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審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2013900206 審決 商標
異議2013900212 審決 商標

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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0709
審判 全部申立て  登録を維持 W0709
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審判 全部申立て  登録を維持 W0709
審判 全部申立て  登録を維持 W0709
審判 全部申立て  登録を維持 W0709
管理番号 1288819 
異議申立番号 異議2013-900408 
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2014-07-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2013-11-28 
確定日 2014-06-09 
異議申立件数
事件の表示 登録第5615224号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5615224号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5615224号商標(以下「本件商標」という。)は,「MOHNO MASTER」の欧文字を標準文字で表してなり,平成25年5月24日に登録出願,同年8月26日に登録査定,第7類「半導体製造用・精密機械用液体精密定量吐出装置並びにその部品及び付属品,化学機械器具,塗装機械器具,食品製造用に使用される液状・液体又は流体状の食品を注入・塗布・添加及び噴射するための装置,その他の食品加工用又は飲料加工用の機械器具,樹脂等の液体定量ポンプ,その他のポンプ」及び第9類「実験・研究用自動分注・吸引装置,理化学機械器具として使用されるたんぱく質・生物試料・特殊試薬・水溶液・溶媒・アルコール溶液・溶剤・液晶・インク・オイル・磁性流体等の非接触飛滴吐出装置,その他の理化学機械器具,電子応用機械器具及びその部品,測定機械器具」を指定商品として,同年9月13日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する登録商標(まとめていうときは,以下「引用商標」という。)は,以下のとおりであり,引用商標の商標権は,いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第2375197号商標(以下「引用商標1」という。)は,「ヘイシンモーノ」の片仮名を書してなり,平成元年6月30日に登録出願,第9類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,平成4年1月31日に設定登録されたものであり,その後,2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ,指定商品については,平成14年7月3日に,第6類「金属製荷役用パレット,荷役用ターンテーブル,荷役用トラバーサー,金属製人工魚礁,金属製養鶏用かご,金属製の吹付け塗装用ブース,金属製セメント製品製造用型枠,てんてつ機,金属製道路標識(発光式又は機械式のものを除く。),金属製航路標識(発光式のものを除く。),金属製液体貯蔵槽,金属製工業用水槽,金属製液化ガス貯蔵槽,金属製ガス貯蔵槽,金属製ガス貯蔵槽又は液化ガス貯蔵槽用のアルミニウム製の浮中ぶた,金属製の滑車・ばね及びバルブ(機械要素に当たるものを除く。),金属製管継ぎ手,金属製フランジ,キー,コッタ」,第7類「金属加工機械器具,鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具,漁業用機械器具,化学機械器具,繊維機械器具,食料加工用又は飲料加工用の機械器具,製材用・木工用又は合板用の機械器具,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具,印刷用又は製本用の機械器具,ミシン,農業用機械器具,靴製造機械,製革機械,たばこ製造機械,ガラス器製造機械,塗装機械器具,包装用機械器具,陶工用ろくろ,プラスチック加工機械器具,半導体製造装置,ゴム製品製造機械器具,石材加工機械器具,動力機械器具(陸上の乗物用のものを除く。),陸上の乗り物用の動力機械の部品,風水力機械器具,機械式の接着テープディスペンサー,自動スタンプ打ち器,業務用電気洗濯機,修繕用機械器具,機械式駐車装置,乗物用洗浄機,業務用食器洗浄機,業務用電気式ワックス磨き機,業務用電気掃除機,芝刈機,電動式カーテン引き装置,廃棄物圧縮装置,廃棄物破砕装置,機械要素(陸上の乗物用のものを除く。)」