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審決分類 審判 一部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z25
管理番号 1294977 
審判番号 無効2003-35317 
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-07-25 
確定日 2009-02-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第4600778号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成16年11月29日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成17年(行ケ)第10245号平成17年9月14日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第4600778号の指定商品中、第25類「ゴルフ用ウインドブレ-カー,ゴルフ用レインウエア」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4600778号商標(以下「本件商標」という。)は、「POLO GOLF」の欧文字を標準文字により書してなり、平成13年9月28日に登録出願、第25類「ゴルフ用ウインドブレーカー,ゴルフ用レインウエア,ゴルフ用靴」及び第28類「ゴルフクラブ,ゴルフボール,ゴルフ用パター練習具,キャディバッグ,ゴルフ用手袋,ゴルフクラブヘッドカバー,その他のゴルフ用具」を指定商品として、同14年8月30日に設定登録されたものである。
第2 請求人の引用商標
請求人は、本件商標の登録無効の理由に、次の(1)ないし(6)の登録商標を引用している。
(1)登録第1434359号商標(以下「引用商標A」という。)は、「POLO」の欧文字を横書きしてなり、昭和47年6月13日に登録出願、第17類「ネクタイ、その他本類に属する商品、但し、ポロシャツ及びその類似品ならびにコートを除く」を指定商品として、同55年9月29日に設定登録され、その後、平成2年9月20日及び同12年4月18日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。
(2)登録第1447449号商標(以下「引用商標B」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、昭和47年4月22日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同55年12月25日に設定登録され、その後、平成2年12月21日及び同12年9月5日に商標権存続期間の更新登録がされ、指定商品については、平成13年2月14日の書換登録により、第5類「失禁用おしめ」、第9類「事故防護用手袋,防火被服,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク」、第10類「医療用手袋」、第16類「紙製幼児用おしめ」、第17類「絶縁手袋」、第21類「家事用手袋」、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」となったものである。
(3)登録第2721189号商標(以下「引用商標C」という。)は、「POLO」の欧文字を横書きしてなり、昭和56年4月6日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、平成9年5月2日に設定登録されたものである。
(4)登録第4015884号商標(以下「引用商標D」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、昭和58年5月11日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、平成9年6月20日に設定登録されたものである。
(5)登録第4041586号商標(以下「引用商標E」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、昭和58年5月11日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、平成9年8月15日に設定登録されたものである。
(6)登録第4172780号商標は、商標登録の無効の審判により無効とすべき旨の審決がされ、その審判の確定登録が平成15年5月14日にされている。
以下、引用商標Aないし引用商標Eを一括していう場合は「引用商標」という。
第3 請求人の主張
請求人は、請求人は、結論と同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨以下のとおり述べ、甲第1号証ないし甲第17号証(枝番を含む。)を提出している。
1 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第11号
