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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y0737
管理番号 1289642 
審判番号 取消2012-300362 
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2012-05-07 
確定日 2014-06-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第4857066号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成25年2月22日付けの審決に対し,知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成25年(行ケ)第10090号,平成26年1月29日判決言渡)があったので,さらに審理のうえ,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4857066号商標(以下「本件商標」という。)は,「デーロス」の片仮名を標準文字で表してなり,平成16年8月27日に登録出願,第7類「土木機械器具,荷役機械器具」及び第37類「建設工事,土木機械器具の修理又は保守,土木機械器具の貸与」を指定商品及び指定役務として,平成17年4月15日に設定登録され,その商標権は,現に有効に存続しているものである。
なお,本件の審判請求の登録は,平成24年5月25日である。

第2 請求人の主張の要点
請求人は,本件商標は,商標法第50条第1項の規定により,その登録を取り消す,審判費用は,被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由及び答弁に対する弁駁を次のとおり述べ,甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品,役務について,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実がないから,商標法50条1項の規定により取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)請求人と被請求人間で締結された契約の経緯について
答弁書の(1)においては,経過が羅列されているだけであり,被請求人がどのような法的根拠に基づいて請求人の請求が成り立たないとするのか理解し難いが,見出しの表記から考えて,乙2の社名の取扱いに関する合意により,請求人の請求が成り立たないと主張するものと善解し得る。しかしながら,これを前提としても,被請求人の主張は,以下のとおり成り立たない。
ア 乙2の合意が商号に関するものであること
乙2の合意書2)ハ)は,乙すなわち被請求人の代表取締役である森井(以下「森井」という。)が,同人が設立する新会社において「株式会社デーロス」との商号を使用しないというだけの合意である。
さらに,その但書も,甲すなわち請求人が社名を変更した場合には,森井は新会社において「株式会社デーロス」という商号を用いることができるというだけの合意である。
この事実から明らかなとおり,請求人と被請求人との間において,乙2の合意書2)ハ)に記載された合意があったものの,それは商号のみに関する合意であり,商標に関する合意事項は一切ない。このことは,被請求人が引用する乙3,4の協議録においても同様である。
被請求人は,商号と商標を混同して解し,その前提に基づいて主張を行っているが,これは前提が誤った主張であり失当という他ない。
(2)乙2の合意書に記載された内容について
前記のとおり,乙2の合意書2)ハ)に記載された内容は,森井が設立する新会社において「株式会社デーロス」の商号を用いないこと,但し,請求人が社名変更をした場合には,森井は同商号を用いることができるというものである。
すなわち,この合意内容は,デーロスという商号を用いる権利を有しているのは請求人であり,森井は請求人が使わなくなった後にしか使えないというものである。そして,乙2の合意書には,請求人に対して商号の変更を義務付けるような文言は一切存在しない。
(3)協議録について
乙3,4の協議録を基にしても被請求人の主張は認められる余地はない。 ア 協議の経過について
請求人と森井は,森井が請求人の役員を退任するにあたっての諸条件を交渉した。乙2ないし4の書面は,その過程で作成されたものである。
請求人は,請求人と被請求人との業務提携契約を明確な形で締結することを最終目標として交渉を行っていた。そして,最終合意に至った場合には,正式に契約書を締結し,それをもって合意の成立と考えていた。逆に言えば,最終合意がない場合は,それまでの暫定的な協議事項についても白紙に戻すことを前提としていた。