,第9類「アーク溶接機,金属溶断機,電気溶接装置,オゾン発生器,電解槽,検卵器,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,電気計算機,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,自動販売機,ガソリンステーション用装置,駐車場用硬貨作動式ゲート,救命用具,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,スプリンクラー消火装置,火災報知器,ガス漏れ警報機,盗難警報器,保安用ヘルメット,鉄道用信号機,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,潜水用機械器具,遊園地用機械器具,電動式扉自動開閉装置,乗物運転技能訓練用シミュレーター,運動技能訓練用シミュレーター」及び第11類「乾燥装置,換熱器,蒸煮装置,蒸発装置,蒸留装置,熱交換器,牛乳殺菌機,工業用炉,原子炉,飼料乾燥装置,ボイラー,暖冷房装置,冷凍機械器具,美容院用又は理髪店用の機械器具(いすを除く。),業務用揚物器,業務用食器乾燥機,業務用炊飯器,業務用煮炊釜,業務用焼物器,業務用レンジ,汚水浄化槽,し尿処理槽,業務用ごみ焼却炉,太陽熱利用温水器,浄水装置,水道用栓,タンク用水位制御弁,パイプライン用栓」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(2)登録第4666188号商標(以下「引用商標2」という。)は,「ヘイシンモーノポンプ」の片仮名を書してなり,平成13年11月22日に登録出願,第7類「ポンプ,真空ポンプ」及び第37類「建築一式工事,しゅんせつ工事,土木一式工事,舗装工事,石工事,ガラス工事,鋼構造物工事,左官工事,大工工事,タイル・れんが又はブロックの工事,建具工事,鉄筋工事,塗装工事,とび・土工又はコンクリートの工事,内装仕上工事,板金工事,防水工事,屋根工事,管工事,機械器具設置工事,さく井工事,電気工事,電気通信工事,熱絶縁工事,印刷用又は製本用の機械器具の修理又は保守,食料加工用又は飲料加工用の機械器具の修理又は保守,ポンプの修理又は保守,塗装機械器具の修理又は保守,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具の修理または保守,包装用機械器具の修理又は保守」を指定商品及び指定役務として,平成15年4月25日に設定登録され,その後,商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第10号,同第11号,同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであるから,その登録は,同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして,登録異議の申立ての理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第74号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 申立人の使用に係る引用商標の著名性
申立人は,1968年の創業以来,様々な液体の移送・充填・注入・塗布に携わるポンプ及び当該ポンプを組み込んだディスペンサーを製造・販売しており,同社の製品に付した商標「モーノポンプ」は,遅くとも1973年から現在に至るまで長年の使用により,その関連分野においては一定の周知性を獲得している。
申立人の製品は,高粘度・高濃度液の移送に特に威力を発揮し,その優れた特性を生かして,食品,化学,製紙,土木・建設,上下水道などの一般産業分野にとどまらず,近年は自動車や電子機器などハイテク分野にもその活躍の場を広げている。
イ 申立人のポンプ及びディスペンサーについて
申立人が開発・製造・販売するポンプは,回転容積式一軸偏心ねじポンプに分類されるもので,雄ねじにあたるローターと雌ねじにあたるステーターからなり,ステーターの中にローターが差し込まれると,その隙間に「キャビティー」という独立した一連の密閉空間が形成され,ローターがステーター内で回転することにより,強い吸引力を発生させながら,水状の液体から高粘度液まで脈動なく定量移送できる点で,他の方式とは一線を画している。