本件商標の指定商品中「ゴルフ用ウインドブレーカー,ゴルフ用レインウエア」は、引用商標の指定商品と同一若しくは類似する商品である。
本件商標中、「GOLF」なる語は、指定商品「ゴルフ用ウインドブレーカー,ゴルフ用レインウエア」との関連においては、指定商品の品質を表示する語である。「GOLF」なる語が、指定商品の取引において、自他商品識別力を発揮しない語であることから、本件商標中、自他商品を識別する標識として機能する部分は「POLO」の文字部分であり、これにより「ポロ」の称呼が生ずる。
引用商標A及び引用商標Cは、いずれも「POLO」なる欧文字からなる商標であり、その外観、称呼、観念において、本件商標「POLO GOLF」の自他商品識別機能を発揮する標章「POLO」と社会通念上同一である。引用商標B、引用商標D及び引用商標Eは、「POLO」なる語と図形若しくは「SPORTS」(スポーツウェア、カジュアルウェア)なる商品の品質を表す文字との結合した商標であり、その態様から、本件商標の自他商品識別機能を発揮する標章「POLO」と同一の「ポロ」なる称呼を生じるものである。
したがって、本件商標は、引用商標と類似する商標である。
(2)商標法第4条第1項第15号
(ア)請求人の「POLO」商標の著名性について
請求人の関連する公冠グループは、「Polo」ないし「Polo」の文字を含む商標による衣料品の製造販売を昭和47年頃から開始していたこと、及び昭和58年時点で「Polo」ないし「Polo」の文字を含む衣料品の商標は、同グループの商標であることが一般にもある程度知られていたことが平成9年異議第90708号の異議決定(甲第8号証)によって証明されている。その後、同グループ及び請求人の継続した営業活動及び広告宣伝・販売促進活動により、「POLO」商標(引用商標A及び引用商標C)及びその他の「POLO」を含む商標の売上は、平成13年において40億円を上回るまでに至っている。
請求人の所有する「POLO」商標(引用商標A及び引用商標C)は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内の需要者に広く認識されているものであることは明らかであり、本件商標は、その周知商標に類似する商標である。
(イ)混同のおそれ
ゴルフウェアが属するスポーツアパレル業界は、カジュアルウェア等のファッションアパレル業界と競合するものである。よって、同一又は類似する商標をゴルフウェアとカジュアルウェアに使用した場合には、出所の混同を生ずることは明白である。
さらに、ファッション業界においては、ライフスタイル提案型のブランド拡張戦略として、「被服」ブランドをマスターブランドとし、その商標に「GOLF」なる語を付した「○○GOLF」なる商標を使用して、セカンドライン、サードライン等のディフュージョンブランドを展開するブランド・マーケティング戦略が慣行化されている(甲第11号証ないし甲第14号証)。よって、「被服」等に使用する商標と、当該商標に「GOLF」を付した商標とは、同一の出所を表示するものと需要者に認識されている。
事実、「BENETTON GOLF」なる登録商標と「BENETTON」なる登録商標が、いずれも、同じ商標権者により所有されているように(甲第14号証の1)、34件の「GOLF」なる語を付した登録商標が、「GOLF」以外の部分の標章を商標とする「被服」等の登録商標と同一の商標権者により所有されている(甲第14号証の1ないし29)。その中で、13の商標権者が、「GOLF」と同様に、「SPORTS」(甲第14号証の2、同8ないし10、同16、同18、同26及び同28)、「○○KIDS」(甲第14号証の19)等、「商品の使用場面や用途別に同一名を冠したファミリーブランド」の商標登録を行っている。
これらは、「被服」等に使用する商標に「GOLF」なる語を付した商標を、「被服」ブランドのセカンドライン・ブランド等を示すものとして使用するブランド・マーケティング戦略が、ファッション業界で慣行化していることを示すものである。
したがって、同業界において、「被服」等に使用する商標と、当該商標に「GOLF」を付した商標が、同一の出所を表示するものとして、その需要者に認識されていることは明らかである。
かかる取引実情を鑑みれば、本件商標を付した「ゴルフ用ウインドブレーカー,ゴルフ用レインウエア」なる商品に接した需要者は、当該商品を「POLO」商標の所有者たる請求人のセカンドライン・ブランド等の商品であるとして、出所を混同することは疑いない。また、本件商標が商標権者の使用により自他商品識別力を発揮した場合には、引用商標を付した請求人の「被服」等の商品に接した需要者は、当該商品を、商標権者のマスター・ブランドの商品であると、出所を混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、指定商品「ゴルフ用ウインドブレーカー,ゴルフ用レインウエア」に使用した場合に、「POLO」商標を付した請求人の業務にかかる商品と出所の混同を生ずる商標であるとして、商標法第4条第1項第15号の規定により、登録を受けることができない商標である。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第11号該当性
