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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W03
管理番号 1289683 
審判番号 無効2013-890071 
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-10-10 
確定日 2014-06-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第5579947号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5579947号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5579947号商標(以下「本件商標」という。)は、「アスタパーフェクトワン」の片仮名を標準文字で表してなり、平成24年9月19日に登録出願され、第3類「化粧品,せっけん類,歯磨き,香料,薫料,つけづめ,つけまつ毛,つけまつ毛用接着剤,かつら装着用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり」を指定商品として、平成25年4月11日に登録査定、同年5月2日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人の引用する登録商標は、以下のとおりであり、これらはいずれも現に有効に存続しているものであって、その商標権者は請求人である。
なお、これらの登録商標を併せていうときは、以下「引用商標」という。
(1)登録第5040699号商標(以下「引用商標1」という。)
商標 :別掲1のとおりの構成
指定商品 :第3類「化粧品」
手続の経緯:出願日 平成18年6月23日
登録日 平成19年4月13日
(2)登録第5375961号商標(以下「引用商標2」という。)
商標 :「Perfect One」(標準文字)
指定商品 :第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類,つけづめ
,つけまつ毛」
手続の経緯:出願日 平成22年8月24日
登録日 平成22年12月10日
(3)登録第5424536号商標(以下「引用商標3」という。)
商標 :「パーフェクトワン」(標準文字)
指定商品 :第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,植物性天然香料,
動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品
香料,薫料,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや
出し紙,つや出し布,つけづめ,つけまつ毛
手続の経緯:出願日 平成23年4月27日
登録日 平成23年7月8日

第3 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由の要旨を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第56号証(枝番号を含む。なお、甲号証において、枝番号を有するものすべてを引用する場合は、以下、枝番号の記載を省略する。)を提出している。
2 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標は、「アスタ」及び「パーフェクトワン」の片仮名を結合してなるものであるところ、「アスタ」の部分は、近年注目を浴びているカロテノイド系の天然成分である「アスタキサンチン」の略称であり、商品の品質を表すものにすぎないものであるから、自他商品の識別力は弱い(甲2?甲15、甲46?甲50)。
そして、全体構成から生じる称呼は10音と冗長であり、かつ、「アスタ」と「パーフェクトワン」に観念的なつながりはなく、全体を一体不可分のものとして把握、理解することはできない。さらに、該「パーフェクトワン」が請求人の周知商標であることからすると、「パーフェクトワン」の部分が要部となる(甲16?甲18)。
他方、引用商標1のうち「Perfect One」は、化粧品「RAffINE」ブランドの基幹商品を表し、識別力を有する部分であるので、要部といえる。
そして、本件商標と引用商標は、その指定商品が同一である。
そうすると、本件商標と引用商標は、同一若しくは類似の称呼が生じ、指定商品も同一であるから、互いに類似する。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 「パーフェクトワン」の著名性の有無について
請求人は、2004年11月にオールインワン化粧品として「パーフェクトワン」を開発し、販売を行っている。本製品は、「たったひとつで化粧水、美容液、クリーム、化粧下地の役割を果たしてくれるオールインワンタイプの美容液ジェル」(以下「使用商品」という。)である。
