• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y35
管理番号 1296200 
審判番号 取消2013-300795 
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-09-17 
確定日 2015-01-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5023859号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5023859号商標の指定商品及び指定役務中、第35類「全指定役務」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第5023859号商標(以下「本件商標」という。)は、「ブロマガ/BlogMag」の片仮名、スラッシュ記号及び欧文字を横書きしてなり、平成18年4月12日に登録出願、第9類「耳栓,加工ガラス(建築用のものを除く。),アーク溶接機,金属溶断機,電気溶接装置,オゾン発生器,電解槽,検卵器,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,自動販売機,ガソリンステーション用装置,駐車場用硬貨作動式ゲート,救命用具,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,スプリンクラー消火装置,火災報知機,ガス漏れ警報器,盗難警報器,保安用ヘルメット,鉄道用信号機,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,潜水用機械器具,業務用テレビゲーム機,電動式扉自動開閉装置,乗物運転技能訓練用シミュレーター,運動技能訓練用シミュレーター,理化学機械器具,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極,消防艇,ロケット,消防車,自動車用シガーライター,事故防護用手袋,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,防火被服,眼鏡,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,スロットマシン,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,運動用保護ヘルメット,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,レコード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,計算尺,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」、第35類「広告,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約購読の取次ぎ,速記,筆耕,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,求人情報の提供,自動販売機の貸与」、第38類「電気通信(放送を除く。),放送,報道をする者に対するニュースの供給,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」及び第42類「気象情報の提供,建築物の設計,測量,地質の調査,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,農業・畜産又は水産に関する試験・検査又は研究,機械器具に関する試験又は研究,著作権の利用に関する契約の代理又は媒介,社会保険に関する手続の代理,計測器の貸与,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,理化学機械器具の貸与,製図用具の貸与」を指定商品及び指定役務として、平成19年2月9日に設定登録されたものである。
そして、本件商標の指定商品及び指定役務中、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」については、同24年9月13日に商標権の一部取消し審判が請求され、同25年6月4日にその登録を取り消す旨の審決がされ、同年8月8日に審判の確定登録がなされたものである。
また、本件商標権について、株式会社ニワンゴに特定承継による本件の移転がなされており、その移転の申請の受付日は、平成25年8月13日である。
なお、本件審判の請求の登録は、平成25年10月7日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書、弁駁書及び口頭審理陳述要領書において、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べている。
1 請求の理由
被請求人は、本件審判の請求前3年以内(以下「要証期間」という。)に、継続して日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが、第35類「全指定役務」について、本件商標を使用していない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、その請求に係る上記指定役務について、取り消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)被請求人の答弁は、要証期間に日本国内において登録商標の使用をしていることの証明とはなりえない。
ア 被請求人は、動画サービス「niconico」の公式動画配信サイト「ニコニコチャンネル」に、2012年8月21日(火)より、ブログやメルマガなどの記事コンテンツを配信する新機能『ブロマガ』を付加したインターネットウェブサイトを立ち上げ、「ブロマガ」なる本件商標を使用している。