被請求人は、「POLO」標章が、本件商標の登録出願時及び現在において被請求人の商標を表示する標章として取引者、需要者の間に広く認識されているとして、本件商標が引用商標と非類似である旨主張する。しかし、周知・著名性の当否を判断するまでもなく、かかる主張は、商標法の法理に照らし、到底採用できない。
後発的に使用し登録出願した被請求人が、その周知性等を主張することにより、そのような、明らかに類似する商標について、商標法第4条第1項第11号の適用が排除されるなどとは、登録主義を採用する商標法上許されない解釈である。このような解釈が認められるとするならば、最先に登録出願し適法に商標権を取得しても、営業力の優れた第三者の後発的な使用という、権利者とは無関係な、偶発的な事情により、いつでも登録商標の類似範囲に第三者の独占排他権が設定され得ることとなり、独占排他権の庇護の下、出所の識別及び信用の化体を促進すること企図し、先願主義を伴った登録主義を採用した商標法の趣旨が没却されることとなる。
被請求人は、請求人の「POLO」商標等の使用権者である(甲第8号証)。仮に、本件商標のように、使用許諾契約の対象商標について使用権者が周知性等を主張することにより、独占排他権が付与されるとするならば、行政処分により、使用許諾契約という私的契約に基づく法律関係を実質的に消滅せしめたと同一の効果を生じることとなる。法の下、正当に行使してきた財産権が、自由競争を阻害する等なんらの特段の事情もないにもかかわらず、行政処分により唐突に減縮されるなどとは、商標法のみならず、他法においても例を見ないものである。
したがって、被請求人の主張は、その周知・著名性の当否を判断するまでもなく、商標法第4条第1項第11号の適用を排除しうるものではない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性
被請求人は、本号の適用にあたっても、「POLO」標章が、本件商標の登録出願時及び現在において被請求人の商標を表示する標章として取引者、需要者の間に広く認識されているとして、混同を生じるおそれがない旨主張する。しかし、後願者であり、かつ使用権者である被請求人の係る主張は、商標法第4条第1項第11号と同様に、その周知・著名性の当否を判断するまでもなく、本号においても、その適用を排除しうるものではない。 商標法秩序の下、登録商標を使用してきた先願権利者が、後発的な使用権者との売上の優劣によって本号が解釈適用されることにより、使用許諾商標の使用権者への独占排他権付与を甘受しなければならない理由などない。
仮に、被請求人が、「Ralph」等、その登録商標について使用許諾をし、その使用権者が、「Ralph Sport」等の商標を使用して被請求人の10倍を超える売上高を築き、我が国で有数の人気の高いブランドとなったとしても、当該使用商標は、使用権者との関係においては、被請求人が使用してきた先願登録商標「Ralph」の禁止権として、被請求人が当然保持すべきものであるのと同様である。
なお、被請求人はPOLOブランドが現在900億円近い売上を有する旨主張しているが、なんらの証拠も提出されていない。その上、被請求人は、ラルフローレン氏の手がけるブランドとして、「RALPH LAUREN」(登録第2643313号)等、「POLO」標章を含まない種々の商標をも使用している。よって、同売上の全てが、被請求人が答弁として主張する略称の根拠となる、「POLO」標章を含む使用商標の売上であるか否かは明確ではない。また、宣伝・販促費についても同様である。
(3)むすび
したがって、本件商標の指定商品中「ゴルフ用ウインドブレーカー,ゴルフ用レインウエア」に係る登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものであり、商標法第46条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第13号証(枝番を含む。)を提出している。
1 商標法第4条第1項第11号に該当しない理由
本件商標は、構成文字「POLO GOLF」に相応し「ポロゴルフ」の称呼を生ずるものである。「ポロゴルフ」の称呼は冗長でなく、かつ語呂がよいため一気に称呼されるものである。一方、請求人の引用商標は、その構成文字に相応し「ポロ」又は「ポロスポーツ」の称呼を生ずるものである。
したがって、本件商標と引用商標は称呼において明らかに相違するものである。また、造語よりなるものであるから観念においても類似するものでない。
また、「GOLF」の文字は、本件指定商品との関係にあっては商品の品質を表示するところから本件商標の自他商品識別標識として機能する部分は「POLO」の部分であると主張する。しかし、仮にそうであっても、本件商標と引用商標とは以下に述べるとおり類似しないものである。また、「POLO GOLF」の文字からなる本件商標と「POLO」の文字からなる引用商標A及び引用商標Cとが社会通念上同一であることはない。
