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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2013890064 審決 商標
無効2013890061 審決 商標
無効2013890002 審決 商標
異議2013900197 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X09
管理番号 1288689 
審判番号 無効2013-890033 
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-04-24 
確定日 2014-05-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第5454977号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5454977号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5454977号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「CAXIOD ○西奥“徳”」(「○」は、冠を「上」とし、脚を「ト」とする文字。「“徳”」は「徳」の異字体。以下同じ。)の構成からなり、平成23年6月7日に登録出願、第9類「ビデオカメラ,カメラ(写真用のもの),ノートブック型コンピュータ,携帯電話機,コンピュータ周辺機器,音声・映像受信機,ICカード(スマートカード),データ処理装置,ガルヴァーニ電池,電話用器具」を指定商品として、同年11月9日に登録査定、同年12月2日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録を無効にすべきものとして引用する登録商標は、以下の1ないし5のとおりであり、いずれも現在、有効に存続しているものである。
1 商標登録第2062072号(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおり、「CASIO」の欧文字を横書きしてなり、昭和60年9月9日に登録出願、第11類「電子計算機、その他本類に属する商品」を指定商品として昭和63年7月22日に設定登録、その後、指定商品については、平成20年3月26日に、第7類、第8類ないし第12類、第17類及び第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
なお、当該登録は、平成25年4月25日に申請による商標登録の分割がされ、商標登録2062072号の1については、第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品に、商標登録2062072号の2については、第7類、第8類、第10類、第11類、第12類、第17類及び第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品になった。そして、引用商標1に登録されていた防護標章登録58件は、当該商標権の分割に伴い消滅し、同年7月24日に抹消登録された。
2 商標登録第2336473号は、「カシオ」の片仮名と「CASIO」の欧文字を2段に横書きしてなり、昭和63年8月18日に登録出願、第11類「電子応用機械器具、その他本類に属する商品」を指定商品として平成3年9月30日に設定登録、その後、指定商品については、平成13年12月19日に、第7類、第8類ないし第12類、第17類及び第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
3 商標登録第2047117号(以下「引用商標3」という。)は、別掲2のとおり、「CASIO」の欧文字を横書きしてなり、昭和60年9月9日に登録出願、第10類「写真機械器具、その他本類に属する商品」を指定商品として昭和63年5月26日に設定登録、その後、指定商品については、平成20年5月28日に、第1類、第5類、第9類、第10類及び第12類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
4 商標登録第2062072号防護標章登録第41号は、引用商標1の商標権に係る防護標章であって、第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成9年3月18日に登録出願、同10年5月15日に設定登録されたものである。その後、引用商標1の商標権が分割されたことにより、上記防護標章は消滅し、平成25年7月24日に抹消登録されている。
