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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y05
管理番号 1287619 
審判番号 取消2012-300665 
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2012-08-22 
確定日 2014-05-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第4820924号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4820924号商標の指定商品中、第5類「薬剤」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4820924号商標(以下「本件商標」という。)は、「ダビダ」の片仮名及び「DAVIDA」の欧文字を上下二段に表してなり、平成16年4月21日に登録出願され、第3類「化粧品」及び第5類「薬剤」を指定商品として同年11月26日に設定登録されたものである。
そして、本件審判は、商標法第50条第1項により、本件商標の指定商品中の一部商品について商標登録の取消しを請求するものであり、平成24年8月22日に請求され、その予告登録が同年9月7日になされているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由、答弁に対する弁駁、口頭審理陳述要領書及び第2口頭審理陳述要領書による陳述並びに上申書による主張を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第5類「薬剤」について、継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

2 弁駁の理由
(1)メトラス株式会社(以下「メトラス」という。)が被請求人の通常使用権者であることの客観的証拠が示されていないから、メトラスが通常使用権者であると認めることはできない。
(2)被請求人は、乙第1号証及び乙第2号証の商品が、a.「ホワイトニングローション」、b.「保湿剤」及びc.「チロシナーゼ阻害剤」であると主張しているが、これらは一般的には第3類「化粧品」に属する商品であると思われるので、第5類「薬剤」に属する客観的な証拠をもって証明されたい。
(3)「DAVIDA」は、造語であり、読み方は特定されていない。「DAVIDA」は、「ダビダ」又は「ダバイダ」と称呼される。本件商標と使用に係る商標は造語商標であり読み方が複数通りあるから、社会通念上同一の商標とはいえない。乙第3号証の注文書のコピーも登録商標を使用していることにはならない。
(4)乙第4号証の発注書のコピーは、以下の点について疑義が生じる。
ア 国内の発注書が何故英文フォームで作成されているのか。
イ 商品の価格が何故円表示でなく米国ドル表示なのか。
ウ 商品の購入者の住所・名称(氏名)が明らかにされていなければ客観的証拠力はない。
エ Purchase Order(発注書)において、「this purchase order amount will be paid every end of month by METRAS.」(この発注書の金額はそれぞれ月末にMETRASが支払う。)とは何を意味しているのか不明確である。また、「Please make a invoice along this order sheet.」(この注文書に従ってインボイス(送り状)を作成してください。)とは、発注者に対して何を意味しているのか不明確である。
(5)乙第5号証の納品書にはどのような商標について使用されたのか何ら明らかにされていない。また、納入先が具体的に示されていないので「美容外科」だけでは購入者の客観的証拠力に欠ける。
(6)乙第6号証の1及び乙第6号証の2において、輸入業者は誰なのか具体的に示されていないので、通常使用権者といわれるメトラスが厚生労働大臣宛に輸入報告書及び商品説明書を提出したのか否か判明しない。これらの書類の提出者と通常使用権者であるメトラスの関係が明確にされていないので、客観的証拠力がない。客観性を担保するためそれぞれの商品のパッケージを広げた態様の写真がなければ商品の関連性がわからない。
(7)乙第7号証の1及び乙第7号証の2の書類には、どのような商標が使用されているのか明らかにされていないだけでなく、誰によって作成された書類であるかも明らかでない。
また、販売先とされるクリニックの名称も明らかにされていないから、この書類をもって本件商標が使用されている証拠たりえない。
(8)以上のとおり、被請求人が提出した資料(乙第1号証ないし乙第7号証(枝番号を含む。))によっては、本件商標が被請求人の通常使用権者によって、本件審判請求の予告登録前3年以内に、日本国内で本取消対象商品について使用されたことが証明されたとはいえない。

3 平成25年3月7日付け口頭審理陳述要領書における陳述
(1)被請求人は、確認書(乙第8号証)を提出し、メトラスは被請求人の通常使用権者であった旨主張しているが、客観性が担保されない確認書をもって通常使用権が過去に遡って存在したと主張することはできない。
(2)被請求人提出の乙第3号証ないし乙第7号証の書類では、メトラスが実際に商標を使用していたとする客観的な証拠とはなり得ないから、さらなる客観的証拠を求める。また、輸入された医薬品を法人が販売することは薬事法により許されていないと考える。法人は臨床試験や展示用に用いることができるにすぎないから、メトラスが薬事法に違反して本来使用販売することのできない行為をしていたことになる。
(3)「ダビダ」及び「ダバイダ」の称呼が生じることが十分に考えられる限り、社会通念上登録商標と同一の商標を使用していると主張することはできない。

4 平成25年3月22日付け第2口頭審理陳述要領書における陳述
