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審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2013900197 審決 商標
無効2013890088 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W43
管理番号 1289641 
審判番号 無効2013-890043 
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-06-26 
確定日 2014-06-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第5538351号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5538351号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5538351号商標(以下「本件商標」という。)は、「カリビアン・パイレーツ・バーベキュー」の片仮名と記号を標準文字で表してなり、平成24年6月5日に登録出願、第43類「飲食物の提供,加熱器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与,宿泊施設の提供,動物の宿泊施設の提供,業務用加熱調理機械器具の貸与,業務用食器乾燥機の貸与,業務用食器洗浄機の貸与,会議室の貸与,展示施設の貸与,タオルの貸与」を指定役務として、同年11月2日に登録査定、同月22日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第139号証(枝番を含む。以下、括弧内においては「甲1ないし甲139」のように略記する。)を提出している。
1 無効理由
本件商標は、以下に述べる理由により、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号に該当するから、その登録は、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)混同を生ずるおそれの判断基準
最高裁判決は、「広義の混同のおそれ」の有無を判断する具体的な基準として、「『混同を生ずるおそれ』の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである」と判示している。
したがって、この判断基準に従い、本件商標がその指定役務について使用された場合に、「他人」すなわち請求人の業務に係る役務及び商品との間で「広義の混同のおそれ」があることについて、以下詳述する。
(2)請求人の使用に係る商標の周知・著名性
ア 請求人は、「パイレーツ・オブ・カリビアン」、「PIRATES OF THE CARIBBEAN」及び「カリブの海賊」(以下、まとめて「請求人商標」という。)を、その業務に係る役務及び商品について使用しており、また、「PIRATES OF THE CARIBBEAN」の文字を含む商標については多数の商標権を保有している(甲2ないし甲10)。
請求人商標は、かつてカリブ海を荒らしていたという海賊から着想を得て、ウォルト・ディズニー(Walt Disney)が創作・採択した言葉であるが、これを商標として初めて使用したのは請求人であり、そして、取引上これを大々的かつ長期にわたり使用しているのは、世界に請求人及びそのライセンシーのみである。
したがって、請求人商標は、多岐にわたる役務及び商品の分野をみても、請求人又はそのライセンシーのみが使用する唯一無二の商標といって過言ではなく、後記するこれまでの使用の規模や状況に照らせば、請求人商標に接した需要者及び取引者は、直ちに請求人の業務を連想・想起し、そして、同商標の使用に係る役務及び商品の出所を、請求人と理解するというべきである。
なお、請求人商標の周知・著名性については、登録第5487771号商標に対する異議申立(異議2012-900207)において発せられた取消理由通知書の中ですでに明確に認定されている(甲96)。
イ 米国アナハイム・ディズニーランド
請求人は、周知のとおり、ウォルト・ディズニーを創始者とし、アニメーション映画その他の様々な映像作品を制作・提供するほか、幅広いエンターテイメント事業を手がける世界的に著名な事業者である。請求人の制作に係る映像作品は、今や数え切れないほど存在し、また、それらの作品の中には、数多くのキャラクターが登場する。
