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審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2013900091 審決 商標
異議2013900094 審決 商標
異議2013900172 審決 商標

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審決分類 審判 一部申立て  登録を取消(申立全部取消) W42
管理番号 1287672 
異議申立番号 異議2013-900095 
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2014-06-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2013-04-05 
確定日 2014-04-16 
異議申立件数
事件の表示 登録第5550683号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5550683号商標の指定役務中,第42類「建築物の設計,測量,デザインの考案,建築又は都市計画に関する研究」についての登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第5550683号商標(以下「本件商標」という。)は,「1.5世帯」の文字を標準文字で現してなり,平成24年8月1日に登録出願,同年12月19日に登録査定,第42類「建築物の設計,測量,地質の調査,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,デザインの考案,電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究」を指定役務として,同25年1月18日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標は,その指定役務中,「建築物の設計,測量,デザインの考案,建築又は都市計画に関する研究」(以下「申立てに係る指定役務」という。)に関し,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,取り消されるべきものである旨申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第39号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標について
ア 本件商標の構成態様及び観念に関して
本件商標「1.5世帯」は,「1.5」の数字と「世帯」という既成語が結合された標準文字の商標である。
「世帯」の語は,一戸を構えて独立の生計を営むこと,住居および生計を共にする者の集団,という意味を有する既成語であり,「住居および生計を共にする者の集団」としての世帯を数えるときは,一世帯,二世帯,三世帯等と数える。二世帯及び三世帯の語は,従来から「住宅」の語と結びつけられ,「二世帯住宅」及び「三世帯住宅」という語が広く一般に使用されてきた。なお,「二世帯住宅」は,普通名詞として辞書にも意味が掲載されている(甲2及び甲3)。
甲第4号証には,「2010年の国勢調査によると,60代が世帯主の家族では,これまで最多だった夫婦だけの世帯より単身の成人の子と一緒に暮らす1.5世帯が増え,約300万軒にも上った。この傾向は都市部に多い現象で,東京都だけを見ると,『親と単身の子』の1.5世帯が常に『夫婦のみ』を上回っている。」との記載がある。ここで用いられている「1.5世帯」という語は,同居する「成人の子」や「祖父又は祖母」を「0.5世帯」と捉え,それを「夫婦のみ」又は「夫婦とその未成年の子」からなる「一世帯(単世帯)」に付加した語であり,「一世帯」と「二世帯」の中間の構成人員からなる世帯を端的に表現した語である。端的さゆえに使い勝手がよく,近年増加しつつあるこのような世帯を「1.5世帯」と呼ぶようになっている状況がある。