「パーフェクトワン」シリーズの累計販売数は、平成25年1月現在1800万個(2006年5月?2013年1月)を達成した(甲17)。2010年度の通販化粧品市場における請求人の企業別シェアは8位、シェア率は4.8%である(甲16)。
総売上金額は、2007年が109億円、2011年が207億円である(甲19)。化粧品に関する売上実績は、2007年の売上金額が59億円であり、総売上金額のおよそ50%程度であったが、化粧品の売上金額及び総売上金額に占める割合も順調に推移し、2011年以降は、化粧品の売上額で160億円以上を計上し、総売上金額に占める割合は80%以上を記録した。
そして、商標「パーフェクトワン」及び「Perfect One」シリーズ商品は、化粧品の中心的な位置づけである(甲18)。
化粧品に関して「パーフェクトワン」及び「Perfect One」の表示を用いた宣伝広告活動を継続的かつ、広範囲に行っている。宣伝広告活動は、紙媒体として新聞、チラシ、雑誌及びカタログ(甲26?甲30、甲41?甲43)、電波媒体としてインフォマーシャル及び番組間CM(甲31?甲34)、ウェブサイト(甲35?甲38)、協賛活動(甲44、甲45)、販促及びダイレクトメールなどにより行っている。
宣伝広告費の合計額は、2006年に23億円、2011年に61億円に達している(甲20?甲25)。
よって、「パーフェクトワン」が周知商標であることは疑いがない。
イ 出所の混同について
商標権者は、引用商標が周知著名性を獲得している化粧品分野の商品を本件商標の指定商品としている。そして、「パーフェクトワン」は周知商標であるので、本件商標に接する取引者及び需要者は、その構成中「パーフェクトワン」の文字部分に強く印象を留め着目する。この取引の実情に照らし、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断した場合、本件商標に接した取引者、需要者は、請求人若しくは請求人と何等かの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものであるから、無効とされるべきものである。

第4 被請求人の主張
1 答弁の趣旨
被請求人は、 本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由の要旨を次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証(枝番号を含む。)を提出している。
2 答弁の理由
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標は、該構成文字が全て同書、同大の片仮名で隙間なく等間隔で表示されていることから、外観上まとまりよく一体的に構成されているものであり、また、該構成文字より生ずる称呼も10音程度であって格別冗長とはいえず、淀みなく一連一気に称呼し得るものである。
その構成中の「アスタ」の部分が「アスタキサンチン」の略称だけでなく、特定の意味合いを有する語としても一般の取引者、需要者に認識されている事実はない(乙1)ため、該語が商品の品質を表示するものとして自他商品の識別力が乏しいとはいえない。
さらに、「化粧品」と同一又は類似の商品分野において、「アスタ◯◯」と「◯◯」とが併存して登録されている事実が少なからず存在することや(乙2)、同構成中の「パーフェクトワン」の部分について、請求人の出所識別標識として周知と認められる事実も存在しないから、本件商標は、両文字部分を分離して判断するべきではなく、特定の意味を生じない一体不可分の造語として、取引者、需要者に認識、把握され、「アスタパーフェクトワン」の称呼のみが生ずる。
他方、引用商標1からは、その構成文字より「パーフェクトワン」及び「ラフィネ」の称呼が生じ、引用商標2及び3からは、「パーフェクトワン」の称呼のみが生じる。
本件商標と引用商標とは、いずれもその音数及び音構成が全く異なるものであり、称呼上、互いに相紛れるおそれがない。
次に、本件商標が横一連の片仮名で構成されているのに対して、引用商標1とは図形と文字商標から構成されている点で、引用商標2とは片仮名と欧文字という点で、引用商標3とは構成する文字数が11文字と8文字で相違するという点で、構成上著しく外観が異なり、外観上判然と区別し得るものである。
さらに、観念については、本件商標が特定の意味合いを生じないことから、引用商標とは対比することができない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、非類似の商標である。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 「パーフェクトワン」の周知著名性の有無について