もっとも,交渉の初期の段階において,交渉を続けていく上で前提となる事項や最低限合意が成立している事項について「合意書」という形で確認することとした合意書が乙2である。
このように,「合意書」として作成された乙2が正式な合意である一方,「協議録」と題して作成された書面は,あくまでも暫定的な協議の経過を表したものにすぎず,正式な合意などではない。そして,請求人と被請求人との最終合意が得られず交渉が決裂した段階で協議録に記載された協議事項も白紙に戻っているのである。
このような経過に照らし,協議録をもって法的な合意事項と見ることは無理がある。
イ 協議録の内容について
協議録の内容からも被請求人の主張を裏付けることはできない。
乙3の協議録の条項1)には,「新会社の社名に関して『甲(請求人)が社名変更』するまでの期間とは概ね2年ぐらいとする。」とのみ記載されている。ここには,請求人が社名変更することを義務付けるような文言は一切なく,その内容も極めて漠然としたものであり,請求人が明確にいつまでに社名を変更しなければならないということが明記されている文言は存在しない。
さらに,乙4の協議録の条項1.1)には,「『甲(請求人)』が社名変更するまでの期間の概ね2年とは平成21年12月23日である。」とのみ記載され,請求人が社名変更することを義務付けるような文言は一切ない。 このように,乙3,4の協議録の内容をもってしても,請求人が商号の変更を義務付けられた事実を認定することはできない。
ウ 小括
以上のとおり,請求人と被請求人との間で,「デーロス」という商標の使用に関して合意したことは一切ない。さらに,乙2ないし4の書面をもってしても,請求人が社名を変更する義務を定めた合意は存在しない。
(4)通常使用権者による本件商標の使用について
ア 被請求人は,「請求人の使用が通常使用権者による登録商標の使用にあたる」と主張するが,(1)で述べたとおり,請求人と被請求人との間で本件商標の使用に関して合意したことは一切なく,請求人は本件商標の通常使用権者ではない。
また,乙8の1のパンフレットにおいて宣伝されている工事につき,他人の工事と区別するために用いられているのは「靭性モルタルライニング工法」という名称であること,株式会社デーロスという表示はかかる意図で表示されていないことは明らかであり,乙8の2についても同様である。よって,乙8において「デーロス」という表示が存在したとしても,商号としての使用にすぎず,本件商標の使用とはいえない。
よって,乙8によって請求人が本件商標を使用していたとはいえず,仮に,請求人が本件商標を使用していたといえたとしても,被請求人による「デーロス」の使用は,商標法50条1項規定の通常使用権者による登録商標の使用にはあたらない。
イ 被請求人は,「使用許諾契約の終期(平成21年12月23日)は本件審判の請求登録日(平成24年5月23日)前3年以内であり,本件審判請求は明らかに不適法である」と主張する。
被請求人の当該主張は,請求人が平成21年12月23日まで本件商標の通常使用権を有していたことから,それまでは,被請求人が本件商標を使用していないことについて正当な理由があり,それ以降,本件審判の請求登録日までは3年が経過していないから本件審判請求は不適法であるとの主張であると思われる。
しかし,請求人は本件商標の通常使用権者ではないことは,既に述べたとおりである。さらに,被請求人の主張によったとしても,請求人は本件商標の通常使用権者でしかなく専用使用権者ではないのであるから,被請求人が本件商標を使用しなかったことにつき正当な理由があるとはいえないことは明らかである。
また,商標と商号は別物である上,「株式会社デーロス」という商号が使えないのは,訴外森井が新しく設立する会社の社名についてのみであるから,乙2ないし4の存在が,訴外森井あるいは被請求人が本件商標を使用しなかったことの正当理由たりえないことは明らかである。
(5)商標権者及び通常使用権者による本件商標の使用について
被請求人は,「乙11,12に示すように本件商標を『建設工事』に使用しており,・・・使用の要件を満たしている」と主張する。
しかし,乙11の1及び乙12の1は,建設工事の提供の用に供する材料のパンフレットであって,建設工事のパンフレットではない。したがって,仮に,これらに本件商標が表示されているといえたとしても,指定役務について使用していたとはいえない。