このような状況の下,住宅業界において,「二世帯」及び「三世帯」と共に「1.5世帯」の語が,それぞれの同居人構成に応じた住宅の建設・リフォームの広告に使用されている(甲19-1及び甲20)。当該証拠において,「1.5世帯」の語は,両親とその成人の単身の子が同居する世帯又は子夫婦とその単身の親が同居する世帯を示す語として使用されており,「二世帯」向けの住宅の事例の前に,「1.5世帯」向けの住宅の事例が置かれ,各世帯の構成に適した広さ及び間取りを有した住宅が紹介されている。
イ 本件商標の独占不適応性について
本件商標は,その文字構成から「一世帯」及び「二世帯」の間の構成人員からなる世帯を示していることは自明であり,この語を住宅関連の役務に使用する際,住宅の需要者・取引者は,「一世帯向き住宅と二世帯向き住宅の間のスペースを有する住宅(即ち1.5世帯向きの住宅)に関する役務」であると直接的かつ具体的に認識するといえる。
したがって,本件商標は,住宅の需要者・取引者の何人も取引に際し必要適切な表示としてその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占的使用を認めるのを公益上適当としないものであり,東京高裁平成13年(行ケ)第207号判決の趣旨からすれば,本件商標が自他役務識別力を欠くと判断するにあたり,本件商標の登録査定時に指定役務の質を表すものとして現実に使用されていることは,必ずしも必要でない。
また,特許庁の審査において,「1.5世帯」という商標が,本件異議申立ての理由と同趣旨の理由で拒絶査定となっている。
(2)「1.5世帯」の語の住宅業界における使用例
「1.5世帯」の語が,申立てに係る指定役務との関係において自他役務の識別力を欠くことを補足的に裏付ける実情として,住宅業界における当該語の使用例の新聞記事,インターネット情報,パンフレット等を示す(甲10ないし甲32)。
上記使用例によると,「1.5世帯」の語は,平成11年ごろから住宅業界で「両親とその成人の子が同居する世帯」,あるいは「子夫婦とその親一人が同居する世帯」を表す言葉として使用され始め,そのような世帯にマッチしたスペースを有する住宅を指して,「1.5世帯住宅」と呼び始めたことが確認できる。その後,社会状況の変化により「1.5世帯住宅」のニーズが高まるに伴って,日本国内の住宅建設・販売会社及び建築士等の役務提供層及び個人の役務需要者層に広く浸透していったことが見受けられる(甲33ないし甲39)。
本件商標は,「一世帯に成人の単身家族を加えた世帯」を指すことが自明であり,上記使用例の蓄積からも,登録査定時には,本件商標が住宅に関する役務に使用されたときは,その役務の提供者・需要者に,「一世帯向き住宅と二世帯向き住宅の間のスペースを有する住宅(即ち1.5世帯向き住宅)に関する役務」であることを直接的かつ具体的に認識させるに至っていたことが明らかである。
(3)総括
したがって,本件商標は,これを申立てに係る指定役務中「一世帯向き住宅と二世帯向き住宅の間のスペースを有する住宅に関する役務」に使用するときは,単に役務の質を表すにすぎず,自他役務識別標識としての機能を果たし得ない。
さらに,本件商標を前記以外の申立てに係る指定役務に使用するときは,役務の質の誤認を生じさせるおそれがある。

3 当審における取消理由
当審において,登録異議申立に基づき,商標権者に対して平成25年9月19日付けで通知した取消理由の内容は,要旨以下のとおりである。
(1)「世帯」の語について
「住居および生計を共にする者の集団。」との記載(甲2(広辞苑))及び「住居・生計を同じくしている者の集団。親族以外の者が含まれている場合や,一人の場合もある。」との記載がある(甲3)。
(2)「1.5世帯」及び「1.5世帯住宅」の語について
ア 社団法人日本住宅協会発行の「住宅」(VOL.56,2007,平成19年1月20日発行)によれば,「◆新しい家族の模索」の表題の下,「形式的には,夫婦と子供という核家族でありながら,実態的には『1世帯』と呼ぶには少し戸惑いがあり,かといって『2世帯』ではないこの家族形態を仮に中間的な『1.5世帯』と名付け,その家族が幸せを育む住宅を『1.5世帯住宅』としてその住まい方,暮らし方を模索するに至った。1.5世帯住宅におけるライフスタイルとは,シングル女性(男性)が実家の土地に家を建てて両親と暮らすという住まいを核とした新しい家族のあり方,生き方の器である。」の記載がある(甲11-1)。