被請求人は、米国ニューヨーク州所在のリミテッドパートナーシップであり、その主要な構成人である世界的著名なデザイナーのラルフ・ローレンがデザインした被服、眼鏡、フレグランスその他のファッション関連商品を関連会社やライセンシーを通じて世界的規模で製造、販売している。ラルフ・ローレンのデザインに係るファッション商品には「Polo」の標章、「Polo」と「by RALPH LAUREN」とを組み合わせた標章、ポロ競技者の図形と「Polo」及び「by RALPH LAUREN」を組み合わせた標章のいずれかが必ず付されている。そして、上記標章を付した商品は、我が国においては昭和50年ごろから販売され、上記標章は遅くとも昭和50年代半ばにはラルフ・ローレンがデザインしたファッション関連商品を表示する標章として我が国の取引者・需要者間に周知・著名となっていたものである。
また、上記標章及びこれを付した商品は「ポロ」、「Polo」(「POLO」)と略称され、その略称もまたラルフ・ローレンのデザインした商品を表彰する標章として強い自他商品識別力と顧客吸引力を獲得したものである。そして、それら標章の周知・著名性は現在も継続しているものである。このことは、提出の乙号証及び「Polo」の文字を有する商標が被請求人の商品と混同すると判断された多数の判決によって明らかである。
ちなみに、日本における上記標章及び略称(以下「POLOブランド」という。)を付した被請求人商品の売上げは、1977年(昭和52)の5億6000万円を皮切りに毎年前年度を大幅に上回る伸びを示し、現在では年間900億円近い売上げを誇る日本でも有数の人気の高いブランドの一つとなっている。また、被請求人のPOLOブランドが、被請求人商品を示すものとして我が国における周知・著名性を獲得していることを示すものとして、昭和63年から平成元年にかけ、またそれ以降も「POLO」又は「ポロプレーヤーマーク(ポロ競技者の図形)」を付した偽ブランド商品が第三者によって大量に販売され摘発されるという事件が発生しているほどである。
以上のとおり、本件商標の登録出願及び登録時において、「POLO」標章は、ラルフ・ローレンのデザインした商品を表彰する標章であって被請求人の提供する商品の出所表示として取引者、需要者の間に広く認識されていたと言えるものである。
ところで、最高裁は、「商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。…商標の外観、観念または称呼の類似は、その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず、従って、右三点のうちその一において類似するものでも、他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によって、なんら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては、これを類似商標と解すべきではない。」と判示している(昭和39(行ツ)110号)。また、東京高裁も「商標は、取引において、その商品が自己の製造、販売等営業にかかるものであることを表彰するために使用するものであるから、商標の類否の判断に当たっては、取引の実情を離れてこれを考察すべきではなく、即ち、その商品の取引の実情において、取引者又は需要者の間に商品の出所につき混同をひきおこすおそれがあるかどうかによって決すべきものと解するのを相当とする」と判示している(昭和58(行ケ)215号)。
したがって、上述した本件指定商品の取引の実情からして、仮に、本件商標の自他商品識別標識として機能する部分が「POLO」の部分であるとしても、上述の通り「POLO」標章が本件商標の登録出願時及び現在においてラルフ・ローレンのデザインに係る被請求人の商品を表示する標章として取引者、需要者の間に広く認識される事実、そして、本件商標の構成文字が引用商標と相違するものであることから、前記最高裁、東京高裁の判例に照らしても、本件商標は引用商標と類似するものではないというべきである。
2 商標法第4条第1項第15号に該当しない理由
請求人は、本件商標の登録出願及び登録時には「POLO」の文字からなる1434359号及び2721189号商標が請求人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内の需要者に広く認識されている、また、「GOLF」の語が被服ブランドのセカンドライン・ブランドを示すものとしてファッション業界で慣行化しているとして、被請求人が本件商標を使用すると請求人商品との間に出所の混同を生ずると主張する。そして、請求人使用商標の周知性立証根拠として平成9年異議第90708号の異議決定を提出する。