(ア)請求人の使用する商標について
請求人は、ホームページにおいて、「ラフィネ パーフェクトワン」の商標のみを使用しており(乙3の1)、「パーフェクトワン」若しくは「Perfect One」(以下、両商標を併せて「パーフェクトワン商標」という。)を単独で使用している事実は見あたらない(乙3)。また、請求人のブランド「ラフィネシリーズ」は、オンラインショップにおいても「化粧品ラフィネシリーズの新日本製薬」といった表記がされているとともに(乙3の1)、該シリーズに属する全ての商品の名称について、その語頭に「ラフィネ」を入れた商標が使用されており(乙3の2)、これらのことは、請求人が「ラフィネ」を基幹ブランドとして育成、販売活動を行っていることを表している。
請求人の宣伝広告活動においては、いずれの媒体においても、広告チラシ(甲29の1)に記載のように、一連一体の「ラフィネ パーフェクトワン」の態様で使用されているものが圧倒的大部分を占めており、「パーフェクトワン(Perfect One)」の文字のみで使用されているものは極めて少なく、仮にあったとしても、そのほとんどが紙媒体における説明文の文中に用いられているものや、紙面のスペースの制限上該文字部分のみで使用されているに過ぎない。
したがって、請求人は自社ホームページや広告宣伝活動において、「ラフィネ パーフェクトワン」という一連一体の商標を積極的に使用してきたものでありパーフェクトワン商標のみを積極的に使用してきた事実は見あたらない。
(イ)請求人の主張及び提出証拠について
請求人は、パーフェクトワン商標の周知著名性を立証するにあたり、大きく分けて使用商品の販売数、売上実績及びシェアという観点と、広告宣伝活動における使用実情という観点から種々証拠を提出して主張しているが、いずれもその周知著名性を客観的に証明する根拠とはなり得ない。
a 使用商品の販売数、売上実績及びシェアについて
パーフェクトワン商標の「化粧品」の商品分野における周知著名性を示すためには、化粧品市場全般における使用商品のシェア率についての証拠が必要であるところ、使用商品の販売数や売上実績、シェアについて具体的な数字について一切記載されておらず、化粧品全般における使用商品のシェアについては何ら証拠を提出していない。
請求人は、使用商品シリーズの累計販売数が1800万個であることを示す証拠として請求人のホームページにおける商品紹介の写し(甲17)を提出しているが、これは請求人の自社ホームページに記載されているものに過ぎず、何ら客観性がない。請求人の総売上額における化粧品の売上額が占める割合についての主張(甲19)は、パーフェクトワン商標の周知著名性とは全く無関係であり、また、甲第19号証は請求人作成のものである。
請求人は、「商標『パーフェクトワン』及び『Perfect One』シリーズ商品は、請求人における化粧品の中心的な位置づけである」と主張しているが、根拠の記載がない。
請求人は、2010年度の通販化粧品市場における企業別シェアにおける請求人のランキングがシェア率4.8%で8位であると主張しているものの、化粧品市場全体における通販化粧品市場の規模については一切触れられていない。
2010年度の通販化粧品市場における販売高は3,152億円とされている(甲16)のに対して、「平成22年化学工業統計年報」(乙4)によると、2010年度の全化粧品販売金額の合計は1兆4,219億円程度とみられるから、通販化粧品市場の規模は化粧品市場全体の20%程度に過ぎない。したがって、上記通販化粧品市場と化粧品市場全体の規模を勘案すると、化粧品市場全体における請求人のシェアは1%にも満たないこととなり、そのシェア自体が低いといえる。
また、請求人は、2008年から2011年の化粧品モイスチャー分野において、請求人がメーカー別シェアで3位、「ラフィネ」ブランドがブランド別シェアで2位の位置を占めている(甲17)点を主張している。
しかるに、甲第17号証によると、上記化粧品モイスチャーの分野は、統計上定められた全43品目の化粧品のうちの一品目でしかなく、その市場規模も2010年度は1,115億円であって化粧品市場全体の8%弱でしかない。したがって、該分野におけるシェアも、化粧品市場全体からみると限られた狭い範囲の数値でしかなく、甲第17号証についても、化粧品市場全体における使用商品のシェアを示す証拠としての価値はない。
以上、請求人が提出した証拠からは、使用商品の販売・売上実績及びシェアについて何ら特定されていないから、パーフェクトワン商標が周知であるとは認定できない。
b 広告宣伝活動における使用実情について
広告に関する証拠は、紙媒体においては各広告が掲載された新聞・雑誌名及びその掲載日等、電波媒体においては放映された番組名、時間等が記載されていない。各広告の掲載事例一覧の甲号証(甲26、甲28、甲31、甲33)は、請求人作成であるとともに、広告の使用状況を示すために提出した甲第27号証及び甲第29号証と全く対応しておらず、個々の発行部数も配布地域も不明である。