ウォルト・ディズニーは、これらの作品の世界観やキャラクターを具現化しようと、1955年、米国カリフォルニア州アナハイムにディズニーランドを開園した。同園には、数多くのユニークなアトラクションが設けられたが、その一つとして、海賊をテーマにしたアトラクション「PIRATES OF THE CARIBBEAN」が、1967年3月に登場した(甲11及び甲25)。同アトラクションは、ディズニーアニメーションの制作を長年支えた伝説的アニメーター、マーク・デイビス(Marc Davis)によってデザインされ(甲25)、ウォルト・ディズニーらが開発したロボット技術「オーディオ・アニマトロノクス(「Audio」、「Animation」及び「Electronics」を組み合わせた造語)」を駆使した人形が多数使用されるなど(甲11及び甲14)、ウォルト・ディズニーが最後に、特別なこだわりをもって手がけた同氏の遺作といわれている(甲11)。そのひときわ高いデザイン性や精緻さにより、当該アトラクションは、オープン当時爆発的な人気を呼び、そして、その頃からすでに半世紀近く経過しているにもかかわらず、未だに多くのゲストが一番好きなアトラクションとして名前を挙げるほど、人気が高い(甲11及び甲25)。
ウ 東京ディズニーランド
1983年に東京ディズニーランドが開園し、米国で人気の「PIRATES OF THE CARIBBEAN」が、同年のオープン時にほぼ同じ内容のアトラクションとして、東京ディズニーランドに再現された(甲11)。当該アトラクションは、「カリブの海賊」という邦名が付けられる一方で、入り口には「PIRATES OF THE CARIBBEAN」と書された大きな看板がオープン当時から現在に至るまで掲げられている(甲15及び甲26)。
そして、同園のガイドやパンフレットその他の印刷物には、開園当初から「カリブの海賊」、「PIRATES OF THE CARIBBEAN」が使用されている(甲14ないし甲25)。2007年には、当該アトラクションは、後記する大作映画シリーズ「パイレーツ・オブ・カリビアン」の内容を取り入れる大規模なリニューアルが行われ、さらなる人気を呼んでいる(甲11及び甲12の1)。
周知のとおり、東京ディズニーランドは、日本でも最も人気、かつ、有名なテーマパークであり、1983年の開業年に993万人という来場者を迎えてから今日に至るまで、毎年、年間1千万人以上の来場者を誇っている(甲13及び甲17)。しかして、「カリブの海賊(PIRATES OF THE CARIBBEAN)」が東京ディズニーランドのオープン当時から在る人気アトラクションであること、及びこれまでの東京ディズニーランドの来場者数が総計2億人以上に達していることを所与とすれば、相当数の日本国民が、当該アトラクションを楽しんだ経験があり、請求人商標を熟知していることは明らかである。
したがって、請求人商標が、請求人の業務に係るアトラクションについて、半世紀以上(日本についていえば、30年間)継続して使用されてきた商標であって、請求人の業務に係る役務(アトラクション)を表示するものとして著名になっていることは明白である。
エ 大作映画シリーズ
請求人は、2003年に「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」を公開した(甲27)。当該作品は、ウォルト・ディズニー・ピクチャーズの提供、ジェリー・ブラッカイマー(Jerry Bruckheimer)の制作に係るとともに、ハリウッドの大スターであるジョニー・デップ(Johnny Depp)を主役に迎え、1億ドルもの制作費を投じるという超大作であった。同作品は、全米で3億ドル以上の興行収入、日本だけでも68億円(国内観客動員数:508万人/甲54の2)もの興行収入という大ヒットとなり、米国アカデミー賞にも5部門ノミネートされ(甲11)、これら一連のニュースが日本の各報道機関でも連日大きく取り上げられたことは多言を要しない。そして、当該作品の後、請求人は、2006年に「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」を公開し(甲28)、全世界で10億ドル以上の驚異的な興行成績(甲11)を、日本では100億円の興行成績を収め(観客動員数:777万人/甲54の2)、同年の日本映画興行成績第2位の映画作品となった(甲54の1)。
2007年には、「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」が公開され(甲29)、同作は、前作同様、全世界で巨額の興行成績をあげ、日本では、109億円の興行成績(観客動員数:860万人/甲54の2)で、同年の日本映画興行成績第1位を収めた(甲54の1)。さらに、2011年には、「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」が公開となり、同作は、日本で88億円の興行成績(観客動員数:582万人)を収めた(甲54の1)。