イ 2012年(平成24年)11月28日付けの「北國新聞」によれば,「住宅販売反転の兆し」の見出しの下,「リフォーム『1.5世帯』人気/団塊世代改修で需要」,「成人の子供やひとり親と暮らす『1.5世帯住宅』も人気を集めている。」との記事が掲載されている(甲12)。
ウ 喜多ハウジング株式会社のウェブサイトには,「1.5世帯」の表題の下,「子世帯,親お一人のご家庭」との記載とともにデザインされた間取図及び「1.5世帯 施工事例」が掲載されている(甲19-1)。
エ 「@Press」のウェブサイトには,2013年1月10日の喜多ハウジング株式会社のプレスリリースとして,「喜多ハウジング 同居型リフォームの完成見学会を開催/多様化する世帯構成に対応した住まいの事例を紹介」との表題の下,「また団塊の世代の親が一人になり,高齢になってから同居する1.5世帯も増加しています。」との記載があり,同様の内容の記事が,「SankeiBiz」のウェブサイト,「朝日新聞/DIGITAL」のウェブサイト及び「suumo ジャーナル」のウェブサイトにも掲載されている(甲19-3ないし6)。
オ 「有限会社栃木建築社」のウェブサイトには,「二世帯・三世帯デザイン注文住宅」の表題の下,「お客様のライフスタイルに合わせて,子夫婦とお父様やお母様,両親と社会人のお子様などで住まわれる1世帯プラス0.5世帯の1.5世帯住宅プラン。」との記載及び「1.5世帯住宅」として,「シングルファミリーと父・母,親夫婦と社会人のお子様など,単世帯の住まいにプラス0.5世帯の同居スタイルが増えています。」の記載とともに,注文住宅の建築工事の提案がされている(甲20)。
カ 「株式会社カキザワ工務店」のウェブサイトには,「ソーラーサーキットの家」として,「結びの家」の紹介に「ご夫婦+お父様+一匹のお住まいです,・・・今回ご提案させていただいたのは『1.5世帯住宅』というコンセプト」の記載がある(甲22)。
キ 「関西住宅販売株式会社阪神支店」の折り込みチラシには,「1.5世帯住宅というライフスタイル。それは,家族の絆を育む,将来を見据えた住まい。」との記載の下,「1.5世帯って?例えば結婚生活後,田舎にひとり住まいしている親を呼んで,一緒に暮らしたい・・・。・・・そんな将来の時も安心して家族が一緒に暮らせる住まい。それが『1.5世帯』という新提案です。」の記載とその間取りが掲載されており,また,モデルハウスの外観写真が掲載されている(甲23)。
ク 「マイベストプロ」のウェブサイトには,「素材を生かした自然派住宅のプロ 浅井知彦 レヴァントリ株式会社一級建築士事務所」のコラムが掲載されており,2012年3月4日付けで,「子育てを応援する家【1.5世帯住宅】」に,「2世帯住宅まではいきませんが,何かのときに祖父母が滞在できる住宅・・・名付けるなら【1.5世帯住宅】でしょうか。」等と記載されている(甲24)。
ケ 「株式会社ユース建築設計事務所」のウェブサイトには,「これからのリフォームのご提案」として,「個々のライフスタイルを大切にしたいあなたに 1.5世帯リフォーム ・・・子供が独立して家を出ていった後,一人住まいの老親を呼んで一緒に住む...」と記載されている(甲26)。
(3)商標法第3条第1項第3号該当性について
本件商標は,前記1のとおり,「1.5世帯」の文字を標準文字により現してなるものである。
しかして,「世帯」の語は,前記(1)のとおりの意味合いの語として,一般に理解されおり,前記(2)のとおり,近時の家族構成の多様化に対応して,「独身女性(男性)が,その両親と暮らす」,あるいは,「夫婦が,ひとりになった親と暮らす」等のような構成の家族向けの住宅が「1.5世帯住宅」と称され,あるいは説明され,そのような家族向けの住宅が設計され,又は,住宅のリフォームが提案されている事実がある。
そうとすれば,本件商標をその指定役務中,申立てに係る指定役務に使用した場合,それが,一つの住宅内において,世帯に成人の単身を加えた家族向けの役務であることを表すにすぎず,役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められる。
