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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201411133 審決 商標
不服20139242 審決 商標
不服201413821 審決 商標
異議2013900096 審決 商標
不服201513171 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない W32
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W32
管理番号 1298331 
審判番号 不服2014-4524 
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-07 
確定日 2015-02-12 
事件の表示 商願2012-41509拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「ビイル」の片仮名を標準文字で表してなり、第21類「台所用品(「ガス湯沸かし器・加熱器・調理台・流し台」を除く。)」及び第32類「ビール,ビール風味の麦芽発泡酒,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」を指定商品として、平成24年5月24日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は「本願商標は、『ビイル』の文字を標準文字で表示してなるところ、該文字は、日本語の長音の表記において長音符(ー)でなく母音を表す仮名を用いていた時代に、『ビール』に当たる語として使用されていたものであり、このことは、昭和33年1月25日発行の国語辞典において、『ビイル』の項に『[麦酒]大麦の芽をかわかし砕いて水に入れ、ホップを加えて苦み・香味を与えたものを発酵(ハッコウ)させた飲料。』と、ビールの製法と同じ説明がされていることからも明らかである。また、別掲の新聞記事情報及びインターネット情報によれば、『ビイル』の語が一般に使用されていたことを窺い知ることができ、現在においても、ビール製造会社のホームページにおいて『ビール』に当たる語として使用されている実例が認められる。さらに、語句に含まれる長音の表示については、『メール』と『メイル』、『ネール』と『ネイル』等のように、長音符(ー)と母音を表す仮名の両方の使用が混在しており明確に使い分けがされていない事例もあることからすれば、『ビイル』の文字に接する需要者は、これを『ビール』の意味合いを理解するとみるのが相当である。以上からすると、本願商標をその指定商品中、第32類の『ビール』に使用するときは、該商品がビールであること、すなわち商品の品質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものであって自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと判断するのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の第32類の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)本願商標について
本願商標は、前記1のとおり、「ビイル」の片仮名を標準文字で表してなり、第32類「ビール,ビール風味の麦芽発泡酒,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」を指定商品中に含むものである。
(2)本願商標の構成文字である片仮名「ビイル」について
昭和29年6月に国語審議会が報告した「外来語の表記について」において、日本語における外来語の表記の中で長音を示すときに母音を重ねて表記していた表記は、長音符号を添えて示し、母音字を重ねたりしないとされ、平成3年6月28日に内閣告示された「外来語の表記」においても、長音は原則として長音符号を用いて書くとされ、その用例集の「ヒ」の項に「ビール」の例が示されている。
加えて、上記「外来語の表記」については、一般の社会生活において、現代の国語を書き表すためのよりどころを示すものであって、過去に行われた表記を否定するものでないとされている(別掲1)。
また、別掲1(3)に示すとおり、日本新聞協会における外来語表記の見直しが進んでおり、二重母音を長音で表すことは、より慣用が固定していると考えられるが、メークやブレークよりメイクやブレイクの方がかっこいい、との感覚も若者を中心にあって、実際にそう発音する人もいる旨の記事が掲載されている。
そして、別掲2に示すとおり、「ビイル」及び「びいる」の文字について、「麦酒」の意味を有する「ビール」を表すものとして使用されていることが認められる。
(3)本願商標の商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
以上のとおり、外来語の表記について、二重母音を長音で表す「ビール」と表示することが一般的であるものの、「ビール」の長音部分を二重母音で表して「ビイル」と表示していた過去の使用例(原審で示した辞書及び書籍)があったことと、「ビイル」及び「びいる」の使用例(別掲2)もあることからすると、「ビイル」の片仮名は、「ビール」を容易に認識するものであるといえ、本願商標の指定商品中「ビール」を表示したものと理解し得る。
