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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X09
管理番号 1289717 
審判番号 取消2013-300383 
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-05-14 
確定日 2014-06-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第5310240号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5310240号商標の指定商品及び指定役務中、第9類「電子応用機械器具及びその部品」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5310240号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおり、「ecosc」の欧文字と「エコスク」の片仮名を2段に横書きしてなり、平成21年11月5日に登録出願、第9類「電子応用機械器具及びその部品」並びに、第16類、第20類、第35類、第37類、第40類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務及び第42類「建築物の設計,測量,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」を指定商品及び指定役務として、同22年3月19日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成25年5月31日である。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由として「本件商標は、その指定商品中『電子応用機械器具及びその部品』について、継続して3年以上、日本国内において商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれも使用した事実は存しないから、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきである。」旨述べた。
なお、請求人は、後記第3の被請求人の答弁に対し、何ら弁駁していない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、答弁書、口頭審理陳述要領書、平成25年12月27日付け及び同26年2月5日付け上申書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第8号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
本件商標は、「電子計算機用プログラム」について、本件審判の請求登録日である平成25年(2013年)5月31日前3年以内(以下「要証期間内」という。)に日本国内において使用されている。
2 本件商標の使用
本件商標は、別掲1に示すとおり、欧文字「ecosc」と片仮名「エコスク」を2段に横書きした構成である。
しかして、下記に示すとおり、乙各号証において使用されている商標は、本件商標と同一又は社会通念上同一であることは明らかであり、本件商標が使用されている商品「電子計算機用プログラム」が、請求に係る指定商品「電子応用機械器具及びその部品」に含まれることは明白である。
(1)乙第1号証について
乙第1号証は、電子計算機用プログラム「ecosc(エコスク)」の「操作マニュアル」である。
「操作マニュアル」の表紙及び3頁から64頁において、片仮名「エコスク」、ロゴマーク「ecosc」が各所で使用されている。これらの標章は、片仮名、ローマ字等の文字の表示を相互に変更するもの、又は書体のみに変更を加えた商標であり、商標法第50条括弧書きで規定する「(登録商標と)社会通念上同一と認められる商標」である。
そして、ログイン画面若しくは各プログラム画面の左上部などに本件商標(社会通念上同一の商標)が使用されている。
(2)乙第2号証について
乙第2号証は、「ecosc(エコスク)」の「Windows7動作検証項目兼結果報告書」であり、Windows7における「ecosc(エコスク)」の動作状況を検証し、その結果が示されている。
本号証から、本件商標が「電子計算機用プログラム」に使用されている事実は明らかであり、本件動作検証は2012年初めに行われ、同年3月9日に報告されたものであるから、要証期間内に使用されていることが明らかである。
