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審決分類 審判 全部無効 外観類似 無効としない X05
審判 全部無効 称呼類似 無効としない X05
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X05
審判 全部無効 観念類似 無効としない X05
管理番号 1290673 
審判番号 無効2013-890090 
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-12-11 
確定日 2014-07-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第5498111号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5498111号商標(以下「本件商標」という。)は、「ニノプロ」の文字を標準文字で表してなり、平成23年12月9日に登録出願、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,医療用腕環,失禁用おしめ,防虫紙,乳糖,乳幼児用粉乳」を指定商品として、同24年4月18日に登録査定、同年6月1日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録の無効の理由として引用する登録商標は、以下のとおりであり、その商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第3196763号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなり、平成5年11月19日に登録出願、第10類「医療用機械器具」を指定商品として、同8年9月30日に設定登録され、その後、同18年4月25日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
2 登録第3204662号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなり、平成5年11月19日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同8年9月30日に設定登録され、その後、同18年4月25日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
3 登録第4461543号商標(以下「引用商標3」という。)は、「NIPRO」の欧文字を標準文字で表してなり、平成12年5月17日に登録出願、第5類「薬剤,歯科用材料,医療用油脂,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド」、第10類「医療用機械器具,氷まくら,三角きん,支持包帯,手術用キャットガット,吸い飲み,スポイト,乳首,氷のう,氷のうつり,ほ乳用具,魔法ほ乳器,綿棒,指サック,避妊用具,人工鼓膜用材料,補綴充てん用材料(歯科用のものを除く。),耳栓」のほか、第11類、第16類、第19類、第21類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同13年3月23日に設定登録され、その後、同22年11月16日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
4 登録第4468472号商標以下「引用商標4」という。)は、「ニプロ」の片仮名を標準文字で表してなり、平成12年5月17日に登録出願、第5類「薬剤,歯科用材料,医療用油脂,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド」、第10類「医療用機械器具,氷まくら,三角きん,支持包帯,手術用キャットガット,吸い飲み,スポイト,乳首,氷のう,氷のうつり,ほ乳用具,魔法ほ乳器,綿棒,指サック,避妊用具,人工鼓膜用材料,補綴充てん用材料(歯科用のものを除く。),耳栓」のほか、第11類、第16類、第19類、第21類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同13年4月20日に設定登録され、その後、同23年4月5日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
5 登録第4478863号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲2に示すとおりの構成からなり、平成12年5月17日に登録出願、第5類「薬剤,歯科用材料,医療用油脂,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド」、第10類「医療用機械器具,氷まくら,三角きん,支持包帯,手術用キャットガット,吸い飲み,スポイト,乳首,氷のう,氷のうつり,ほ乳用具,魔法ほ乳器,綿棒,指サック,避妊用具,人工鼓膜用材料,補綴充てん用材料(歯科用のものを除く。),耳栓」のほか、第11類、第16類、第19類、第21類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同13年6月1日に設定登録され、その後、同23年4月5日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
6 登録第5202552号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲3に示すとおりの構成からなり、平成20年6月19日に登録出願、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料,医療用腕環,失禁用おしめ,乳児用粉乳,人工受精用精液」、第10類「おしゃぶり,氷まくら,三角きん,支持包帯,手術用キャットガット,吸い飲み,スポイト,乳首,氷のう,氷のうつり,ほ乳用具,魔法ほ乳器,綿棒,指サック,避妊用具,人工鼓膜用材料,補綴充てん用材料(歯科用のものを除く。),医療用機械器具,家庭用電気マッサージ器,医療用手袋,しびん,病人用便器」のほか、第11類及び第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同21年2月6日に設定登録されたものである。
7 登録第5377527号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなり、平成22年9月1日に登録出願、第5類「医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料,失禁用おしめ,防虫紙,乳糖,乳児用粉乳,人工受精用精液」を指定商品として、同年12月17日に設定登録されたものである。
(以下、上記7件の引用商標をまとめて「引用商標」という場合がある。)

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第52号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求人について
(1)請求人であるニプロ株式会社は、主として医療機器及び医薬品を製造・販売する会社であり、技術開発志向型の研究開発力を基盤に、医療機器、医薬品、医療・衛生材料、ガラス製品等、医療の総合メーカーとして多角的に事業展開している(甲第3号証及び甲第4号証)。特に、医療機器及び医薬品は、請求人の全事業における売上(連結決算)の9割前後を占めており(甲第3号証)、請求人の事業において最重要分野となっている。
以下、請求人の会社設立からの事業の変遷を簡単に説明する。
ア 1954年(昭和29年)7月、日本硝子商事株式会社として設立し、アンプル用ガラス管・錠剤瓶用ガラス管の販売を開始。
イ 1965年(昭和40年)4月、医療機器(輸液セット)の販売を開始。
ウ 1969年(昭和44年)8月、株式会社富沢製作所(現ニプロ医工株式会社、1972年(昭和47年)8月に商号変更)を子会社とし、医療機器の生産を開始。
エ 1972年(昭和47年)4月、日本プラスチック・スペシャリティース株式会社を買収し、同社の商号を株式会社ニプロに変更し(甲第5号証)、国内の医療機器販売会社とする。
オ 1977年(昭和52年)5月、商号を株式会社ニッショーに変更。