申立人が引用商標を使用する商品は,一軸偏心ねじポンプに加えて,ポンプを組み込んだ吐出装置であって,一般にディスペンサーとよばれ,様々な液体の移送・充填・注入・塗布に優れた特性を発揮するため,食品,化学,電機,自動車,製紙,土木建築,上下水など多種多様な分野における産業機械器具に利用されている(甲7)。一軸偏心ねじポンプ及び当該ポンプを組み込んだディスペンサーを製造販売するのは世界でも数社に限られ,国内では,申立人の製品が市場シェア90%を誇る(甲8)。
ウ 申立人の使用する商標について
申立人は,遅くとも1973年から現在に至るまで,「モーノポンプ」なる商標を一軸偏心ねじポンプ及び当該ポンプを組み込んだディスペンサーに継続して使用した結果,需要者・取引者は,「モーノポンプ」と聞けば,申立人の一軸偏心ねじポンプ又は当該ポンプを組み込んだディスペンサーを直ちに想起するほどに,当該商標は日本全国に広く認知されている(甲9)。
(ア)申立人は,「モーノ」に対応する欧文字として「mohno」を自社のドメインネームとして使用しており(甲10及び甲11),自社の輸送用トラックにも「MOHNO」の語を使用して,当該商標の取引者・需要者への浸透を図ってきた(甲5)。
(イ)販売実績(1998年度ないし2012年度の総合計,販売台数:84,688台,販売高:134,951百万円)及び広告宣伝費(2002年度ないし2012年度,総合計:1,196,198,165円)のように,申立人は,本件商標の出願日前少なくとも15年の間,継続して一定の販売高を維持しつつ強力な商品販売力を有してきたが,これに加えて,有名雑誌及び新聞等を媒体とした広告宣伝を1971年から継続して約40年間行ってきた。
(ウ)引用商標を付した一軸偏心ねじポンプ及び当該ポンプを組み込んだディスペンサーは,雑誌,新聞,TV,WEB等,また,一部の書籍に紹介され,日経BP社が発行する「日経ものづくり」や「日経Automotive Technology」など商標権者や申立人の業界の専門雑誌には,申立人の商品に関する広告が長年に亘り掲載されている(甲52)。
(エ)申立人は,展示会においてノベルティグッズを独自に制作し配布し,「ヘイシンモーノポンプ」の文字を入れ,宣伝活動を行ってきた(甲53ないし甲56)。
(オ)申立人は,宣伝用に,展示車を使って全国を巡回しており,1987年,初代展示車(大型展示車)が企業を訪問した数は63,見学者数は3,300人に及んだ。展示車の荷台にあたる側面には「MOHNO」のロゴが掲出されている(甲57)。
エ 「MOHNO」の造語性について
引用商標中の「モーノ」の語は,申立人が自らの商品に応用する技術の原理を開発したフランス人であるモーノ博士(Rene J.L.Moineau)の名に由来する。
モーノ博士の姓は「Moineau」と綴るところ,申立人はこれを「MOHNO」と表し,長年の間,自社の製品名として使用してきた。
すなわち,申立人は,ドイツのNETZSCH社より一軸偏心ねじポンプの技術を導入し,同社が使用していた「MOHNO PUMP」の商標につきライセンスを受け我が国で使用してきたものである。
当該「MOHNO」は,英和辞書に掲載されていない語であり(甲61),技術名称として一般に使用されているものでもない(甲62)。
したがって,「MOHNO」は,申立人らにより案出された造語といえる。
オ 小括
上述した各事実から,「MOHNO PUMP」,「モーノポンプ」,「MOHNO」,「モーノ」は,わが国において,本件商標の出願前より申立人の業務に係る商品に広く使用され,その結果,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の商標としてわが国の需要者等の間で極めて広く知られていることは明らかである。
カ 本件商標と引用商標の出所混同可能性
(ア)本件商標の一部を構成する「MOHNO」の語は,申立人らが案出した造語であって,一軸偏心ねじポンプ及び当該ポンプを組み込んだディスペンサーの分野の取引者・需要者においては,多大な信用と名声が化体した申立人の商標とその文字構成が全く同一である。
(イ)申立人の商標「MOHNO」は,全国的に周知であること,その標章が創造標章であること,そして,本件商標の指定商品は,申立人が製造・販売する商品に含まれ,相互に関連性を有する。
キ まとめ