(1)「厚生労働省-個人輸入代行業の指導・取締り等について」(甲第15号証)によれば、メトラスの行為は、「輸入販売業の許可の取得」が前提となり、「輸入販売業の許可」をメトラスが取得していない限り、明らかに薬事法違反となる。メトラスの登録商標の使用の有無の問題ではなく、それ以前の問題である。
(2)メトラスの行為が薬事法違反であることは、「厚生労働省、医薬食品局、監視指導・麻薬対策課、監視指導室、輸入監視係」より確認を受けている。

5 平成25年5月2日付け上申書における主張
(1)被請求人は、本来個人医師に代わり薬監証明書の申請行為及びその受理行為並びに海外の業者への発注までしか医薬品の輸入手続に関与することはできない(甲第15号証)。被請求人の理解にしたがって、仮に商品を扱えるとした場合には、この意味において形式的には商標の使用が存在しうるかもしれない。しかしながら、これは単に輸入に係る商品を売りさばいているだけであり、商標法第2条第3項各号の商標の使用に該当するものでは決してない。被請求人が本件商標を輸入に係る医薬品の包装等に商標を付して使用している訳では決してない。
仮に被請求人が本件商標を輸入に係る医薬品の包装等に使用したとしても、薬事法違反行為について商標法上商標の使用を認めることはできない。
(2)被請求人は、自己の行為が薬事法に違反したものではない旨、何ら法律上客観的に証明していない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由、口頭審理陳述要領書及び第2口頭審理陳述要領書による陳述並びに上申書による主張を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第39号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)登録商標は、通常使用権者であるメトラスが、「薬剤」について使用中である。通常使用権者は、医療機関の求めにより、登録商標を付した薬剤を輸入して、当該医療機関に販売している。
(2)乙第1号証では、ホワイトニングローション、保湿剤、チロシナーゼ阻害剤について、「DAVIDA」商標(以下「使用商標」という。)が記載されている。登録商標の欧文字と使用商標は同じスペルであり、同一の称呼を生じる。登録商標と使用商標は、外観が完全同一とはいえないが社会通念上同一の範囲である。
(3)乙第2号証は、「Melafade T」なる表記の商品(以下「使用商品」という。)であって、使用商標が付されている。使用商品について販売の事実が証明されれば、登録商標が使用されたことが証明される。
(4)乙第3号証は、使用商品が2012年4月9日に医療機関から通常使用権者に注文された旨を示す注文書(写)である。上端部に「DAVIDA」の標章、下端部に通常使用権者の名称が明示されている。中段の「Melafade-T(メラフェードT)」なる表記が使用商品を意味する。
(5)乙第4号証は、2012年4月9日付けの使用商品の発注書(写)である。上端部に「DAVIDA」の標章が明示されている。上部の欄に記入された医療機関の要請により、使用商品「Melafade-T(メラフェードT)」が発注された旨を示している。下側には通常使用権者の名称が明示されている。
(6)乙第5号証は、2012年5月1日付けで通常使用権者が医療機関に対して使用商品を納品した旨の納品書(写)である。使用商品は、「製品名」の欄の一番上の「Melafade-T」の表記により特定されており、通常使用権者の名称は中段に記載されている。左上に示されているのは通常使用権者の英文標記とマークである。
(7)乙第6号証は、使用商品が薬剤であることを証明する書証である。「商品説明書」(乙第6号証の2)の「化学名、一般的名称又は本質」の欄に「医薬品」と記載されていることから、使用商品は医薬品であり「薬剤」であることが明らかである。
(8)乙第7号証は、2012年3月?9月に通常使用権者が販売した薬剤の個数を示すリストである。「Clinic」列は、通常使用権者から複数種類の薬剤を購入した医療機関を示している。「Clinic」列の右方向3番目の列(一番上の「T-Melafade-T」なる記載がある列)が使用商品の販売個数を示している。「Clinic」列から明らかなように、使用商品は、医療機関以外には販売されていない。
(9)以上のとおり、乙第1号証ないし乙第7号証により、登録商標は、通常使用権者が「薬剤」について使用中である。

2 平成25年2月21日付け口頭審理陳述要領書における陳述
(1)通常使用権について
確認書(乙第8号証)により、メトラスが、本件商標の通常使用権者であることは明らかである。商標の通常使用権許諾契約は、口頭による同意をもって成立する無方式契約であり、商標権者と通常使用権者たるメトラスは、相互の信頼関係により本契約を維持してきたが、当該契約の成立及び存在を立証するため、確認書(乙第8号証)を提出する。
なお、通常使用権者は、平成24年5月18日に東京都渋谷区東3-16-5サンパーク恵比寿3階から,同区恵比寿南1-2-11フォーシーズン恵比寿ビル8階に移転している。
(2)乙第3号証ないし乙第6号証並びに乙第7号証の1及び2について
乙第3号証ないし乙第6号証は、本件審判の予告登録日である平成24年9月5日前3年以内の同年4月9日から同年5月1日までに、使用商品(乙第2号証)に関してなされた一連の取引を立証し、また、乙第7号証の1及び2は、使用商品に関する同様の取引が複数回継続して行われていることを立証するものである。
ア 「DAVIDA/ご注文書」(乙第3号証)
これは、最下段に記載されている通常使用権者(メトラス)が、「品名(Products)」欄に記載された商品の注文を受け付けるために、顧客に頒布している取引書類の一つである。
本書は、発注者欄「Clinic Name」に「医療法人社団美翔会 事務局」、「Doctor Name」に「Dr.X」、欄外及びファクシミリ送信欄に「メディクルード」と、各々名称・氏名が記載されている。また、欄外に「2012年4月9日」、ファクシミリ送信欄に「2012/04/09」と日付が記載されている。さらに、「品名(Products)」欄の「Melafade-T(メラフェードT)」の「注文数(QTY)」欄に「50」と記載されている。