カ 1988年(昭和63年)9月、菱山製薬株式会社(現ニプロファーマ株式会社、2003年(平成15年)4月に商号変更)に資本参加し、医薬品の製造・販売事業を拡大。
キ 2001年(平成13年)4月、株式会社ニプロを吸収合併し、商号をニプロ株式会社に変更。
ク 2013年(平成25年)4月、ニプロファーマ株式会社の営業部門を統合。
(2)請求人は、日本全国に56の支店・営業所を有している(甲第6号証)。多角経営のため、ニプログループを形成し、事業分野を医療機器事業、医薬品事業、材料関係事業、その他の事業(損害保険代理業)の4分野に分け、請求人は、主に医療機器の製造・販売を担当し、ニプロファーマ株式会社など国内6社を医薬品の製造・販売子会社としている(甲第3号証に添付の資料編及び甲第7号証)。また、2013年(平成25年)4月には、医薬関連事業の一層の強化を図るべく、医薬事業の中核会社であるニプロファーマ株式会社の医療用医薬品の営業部門を本社事業部に編制した(甲第4号証の2)。
(3)請求人による「ニプロ」の使用は、請求人の商号が日本硝子商事株式会社であった時代の1972年(昭和47年)にさかのぼる。この年から関連会社の商号に「ニプロ」を使用し、医療機器の販売等において「ニプロ」の商標を使用しており、前年の昭和46年10月に「薬剤」や「医療機械器具」について商標「ニプロ」及び「NIPRO」を出願し、1977年(昭和52年)及び1982年(昭和57年)にそれぞれ登録されている(甲第8号証の1ないし4)。「医薬品」については、1987年(昭和62年)に「血液検査薬」について「ニプロ」の使用を開始している。その後、国内外で「ニプロ」、「NIPRO」ブランドの知名度が向上してきたことに伴い、ブランドイメージの統一化を図るために、2001年(平成13年)に社名を株式会社ニッショーからニプロ株式会社に変更し、現在に至っている。
2 引用商標の周知・著名性
(1)引用商標を使用した商品
請求人の主要業務分野は、医療機器、医薬品、医療・衛生材料に大別され、自社ウェブサイト(www.nipro.co.jp)においても、数々の製品の情報が掲載されている(甲第9号証)。医療機関において、「ニプロ」又は「NIPRO」の名称を見ないことはない。
ア 医療機器の主力製品としては、人工透析関連の器具や人工腎臓、各種医療用カテーテルやステント、輸血関連製品、血糖値測定器具などが挙げられる(甲第3号証の15頁ないし24頁及び甲第9号証)。甲第3号証に掲載されている医療機器の商品写真から、引用商標である「ニプロ」、「NIPRO」又は「ニプロ」及び「NIPRO」が製品に直接付されて使用されていることが確認できる。
イ 医薬品分野においては、請求人は、医薬品(甲第10号証の1ないし3)、試薬(甲第10号証の4ないし6)、その他の薬剤(甲第10号証の7ないし10)の販売に際し、「ニプロ」、「NIPRO」又は「ニプロ」及び「NIPRO」の商標を使用している。また、ニプロファーマ株式会社の医療用医薬品の営業部門を請求人の本社事業部へ編制したことにより、医療用医薬品の製造販売については、「ニプロ」、「NIPRO」又は「ニプロ」及び「NIPRO」の商標が使用されることとなり(甲第10号証の11ないし14)、一部の医薬品には錠剤自体に「ニプロ」の商標が印字される(甲第10号証の14)。
なお、2013年4月の本社事業部への編制前においては、グループ企業のひとつであるニプロファーマ株式会社が医薬品の製造販売を主たる業務としており、同社名の下、甲第11号証の製品カタログを始め、各種医薬品・製剤のパンフレット(甲12号証の1ないし6)が制作・配布されていた。これらのカタログ・パンフレットにおいては、「ニプロファーマ」が使用されている。医薬品業界において、「ファーマ」の語は、「薬」を意味する英語の「pharmaceutical」の略語である「pharma」を片仮名表記したものとして一般に容易に理解されることから、「ファーマ」の文字部分は、自他商品・自他役務識別力を有さず、「ニプロ」の文字部分が要部としての出所表示機能を果たす。
ウ 請求人は、医療・衛生材料の分野でも、医療用粘着シートや創傷被覆保護材等の商品を販売しており、請求人が制作・配布するパンフレット(甲第13号証の1ないし3)に掲載されているとおり、引用商標「ニプロ」及び「NIPRO」が使用されている。
(2)年間売上高
過去10年間の我が国における請求人単体の医療機器に関する売上高及び宣伝広告費は、甲第14号証の一覧に示されるとおりである。過去10年間、1,000億円以上の売上げを維持しており、ここ数年1,300億円ないし1,400億円前後の売上げとなっている。
また、医薬品及び医療材料に関しては、甲第15号証に示されるとおり、2012年度の売上げがそれぞれ約400億円と約266億円、2011年度の売上げが約380億円と約247億円となっており、このほぼ全額が国内での売上高となる。なお、甲第15号証に示される昨年度の売上げは、請求人の有価証券報告書(甲第16号証)に記載のものと一致している。
さらに、2012年版の医療機器市場の分析レポート(甲第17号証)によると、請求人は、医療機械器具メーカーとして、2009年度及び2010年度の売上高ランキングで第4位にランク付けされている。そして、主要製品の市場規模とメーカーシェア(2010年)において、ダイアライザーや人工透析用血液回路、静脈留置針等の透析関連分野、糖尿病患者向けの血糖測定機器分野、経腸栄養チューブや輸液システム、抗がん剤や鎮痛剤の投与に用いられるインフューザー等の製品分野で三指に入るような大きなシェアを持つ企業であることが分かる。
(3)宣伝広告活動
請求人は、「ニプロ」及び「NIPRO」ブランドの浸透のため、早くから積極的に各種メディアにおいて全国規模で宣伝広告活動を行っており、過去10年間の我が国における広告宣伝費は、甲第14号証に示されるとおりであり、近年、2010年度を除き、8億円を下らないことから、大規模かつ継続的に広告活動を行っていることがうかがえる。
請求人の業務に係る製品は、医家向けに販売されるものが大半であるが、最終的なユーザー(患者)へのブランド認知度向上のため、請求人は、直接の購入者である医療従事者が目にする業界紙・専門誌のみならず、広く一般大衆が目にする新聞(一般紙)やテレビCM等にも、宣伝広告を行っている。以下、各媒体における請求人の宣伝広告活動の一例を紹介する。
ア 新聞
甲第19号証ないし甲第22号証(枝番号を含む。)は、2009年(平成21年)6月から2012年(平成24年)7月にかけての請求人の新聞紙上での広告の写しであり、甲第18号証は、甲第19号証ないし甲第22号証の概要を一覧にまとめたものである。我が国における三大紙と称される読売新聞、朝日新聞及び毎日新聞の朝刊及び夕刊の1面並びに日本経済新聞の文化面に、「信頼の医療器・医薬品」の文字とともに、引用商標「NIPRO」及び「ニプロ」が掲載されている。
なお、上記広告の写しは、一例として、近年の掲載広告を隔月で提出しているが、これらの広告掲載は、1994年(平成6年)7月に開始し、各月1回ずつ、現在まで継続している。
イ 雑誌
甲第24号証ないし甲第34号証(枝番号を含む。)は、医療関係の専門誌への広告の一例であり、甲第23号証は、その概要を一覧にまとめたものである。これらは、業界専門誌であることから、請求人の製造販売する商品を個別に紹介・宣伝する広告となっており、各誌に定期的に掲載される広告の写しが記録として残されているが、その中から任意の一部を例として提出する。
なお、「エキスパートナース」(甲第24号証)は、20代から30代の看護師、看護学生、その他医療関係者向け雑誌、「月刊ナーシング」(甲第25号証)は、卒業後数年の若手看護師や看護学生向けの雑誌であって、いずれも一般書店でも販売されているものであり、「Clinical Engineering」(甲第26号証)は、臨床工学技士向けで、血液透析、体外循環、集中治療に携わる医師や看護師にも購読される雑誌であって、大手書店で販売されているものであり、「臨床透析」(甲第27号証)及び「腎と透析」(甲第28号証)は、透析治療の臨床・ケアに携わる医療スタッフ、医師、看護師、栄養士向けの雑誌であり、「インフェクションコントロール」(甲第29号証)は、医療関連感染に携わる医療従事者向け専門誌である。
ウ テレビコマーシャル
甲第35号証ないし甲第39号証(枝番号を含む。)は、請求人によるテレビコマーシャルに関する資料であり、甲第35号証にこれまでの請求人によるテレビコマーシャルの概要をまとめてある。
