30日(日)、コラニー文化ホール大ホールにて、『民謡・民舞の祭典』が開催されました。第1部:甲斐の四季、第2部:全国出演者の発表、第3部:甲州の唄と踊りの3部構成で、・・・」との記載と、その下部に写真と共に「総勢100人による甲州よっちゃばれ踊りでフィナーレ」との記載(http://www.city.kofu.yamanashi.jp/kokubun/kokubun/minyou.html)がある。
オ 甲州市のウェブサイトには、「まちの話題第7回甲州市およっちょい祭り」の項に「『歌って、踊って、食べて』と、10月28日に市役所駐車場をメイン会場に、第7回甲州市およっちょい祭りを開催しました。甲州市商工会を中心に、市民ボランティアやNPOなどが連携し、よっちゃばれ踊り、およっちょい上棟式、歌の祭典のほか、多彩な出店など、地域活力の充実に向けて、市民総参加のイベントを大いに盛りげました。」との記載とともに、写真が掲載されている。(http://www.city.koshu.yamanashi.jp/shokuinblog//detail/)
カ 新聞記事情報
(ア)毎日新聞1997.04.04地方版/山梨
「雨の中ワッショイーー『第28回石和温泉桃の花まつり』」の見出し下における、「峡東地方の春祭りの先陣を切る『第28回石和温泉桃の花まつり』が、3日始まった。あいにくの雨模様となったが、観光客など約3000人が訪れた。・・・8日は『よっちゃばれ踊りアイデアコンクール』が、9日には『芸妓みこし』が行われ、・・・」との記載がある。
(イ)産経新聞1998.03.30東京朝刊
「【東西南北】30日(月)-4月5日(日)」の見出し下における、「3日(金)■石和温泉桃の花まつり《8日まで、山梨県石和町。3日は一般も参加できる八幡神社みこし、7日はよっちゃばれ踊りアイデアコンクール、8日は石和温泉の600人の芸者さんが総出で10基の芸妓みこしと、2基の山車が温泉街を練り歩く》」との記載がある。
(ウ)毎日新聞2012.08.24地方版/山梨
「よっちゃばれ踊り:普及させよう 11月3日、甲府駅北口で第1回大会」の見出し下における、「『よっちゃばれ踊り』の普及を目指す県内経済人らの団体『甲州よっちゃばれ連盟』(風間善樹会長)は11月3日、『第1回甲州よっちゃばれ大会』をJR甲府駅北口のよっちゃばれ広場で開く。『若者に関心を持ってほしい』とロック調にした編曲に合わせ、参加団体が踊って優勝を争う。よっちゃばれ踊りは、県民が楽しく踊れる曲を作ろうという甲府商工会議所などの呼びかけで、71年に作られた。金丸一・同大会実行委員長(80)=甲府伊奈鋼業会長=は『山梨の文化を育てたい。北海道のYOSAKOIソーラン祭りに負けない大会にしたい』と語った。約20?30人の団体を募集している。・・・」との記載がある。
(エ)読売新聞2013.10.24東京朝刊
「『よっちゃばれ踊り』甲府で来月16日大会 若者12チーム参加」の見出し下における、「民謡『よっちゃばれ踊り』をロック調にアレンジし、若者がオリジナルダンスを競う『甲州よっちゃばれ大会』が11月16日、JR甲府駅北口広場で開かれる。実行委員会の金丸一委員長は『大学生や高校生がエネルギッシュなダンスを披露する、新しい山梨の文化をつくりたい』と話している。1971年に作られたよっちゃばれ踊りを、若者が楽しく踊れるよう編曲し、山梨を盛り上げようと、県内の経済人らが企画。今年が2回目で、今回は静岡、長野の大学生にも声をかけ、12チームが参加する。」との記載がある。
(オ)毎日新聞2013.10.30地方版/山梨
「甲州よっちゃばれ大会:『若い人の躍動する姿見て』来月16日」の見出し下における、「『よっちゃばれ踊り』の普及を目指し、県内企業などでつくる団体が11月16日、若者らがロック調の編曲で踊る『甲州よっちゃばれ大会』をJR甲府駅北口のよっちゃばれ広場で開く。県内外の12チームが参加。・・・よっちゃばれ踊りは1971年、『県民が楽しく踊れる曲を』と甲府商工会議所などが呼びかけて作られた。大会には山梨大生や県立白根高生、社会人らによるチームのほか、長野や静岡のチームも参加。金丸一・実行委員長(81)=甲府伊奈鋼業会長=は『町おこしのきっかけにしたい。いずれは関東甲信越、全国規模の大会になれば』と話している。」との記載がある。