なお、医療法人社団美翔会(以下「美翔会」という。)は、医師Xらが勤務する美容外科の開設・所有を目的として設立された医療法人で(乙第10号証)、株式会社メディクルード(以下「メディクルード」という。)は、聖心美容外科の非医療分野の運営全般をサポートする法人である(乙第11号証)。
以上、2012年(平成24年)4月9日に、医師名をXとする美翔会が、使用商品を50本注文する本書(乙第3号証)を作成し、美翔会が所有する聖心美容外科の非医療分野の運営業務全般をサポートするメディクルードが通常使用権者(メトラス)にファクシミリ通信を行い、使用商品の発注を行った事実が明らかである。
イ 「DAVIDA/Purchase Order」(乙第4号証)
これは、通常使用権者が顧客から注文を受けた場合に、国外メーカーに海外商材の発送を依頼するために用いている「Purchase Order」(発注書)である。
本書は、注文者欄の「Clinic Name」に「seishin biyo geka」、「Doctor Name」に「Dr.X」と記載され、欄外に「2012/4/9」と日付が記載され、「海外商材」の「品名(Products)」の「Melafade-T(メラフェードT)」の「注文数(QTY)」欄に「50」と記載されている。
以上、使用商品の注文を受け(乙第3号証)、通常使用権者(メトラス)が、海外商材発注のため、2012年(平成24年)4月9日に、本書(乙第4号証)を作成した事実が明らかである。
なお、発注書が英文フォームで作成されているのは、これがシンガポールのDavida Asia Pte Ltd.に送信されるもので、相手が外国企業であり当然のことである。
また、商品価格の米国ドルでの表示は、使用商品が海外商材であり、外国企業との取引が米国ドル建てで行われることは、特別不自然ではない。
さらに、「この発注書の金額はそれぞれ月末にMETRASが支払う。」との記載は、「METRAS」、すなわち、通常使用権者たるメトラスが発注者に対して商品対価を支払う旨を意思表示したもので、その意味は明確である。
「注文書に従ってインボイスを作成してください。」との記載は、「(医薬品)輸入報告書」(乙第6号証の1)の添付書類として「仕入書(Invoice)」が必要となるため、その作成を依頼したもので、意味は明確である。
ウ 「納品書」(乙第5号証)
これは、通常使用権者が使用商品の納品を顧客に連絡するための書面である。
これによれば、2012年(平成24年)5月1日に通常使用権者が、聖心美容外科に対して、使用商品である「Melafade-T」を50本納品したことが明らかである。
なお、請求人は、弁駁書において、納品書には、いかなる商標が使用されたのか明らかでないと主張しているが、納品された製品名が「Melafade-T」で、納品数が「50本」であるから、ここで納品された商品が使用商品であり、使用商品又はその包装には、本件商標が付されていることが明らかである(乙第2号証)。
エ 「(医薬品)輸入報告書」(乙第6号証の1)
本書は、平成24年4月27日に、営業所「聖心美容外科」の医師「X」が作成した「(医薬品)輸入報告書」で、「品名」欄に「Melafade-T」、「数量欄」に「10ml×50本」、「許可または登録のない場合、輸入の目的」欄に「医師個人用」、「製造業者及び国名」欄に「DAVIDA ASIA Pte Ltd./シンガポール」、「輸入年月日」欄に「2012/4/27」と各々記載され、「厚生労働省確認欄」に「24.4.27」の日付の確認済印が押されている。
本書には、輸入(販売)業の「許可または登録のない場合、輸入の目的」を記載する必要があるが、「医療従事者個人用」又は「個人用」として、自然人しか申請できないため、本件の場合は、使用商品輸入の確認を得るために、医師Xが「医師個人用」として作成したものである。
以上、使用商品の注文(乙第3号証)及び海外への発注(乙第4号証)後の平成24年4月27日に、使用商品の輸入報告及び確認がなされた事実が明らかである。
オ 「商品説明書」(乙第6号証の2)
本書は、前記報告書(乙第6号証の1)の添付書類で、同報告書「厚生省に提出した資料」欄の「4.商品説明書」に該当する書面で、「商品名」に「Melafade-T」、「化学名、一般的名称又は本質」欄に「医薬品」、「効能又は効果」欄に「肝班患者の色素沈着除去及び皮膚の美白効果」と、各々記載されている。
これから、使用商品が「医薬品」として輸入報告され、厚生労働省の確認がなされたことが明らかである。また、その「効能又は効果」として「皮膚の美白効果」以外に「肝班患者の色素沈着除去」効果があることが明らかである。
カ 「Melafade 販売個数 詳細 2012年3月-9月」(乙第7号証の1及び2)
これは、通常使用権者が、使用商品を含む「Melafade」関連商品の販売に関し、毎月行われる社内会議の資料として利用するために作成したものである。
これにより、使用商品が、乙第3号証ないし乙第6号証により立証された取引のみならず、反復継続して複数の医療機関との間で取引されていることが明らかである。
なお、乙第3号証ないし乙第6号証の取引は、「売上計上」欄「4月」の「注文日」「2012/4/9」、「Clinic」「聖心美容外科」の欄に記載されている(乙第7号証の1)。
キ 以上、2012年(平成24年)4月9日に、聖心美容外科を所有する美翔会が使用商品の注文書を作成し、それが聖心美容外科をサポートするメディクルードから通常使用権者に送信され(乙第3号証)、その後、通常使用権者は、シンガポールのDAVIDA ASIA Pte Ltd.に海外商材として使用商品の発注を行った(乙第4号証)。
そして、同年4月27日に、使用商品は輸入報告及び確認を経て(乙第6号証の1)、同年5月1日に、通常使用権者から聖心美容外科に納品された(乙第5号証)。