5 防護標章登録出願2012-70457号は、上記1の分割後の商標登録第2062072号の1に係る防護標章であって、平成24年8月31日に登録出願、防護標章登録第75号として、第1類ないし第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同25年10月11日に設定登録されたものである。
以下、これらを合わせて「引用商標」という。

第3 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第23号証(枝番号を含む。)を提出している。
(1)請求の理由の要旨
ア 本件商標「CAXIOD ○西奥“徳”」は、商標権者が日本に不正の目的をもって商標登録出願をして、その登録がなされた商標であって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に違反してその登録がなされたものである。
イ 請求人は、その略称である「CASIO」の語を採択し、当該商標は、日本のみならず世界各国において周知・著名な商標となっており、本件商標の登録出願以前から、商標「CASIO」のみならずその中国語表記の商標「○西欧」(「○」は、冠を「上」とし、脚を「ト」とする文字。以下同じ。別掲3参照)の語が著名商標として認定されている。
ウ 本件商標は、引用商標と類似する商標であり、しかも出所の混同を生ずるおそれのある商標であるから、商標法第4条第1項第11号、同第15号に違反するものである。
また、本件商標構成中の欧文字部分「CAXIOD」は、著名商標「CASIO」の称呼である「カシオ」が抽出されるように意図的に模倣して構成されたものであって、「CASIO」及び「○西欧」の著名性に便乗して不正の利益を得る目的、請求人が長年にわたって築き上げた名声を毀損させる目的又はその出所表示機能を希釈化させる目的をもって出願し登録されたものであるから、商標法第4条第1項第19号に違反するものである。
(2)商標法第4条第1項第11号の該当性について
ア 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは相抵触するものである。
イ 本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、欧文字部分「CAXIOD」と中国語の漢字部分「○西奥“徳”」をやや間隔を空けて横一連に併記した構成からなるところ、後半の漢字部分の第1字「○」については三省堂発行の「デイリーコンサイス中日・日中辞典」(以下「コンサイス中日辞典」」という。)に掲載されており(甲8)、また同第4字「“徳”」も同辞典に掲載されており(甲9)、これらが中国語であることは明らかであって、次のとおり、本件商標からは「カシオド」の称呼を生じる。
本件商標は、欧文字と漢字が横一連に併記された構成からなり、本件商標の称呼を特定し得る要素として、漢字部分「○西奥“徳”」が存在する以上、当該漢字部分を全く省略した称呼の認定がされるものではなく、「CA」は「○」、「XI」は「西」、「O」は「奥」「D」は「“徳”」に対応し、「CA(○)」から「カ」、「XI(西)」から「シ」、「O(奥)」から「オ」、「D(“徳”)」から「ド」の音がそれぞれ派生する。
「XI」から「西」に対応した音「シ(ー)」が派生することは、コンサイス中日辞典に、「西」のピンインが「xi」と記載されており(甲10)、また、成美堂出版発行の「基本がわかるはじめての中国語会話」に、「xi」の発音が「シ」と記載されていることからも明らかである(甲11)。また、「西」から「シ(ー)」の音が生じることは、中国の有名な都市「西安」の中国語読みが「シーアン」であり、日本においては、日本経済新聞の電子版に掲載された記事において、「Xi Jinping」の読みが「シー・ジンピン」と記載されている事実(甲14)、読売新聞において、中国の国家主席である「習近平」(Xi Jinping)の中国語読みが「シー・ジンピン」として記載されている事実が存在する。このことから、中国語が併記された本件商標の構成からすると、「XI」からは「シ(ー)」と発音されるものと解される。
上記のとおり、本件商標「CAXIOD ○西奥“徳”」は、欧文字「CAXIOD」に対応して中国語「○西奥“徳”」が併記されて一体的に構成されてなるものであるから、欧文字部分と中国語の漢字部分は互いに補完し合うように一体的に判断して称呼が特定されるものである。そして、中国語の漢字部分「○西奥“徳”」のピンインは、「kaxiaode」であるから、本件商標は、欧文字「CAXIOD」と相俟って「カシオド」の称呼が生ずることは容易に理解し得るものである。