(3)乙第3号証について
乙第3号証は、「ecosc(エコスク)」のログイン画面写真であり、ユーザーID・パスワード入力ボックスの上に、電子計算機プログラムの名称「ecosc(エコスク)」が記載されている。該写真から、本件商標が「電子計算機プログラム」に使用されている事実は明らかである。
(4)乙第4号証について
乙第4号証は、2012年に作成された、「顧客用商品提案書」であり、2011年4月から2012年8月までの顧客の消耗品購買状況を分析し、同提案書の18頁において、「ecosc(エコスク)」の導入費用・導入事例などを説明している。
(5)乙第5号証について
乙第5号証は、被請求人が株式会社今村商事(以下「今村商事」という。)宛てに発行した請求書であり、東日本旅客鉄道株式会社千葉支社(以下「JR東日本」という。)に導入された「ecosc/エコスク」を通じて各商品が発注されたことを示すものである。請求書中の「摘要」欄にある「JR ECOSC」との記載は、「ecosc(エコスク)」を通じて発注が行われたことを意味し、その発注日は、2012年11月12日から11月28日であり、本件請求書の締日は同年11月30日である。
したがって、本件商標は、要証期間内に、電子計算機用プログラムに実際に使用されていたことが明らかである。
なお、本主張は、以下の乙第7号証により一部訂正されている。
(6)乙第6号証について
乙第6号証は、請求書(乙5)の受領者である今村商事が、「当該請求書の摘要欄に記載された『JR ECOSC』は、2012年11月12日にJR東日本に設置されたECOSCを通じて発注されたことを意味する」ことを証明する証明書である。
なお、本主張は、以下の乙第7号証により訂正されている。
3 口頭審理陳述要領書における要旨
(1)「ecosc(エコスク)」について
ア 備品在庫管理システム「ecosc(エコスク)」(以下「本件システム」という。)は、本件システムを導入する利用者のパーソナルコンピュータに、被請求人が用意したアプリケーションプログラム(以下「本件プログラム」という。)をインストールした上で、当該パーソナルコンピュータ上で本件プログラムを起動し、これを操作することで、備品の在庫管理を可能とするものである。
なお、本件プログラムを操作して在庫管理を行う上で、本件プログラムがインストールされたパーソナルコンピュータがネットワークに接続されている必要はない。
イ 本件システムの導入が、本件プログラムのインストールを伴うものであることは、「ECOSCWindows 7 動作検証項目兼結果報告書」(乙2)からも分かる。
(2)JR東日本による「ecosc(エコスク)」の導入について
JR東日本は、平成24年11月30日に、本件システムを導入し、導入作業の一環として、被請求人の従業員が、CD-ROMを用いてJR東日本の社内に設置されているパーソナルコンピュータに、本件プログラムをインストールする作業を行った。(なお、当該CD-ROM自体は、当該従業員が持ち帰った。)
なお、今村商事の代表取締役の作成にかかる平成25年7月10日付け証明書(乙6)には、被請求人が今村商事に対して発行した請求書(乙5)が、2012年(平成24年)11月12日にJR東日本に設置された「ECOSC」を通じて発注された商品の請求にかかるものである旨の記載があるが、この記載は、厳密には正確ではない。JR東日本に本件プログラムをインストールする作業が行われたのは、平成24年11月30日であり、同月12日の時点ではまだ設置されていなかったが、JR東日本は既に本件システムを導入することを決定しており、JR東日本が本件システムを利用して管理する予定の備品を、同日、今村商事が被請求人に対して発注したものである(乙7)。
(3)本件プログラムの起動後に表示されるロゴについて
ア エコスク操作マニュアル(乙1)の3頁に説明があるとおり、本件プログラムを起動すると、最初に起動画面が表示され、更に、起動画面の左下にあるmaintenanceボタンをクリックすると、ログイン画面が表示される。
起動画面及びログイン画面の左上には、別掲2に示す「ecosc(エコスク)」のロゴ(以下「使用商標1」という。)が小さく表示され、ログイン画面の中央には、別掲3に示す「ecosc(エコスク)」のロゴ(以下「使用商標2」という。)が大きく表示されている(以下、これらのロゴを併せて「本件ロゴ」という。)。
イ 本件ロゴは、JR東日本にインストールされた本件プログラムの起動画面及びログイン画面にも表示され、本件プログラムの起動時に表示される起動画面及びログイン画面は、JR東日本にインストールして以降、変更はない。
(4)被請求人が要証期間内に「電子計算機用プログラム」について本件商標を使用したことについて