なお、厚生労働大臣宛に輸入報告を行ったのは、自然人である医師Xであるが(乙第6号証の1)、厚生労働省による確認後に、使用商品は、通常使用権者に引き取られ、通常使用権者による検品を経て、聖心美容外科に納品された(乙第5号証)。
(3)本件商標の使用について
本件商標の使用は、商標法第2条第3項第2号及び同項第8号に規定する使用に該当する。即ち、「商品又は商品の包装に標章を付したものを引き渡す行為」(同項第2号)及び「商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為」(同項第8号)に、各々該当する。
まず、使用商品又はその包装には、本件商標が付されており(乙第2号証)、使用商品は、平成24年5月1日に納品、即ち、引き渡しがなされている(乙第5号証)。
ここで、「引き渡し」は、物のうえの現実の支配を移転することと説明されているが、通常使用権者は、輸入報告(乙第6号証の1)後、引き取った使用商品を現実に支配し、検品を行い、検品終了後、需要者に引き渡し、使用商品のうえの現実の支配を移転しており、これは同項第2号の使用行為に該当する。
次に、通常使用権者は、本件商標を付した取引書類、即ち、注文書(乙第3号証)を、受注のために需要者に頒布しており、同項第8号の使用行為に該当する。
(4)使用商品が「薬剤」に属することについて
使用商品の包装容器(乙第12号証)の表面には「Whitening/Lotion」と、裏面には「Made in Singapore/Davida Asia Pte Ltd」と各々記載され、取扱説明書(乙第13号証)には、用途、成分、保管等に関する記載があるが、これらの記載からは、使用商品が「薬剤」に属するか否か、判然とはしない。
しかし、「(医薬品)輸入報告書」(乙第6号証の1)添付の「商品説明書」(乙第6号証の2)の「化学名、一般的名称又は本質」欄には「医薬品」、「効能又は効果」欄には「肝班患者の色素沈着除去及び皮膚の美白効果」と各々記載されており、需要者たる聖心美容外科又はその医師Xが、使用商品を「医薬品」と認識して取引している事実が明らかである。また、使用商品は、現に「医薬品」として輸入され、厚生労働省の確認がなされている。さらに、使用商品の「効能又は効果」には、「皮膚の美白効果」以外に「肝班患者の色素沈着除去」効果がある。
よって、使用商品は、肝班患者の色素沈着除去効果を有し、需要者が医師であり、商品の効果及び需要者の点からは「薬剤」に属すると認められる。
また、以下の取引の実情によっても、使用商品は「薬剤」と認められる。
まず、聖心美容外科のサイト(乙第14号証)で、使用商品は「メディカルコスメ」と紹介されているが、「本製品は医療機関専売品です。一般の薬局等では販売されていません。」、「レーザー治療の前後」の使用で「治療の効果を高めたり、ダウンタイムを早める効果もある」と説明され、「治療が困難な『肝班』にも効果的」、「医師の診療(無料)によって、適切な治療方法をご提案」、「色素沈着を抑え、お肌を美白する効果、さらに抗炎症作用もある外用・局部用のローション」、「従来のトレチノインによる治療では、皮むけ・赤み・乾燥といった不快感がありましたが、メラフェードでは、これらのデメリットをコントロールすることが可能ですので、快適な治療を行うことができます。」等の記載がある。また、「Q&A」で、「メラフェードシリーズが今までの薬剤と比べて優れている点は?」との質問では、使用商品は「薬剤」として比較されており、「メラフェード使用中にお化粧はできますか?」との質問では、使用商品は「化粧品」とは認識されていない或いは区別されている。
次に、他のサイトでも、「抗炎症作用もある外用・局部使用のリキッド」、「主として抗炎症作用を伴う色素沈着抑制剤、および美白剤として使用」及び「二次的に、ニキビにおいて、突起・膿庖・丘疹が顕著に見られる場合の治療に用います。」(以上、乙第15号証)、「メラフェードは肝班などのシミに対する治療薬」(乙第16号証)等の記載が見られ、医師のブログ(乙第17号証)では、「しみ治療」中「トレチノイン・ハイドロキノン外用療法」で、使用商品を患者に使用して治療に当たっている旨が記載されている。
さらに、通常使用権者の使用商品の資料の送付状(乙第18号証)では、「『肝班及び炎症後色素沈着治療』のDAVIDA(ダビダ)社メラフェードシリーズ」と記載されており、使用商品が化粧用ではなく治療用であることが明らかである。
以上、使用商品が、「薬剤」に属する商品であることは明らかである。
(5)使用商標と本件商標が社会通念上同一であることについて
通常使用権者の使用に係る商標「DAVIDA」は、本件商標と社会通念上同一の商標(商標法第50条第1項)であるといえる。
ア 外観
本件商標(「ダビダ」を上段に、「DAVIDA」を下段に横書きした商標)のうち下段部分「DAVIDA」は、一連の欧文字からなる。これに対し、使用商標「DAVIDA」は、当該文字と同じ高さの黒地の長方形内に白抜きされているが、これは商品に使用する際の装飾的な観点からの変更にすぎないと解するのが合理的である。以上のとおり、使用商標と本件商標とは、外観において、社会通念上同一である。
イ 称呼
本件商標の欧文字部分「DAVIDA」は、上段の片仮名と併せて「ダビダ」との称呼が生じる。他方、使用商標「DAVIDA」についても、隙間なく連続的に表記されている点に照らすと、「ダビダ」との称呼が生じる。通常使用権者の送付状(乙第18号証)においては、「『肝班及び炎症後色素沈着治療』のDAVIDA(ダビダ)社メラフェードシリーズ」という表示がされていることからすると、使用商品が「ダビダ」と呼ばれていることを推認することができる。以上のとおり、使用商標と本件商標とは、称呼において、社会通念上同一である。
ウ 観念
使用商標「DAVIDA」も本件商標も共に我が国において特に親しまれた外国語とは認め難く、また、通常の英語辞書にも記載がなく、特定の観念を生じない。したがって、観念における相違はない。