また、本願商標の指定商品中、「ビール」を取り扱う業界においては、創業時等の「ビールの復刻版」を製造、販売している実情がうかがわれるから、各社において創業当時の表示を使用し得ることが想定でき、二重母音で表すような状況も否定できない。
そうとすると、本願商標の「ビイル」の片仮名からは、「麦酒」の意味を有する「ビール」を認識するものといえ、これを本願商標の指定商品中、「ビール」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「ビール」及び「麦酒」の意味を理解するにとどまり、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示するものであって、また、「ビール」以外の第32類に属する商品に使用するときは、「ビール」であるかのように商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるとするのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
(4) 請求人(出願人)の主張について
請求人(出願人)は、「ビイル」は造語と解しており、原審において、指定商品との関係で造語「ビイル」商標が「いかなる品質」を表示したものであるか指摘されていない。また、辞書情報において、掲載されている語が現在通用しているかどうかとは全く関係なく、単に字句を解説しているにすぎない書籍であり、さらに、識別力を否定する根拠とする使用例は極めて乏しい。識別力の判断は、査定時の取引社会における取引者・需要者の使用状況、又は、認識によるものであるから、本願商標に係る原査定は取り消されるべきである旨主張している。
しかしながら、外来語の表記について、長音を二重母音で表した過去の表示を否定するものでないこと、現在においても長音部分を「イ」で表したネイル、メイル、メイク、ブレイク、ロイヤル等の表示がなされていること、日本新聞協会における外来語の表記の見直しが進んでいる状況からすると、「ビイル」の片仮名からは、「麦酒」の意味を有する「ビール」を認識するものといえ、請求人が創作した造語とはいい難い。
また、「商標法第3条第1項第3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである」(東京高裁平成12年(行ケ)第76号 平成12年9月4日判決)とされ、この判示に照らせば、判断時において、当該商標が指定商品の品質を表すものと取引者、需要者に広く認識されている場合はもとより、将来を含め、取引者、需要者にその商品の品質を表すものと認識される可能性があり、これを特定人に独占使用させることが公益上適当でないと判断されるときには、その商標は、同号に該当するものと解するのが相当である。
そうとすれば、「ビイル」の文字は、別掲2に示すとおり、「ビイル」及び「びいる」の文字が「ビール」を表示するものとして使用されている実情から、本願商標に接する取引者、需要者において、商品「ビール」を容易に認識するといい得るものであるから、自他商品の識別標識としての機能を有さないものである。
さらに、請求人(出願人)は、自社の製造販売する「生ビール」について「新潟限定ビイル」と表示している事実があり、請求人(出願人)においても「ビール」を表示するものとして使用しているものであって、本願商標についての認定は上記のとおりであるから、請求人の主張は採用できない。
(5)結び
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものであり、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
1 外来語の表記について
(1)「5 外来語の表記について」(昭和29年3月国語審議会報告)をみると、「国語審議会は,外来語について,その書き表わし方が様々になっている現状にかんがみ,その基準を定める必要を認めて,術語・表記合同部会で審議してきた。昭和29年3月第20回総会で別紙のとおり部会における審議結果が報告された。」と記載され、外来語表記の原則の7に「長音を示すには,長音符号『ー』を添えて示し,母音字を重ねたり,『ウ』を用いたりしない。」の記載がある。
(2)文部科学省のウェブページの「外来語の表記/内閣告示第二号」(http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/k19910628002/k19910628002.html)には、「外来語の表記」の表題の下、「一般の社会生活において現代の国語を書き表すための『外来語の表記』のよりどころを、次のように定める。/平成三年六月二十八日」として、「前書き」に「1 この『外来語の表記』は,法令,公用文書,新聞,雑誌,放送など,一般の社会生活において,現代の国語を書き表すための『外来語の表記』のよりどころを示すものである。・・・4 この『外来語の表記』は,過去に行われた様々な表記(『付』参照)を否定しようとするものではない。」の記載、「[Roman3]撥音,促音,長音その他に関するもの」の項に「3 長音は,原則として長音符号『ー』を用いて書く。・・・注1 長音符号の代わりに母音字を添えて書く慣用もある。/[例]バレエ(舞踊) ミイラ/注2 『エー』『オー』と書かず,『エイ』『オウ』と書くような慣用のある場合は,それによる。/[例]エイト ペイント・・・」の記載がある。