しかしながら、まさに、そのような「ブロマガ」商標の使用は、商品区分第35類の指定役務に関する使用ではなく、商品区分第42類、類似群42P02、42X11に属する役務(サービス)の使用に他ならない。
すなわち、答弁書の中で、「本件商標の使用について、被請求人が、自身が運営する動画配信サイト『niconico』(乙1)の中に、『ブロマガ』の名称にて新機能の提供を始めたのは、2012年8月21日であり、」と記載しているとおりである。
動画配信サイト「niconico」での「ブロマガ」なる商標の使用は、第42類、類似群42P02、42X11に属する役務(サービス)である。
被請求人は、前記の動画配信サイトの運営に当たって、「ブロマガ」商標を使用した「インターネットウェブサイトの設計・作成」を行っており、「インターネットウェブサイトを介してのコンピュータプログラムの提供」を行っており、「インターネット上の電子記憶空間(ウェブ空間)の提供」を行っており、「インターネット用ウェブページの編集、ホームページの作成」を行っており、「ウェブサイトにおける検索エンジンの提供」を行っており、「ウェブサイトのホスティング及びこれに関する情報の提供」を行っており、「ウェブサイトの開発」を行っており、「ウェブサイトの開発用ソフトウェアの設計・作成」を行っており、「ウェブサイトの更新」を行っており、「ウェブサイトのホスティング」を行っており、「ウェブベースのアプリケーションの一時的な使用の提供」を行っており、「ウェブポータルサイトのホスティング」を行っており、「ウェブポータルサイトの設計」を行っており、「ウェブログ(ブログ)のホスティング」を行っており、「ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供」を行っており、「クラウドコンピューティングの形態によって行われるコンピュータウェブサイトのホスティング」を行っており、「グローバルコンピュータネットワークのウェブサイトを介する電子計算機のプログラムの設計・作成」を行っており、「コンピュータネットワーク上で利用可能なウェブサイトの設計・作成」を行っており、「デザインをウェブページ上に表示等するための電子計算機のプログラムの作成」を行っており、「ホームページ及びウェブサイトのバージョンアップ」を行っており、「ユーザが定義した情報・個人プロフィール及び個人情報を特徴とするカスタマイズされたウェブページの設計・作成」を行っており、「双方向式のディスカッションの実施のためのオンラインウェブのホスティング」を行っており、「他人のウェブサイトへのリンクのための電子計算機用プログラムの提供」を行っており、「インターネットサイトにおけるウェブログ(ブログ)のホスティング」を行っており、「ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供」を行っており、「オンラインによるブログ作成用コンピュータプログラムの提供又はこれに関する情報の提供」を行っており、「インターネット上の情報を閲覧するためのコンピュータプログラムの提供」を行っており、「インターネット等の通信ネットワークを利用するプログラムの設計・作成」を行っているなど、ことごとく第42類、類似群42P02、42X11に属する役務(サービス)に商標「ブロマガ」を使用している。
イ 乙第1号証に示す「ブロマガ」の使用は、商品区分第42類、類似群42P02、42X11に属する役務(サービス)の使用であり、その他、乙第2号証ないし乙第5号証、及び乙第11号証、さらにはその他の乙号証、及び参考資料を考慮しても、これらは、第35類に関する役務の使用証拠ではなく、ことごとく前記した商品区分42類の類似群42P02、42X11に属するサービス行為そのものについての使用行為である。
すなわち、決して商品区分第35類の役務にかかる「ブロマガ」商標の使用ではない。
(2)以上より、被請求人による答弁書によっては、本件商標の使用は全く認められない。
3 口頭審理陳述要領書
(1)本件商標の構成について
本件商標は、「ブロマガ/BlogMag」と構成されており、「ブロマガ」との片仮名と「/」という記号と「BlogMag」との欧文字とを等間隔をもって横書きに一連一体に書されてなる一段書きからなる商標である。
そして、「ブロマガ/BlogMag」を構成する全ての構成要素、すなわち「ブロマガ」との片仮名と「/」という記号と「BlogMag」との欧文字が分離されることなく密接に結びついて、その全体が要部となる造語商標なのである。
すなわち、「ブ」、「ロ」、「マ」、「ガ」、「/」、「B」、「l」、「o」、「g」、「M」、「a」、「g」の全てが切り離されることなく密接に結びつき、一連一体になって等間隔、横書きに書されてなる造語商標である。
よって、本件商標の外観について考察する場合、本件商標をいずれの箇所においても切り離すことなく、「ブロマガ/BlogMag」として本件商標の外観を考察しなければならない。
また、本件商標の称呼につき考察する場合においても、本件商標は前述のように等間隔で一連一体に書され、かついずれの箇所においても切り離して考察できないので、「ブロマガスラッシュブログマグ」と称呼すべきものである。
なお、本件商標の観念についてであるが、前述のように本件商標は造語商標であり、もって本件商標からは観念は発生しない。
(2)本件商標の社会通念上同一と見られる範囲における使用について
本件商標は、「ブロマガ/BlogMag」と一連一体に書されてなり、全ての構成要素が分離されることなく密接に結びつき商標の要部とされる。
すなわち、本件商標は、その使用に際しては、「ブロマガ/BlogMag」と一段書きで、かついずれかの構成要素を削除したり、あるいはいずれかの構成要素から切り離して使用したりすることなく、あくまで「ブロマガ/BlogMag」との状態で使用しなければならない。
そのことを前提にして、本件商標における社会通念上同一の範囲での使用を考察しなければならない。
よって、本件商標から、例えば、「/」の構成要素も削除して使用の態様を考えることも、また「/」の構成要素を無視して使用の態様を考えることも本件商標の社会通念上同一範囲の使用の概念からは完全に外れてしまうことになる。