(カ)毎日新聞2013.11.17地方版/山梨
「甲州よっちゃばれ大会:高校生や社会人、創作ダンス披露」の見出し下における、「ロック調に編曲した『よっちゃばれ踊り』に合わせて踊る『甲州よっちゃばれ大会』が16日、JR甲府駅北口で開かれた。県内外の計12チームが参加。・・・よっちゃばれ踊りは1971年、甲府商工会議所などの呼び掛けで作られた。大会は『若者にも曲に親しんでほしい』と県内企業などで作る団体が主催し、今年で2回目。・・・事務局は『踊りを見ようと足を止めてくれた人も多かった。来年も開催したい』と話していた。」との記載がある。
キ 「平成17年笛吹市議会第2回定例会」(平成17年6月10日)における荻野正直市長の所信表明中の「・・・近津用水沿いの石和町さくら温泉通りでは、大賑わいの夜桜見物客の中を芸妓みこしが練り歩きました。また、石和よさこいよっちゃばれ踊りでも、観光客も加わって、よさこいソーラン踊りで大いに盛り上がりました。」との記述がある。(http://www.city.fuefuki.yamanashi.jp/file/5/4cca4c9a71f43.html)
ク 「平成20年12月議会質問甲府市議会議員活動報告by野中一二(いちに)」のウェブサイトには、「野中一二の議会質疑応答の記録平成20年12月16日(火)」の表題下に、北口広場(仮称よっちゃばれお祭り広場)の正式名称化についての野中一二市議会議員の質問に対する宮島雅展市長の次のような答弁が掲載されている。
「この多目的広場の名称として使われております『よっちゃばれ』という言葉につきましては、本市の観光振興として毎年実施しております甲府大好きまつりにおきましても、『よっちゃばれ踊り』として定着していまして、県民、市民になじみの深い言葉になっておるのではないかと認識しています。」(www.nonaka12.com/gikai/20081216.htm)
ケ 「甲府駅北口まちづくり委員会」のウェブサイトには、「【予告】甲州よっちゃばれロックフェスタダンスセッションが開催されます」との見出し下に、「”よっちゃばれ”とは山梨県の方言(甲州弁)で集まれ、寄っておいでなどという意味です。北口の駅前にあるよっちゃばれ広場も徐々に名前の認知がされるようになってきました。・・・県内の祭りで以前から親しまれてきた民謡調の曲『よっちゃばれ踊り』をロック調に編曲したものに合わせ、参加団体が独自の衣装や振り付けで踊って優勝を決めます。」等の記載がある。(www.kitagucchi.com/2012/10/post-53.html)
コ 「山梨県中心街ポータル甲府城下町」のウェブサイトには、「イベント特集」の項目に「第20回甲府大好きまつり」の見出し下に、写真と共に該まつりの様子が紹介されており、「次は甲府大好き音頭とよっちゃばれ踊り。なんと市役所の西端から岡島百貨店の東端までの城東通り約300mをぐるりと一周取り囲み、市内の各婦人会の皆様が艶やかな浴衣姿で町中を練り踊りました。・・・」等の記載がある。(http://kofu-jokamachi.jp/event/080905_kofudaisuki.html)
サ 「石和温泉旅館協同組合」のウェブサイトには、「石和温泉の季節と祭を堪能!」の見出し下に、「春の石和は、桃源郷となる。・・・4月に入ると、石和温泉郷の桃の花まつりが開幕し、歩行者天国よっちゃばれ踊り、アイデアコンクール、錦鯉品評会で活気に満ちる。」等の記載がある。(www.isawaonsen.or.jp/model/season.html)
シ 「じゃらん」のウェブサイトには、「甲府大好きまつり」の見出し下に、「平成元年に市制施行100周年を記念して始まった『甲府大好きまつり』が城東通り、甲府中央商店街などで開催されます。パレードでは音楽隊やチアリーダーを先頭に、浴衣姿で踊る『甲府大好き音頭』や『よっちゃばれ踊り』のほか、木遣り(きやり)、山車、みこしが城東通りを練り歩きます。」、「主催 甲府大好きまつり実行委員会」、「問合わせ先 甲府大好きまつり実行委員会事務局(甲府市役所観光課内)」等の記載がある。(http://www.jalan.net/kankou/150000/150100/evt_0138884/)