前記各映画作品の広告宣伝は、雑誌・新聞・ニュース番組・テレビCM・全国店頭プロモーション・街頭ポスター・芸能人によるイベントなど様々な媒体を通じて空前の規模で行われ、各作品がその都度公開前から大きな話題を集めていたことは記憶にも新しい(甲31ないし甲53)。また、映画公開終了後、各作品は、DVD等として販売され、その際にも全国各地で大々的なキャンペーンやプロモーションが行われた(甲55ないし甲93)。さらに、1作目から3作目は、地上波によるテレビ放送も行われ、2007年5月に放送された「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」は、26.5%という非常に高い視聴率を記録するなど、各作品は、放送の都度、高視聴率を記録している(甲94)。
また、請求人は、衣・食・住に関わる多種多様な商品について、キャラクターデザイン等(以下、「ディズニープロパティ」という。)のライセンス事業を行っているところ、クリアファイル、レターセット、ノート、メモ帳、シール、マグカップ、ストラップ、ピンバッジ、カンバッジ、キーホルダー、ペンケース、子供用衣装、バッグ、人形等の多岐にわたる商品について請求人商標をライセンスし、日本全国において販売している(甲97ないし甲102)。また、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」の公開時やDVD発売時などには、他社との公式タイアップ商品が多種販売されている(甲103ないし甲107)。
かくして、「パイレーツ・オブ・カリビアン」は、請求人が提供する史上最大級規模のシリーズ映画の一つとして、そして、その関連商品について使用されるディズニープロパティの一つとして、日本中あまねく知られるに至っている。
オ 「飲食物の提供」との関係における請求人商標の周知・著名性
請求人は、そのライセンシーを通じて、東京ディズニーランド、東京ディズニーシー、その周辺ホテル等を併せた東京ディズニーリゾートを運営しており、各テーマパーク及びホテルには、ディズニープロパティやディズニーアニメーションの世界観をテーマにした飲食店が多数存在している。それら飲食店の一つとして、前記アトラクション「カリブの海賊(PIRATES OF THE CARIBBEAN)」内にはレストランが設けられている(甲11及び甲12の2)。当該レストランは、前記アトラクションの一部として、そして、アトラクションの雰囲気を感じながら食事を楽しむことができる場所として、東京ディズニーリゾートの中で最も人気の高いレストランの一つとなっており、毎日、多くの利用客が訪れている。しかして、当該レストランにおいては、「Pirates of the Caribbean/Special Course」や「カリブの海賊のシーンをイメージしたスペシャルコース」が提供されたり、店内で使用されるランチョンマットやメニューシートに「Pirates of the Caribbean」のロゴが使用されたりして、アトラクションのテーマに即したサービスが提供されている(甲113ないし甲123)。
なお、当該レストランは、「カリブの海賊」のアトラクション内にあることから、「カリブの海賊のレストラン」というように特定・識別されることは少なくない(甲125ないし甲131)。
このように、請求人商標は、テーマパークのアトラクション、大作映画シリーズ、関連ライセンス商品のみならず、請求人が提供する有名レストランの出所識別標識としても機能している。しかして、当該レストランは、年間1千万人以上が訪れる東京ディズニーランドの人気アトラクション内にあり、相当数のゲストがその存在を認識していること、レストランの利用者数も開業以来かなりの数に達していること、関連雑誌において当該レストランが紹介されていること(甲119ないし甲122)等に照らすと、請求人商標は、請求人の業務に係る「飲食物の提供」を表示する商標としても、需要者(とりわけ、ディズニーファン)の間に広く認識されているということができる。
カ まとめ
請求人商標が、前記のように使用されてきたことにより、本件商標の出願前から現在に至るまで継続して、老若男女を問わず日本全国の需要者及び取引者において著名であることは疑いない。そして、その著名性の程度は、需要者及び取引者が、請求人商標に接すれば、ディズニーランドのアトラクション(レストランを含む。)に係る商標又はそれを原案とした大作映画シリーズを直ちに連想・想起する程度と評しても過言ではない。さらにいえば、「パイレーツ」と「カリビアン」の両語さえ目にすれば、即座に請求人の業務を連想・想起するという印象が、需要者及び取引者の記憶の中で強く定着しているという実情が存在しているというべきである。
(3)本件商標と請求人商標の類似性
ア 本件商標権者の業務内容
本件商標権者の登記簿上の「目的」には、「都市公園におけるバーキューショップの食材販売、用具レンタル」「前各号に附帯関連する一切の事業」が記載されている(甲139)。そして、本件商標が「バーベキュー」の文字を含んでいることに照らせば、本件商標は、主として、バーベキューによる飲食物の提供及びそれに附帯する役務について使用するものと推認することができる。