(ア)甲第36号証の1ないし12は、実際に放映されたコマーシャル映像から数コマのカット写真を集めたものである。そのうち、甲第36号証の1ないし6は、1990年代のコマーシャルであり、請求人の旧商号の略称である「ニッショー」、「信頼の医療器」の文字とともに、「NIPRO」の商標が放映されていたことが分かる。また、現商号に変更された2001年(平成13年)以降は、「信頼の医療器・医薬品」の文言とともに、「ニプロ」及び「NIPRO」が放映され、請求人の事業活動を様々なテーマ・観点から紹介する内容となっている。
(イ)現在放映が継続されているコマーシャルは、甲第36号証の9ないし12の4種類であり、日本テレビ(NTV)「行列のできる法律相談所」、TBSテレビ「報道特集」、テレビ朝日「報道ステーション」等の人気番組において、長年にわたり、継続して放映されている。特に、テレビ朝日「報道ステーション」は、全国平均視聴率が12.2%であり(2011年10月?12月ビデオリサーチ調べ、甲第37号証の1)、広く一般大衆の目に触れる機会の多い番組であることに加え、「医師のメディア接触状況調査」(甲第37号証の4)によると、あらゆるジャンルのほかの番組と比較して、医師の接触率が突出して高いとの調査結果があり、医療従事者が請求人のコマーシャルを目にする機会も必然的に高いことが推認される。また、「行列のできる法律相談所」(全国平均視聴率15.6%、同時期ビデオリサーチ調べ、甲第37号証の2)や「報道特集」(全国平均視聴率8.3%、同時期ビデオリサーチ調べ、甲第37号証の3)も、一般視聴率、医師の接触率がともに高い番組であり(甲第37号証の4)、老若男女、医療の従事者・非従事者を問わず、極めて広範囲の視聴者が請求人の引用商標に日常的に接しているといえる。
(ウ)甲第38号証の1ないし16は、2009年1月、2010年4月及び2011年9月における各テレビ局によって作成された請求人のテレビコマーシャルの放映証明である(これについては、過去数年分の毎月の記録があるが、量が膨大となるため、過去3年の任意の1月分のみを提出する。)。
また、新たなテレビコマーシャルを制作した時期に、請求人の社内報やニュースリリースにおいても簡単な紹介記事が掲載されているため、これらを甲第39号証の1ないし7として提出する。
エ その他
その他の媒体による宣伝広告活動としては、看板広告(甲第40号証及び甲第41号証)、プロサッカーチーム「ヴァンフォーレ甲府」のスポンサー支援(2006年ないし2008年の3シーズン、甲第42号証の1ないし3)、日本最大の医薬品・化粧品の展示会であるインターフェックスジャパンヘの出展(甲第43号証の1ないし3)があり、同展示会には2007年(平成19年)の初出展以来、毎年出展している。
また、グループ企業のニプロファーマ株式会社も、年に10回程度、各種学会・展示会等に参加している(甲第43号証の4)。
(4)防護標章登録
請求人は、商標「NIPRO」(引用商標1)について、2010年5月及び2011年3月に防護標章登録を受けており(引用商標1に係る防護標章登録第1号ないし第3号、甲第44号証の1ないし3)、この事実からも、請求人商標「NIPRO」が、本件商標の登録出願時において、既に著名性を獲得していたことが裏付けられる。
(5)その他
請求人の業務に係る商標の著名性については、本件商標に係る異議2012-900258についての異議の決定(平成24年12月27日付け)において、「本件商標の登録出願時及び査定時において、引用商標(審決注:本件審判における引用商標1ないし引用商標7と同一の商標)が我が国において全国的に著名商標となっていたことは、申立人提出の甲各号証(中略)によっても、優に認められる。」と認定されている(甲第45号証)。
また、AIPPI(一般社団法人日本国際知的財産保護協会)が刊行する「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN/日本有名商標集」には、「NIPRO」の掲載が見受けられる(甲第46号証)。
(6)小括
以上述べたとおり、請求人は、そのハウスマークである引用商標「ニプロ」及び「NIPRO」を長年にわたって医療機器・医薬品・医療材料等に継続的に使用し、相当の売上実績を積み上げてきた結果、市場におけるシェアも安定的に高い位置付けとなっている。また、早期からのブランド戦略の一環として、各種媒体を通じて、引用商標とその業務に係る製品の宣伝広告活動を全国的に積極的に行ってきた。その結果、請求人の引用商標は、本件商標の登録出願時以前から、請求人の製造、販売に係る「医療機器、医薬品、医療材料」を表示するものとして、需要者間に広く認識され、全国的に著名性を獲得するに至っており、その著名性は、今日に至るまで維持されている。
3 本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当する理由
(1)商標の類似性について
ア 本件商標は、片仮名「ニノプロ」を標準文字で書してなるものであり、これに即して、「ニノプロ」と称呼される。本件商標は、日本語において特定の観念を生ずる語でなく、また、本件商標の称呼に相当する英語を想定するとしても、該当する英単語はないことから、明確な観念を持たない造語である。
他方、引用商標1ないし引用商標7の「ニプロ」又は「NIPRO」は、それぞれ甲第2号証の1ないし7に記載された態様であり、「ニプロ」と称呼される。引用商標を構成する「ニプロ」又は「NIPRO」の文字は、いずれも特定の観念を生じさせない造語であり、請求人の会社名を表す独創性の高い商標である。
イ 商標の類否は、対比される両商標がその商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるかどうかによって決定されるべきものであり、かかる判断に際しては、当該商品の取引の実情が考慮されるべきである。
なお、「取引の実情」については、後記(2)において述べるが、
(ア)ジェネリック医薬品における一般名称化普及により社名や屋号の表記こそが唯一識別力を発揮し得るものであること、
(イ)自他商品を識別するために医薬品の一般名称に会社名を付加した商品名が多数存在すること、
(ウ)誤飲防止のために錠剤自体に一般名称や会社名を極めて小さく印字した医薬品が販売されていること(甲第10号証の14)、及び、
(エ)視覚や聴覚等の注意力が乏しい患者を需要者とすること、
といった両商標の使用の前提となる取引の実情が極めて特異なものであり、一般名称の語頭や語尾に付された会社名が片仮名等で記載された一般名称に紛れて視別が容易でないことは明らかであるから、単に片仮名4文字からなる本件商標と片仮名3文字又は欧文字5文字からなる引用商標とを単純に比較すべきではない。
そして、引用商標が高い著名性を獲得しているという事実は、商品の出所混同のおそれを増幅させる可能性のある事情といえるため、かかる事実についても、商標の類否判断において参酌されるべき取引の実情に当たるというべきである。
ウ 本件商標と引用商標とを比較するに、称呼において、本件商標から生ずる「ニノプロ」の称呼と引用商標から生ずる「ニプロ」の称呼とは、中間に位置する1音の有無の相違があるにすぎない。そして、当該差異音である「ノ」の音は、鼻音であるため、比較的弱く発音され、その後ろに位置する「プ」の破裂音に吸収されることとなるのに対し、「プロ」の音は、いずれも強音であるため、明瞭に発音されるものである上、「プロ(フェッショナル)」、「プログラム」等の馴染みのある外来語の頭文字2文字に該当し、抵抗なく聴取し得る音であるため、聴者の記憶に残る音は、「ニ・プロ」となる。
また、薬剤師や医師は、語頭や語尾に注目して自他商品の識別をしていることが多く、商標を構成する音のうち、特に強く耳に残るのは、語頭に位置する「ニ」及び語尾の「プロ」の音である。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼において、聴者の記憶、印象に強く残る「ニプロ」の音を共通にするものであって、相違する音が称呼全体に及ぼす影響は小さいことから、両称呼の全体の語調及び語感は、近似する。
エ 本件商標は、外観において、引用商標4及び引用商標6と比較した場合、片仮名「ノ」の1文字の有無の相違があるのみである。
ところで、片仮名という文字は、もともと平仮名や漢字を簡略化した文字であることから、ほかに比べて外観形状が単純な文字である上、とりわけ「ノ」の文字は、右上から左下に斜めに払われた一本の線にすぎず、書体によっては斜線等の識別力のない線図として把握されることは珍しくない。