請求人が広告に使用してきた商標は、あくまで一連一体の「ラフィネ パーフェクトワン」であって、パーフェクトワン商標ではない。
したがって、「パーフェクトワン(Perfect One)」の表示のみを使用してきたとして、パーフェクトワン商標を周知商標と主張する請求人の主張は全く根拠がない。
イ 本件商標とパーフェクトワン商標の類似性について
上述したとおり、本件商標とパーフェクトワン商標とは非類似の商標である。
ウ 「パーフェクトワン」の独創性の程度
「パーフェクトワン」の文字は既存の語である「パーフェクト」と「ワン」(乙1)の組み合わせより構成されているところ、化粧品業界においては、その商品名として「パーフェクト」や「ワン」の文字が採用されている例が多数存在しており、それらを組み合わせたに過ぎない「パーフェクトワン」についての独創性は低いといえる(乙5?乙9)。
エ 本件商標に係る指定商品と商品「化粧品」との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等との取引者及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品中、「せっけん類,歯磨き,香料,薫料,つけづめ,つけまつ毛」と商品「化粧品」とは、販売場所及び製造者が共通するといった点において需要者、取引者が一部共通する場合があるとしても、通常上記商品の売り場は明確に区別されているとともに、ブランド戦略上も「化粧品」と「せっけん類,歯磨き,香料,薫料,つけづめ,つけまつ毛」に使用する商標が同じものを採用することは考え難いといえる。したがって、「化粧品」と「せっけん類,歯磨き,香料,薫料,つけづめ,つけまつ毛」とは一般消費者により明瞭に区別されうる商品であり、その関連性は低いものである
オ 出所の混同のおそれについて
以上のことを勘案すれば、被請求人が本件商標をその指定商品に使用したとしても、これに接する取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させるものとは到底認められず、その商品が請求人あるいは請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも該当しないため、その登録を無効とすべきものではない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)請求人の使用する商標及び引用商標の周知性について
請求人が提出した証拠及びその主張によれば、以下の事実が認められる。
ア 使用態様について
引用商標1は、別掲1のとおりの構成よりなり、その構成中の図形の上部に「Perfect One」の文字を大きく、下部に「RAffINE」の文字を小さく横書きしてなるものである。また、引用商標2は、「Perfect One」の文字、引用商標3は、「パーフェクトワン」の文字からなるものである。
そして、甲第27号証、甲第29号証、甲第30号証及び甲第42号証の新聞の広告、チラシの広告、雑誌の広告、カタログ等においては、使用商品について、その容器に、別掲1の引用商標1に類似する別掲2のとおりの構成よりなる商標(以下「使用商標」という。なお、これには、引用商標2の「Perfect One」の文字を含む。以下同じ。)が付されている。
また、この使用商品を紹介、説明するに当たり、「パーフェクトワン」の文字からなる引用商標3が使用されている。そして、これらの広告及びカタログにおいては、例えば、「それを実現したのが、パーフェクトワン。」、「パーフェクトワン(75g)+送料無料!」及びはがきの申込書に「『パーフェクトワン』お申し込み書」(甲29の2)、「パーフェクトワンお試しサンプルプレゼント!!」及び「製薬会社のこだわりから、パーフェクトワンはうまれました。」(甲29の5)、「年齢を見せない肌へ、『パーフェクトワン』のチカラ」(甲29の23)、「必要なものが『ギュッ!』とつまったパーフェクトワンだから・・・」(甲29の30)等のように、「パーフェクトワン」の文字が単独で使用され、又は「ラフィネ」の文字より大きく表示されたり、あるいは二段に表記されるなど、一個の独立した表示の商品名として目立つように多数使用されている用例があることが認められる。
なお、被請求人は、請求人の「パーフェクトワン」は、「ラフィネ」の文字を冠して使用されているから「ラフィネ」と一連一体の「ラフィネパーフェクトワン」として把握されるべきである旨主張する。
しかしながら、上記証拠によれば、請求人の「パーフェクトワン」の文字は、「ラフィネ」シリーズの化粧品の1つの商品であり、「ラフィネ」の文字を冠して使用されることがあるとしても、製品(使用商品)に付された使用商標において「Perfect One」の文字は看者の注意を引き、強く印象に残る文字部分としてみられるものであって、同時に、「パーフェクトワン」の文字が商品の紹介等において単独、又は商品名として目立つようにして使用されていることからすれば、「パーフェクトワン」の文字は、これに接する取引者、需要者をして、単独の商標として印象づけられているものというのが相当である。