イ 外観上の類似性
本件商標は、片仮名文字「カリビアン」、「パイレーツ」、「バーベキュー」の各語間に中黒点「・」を配した構成であり、各語は無理なく個別の単語として認識することが可能である。しかして、その構成中「バーベキュー」は、「(肉など)を(直火)であぶり焼く(ジーニアス英和辞典)」、「肉・魚介・野菜などを直火であぶり焼きにする野外料理(広辞苑)」などの意味合いで一般に知られ、親しまれている語であり、本件商標権者の業務、すなわち本件商標に係る指定役務「飲食物の提供」及びそれに附帯して提供されるその他の指定役務との関係においては、単に役務の普通名称又は役務の質(料理の方法又は種類)を表しているにすぎず、識別力を欠くか、あるいは、識別力が極めて弱いものである。したがって、本件商標の構成中、これに接した者に対して支配的な印象を与えるのは、「カリビアン・パイレーツ」の部分であることが明らかである。
そして、請求人商標は、前記のとおり著名なものであって、「パイレーツ」と「カリビアン」の両語さえ目にすれば、即座に請求人の業務を連想・想起するという印象が、需要者及び取引者の記憶の中で強く定着しているという実情の下では、片仮名「カリビアン」、「パイレーツ」を顕著に有している本件商標は、外観において「パイレーツ・オブ・カリビアン」と見誤られる、あるいは、請求人の業務を強く連想・想起させる可能性が高いものといわなければならない。
ウ 観念上の類似性
前記のとおり、本件商標の構成中、出所識別標識として需要者に対し支配的な印象を与える「カリビアン・パイレーツ」の部分は、「カリビアン」が「カリブの、カリブ海の」を意味し、「パイレーツ」が「海賊」を意味するものであって、全体から「カリブの海賊」という意味合いが生ずる。とりわけ、請求人が提供するアトラクション「カリブの海賊(PIRATES OF THE CARIBBEAN)」(レストランを含む。)や大作映画シリーズ「パイレーツ・オブ・カリビアン」が周知・著名であることに照らせば、本件商標の構成中、「カリビアン・パイレーツ」が、容易かつ直ちに前記意味合いで認識されることは明らかである。
他方、請求人商標は、「パイレーツ・オブ・カリビアン」、「PIRATES OF THE CARIBBEAN」及び「カリブの海賊」であり、いずれも「カリブの海賊」という意味合いで認識されるものである。
したがって、本件商標と請求人商標は、観念において明らかに共通し、相互に類似するものである。
エ 「著名商標への依拠」という観点からの類似性
請求人商標は、年間1千万人以上が来園する東京ディズニーランドにおいて、主要なアトラクション(レストランも含む。)に係る商標として、約30年継続して使用されており、また、世界中で記録的な興行成績を上げた大作映画シリーズ及びその関連商品についても使用され、請求人の提供に係る役務の出所表示として、あるいは、その業務に深く関わる商品等表示として、日本中で著名なものである。よって、本件商標権者が、請求人商標の存在について知らないはずがなく、それに依拠して、本件商標を選択し、出願したことは明らかである。本件商標が、周知・著名な請求人商標に依拠する商標である以上、両商標が、前記したように外観及び観念において相紛らわしいものとなることは当然であって、かかる観点からも両商標は類似するものといわざるを得ない。
オ まとめ
本件商標を請求人商標と時と場所を異にして観察した場合には、著名な請求人商標を連想・想起し、その結果、その使用に係る指定役務が、請求人の業務に係るものであると誤認混同してしまうことは明らかである。
よって、両商標は、相当程度の類似性を有しているものというべきである。
(4)本件商標の指定役務と請求人の業務に係る商品及び役務との関連性並びに取引者及び需要者の共通性
ア 本件商標権者は、本件商標をバーベキュー施設における「飲食物の提供」について使用することが推認されるから、本件商標の指定役務中「飲食物の提供」の需要者は、主として一般消費者であることが明らかである。その他の指定役務「加熱器の貸与、調理台の貸与、流し台の貸与、業務用加熱調理器器械器具の貸与、業務用食器乾燥機の貸与、タオルの貸与」なども、一般的に、バーベキュー施設等において付随して提供され得るものであるから、それらの需要者は、前記「飲食物の提供」の需要者と共通している可能性が非常に高い。
イ 他方、請求人の提供に係るアトラクション「カリブの海賊(PIRATES OF THE CARIBBEAN)」及び大作映画シリーズ「パイレーツ・オブ・カリビアン」は、いずれも一般消費者向けの娯楽であり、また、その関連ライセンス商品も一般消費者向けに販売されるものである。