以上より,本件商標は,申立人ら案出にかかる「MOHNO」なる語を含み,申立人の業務を表示するものとして著名な引用商標に類似し,また,商標権者と申立人の扱う商品は,相互に関連性を有し,その取引者及び需要者の範囲が一致するものであるから,申立人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがある。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第19号について
ア 本件商標と引用商標の類似性
引用商標は,本件商標の出願日より前から申立人にかかる商標として周知・著名性を獲得している。
また,本件商標からは,「MOHNO」が造語であって周知著名であり,後述のように,「MASTER」に自他商品識別力がないことから,「モーノマスター」の称呼以外に「モーノ」の称呼をも生じるものである。
とすれば,「モーノ」なる称呼が生じる引用商標と本件商標は類似するものである。また,指定商品も類似する。
不正の目的について
商標権者は,ディスペンサーを製造するメーカーで,従来,シリンジ内の流体をエア圧によって押し出す方式のもの(エアパルス式),ピエゾによる振動及びスクリューによる回転押し出し方式のもの(メカニカル式)を製造販売していた。よって,商標権者が低?中粘度域の流体吐出に強みを持つのに対し,申立人は全ての粘度域,特に高粘度域の流体吐出に強みを持つというように,これまで市場は棲み分けられていた。
ところが,2013年6月以降,申立人が出展していない展示会で,一軸偏心ねじポンプ式のディスペンサーに本件商標を付して出展した。
商標権者と申立人の販売市場が合致しているうえに,展示会では,両社が出展することも多く,商標権者は,同じディスペンサー分野の業務にあるものとして,申立人の採択してきた著名な商標が存在することを十分知り得る立場にあったものと推測できる(甲65)。
一軸偏心ねじポンプの主要メーカーは世界でわずか6社であるところ,ここに参入しようとした商標権者が,指定商品について「モーノ」という称呼をはじめ外観も紛らわしい類似の商標である「MOHNO MASTER」を採択した背景には,申立人が築き上げた信用にただ乗りしようとする不正の意図が容易に推認される。
ウ 商標権者による本件商標の使用例
商標権者は,「モーノ式ディスペンサー」のように,「モーノ式」という語を用いて自社の製品を説明しているが,そもそも「モーノ式」という語は,技術用語として一般に使用されているものでも機械器具の型式を示したものでもなく,明らかに申立人が案出した商標「モーノポンプ」の周知性ただ乗りしようとする行為である。
また,本件商標は欧文字表記出願であって,他に片仮名表記出願がないにも拘わらず,商標権者は展示会やリーフレットでは「モーノマスター」と片仮名表記を多用している。
機能や用途の点においても,展示会やリーフレットの記載から申立人のディスペンサーと酷似していることから,需要者に混同を生じさせる可能性が十分にある。
以上のように,申立人は,「MOHNO」商標を使用して永年にわたり事業を営んできたものであり,「MOHNO」には多大の信用が蓄積されている。
エ まとめ
上記に述べた事実に鑑みれば,引用商標と同じ綴りからなり,申立人の案出にかかる造語である「MOHNO」の文字を用いて,称呼上紛らわしい商標を採択・出願した本件商標の権利者には,引用商標の有する周知・著名性へのフリーライドの意図,出所表示機能の稀釈化の意図という不正の意図があったと考えざるを得ない。
そして,商標権者も引用商標の周知性は十分認識しうる立場にあったことは容易に推測できる。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第10号について
申立人の商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表すものとして,一定の周知性を獲得している。
また,本件商標からは,「MOHNO」が造語であって周知著名であり,後述のように,「MASTER」に自他商品識別力がないことから,「モーノマスター」の称呼以外に「モーノ」なる称呼をも生じるものである。
とすれば,同様に「モーノ」なる称呼が生じる引用商標と本件商標は,類似するものであり,また,指定商品も類似する。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
(4)商標法第4条第1項第11号について
ア 称呼上の類似
本件商標は,「MOHNO MASTER」の標準文字からなるところ,「MASTER」の語は,「優れた,最上の」という誇称の意味を有する平易な英単語であり,一方,語頭の「MOHNO」の文字は,特段の意味を有しない造語といえるものであり,該文字が強い印象を与えるものであって,当該部分が出所識別機能を有する特徴のある部分というべきである。