そうすると、本件商標は、その構成中、画数が多く、上下左右にバランスよく表された「ニ」及び「プロ」の文字がとりわけ目立って看取され、錠剤等の極小スペースに印字される場合にあっては、視覚効果があいまって、上記事情に拍車がかかるものである。また、医師は、手書きの処方箋により、薬剤師に処方する薬剤を指示することがあり、機械処理された処方箋においても、薬剤師が「ノ」をスラッシュ(/)と見誤って認識する可能性は極めて高いものであり、このような場合にあっては、「ノ」の文字の有無という外観上の差異は、もはや僅差であり、彼此視別することは困難を極めるというべきである。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観が極めて近似するものであり、彼此容易に区別し得ず、出所混同を生ずるおそれのある商標である。
オ 本件商標と引用商標とは、いずれも造語であり、観念の違いによってその差異を認識して明確に区別することができるものではないが、本件商標の構成中の「ノ(の)」の文字は、格助詞としての語義があり、前の語句の内容を後ろの体言に付け加え、その体言の内容を限定するものであるところ(甲第47号証)、例えば「二の次」や「二の膳」等のように(甲第48号証)、格助詞「の」の直前と直後に位置する語により語句を認識し得るものであるため、格助詞「の」は、前後の語に埋没し、観念的に弱い語であると考えられる。すなわち、本件商標の観念を認識するに当たり、本件商標の構成中の「ノ」の文字の存在意義は弱く、その前後にある「ニ」及び「プロ」の各文字でもって観念に働きかけるものと考えられる。
よって、本件商標は、観念においても、引用商標に関連した意味合いを有するものとして看取し得るものであり、近似した印象を与える。
カ 以上によれば、本件商標は、引用商標と称呼、外観及び観念において近似しており、引用商標の著名性や取引実情をも勘案するに、両商標は、互いに紛らわしい類似の商標である。
(2)取引実情
請求人は、ニプロファーマ株式会社を筆頭に、いわゆるジェネリック医薬品(後発医薬品)の研究開発・普及に取り組んでいる。近年、我が国の医療費引下げ政策の一環として、平成24年度までにジェネリック医薬品の数量シェアを30%以上にする、という目標が掲げられており、ジェネリック医薬品の使用が促進されている。
また、「医薬品」の取引者及び需要者は、医療関係者及び患者であるところ、そのうちの医療関係者は、医薬の知識を有する専門家であり、処方薬剤に誤りのないよう細心の注意を払うことが通例であるとはいえ、実際の医療現場では、医薬品を取り違えることによる医療事故が少なからず存在しており、近年、大きな社会問題となっている。特に、有効成分・薬効を同一にするジェネリック医薬品に類似名称が多く、取り違えが発生しやすいとの指摘から、平成17年9月22日付けで、厚生労働省より、「医療用後発医薬品の承認申請にあたっての販売名の命名に関する留意事項について」と題する通達において、「今後新たに承認される医療用後発医薬品の販売名については、原則として含有する有効成分に係る一般名称を基本としたものとすること」との通達があり(甲第49号証)、さらなる一般名称化普及のため、同23年12月27日付けで、日本ジェネリック製薬協会より、これまでの販売名についても、順次、一般名称に変更するようにとの要請が出されている(甲第50号証)。
かかる特殊な状況にあるジェネリック医薬の世界では、商品を識別するための社名商標(ハウスマーク)は、先発医薬品やOTC医薬品に比べて、はるかに重要な役割を果たすことになる。すなわち、有効成分名を商品の名称とするジェネリック医薬品においては、社名や屋号のみが識別機能を発揮し得る唯一の表示となる。このような状況下において、他社製品との差別化を図るために、一般名称の語頭や語尾に会社名を付した商品名を採択する企業も数多く存在し(甲第51号証)、引用商標のみならず、本件商標においても、一般名称の語頭や語尾に付加して使用される可能性をぬぐえない。また、先行医薬品の商品名と後発医薬品の一般名称及び会社名からなる商品名が列挙される場合が十分に想定でき、さらには、誤飲防止のために、錠剤の極めて小さいスペースに一般名称や会社名等が印字された医薬品(甲第10号証の14)が販売されるといった商品流通の実態が存在する中、「医薬品」の需要者である患者は医薬に関する知識も商品選択における注意力も乏しいといった事情を勘案すると、外観における片仮名「ノ」の文字の有無の相違や、称呼における弱音「ノ」の音の有無の相違という僅差のみで、両社(者)を区別することは困難であり、商品の取り違えに係る事故を誘発する原因ともなりかねない。
以上によれば、医薬品分野における「ニプロ」商標は、ジェネリック医薬品業界のこうした特殊な事情から極めて重要な機能を持つ商標であるといえる。
(3)商品の類似性について
本件商標の指定商品は、すべて引用商標1ないし引用商標7のいずれかの指定商品と同一又は類似するものである。具体的には、以下のとおりである。
ア 本件商標の指定商品中の「薬剤」は、引用商標2ないし引用商標6の指定商品と同一である。
イ 本件商標の指定商品中の「医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包袋,包袋液,胸当てパッド」は、引用商標3ないし引用商標7の指定商品と同一である。
ウ 本件商標の指定商品中の「医療用腕環」は、引用商標6の指定商品と同一であり、かつ、引用商標3ないし引用商標5の指定商品と類似する。
エ 本件商標の指定商品中の「失禁用おしめ」は、引用商標6及び引用商標7の指定商品と同一であり、かつ、引用商標3ないし引用商標5の指定商品と類似する。
オ 本件商標の指定商品中の「防虫紙、乳幼児用粉乳」は、引用商標7の指定商品と同一である。
カ 本件商標の指定商品中の「乳糖」は、引用商標6及び引用商標7の指定商品と同一である。
(4)まとめ
以上のことから、本件商標と引用商標とは、同一又は類似の指定商品又は指定役務について使用される類似の商標であり、また、引用商標が極めて高い著名性を獲得していること、及び、上記の取引の実情に加えて、「医薬品」の需要者である患者等における視覚や聴覚等の注意力が乏しいこと等を考慮すると、両商標の類似性がますます高くなることは明白である。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当することは明らかであることから、本件商標の登録は、無効とされるべきである。
4 本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する理由
(1)引用商標の周知、著名性について
請求人の業務に係る引用商標が、本件商標の登録出願時以前から、我が国において、全国的に著名商標となっていることは、上記2に述べたとおりである。
(2)商標の類似性について
本件商標と引用商標とは、上記3(1)において述べたとおり、
ア 称呼において、本件商標から生ずる「ニノプロ」の称呼と引用商標から生ずる「ニプロ」の称呼とは、その差異音である「ノ」が、鼻音であって、弱く発音されるものであり、後続する破裂音「プ」に吸収されることから、聴者の記憶に残るのは、強音である「ニプロ」となり、両商標から生ずる称呼を聴別することは困難であり、
イ 外観において、本件商標は、片仮名4文字から構成されるものであるところ、該文字は、その構成中に引用商標4及び引用商標6を構成する3文字すべてを順序どおりに含むことから、その外観上の差異は、斜線等と認識され得る「ノ」の文字の有無にすぎず、本件商標と引用商標4及び引用商標6とは、相紛れるものであり、
ウ 観念において、本件商標の構成中の「ノ」の文字は、格助詞としての語義を有し、観念的に弱く、その前後にある「ニ」及び「プロ」の各文字に埋没し、「ニプロ」の文字でもって観念に働きかける、
といったものであるから、両商標は、外観、称呼及び観念において近似するものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念において互いに紛れるおそれのあるものであることから、これらを総合勘案すれば、医薬品等の取引者及び需要者においては、本件商標の構成中の「ニプロ」の文字部分に注目して、周知著名となっている引用商標を連想、想起し、当該商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
(3)引用商標を使用する商品と本件商標の指定商品との関連性について