しかし、同決定は、昭和58年当時「POLO」「ポロ」標章がラルフ・ローレンのデザインに係る被服等のみを表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたと認めるのが困難であると判断したに過ぎない。すなわち、公冠グループによるPolo商標を付した被服類にも億単位の売り上げがあり「Polo」ないし「Polo」の文字を含む商標が請求人前身会社の使用商標であることが一般にもある程度知られていたこと、当時被請求人商品が専ら「Polo by RALPH LAUREN」、「ポロ・バイ・ラルフローレン」「ポロ・ラルフローレン」のブランド(商標)で商品展開していたことを認定し、そもそも「ポロ(polo)」の語が騎乗球技を表す普通名称でもあることから、昭和58年当時は商標「POLO」「ポロ」がラルフ・ローレンのデザインに係る被服等のみを表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたと認めるのが困難と判断したものである。被請求人はこの判断をそのまま容認することは出来ないが、被請求人による不断の広告宣伝活動その他の販売促進活動の結果、上記のとおり販売高が持続的に高い伸びを記録しており、その結果POLOブランドが我が国で有数の人気の高いブランドの一つとなっている事実は、少なくとも本件商標の登録出願時及び登録時において「POLO」及び「ポロ」の標章が殆ど唯一ラルフ・ローレンのデザインに係る被請求人の商品を表示する標章として取引者、需要者の間に広く認識されるに至ったことを裏付けるといい得ることである。前記において示した多数の判決もまたその事実を認めているところである。なお、請求人は甲第2号証ないし甲第7号証を付した被服等の商品売り上げが平成13年において40億円を上回ると述べているが、不知であり、また前記で示す被請求人売り上げの1割にも満たないその数字を持って被請求人を上回る出所表示として取引者、需要者に認識されているとは到底言えない。
前記で主張立証したとおり「POLO」の標章は、ラルフ・ローレンのデザインした商品を表彰する標章として著名となっているものであり、本件商標の登録出願時及び現在において唯一被請求人の提供する商品の出所表示として強い自他商品識別力と顧客吸引力を獲得しているものである。そして、被請求人は本件商標を平成6年から使用しているが他人との混同について何らのクレームに接していない。むしろPOLOブランドにフリーライドする商品の出現に対し対応に苦慮している状態である。
上述のとおり、「POLO」標章が本件商標の登録出願時及び現在においてラルフ・ローレンのデザインに係る被請求人の商品を表示する標章として取引者、需要者の間に広く認識される事実から、本件商標を使用しても請求人の業務に係る商品と出所の混同を生ずることはないというべきである。
3 結語
以上述べたとおり、請求人の主張は理由ないものである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものでないからその登録を無効とすべきでない。
第5 当審の判断
1 本件商標と引用商標との類否について
(1)商標法第4条第1項第11号は、「当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であって、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」については、商標登録を受けることができない旨規定している。この場合、商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生じるおそれがあるか否かによって決すべきであり、誤認混同を生じるおそれがあるか否かは、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者及び需要者に与える印象、記憶、連想等を考察し、これらに加え、その商品についての取引の具体的な実情に照らし、その商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきものと解される(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
上記観点から、本件商標と引用商標A及び引用商標Cとの類否について、以下検討する。
(2)本件商標は、「POLO GOLF」の欧文字を標準文字で表してなるものであり、「POLO」の文字と「GOLF」の文字が一文字分の間隔をおいて表されているものであるが、「GOLF」の文字は、「ゴルフ」の称呼を生じ、「18のホールを設けた競技場で、クラブでボールをホールに打ち入れ、順次にホールを追って回り、総打数の少ない者を勝ちとする」という球技を意味する普通名詞である(広辞苑第5版)。そうすると、本件商標を指定商品のうち「ゴルフ用ウインドブレーカー,ゴルフ用レインウエア」に使用した場合、これに接した取引者及び需要者は、通常、「GOLF」の文字部分は、その商品である被服の用途を表す普通名詞として認識し、「POLO」の文字部分を自他商品の識別機能を果たすものとして認識するものと解される。その意味で、本件商標において自他商品の識別機能を果たす要部は、「POLO」の文字部分にあると解するのが相当である。
一方、引用商標A、Cは、いずれも「POLO」の欧文字のみからなるものであり、本件商標の要部と対比すると、称呼、外観において同一であるということができる。
また、「POLO」の語が、主として英国及び旧英国領の諸地域等において行われている馬上球技を示す普通名詞であること、襟付の半袖のカジュアル衣料を示すポロシャツの語が、本来ポロ競技の選手が着用したことにちなむもので、今日、広く一般に普通名詞として用いられていることも、公知の事実であり、本件商標の要部と引用商標A、Cとは、いずれも、取引者及び需要者に、ポロ競技ないしその略称であるポロの観念を生じさせるものと認められる。