そして,本件商標は,構成全体として特定の意味合いを看取させる等,常に不可分一体のものとしてのみ観察されなければならないとすべき特段の事情は認められない。
そうすると,もっとも看者の目を惹く語頭の「MOHNO」の文字をもって取引に資される場合もあることは経験則の教えるところであり,よって,本件商標からは「モーノマスター」又は「モーノ」の称呼が生じ得る。
一方,引用商標1は,「ヘイシンモーノ」の文字からなるところ,「ヘイシン」の文字は申立人の略称を表すことから,「ヘイシン」及び「モーノ」の各部分が出所識別機能を有するものというべきである。
そうすると,引用商標1からは,「ヘイシンモーノ」のほか「ヘイシン」又は「モーノ」の称呼が生じる。
また,引用商標2は,「ヘイシンモーノポンプ」の文字からなるところ,「ポンプ」はその指定商品を直接的に表すため,「ヘイシン」及び「モーノ」が出所識別機能を有するものというべきである。
そうすると,引用商標2からは「ヘイシンモーノポンプ」のほか「ヘイシンモーノ」,「ヘイシン」及び「モーノ」の称呼が生じる。
本件商標から生じる「モーノ」の称呼は,引用商標から生じ得る称呼と同一であるため,両商標の称呼は,類似すると解するのが相当である。
よって,本件商標と引用商標とは,「モーノ」の称呼を共通にする類似の商標といわざるを得ない。
イ 観念上の類似
本件商標は,「MOHNO」の文字をもって取引に資される場合も多く,該文字は,申立人のものとして需要者・取引者の間で周知となっているため,本件商標からは,申立人の商品を想起させ,引用商標の出所識別機能を有する特徴部分である「MOHNO」とは,観念が共通しており,これら商標は,観念上紛らわしく,需要者に同様の印象を与えるものである。
よって,本件商標と引用商標は,観念において互いに類似するものである。
ウ 外観上の類似
本件商標からは,もっとも看者の目を惹く「MOHNO」の文字をもって取引される場合もあり,これは,引用商標の出所識別機能を有する特徴部分と同一である。
よって,両商標は,外観上紛らわしく,需要者に同様の印象を与えるものである。
エ 指定商品の類似
本件商標の指定商品は,いずれも引用商標1の指定商品中,第7類「化学機械器具,食料加工用又は飲料加工用の機械器具,塗装機械器具,半導体製造装置,風水力機械器具」に含まれるか,あるいはこれらの商品と,少なくとも生産部門,販売部門,需要者において共通するものである。
また,本件商標の指定商品中「樹脂等の液体定量ポンプ,その他のポンプ」は,引用商標2の指定商品「ポンプ,真空ポンプ」と同一である。
よって,本件商標の指定商品は,引用商標の指定商品と抵触するものである。
オ まとめ
以上より,本件商標と引用商標は,称呼・観念・外観上互いに類似する商標であり,また,両商標の指定商品は,同一又は類似の関係にある。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は,「MOHNO MASTER」の欧文字からなるところ,その構成文字は,同じ書体,同じ大きさ,等間隔で外観上まとまりよく表されているものであり,これからは,「モーノマスター」の称呼が生ずるものである。
そして,本件商標の構成中,後半の「MASTER」の文字分は,「重要な,最上の,〔・・・の〕達人,名人,〔・・・に〕精通した人」等の意味を有する英語であり,本件指定商品との関係においては,商品の品質等を表示するものとして理解されるとはいえないものであるから,本件商標は,構成文字全体をもって一体不可分の一種の造語として認識し把握されるとみるのが自然である。
その他,構成中の「MOHNO」の欧文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情は,見いだせない。
そうすると,本件商標からは,「モーノマスター」の称呼のみを生じ,特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標について
(ア) 引用商標1は,「ヘイシンモーノ」の片仮名からなり,これからは,「ヘイシンモーノ」の称呼を生じ,該文字は,特定の意味合いを有しない一種の造語と認められるものであるから,特定の観念が生じないものである。
(イ)引用商標2は,「ヘイシンモーノポンプ」の片仮名からなり,これからは,「ヘイシンモーノポンプ」の称呼を生ずるものである。