ウ 引用商標について
引用商標は、その構成から「カシオ」の称呼が生ずるものである。
エ 本件商標と引用商標の類否について
(ア)称呼の類否
本件商標の称呼「カシオド」と引用商標の称呼「カシオ」とは、「ド」の差異音を有するが、本件商標の4音中の前3音の「カシオ」の部分が明瞭に発せられ、語尾音「ド」の音は弱音で発せられるため、引用商標の構成から生ずる「カシオ」とは、本件商標の4音中3音、すなわち75%以上を共通にし、しかも本件商標と引用商標の構成音数は4音と3音という短い構成音数からなり、商標の称呼類否において最も重要な要素となる語頭音のみならず、それに連綴される第2音、第3音も共通にするから、称呼において彼此誤認混同を生ずるおそれのある類似する商標である。
(イ)観念の類否
本件商標から生ずる称呼「カシオド」の中には、周知・著名である引用商標の称呼「カシオ」を含むものであり、需要者は「カシオ」を想起する商標であると直ちに看取しうるものであるから、本件商標と引用商標とは、観念においても彼此誤認混同を生ずるおそれのある類似する商標である。
(ウ)小活
したがって、本件商標と引用商標とは、類似する商標であり、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号の該当性について
ア 請求人の中国における活動について
(ア)請求人である「カシオ計算機株式会社」は、中国語表記が「○西欧計算机株式会社」(“計”は中国語表記。)で表され、その略称「○西欧」のピンイン表記は「kaxiou」であり、引用商標「CASIO」、「カシオ」の発音を中国語の漢字で表したものである。
(イ)請求人は、その略称である「カシオ」の発音が生ずる「○西欧」やローマ文字の「CASIO」などの多数の登録商標を中国において保有しているところ、上海の裁判において、商標「CASIO」、「○西欧」の知名度の高さが認められ、上海の企業による「○西欧」やそのピンイン表記である「KAXIOU」の使用について、「CASIO」と「○西欧」の類似性が認められ、商標権侵害の成立が認められた。
(ウ)中国商標法第13条の馳名商標(著名商標)の登録について
請求人は、中国における登録商標「CASIO」及び「○西欧」について「馳名商標」の申請を行い、これらは、2009年4月に、「馳名商標」として登録された(甲17)。
(エ)中国において「CASIO」及び「○西欧」の商標を使用している(甲18)。
(オ)請求人の中国における第三者への異議申立活動について
請求人は、中国において多数の異議申立並びに無効審判、裁判所における訴訟活動を行っている中で、「第三者の『○西奥 KAXIAO』商標、『○西奥 KAXIAO及び図』商標及び『○西奥 CARCEIO』商標の各商標と請求人に係る『CASIO』、『○西欧』商標とは、文字の構成や発音等の面から見て近似する。」などを内容とする裁定が、中国の国家工商行政管理総局商標評審委員会(以下「中国評審委員会」という。)によりなされている(甲19ないし甲21)。
イ 請求人の日本における活動について
請求人は、1957年の設立以来、計算機のトップメーカーとして新製品を続々と開発し、1972年、手のひらサイズの個人向け電卓「カシオミニ」を爆発的にヒットさせて電卓の大衆化の道を切り拓いた。1974年、オートカレンダーを搭載したデジタル式の腕時計「カシオトロン」を発売、1983年、電子楽器「カシオトーン」及び今日まで絶大な人気を博している耐衝撃腕時計「G-SHOCK」の発売を開始した。1995年、消費者向け初のデジタルカメラを発売、さらに、モバイルPCをはじめ、市場を先取りする製品の数々を生み出している。
現在においては、「カシオ」が称呼され、「カシオ」、「CASIO」の語が看取された場合に、需要者は、「G-SHOCK」を始めとする腕時計や、卓上計算機、デジタルカメラ等を製造、販売する「カシオ計算機株式会社」を想起するものであって、「カシオ」、「CASIO」の語からなる商標は日本のみならず、世界各国において周知・著名な商標となっている(甲22)。
日本における著名商標であるその証左として、請求人は、引用商標1を原登録商標とする登録防護標章を「写真機械器具、映画機械器具、光学機械器具」等について有している(甲5、商標登録2062072の防護41)。
ウ 本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することについて