本件商標の指定商品中の「薬剤」は、請求人のハウスマークである引用商標を使用する商品「医薬品」を含む商品であり、その生産部門、販売部門、原材料、用途及び需要者層等において一致する関連性の高い商品である。また、本件商標の指定商品中、「薬剤」以外の指定商品についても、すべて医療用剤及び医療材料であり、医療の総合メーカーとして知られる請求人の業務に係る商品とは、主に病院等の医療機関で医療従事者が取り扱うことの多い点で生産部門、販売部門、原材料、用途及び需要者層等が一致し、関連性の高い商品であるといえる。
そして、請求人は、引用商標1について、防護標章登録を受けており、当該防護標章登録に係る指定商品には、本件商標の全指定商品が含まれているところ(甲第45号証の1)、防護標章登録制度は、需要者間に広く認識された登録商標について、他人がそれと同一又は類似の商標を非類似の商品又は役務について使用すると出所の混同を生ずるおそれがある場合に、使用意思のない非類似の商品又は役務について予め登録を認めることによって、周知著名な商標の禁止権の範囲を拡大し、厚い保護を図ろうとするものであるから、上記防護標章登録において引用商標1が周知著名性を獲得していると認められた商品「医療機械器具」と本件商標の指定商品とは、画一的な分類では商品が非類似であったとしても、同一又は類似する商標を使用した場合、出所の混同を生ずる蓋然性が高いものといえる。
(4)本件商標が請求人の引用商標と誤認されるおそれについて
いわゆる「レールデュタン判決」(最高裁(三小)平10年(行ヒ)85号)で説示されているように、商標法第4条第1項第15号に規定する「『混同を生ずるおそれの有無』は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。」とされている。
本件にあっては、本件商標と引用商標との類似性、請求人の引用商標の著名性及び独創性に加えて、上述の特殊な取引の実情を鑑みれば、本件商標に接した需要者、取引者が、請求人の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同するおそれがあるばかりでなく、請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同するおそれがあることは明らかである。
(5)「医薬品」について混同のおそれ(商標法第4条第1項第15号)が認められた例
「医薬品」を指定商品とする商標について、商標が同一ではなく、称呼において1音相違又は2音若しくは3音もの相違があるにもかかわらず、混同のおそれがあり、商標法第4条第1項第15号に該当すると認定された事例は、以下を含めて多数存在する。
ア 平成16年(行ケ)第256号(甲第52号証の1)
(ア)商標
「メバロチン」又は「MEVALOTIN」
「メバスロリン/MEVASROLIN」
(イ)裁判所の判断
「メバロチン」及び「MEVALOTIN」の著名性及び独創性を認めた上で、称呼については、共通する音が聴者の記憶、印象に残りやすく、相違音が称呼全体に及ぼす影響が小さいため、両称呼は、全体の語調、語感が近似するとし、外観においても、本件商標を構成する6文字のうちの4文字と引用商標を構成する5文字のうちの4文字とが共通するため、相当程度の共通点が存在するとし、称呼及び外観において相当程度の類似性を有すると認定している。
そして、本件商標と引用商標との称呼上の差異を強調し、両称呼は別異の商標として看取、認識されるものであるから混同を生ずるおそれはないとした審決に対しては、両商標が商標法第4条第1項第11号に該当するかはさておき、相当程度類似しており、引用商標の著名性及び両商標に係る商品の関連性の強さ、取引者、需要者の共通性の程度を考慮すれば、称呼上の相違点をもって混同のおそれがないと結論付けることはできないと説示している。
その上で、医療機関や薬局では先発医薬品と後発医薬品とが同時に取り扱われることも少なくないと考えられること、両商標の類似性の程度、引用商標の著名性を考慮し、本件商標に接した医師や薬剤師は、引用商標を容易に想起し、本件商標を原告あるいは原告と資本関係ないしは業務提携関係にある会社の業務に係る商品等と混同するおそれがあると判断している。
(ウ)本件への当てはめ
上記裁判所の判断を本件に当てはめてみると、以下のとおりである。
(a)称呼において、共通する「ニ」及び「プロ」の各音は、語頭音及び破裂音であるため、いずれも強音であり、聴者の印象、記憶に残る音であるのに対し、差異音「ノ」は、鼻音であるため、やや弱い音であり、称呼全体に及ぼす影響は小さい。
(b)外観において、本件商標を構成する4文字中の3文字と引用商標3を構成する3文字とが共通し、大いなる共通性を有する。
(c)引用商標の著名性については、上記2で述べたとおりであり、先の異議の決定(甲第45号証)においても「優に認められる」と認定されている。
(d)医薬品の名称として、後発医薬品と先発医薬品との同時取扱いが十分に想定し得る。
(e)本件商標に係る商品と引用商標に係る商品とに関連性があり、取引者、需要者も共通している。
本件は、上記(a)ないし(e)のように、上記裁判例の要件をすべて充足するものであるから、当該裁判例に倣い、称呼上の相違点をもって混同が生じないと結論付けるべきではなく、本件商標と引用商標とが混同を生ずるおそれがあると判断されるべきことは明白である。
イ 平成11年(行ケ)第309号(甲第52号証の2)
(ア)商標
「カプトリルR」又は「CAPTORIL R」
「カプトロン/CAPTORON」
(イ)裁判所の判断
本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するか否かについて検討するまでもなく、同法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであると判断している。
この判決では、「カプトリル」及び「CAPTORIL」の著名性を認めた上で、両商標は、薬剤の商標の接尾語として多数使用されている「リル」や「ロン」に比して自他商品の識別力の強く重要な要素を占める「カプト」を共通にし、これに接する取引者及び需要者は、「カプト」又は「CAPTO」の文字部分に着目し、当該商品が請求人の取扱いに係る商品であるかのように誤認し、出所混同を生ずるおそれがあると認定している。
ウ 平成9年審判第16494号(甲第52号証の3)
(ア)商標
「フラボステン/FLAVOSTEN」
「OSTEN/オステン」
(イ)審決における判断
本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するか否かについて検討するまでもなく、同法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであると判断している。
この審決では、「オステン」及び「OSTEN」の著名性を認めた上で、これに接する取引者及び需要者は、「オステン」及び「OSTEN」の文字部分に着目し、当該商品が請求人の取扱いに係る商品であるかのように誤認し、出所混同を生ずるおそれがあると認定している。
エ 平成10年審判第35564号(甲第52号証の4)
(ア)商標
「ウルソール」
「ウルソ」又は「URSO」
(イ)審決における判断
本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からしても相紛れない非類似の商標であり、商標法第4条第1項第11号に該当しないと判断した上で、「ウルソ」シリーズの商品が著名であるため、「ウルソ」の文字を一部に有する本件商標は、これに接する取引者及び需要者が、参加人の業務に係る周知、著名な「ウルソ」、「ハイウルソ」等を容易に想起、連想し、当該商品が参加人又は参加人と組織的若しくは経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるため、商標法第4条第1項第15号に該当すると判断している。
オ 上記した判決及び審決例によれば、医薬品においては、投与される患者への誤飲防止等、出所の混同による社会的影響を抑える必要性を考慮した慎重な判断がなされており、商標の比較において多くの相違点があるとしても、商標の周知、著名性によっては、出所の混同を生じるおそれが高くなると判断されていることが裏付けられる。
(6)まとめ
上記に鑑みれば、本件商標をその指定商品に使用する場合、請求人の業務に係る商品と混同を生じさせるおそれが高く、よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当することは明らかであり、その登録は無効とされるべきである。
5 結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べた。