そして,その構成中,「ポンプ」の文字部分は,その指定商品である「ポンプ,真空ポンプ」との関係においては,商品の品質を表す文字部分であることから,自他商品の識別標識としての機能を有しないものである。
そうとすれば,引用商標2は,「ヘイシンモーノ」の文字部分が要部として捉えられるものであって,該文字部分から,「ヘイシンモーノ」の称呼をも生ずるものであり,また,特定の意味合いを有しない一種の造語と認められるものであるから,特定の観念が生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標との類否について検討するに,外観においては,両商標は,それぞれの構成に照らし,十分区別することができるものであるから,外観上,相紛れるおそれはないものである。
次に,称呼においては,本件商標から生ずる「モーノマスター」と,引用商標から生ずる「ヘイシンモーノ」及び「ヘイシンモーノポンプ」とは,その構成音及び構成音数において明らかな差異を有するものであるから,称呼上,十分に聴別することができるものである。
また,観念においては,本件商標と引用商標は,いずれも特定の観念が生じないものであるから,観念上,類似するところはないものである。
そうとすれば,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても十分に区別することができる非類似の商標である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第10号及び同第15号について
ア 申立人の使用に係る商標の周知性について
申立人は,「『MOHNO PUMP』,『モーノポンプ』,『MOHNO』,『モーノ』(以下,これらをまとめて「引用標章」という。)は,わが国において,本件商標の出願前より申立人の業務に係る商品に広く使用され,申立人の商標としてわが国の需要者等の間で極めて広く知られている」旨主張する。
そこで,申立人の主張及び提出された証拠を検討するに,申立人は,様々な液体の移送・充填・注入・塗布に携わるポンプ及び当該ポンプを組み込んだディスペンサーを製造及び販売する者であり,「ヘイシンモーノポンプ」の文字を表示した,申立人の「一軸偏心ねじポンプ」(以下「使用商品」という。)は,申立人の製品カタログ(甲4),商品のラインナップを紹介する書面(甲7),申立人のウェブサイト(一部)(甲10)のほか,「ひょうご経済戦略」,「神戸の企業最先端技術データブック」等の雑誌(甲13,甲15,甲17ないし29,甲49,甲51及び甲60)及び「フジサンケイビジネスアイ」等の新聞(甲31,甲33ないし甲35,甲37ないし甲39,甲41,甲44及び甲45)において紹介されていることが認められる。
そして,使用商品は,申立人の表示とともに「モーノポンプ」と記載され,「日刊工業新聞」等の新聞又はウェブサイト(甲9,甲32,甲36,甲40,甲42,甲43,甲46ないし甲48及び甲50),「ひょうご経済戦略」,「SQUET/スケット」等の雑誌(甲12,甲14及び甲16)において紹介されているものである。
また,申立人は,使用商品の専門メーカーであって,該製品の国内シェアは90%を超えるものであり,(甲8,甲12,甲16,甲19,甲24,甲31,甲49),その販売実績及び広告宣伝費等を勘案すれば,申立人の使用商品は,「ポンプ」を取り扱う業界において,相当程度知られているものということができる。
しかしながら,これらの証拠において,使用商品への「モーノポンプ」の文字については,甲第28号証において,「モーノポンプとは」の見出しの下,「モーノポンプとは,1930年代にフランスで開発された原理に基づく容積回転式ポンプで,雄ネジ状のゴム製ステーターの中を回転する時に形成される密閉空間に,液を吸引し移送する仕組みです。」(甲28)と記載されていること,また,職権調査によれば,「新版 油空圧便覧」(日本油空圧学会編,株式会社オーム社発行)には,「ねじポンプ」の項の「分類・構造」の「1軸ねじポンプ」の欄に,「1軸ねじポンプの代表的なものにモーノ式ポンプがある。」と記載されていることからすれば,該文字は,ポンプの普通名称である「モーノポンプ」を表すものと認識されるものである。