イ 使用商標及び引用商標3が使用された使用商品についての広告について
(ア)使用商品についての紙媒体による広告
新聞による使用商品の広告は、遅くとも平成20年(2008年)1月1日ころから開始され(甲27の21)、その後も現在まで継続して行われているものと推測され、掲載紙は多数の新聞社に及び(全国紙、地方紙を含む。)、発行地域も全国、都道府県、その他の地域など様々である(甲26、甲27)。
チラシによる使用商品の広告は、2006年11月ころには開始されており(甲29の2の申し込み期限)、甲第28号証によれば1248回にわたり、現在まで継続して行われてきたものと推測され、頒布地域も全国、都道府県など様々である(甲28、29)。
雑誌による使用商品の広告は、遅くとも平成19年(2007年)7月ころから開始され(甲30の537・548)、現在まで継続して行われているものと推測され、掲載雑誌はタウン情報誌(タブロイドを含む。)や女性向け雑誌が多く利用され、出版社は多数に及び出版地域についても全国誌、地方誌がある(甲30)。
使用商品に係る商品カタログは、平成20年(2008年)1月から平成23年1月までは「RAffINE STYLE」の題号で、同年2月からは「新私(シンシア)」の題号で各月1日に発行され、会員宛に月1冊のペースで発送されている。発行部数は、発行当初は約13万部であったが、同22年(2010年)2月以降は、30万部以上の発行部数を維持している(甲41?甲43)。
(イ)使用商品についてのテレビ等による広告
テレビによる使用商品の広告は、平成19年(2007年)9月ころから放送が開始され、インフォマーシャル(スポンサー付きの情報的広告あるいは広告的情報番組)と通常のTVCMに分けられ、インフォマーシャルは、地上波と衛星放送(BS)で124件の事例が放送されており、TVCMは、全国、地方の放送番組の合間に52件の事例が放送されている(甲31?甲34)。
インターネットによる使用商品の広告は、ウェブサイトで商品を掲載する広告のほかに、通販サイトで商品を広告販売する形態があり、通販サイトには、請求人ホームページの通販サイト(甲35)とその他のYahoo及び楽天等の通販サイト(甲36、37)がある。
通販サイトによる売上実績については、使用商品に限られているかは不明であるものの、2007年4月から2012年4月にかけ年々増加傾向にあり、2011年では10億円に近い売上高を記録している(甲38)。また、ウェブサイト上で商品を購入した顧客数の推移でも、2006年1月から2012年12月にかけて、顕著に増加しており、2012年12月時点で、26万人以上に達している(甲39)。
ウ 使用商標が使用された使用商品の販売実績
(ア)請求人は、遅くとも平成18年5月ころから使用商品の販売を開始し、本件商標の登録出願前の同24年8月までには累積販売個数で1600万個以上を販売し(甲30の326)、本件商標の登録査定前の同25年1月までには累積販売個数で1800万個以上を販売している(甲17)。
請求人の化粧品の売上実績は、平成19年の売上金額が59億円であったが、平成23年以降は165億円程になっており、総売上金額207億円に占める割合は80%以上となっている。そして、その化粧品におけるラフィネシリーズ品の売上金額は、化粧品の売上実績に近いものであって、平成23年では、165億円のうち、160億円程が同シリーズ品の売上であった(甲19)。
(イ)「2012年 通販化粧品の市場分析調査」によれば、請求人の平成22年度通販化粧品市場の企業別シェアは、8位で、シェア率が4.8%であった(甲16)。
(ウ)株式会社富士経済が平成23年3月30に発行した「化粧品マーケティング要覧2011 No.1」によれば、「モイスチャー」の「3.メーカーシェア」の項において、請求人は、シェア率が、平成20年7%、同21年7.1%、同22年8.1%であって、いずれの年も3位であった。また、「4.ブランドシェア」の項において、請求人の「ラフィネ」が平成20年7%、同21年7.1%、同22年8.1%であって、いずれの年も2位であり、その解説欄に「『ラフィネ』(新日本製薬)はオールインワンジェル『同パーフェクトワン』を基幹商品としてTVCMやインフォマーシャルの投下を積極的に行っているほか、規模は小さいものの直営店舗『ラフィネカラー』の展開により通販以外でも顧客との接点を設けているので需要取り込みが進み、実績は拡大推移となった。」の記載がある。