(ア)中国評審委員会の「○西奥 KAXIAO」商標に関する異議覆審裁定において、「(i)申請人(審決注:請求人 以下同じ。)の「○西欧」、「CASIO」及び「○西欧 CASIO」商標は、中国で高い知名度を有しており、被申請人は、これら商標を知っているはずであり、申請人の上記商標を模倣し複製したものであって、明らかに悪意を有するものである。(ii)申請人の「○西欧」、「CASIO」及び「○西欧 CASIO」商標は電子計算機等の商品についての知名度を有し、消費者が被異議商標に接する場合には、申請人若しくは申請人と何らかの関係があるものと容易に認識させ、引いては消費者を誤認混同させるものであって、被異議商標と引用商標は類似商品についての近似商標であるといえる。(iii)申請人所定の異議覆審理由は成立する。」旨の裁定がなされた(甲19)。
(イ)本件商標構成中の「○西奥」については、中国において既に請求人の著名商標である「○西欧」、「CASIO」及び「○西欧 CASIO」を模倣し複製したものであって、明らかに悪意を有するものである、との認定がなされており、その構成中の漢字部分「○西奥」が請求人の著名商標「○西欧」と類似する関係にあることは議論の余地がない。
そして、本件商標の欧文字部分及び漢字部分のそれぞれから第一義的に「カシオ」の称呼が生じ、それらの後に一息次いで「ド」の音が弱く発音され、著名商標である引用商標の称呼「カシオ」とは、前3音である「カシオ」の称呼を中心とする商標であるから、それらは取引者・需要者をして、その他人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号の該当性について
ア 引用商標の周知性及び引用商標と本件商標の類似性
上記(2)及び(3)で述べたように、本件商標は、日本国内のみならず外国においても周知・著名である引用商標と類似する商標である。
不正の目的
本件商標の構成中の漢字部分「○西奥“徳”」は、中国において著名な「○西欧」と類似する「○西奥」を含み、当該商標「○西奥」は、「『○西欧』、『CASIO』及び『○西欧 CASIO』商標を模倣し複製したものであって、明らかに悪意を有するものである」とされており、これに特定の意味を有さない中国語「“徳”」を付加したに過ぎないものであるから、「不正な目的」で採択されたものといえる。更に、本件商標は、欧文字「CAXIOD」と漢字「○西奥“徳”」とからなり、欧文字若しくは漢字の構成の何れからも「カシオ」の3音の称呼が生ずるように構成されたものである。したがって、本件商標は、いわゆる著名商標である引用商標と同一又は類似の商標について、出所表示機能を希釈化させ、その名声を毀損させる目的をもって出願されたものである。
また、本件商標は、甲第23号証に示す使用態様によって使用されているが、いずれの態様からも「カシオ」の3音の称呼が派生するように採択された商標であって、請求人の著名商標である「CASIO」から生ずる「カシオ」の称呼と同一の称呼が生ずるように「不正な目的」で採択された模倣商標である。特に、欧文字「CAXIOD」の下部には「日本品牌」の文字が配され、日本の品質を備えたブランドのような意味で用いられている。
したがって、本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。)をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(5)本件商標の出願時における引用商標の著名性について
引用商標4の防護標章が、平成10年5月15日に設定登録を受けていることにかんがみると(甲5)、本件商標の出願時である平成23年6月7日においても著名商標に該当するものであったことは明白である。
(6)結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであるから、請求の趣旨のとおりの審決を求める。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁していない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)「混同を生ずるおそれ」の有無の判断について
商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品又は指定役務(以下「指定商品等」という。)に使用したときに、当該商品等が他人の商品又は役務(以下「商品等」という。)に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品等が右他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ(以下「広義の混同を生ずるおそれ」という。)がある商標を含むものと解するのが相当である。けだし、同号の規定は、周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものであるところ、その趣旨からすれば、企業経営の多角化、同一の表示による商品化事業を通して結束する企業グループの形成、有名ブランドの成立等、企業や市場の変化に応じて、周知又は著名な商品等の表示を使用する者の正当な利益を保護するためには、広義の混同を生ずるおそれがある商標をも商標登録を受けることができないものとすべきであるからである。