これに対し、被請求人が答弁書において答弁している本件商標の社会通念上同一の使用と主張する態様について考察すると、被請求人は、被請求人が提出した乙第4号証などにおいて「ブロマガ」なる片仮名の文字を使用しているから本件商標の使用を行っていると主張している。しかしながら、かかる答弁は誤った判断といわざるを得ない。
すなわち、本件商標「ブロマガ/BlogMag」を使用したと主張する「ブロマガ」という使用態様は、その外観、称呼のいずれをとってみても本件商標「ブロマガ/BlogMag」と「社会通念上同一」の使用とはいえない。
本件商標は、「ブロマガ/BlogMag」と一段の横書きで等間隔をもって密接に結びつき一連一体に書されてなる商標であり、決して「ブロマガ」と「/BlogMag」とに分離して判断できない商標だからである。
(3)「/BlogMag」の使用について
被請求人は、乙第5号証などを提出して「/BlogMag」の使用も行っていると主張する。
しかしながら、乙第5号証などに示されたものは、サイトのアドレス名、「http://ch.nicovideo.jp/portal/blomaga」であり、その記載は、決して本件商標「ブロマガ/BlogMag」を使用したものではない。
百歩譲ってサイトのアドレス名、「http://ch.nicovideo.jp/portal/blomaga」の使用が商標の使用だとしても、当該サイトのアドレス名、「http://ch.nicovideo.jp/portal/blomaga」の使用が、本件商標「ブロマガ/BlogMag」の社会通念上同一と認められる商標の使用とは考えられない。
(4)片仮名「ブロマガ」の周知・著名性について
被請求人は、片仮名「ブロマガ」が1ヶ月足らずで、周知、著名になり、よって、本件商標の欧文字の部分は注意を引かず、かつ欧文字の部分も同じく「ブロマガ」と称呼するので、称呼が同一となり、「ブロマガ」の使用は本件商標「ブロマガ/BlogMag」の社会通念上同一と認められる商標の使用であると主張している。
しかし、被請求人が使用したという商標「ブロマガ」の称呼は「ブロマガ」である。これに対し、本件商標の称呼は「ブロマガスラッシュブログマグ」である。
「/」の部分の称呼を「アルイハ」、「マタハ」としてみても「ブロマガアルイハブログマグ」、「ブロマガマタハブログマグ」である。さらに「/」の部分に称呼はないとしてみても「ブロマガブログマグ」である。
「ブロマガ/BlogMag」との一段書きの一連一体の商標構成から、「ブロマガ」のみの称呼が生ずるとはあり得ない。
被請求人は、参考資料4ないし6を提出して、本件商標が「ブロマガ」と称呼するのは正当と主張するが、参考資料の例はいずれも二段書きに書された商標の例であり、本件商標のように「ブロマガ/BlogMag」と一段書きで密接に結びつき一連一体に書された商標に適用されるものではない。
2 本件商標の使用に係る役務について
被請求人の「ブロマガ」の使用は、第35類、広告又はインターネットにおけるウェブサイトの広告用スペースの提供(「広告、広告用具の貸与」に含まれる。)に使用されたものではない。
そもそも、被請求人の「ブロマガ」などの使用は、被請求人から提出された証拠書類を参照してみても、第35類、広告又はインターネットにおけるウェブサイトの広告用スペースの提供(「広告、広告用具の貸与」に含まれる。)に使用されたものではない。
被請求人が提出した証拠書類における商標の使用は、いずれも第42類、42X11の範囲における商標の使用に他ならない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由を答弁書、答弁書(その2)及び口頭審理陳述要領書において要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第21号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 答弁の理由
(1)本件商標を使用している役務について
ア 被請求人は、我が国最大級の動画配信サイト「niconico」の運営会社である(乙1)。「niconico」サイトの中には、WEBサイト上で再生される動画にコメントを付けられる「ニコニコ動画」や、生放送番組にリアルタイムでコメントを付けられる「ニコニコ生放送」等の各種サービスがあり(乙2)、さらに、2012年8月21日から、「ブロマガ」の商標にて、テキストコンテンツ配信サービスの提供を、新たに開始した(乙1及び乙2)。
「ブロマガ」ページでは、ユーザーが自身のブログをすぐに開設可能であり、そこに投稿した記事を読者にメールで配信することができたり、或いは読者が記事を電子書籍としてダウンロード形式により購入することができる(乙3)。
一方、「niconico」サイトでは、広告会社等を通じて広告枠を販売しており(乙2)、この広告は、「ブロマガ」のページにも掲載されている(乙4)。このように、被請求人は、「ブロマガ」サイトのページにおいて、有償で広告枠を提供している。
イ 第35類「広告」に関しては、「広告とは、第三者が、広告主のために、広告主を明示して、他人を介さずに広告主の商品、サービス、アイディア等について消費者に告知、説得する行為であると解されるところ、広告媒体は広告を消費者層に対して伝達するための手段であるから、広告媒体を有する者が、反復継続して自己の広告媒体を提供し、これに広告を掲載している場合には、仮に広告主と広告媒体を提供する者との間に広告代理店等の第三者が介在したとしても、指定役務第35類の広告役務を行っていることとなる」と判断した判決が存在する(参考資料1)。
このような判決の判断にのっとれば、本件においても、「ブロマガ」のページにおいて、「ニコニコチャンネルブロマガ」の文字の右横に、第三者の広告(乙4においては、ネットショッピングショッピングモール「楽天市場」の広告)が表示されているのであるから、広告媒体を有する者(被請求人)が、反復継続して自己の広告媒体を提供しているといえる。