ア 被請求人は、平成24年11月30日、JR東日本のパーソナルコンピュータに本件プログラムをインストールしたものであり、また、該プログラムは、起動させると本件ロゴをパーソナルコンピュータの画面上に表示させるものである。
かかる行為は、「電子計算機用プログラム」に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付したものを引き渡す行為であり、「電子計算機用プログラム」についての本件商標の「使用」(商標法第2条第3項第2号)に該当する。
したがって、本件商標の商標権者である被請求人は、要証期間内に「電子計算機用プログラム」について本件商標を使用している。
イ 本件プログラムは、パーソナルコンピュータにインストールして使用するものであり、本件プログラムを操作して在庫管理を行う上で、パーソナルコンピュータがネットワークに接続されている必要はない。
したがって、被請求人が本件プログラムについて行った行為は、システムの提供ではなく、商品「電子計算機用プログラム」についての取引に該当する。
ウ 本件プログラムを起動すると起動画面及びログイン画面において本件ロゴが画面上に表示されるよう、本件ロゴのデータを本件プログラムに組み込んだものは、本件ロゴを「電子計算機用プログラム」である本件プログラムに「付したもの」(商標法第2条第3項第2号)に該当する。
この点、商品が電子情報財である場合の商標法第2条第3項第1号の「付する」(及び、同第2号の「付したもの」)とは、商標の電磁的な情報が当該プログラム起動時々作業時のインターフェースに顧客が商標として視認できるよう、商標の電磁的な情報を組み込む行為(及び、組み込んだもの)をいう。
本件プログラムは、電子情報財たる商品であるので、これに上記のとおり本件ロゴのデータを組み込んだものは、本件ロゴを本件プログラムに「付したもの」に該当し、本件プログラムをJR東日本のパーソナルコンピュータにインストールする行為は、本件プログラムを「引き渡す」ことに該当する。
エ 被請求人が、その従業員をして、本件プログラムをJR東日本のパーソナルコンピュータにインストールする作業を行わせたことは、本件商標の「商標権者」である被請求人による本件プログラムの引渡しに該当する。
オ 本件プログラムに付された本件ロゴは、本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当する。
本件商標は、別掲1のとおり、「ecosc」の欧文字及び「エコスク」の片仮名を二段書きしてなるものであり、他方、本件ロゴは、別掲2(使用商標1)及び別掲3(使用商標2)のとおりである。
本件商標の「ecosc」の文字部分及び「エコスク」の文字部分からは、いずれも「エコスク」の称呼が生じ、特段の観念を生じさせない。
他方、本件ロゴは、いずれも「エコスク」の文字、「ecosc」の「o」の文字が植物の葉の形状となっているもの、及び、茶色の四角形の中に「eco supplies center」の文字を3段に記載してなるものである(なお、起動画面及びログイン画面の左上に表示されるロゴにおいては、「eco supplies center」の文字は必ずしも鮮明ではないが、この点は本件とは無関係である。)。かかる本件ロゴの構成からは、「エコスク」の文字部分あるいは「ecosc」の文字部分が、自他商品識別機能を果たす部分であると容易に理解できる。
したがって、本件ロゴは、本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当する。
カ 本件審判の請求の登録日は平成25年5月31日であり、要証期間は同日前3年以内であるところ、本件プログラムがJR東日本のパーソナルコンピュータにインストールされた日は平成24年11月30日であり、要証期間内の行為に該当する。
キ 以上より、本件商標の商標権者である被請求人は、「電子計算機用プログラム」に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付したものを、要証期間内にJR東日本に対して引き渡しており、これにより、要証期間内に「電子計算機用プログラム」について本件商標を使用(商標法第2条第3項第2号)したものである。
4 平成25年12月27日付け上申書における要旨
被請求人は、口頭審理陳述要領書において述べた事実を証明する証拠として、今村商事の課長作成にかかる平成25年12月25日付証明書(乙7)を提出する。
JR東日本への本件プログラムのインストール作業に立ち会っていた今村商事の課長は、該証明書において、本件プログラムが、平成24年11月30日に、JR東日本にインストールされたこと、本件プログラムの起動画面及びログイン画面に本件ロゴが表示されていたことを証明している。