また、請求人は、本件商標の指定役務と直接的に類似する業務として、「カリブの海賊(PIPATES OF THE CARIBBEAN)」をテーマにしたレストランを長年にわたり営業し続けている。その他にも過去に、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」のDVD発売記念として、請求人は、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」をテーマとした「Pirates Cafe」という飲食店の開設に、タイアップ形式のプロモーションを行い、海賊姿に扮した店員が給仕したり、映画の小道具やギャラリー等を展示したりして、請求人商標を使用して、飲食物の提供を行っている(甲124)。
このように、請求人商標は、「飲食物の提供」と非常に密接な関連性があり、そしてこれら役務も、一般の消費者を対象とするものであることは明らかである。
ウ 以上のとおり、本件商標に係る指定役務と請求人商標の使用に係る役務及び商品とは、需要者等について高い共通性を有している。そして、請求人が多岐にわたる商品及び役務について、ディズニープロパティのライセンス事業を行っているという事情が広く知られている状況下では、もし本件商標が使用された場合には、一般の消費者は、本件商標の使用に係る役務があたかも請求人から許諾・公認を受けた、あるいは、請求人とのタイアップ又はコラボレーションによる役務であるかの如く誤認してしまう蓋然性が高いといわざるを得ない。
したがって、本件商標がその指定役務について使用される場合、請求人商標の著名性の程度や両商標の類似性に照らし、役務の出所につき誤認混同が生じる可能性が高い。
(5) フリーライド及びダイリューションの防止
前記したとおり、請求人商標は、請求人の業務に係る役務及び商品の出所表示として、あるいは、その業務に深く関わる商品等表示として、日本中で著名なものである。よって、本件商標権者が、請求人商標の存在について知らないはずはなく、本件商標は、請求人の業務上の信用や人気にただ乗りし、公衆からの注目を集めようと選択されたものと断ぜざるを得ない。
したがって、本件商標がその指定役務について使用されれば、請求人の業務を直ちに連想・想起させ、ひいては、請求人の公認又はタイアップのテーマ施設であるかの如く誤認されるおそれがあるといわなければならない。また、本件商標は、明らかに請求人商標に便乗するものであり、その商標の登録・使用を許せば、同じようなことを考える不正使用者や不正登録が次々と出現し、請求人及びその使用権者の営業努力の成果、つまり、著名な請求人商標が獲得してきた市場における信用・評価・評判等に代表される顧客吸引力が弱められるおそれは大きい。よって、著名な請求人商標へのフリーライド、そのダイリューションという観点からも、本件商標の登録は断じて許されるべきものではない。
(6)小活
以上のとおり、本件商標は、請求人商標及びそれに係る業務との関係において、商標法第4条第1項第15号の「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に該当することが明らかである。
3 商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、請求人が「飲食物の提供」について継続的に使用しており、需要者の間に広く知られている請求人商標と類似するものである。
したがって、請求人商標の周知・著名性に照らせば、本件商標は、その指定役務のうち少なくとも「飲食物の提供」については、商標法第4条第1項第10号に該当する。
4 商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、請求人の業務に係る役務及び商品を表示するものとして日本国内における需要者の間に広く認識されている請求人商標と類似であって、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
5 結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号に該当する。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、答弁していない。

第4 当審の判断
1 請求人の使用に係る商標の著名性について
請求人の提出に係る証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)請求人が運営する東京ディズニーランドは、日本で最も人気かつ有名なテーマパークであり、1983年の開業以来、毎年約1千万人以上の来場者がある(甲13及び甲17)。
そして、同園のアトラクションの中で人気の一つになっているのが「カリブの海賊」、英語名は、「PIRATES OF THE CARIBBEAN(Pirates of the Caribbean)」であり、同園のガイドブックやパンフレットその他の印刷物には、該文字が、開園当初から使用されている(甲12の1、甲14ないし甲25)。