次に,乙11の1及び乙12の1に記載されているのは「DEROS JAPAN」という文字であるところ,「DEROS」という部分のみに着目すれば,本件商標と称呼は同じである。しかし,乙11の1及び乙12の1は,被請求人および訴外株式会社デーロス・ジャパン(以下「デーロス・ジャパン」という。)が販売する商品のパンフレットとして作成されたものであるから,「DEROS JAPAN」という文字は,デーロス・ジャパンが販売する商品であることを示すための表示として,「DEROS」と「JAPAN」を分解して表示することを意図して作成されたものではなく,「DEROS JAPAN」という一体として表示することを意図して作成されたものみるのが相当である。よって,これらのパンフレットにおいて本件商標が表示されているとはいえない。
次に,乙11の2及び乙12の2においては,「デーロス」という表示はあるものの,それは営業主体ないし契約当事者を示す「デーロス・ジャパン」という表示の一部として表示されているにすぎず,指定役務等について表示されているわけではない。すなわち,これは商号の一部としての表示にすぎない。したがって,本件商標が使用されているとは到底いえない。
以上より,被請求人やデーロス・ジャパンが本件商標を使用していたといえない。
(6)通常使用権者による本件商標の使用について
被請求人は,「通常使用権者たる被請求人関連会社デーロス・ジャパンが本件商標を『建設工事』に使用している」と主張する。
しかし,乙14の1の石看板は,請求人会社が設立された際に,ビルを北陸支店として使用していた請求人会社が設置したものであり,被請求人やデーロス・ジャパンが設置したものではなく,撤去しなかったというだけなのであるから,当該看板の存在をもって被請求人やデーロス・ジャパンが当該看板を使用していたということはできない。
また,乙14の1及び乙14の2においては,いずれも商号要部である「デーロス」という部分が強調表示されてはいるが,そもそも会社の看板は営業主体を示すものにすぎず,当該看板からはいかなる役務も想定しえない。そうである以上,当該看板における商号要部の表示は,あくまでも商号の表示の意味しか持たず,商標として使用されているといえないことは明らかである。
(7)不適法な審判請求(商標法56条1項で準用する特許法135条)について
被請求人は,請求人が通常使用権者として本件商標を使用していたところ,通常使用権の契約終了後も同商標を使用し続けたにもかかわらず,本件審判の申立てをしているから,本件審判の申立ては,被請求人を不当に害することを目的としており権利の濫用に当たると主張している。
しかしながら,この主張についてもおよそ理由がない。
ア 請求人と被請求人との間で本件商標に関する通常使用権の設定契約が存在しないことは,前記のとおりである。
イ 請求人が社名変更をする義務を負っていなかったこと,請求人と被請求人との間で商標の使用に関する合意をしたことは,前記のとおりである。 ウ 被請求人が森井に対し,本件商標の使用を明示的に禁じていたという事実はない。被請求人は,乙2の合意書によって,森井が本件商標の使用をすることを禁じられていたと解釈しているようであるが,乙2の合意書1)ハ)は商号に関する合意でしかなく,森井に対して明示的に禁じていたのはあくまでも「商号」としての「株式会社デーロス」の使用である。
エ 以上のとおり,被請求人の主張は,いずれもその前提を誤っており,失当である。加えて,以下の森井による本件商標登録に関する事情に鑑みれば,却って森井及び被請求人の信義則に反する行為が明らかとなる。
被請求人が乙1を用いて主張しているように,森井は,森井が経営していた株式会社デーロス(以下これを「旧デーロス」ということがある。)を請求人に吸収合併させたにもかかわらず,その合併後に,請求人に秘して,本件商標について商標出願を行っている。この会社合併は,請求人が旧デーロスの全てを吸収する形態での合併であり,しかも合併後,森井は請求人の代表取締役に就任しているのである。そうであれば,森井は請求人を出願人として本件商標の出願をすべきだったのであり,森井個人で本件商標の出願をしてよい理由は見いだせない。これは,森井が本件商標の出願を不正の目的によって行ったことの証左に他ならない。
このように,森井が請求人と旧デーロスの吸収合併後に,自らが請求人の代表取締役となりながら,自らを出願人として本件商標を商標出願し,それを請求人ではなく被請求人に移転した行為は,まさに信義則に反する行為に他ならない。そのような不正な行為により登録を得た商標権をもって,請求人の正当な標章の使用行為を制限する理由はなく,却って被請求人の主張こそが権利の濫用というべきであり,認められる余地はない。
(8)結語
以上のとおり,被請求人の主張はいずれも失当であり,請求人の請求を妨げる理由は存しないから,本件取消審判の請求は,認容されるべきである。
第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を次のとおり述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第57号証(枝番号を含む。)を提出した(なお,乙第15号証ないし第57号証は,審決取消訴訟の後に,当審に上申書として提出されたものである。)。