また、今村商事の代表取締役の作成した証明書(乙6)に正確でない記載が存在することを説明している。
5 平成26年2月5日付け上申書における要旨
(1)乙第5号証について
答弁書における乙第5号証についての説明を以下のとおり訂正する。
乙第5号証は、被請求人が今村商事宛てに発行した請求書であるところ、JR東日本に導入予定であった本件プログラムを利用して管理する予定の備品を、今村商事が被請求人に対して発注したことを示すものであり、その発注日は、2012年11月12日から11月28日であり、本件請求書の締日は同年11月30日であるから、要証期間内に、被請求人が本件システムのプログラムをJR東日本に対して引き渡した事実を裏付けるものである。
(2)本件プログラムが商品として、独立して、被請求人により取引されたことについて
本件システムは、本件プログラムを操作することで、備品の在庫管理を可能とするものであり、コンピュータ、プリンター・バーコードリーダー等の付属品、並びに、管理される備品(主に文房具)の在庫を保管するための棚から構成される。これらは、本件システムを導入した企業内に設けられた空間(エコスク設置スペース)に設置される(乙4、18頁?21頁)。本件プログラムは、備品の出入庫及び在庫状況を記録・管理するという、本件システムにおいて中核的な役割を担うものであり、単に本件システムに付随するものではない。
企業が本件システムを導入するということは、被請求人から本件プログラムの引き渡しを受けることであり、本件システムを導入するに際して必要となるその他の作業は、引き渡しを受けた本件プログラムを当該企業が使用する上で必要となる作業にすぎない。
以上のような観点からすれば、本件システムについての取引とは、実質的には本件プログラムについての取引であり、そこでは、本件プログラムそれ自体が独立して商取引の対象となっているから、本件プログラムは商標法上の「商品」に該当する。
なお、口頭審理において、審判長から、「電子計算機プログラム」について独立した取引が行われたことを示す契約書等の証拠を提出するよう、指示を受けたが、本件プログラムを含む本件システムに関して被請求人がJR東日本との間で契約を締結したことを示す書類(契約書、見積書、発注書等)は存在せず、また、他社との間の契約に関する書類も見当たらない。
しかしながら、前述した点に鑑みれば、本件プログラムが独立して商取引の対象となっており、商標法上の「商品」に該当することは、既に提出済みの証拠及び今回新たに提出する証拠により明確であると思料する。
(3)操作マニュアル(乙1)の2頁以降の右上に「ecoplaマニュアル」との記載があることについて
操作マニュアルの各頁のヘッダー部分に記載のある「ecopla」とは、本件システムについて企画・構想を行っている段階で、未だ本件システムの名称が正式に決定する前に用いられていた、本件システムの仮称であり、本件システムの正式名称が「ecosc/エコスク」に決定したことから、被請求人は本件商標について商標出願を行ったが、本件システムのマニュアルについては、正式名称が決定する前からその作成に着手していたところ、正式名称が決定した後も、マニュアルのヘッダー部分の仮称の記載を正式名称に差し替えることを失念しており、その結果、乙第1号証の各頁のヘッダー部分に仮称の記載が残っていた次第である。
(4)上記(2)及び(3)の点を証明する証拠として、新たに、被請求人の部長の作成にかかる平成26年2月5日付陳述書(乙8)を提出する。
6 結論
以上のとおり、被請求人は、要証期間内に、取消請求にかかる指定商品中「電子計算機用プログラム」について本件商標を使用したものであるので、本件審判請求には理由がない。
よって、本件審判請求は成り立たないとの審決を求める。

第4 当審の判断
1 被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が本件商標と社会通念上同一と認められる商標を取消請求に係る指定商品「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに含まれる「電子計算機用プログラム」に使用している旨主張し、乙第1号証ないし乙第8号証を提出しているので、以下検討する。
(1)乙第1号証は、「エコスク操作マニュアル」(以下「マニュアル」という。)と題するマニュアル(写し)であるところ、表紙の中央に「エコスク操作マニュアル」の文字、及びその下部に、黄色の「ec」「sc」の欧文字とその文字の間に緑の一葉の図を一連に表し、その下部に茶色の帯状矩形中に白抜きで「eco supplies center」の欧文字を、さらにその下に「エコスク」の片仮名を3段にまとまりよく表した標章(別掲2、使用商標1)が表わされている。2頁目から64頁目までの右上部には、「ecopla マニュアル ver.0.0」及び「2/23/2012」の表示があり、3頁目以降には、1.ログイン、2.基本操作、3.入出庫管理等の項目に沿って、操作マニュアルが記載されている。