ス 「じゃらん」のウェブサイトには、「夏の武田の里まつり 『武田陣没将士供養会・花火大会』」の見出し下に、「武田家累代陣没将士の供養塔や、花火大会などが行われる『夏の武田の里まつり』が開催されます。・・・提灯行列をはじめ、新府城、よっちゃばれ踊り、武田節、平成韮崎踊りなどを繰り広げる盆踊り大会などがあり、大勢の人で賑わいます。打ち上げ数、6600発 観客数、4万人?5万人。 昨年度打ち上げ数、5000発 観客数、3万人」「主催 武田の里まつり実行委員会」、「問合わせ先 武田の里まつり実行委員会(韮崎市商工観光課内)」、等の記載
(http://www.jalan.net/kankou/150000/151400/evt_0152971/)
(2)以上を総合勘案すると、「よっちゃばれ踊り」は、1971年(昭和46年)頃に甲府商工会議所等の呼びかけで始められた踊りであって、現在に至るまで、甲府市を中心に山梨県内各地で、祭り等のイベントにおいて踊られており、山梨県民の間で親しまれているばかりでなく、その普及を目指す県内経済人団体や甲府市、甲州市、石和町等の活動と相俟って、他県からの参加者や観光客を誘致するなど、山梨県各地の観光振興や地域おこしに貢献しているものといえる。
そして、一般に、踊りを取り入れたイベントは、観光資源となり、その地域の振興につながり得るものであり、イベントに関連した商品やその地域の物産等が、土産物などとして製造、販売されているものである。
(3)本願商標は、上記踊りの名称と同一の文字からなるものであり、これを一私人たる出願人が自己の商標として独占排他的に採択し使用することは、その地域周辺の競合業者による使用を不可能又は困難とするばかりでなく、「よっちゃばれ踊り」の名称を用いて地域の活性化や観光振興を図る公益的な施策の遂行を阻害するおそれがあり適当でない。
してみれば、本願商標について一個人が独占排他的に使用することは、公正な取引秩序を害するおそれがあり、また、社会公共の利益に反するおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるようなそのような商標でないとしても、指定商品について独占排他的に使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念にも反するものというべきであるから、商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する。

3 請求人の主張について
請求人は、請求の理由において、本願商標の使用が「よっちゃばれ踊り」自体の実施及び「よっちゃばれ踊り」の名称を使用した各種イベント等の開催を禁止し、制限するものではないこと、それほどまでに「よっちゃばれ踊り」を保護する必要があることを示す資料が不足していること、過去の登録例に徴しても、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当しない旨主張している。
しかしながら、本願商標の同号該当性については、上記1の同号の趣旨にそって判断すべきであるところ、商標権が独占排他的な権利であることを踏まえるならば、本願商標は、上記2(3)のとおりであって、上記1の同号趣旨の(2)にあたるものであるから、上記請求人の主張は、採用することができない。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当し、登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2014-11-06 
結審通知日 2014-11-28 
審決日 2014-12-10 
出願番号 商願2012-104205(T2012-104205) 
審決分類 T 1 8・ 22- Z (W29)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 貴博北口 雄基 
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 内藤 順子
土井 敬子
商標の称呼 ヨッチャバレオドリ 
代理人 伊藤 將夫 
代理人 小林 弓子 

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