また、上記アトラクションは、2007年には、映画シリーズ「パイレーツ・オブ・カリビアン」の内容を取り入れ、大規模なリニューアルが行われ、さらに高い人気を有している。(甲11及び甲12の1)
(2)請求人は、2003年に映画「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」を公開し、全世界で3億ドル以上の興行収入、日本だけでも68億円(国内観客動員数:508万人)もの興行収入という大ヒットとなり、米国アカデミー賞にも5部門ノミネートされ、これら一連のニュースが日本の各報道機関でも大きく取り上げられた(甲11、甲27、甲54の1及び甲54の2)。
その後、2006年に映画「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」を公開し、全世界で10億ドル以上の興行成績、日本では100億円の興行成績(観客動員数:777万人)を収め、同年の日本映画興行成績第2位となった(甲11、甲28、甲54の1及び甲54の2)。翌年の2007年には、「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」が公開され、日本では109億円の興行成績(観客動員数:860万人)で、同年の日本映画興行成績第1位となった(甲11、甲29、甲54の1及び甲54の2)。
映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズの広告宣伝は、雑誌・新聞・ニュース番組・テレビCM・全国店頭プロモーション・街頭ポスター・芸能人によるイベントなどを通じて公開前から大規模に行われている(甲31ないし甲53)。また、映画公開終了後は、DVD等として発売された(甲55ないし甲93)。さらに、テレビ放送も行われ、2007年5月に放送された「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」は、26.5%の高い視聴率を記録した(甲94)。
(3)請求人は、衣・食・住に関わる多種多様な商品についてキャラクターデザイン等のライセンス事業を行っており、クリアファイル、レターセット、ノート、メモ帳、シール、マグカップ、ストラップ、ピンバッジ、カンバッジ、キーホルダー、ペンケース、子供用衣服、バッグ、人形等の商品について、請求人商標のライセンスを許可し、日本全国で販売している(甲97ないし甲102)。また、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」の公開時やDVD発売時などには、他社との公式タイアップ商品が多種販売されている(甲103ないし甲107)。
(4)以上のとおり、東京ディズニーランドは、1983年に開園した我が国において著名なテーマパークであり、そのアトラクションの一つである「カリブの海賊」は、開園当初から人気の高いアトラクションであり、その英語名の「PIRATES OF THE CARIBBEAN」は、開園当初から継続して使用されている。また、2003年、2006年及び2007年に「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズの映画が公開され、それぞれ、68億円(観客動員数:508万人)、100億円(同:777万人)及び109億円(同:860万人)の興行成績を収め、有名な人気映画となっていることなどからすれば、我が国において、請求人商標が、広く認識されていたといえるものである。
そして、請求人商標の構成中において、「OF」、「オブ」は前置詞、「THE」は冠詞であるから、看者に特段強い印象を与える語ではなく、かかる構成においては、需要者、取引者に強く印象に残るのは、「パイレーツ(PIRATES)」及び「カリビアン(CARIBBEAN)」の語とみるというべきである。
そうすると、「パイレーツ(PIRATES)」及び「カリビアン(CARIBBEAN)」の文字からなる標章は、請求人の業務に係る商品及び役務を表示する商標として、本件商標の登録出願時には、すでに取引者、需要者の間に広く認識されていたというべきであり、その状態は、本件商標の登録査定時においても継続していたものと認められる。
2 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標と請求人商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「カリビアン・パイレーツ・バーベキュー」の片仮名と記号からなり、その構成中「バーベキュー」の文字は、「肉・魚介・野菜などを直火であぶり焼きにする野外料理。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)を意味し、本件の指定役務中「飲食物の提供」との関係においては、自他役務の識別標識としての機能を有さない、あるいは極めて弱いものであるから、本件商標において、「カリビアン・パイレーツ」の文字が、出所識別標識として機能を有し、該語が、看者に対し強い印象を与えるものである。