1 請求人と被請求人間で締結された契約の経緯
平成16年6月1日:田中建設株式会社が森井の経営していた旧デーロスを吸収合併し,株式会社デーロスを設立(乙1)
平成16年8月27日:本件商標を出願(出願人:森井)
平成17年4月15日:本件商標の登録
平成19年12月24日:合併解消,「合意書」締結(乙2)
当事者…請求人,被請求人及び森井
内容…「合意事項2)ハ」:合併解消にあたっての社名の取り扱い
平成20年1月22日:合意事項実施についての「協議録」(乙3)
当事者…請求人,被請求人及び森井
内容…「協議項目1)」:請求人が社名変更するまでの期間は概ね2年ぐらいとする。
平成20年1月25日:本件商標権を森井から被請求人へ移転登録
平成20年2月9日:追加の「協議録」(乙4)
内容…「1.先の協議録の詳細事項協議1)新会社の商号」:請求人が社名変更するまでの期間の概ね2年とは平成21年12月23日である。
平成24年3月19日:「警告書」(被請求人)送付(乙5)
平成24年3月29日:「回答書」(請求人)送付(乙6)
平成24年4月18日:「再度警告書」(被請求人)送付(乙7)
平成24年5月7日:本件審判の請求
2 通常使用権者による本件商標の使用
請求人は,本件商標について,平成21年12月23日を終期とする使用許諾を受け(乙2?4),この使用許諾に基づく通常使用権者として本件商標を「建設工事」について使用していたものである(乙8)。この使用は,通常使用権者による登録商標の使用に当たる。
換言すると,乙2?4で示す契約は,社名「株式会社デーロス」についての契約であるが,この契約前から契約期間を通じての請求人による実際の社名表示態様は,本件商標の使用であり(乙8),その使用を本件商標権の当時の権利者森井が許諾したものである。そのため,森井又は被請求人は,上記契約の終期まで請求人に対し警告等を行っていない。したがって,請求人は,本件商標の使用許諾を受け,この使用許諾に基づく通常使用権者として本件商標を使用していたものである。
上記使用許諾契約の終期は,本件審判の請求登録日前3年以内であり,商標法50条1項,同2項の要件に照らし本件審判の請求は明らかに不適法であり,却下されるべきものである。
また,上記使用許諾契約の期間に森井は,社名「株式会社デーロス」を使用しないこととなっており(乙2?4),事実上,本件商標の使用ができないこととなっている。
よって,前記契約当時の商標権者である森井又は本件商標権を譲り受けた被請求人は,前記契約の終期までは本件商標を使用していないことにつき,正当理由がある。
なお,請求人は,乙2の合意書の合意事項2)ハ)における「株式会社デーロス」について,商号に関する合意であり,商号と商標の明確な区別が必要であると繰り返し述べているが,乙8に接した取引者・需要者は,「デーロス」を商号であると認識すると共に本件指定役務「建設工事」の出所識別標識として認識する。この事実に基づき,乙2の合意がなされたのであり,この合意は,商号商標「株式会社デーロス」(略称「デーロス」を含む。)についての合意である。乙2の合意よりも前に,森井は,請求人代表者へ本件商標の存在を何度も説明しており,その事実によっても,乙2の合意は本件商標を含めた商号商標についての合意であることは明白である。
3 商標権者及び通常使用権者による本件商標の使用
前記使用許諾契約の終期以降,被請求人は,乙11,12に示すように,本件商標を「建設工事」に使用している。
乙11の1は,2010年(平成22年)10月に,被請求人が作成した「建設工事」の提供の用に供する材料に関するパンフレットであり,総販売元として被請求人が記載されている。
なお,このパンフレットに販売代理店として記載されている「デーロス・ジャパン」は,被請求人の代表者森井が代表を勤める被請求人の関連会社であり,本件商標の通常使用権者である。
上記パンフレットは,乙11の2に示すように,平成22年7月に,和歌山の日高振興局地域振興部からデーロス・ジャパンに依頼された表面被覆工事の見積に関し,見積提出後の同年10月に材料(接着剤)に関する追加資料として作成し,日高振興局地域振興部に提出したものである。以降も官庁用の営業パンフレットとして,見積の際の資料として需要者に頒布している。
乙12の1は,2011年(平成23年)2月に,被請求人が作成した「建設工事」の提供の用に供する材料に関するパンフレットであり,総販売元として被請求人が販売代理店としてデーロス・ジャパンが記載されている。 このパンフレットは,乙12の2に示す2011年(平成23年)3月着工の「北陸自動車道 金沢管内維持修繕業務:小補修」の工事に使用された材料(接着剤)に関するものであり,元請負人である中日本ハイウェイ・メンテナンス北陸株式会社に提出したものである。