また、「付録」の「用例集/凡例」として「2 外来語や外国の地名・人名は,語形やその書き表し方の慣用が一つに定まらず、ゆれのあるものが多い。この用例集においても,ここに示した語形やその書き表し方は,一例であって,これ以外の書き方を否定するものではない。」の記載とともに「【ヒ】」の項に「ビール」の記載がある。
(3)「(記者有識)外来語の表記『ウィ・ウェ・ウォ』でいい 門田耕作」(2012.10.27 朝日新聞 東京朝刊 12頁)の見出しの下、「昨年春、神戸の夜景や六甲山系の紅葉鑑賞に欠かせないロープウエーの一つ『新神戸ロープウェー』の名称が『神戸布引ロープウェイ』に変わった、と新聞が報じた。ここまで読んで、片仮名表記がバラバラなことに気づかれただろうか。同じ語でも世の中には様々な表記がある。新聞では一定のルールを設け、固有名詞以外は『ロープウエー』と書いているが、このままでよいのか。報道各社で作る日本新聞協会の用語部門で、外来語表記の見直しが進んでいる。・・・二重母音を長音で表すことは、より慣用が固定していると考えられるが、メークやブレークよりメイクやブレイクの方がかっこいい、との感覚も若者を中心にあるし、実際にそう発音する人もいる。」の記載がある。
2 「ビイル」及び「びいる」の語の使用例
(1)「ビイル」の片仮名についてみるに、「角川第二版 外来語辞典」(1984年11月10日 株式会社角川書店発行)の「ビール」の項に「大麦を主要原料とし,ホップを入れたアルコール飲料.『麦酒,名はビイルと申候』1724,『ビイル(酒名なり,少しく苦味ある者なり〉』高野長英『二物考』1836」の記載がある。
(2)平成23年9月号(No.516)文化庁月報のウェブサイト(http://www.bunka.go.jp/publish/bunkachou_geppou/2011_09/series_08/series_08.html)の「連載『言葉のQ&A』」には、「『檄(げき)を飛ばす』の意味」の表題の下、「文学作品から,『檄を飛ばす』の本来の使い方を見てみましょう。森林太郎(鴎外)が翻訳したエドガー・アラン・ポー『十三時』の結びです。・・・そこで天下の麦酒樽漬(ビイルたるづけ)のキャベツの好(すき)な人達(たち)に檄を飛ばして援(すくい)を求める。」の記載がある。
(3)「世界のビールが飲める びいる亭」のウェブサイト(http://www.yuso-group.com/beer/top.html)のトップページには、「世界のビール100種類以上が飲める!/びいる亭」と表示され、「秋田・青森県に全4店舗ある世界中のビールが飲める」の記載がある。
(4)「食べログ」の「びいる亭(ビイルテイ)」のウェブサイト(http://tabelog.com/aomori/A0202/A020201/2000225/)の「びいる亭の口コミ」の項に「宴会の2次会でよく使います/名前のとおり、世界のいろんな種類のビールがおいてあります。」の記載がある。
(5)「江戸野菜和食 江ど間」のウェブサイト(http://www.ac.auone-net.jp/~edoma/edoma_menu_drink.html)の「御品書」の「お飲物」には、「びいる」と表示され「ぷれみあむもるつ(生ビール)」、「五種類の味から二種類をご用意/小江戸びいる(埼玉県川越市)」と表示されている。
(6)「盛岡市の素人兄弟包丁 盛岡モリえもん」のウェブサイト(http://www.kamashu-ism.com/drink/)の「呑みもん/drink」の項に「生びいる」として「エビス」、「エビス黒」、「ワンサード(黒1/3、生2/3)」、「ハーフ&ハーフ(黒1/2、生1/2)」等の表示がされている。
(7)「KIRIN/キリンホールディングス」の「キリングループの歴史」のウェブサイト(http://www.kirinholdings.co.jp/company/history/person/beer/13.html)には、「書物に登場した『びいる』の文字」として「『びいる』とて麦にて造りたる酒あり。食後に用る者にて、飲食の消化をたすくるものといふ。
(大槻玄沢著『蘭説弁惑(らんせつべんわく)』)」の記載がある。


審理終結日 2014-12-08 
結審通知日 2014-12-15 
審決日 2014-12-24 
出願番号 商願2012-41509(T2012-41509) 
審決分類 T 1 8・ 272- Z (W32)
T 1 8・ 13- Z (W32)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 矢澤 一幸高橋 厚子 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 寺光 幸子
手塚 義明
商標の称呼 ビイル 
代理人 特許業務法人松田特許事務所 

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