一方、請求人商標は、「カリブの海賊」、「PIRATES OF THE CARIBBEAN」及び「パイレーツ・オブ・カリビアン」の文字からなり、前記1で述べたとおり、取引者、需要者間において広く知られているものである。そして、その構成中において、取引者、需要者の注意を惹き強い印象を有するのは、「パイレーツ(PIRATES)」及び「カリビアン(CARIBBEAN)」の文字といえる。
(2)本件商標と請求人商標の類似性について
ア 外観上の類似性
本件商標の構成中、出所識別標識として機能を有する「カリビアン・パイレーツ」の文字と請求人商標の「パイレーツ・オブ・カリビアン」の文字を比較すると、両者は、看者の注意を惹き強い印象のある「カリビアン」と「パイレーツ」の文字を共通にするものであり、請求人商標が取引者、需要者に広く知られているという実情とも相俟って、外観上において互いに近似した印象を与えるというのが相当である。
イ 観念上の類似性
本件商標の構成中、出所識別標識として機能を有する「カリビアン・パイレーツ」の文字は、「カリビアン」が「カリブの、カリブ海の」を意味し、パイレーツ」が「海賊」を意味し、いずれも我が国において親しまれた語であるから、該文字全体からは「カリブの海賊」ほどの意味合いが生じるものといえる。そして、請求人の著名な東京ディズニーランドのアトラクション名や爆発的な人気の映画「パイレーツ・オブ・カリビアン(カリブの海賊)」に照らせば、これらを容易に想起させるものである。
一方、請求人商標は、その構成全体に相応して「カリブの海賊」の意味合いで認識されるものであり、上記アトラクションや映画を想起させるものであるから、本件商標と請求人商標とは、観念において類似するものである。
(3)需要者の共通性
本件商標の指定役務中「飲食物の提供」の需要者は、主として一般消費者であり、その他の指定役務「加熱器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与,業務用加熱調理機械器具の貸与,業務用食器乾燥機の貸与,タオルの貸与」なども、本件商標との関係からすれば、「バーベキューを主とする飲食物の提供」に付随して提供されるものといえるから、その需要者は、「飲食物の提供」と共通する一般消費者の可能性が高いというのが相当である。
一方、請求人商標に係る東京ディズニーランドのアトラクションや映画は、一般消費者向けの娯楽であり、また、関連ライセンス事業についても、衣、食、住に関わる商品が多く、一般消費者向けの商品と認められるから、両者は、一般消費者を需要者とするという点で共通するものといえる。
(4) 出所の混同のおそれ
前記1で認定した請求人商標の著名性の程度、本件商標と請求人商標の類似性の程度及び需要者の共通性を総合的に判断すると、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、これをその指定役務に使用した場合、その役務が、請求人が営む業務又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その余の無効理由について判断するまでもなく、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2014-03-20 
結審通知日 2014-03-26 
審決日 2014-05-09 
出願番号 商願2012-45039(T2012-45039) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (W43)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山本 敦子大澤 恒介 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 根岸 克弘
手塚 義明
登録日 2012-11-22 
登録番号 商標登録第5538351号(T5538351) 
商標の称呼 カリビアンパイレーツバーベキュー、カリビアンパイレーツ、パイレーツバーベキュー 
代理人 松尾 和子 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 辻居 幸一 
代理人 狩野 彰 
代理人 中村 稔 
代理人 藤倉 大作 

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