したがって,本件商標は,申立てに係る指定役務について,商標法第3条第1項第3号に該当する。

4 商標権者の意見
前記3の取消理由に対し,商標権者は,要旨以下のように意見を述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第41号証(枝番号を含む。)を提出している。
(1)「1.5世帯」の語について
「世帯」の語は,総務省の統計局・政策統括官・統計研修所のウェブページにおいて「世帯人員が一人の世帯」を「単独世帯」としていることから,「単身の成人」についても「世帯」の語が使用されるとの認定自体は,誤りではない(乙1の1)。
しかしながら,上述のウェブページ中の「G 世帯の決め方」の項目によれば,「住居と生計を共にしている人々の集まりを一つの世帯とし,(中略)生計が別であれば別々の世帯として扱われる」としている(乙1の2)。
したがって,「夫婦と子供からなる世帯」は「1世帯」であり,仮に「子供」が独立して生計を立てていれば,夫婦と子供が1つの住宅に同居をしていても「2世帯」ということになり,「親夫婦・子供夫婦・子供夫婦のいずれかの兄弟姉妹」とからなる世帯は,その「兄弟姉妹」の生計が別であれば,「3世帯」ということになり,「兄弟姉妹」の生計が親夫婦と同じであれば,親世代の「1世帯」に含まれてカウントされる。
このように「世帯」をカウントする数字としては,「1世帯」,「2世帯」,「3世帯」と表現されても「0.5世帯」,「1.5世帯」,「2.5世帯」と表現されることはありえない。
(2)各証拠資料について
商標法第3条第1項第3号の該当性の判断時は,査定時であり,異議申立において提出された各証拠資料の2012年12月26日(決定注:19日の誤記と認める。)以降の資料については,証拠能力がない。また,甲第20号証,甲第22号証,甲第23号証及び甲第26号証は,年月日が不明であり,証拠価値に乏しいものである。
このようなことから,本件商標が住宅業界において「同居する成人」等を表現する公益上必要な語であり,自他役務の識別性がないとは到底いえない。
異議申立書において提出されている甲号証の多くは,商標権者が2012年8月の発売の開始に当たり,「二世帯住宅の進化形」としての「住宅」を表現する語として住宅業界において初めて採択して商品発表を行い,「2.5世帯住宅」の語につき訴求活動を行ってきたことにより,新聞,雑誌等にも数多く取り挙げられてきたことに起因しているものである。
(3)「1.5世帯住宅」の語が商標権者を認識せしめる商標として機能していることについて
住宅分野を含む建築業界で最も歴史が長く権威のある「日本建築学会」の論文データベースで「1.5世帯」のキーワード検索をしても,ヒットする論文は,1件も存在しない(乙3)。
「1.5世帯」の「0.5世帯」の語は,商標権者が2012年8月に「二世帯住宅の進化形」としての「住宅」を表現する語として住宅業界において初めて採択をし,2012年8月11日から発売を開始した「2.5世帯住宅」というネーミングにおいて採用した「0.5世帯」に1世帯にプラスをしたものであり,「1.5世帯」の語は,「2.5世帯」,「2.5世帯住宅」の各語と商標権者とが結びつけるべく,積極的に訴求活動を行うと共に,新聞,雑誌等にも数多く取り挙げられてきている中で,「2.5世帯」と同様のコンセプトで採択されたものであり,住宅業界において「2.5世帯」,「2.5世帯住宅」の各語が現時点において商標権者を特定する語として十分に機能していることから,本件商標もまた,商標権者が提案をする「親世帯と生計を共にしかつ収入は独立している単身の子供との集居スタイル」を表現していると容易に想起せしめる語として機能しているものである。
(4)「1.5世帯」及び「2.5世帯」の採択の趣旨及び訴求活動等について