以上のとおり、使用商標「DAVIDA」と本件商標「ダビダ/DAVIDA」とは、外観、称呼がいずれも社会通念上同一であり、観念における相違はなく、社会通念上同一の商標であると認められる。
ところで、請求人は、「DAVIDA」は一般的に「ダビダ」或いは「ダバイダ」の読み方を以て称呼されると主張し、「vi」が「バイ」と一般的に称呼されている事実として、「バイアグラ(Viagra)」等の英語(甲第1号証ないし甲第3号証)を掲げるが、これらは、全て「vi」が語頭に位置し、本件とは事案を異にする。本件商標は、「VI」が語頭ではなく中間に位置し、「?avid?」という同様の綴りの英単語では、次のとおり、中間「vi」は全て「ビ」と発音されている(ランダムハウス英語辞典(CD-ROM版))。
「a・pa・ra・vid・ya」(アパラビデャ-理知的知識)
「Da・vid・ic」(ダビディック-ダビデの)
「Dav・i・doff」(ダビドフ-スイスの葉巻のメーカー・ブランド)
「Da・vid・son」(ダビッドソン-人名)
「Dra・vid・i・an」(ドラビディアン-ドラビダ語族、ドラビダ族)
「Grav・i・da」(グラビダ-妊娠回数、妊婦)
「pa・ra・vid・ya」(パラビデヤ-超越的知識)
以上、いずれも「?ビ?」と発音されている。なお、「gravida」の「i」の発音記号が他と異なるが、この英単語で、これは日本語の音素「イ」に相当し、現にCD-ROM版で音声再現しても、「グラビダ」としか聴取できない。
また、検索エンジンGoogleの日本語のページでの検索によると、「davida」は、全約38800件、似たページを排除した有効件数が679件であるが、最初の1ないし100件目(乙第20号証)と最後の601ないし679件目(乙第21号証)の概要を確認すると、「davida」を「ダビダ」と表記していることが明らかである。なお、179件中「davida」を「ダビダ」と表記するのは41件で、「ダヴィダ」の表記が1件あるが、これは、「phone」を「ホン、フォン」、「violin」を「バイオリン、ヴァイオリン」等と互換的に表記することと同じで、片仮名表記の問題にすぎず、本件商標の称呼の同一性を左右しない。
また、「ダヴィーダ」の表記が3件あるが、これも「inter phone」を「インタホン、インターホン」と互換的に表記することと同様で、片仮名表記の問題にすぎない。音韻学・音声学上、モーラ言語と呼ばれる日本語には独立した音素として長音や促音があるが、英語を代表とするシラビーム言語には音素としての長音や促音は存在しない。よって、学術上も、英語を片仮名で表記する場合、長音の有無の相違は、表記上の問題に過ぎないことが明らかである。
以上、使用商標「DAVIDA」の自然的称呼は、「ダビダ」であり、これから請求人主張のような「ダバイダ」の称呼が生じることはない。
したがって、被請求人主張のとおり、使用商標と本件商標とは、社会通念上同一性を有する商標と認められる。
(6)まとめ
以上、通常使用権者が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、「薬剤」について本件商標を使用していることは明らかである。

3 差出日平成25年3月22日の第2口頭審理陳述要領書における陳述
(1)乙第3号証ないし乙第7号証について
注文書(乙第3号証)、発注書(乙第4号証)、納品書(乙第5号証)、(医薬品)輸入報告の抜粋(乙第6号証の1及び2)、商品の販売個数リスト(乙第7号証の1及び2)の黒塗り部分を除去したものを提出するので、差し替えを願う。
(2)通常使用権者による商標の使用行為について
平成25年2月21日付け口頭審理陳述要領書の「5、陳述の内容」の項目「(3)本件商標の使用について」の内容を補足する。
乙第3号証ないし乙第6号証で立証したのは、平成24年4月9日から同年5月1日までに、使用商品(乙第2号証)に関してなされた一連の取引である。そして、乙第7号証の1及び2により、使用商品(乙第2号証)に関する同様の取引が複数回継続して行われていることを立証した。
同様の取引について、以下説明する。
通常使用権者は、「DAVIDA/ご注文書」(乙第3号証)により、医師又は医療法人から使用商品(乙第2号証)の依頼を受けた際に、「DAVIDA/Purchase Order」(乙第4号証)により国外メーカーに使用商品の発送を依頼する。
「DAVIDA/Purchase Order」を受領した海外メーカーは、「DAVIDA/Purchase Order」で依頼された数量の商品が揃った時点で、通常使用権者に連絡すると共に、伝票を同封した状態で我が国へ発送する。その際、海外メーカーは輸送業者に依頼する。
使用商品が我が国に到着したならば、その旨が輸送業者から通常使用権者に報告される。
輸送業者から報告を受けた通常使用権者は、輸入報告書の申請を行う(いわゆる薬監証明書の申請と承認)。
そして、輸入報告書が承認された時点で、通常使用権者は、前記輸送業者に輸入報告書が承認された旨を連絡する。
連絡を受けた輸送業者は、宅配便にて通常使用権者に使用商品を送付する。
前記輸送業者から通常使用権者に使用商品が送付された後、通常使用権者は、送付された使用商品を自社にて検品する。そして、納品書(乙第5号証)と共に、医師又は医療機関に使用商品を納品する。
上述した一連の手順は、使用商品に限らず医師が薬品を輸入する際に一般的に行われており、薬事法に違反するものではない。
上記取引の内容について、通常使用権者が証明書(乙第22号証)を作成した。当該証明書には、通常使用権者が医師に使用商品を引き渡す行為の詳細が証拠書類と共により具体的に記載されている。
乙第22号証からも明らかなように、通常使用権者の行為は薬事法を遵守している。
請求人の口頭審理陳述要領書の3頁ないし5頁における、通常使用権者が薬事法に違反する行為をしているかのような主張は、全く根拠がない。
(3)まとめ
以上、通常使用権者が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、「薬剤」について本件商標を使用していることは明らかである。