さらに、「ブロマガ」の商標は、電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たり、その映像面(即ち、「ブロマガ」のサイト)に標章を表示して役務を提供(即ち、第三者の広告を掲載)をしているのであるから、商標法第2条第3項第7号により、被請求人は、第35類「広告」、あるいは「インターネットにおけるウェブサイトの広告用スペースの提供」(「広告,広告用具の貸与」に含まれる。)について、「ブロマガ」商標を使用しているといえる。
なお、乙第4号証のサイトの写しは、平成25年12月17日に印刷されたものであり、その日付が印刷されている。しかしながら、被請求人は、遅くとも本件商標登録を譲り受けた平成25年8月13日の時点で、「ブロマガ」のサイト上にて、広告を掲載していた。
(2)使用商標と登録商標の同一性について
ア 本件商標は、片仮名「ブロマガ」と欧文字「BlogMag」がスラッシュ「/」を挟んで横一連に書された態様である。
一方、被請求人は、乙第3号証に表れるような態様の「ブロマガ」(ロの部分が、メモ書きとペン図形になっている)を使用する一方、例えば「ブロマガ」のサイトのトップページでは、通常の片仮名「ブロマガ」(以下「使用商標」という場合がある。)を使用し、かつ当該ページのURLでは「http://ch.nicovideo.jp/portal/blomaga」のように「/blomaga」の欧文字を使用している(乙5)。
イ なお、ドメイン名については、「ドメイン名がその登録者を識別する機能を有する場合があることからすれば、ドメイン名の登録者がその開設するホームページにおいて商品の販売や役務の提供をするときには、ドメイン名が、当該ホームページにおいて表れる商品や役務の出所を識別する機能をも具備する場合があると解するのが相当である」旨判断している判決が存在する(参考資料2)。このような判決を考慮すれば、ドメイン名と同様に使用者を識別する機能を有する場合があるURLが、当該サイトにおいて表される役務の出所を識別する機能をも具備する場合があると解することが相当である。したがって、被請求人は、「ブロマガ」の片仮名と、「/blomaga」の欧文字を、サイト上で商標として使用していると考えることが可能である。
ウ 次に、使用商標と本件商標の同一性につき検討する。本件商標の欧文字「BlogMag」は、4文字目に「g」を含んでいるが、被請求人使用の欧文字「blomaga」では4文字目「g」がなく、語尾に「a」がある。また、本件商標では「B」と「M」が大文字であるが、使用商標は全て小文字である。よって、両者には外観上若干の差異がある。しかしながら、被請求人による使用商標は、登録商標と「社会通念上同一と認められる商標」に該当するものであるので、以下この点を説明する。
まず、大文字と小文字の差異については、特許庁審判便覧53-01において、「ローマ字の大文字と小文字の相互間の使用」は、登録商標の使用と認められる事例として列挙されている(乙6)。したがって、本件商標と使用商標の欧文字部分において、「B/b」「M/m」について大文字・小文字の差異があったとしても、使用商標は登録商標の使用と認められる。
また、欧文字の「g」「a」の有無については、以下のように考える。
不使用商標の存在によって商標採択の機会を不当に奪うことを防ぐという、不使用取消審判制度の目的よりすれば、商標法第50条第1項の括弧書きは、あくまで登録商標と社会通念上同一と認められる商標の例示的列挙にすぎず、例示列挙されたもの以外にも「その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」が含まれることは明らかである。そして、「社会通念上同一」の判断は、「登録商標の構成において基本をなす部分を変更するものでなく、当該登録商標が有する独自の識別性に影響を与えない」か否かを基準に行われる(参考資料3)。
また、ローマ文字と、その発音を日本語で表記した仮名文字との2段併記からなる登録商標に関して、登録商標と使用商標とで、仮名文字部分である「リトルワールド」は同一であるものの、ローマ文字部分(「LITTLEWORLD」及び「LITTLWORLD」)に「E」の有無という「一見したのみでは気付きがたい」(判示より引用)相違があった場合において、「外観において若干の相違があるとはいえ、称呼及び観念を共通にするものと認められる」ことを理由として、社会通念上の同一性を認めた事例がある(昭和63年(行ケ)第269号/東京高判平成2年2月20日 判時1350号134頁「リトルワールド事件」)。
被請求人による使用商標「ブロマガ」及び「/blomaga」は、本件商標「ブロマガ/BlogMag」の欧文字部分の4文字目「g」をなくし、語尾に「a」を付加したにすぎない。このような綴りの差異は、一見したのみでは気付きがたいことから、本件商標の構成において基本をなす部分を変更しているとはいえず、本件商標の有する独自の識別性にも影響を与えていないと考える。さらに、両者は称呼を共通にするものである。観念については、「ブロマガ」は、「ブログ」と「メルマガ」を結合させた造語であると考えられ、ここから生じる漠然とした観念は、本件商標と使用商標において共通していると考えることが自然である。
エ 以上より、不使用取消審判の制度目的、商標法第50条第1項括弧書きの規定の趣旨、及び「社会通念上同一」の判断基準等を総合的に考慮すれば、被請求人による使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認定されるべきである。
なお、乙第5号証のサイトの写しは、平成25年12月20日に印刷されたものであり、その日付が印刷されているが、被請求人は、遅くとも平成25年8月13日の時点で、上述の使用商標と同一の商標を、サイト上にて使用していた。
(3)以上より、本件商標は、要証期間に日本国内において被請求人が「広告」又は「「インターネットにおけるウェブサイトの広告用スペースの提供」に使用した結果、業務上の信用が化体しているものであり、本件審判の取消の対象とはなりえない商標である。