ア 「2.5世帯住宅」に関する新聞記事は,2012年8月6日の日刊工業新聞,同年8月8日の日本経済新聞,日経産業新聞及び日刊工業新聞(乙4の1ないし4)であり,これらの記事は,商標権者が親世帯と子供世帯,単身の姉妹や兄弟が同居する「2.5世帯住宅」を2012年8月11日に発売をすること,この新商品である「2.5世帯住宅」が,単身者が同居するスペースを取り入れ,単身者の独立性(プライバシー)を確保している点に特徴があることを報じている。
イ 2012年8月23日の毎日新聞,同年8月25日の日本プレハブ新聞及び毎日新聞のインタビュー記事において,「2.5世帯」とは聞き慣れない言葉ですとのインタビュアー質問がなされたのに対し,二世帯住宅研究所所長が「2.5世帯住宅」のコンセプト及び「2.5世帯住宅」が国政調査の結果の分析から開発をされたことを述べている(乙5,乙6の1及び2,乙7)。
ウ 2012年8月28日の住宅新報(乙8)及び週刊住宅(乙9)ほか,乙第10号証ないし乙第17号証のように,商標権者の「2.5世帯住宅」は,販売時からかなり注目されている。
エ 「2.5世帯住宅」の新聞媒体を使った広告活動は,2012年8月8日の日本経済新聞1面全面広告(乙18)及び同年8月13日から同年8月19日に第1話から第7話からなる新聞広告を,1話毎に,毎日,日本経済新聞に掲載した(乙19の1ないし7)。
そして,同様の新聞広告を,秋編として1話(乙21),年末年始編第1話から第3話(乙22の1ないし3),及び,完結編第1話と第2話(乙23の1及び2)が,いずれも日本経済新聞に掲載した。
また,2012年8月24日に「2.5世帯住宅」のコンセプトに関する広告を行っている(乙24)。
かかる「2.5世帯住宅」の広告活動は,第61回(2012年)日経広告賞において「長く続いているブランド『ヘーベルハウス』と消費者の関係を「2.5世帯住宅」というあらたなコンセプトのシリーズ広告で鮮やかに打ち出したとして最優秀賞を獲得し(乙25の1及び2),日経流通新聞の2012年ヒット商品番付において「2.5世帯住宅」という「新概念の住宅の登場久々」と評価され,技能賞を獲得している(乙26)。
そして,広告活動の評価測定を行っているデスクワンによる2012年度広報評価ランキングの住宅メーカーランキングにおいて第3位にランキングされた(前年第5位)(乙27)。
オ 「2.5世帯住宅」に関する雑誌記事は,2012年9月18日号の雑誌「財界」(乙28),同年10-12月号「ホームプランニング」(乙29),同年10月16日の「DIME」No.21(乙30)のほか,乙第31号証ないし乙第40号証などである。
(5)商標権者が提唱する「1.5世帯」について
「1.5世帯」の語は,国勢調査を含めた社会通念上,「1世帯」と考えられている「親世帯と単身者である子供が同居する親子同居スタイル」を指しているが,商標権者は,同居スタイルにおいて自立できる収入を持ちつつ親世帯と生計を分けていない単身者を新たに「0.5世帯」という言葉で表現し,「親世帯」の1世帯にこのような単身者が加わった同居スタイル,商標権者による「集居スタイル」を新たに提唱したものであり(乙41の1及び2),「1.5世帯」の語は,社会通念上の「2世帯」でも「1世帯」でも表現できない集居スタイルを表現するユニークな語であるとの認識は,住宅業界を中心に定着している。
(6)以上からも明らかなように,「2.5世帯」及び「0.5世帯」の各語は,商標権者の創作にかかるものであり,かつ,これらの言葉は「集居」の住宅形態として商標権者のみが使用しているものである。現に,申立人である同業の住宅メーカーは,商標権者が提案する「1.5世帯」の語を使用しておらず,各甲号証の幾つかにおいて使用されている事実が散見されるにすぎない。
かかる事実は,情報の拡散が瞬時に行われるインターネット時代においても,これら各語が商標権者を特定する語として住宅業界において広く認知されていることを示すものである。
そもそも「1.5世帯」は,「親世帯と生計を共にしつつ同居する単身者」を商取引において表現する場合は国勢調査等に準拠して一世帯に含めて表現をすれば足り,殊更に「1.5世帯」の語を使用する必然性を認めることはできない。
したがって,本件商標は,住宅業界において,商標権者の創作に係る集居スタイルを表現する語として十分に自他役務の識別力を有するものである。