上記のとおり,被請求人は商標権者として,本件商標を本件指定役務に使用し,同様に,デーロス・ジャパンが通常使用権者として本件商標を使用している。
なお,請求人は,乙11の1,乙12の1のパンフレットについて,「建設工事の用に供する材料のパンフレットであって,建設工事そのもののパンフレットではない」として指定役務(建設工事)について使用していたとはいえないと主張するが,乙11の1,乙12の1は,役務「建設工事」の提供の用に供する材料に関するパンフレットであり,これは商標法2条3項3号,同4号,同5号に定義された役務商標の使用である。また,乙11の1,乙12の1に記載されている表示は,「DEROS」と「JAPAN」を明確に分離して別書体で表示し,かつ,「DEROS」の表示を「JAPAN」の表示の倍以上の大きさにして表示しており,明らかに「DEROS」という商標の使用である。加えて「DEROS」は本件商標のアルファベット表記であり,本件商標と同一称呼,同一観念である。
4 通常使用権者による本件商標の使用
デーロス・ジャパンは,建設工事を主たる業務としており(乙13),乙14に示すように,自身が使用するビルの前に看板を掲げ,本件商標を「建設工事」に使用している。
乙14の1は,平成16年に設置された「株式会社デーロス」と表示する石看板と上記ビルの写真である。撮影日は平成24年6月4日である。
平成16年6月1日に請求人会社が設立された際に,上記ビルを請求人が北陸支店として使用しており,そのときに上記石看板が設置された。
現在このビルは,デーロス・ジャパンが使用しており,乙2?4に示す契約に基づき,今後デーロス・ジャパンの商号を「株式会社デーロス」に変更して使用するために上記石看板を撤去せずに残存している。
この石看板は,「デーロス」の文字が「株式会社」の文字の数倍の大きさにしてレイアウトされており,この使用態様から本件商標の使用であることは明らかである。
また,乙14の2は,上記ビルの前に設置された「デーロスビルディング」と表示する電飾看板の写真である。この電飾看板は平成22年1月に製作され取り付けられた(乙14の3,乙14の4)。
上記電飾看板は,「デーロス」の文字が「ビルディング」の文字の上に大きく且つデザイン化してレイアウトされており,この使用態様から本件商標の使用であることを疑う余地はない。
なお,請求人は「会社の看板は営業主体を示すものにすぎず,当該看板からはいかなる役務も想定しえず,当該看板における商号要部の表示は,商号の表示の意味しか持たず,商標として使用されているといえない」と主張するが,看板は営業主体を示すものではあるが,「建設工事」の取引者・需要者への出所表示や品質保証のための標識でもあり,上記石看板に表示されている本件商標は正に商号商標として使用されている。
上記のとおり,本件審判請求の登録日前3年以内に,デーロス・ジャパンが通常使用権者として本件商標を本件指定役務に使用している。
5 不適法な審判請求(商標法56条1項で準用する特許法135条)
前記のとおり,被請求人は請求人に対し平成21年12月23日を終期とする通常使用権許諾契約を締結しており,請求人は平成21年12月23日までに社名変更し以降は実質的に本件商標を使用しない合意があった。
他方,平成21年12月23日まで森井は本件商標の使用を禁じられていた(乙2)。森井は「株式会社デーロス」を一旦商号登記したが(乙13),請求人の申し入れにより請求人が社名変更するまでの期間を概ね2年とすることとなり(乙3),商号変更を余儀なくされている(乙13)。
しかるに,請求人は上記契約に違反し社名変更を行わないばかりか(乙9),平成21年12月23日以降も本件商標の不法使用を継続し本件商標権を侵害している(乙6,10)。この商標権侵害に対し,被請求人は警告書を送付して,直ちに使用を停止するよう求めた(乙5,7)。
上記のとおり,請求人は,本件審判の請求の登録日前3年以内に通常使用権者として本件商標を使用していたが,通常使用権の契約終了後も同意なく使用を続け,この無断使用を正当化せんとして本件審判の請求に及んだものである。
このような本件審判の請求は,被請求人を不当に害することを目的としてなされたものであり,正に権利濫用行為である。
よって,本件審判の請求は,不適法な審判請求であり,速やかに却下されるべきものである(特許法135条)。
6 まとめ
以上のとおり,本件審判の請求の登録日前3年以内である平成21年12月23日まで,通常使用権者たる請求人により,本件商標は,本件指定役務について使用されていた。
その後は,被請求人又は通常使用権者たる被請求人関連会社により,本件商標は,本件指定役務について使用されている。