そうすると、本件商標と引用商標A、Cとは、称呼、外観及び観念において類似するというべきである。
(3)被請求人の「POLO」標章の周知著名性について
ア 当審において提出された証拠(甲第8号証、乙第1号証ないし乙第11号証)によれば、次の事実が認められる。
(ア)ラルフ・ローレンは、1939年(昭和14年)生まれのアメリカの服飾等デザイナーであるが、1968年(昭和43年)、ポロ・ファッションズ社を設立し、ネクタイ、シャツ、セーター、スーツ、靴、かばん等のデザインを手がけるなどファッション関連の商品についてトータルな展開を図り、1970年(昭和45年)と1973年(昭和48年)の2回にわたり、アメリカのファッション界で最も権威があるとされる「コティ賞」を受賞するなど高い評価を受け、さらに、1974年(昭和49年)に、映画「華麗なるギャツビー」の主演男性俳優の衣装デザインを担当し、アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立するとともに、世界的に知られるようになった。ラルフ・ローレンのデザインに係るファッション関連商品には、「Polo」の文字を横長四角形中に記載してロゴ化したものと「by RALPH LAUREN」の文字とを結合した標章、同ロゴ化したものとポロ競技者の姿絵と「by RALPH LAUREN」(又は「by Ralph Lauren」)の文字とを結合した標章(以下、これらを「被請求人標章」という。)等が付されている。
(イ)我が国においては、西武百貨店が、使用許諾を受けて、昭和51年ころから、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品の販売等を開始し、全国各地の店舗で販売されるようになった。西武百貨店は、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品及びこれに付す被請求人標章の周知を図るべく新聞広告するなどして、上記商品の販売活動を行い、その結果、昭和62年における被請求人標章を付した商品の小売販売高は約330億円となり、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品は、昭和53年7月20日講談社発行の「男の一流品大図鑑」、昭和55年5月25日講談社発行の「世界の一流品大図鑑’80年版」、昭和58年9月28日サンケイマーケティング発行の「舶来ブランド事典’84 ザ・ブランド」などのカタログ誌等において一流ブランドの商品として紹介されてきた。
(ウ)昭和50年代後半、被請求人の前身であるザ・ポロ・ローレン・カンパニーと請求人の前身である丸永衣料(昭和60年1月21日に公冠販売と商号を変更)との間に「ポロ」の商標の使用をめぐって紛争が存在した。ザ・ポロ・ローレン・カンパニーは、昭和56年ころ、西武百貨店を介して、丸永衣料に対し、話合いを申し入れ、これをきっかけとして交渉が行われた結果、昭和62年1月1日、ザ・ポロ・ローレン・カンパニーと公冠販売(旧商号・丸永衣料)との間に、引用商標A及びBについて通常使用権を設定する旨の本件使用許諾契約が締結された。
請求人は、公冠と公冠販売が出資して設立され、平成10年には引用商標を含む一連の「POLO」関連商標に係る商標権を公冠販売から譲り受け、被請求人との間の引用商標A及びBに関する本件使用許諾契約上の地位も承継し、現在に至っている。
(エ)昭和63年ころから、我が国で、「ポロ」の偽ブランド商品が出現し、摘発される事件が発生し、これを報道した平成元年5月19日付け朝日新聞には、「『ポロ』の偽大量販売『Polo(ポロ)』の商標で知られるラルフローレンブランド…」との記事が掲載され、平成11年9月9日付けの日本経済新聞には、「『ポロ』ブランドの偽物セーター1枚を2900円で販売したほか…」との記事が掲載された。
イ 上記認定の事実によれば、被請求人標章、すなわち、「Polo」の文字を横長四角形中に記載してロゴ化したものと「by RALPH LAUREN」とを組み合わせた標章、同ロゴ化したものとポロ競技者の姿絵と「by RALPH LAUREN」(又は「by Ralph Lauren」)とを組み合わせた標章等は、アメリカのファッションデザイナーとして世界的に著名なラルフ・ローレンのデザインに係るファッション関連商品を表示するものとして、我が国においては、昭和51年ころから使用されるようになり、昭和50年代半ば以降には取引者及び需要者間に広く認識されるに至っていたこと、当時から上記標章は「ポロ」、「POLO」(「Polo」)と略称されることもあり、昭和62年1月の本件使用許諾契約の締結を経て、上記標章及びこれを付した商標ブランドは、ラルフ・ローレンの「ポロ」、「Polo」ないし「POLO」として著名になり、強い自他商品識別力及び顧客吸引力を獲得していたものであり、その周知著名性は、その後、本件出願時、査定登録時を経て今日に至るまで継続していることが認められる。