そして,インターネットによれば,「モーノポンプ」の欧文字表記といえる「MOHNO PUMP」については,「ポンプ」の一種を表すものとして,「EVERYOUNG INDUSTRIAL CO.,LTD. 」のウェブサイトにおいて,「Mohno Pump is one-rotor screw pump of cubage,・・・ 」(http://www.everyoung.tw/english/MOHNO PUMP.htm)と記載されているほか,「ENOVENETA S.p.A. 」(http://www.enoveneta.it/index.php/en/prodotti-2/pompe-2/mohno-pump-with-hopper),「MASUKO SANGYO CO.,LTD」(http://www.masuko.com/English/product/PeripheralNELS-40.html)及び「Rademaker BV」(http://www.rademaker.com/machines-detail.asp?id=97)において紹介されていることが確認できる。
また,申立人の展示車に表示されている「MOHNO PUMP」の文字(甲5及び甲57)は,上記からすれば,「モーノポンプ」の名称を欧文字で表示したものであって,また,他に,「MOHNO」及び「モーノ」の文字が,申立人の使用商品を表示する商標として使用されている事実は見いだすことができない。
そうとすれば,「MOHNO PUMP」及び「モーノポンプ」に含まれて使用されている「MOHNO」及び「モーノ」の文字は,申立人の使用商品を表示する商標というよりは,「ポンプ(Pump)」の名称を表すものとして使用されているものというのが相当であって,また,申立人提出に係る証拠を勘案しても,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,引用標章が,申立人の業務に係る使用商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く知られているものと認めることができない。
イ 商標法第4条第1項第10号及び同第15号該当性について
上記アのとおり,「MOHNO」の欧文字は,申立人の業務に係る使用商品を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。
また,「MOHNO」の文字は,「ポンプ(Pump)」の名称を表すものであるから,出所識別標識としての機能を果たし得ないものである。
そうとすれば,商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者に申立人の使用商品を連想又は想起させるとはいえないものであって,その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
「MOHNO」の欧文字は,申立人の業務に係る使用商品を表示するものとして,取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることができず,また,申立人の提出に係る証拠を勘案しても,例えば,本件商標権者が申立人の業務との関係において,出所の混同を生じさせる目的をもって本件商標を不正に使用し,申立人に損害を与えたというような具体的事実を見いだすこともできない。
そうとすれば,本件商標は,申立人の名声等を毀損させる目的をもって登録出願し,その他の不正の目的をもって使用するものいうことができない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項10号,同第11号,同第15号及び同第19号に違反して登録されたものでないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。
異議決定日 2014-05-30 
出願番号 商願2013-39244(T2013-39244) 
審決分類 T 1 651・ 25- Y (W0709)
T 1 651・ 261- Y (W0709)
T 1 651・ 263- Y (W0709)
T 1 651・ 222- Y (W0709)
T 1 651・ 262- Y (W0709)
T 1 651・ 271- Y (W0709)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岩本 和雄 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 田中 亨子
井出 英一郎
登録日 2013-09-13 
登録番号 商標登録第5615224号(T5615224) 
権利者 武蔵エンジニアリング株式会社
商標の称呼 モーノマスター、モーノ、マスター 
代理人 佐々木 美紀 
代理人 田中 光雄 
代理人 寺田 花子 
代理人 勝見 元博 
代理人 鮫島 睦 
代理人 特許業務法人銀座マロニエ特許事務所 

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