また,本件審判の請求は,請求適格を欠いた者による権利濫用行為であり,不適法なものである。
したがって,本件審判の請求は,成り立たない。

第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び提出した証拠によれば,以下の事実が認められる。
(1)乙第2号証の合意書等,乙第13号証の「株式会社デーロス・ジャパン」の「履歴事項全部証明書」及び乙第17号証の該社の「会社概要」の記載内容からすれば,森井は,商標権者及び「株式会社デーロス・ジャパン」の代表取締役である。
(2)乙第11号証の1は,2010年10月に作成された「DJプライマー」(01/2010.10)と題するパンフレットであり,該パンフレットの表面の左上部分には,緑色の長方形内に,やや大きく「DEROS」の欧文字と,それに比べやや小さく「JAPAN」の欧文字が90度回転させて白抜きで表され,「DJプライマーは,靱性モルタルライニング工法の専用プライマーとして開発されました。」及び「特長」の項には,「湿潤面のコンクリートにも接着いたします」と記載され,裏面には,「総販売元」として「株式会社ビルドランド」及び「販売代理店」として「株式会社デーロス・ジャパン」と記載されている。
(3)乙第22号証は,デーロス・ジャパンが,平成20年に作成した「表面被覆工法 靱性モルタルライニング」と題するパンフレット(01/2008.06:乙第41号証の5)を更新したパンフレット(08/2012.01)(写し)であり,該パンフレットの表紙の左上部分には,薄緑色の長方形内に,「DEROS JAPAN」の欧文字が90度回転させて白抜きで表され,下部には,図形と「株式会社デーロス・ジャパン」の表示がある。
そして,「靱性モルタルライニングに使用する材料は,土木学会発刊の『複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料』設計・施工指針(案)に記載されている引張終局ひずみ特性を有する高靱性繊維補強セメント複合材です。」の記載があり,該セメント複合材についての「特長」等が,裏面に記載されている。
また,パンフレットの裏表紙には,下地処理工,材料攪拌,モルタル吹付け工等の「工法手順」及び「施工事例」が写真と共に掲載され,その下には,「【製造元】」として「株式会社ビルドランド」及び「【発売元】」として「株式会社デーロス・ジャパン」の記載がある。
上記(2)及び(3)のパンフレットは,その記載内容によれば,ひび割れ抵抗性能等が優れた高靱性繊維補強セメント複合材を材料として使用し,これを,湿潤面のコンクリートや水路などの既設コンクリートの表面へ被覆する「靱性モルタルライニング」工法を紹介するものであるから,建設工事の役務に関するパンフレットといえる。
(4)乙第46号証は,平成25年10月24日付けの山崎建設株式会社の担当者による「陳述書」であり,これによれば,平成21年12月21日から同22年3月25日を工期とする,「長野松本地方事務所」が施主の「平成21年度 県営かんがい排水事業 安曇野地区 矢原排水路第2工区工事」について,「株式会社デーロス・ジャパン」と下請契約を締結するにあたり,添付の「靱性モルタルライニング」のパンフレットを受領し工法の説明を受けた旨が記載されている。
そして,「株式会社デーロス・ジャパン」の「表面被覆工法 靱性モルタルライニング」と題するパンフレット(05/2008.11,写し)が添付されている。
(5)乙第42号証は,平成22年1月18日に協議された「工事施工協議書」(写し)であり,その記載内容によれば,「平成21年度 県営かんがい排水事業 安曇野地区 矢原排水路第2工区工事」の事業に関して,「長野県松本地方事務所農地整備課関連事業係」に対し,「山崎建設株式会社現場代理人」から,使用資材承認願いが「提出」され,「承諾」されたものである。
そして,2葉目の「承認材料一覧表」には,「材料名」の欄に「ポリマーセメントモルタル」,「規格」の欄に「高靱性繊維補強セメント複合材」及び「納入業者」の欄に「株式会社ビルドランド」の記載があり,「表面被覆工法 靱性モルタルライニング」と題するパンフレット(06/2009.12,写し)が添付されている。
2 前記1で認定した事実によれば,以下のとおり判断できる。
(1)被請求人の主張及び前記1(1)からすれば,「デーロス・ジャパン」は,本件商標権の通常使用権者と推認される。
(2)本件商標と使用に係る商標との社会通念上の同一性について
使用に係る商標「DEROS JAPAN」は,全体が普通に用いられる字体で表示されているものであり,「DEROS」と「JAPAN」との大きさが異なる態様で使用されているほか(乙11の1),両者の間に空白がある態様で使用されており(乙11の1,乙22,乙42,乙46等),また,「JAPAN」が我が国に広く了解されている英単語であり,個別の語として容易に理解されることから,「DEROS JAPAN」が,常に一連一体のものとして称呼・観念されるものとはいえない。