2 答弁書(その2)
(1)本件商標を使用している役務について
ア 被請求人は、株式会社ドワンゴ(以下「ドワンゴ社」という。)と共同で運営しているウェブサイト「ブロマガ」を含む動画サイト「niconico」上に掲載されるインターネット上の広告枠を、広告会社等を通じて販売している。
乙第7号証として、弊所依頼人の親会社であるドワンゴ社が、Google Ireland Limited(以下「Google社」という。)との間で、2013年6月に締結した「AdX(アドエクスチェンジ)」に関する契約書の写し、及びその参考翻訳文を添付する。
イ 「AdX(アドエクスチェンジ)」とは、オンライン広告のうち、特定の広告枠におけるインプレッション(ウェブサイトが読み込まれた回数)を入札方式によって売買する方式を意味する(乙8)。「ブロマガ」サイト上の広告枠は、Google社を通して、間接的に第三者(広告主)に販売され、「ブロマガ」上に表示された広告のインプレッション(ウェブサイトが読み込まれた回数)によって、Google社から広告料が支払われる。
Google社との契約は、親会社であるドワンゴ社の名義で行われている一方、「ブロマガ」サイト上に広告を表示(掲載)するための実際の作業は、ドワンゴ社の子会社(出資比率:100%)である株式会社ドワンゴコンテンツ(以下「ドワンゴコンテンツ社」という。)が行っている(乙9)。具体的な作業としては、Google社の広告掲載管理サイトヘアクセスして、広告を表示させるためのコードを生成するのに必要な情報(広告枠の名称、サイズ)を入力し、生成されたコードを「ブロマガ」等の広告枠に設定することで、Google社から広告枠を購入した企業の広告が、当該広告枠に表示(掲載)される仕組みである(乙10)。
ウ 上記イで述べた作業は、ドワンゴコンテンツ社の永山隆浩氏により行われていたが、同氏による証明書(乙10)によると、当該作業は平成25年6月19日に1回、同年10月4日に1回行われた。そして、この6月19日から10月4日までの間、「ブロマガ」のサイト上には、Google社から送信される広告枠購入社の広告が、掲載されていた(乙10)。
エ このように、Google社とドワンゴ社との間で締結された「AdX」に関する契約の存在(乙7)、サイト上に広告を表示させる実際の作業を行っていた永山隆浩氏による証明書(乙10)、並びに実際の広告が表示された「ブロマガ」サイトのトップページの写し(印刷日は2013年12月17日)(乙4)の各証拠に基づけは、少なくとも平成25年6月19日から10月4日までの間、継続的に「ブロマガ」サイト上に広告が表示されていたことが、十分に推認できる。
同様に、「ブロマガ」の片仮名、及びURL中の「/blomaga」の欧文字についても、同期間内にサイト上で表示(使用)されていたことも推認できる。
オ 被請求人は、ドワンゴ社が出資する(出資比率80.1%)子会社であり(乙9)、「ブロマガ」を含む動画サイト「niconico」を共同で運営している関係にある(乙1)。
「ブロマガ」サイト上の広告枠の販売については、Google社との契約はドワンゴ社が行っているが、実際には被請求人の許諾を得て(あるいは代理として)当該広告枠の販売を行っているのであり、両社の間には広告業務における本件商標の使用に関して、黙示の使用許諾が存在していた、即ちドワンゴ社は、本件商標の使用許諾を受けた通常使用権者である。
(2)以上のとおり、被請求人、及び通常使用権者であるドワンゴ社は、共同で運営する「ブロマガ」サイト上に広告枠(広告媒体)を有しており、反復継続して自己の広告媒体を提供し、これに広告を掲載していたのであるから、第35類の「広告」役務、あるいは「インターネットにおけるウェブサイトの広告用スペースの提供」を行っている。
3 口頭審理陳述要領書
(1)本件商標が社会通念上同一の商標であることについての意見
ア 答弁書及び答弁書(その2)においては、被請求人使用の「ブロマガ」及び「blomaga」の文字は、本件商標と社会通念上同一の商標である旨、主張をしていた。仮に「blomaga」の使用が、本件商標と社会通念上同一の商標の使用とは認められないとしても、少なくとも片仮名「ブロマガ」のみの使用は、本件商標と社会通念上同一の商標の使用と認められるべきと考える。
イ 乙第4号証において、画像中央よりやや左上部分、「ニコニコチャンネル」の文字の右横に「ブロマガ」の片仮名が表示されている。このことから明らかなように、被請求人は、片仮名「ブロマガ」のみを、第35類「広告」又は「インターネットにおけるウェブサイトの広告用スペースの提供」(「広告、広告用具の貸与」に含まれる。)に使用している。
ウ 被請求人は、同社の運営するサイト「ニコニコチャンネル」の動画提供者が投稿した文字や写真等で構成されたブログ記事を、メールマガジン又は電子書籍として、ユーザーに配信することを可能とするブログ記事配信サービスを企画し、その名称に「ブログ&(メール)マガジン」の文字の一部を使用した「ブロマガ」を使用している。そして、被請求人は「ブロマガ」サイト上に掲載されるインターネット上の広告枠を、広告会社等を通じて販売している。
同ブログ記事配信サービス「ブロマガ」は、インターネットユーザーの間で人気を博し、遅くとも平成24年9月の時点において、片仮名「ブロマガ」商標は、被請求人に係る第35類「広告」又は「インターネットにおけるウェブサイトの広告用スペースの提供」について、周知・著名なものとなっていた。
エ 具体的には、2012年(平成24年)8月21日からサービスを開始した被請求人提供の記事配信サービス「ブロマガ」(乙1)は、わずか1か月足らずの同年9月18日付で、「ブロマガ」を配信しているチャンネルの有料登録者数が1万人を突破し(乙7)、3か月足らずの同年12月12日には同有料登録者数は3万人を突破する(乙8)など、サービス開始当初から、多くのユーザーの支持を得ていたものである。
また、上記平成24年8月21日のサービス開始は、各種新聞でも取り上げられており(乙9?乙12)、当初から高い注目を集めていたことをうかがい知ることができる。