マニュアル中に表示された操作画面には、画面左上部に使用商標1が表示されている。
(2)乙第2号証は、2012年3月9日付けの株式会社クレメンテックからコクヨマーケティング株式会社にあてた「ECOSC Windows7動作検証項目兼結果報告書」であるところ、「1.検証環境について」の項目には前提条件として「【os】Windows7Professional 32Bit」の記載、インストールに関する注意事項に、「Program filesフォルダにインストールした場合・・・」等の記載があることから、「ECOSC」というプログラムについての報告書であることが認められる。
(3)乙第3号証は、「ecosc(エコスク)」のログイン画面の写真(写し)であるところ、画面左上部には使用商標1が表示され、また、画面中央やや上部には、使用商標1と構成各文字(図形を含む。)を同一にし、エコスクの文字を上部に表した標章(別掲3、使用商標2)が表示されている。
しかしながら、当該写真の撮影日、撮影場所等の記載はない。
(4)乙第4号証は、被請求人作成の「顧客向け消耗品購買分析書」(写し)(以下「分析書」という。)であるところ、表紙には、「・・銀行様消耗品購買分析」(2011年4月?2012年8月)(黒塗り部分がある)の記載が認められ、各頁左下に「KOKUYO」及び「コクヨマーケティング株式会社」(以下「コクヨ」という。)の表記がされている。
当該分析書18頁には「エコスク(ecosc)(以下「エコスク」という。)導入費用」の項目の下、「エコスクパッケージ内容(初期導入時)」として、初期設定費用(マスター作成、システム設定、マスター登録、設置作業、オペレーション費用)や「エコスクパッケージ内容(ランニング費用)」として、システム利用費、業務代行費等の記載がある。なお、プログラムそのものの費用に関する記載は確認できない。
(5)乙第5号証は、コクヨから今村商事にあてた、締日を2012年11月30日、発行日を2013年6月9日とする「御請求書」であるところ、乙第7号証の今村商事(従業員)の証明書によれば、2012年12月3日から運用を開始した「ecosc」を使用して管理する予定の備品として発注されたものに関するものであることが記載されている。
(6)乙第6号証は、平成25年7月10日付けの今村商事(代表取締役)の証明書であるところ、乙第5号証の請求書について、2012年11月12日にJR東日本千葉支店に設置された「ECOSC」を通じて発注された旨述べていたが、上記(5)のとおり、「ECOSC」の運用開始は同年12月3日であり、管理する予定の備品の発注であったことが乙第7号証により説明されている。
(7)乙第7号証は、平成25年12月25日付けの今村商事(従業員)の証明書であるところ、該証明書には、JR東日本において、平成24年11月30日に、本件システム「ecosc」導入の一環として「ecosc」のアプリケーションプログラムのインストール作業が行われたこと、プログラムの起動画面及びログイン画面には使用商標1及び2が表示されていたこと等が記載されている。
(8)乙第8号証は、平成26年2月5日付けのコクヨ(部長)の陳述書であるところ、コクヨが提供する本件システムは、コクヨが用意した本件プログラムをインストールしたパーソナルコンピュータを用い、本件プログラムを操作することで備品の在庫管理を可能とするものであること、JR東日本が本件システムを導入した際には、エコスク設置スペースへの棚の設置、パーソナルコンピュータ及びプリンター・バーコードリーダー等の附属品の設置、パーソナルコンピュータへの本件プログラムのインストール、本件プログラムの設定等の作業は、全てコクヨ(又は契約した他の業者)が行い、コクヨは通常これらの作業一式をパッケージとして提供していたこと、また、JR東日本が本件システムを導入するに際し、コクヨは、契約書、見積書、発注書等の書類は特に作成していないこと、マニュアル(乙1)について、2頁目以降のヘッダー部分に「ecopla」との記載があるのは、正式名称が決定した後も仮称である「ecopla」が差し替えられずに残っていたためであること等が記載されている。