上記のとおり、被請求人の「POLO」標章が周知著名性を有することからすれば、本件商標を付した「ゴルフ用ウインドブレーカー,ゴルフ用レインウエア」に接した場合、少なくとも一部の取引者及び需要者は、本件商標の要部である「POLO」の文字からラルフ・ローレンのデザインに係る商品を想起するものと考えられる。しかしながら、同一の商標から二以上の観念を生じることもしばしばあり得るものであるところ、上記1(2)のとおり、「POLO」の語が、主として英国及び旧英国領の諸地域等において行われている馬上球技を示す普通名詞であることや、襟付の半袖のカジュアル衣料を示すポロシャツの語が、本来ポロ競技の選手が着用したことにちなむもので、今日、広く一般に普通名詞として用いられていることに照らせば、取引者及び需要者の中には、「POLO」の語が本来有する意味合いから、ポロ競技やその略称であるポロを想起する者も存在するといわなければならない。
そうすると、被請求人の「POLO」標章が周知著名性を獲得していることを考慮に入れても、「POLO」の語が、「Ralph Lauren」のような特定のデザイナーの氏名等とは異なり、馬上球技を示す普通名詞であることに照らせば、本件商標と引用商標A、Cとは、本件商標の指定商品のうち「ゴルフ用ウインドブレーカー,ゴルフ用レインウエア」に使用する場合には、称呼、外観、観念において紛らわしい関係にあることに変わりはなく、その商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準としてみるとき、取引者及び需要者が両者を誤認混同する可能性は否定できないというべきである。
したがって、被請求人の「POLO」標章が周知著名性を獲得しているという事情が存在するにしても、そのことをもって、本件商標が引用商標A、Cと類似することを否定することができない。
(4)被請求人は、本件指定商品の取引の実情からして、仮に、本件商標の自他商品識別標識として機能する部分が「POLO」の部分であるとしても、「POLO」標章が本件商標の登録出願時及び現在においてラルフ・ローレンのデザインに係る被請求人の商品を表示する標章として取引者、需要者の間に広く認識される事実、そして、本件商標の構成文字が引用商標と相違するものであることから、前記最高裁、東京高裁の判例に照らしても、本件商標は引用商標と類似するものではないというべきである、と主張する。
しかしながら、本件商標は、引用商標A、Cと類似することが否定できないことは前記のとおりである。加えて、前記認定のとおり、昭和62年1月に、請求人の前身である丸永衣料と被請求人の前身であるザ・ポロ・ローレン・カンパニーの間に、ザ・ポロ・ローレン・カンパニーが引用商標A及びBについて通常使用権を取得する内容の本件使用許諾契約が締結され、当該契約の契約上の地位が請求人と被請求人に承継されているという事情の下においては、引用商標Aと称呼、外観、観念において類似し、かつ、本件使用許諾契約締結後の使用に係る本件商標について、被請求人が独自の周知性を獲得したとして商標法第4条第1号第11号該当性を争うことは、先願登録主義を採用し、登録商標について商標権者の専用権及び禁止権を保障している我が国の商標制度と相容れないものとして許されないというべきであり、この意味においても、被請求人の主張は採用できない。
(5)以上検討したところによれば、本件商標と引用商標A、Cとは、称呼、外観及び観念において類似しており、このことに加え、本件商標の指定商品のうち「ゴルフ用ウインドブレーカー,ゴルフ用レインウエア」と引用商標A、Cの指定商品とは重複し、その需要者は必ずしも商標やブランドについて特別の専門知識を有するものばかりではない一般消費者であることをも考慮すれば、本件商標と引用商標A、Cとは、本件商標の指定商品中「ゴルフ用ウインドブレーカー,ゴルフ用レインウエア」に使用する場合、商品の出所につき誤認混同を生じるおそれがあると認めるのが相当である。そうすると、本件商標の指定商品のうち「ゴルフ用ウインドブレーカー,ゴルフ用レインウエア」に係る登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものというべきである。
2 まとめ
以上のとおり、本件商標は、請求人主張のその他の理由について判断するまでもなく、その指定商品中第25類「ゴルフ用ウインドブレーカー,ゴルフ用レインウエア」についての登録は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別記】



審理終結日 2008-09-12 
結審通知日 2008-09-18 
審決日 2008-10-01 
出願番号 商願2001-87822(T2001-87822) 
審決分類 T 1 12・ 26- Z (Z25)
最終処分 成立 
前審関与審査官 野上 サトル 
特許庁審判長 林 二郎
特許庁審判官 鈴木 修
内山 進
登録日 2002-08-30 
登録番号 商標登録第4600778号(T4600778) 
商標の称呼 ポロゴルフ、ポロ 
代理人 江原 省吾 
代理人 岡田 稔 
代理人 白石 吉之 
代理人 黒岩 徹夫 
代理人 田中 秀佳 
代理人 熊野 剛 
代理人 城村 邦彦 
代理人 山根 広昭 
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