1 商標法第4条第1項第11号に該当するか否かについて
請求人は、本件商標が引用商標と類似し、かつ、両商標の指定商品は同一又は類似する商品である旨主張している。
しかしながら、本件商標と引用商標とは、本件商標から生ずる称呼が「ニノプロ」の4音からなるのに対し、引用商標から生ずる称呼が「ニプロ」の3音からなるところ、両称呼は、「ニ」、「プ」及び「ロ」の各音を共通にするとしても、いずれも非常に短い音構成からなるものであるため、本件商標の称呼において2音目に位置する「ノ」の音の有無が両称呼の差異に及ぼす影響は極めて大きく、明確に聴別し得るものであるとするのが相当である。
また、本件商標から生ずる「ニノプロ」の称呼は、2音目の「ノ」の音にアクセントが置かれるのに対し、引用商標から生ずる「ニプロ」の称呼は、1音目の「ニ」の音にアクセントが置かれるものであるから、これらをそれぞれ一連に称呼したとしても、語調、語感が異なり、互いに紛れるおそれはないものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、称呼上、類似しないものと思料する。
さらに、本件商標と引用商標とは、いずれも特定の意味を有しない造語であるから、観念において比較することができないものである。
加えて、本件商標と引用商標とは、外観において明確に区別し得るものであるから、外観上、類似しないものと思料する。
したがって、本願商標と引用商標とは、称呼、観念及び外観のいずれにおいても類似しない商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。
2 商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについて
請求人は、引用商標が、請求人の業務に係る商標として、広く一般に知られており、これと類似する本件商標がその指定商品に使用された場合、商品の出所について混同を生じるおそれがある旨主張している。
しかしながら、上記1において述べたとおり、本件商標と引用商標とは、互いに類似しない商標であるから、たとえ、医療機器及び医療用医薬品について、引用商標の周知性が認められるものであるとしても、商品の出所について混同を生じるおそれはない。
また、請求人が製造、販売する医療機器及び医療用医薬品は、病院や診療所等の医師、薬剤師を介した医療機関で取り扱われるものであるのに対し、被請求人が製造、販売する一般用医薬品は、ドラッグストア、量販店、コンビニエンスストア、インターネット通販等で取り扱われるものであるから、両者は、商品の流通場所やその取扱条件等が著しく異なり、商品の取り違えなどは生じ得ないものである。
さらに、請求人が使用する引用商標は、提出された証拠資料をみるに、商品名(製品名)としての使用というよりは、むしろ製造、販売する企業名を表示するために使用しているところ、本件商標は、商品名(製品名)として使用するものであって、かつ、それを製造、販売する被請求人の企業名の表示は別途行なうことを考えると、引用商標を使用した商品と本件商標を使用した商品との間で、商品の出所の混同を生じさせるおそれはないとするのが相当である。
したがって、本件商標をその指定商品に使用しても、引用商標との間で、商品の出所について混同を生じるおそれはないので、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しないものである。
3 まとめ
以上述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当しないものであるから、その登録は、同法第46号第1項第1号により、無効とされるべきものではない。

第5 当審の判断
請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであると主張しているので、以下、順次検討する。
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、「ニノプロ」の片仮名を標準文字で表してなるものであるところ、該片仮名は、その構成文字間において軽重の差はなく、また、全体で4文字という比較的短い構成でもあることから、本件商標は、その構成全体をもって一体的に看取、把握されるものというべきである。
また、本件商標を構成する「ニノプロ」の片仮名は、辞書類に載録されている既成の語とは認められない。
してみれば、本件商標は、「ニノプロ」の称呼を生ずるものであって、特定の観念を生ずることのない造語からなるものである。
(2)引用商標
ア 引用商標1、引用商標2及び引用商標7
引用商標1、引用商標2及び引用商標7は、いずれも別掲1に示すとおりの構成態様からなるものであるところ、その構成中、「NI」の欧文字と「O」の欧文字との間に位置するものは、その外形的特徴に照らせば、「PR」の欧文字をデザイン化して表したものと看取、理解されるとみるのが相当である。
そうとすると、上記各引用商標は、「NIPRO」の欧文字からなり、その構成中の「PR」の文字部分をデザイン化して表したものと認識されるというべきであり、また、該「NIPRO」の欧文字は、辞書類に載録されている既成の語とは認められない。
してみれば、上記各引用商標は、「ニプロ」の称呼を生ずるものであって、特定の観念を生ずることのない造語からなるものである。
イ 引用商標3
引用商標3は、前記第2の3のとおり、「NIPRO」の欧文字を標準文字で表してなるものであるところ、該欧文字は、その構成文字間において軽重の差がない上、全体で5文字という比較的短い構成でもあることから、引用商標3は、その構成全体をもって一体的に看取、把握されるものというべきである。
また、引用商標3を構成する「NIPRO」の欧文字は、辞書類に載録されている既成の語とは認められない。
してみれば、引用商標3は、「ニプロ」の称呼を生ずるものであって、特定の観念を生ずることのない造語からなるものである。
ウ 引用商標4及び引用商標6
引用商標4は、前記第2の4のとおり、「ニプロ」の片仮名を標準文字で表してなるものであるところ、該片仮名は、その構成文字間において軽重の差がない上、全体で3文字という比較的短い構成でもあることから、引用商標4は、その構成全体をもって一体的に看取、把握されるものというべきである。
また、引用商標6は、「ニプロ」の片仮名を別掲3に示すとおりの態様で表してなるものであり、引用商標4における場合と同様、その構成全体をもって一体的に看取、把握されるものというべきである。
そして、引用商標4及び引用商標6を構成する「ニプロ」の片仮名は、辞書類に載録されている既成の語とは認められない。
してみれば、引用商標4及び引用商標6は、いずれも「ニプロ」の称呼を生ずるものであって、特定の観念を生ずることのない造語からなるものである。
エ 引用商標5
引用商標5は、別掲2に示すとおり、横長楕円輪郭内に「Nipro」の欧文字を配してなるものであるから、その構成全体をもって一体的に看取、把握されるものというべきである。
また、引用商標5の構成中の「Nipro」の欧文字は、辞書類に載録されている既成の語とは認められず、また、該欧文字と上記横長楕円輪郭とが組み合わされることにより、特定の意味合いを生ずるものとも認められない。
してみれば、引用商標5は、「ニプロ」の称呼を生ずるものであって、特定の観念を生ずることのないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否
ア 外観
本件商標と引用商標とは、それぞれ上記(1)及び(2)のとおりの構成態様からなるものであるところ、そのうちの本件商標と引用商標1ないし引用商標3、引用商標5及び引用商標7とを比較すると、両者は、その構成文字を異にするなど、外観において明らかな差異があることから、互いに見誤るおそれはない。
また、本件商標と引用商標4及び引用商標6とを比較するに、両者は、「ニ」、「プ」及び「ロ」の各文字を共通にするものの、「ノ」の文字の有無という明らかな差異があり、その差異は、3文字と4文字という比較的短い文字構成にあっては、容易に看取、把握し得るものといえ、視覚上、両者を識別する際の差異点として、明確に認識されるものとみるのが相当であるから、この点の外観類似をいう請求人の主張を採用することはできない。
よって、本件商標と引用商標とは、外観上、相紛れるおそれのないものである。
イ 称呼