また、「5.種類別マーケット動向 2)市場規模推移」の項の解説欄において、「ジェルはオールインワンタイプのアイテムが主力となっており、2010年は・・・『ラフィネ』(新日本製薬)などシェア上位の通販メーカーが市場を牽引し、・・・市場は引き続き大幅拡大となった。」旨の記載がある。同じく、「3)市場シェア (2)ジェル」の項において、請求人は、平成22年のメーカーシェア率30%で2位であり、その解説欄において「新日本製薬は『ラフィネ パーフェクトワン』を基幹商品として、TVCMやBS放送のインフォマーシャルで訴求することで新規需要の取り込みを進めており、既存顧客に対してはアウトバンドの強化による囲い込みを進めたことが奏功し、実績は大幅拡大となった。」の記載がある。
さらに、「7.チャンネル別動向」の項の解説欄において、「通信販売では・・・『ラフィネ』(新日本製薬)もインフォマーシャルとTVCMによる相乗効果で実績を大きく伸ばしており、両者を中心にチャンネル実績は大幅拡大となった」旨の記載があることが認められる(甲18)。
エ まとめ
以上を総合すると、請求人は、使用商品について、使用商標及び引用商標3を使用して、平成18年5月頃から販売を開始し、累積販売個数で本件商標の登録出願前の平成24年8月までに1600万個以上、登録査定前の平成25年1月までに1800万個以上もの販売実績があり、また、「ラフィネ」ブランドがモイスチャー分野のブランドシェアにおいて3年連続して3位になっており、また、ジェルにおけるメーカーシェア率も請求人が2位となっていることから、使用商品の「パーフェクトワン」は、請求人の基幹商品として評価されていることが認められるものである。
そして、使用商標及び引用商標3が使用された使用商品については、紙媒体はもとより、インターネット、インフォマーシャル及びTVCMなどにより、大量の宣伝広告が行われてきたことが認められ、請求人はその売上の拡大に努めているものである。
そうすると、使用商標並びに引用商標2及び引用商標3は、使用商標の構成態様並びに「Perfect One」及び「パーフェクトワン」の文字を使用商品に使用してきたことにより、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、請求人の業務に係る「化粧品」を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたものということができる。
(2)引用商標2及び引用商標3の独創性について
引用商標2及び引用商標3は、一般によく知られている「Perfect」及び「One」並びに「パーフェクト」及び「ワン」の各語を結合して構成されているものであるが、本件商標の指定商品を取り扱う化粧品業界などにおいて、これらを一連に表した「Perfect One」又は「パーフェクトワン」の語が特定の意味合いをもって認識され、使用されている事実は認められないものである。
そうとすれば、「Perfect」と「One」及び「パーフェクト」と「ワン」の各語を結合した「Perfect One」並びに「パーフェクトワン」は、既成語ともいえない一種の造語として、相当程度の独創性が認められるものである。
この点に関して、被請求人は、化粧品業界において、「パーフェクト」及び「ワン」の語は商品名として広く採用されていること、これらの語を組み合わせたにすぎず、実際の使用例も存在していること(乙9の1及び2)を理由として「パーフェクトワン」は独創性が低い旨主張する。
しかしながら、「パーフェクト○○」及び「○○ワン」の商標が多数存在するとしても、「Perfect One」並びに「パーフェクトワン」の独創性が否定されるものではなく、また、実際の使用例の乙各号証は、「パーフェクトワン」の文字を含む商標を使用したジェルを紹介するウェブサイトではあるものの、その件数は2件と少ないばかりでなく、その印刷日がいずれも本件商標の登録査定後の平成25年(2013年)12月13日であるから、その主張は裏付けが乏しいものである。してみれば、引用商標の「パーフェクトワン」の独創性が低い旨の被請求人の主張は、採用することができない。
(3)本件商標と引用商標3の類似性について
ア 本件商標について
本件商標は、「アスタパーフェクトワン」の片仮名を標準文字で表してなるところ、語頭からの「アスタ」の文字部分は、特定の意味合いを有しない語であり、これに続く、「パーフェクト」の文字部分は、「完全であること、完璧であること」などを意味する英語「perfect」の発音の片仮名の表記及び外来語として、「ワン」の文字部分は「1、ひとつ」を意味する英語「one」の発音の片仮名の表記及び外来語として、いずれも我が国において親しまれた語であることからすれば、「アスタ」、「パーフェクト」及び「ワン」の3語を組合わせたものと容易に認識されるものであって、構成全体としては、特定の観念を生ずるものではない。
しかして、その構成中、「パーフェクトワン」の文字部分は、前記(1)のとおり、請求人の業務に係る化粧品のブランドとして広く知られているものであることからすれば、該文字が、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものである。