その後も、「ブロマガ」を配信しているチャンネルの有料登録者数は順調に増え、本件審判の登録日直後の平成25年10月27日には合計10万人を突破し(乙13)、その後1年足らずで、平成26年8月14日には合計20万人を突破した(乙14)。
また、本件審判の請求の登録日後ではあるが、遅くとも平成26年3月25日の時点で、「ブロマガ」の語は、「IT用語辞典」にて「niconicoがニコニコチャンネルの追加機能として提供している記事配信サービスの名称である」と記載されており、このことからも「ブロマガ」商標が、被請求人に係る商標として広く一般的に知れ渡っていたことがわかる(乙15)。
オ このように、被請求人の片仮名「ブロマガ」商標は、本件審判の請求の登録日以前の平成24年9月の時点で、既に被請求人が提供する第35類「広告」又は「インターネットにおけるウェブサイトの広告用スペースの提供」に係る商標として、取引者、需要者間で周知著名になっていたものである。
そうすると、本件商標に接する需要者、取引者にとっては、「ブロマガ/BlogMag」のように構成されている本件商標のうち、「ブロマガ」の片仮名こそが、その周知・著名性故に、圧倒的に注意を惹く部分、即ち高い識別性を発揮する部分として認識されるといえる。
カ そして、本件商標に接する需要者、取引者にとっては「ブロマガ/BlogMag」のように構成されている本件商標のうち、「プロマガ」の片仮名が特に注意を惹く部分であって、「BlogMag」は中間部の「g」や語尾の「a」の文字の有無という差異点があるにしても、殊更これらの差異点が着目されることなく捨象され、片仮名「ブロマガ」を単に英語風に表記したものと理解するのが自然なものであるから、「ブロマガ」と称呼される。
キ 欧文字「BlogMag」部分については、そもそも「ブロマガ」の語が、「ブログ/Blog」と「(メール)マガジン/Magazine」を結合させた造語「ブログマガジン/BlogMagazine」の略と考えられるところ、例えば「メールマガジン」が「メルマガ」と略されること等に基づくと、「ブログマガジン」が「ブロマガ」と略されることは容易に想像できる。
そして、本件商標の欧文字「BlogMag」との関係でも、片仮名「ブロマガ」は自然的称呼といい得る。なぜなら、英単語において「g」が発音されないケースは散見されるため(例えば、「Hong Kong」「assign」「design」「foreign」「high」「light」「night」「reign」「right」「rough」「sign」等)、本件商標の欧文字部分中の「Blog」を、「ブロ」と称呼することについて、取引者、需要者はさほど違和感はなく自然な称呼として認識するものと考えられる。また、「Mag」は、「Magazine」の略語として広く一般的に知られているから(乙16)、本件商標の欧文字部分中の「Mag」を「マガジン」の略として「マガ」と称呼することについても、何ら違和感はない。
よって、上述の片仮名「ブロマガ」の周知・著名性をも考慮すると、取引者、需要者にとっては、本件商標中の欧文字部分は、単に片仮名「ブロマガ」を英語風に表記したものと理解するのが自然であり、「ブロマガ」と称呼される。
ク また、「ブロマガ」と「BlogMag」は、いずれも特定の観念の生じない造語というべきものであるが、被請求人の提供する「ブログ&(メール)マガジン」(ブログ記事配信サービス)を指称する語、という意味での共通の観念が生じるといえる。
ケ 以上のとおり、被請求人は実際の使用において、片仮名部分「ブロマガ」のみを使用しており(乙4)、欧文字「BlogMag」が併記されていない点で本件商標とは異なる。しかしながら、「BlogMag」の語は「ブロマガ」と自然に称呼し得るものであるから、片仮名「ブロマガ」と欧文字「BlogMag」が称呼において共通する。
また、「BlogMag」「ブロマガ」の各語は、我が国においては造語の一種であって確立した観念が存在しないものの、被請求人の提供する「ブログ&(メール)マガジン」(ブログ記事配信サービス)を指称する語という意味での観念は共通する。
さらに、片仮名「ブロマガ」は、被請求人提供に係る第35類「広告」又は「インターネットにおけるウェブサイトの広告用スペースの提供」について、平成24年9月の時点で既に周知著名になっており、欧文字「BlogMag」に比べて圧倒的に強い識別性を発揮している一方、欧文字「BlogMag」は単に片仮名「ブロマガ」を英語表記風に記載したと認識される程度ある。このような片仮名「ブロマガ」の周知・著名性を考慮すると、本件商標「ブロマガ/BlogMag」と、使用商標「ブロマガ」は、被請求人の提供する役務の出所を表示するという識別性の観点において全く異なる点が見当たらない。
以上から、本件商標と使用商標は同一の称呼及び観念が生じる商標であり、欧文字の有無は両者の識別性には何らの影響も及ぼさないから、両者は、社会通念上同一といって差し支えない。
コ なお、特許庁の過去の複数の不使用取消審判でも、「造語である欧文字」と、「その称呼である片仮名文字」を二段に書した構成の登録商標について、片仮名部分のみを使用した場合でも、使用商標と登録商標とは称呼が同一であることから(造語なので観念は比較できない)、社会通念上同一の商標の使用と認められている(参考資料4?6)。これらの審決例では、造語ゆえに観念の同一性が認定できないにもかかわらず、称呼の同一性を以って社会通念上同一と認めている。本件では、称呼の同一性が認められ、かつ造語であっても観念の同一性も認められるのであるから、上記のような審決例に基づけば、社会通念上の同一性が認められるべき事案と考える。
(2)弁駁書に対する意見
請求人は、「被請求人は、運営する動画サービス『niconico』の公式動画配信サイト『ニコニコチャンネル』に、ブログやメルマガなどの記事コンテンツを配信する新機能『ブロマガ』を付加したインターネットウェブサイトを立ち上げ、『ブロマガ』なる本件商標を使用しているが、かかる使用は、商品区分第42類、類似群42P02、42X11に属する役務(サービス)の使用に他ならず、第35類に属する使用ではない。」という趣旨の主張をしている。