本件商標から生ずる「ニノプロ」の称呼と引用商標から生ずる「ニプロ」の称呼とを比較するに、両称呼は、2音目における「ノ」の音の有無に差異が認められるところ、たとえ該差異音「ノ」が鼻音であるとしても、そのことをもって直ちに後続の「プ」の音に吸収されるとはいい難く、また、「ニノプロ」の称呼は、全体で4音という比較的短い音構成からなるものであることから、該差異音の有無が称呼全体に及ぼす影響は決して少なくないとみるのが相当である。
してみれば、本件商標から生ずる「ニノプロ」の称呼と引用商標から生ずる「ニプロ」の称呼とをそれぞれ一連に称呼するときは、語感、語調が少なからず相違し、互いに聴別し得るというべきである。
よって、本件商標と引用商標とは、称呼上、相紛れるおそれのないものである。
ウ 観念
本件商標と引用商標とは、いずれも特定の観念を生ずることのないものであるから、観念上、両商標が類似するということはできない。
エ 小括
上記によれば、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれからみても、類似する商標ということはできないものである。
(4)取引の実情
請求人は、医薬品を巡る取引の実情に関して、「請求人は、ニプロファーマ株式会社を筆頭に、いわゆるジェネリック医薬品(後発医薬品)の研究開発・普及に取り組んでいる。近年、我が国の医療費引き下げ政策の一環として、ジェネリック医薬品の使用が促進されており、また、『医薬品』の取引者及び需要者は、医療関係者及び患者であるところ、医療現場では、医薬品を取り違えることによる医療事故が少なからず存在しており、近年、大きな社会問題となっている。平成17年9月22日付けで、厚生労働省より、『今後新たに承認される医療用後発医薬品の販売名については、原則として含有する有効成分に係る一般名称を基本としたものとすること』との通達があり(甲第49号証)、同23年12月27日には、日本ジェネリック製薬協会より、これまでの販売名についても、順次、一般名称に変更するようにとの要請がされている(甲第50号証)。このような状況下において、他社製品との差別化を図るために、一般名称の語頭や語尾に会社名を付した商品名を採択する企業も数多く存在し(甲第51号証)、引用商標のみならず、本件商標においても、一般名称の語頭や語尾に付加して使用される可能性をぬぐえず、さらに、誤飲防止のために錠剤の極めて小さいスペースに一般名称や会社名等が印字された医薬品(甲第10号証の14)が販売されるといった商品流通の実態が存在する中、『医薬品』の需要者である患者は医薬に関する知識も商品選択における注意力も乏しいといった事情を勘案すると、外観における片仮名『ノ』の文字の有無の相違や、称呼における弱音『ノ』の音の有無の相違という僅差のみで、両社(者)を区別することは困難であり、商品の取り違えに係る事故を誘発する原因ともなりかねない。」旨主張している。
そこで検討するに、近年、国民医療費抑制の観点から、ジェネリック医薬品の使用が促進されていること、また、そのような医薬品につき、厚生労働省や日本ジェネリック製薬協会から、一般名称を基本とする販売名を採択すべき旨の指導ないし要請がなされていることは認められるものの、本件商標と引用商標とは、上記(3)において認定、判断したとおり、その外観、称呼及び観念のいずれからみても、相紛れるおそれのないものであって、類似する商標ということはできないものであるから、これよりは、商品の出所識別に当たり、取引者、需要者が両社(者)を区別することは困難ということはできない。
(5)まとめ
上記(3)及び(4)を総合すれば、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのある類似の商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
商標法第4条第1項第15号における「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである(平成12年7月11日 最高裁第三小法廷判決 平成10年(行ヒ)第85号)。
以下、上記観点から、請求人の主張について検討する。
(1)引用商標の周知著名性
ア 事実認定
引用商標は著名であるとして請求人が提出した証拠方法及び同人による主張の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、1954年(昭和29年)7月、日本硝子商事株式会社として設立された会社であって、2001年(平成13年)4月に商号をニプロ株式会社に変更したこと及び、請求人は、医療用機械器具及び医薬品(以下「薬剤」という。)の製造・販売事業を中心とする医療総合メーカーであり、日本全国に56の支店・営業所を有していること(甲第3号証ないし甲第7号証(枝番号を含む。))。
(イ)請求人は、「ニプロ」の商標を昭和47年から使用しており、また、同46年10月に「薬剤」や「医療機械器具」について商標「ニプロ」及び「NIPRO」を登録出願し、同52年及び同57年に設定登録されていること(主張の趣旨及び甲第8号証(枝番号を含む。))。
(ウ)請求人の商品、製品カタログ及びパンフレットには、医療用機械器具及び薬剤について、「ニプロ」及び「NIPRO」の商標が使用されてきていること。すなわち、
(a)「ニプロ」の片仮名からなる商標については、薬剤について、甲第10号証の3(2012年3月作成のパンフレット)、甲第10号証の5(2011年2月作成のパンフレット)、甲第10号証の9(2009年3月作成のパンフレット)、甲第10号証の10(2013年6月作成のパンフレット)にみられるように、比較的近年において使用されていること。
(b)別掲1に示す態様の商標については、甲第10号証(枝番号を含む。2000年8月ないし2013年9月の間に作成されたもの。)において使用されていること。
(c)医療用粘着シートや創傷被覆保護材等の商品については、別掲1に示す態様の商標が、甲第13号証の1ないし3(2006年5月、2008年6月及び2009年2月作成のパンフレット)において使用され、かつ、別掲3に示す態様の商標が、甲第13号証の1及び甲第13号証の3において使用されていること。
(エ)請求人の医療機器に関する2001年度ないし2012年度の我が国における売上高は、1,000億円以上を維持していること(甲第14号証)並びに、薬剤に関する2010年度及び2011年度の売上高は、それぞれ約380億円及び約400億円となっていること(甲第15号証)。
(オ)請求人の事業分野別売上高は、2010年度が、医療機器67.8%、薬剤19.4%、材料12.6%、その他0.2%であり、2011年度が、医療機器68.4%、薬剤18.9%、材料12.5%、その他0.1%であること(甲第15号証及び甲第16号証)。
(カ)請求人は、医療機器メーカーとして、2009年度及び2010年度の売上高ランキングで第4位にランク付けされ、また、人工透析用回路、中心静脈用カテーテル、輸液システム等の主要製品の市場規模とメーカーシェア(2010年)において、三指に入るようなシェアを有すること(甲第17号証)。
(キ)請求人の医療機器に関する2005年度ないし2012年度の我が国における広告宣伝費は、2009年度を除き、8億円を超える額となっていること(甲第14号証)。
(ク)新聞、雑誌、テレビコマーシャル等(医療従事者が目にする業界紙・専門誌のみならず、広く一般大衆が目にする新聞(一般紙)やテレビコマーシャル)において、医療用機械器具及び薬剤について、継続して引用商標が使用されていること。すなわち、
(a)2009年(平成21年)6月ないし2012年(平成24年)7月の間に発行された毎日新聞、朝日新聞、読売新聞及び日本経済新聞(甲第19号証ないし甲第22号証(枝番号を含む。))においては、「信頼の技術を、医薬品へ」及び「信頼の医療器・医薬品」の表示とともに、別掲1に示す態様の商標が大きく表示され、その下部に小さく「ニプロ/ニプロファーマ」の片仮名が表示されていること。
(b)2001年(平成13年)4月に発行された月刊誌「エキスパートナース」(甲第24号証の1)においては、別掲3に示す態様の商標が医療機器について使用されていること並びに、2004年(平成16年)12月ないし2012年(平成24年)5月の間に発行された同月刊誌(甲第24号証の3ないし14)、2009年(平成21年)10月ないし2012年(平成24年)4月の間に発行された月刊誌「月刊ナーシング」(甲第25号証の1ないし6)、2001年(平成13年)10月ないし2012年(平成24年)3月の間に発行された月刊誌「クリニカルエンジニアリング」(甲第26号証の1ないし12)、2004年(平成16年)1月ないし2012年(平成24年)3月の間に発行された月刊誌「臨床透析」(甲第27号証の1ないし9)、2004年(平成16年)1月ないし2012年(平成24年)の間に発行された月刊誌「腎と透析」(甲第28号証の1ないし9)及び、2011年(平成23年)9月及び2012年(平成24年)1月に発行された月刊誌「インフェクションコントロール」(甲第29号証の2及び3)においては、別掲1に示す態様の商標が医療機器について使用されていること。