4 平成25年4月5日付け上申書における主張
(1)乙第3号証の頒布方法について
乙第3号証の注文書は、医療機関から乙第1号証、乙第2号証の商品を注文したい旨の連絡を受けて、通常使用権者が当該医療機関に対してファクシミリ又はeメール等により頒布している。乙第23号証は、乙第3号証と同様な注文書をファクシミリで医療機関に頒布した際のファクシミリ送信票である。
(2)通常使用権者から医療機関への商品の納品方法について
乙第1号証、乙第2号証の商品は、宅配便により医療機関へ納品するか、あるいは、通常使用権者の従業員が医療機関へ持参している。
乙第24号証は、乙第5号証と同様な納品書を添付して、乙第1号証、乙第2号証の商品を宅配便で納品した際の伝票の控えである。
(3)乙第22号証の4/8ページの委任状について
乙第22号証の4/8ページの委任状は、製剤の輸入に際して不具合等が生じた場合に備えて、通常使用権者が保管しているものである。行政機関に提出するものではない。
乙第22号証の4/8ページの委任状は、通常使用権者と乙第3号証ないし乙第6号証における医師との関係を明確にするためのものであり、薬監証明書の取得のみに使用されるものではない。
(4)通常使用権者による行為は、医師が医薬品を輸入する際に一般的に行われているものであることを裏付ける資料について
乙第25号証は、検索エンジンGoogleにて「医療機関」、「医薬品」、「輸入代行」の三つの単語と完全一致するものを検索し、似たページを削除した有効件数の最初の1?30件目と811?818件目を示したものである。
乙第25号証の9件目のサイト(乙第26号証)と10件目のサイト(乙第27号証)には、医薬品の個人輸入において薬監証明の申請が必要となる旨が明示されている。
乙第25号証の1件目のサイト(乙第28号証)、4件目のサイト(乙第29号証)及び5件目のサイト(乙第30号証)には、薬監証明書が必要である旨が示されている。
乙第25号証の6件目のアイアールエックス・メディシンのサイト(乙第31号証)には、医師の海外医薬品個人輸入に際して薬監証明を取得する旨が記載されている。
乙第25号証の7件目のサイト(乙第33号証)と14件目のサイト(乙第34号証)には、医薬品の輸入に際して薬監証明書が必要となる旨が示されている。
乙第25号証の20件目のサイト(乙第35号証)には、薬監証明書を税関に提示することにより医薬品等の輸入が可能となる旨が記載されている。
乙第25号証の21件目のサイト(乙第36号証)には、「ドクターズファーマシー」というサイトが紹介されており、当該サイト(乙第37号証)には、医薬品を通関する際に薬監申請を用いる旨が示されている。
上述したように、医薬品を輸入するに際して薬監証明書を申請して取得することが必要であることを示すサイトは、乙第25号証の最初の21件のうち、10件存在する。
また、係る21件のうち、医師が医薬品を輸入する際における医薬品の流れを示している乙第29号証、乙第32号証、乙第33号証及び乙第37号証では薬監証明書の申請を行い、薬監証明書が発行された後に医薬品を医師や医療機関に届ける旨が示されており、これらは、通常使用権者による行為と同様である。
乙第30号証では、薬監証明書を取得した後、海外の販売業者から、直接依頼者である医療機関に商品が届けられる旨が記載されている。しかし、海外の販売業者は、乙第30号証の業者の指示により医療機関に商品を引き渡すので、薬監証明を取得し、その後、薬監証明を受けた薬剤を医療機関に引き渡すという点では、乙第30号証の業者の行為は、通常使用権者による行為と同様である。
さらに、通常使用権者と同様に、医師や医療機関の依頼により、薬監証明書を取得して、医薬品を医師や医療機関に届ける行為を行っている旨を示すサイトは、多数存在する。例えば、乙第38号証及び乙第39号証を例示する。
乙第25号証ないし乙第39号証から、医薬品の輸入において、薬監証明書を取得し、薬監証明書を取得した医薬品を医師に引き渡す場合がほとんどであることが理解される。そして、通常使用権者の行為が、医薬品を輸入する際に一般的に行われているものであることは、乙第25号証ないし乙第39号証により裏付けられた。
(5)まとめ
以上、通常使用権者が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、「薬剤」について本件商標を使用していることは明らかである。

5 平成25年10月2日付け上申書における主張
請求人の平成25年5月2日付上申書に対し、以下のとおり、反論する。
請求人主張は、要するに、被請求人が立証した通常使用権者による本件商標の使用行為(以下「本件行為」という。)が、薬事法違反で正当な商標の使用に該当しないとの点に集約されると認められる。しかし、そもそも請求人自身が、本件行為が薬事法違反であることを立証しておらず、その根拠を欠く。
以下、前記上申書の記載に則って、被請求人の反論を詳述する。
(1)第1回口頭審理調書の「陳述の要領」について
請求人は、上記「陳述の要領」に示された点が、被請求人により十分回答されていない旨述べるが、以下、反論する。
「陳述の要領」の「請求人」の項目「3 乙第22号証の委任状は、薬監証明申請及び受理に限られる」点に関しては、本年4月5日付上申書の「5、上申の内容(3)記載のとおりであり、この点は、本件商標の使用自体に関しては、本件行為とは直接的な関係がなく、重要な事項とは認められない。
同「5 乙第1号証及び乙第2号証の商品は、出所が不明である。」点については、乙第12号証の商品の包装の裏面の記載により、明らかである。
「陳述の要領」の「被請求人」の項目「3 通常使用権者から医療機関への商品の納品方法及び乙第3号証の注文書の頒布方法」の「注文書の頒布方法」は、前記上申書「5、上申の内容(1)」記載のとおりで、乙第23号証は、あくまでも一例にすぎない。また、「商品の納品方法」は、同「5、上申の内容(2)」記載のとおりで、乙第24号証も、あくまでも、その一例にすぎない。