5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本件商標は,前記1のとおり,「1.5世帯」の文字よりなるところ,その構成は,「1.5」の数字と,「住居および生計を共にする者の集団。住居・生計を同じくしている者の集団。親族以外の者が含まれている場合や,一人の場合もある。」(広辞苑第六版)を意味する「世帯」の語との組合せからなるものである。
そして,「1.5世帯」の文字は,申立てに係る指定役務との関係において,「近時の家族構成の多様化に対応して,独身女性(男性)が,その両親と暮らす」,あるいは,「夫婦が,ひとりになった親と暮らす」等のような構成の家族向けの住宅を指すものとして,あるいは説明に使用され,そのような家族向けの住宅が設計され,又は,住宅のリフォームが提案されている事実が存することは,前記3の取消理由のとおりである。
そうとすれば,「1.5世帯」の文字からなる本件商標を,その指定役務中,申立てに係る指定役務に使用した場合,一つの住宅内において,世帯に成人の単身を加えた家族向けの住宅に関する役務の提供であることを表すにすぎず,本件商標は,役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められる。
したがって,本件商標は,申立てに係る指定役務について,商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標権者の主張について
ア 商標権者は,2012年8月3日発行の「都市型親族集住 2.5世帯同居の実態」と題する調査報告書(抜粋,写し,乙41の1及び2)を提出し,「同居スタイルにおいて自立できる収入を持ちつつ親世帯と生計を分けていない単身者を新たに『0.5世帯』という言葉で表現し,『親世帯』の1世帯にこのような単身者が加わった同居スタイル,商標権者による『集居スタイル』を新たに提唱したものであり,『1.5世帯』の語は,社会通念上の『2世帯』でも『1世帯』でも表現できない集居スタイルを表現するユニークな語であるとの認識は,住宅業界を中心に定着している。」旨,主張する。
ところで,申立人が提出した甲第10号証は,「One+deuxワン・プラス・デュー」と題する冊子(抜粋,写し)であり,その38頁には,「積水ハウスが考えるライフステージmap ver.2005」及び「日本人のライフステージmap」において,「アダルトファミリー『1.5世帯(仮称)』とは?『2世帯家族』(夫婦とその親からなる)でもなく,『核家族』(夫婦とその若い子からなる)でもない,大人として独立した子とその親からなる家族を指す言葉として定義。」の記載があり,前記3(2)アにおいて,「1.5世帯住宅におけるライフスタイルとは,シングル女性(男性)が実家の土地に家を建てて両親と暮らすという住まい・・・」の記載(甲11-1)があることからすれば,本件商標の登録出願時以前には,申立てに係る指定役務の業界において,すでに,「独身女性(男性)が,その両親と暮らす」,「夫婦が,ひとりになった親と暮らす」等のような構成の家族向けの住宅を指すものとして,あるいは説明に,「1.5世帯」の文字が使用されていた事実がある。
また,職権による調査において,以下の新聞記事情報がある。
(ア)「『インサイドストーリー』・母娘同居の潜在需要が顕在化する・積水ハウスの新商品が親子関係問う?」 2006.06.14 日本証券新聞 5面
「積水ハウスが一風変わった商品を発表した。『カーサ・フィーリア 娘と暮らす家』がそれ。晩婚化により単身者が増えていることを背景として,未婚の子供と親が同居する『1・5世帯』スタイルを標榜する。」
(イ)「『娘と暮らす』新提案 共同研究 積水ハウス・インフィニティ」
2006.04.18 住宅新報 3面
「自立する娘と親が,対等な『大人対大人』として向き合える住まいとは--。積水ハウスはこのほど,30代?40代の未婚女性と両親の暮らしに着目した住戸プラン『カーサ・フィーリア 娘と暮らす家』を発表した。核家族でも2世帯でもない『大人として独立した子とその親からなる家族』を“1・5世帯”と定義し,新たなライフスタイルを提案する。・・・将来の家族の変化に柔軟に対応できるプランニング手法を確立し,新たな市場開拓を目指す。」,「2世帯でも核家族でもない,大人として独立した子供とその親からなる家族を『1・5世帯』と定義付け,新たな視点からの居住スタイルを提案する。」