ところで,前半の「DEROS」は,「デロウズ〔derouz〕(「e」部分には,アクセント記号が付されている。)帰還予定日(和)」に対応する英単語であるが,我が国において一般に馴染みのある単語ではなく,一方で,「DEROS」をローマ字読みした「デロス」は,我が国において一般に馴染みのあるギリシャ共和国のデロス島の和名(デロス島の正しい綴りは「DELOS」である。)と音を共通にし,そのように読まれることが多いものと理解される。
したがって,「DEROS」は,ローマ字表記に準じるものとして「デロス」との称呼が生じ(観念は不明である。),後半からは「ジャパン」の称呼と「日本」との観念が生じる。
しかるところ,商標において片仮名とローマ字とを相互に変更する場合は,社会通念上の同一性を失わないものと解されるから(商標法50条1項かっこ書き),本件商標の使用の有無の検討に当たって比較対象すべき点は,「デロス ジャパン」(「DEROS JAPAN」)と「デーロス」(本件商標)との社会通念上の同一性の有無になるところ,上記したとおり,「ジャパン」を付加することによって取引者・需要者に別異の観念を抱かせるものでなく,また,長音化したもの(デーロス)とそうでないもの(デロス)とは,外観上の差異がわずかである上,いずれもが特定の観念を抱かせないものであるから,その称呼の差異によって別個の観念は生じないものと解される。
以上からすると,「DEROS JAPAN」と本件商標とは,社会通念上の同一性を有するものと認めるのが相当である。
(3)指定役務(建設工事)についての使用について
ア 商標の表示について
乙第22号証は,表紙左端部分の上端から下端までが薄緑色で帯状に着色され,その帯部分に白抜きで上下1cm 程度の比較的大きな字体で「DEROS JAPAN」の横書きの欧文字が,右に90度回転されて縦書き配置されている。
また,上記(2)に認定判断のとおり,「DEROS JAPAN」と本件商標とは,社会通念上の同一性がある。
したがって,少なくとも,乙第22号証には,本件商標と社会通念上同一の商標が付されているといえる。
イ 役務の表示について
乙第22号証は,その記載によれば,ひび割れ抵抗性能等が優れた高靱性繊維補強セメント複合材を材料として使用し,これを水路などの既設コンクリート表面へ被覆する工法を紹介するものであるから,建設工事の役務に関するパンフレットといえる。
ウ 商標の使用について
被請求人が提出した証拠(乙第22号証,乙第42号証及び乙第46号証)及びその主張によれば,乙第22号証の文書(08/2012.01)と同様の内容の文書が,平成22年1月18日ころに,元請人である山崎建設株式会社を通じて,長野県松本地方事務所農地整備課関連事業係に対し,平成21年度県営かんがい排水事業安曇野地区矢原排水路第2工区工事に係る使用材料承認願に添付されて提出されたことが認められる。
このことにかんがみると,乙第22号証の文書が,少なくとも同様な形で類似工事に係る関係工事業者及び発注者に対して頒布されたことを推認することができる。
3 まとめ
以上のとおりであるから,被請求人は,本件審判の請求の登録(平成24年5月25日)前3年以内に,通常使用権者であるデーロス・ジャパンが,請求に係る指定役務である「建設工事」について,本件商標と社会通念上同一の商標を使用したことを証明したものと認められる。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すことができない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2014-04-22 
結審通知日 2014-04-24 
審決日 2014-05-09 
出願番号 商願2004-79486(T2004-79486) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Y0737)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 山田 正樹 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 田中 亨子
井出 英一郎
登録日 2005-04-15 
登録番号 商標登録第4857066号(T4857066) 
商標の称呼 デーロス 
代理人 三田 大智 
代理人 大塚 千代 
代理人 市橋 俊一郎 
代理人 中畑 孝 
代理人 安田 嘉太郎 
代理人 ▲片▼山 裕介 
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