また、「4 通常使用権者による行為は、医師が医薬品を輸入する際に一般的に行われている」ことについては、同「5、上申の内容(4)」に、「5 委任状の具体的な使用例」は、同「(3)」に、各々記載のとおりである。
なお、請求人は、「陳述の要領」において「2 乙第3号証ないし乙第7号証の2の成立を認め」、「4 メトラス株式会社による形式的な商標の使用行為を認めるが、実体的な商標の使用行為とは認めない」としており、この段階で、被請求人が通常使用権者と主張する者による本件行為は、形式的に商標の使用行為と認めている。よって、論点は、本件行為が、請求人主張のとおり、薬事法との関係で、実体的な商標の使用行為と認められるか否かに尽きると考えられる。
(2)薬事法との関係について
請求人は「審判被請求人」と記載しているが、以下「通常使用権者」と置き換えて記載すると、請求人主張は、概ね以下のとおりである。
通常使用権者は、個人輸入に係る医薬品を受け取り販売することは薬事法上明らかに認められておらず、通常使用権者の商標の使用は問題になり得ない。
イ 仮に、通常使用権者が本件商標を輸入に係る医薬品の包装等に使用したとしても、薬事法違反行為について商標法上商標の使用は認められない。
請求人が、本件行為が薬事法上認められないとする根拠は、甲第11号証及び甲第15号証であるが、前者は薬事法の抜粋にすぎず、後者は「個人輸入代行業の指導・取締り等について」、厚生労働省医薬局長が各都道府県知事宛に発した通知で、公的に本件行為を取り締まり或いは評価するものではない。
請求人主張は、通常使用権者が、薬事法上本件行為をできる立場になく、また、仮に本件行為を行えば、薬事法違反になるという点に集約される。
しかし、本件行為を薬事法上できない点について、ひいては、本件行為を行えば薬事法違反である点について、請求人は、何ら立証責任を果たしていない。
請求人は、通常使用権者が本件行為を薬事法上行えるか否か、ひいては、本件行為が薬事法違反になるか否かを判断し認定する立場にない。ある行為が薬事法上不適法か否か、即ち、それが薬事法違反になるか否かは、公的な関係各機関が判断し、民事刑事共に争いがある場合は、最終的には裁判所の司法判断に委ねられる。
しかし、請求人は、薬事法の抜粋(甲第11号証)と厚生労働省の通知(甲第15号証)を提出するのみで、本件行為が具体的に薬事法違反である点について何等立証していない。請求人が立証責任を全うしていない以上、被請求人は何等立証を要しないと考える。まずは、本件行為が薬事法違反か否かの確定が重要で、これがない限り、本件論争は机上の空論にすぎない。本件行為が薬事法違反というのは、請求人主張に係る事実で、請求人に立証責任があるが、請求人は、上申書その他で自己の主張を単に展開するにすぎない。
仮に本件行為が、薬事法違反に該当するとして、それが商標法上の使用行為として認められるか否かは、また別な問題である。しかし、この点は、薬事法違反であることが確定しない限り、議論すること自体が無駄と認められる。
(3)乙第23号証及び乙第24号証について
請求人は、本件「行為そのものが薬事法違反と考えます」と主張するが、それは請求人の独り善がりにすぎない。法律的に本件行為が薬事法違反か否かの確定が必要であり、本件行為が薬事法違反であることを立証するのは、請求人の責任で、考えるだけでは、その主張は到底採用できない。
なお、乙第23号証及び乙第24号証は、前述(1)記載のとおり、通常使用権者の商品の納品方法及び注文書の頒布方法を一般的に示す一例として示したにすぎず、一般的な取引行為を裏付ける傍証と、被請求人は考えている。
(4)「乙22の4/8ページの委任状について」について
これは、口頭審理調書「陳述の要領」中「請求人」の項目「3 乙第22号証の委任状は、薬監証明申請及び受理に限られる」との点に関し、被請求人の考えを述べたものであるが、本件行為の評価には直接的に関連しない。請求人主張に則れば、本件で最も重要なのは、本件行為が、薬事法違反か否かである。
(5)薬事法違反について
請求人は、「審判被請求人は、自己の行為が薬事法に違反したものではない旨何ら法律的客観的に証明をしていない」旨を主張する。しかし、繰り返しになるが、被請求人が立証した本件行為が薬事法違反であることを法律的客観的に証明するのは、請求人の責任である。しかるに、請求人は、甲第11号証及び甲第15号証を掲げただけで、本件行為が、個別具体的に薬事法に違反している旨を全く立証していない。請求人が薬事法違反を立証しきらない限り、被請求人には、本件行為が適法であることを法律的客観的に証明する責任はない。
なお、請求人は、乙第26号証から乙第36号証のサイトの業者に連絡をとり、一定の回答を得た旨、また、業者から謝罪された旨を主張しているが、それを裏付ける証拠は何ら存在せず、請求人の当該主張は採用できない。
(6)甲第15号証について
請求人は、甲第15号証の内容が薬事法上間違っていると主張するなら、これについて反論すべきであると主張している。被請求人は、甲第15号証の内容については、これを認める。しかし、これは、平成14年8月28日付けで厚生労働省医薬局長が各都道府県知事宛に発した通知であり、これを以て、本件行為が薬事法違反であると確定させることは、およそ不可能である。これは、「個人輸入代行業の指導・取締り等について」通知されたにすぎず、それを以て個別の行為が薬事法違反になるか否かを決定するものではない。
(7)まとめ
請求人は、「被請求人の主張は薬事法上認めることができない」と結論付けるが、本件行為が薬事法違反であることは確定していない。請求人が、薬事法違反と主張するのであれば、その判断を行う公的機関ひいては司法の確定した判断を以て、その旨を立証すべきであり、請求人主張は、その前提を欠く。
なお、仮に本件行為が薬事法に違反するとした場合、本件行為が商標法上も、その商標の使用としての行為を否定されるか否かについては、さらに争う余地があると被請求人は考える。しかし、それは、請求人が、本件行為が薬事法違反であることを立証した際に意義を有するものであるから、ここでは敢えて述べない。