しかしながら、被請求人が答弁書において主張した「第35類 広告」又は「第35 インターネットにおけるウェブサイトの広告用スペースの提供」への本件商標の使用に関し、これがなぜ第35類の指定役務についての使用には該当しないのかという点については何ら具体的な理由を述べていない。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出した証拠
(1)乙第1号証は、2012年8月21日付けのドワンゴ社及び被請求人による「PRESS RELEASE」であって、「ニコニコチャンネルにて記事コンテンツ配信機能『ブロマガ』を開始」の見出しがあり、「両者が運営する日本最大級の動画サービス『niconico』(・・・)の公式動画配信サイト『ニコニコチャンネル』に、8月21日(火)、ブログやメルマガなどの記事コンテンツを配信する新機能『ブロマガ』を投入しました。」の記載がある。
(2)乙第2号証は、ドワンゴ社及び被請求人の作成による資料とされるものであり、表紙には、「ニコニコチャンネル/NiCONiCO CHANNEL/チャンネル開設のご案内/2013年5月更新版」の記載がある。
また、その29頁には、「広告枠のご案内」の表示があり、30頁から32頁にかけて「広告枠のご活用」、「オススメ広告:サイドウォール」、「各種お問い合わせ」の項目が表示されており、インターネットのウェブサイトにおける広告枠を提供している内容の記載がある。
(3)乙第3号証は、「ブロマガ(審決注:「ロ」の文字は図案化されている。)/ブログ&メールマガジン」のインターネットのウェブサイトであり、これには、「ブロマガ」についての機能の説明が記載されている。
(4)乙第4号証は、「ニコニコチャンネル ブロマガ」のウェブサイトの画面のハードコピーであり、そのサイト画面の上段には、左側に「ニコニコチャンネル ブロマガ」の文字が表示され、右側に広告枠があり、「ゴルフ用品大特集」及び「バッグ・小物・ブランド大特集」の広告がなされている。なお、印刷日は、「2013/12/17」の記載がある。
(5)乙第5号証は、「ブロマガ」のウェブサイトのトップページとされるものであり、これには、「ブロマガ」の文字が記載され、そのページのURLとして「http//ch.nicovideo.jp/portal/blomaga」が表示されている。
(6)乙第10号証は、ドワンゴコンテンツ社の永山氏による「証明書」であり、その内容は、同社は、ドワンゴ社の完全子会社であり、ドワンゴ社とニワンゴ社が共同で運営するウェブサイト「ブロマガ」や動画サイト「niconico」内に表示されるインターネット上の広告に関連する業務を行っている、等というものである。
2 認定事実
被請求人の提出した証拠及びその主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)商標の使用者、役務の提供及び使用時期について
ドワンゴ社及び商標権者であるニワンゴ社が運営する公式動画配信のウェブサイト「ニコニコチャンネル」においては、2012年8月21日から新たにブログやメルマガなどの記事コンテンツによる情報発信を行っているものである(乙1)。
そして、2013年5月更新版の「ニコニコチャンネル/NiCONiCO CHANNEL/チャンネル開設のご案内」の資料においては、広告枠の案内がなされており、そのウェブサイト内に広告を掲載するサービスが紹介されているものである(乙3)。
また、乙第4号証の「ニコニコチャンネル」のウェブサイトには、第三者による広告がなされていることが確認できる。なお、このウェブページは、2013年12月17日に印刷されているものの、上記2013年5月更新版の資料において広告枠の案内がなされており、さらに、ウェブサイト内において広告枠が提供されることが一般的であることからすると、要証期間である平成22年10月7日から平成25年10月6日までの間において、ドワンゴ社及びニワンゴ社によって、「広告」及び「インターネットにおけるウェブサイトの広告用スペースの提供」の役務が提供されていたものと推認できる。
ただし、本件商標権については、ニワンゴ社に特定承継による本件の移転がなされ、その移転の申請の受付日が平成25年8月13日であることから、ニワンゴ社は、その譲渡契約が成立したときから商標権者となったものであり、それ以降が商標権者としての商標の使用を証明する期間となるものである。
してみれば、商標権者であるニワンゴ社は、共同で運営する公式動画配信サイト「ニコニコチャンネル」において、商標権者となった平成25年8月13日頃から平成25年10月6日までの間において、「広告」及び「インターネットにおけるウェブサイトの広告用スペースの提供」の役務を提供していたものといえる。
(2)本件商標の使用について
ア 使用に係る商標とその役務について
乙第4号証の「ニコニコチャンネル」のウェブサイトには、第三者による広告がなされており、そのウェブページの上部左側には、「ブロマガ」の文字が表示されている。
この場合、種々のサービスが提供されている「ニコニコチャンネル」のウェブサイトに「ブロマガ」の商標が使用されているといえるものであって、その中には、同時に「広告」及び「インターネットにおけるウェブサイトの広告用スペースの提供」の役務が提供されているものであるから、その商標の使用は、これらの広告の役務について使用されているものとみて差し支えないものというべきである。
イ 使用商標「ブロマガ」が、本件商標と社会通念上同一であるかについて
商標法第50条に規定する商標登録の取消審判における「登録商標」には、いわゆる「社会通念上同一の商標」を含むものであり、「その社会通念上同一の商標」と認められるものは、例えば、「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標」などである。
本件商標は、「ブロマガ/B1ogMag」の片仮名、スラッシュ記号及び欧文字を書してなるものである。