(c)1993年(平成5年)4月4日から放映開始されたテレビコマーシャル映像に係るカット写真(甲第36号証の1)においては、その映像中に、「信頼の医療器」の文字とともに、別掲2に示す態様の商標が表示されていること、1994年(平成6年)4月ないし1998年(平成10年)7月の間に放映開始されたテレビコマーシャル映像に係るカット写真(甲第36号証の2ないし6)においては、その映像中に、「信頼の医療器」の文字とともに、別掲1に示す態様の商標が表示されていること及び、2005年(平成17年)5月ないし2010年(平成22年)5月の間に放映開始されたテレビコマーシャル映像(甲第36号証の7ないし10)においては、「信頼の医療器・医薬品」の文字とともに、青色で表された別掲1に示す態様の商標及び「ニプロ・ニプロファーマ」の商標(「ニプロ」の文字部分は、別掲3に示す態様の商標と同一のもの。)が表示されていること。
(ケ)請求人による平成17年7月14日付け及び2010年(平成22年)5月27日付けの各ニュースリリースにおいては、それぞれ平成17年の7月14日及び8月下旬並びに2010年(平成22年)5月29日から、新たなテレビコマーシャルの放映を開始する旨報じられていること(甲第39号証の6及び7)。
(コ)請求人は、上記(ク)において記載したもの以外の宣伝広告活動として、2001年(平成13年)4月以降、別掲1又は別掲3に示す態様の商標を表示した看板広告を本社ビルや支店等で掲示したこと(甲第41号証の1、5、7、11、12、14及び19)、2006年(平成18年)ないし2008年(平成20年)の間、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)に加盟するチーム「ヴァンフォーレ甲府」のユニフォームスポンサー支援(ユニフォームの背部に別掲1に示す態様の商標を表示すること)をしたこと(甲第42号証(枝番号を含む。))、2012年(平成24年)6月の27日ないし29日に東京ビッグサイトで開催された「第25回インターフェックスジャパン」に出展し、自己のブースの看板等に別掲1に示す態様の商標を表示したこと(甲第43号証の1ないし3)。
(サ)請求人は、引用商標1について、平成22年5月28日に防護標章登録第1号を、同23年3月18日に防護標章登録第2号及び第3号を、それぞれ受けており(甲第44号証の1ないし3)、また、AIPPI・JAPAN(一般社団法人日本国際知的財産保護協会)が1998年(平成10年)に刊行した「日本有名商標集」に、「NIPRO」の欧文字からなる商標が掲載されていること(甲第46号証)。
イ 判断
(ア)引用商標1ないし引用商標3、引用商標5及び引用商標7について
上記アにおいてした認定によれば、別掲1に示す態様の商標については、請求人の業務に係る商品である医療用機械器具及び薬剤に使用、宣伝広告され、3件の防護標章登録を受けていることに加え、「NIPRO」の欧文字からなる商標が「日本有名商標集」に掲載されるなどしたことをも併せ考慮すれば、引用商標1ないし引用商標3、引用商標5及び引用商標7は、取引者、需要者間において広く知られているものであり、とりわけ、引用商標1及び引用商標2は、医療用機械器具及び薬剤について、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者間に広く認識されていたといえるものである。
(イ)引用商標4及び引用商標6について
上記アにおいてした認定によれば、引用商標4及び引用商標6は、請求人の業務に係る商品である医療用機械器具に使用、宣伝広告された結果、医療用機械器具の取引者、需要者間においては、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、広く認識されていたといえるものであり、また、薬剤については、その取引者、需要者が医療用機械器具の取引者、需要者と共通することも少なくないことを勘案すれば、該取引者、需要者間において、請求人の業務に係る商品である薬剤に使用する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、上記医療用機械器具に係る認識ほどではないものの、ある程度知られていたといえるものである。
なお、請求人は、別掲1に示す態様の商標及び「ニプロ」の片仮名からなる商標の双方について著名性を獲得した旨主張しているが、後者を薬剤に使用した期間や頻度は、前者のそれに比して相当程度低いものといわざるを得ず、よって、両者についての取引者、需要者間における認識の程度が、医療用機械器具及び薬剤のいずれにおいても同等とみることはできない。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度
本件商標と引用商標とは、上記1(3)のとおり、その外観、称呼及び観念のいずれからみても、類似するということはできないものである。
(3)独創性の程度
引用商標は、造語であって、その独創性の程度は高いものというべきである。
他方、本件商標も、造語であって、その独創性の程度は高いものというべきであるところ、本件商標が、引用商標の周知著名性に依拠して採択されたとの事情は認められない。
(4)取引の実情
上記1(4)において述べたとおり、取引者、需要者が、商品の出所識別に当たり、本件商標と引用商標とを区別することが困難とみるべき取引の実情は認められない。
(5)出所の混同のおそれ
本件商標と引用商標とは、上述のとおり、非類似の商標であって、十分に区別し得る別異の商標というべきものである。
また、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標のうち、特に引用商標1及び引用商標2は、医療用機械器具及び薬剤について、取引者、需要者間に広く認識されていたといえるものではあるが、本件商標と引用商標とは、それぞれ創造性の程度が高いものであって、本件商標が引用商標に依拠して採択されたとの事情は認められない。
以上を踏まえれば、本件商標は、これに接する取引者、需要者をして、直ちに引用商標を連想、想起させるとまではいえないものとみるのが相当であり、ほかに商品の出所について混同を生ずるおそれがあるとすべき特段の事情を見いだすこともできない。
してみれば、本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者は、該商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように連想、想起することはなく、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるということはできないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすることはできない。
別掲 別掲
1 引用商標1、引用商標2及び引用商標7(登録第3196763号商標、登録第3204662号商標及び登録第5377527号商標)


2 引用商標5(登録第4478863号商標)


3 引用商標6(登録第5202552号商標)


審理終結日 2014-06-04 
結審通知日 2014-06-06 
審決日 2014-06-19 
出願番号 商願2011-88717(T2011-88717) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (X05)
T 1 11・ 271- Y (X05)
T 1 11・ 263- Y (X05)
T 1 11・ 261- Y (X05)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 平松 和雄 
特許庁審判長 林 栄二
特許庁審判官 梶原 良子
田中 敬規
登録日 2012-06-01 
登録番号 商標登録第5498111号(T5498111) 
商標の称呼 ニノプロ 
代理人 特許業務法人あーく特許事務所 
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