してみれば、本件商標は、その構成中の「パーフェクトワン」に着目して、該文字より生ずる称呼及び観念をもって取引に資される場合も決して少なくないものというのが相当であるから、該文字に相応して「パーフェクトワン」の称呼及び請求人の業務に係る化粧品についての「パーフェクトワン」ブランドの観念を生ずるものである。
イ 引用商標3について
引用商標3は、「パーフェクトワン」の文字からなるものであるところ、前記(1)のとおり、該文字は、請求人の業務に係る化粧品のブランドとして広く知られているものと認められるものである。
してみれば、引用商標3からは、その構成文字に相応して、「パーフェクトワン」の称呼を生じ、請求人の業務に係る化粧品についての「パーフェクトワン」ブランドの観念を生ずるものである。
ウ 本件商標と引用商標3の類似性について
上記ア及びイのとおり、本件商標と引用商標3とは、全体としての外観は異なるものの、「パーフェクトワン」の文字において、その外観、称呼及び観念を同じくするものと認められる。
そうとすれば、引用商標3の周知性に加え、本件商標及び引用商標3の称呼、観念、外観によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察してみると、本件商標は、引用商標3との類似性が極めて高い商標というのが相当である。
なお、被請求人は、本件商標は、その構成中の「パーフェクトワン」の部分について、請求人の出所識別標識として周知と認められる事実も存在しないから、特定の意味を生じない一体不可分の造語として取引者、需要者に認識、把握される旨主張するが、前記したとおり、引用商標3は、使用商品について著名性を有するものであることからすると、本件商標においては、該「パーフェクトワン」の文字部分が請求人の著名な商標を連想、想起させる部分として看取されるものであるから、その主張は、採用することができない。
エ 本件商標の指定商品と請求人の業務に係る使用商品との共通性について
本件商標は「化粧品,せっけん類,歯磨き,香料,薫料,つけづめ,つけまつ毛,つけまつ毛用接着剤,かつら装着用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり」を指定商品とするものであるのに対して、請求人の業務に係る使用商品は「化粧品」に属する商品であるから、「化粧品」において共通しており、その結果、取引者及び需要者も共通している。「化粧品」以外の本件商標に係る指定商品の需要者層と請求人の業務に係る商品「化粧品」の需要者層とは、いずれも女性を主たる購買者とする一般の人を需要者とするものであり、需要者層を共通にするものである。
(4)出所の混同のおそれについて
上記(1)で述べた使用商標及び引用商標3の周知性の程度、本件商標と引用商標3との類似性の程度、本件商標の指定商品と請求人の業務に係る使用商品との関連性及び需要者の共通性等を総合勘案してみると、本件商標は、その構成中に、請求人が「化粧品」について使用し、請求人の使用商品の出所を表示するする商標として、その登録出願時及び登録査定時において広く知られていた「パーフェクトワン」の文字を有するから、商標権者が本件商標をその指定商品について使用するときは、これに接する取引者、需要者は、その商品が請求人あるいは請求人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものというのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、請求人のその余の請求理由について論及するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(引用商標1)


別掲2(使用商標:色彩については甲29及び甲30参照。)




審理終結日 2014-04-18 
結審通知日 2014-04-23 
審決日 2014-05-13 
出願番号 商願2012-75521(T2012-75521) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (W03)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鴨田 里果箕輪 秀人 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 井出 英一郎
田中 亨子
登録日 2013-05-02 
登録番号 商標登録第5579947号(T5579947) 
商標の称呼 アスタパーフェクトワン、アスタパーフェクト、アスタ、パーフェクトワン 
代理人 遠藤 聡子 
代理人 有吉 修一朗 
代理人 森田 靖之 
代理人 田中 成幸 
代理人 白井 里央子 
代理人 藤本 昇 

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