これに対し、乙第4号証のウェブページには、本件商標中の「ブロマガ」の片仮名部分と同一の文字からなる「ブロマガ」の片仮名が表示されてはいるものの、その余の構成部分の「/B1ogMag」は表示されていない。
そして、本件商標の片仮名の「ブロマガ」と欧文字の「B1ogMag」とは、片仮名の「ブロマガ」を欧文字で表すのであれば「blomaga」とするのが一般的であるといえ、また、欧文字の「B1ogMag」を片仮名で表すのであれば「ブログマグ」とするのが一般的であるといえるから、両文字の表示においては、片仮名とローマ字の文字を相互に変更できる関係にはないというのが相当である。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「ブロマガブログマグ」の称呼を生ずるのに対し、使用商標の「ブロマガ」の片仮名からは、「ブロマガ」の称呼を生ずるものである。また、本件商標及び「ブロマガ」の片仮名からは、直ちに特定の観念が生じないものである。
してみれば、少なくとも、その構成部分の一部である「ブロマガ」の片仮名が使用されているというのみでは、本件商標についての「片仮名及びローマ字の文字を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」ということができない。
なお、提出されたその他の証拠においても、「B1ogMag」の文字の使用は一切見あたらない。
したがって、使用商標の「ブロマガ」の片仮名は、本件商標と社会通念上同一の商標ということができない。
(3)小括
してみれば、提出された証拠からは、被請求人によって、本件要証期間において、商標法第2条第3項第7号に該当する商標の使用行為、及びその他の同各号に該当する商標の使用行為が本件商標について行われたものということはできない。
3 請求人の主張について
請求人は、「しかしながら、『BlogMag』の語は『ブロマガ』と自然に称呼し得るものであるから、片仮名『ブロマガ』と欧文字『BlogMag』が称呼において共通する。また、『BlogMag』『ブロマガ』の各語は、我が国においては造語の一種であって確立した観念が存在しないものの、被請求人の提供する『ブログ&(メール)マガジン』(ブログ記事配信サービス)を指称する語という意味での観念は共通する。さらに、片仮名『ブロマガ』は、被請求人提供に係る第35類『広告』又は『インターネットにおけるウェブサイトの広告用スペースの提供』について、平成24年9月の時点で既に周知著名になっており、欧文字『BlogMag』に比べて圧倒的に強い識別性を発揮している一方、欧文字『BlogMag』は単に片仮名『ブロマガ』を英語表記風に記載したと認識される程度ある。このような片仮名『ブロマガ』の周知・著名性を考慮すると、本件商標『ブロマガ/BlogMag』と、使用商標『ブロマガ』は、被請求人の提供する役務の出所を表示するという識別性の観点において全く異なる点が見当たらない。以上から、本件商標と本件使用商標は同一の称呼及び観念が生じる商標であり、欧文字の有無は両者の識別性には何らの影響も及ぼさないから、両者は社会通念上同一といって差し支えない。」旨、主張している。
しかしながら、「BlogMag」の文字からは、通常、「ブログマグ」と称呼するのが自然であり、殊更に「Blog」を、「ブロ」と称呼したり、「Mag」を「Magazine」の略語として「マガ」と称呼したりすることは考えられないことであるから、該「BlogMag」の文字を「ブロマガ」とは称呼しないものである。
また、「ブロマガ」及び「BlogMag」の文字は、ともに造語であって特定の観念が生じないものであるから、両語が直ちに被請求人の提供する「ブログ&(メール)マガジン」(ブログ記事配信サービス)を指称する語として理解され、観念されることはないというべきである。
さらに、「ブロマガ」の片仮名が被請求人の提供する役務である第35類「広告」について、平成24年9月の時点で既に周知著名になっているとの主張については、その提供する役務である「広告」について、使用商標が広く広告宣伝されているなど、周知、著名性を窺わせる証拠の提出も殆どなされていないものであるから、その周知、著名性は認められないものである。
してみれば、その周知、著名性を根拠に本件商標「ブロマガ/BlogMag」と使用商標「ブロマガ」が、被請求人の提供する役務の出所を表示するという識別性の観点において全く異なる点が見当たらない、との主張は、妥当でないものである。
よって、請求人の主張は、いずれも採用の限りでない。
4 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件取消の請求に係る第35類の指定役務について、本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)の使用をしていたことを証明したということはできない。
また、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品及び指定役務中の「結論掲記の指定役務」について、商標法第50条の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-11-28 
出願番号 商願2006-38345(T2006-38345) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y35)
最終処分 成立  
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 田中 亨子
井出 英一郎
登録日 2007-02-09 
登録番号 商標登録第5023859号(T5023859) 
商標の称呼 ブロマガ、ブログマグ 
代理人 伊藤 儀一郎 
代理人 柳生 征男 
代理人 伊藤 博昭 
代理人 富所 英子 
代理人 青木 博通 
代理人 中田 和博 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