そして、「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである(以上、最高裁(三小)平成12年7月11日判決 平成10年(行ヒ)85号審決取消請求事件より抜粋,民集54巻6号1848頁)。
以上の観点から、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについて、以下検討する。
(2)引用商標及び「○西欧」商標の著名性について
請求人の提出する証拠及び請求の理由から、次の事実が認められる。
ア 請求人であるカシオ計算機株式会社(英語名:Casio Computer Co. Ltd.)は、1957年の設立以来、計算機のメーカーとして新製品を開発し、1972年、手のひらサイズの個人向け電卓「カシオミニ」をヒットさせ、1974年、オートカレンダーを搭載したデジタル式の腕時計「カシオトロン」を発売、1983年、電子楽器「カシオトーン」及び今日まで人気を博している耐衝撃腕時計「G-SHOCK」を発売、1995年、消費者向け初のデジタルカメラを発売、さらに、モバイルPCをはじめとする新製品の数々を生み出してきていることなどから、日本有数の企業の一つといい得るものである。
そして、「カシオ」及び「CASIO」の文字からなる引用商標は、請求人の設立時から長年、請求人の略称及び請求人の業務に係る商品を表示する商標として、請求人の業務に係るデジタルカメラ、腕時計、電子辞書、電子楽器、電卓などの商品に使用され、本件商標の登録出願時はもとより、登録査定時及びその後においても、「カシオ」の称呼とともに、需要者、取引者の間に広く知られているものと認められる。
イ 請求人は、中国においては、「CASIO」のほか、該商標の発音の中国語(ピンイン)表記である「○西欧」及び「○西欧 CASIO」などの標章を使用し(甲18)、これら商標については、2009年4月25日付けで中国の国家工商行政管理総局商標局より、「計算器、腕時計、電子楽器等」に使用する「馳名商標」として登録され、公表されている(甲17)。また、中国評審委員会による「○西奥 KAXIAO」商標に関する異議覆審裁定書において、「被異議商標中の『○西奥』と引用商標『○西欧』及び『CASIO』とを比較すると、両商標は文字の組成や称呼が近似する。…申請人の『○西欧』、『CASIO』及び『○西欧 CASIO』商標は、電子計算機等の商品についての知名度を有し、消費者が被異議商標に接する場合には、申請人若しくは申請人と何らかの関係があるものと容易に認識させ、…被異議商標と引用商標は類似商品について近似商標であるといえる。」などと裁定されている(甲19)。
ウ 以上のことからすれば、引用商標は、本件商標の登録出願時はもとより現在に至るまで、我が国において、広く知られた商標と認められるものであり、また、「CASIO」商標及びこれの中国語表記として請求人の名称及び商品に使用されている『○西欧』商標(以下「中国引用商標」という。)は、中国において、電子計算機等において広く知られた商標と認められる。
また、近時においては、電気製品や電子製品を扱う業界の少なくない日本の企業が、生産拠点や製品の販売などで中国に進出している実情があり、「Haier」(http://www.haier.com/jp/)や「lenovo」(http://www.lenovo.com/lenovo/jp/ja/gaiyo.html)のように、中国の企業が日本の市場に進出している実情も窺えることからすると、我が国における本件商標の指定商品の分野の少なくない取引者・需要者には、請求人が中国において使用する中国引用商標についても、本件商標の登録出願時及び登録査定時においてある程度知られていたと推認できる。
(3)本件商標と引用商標及び中国引用商標との類似性について
ア 本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、「CAXIOD」の欧文字部分(以下「本件欧文字」という。)と「○西奥“徳”」の漢字部分(以下「本件漢字」という。)からなるところ、いずれの文字部分も我が国においては特定の意味合いを有する語として知られていないものであり、特に後半の本件漢字の第1字と第4字は、日本において通常用いられる漢字とはいい難いものである。