2 そこで判断するに、被請求人は、平成24年11月30日に、JR東日本に、コクヨの開発した備品在庫管理システム(本件システム)を導入するにあたり、本件プログラムをインストールしたこと、そのプログラムには本件ロゴが付されていることを主張(乙7及び乙8)しているものであるが、被請求人が提出した証拠のうち、本件商標が使用されているとするマニュアル(乙1)は表題の記載と2頁目以降の右上に記載された「ecopla マニュアル ver.0.0」との記載が一致しておらず、被請求人は、この理由を「ecoplaは仮称であり、正式名称が決定したあとも差し替えられずに残っていた(乙8)。」と陳述しているが、このような表題とその他の記載が相違するものが正式なマニュアルであるとはいい難く、当該マニュアルが本件商標に係る正式なマニュアルとは認めがたい。
また、乙第4号証において、本件システムの導入費用、導入事例などを説明しているところ、その18頁によれば、「エコスク」の初期導入時のパッケージ内容として「マスター作成、システム設定、マスター登録、設置作業、オペレーション費用」が含まれており、ランニング費用には「システム利用費」が含まれていることが記載されていることからすれば、パッケージとしてのシステム及びプログラムの提供を行っていたものと推認し得るものである。そして、乙第8号証によれば、「JR東日本が本件システムを導入した際には、作業一式を全てコクヨが行った。また、当社は通常作業一式をパッケージとして提供している。」と陳述していることからすれば、JR東日本に対する取引もパッケージとしてのシステム及びプログラムの提供と推認し得るものであって、取消請求に係る指定商品「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに含まれる「電子計算機用プログラム」についての独立した取引に係るものと認めることはできない。
さらに、乙第2号証は、「ECOSC」について「Windows7」での動作検証が行われたことを、乙第5号証は、「ECOSC」導入前に備品の発注が行われたことを示すにすぎないものであり、当該証拠をもってしては、本件プログラムが商品として独立して取引が行われたこと及び本件商標が取消請求に係る商品に使用されたことを証するものとはいえない。
その他、被請求人の主張を裏付ける具体的な証拠方法、例えば、本件プログラムの取引に当たる請求書、納品書等の取引書類の提出はなく、また、被請求人の陳述書(乙8)においても、「本件システムを導入するに際し、契約書、見積書、発注書等の書類は特に作成していない。」旨陳述している。
そして、取引の実際においては、契約書、納品書、請求書等の取引書類を用いて取引を行うことが一般的であるといえるところ、本件においてはそれらの書類を作成しておらず、また、取消請求に係る指定商品の取引が行われたことを明らかにする証拠が提出されていないものであるから、本件プログラムが商品として独立して取引が行われたものとはにわかに信じ難いものである。
加えて、上記のとおり、提出された乙各号証は、いずれもその取消請求に係る指定商品「電子応用機械器具及びその部品」について、本件商標又はこれと社会通念上同一と認められる商標の使用事実を示すものとはいえない。
3 むすび
以上のとおり、被請求人の提出に係る乙各号証によっては、被請求人は、その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその取消請求に係る指定商品のいずれかについての使用をしていることを証明していないものといわざるを得ず、また、被請求人は、使用をしていないことについて正当な理由があると述べるものでもない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、取消請求に係る「結論掲記の指定商品」について、その登録を取り消すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)




別掲2(使用商標1)



(色彩については原本参照)


別掲3(使用商標2)



(色彩については原本参照)



審理終結日 2014-04-24 
結審通知日 2014-04-28 
審決日 2014-05-22 
出願番号 商願2009-83603(T2009-83603) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X09)
最終処分 成立  
前審関与審査官 津金 純子 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 梶原 良子
守屋 友宏
登録日 2010-03-19 
登録番号 商標登録第5310240号(T5310240) 
商標の称呼 エコスク 
復代理人 乾 裕介 
代理人 窪田 英一郎 

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