上記甲第10号証及び甲第11号証-1からすれば,「1.5世帯」の文字は,商標権者が「集居スタイル」を新たに提唱したものと主張する2012年8月以前には,「形式的には,夫婦と子供という核家族でありながら,実態的には『1世帯』と呼ぶには少し戸惑いがあり,かといって『2世帯』ではないこの家族形態を仮に中間的な『1.5世帯』と名付け」等と表現されていたものであって,また,上記新聞記事情報のように,本件商標の登録出願時には,例えば,「大人として独立した子とその親からなる家族を指す言葉」等として,すでに使用されていたものであり,その後,取消理由通知に示すとおり,複数の事業者により,同様の意味合いにおいて使用されている実情がある。
したがって,商標権者の主張は,採用することができない。
イ 商標権者は,「2.5世帯住宅」に関する新聞記事等を挙げ,「『1.5世帯』の語は,『2.5世帯』,『2.5世帯住宅』の各語と商標権者とが結びつけるべく,積極的に訴求活動を行うと共に,新聞,雑誌等にも数多く取り挙げられてきている中で,『2.5世帯』と同様のコンセプトで採択されたものであり,住宅業界において『2.5世帯』,『2.5世帯住宅』の各語が現時点において商標権者を特定する語として十分に機能していることから,本件商標もまた,商標権者が提案をする『親世帯と生計を共にしかつ収入は独立している単身の子供との集居スタイル』を表現していると容易に想起せしめる語として機能している」旨,主張する。
しかしながら,提出に係る乙第4号証ないし乙第40号証によれば,「2.5世帯住宅」の文字は,例えば,「親と子の二世帯に加えて,単身の兄弟姉妹も共同で暮らせる住宅」(乙4の1),あるいは,「親世帯と子世帯と単身の兄弟姉妹が暮らす」(乙29)等のように記載されているが,かかる表現は,前記(1)で述べた「1.5世帯」の文字が「世帯に成人の単身を加えた家族」を指すものと,その意味合いにおいて変わりはなく,また,該証拠は,2012年(平成24年)8月6日以降に掲載された新聞記事,雑誌記事及び広告であって,その住宅の販売開始時期は,2012年8月11日であることから,いずれも本件商標の登録査定時のわずか4か月前にすぎず,これらをもって,住宅業界において「2.5世帯」,「2.5世帯住宅」の各語が,商標権者を特定する語として十分に機能しているものということができない。
また,これらの商標権者の「2.5世帯住宅」の使用をもって,「1.5世帯」の文字からなる本件商標が,商標権者が提案する集居スタイルを表すものとして取引者,需要者に認識されているということもできない。
(3)まとめ
以上のとおり,本件商標は,その指定役務中,申立てに係る指定役務については,商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであるから,商標法第43条の3第2項の規定により,取り消すべきものとする。
よって,結論のとおり決定する。
異議決定日 2014-03-07 
出願番号 商願2012-62284(T2012-62284) 
審決分類 T 1 652・ 13- Z (W42)
最終処分 取消  
前審関与審査官 山本 敦子 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 原田 信彦
田中 亨子
登録日 2013-01-18 
登録番号 商標登録第5550683号(T5550683) 
権利者 旭化成ホームズ株式会社
商標の称呼 イチテンゴセタイ、イッテンゴセタイ 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 特許業務法人あーく特許事務所 
代理人 工藤 莞司 
代理人 特許業務法人あーく特許事務所 
代理人 特許業務法人あーく特許事務所 
代理人 特許業務法人あーく特許事務所 
代理人 小暮 君平 
代理人 浜田 廣士 

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