ところで、中国との経済交流が盛んになり、本件指定商品の分野でも中国に進出する企業が少なくない中、中国に進出する日本の企業において、「CASIO」を「○西欧」(ピンイン:kaxiou)(超級クラウン中日辞典 株式会社三省堂 以下「クラウン中日辞典」という。)と表示する(甲18)ほか、「SONY」を「索尼」(ピンイン:suoni)(http://www.sony.com.cn/)、「SHARP」を「夏普」(ピンイン:xiapu)(http://www.sharp.cn/)及び「NIKON」を「尼康」(ピンイン:nikang)(http://www.nikon.com.cn/sc_CN/)(ピンインはいずれも「クラウン中日辞典」)と表示するように、その会社表示や使用する標章を、それらの読みに近い発音(ピンイン)を有する中国語の漢字に変更して使用することが一般に行われ、また、中国語の漢字(いわゆる簡体字)についてもある程度知られるようになっているといい得るものである。
そこで、本件商標についてみると、本件漢字は、上述のとおり、我が国において通常用いられる漢字とはいえず、本件漢字の第1字「○」が、中国語においては、「ka」の読みで「磁気カード」を意味する文字であり(甲8)、同じく第4字「“徳”」が、中国語においては、「de」の読みで「徳、道徳」などを意味する文字である(甲9)ことからすると、本件漢字は全体として中国語を表示したものと理解され、第1字「○」は「ka」(甲8)、第2字「西」は「xi」(甲10、12)、第3字「奥」は「ao」(クラウン中日辞典)、第4字「“徳”」は「de」(甲9)とそれぞれ発音(ピンイン)されるものである。
また、一般の辞書、インターネット、新聞等において、「せいあん【西安】(Xian)」、「習近平・総書記 Xi Jinping(シー・ジンピン)」のように、中国の地名や人名などについて中国語の発音(ピンイン)や読みが併記されるようになり(甲12、14、15)、本件欧文字中の「xi」を「シ」と読むことも知られるようになってきている。
上記実情よりすれば、本件欧文字と本件漢字が横一連に併記された本件商標において、本件欧文字各文字(発音)と本件漢字各文字の中国語の発音(ピンイン)である「ka」「xi」「ao」「de」とは、「CA(カ)」と「ka」、「XI(シ)」と「xi」、「O(オ)」と「ao」及び「D(ド)」と「de」のようにそれぞれ対応していることから、本件商標は、本件欧文字と該文字を本件漢字により中国語風に表示したものと看取されるものというのが相当である。
上記事情を総合すると、本件商標は、構成全体から「カシオド」の称呼を生ずるというのが相当であり、特定の観念を生ずるものではない。
イ 引用商標について
引用商標は、「カシオ」又は「CASIO」の文字から構成され、特定の観念を生じない造語といえるものであるところ、構成文字に相応していずれも「カシオ」の称呼を生ずる。また、引用商標は、上記(2)のとおり、請求人の略称及び請求人の業務に係る商品を表示するものとして広く知られているものであるから、「カシオブランド」の観念を生ずるものである。
ウ 中国引用商標について
上記(2)イで述べたとおり、中国において請求人は、「CASIO」商標のほか、該商標の発音の中国語(ピンイン)表記である中国引用商標「○西欧」を商標として使用しているところ、これは「計算器、腕時計、電子楽器」等の商品に使用するものとして「馳名商標」の認定を受けていることが認められる(甲17)ものであり、中国引用商標は、「カシオ」の称呼及び「カシオブランド」の観念を生ずるものである。
エ 本件商標と引用商標及び中国引用商標との対比
本件商標は、上記アで述べたとおり、本件欧文字とそれを中国語風に表示した本件漢字からなると看取されるものであり、「カシオド」の称呼を生ずるものである。
そして、本件商標と引用商標「CASIO」とを比較すると、両商標は、本件商標中の本件欧文字「CAXIOD」と「CASIO」の文字において、「C」「A」「I」「O」を共通にし、第3字の「X」と「S」及び語尾の「D」の有無において相違するものであり、また、本件商標から生ずる「カシオド」と引用商標から生ずる「カシオ」の称呼は、語頭を含む3音を共通にし、末音の「ド」の有無に差異を有するものである。
そうすると、本件商標と引用商標は、本件欧文字と引用商標との外観において、看者の記憶に留まりやすい語頭の文字を含む少なくない文字を共通にするものであり、称呼においては、聴く者の記憶に留まりやすい語頭を含む3音「カシオ」を共通にし、末尾音における「ド」の音の有無に差異を有するのみであるから、相紛らわしいといえるものである。
次に、本件商標と中国引用商標「○西欧」とを比較すると、両商標は、本件商標中の本件漢字「○西奥”徳”」と「○西欧」の文字において、語頭を含む「○西」の文字を共通にするものであり、本件商標から生ずる「カシオド」と中国引用商標から生ずる「カシオ」の称呼は、語頭を含む3音を共通にし、末音の「ド」の有無に差異を有するのみである。
そうすると、本件商標と中国引用商標は、本件漢字と中国引用商標との外観において、看者の記憶に留まりやすい語頭を含む「○西」の文字を共通にするものであり、称呼においても、聴く者の記憶に留まりやすい語頭を含む3音「カシオ」を共通にし、末尾音における「ド」の音の有無に差異を有するのみであるから、相紛らわしいといえるものである。
また、本件商標は、観念を生じないから、引用商標及び中国引用商標とは、観念において比較することができない。
以上のとおり、本件商標と引用商標及び中国引用商標とは、外観において共通する部分があり、称呼において相紛らわしいものといえるものであるところ、引用商標が我が国において広く知られた商標であり、中国引用商標も中国において広く知られた商標であること及び引用商標を中国語風に表示したものが中国引用商標であることを総合的に考察すると、本件商標と引用商標及び中国引用商標とは、外観及び称呼において類似性を有する商標というのが相当である。
(4)本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品等との関連性
本件商標の指定商品は、前記第1のとおり、第9類「ビデオカメラ,カメラ(写真用のもの),ノートブック型コンピュータ,携帯電話機,コンピュータ周辺機器,音声・映像受信機,ICカード(スマートカード),データ処理装置,ガルヴァーニ電池,電話用器具」であり、請求人が取り扱う主な商品「デジタルカメラ、腕時計、電子辞書、電子楽器、電卓」などとは、「デジタルカメラ」を同じくし、その他の商品についても電気通信機器や電子応用機器に属する商品として関連性は高いものであることから、その取引者、需要者層は、共通しているといえるものである。
(5)小括
上記(2)及び(3)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、引用商標は、請求人の略称及び請求人の業務に係る商品を表示するものとして我が国において広く知られていたものであり、中国引用商標も我が国においてある程度知られていたと推認できる。
そして、本件商標と引用商標及び中国引用商標とは類似性を有するものであり、上記(4)のとおり、本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品とは商品の性質、用途又は目的において同一又は関連性が極めて高い商品であって、商品の取引者及び需要者が共通していることをあわせ考慮すれば、商標権者が本件商標をその指定商品について使用する場合、取引者・需要者は、請求人及び請求人の引用商標及び中国引用商標を連想、想起し、その商品が請求人又は請求人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものである。
2 結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたと認められるから、その余の請求人の主張について判断するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)



別掲2(引用商標1及び引用商標3)



別掲3(中国引用商標)




審理終結日 2013-12-16 
結審通知日 2013-12-18 
審決日 2014-01-15 
出願番号 商願2011-39279(T2011-39279) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (X09)
最終処分 成立 
前審関与審査官 小松 孝 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 大森 健司
村上 照美
登録日 2011-12-02 
登録番号 商標登録第5454977号(T5454977) 
商標の称呼 カクシオドソウサイオクトク、カキシオドソウサイオクトク、カクシオドソウセーオクトク、カキシオドソウセーオクトク、カクシオドソーサイオクトク、カキシオドソーサイオクトク、カクシオドソーセーオクトク、カキシオドソーセーオクトク、カクシオド、カキシオド、キャクシオド、キャキシオド、ソーサイオクトク、ソーセーオクトク 
代理人 羽切 正治 
代理人 仲村 圭代 
代理人 小野 博喜 
代理人 笹川 拓 
代理人 小野 友彰 
代理人 庄司 隆 
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