最後に請求人は、a.メトラス株式会社が被請求人の通常使用権者であるとは認められないと主張するが、確認書(乙第8号証)を以てしても、審判合議体において、この点に疑義がある場合は、被請求人たる商標権者及び通常使用権者に対する当事者尋問により、その疑義を晴らしていただきたいと考える。
また、請求人は、b.メトラス株式会社の行為は商標法第2条第3項各号のいずれの行為にも該当しないと主張するが、第1回口頭審理調書の「陳述の要領」の「請求人」の項目4で、請求人は「メトラス株式会社による形式的な商標の使用行為を認め」ており、この主張は、前記陳述と矛盾している。
さらに、請求人は、c.メトラス株式会社の実際の行為においても、商標法第50条第1項の商標の同一性の観点からもメトラス株式会社が登録商標を使用しているとは認められないと主張するが、メトラス株式会社の現実の行為が、「商品又は商品の包装に標章を付したものを引き渡す行為」(商標法第2条第3項第2号)及び「商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為」(同項第8号)に該当することは明らかである。また、使用商標は、本件商標と、社会通念上明らかに同一性を有すると認められる。
さらにまた、請求人は、d.メトラス株式会社の行為は明らかに薬事法違反行為である旨主張するが、既に縷々述べたとおり、請求人は、その旨を主張するのみで、全く法律的かつ客観的に立証していない。
以上、通常使用権者が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、「薬剤」について本件商標を使用していることは明らかである。

第4 第1回口頭審理調書の要旨
平成25年3月22日の口頭審理期日において、請求人及び被請求人は、要旨以下の陳述をし、これが口頭審理調書に記載された。
1 請求人
(1)乙第22号証の委任状は、薬監証明申請及び受理に限られる。
(2)メトラス株式会社による形式的な商標の使用行為を認めるが、実体的な商標の使用行為とは認められない。
(3)乙第1号証及び乙第2号証の商品は、出所が不明である。
(4)被請求人の提出する上申書に対して反論があれば、上申書を提出する。

2 被請求人
(1)薬監証明書が発行された商品を薬監証明書を申請した医師へ引き渡す行為は、薬事法に違反しない。
(2)通常使用権者から医療機関への商品の納品方法及び乙第3号証の注文書の頒布方法を提出する。
(3)通常使用権者による行為は、医師が医薬品を輸入する際に一般的に行われているものであることを裏付ける資料を提出する。
(4)委任状の具体的な使用例を提出する。
(5)上記(2)ないし(4)の証拠及びそれらに関する主張についての上申書を提出する。

第5 当審の判断
1 商標法第50条第1項による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項本文は、「その審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」という。)に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。」と規定し、同項ただし書において、「その指定商品又は指定役務についてその登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしたときは、この限りでない。」と規定している。
2 そこで、被請求人提出に係る証拠(乙第1号証ないし乙第39号証(枝番号を含む。))が、商標法第50条第2項本文の要件を満たすものであるか否かについて検討する。
なお、以下、枝番号のすべてをいうときは、枝番号を省略する。
3 被請求人の主張及び乙各号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第2号証及び乙第12号証について
乙第2号証及び乙第12号証は、「Melafade T」なる表記の商品であって、「DAVIDA」の標章が付されている。また、乙第12号証の包装容器の表面には「Whitening/Lotion」と、裏面には「Made in Singapore/Davida Asia Pte Ltd」と各々記載されている。
(2)乙第3号証、乙第5号証及び乙第6号証について
乙第3号証は、使用商品が2012年4月9日に医療機関から通常使用権者に注文された旨を示す注文書(写)であって、上端部に「DAVIDA」の標章、下端部に通常使用権者の名称が明示されている。また、中段には、品名として「Melafade-T(メラフェードT)」の記載がされている。
乙第5号証は、2012年5月1日付けで通常使用権者が医療機関に対して使用商品を納品した旨の納品書(写)であり、「製品名」の欄の一番上に「Melafade-T」の記載がされており、中段に通常使用権者の名称が記載されている。
乙第6号証は、厚生労働大臣あての、「(医薬品)輸入報告書」(乙第6号証の1)であり、それと同時に提出した資料の「商品説明書」(乙第6号証の2)には、「化学名、一般的名称又は本質」の欄に「医薬品」と記載されている。
(3)乙第8号証について
乙第8号証は、被請求人と通常使用権者の記名押印のある確認書であり、被請求人が、本件商標の登録を受けた後、遅くとも平成16年12月に、メトラスに対し、本件商標に関する通常使用権を許諾した旨の記載がされている。
4 以上の認定事実に基づき、以下判断する。
(1)使用商品について
乙第2号証及び乙第12号証に示された使用商品「Merafade T」は、乙第6号証によれば、「医薬品」として、厚生労働大臣に対し、輸入報告されたものであることが認められるから、本件商標の指定商品「薬剤」に含まれるものである。
(2)使用商標について
乙第2号証及び乙第12号証によれば、使用商品の包装箱には、「DAVIDA」の欧文字からなる標章が付されていることが認められる。
一方、本件商標は、「ダビダ」の片仮名及び「DAVIDA」の欧文字を上下二段に表してなるものである。
そして、「DAVIDA」の文字から生じる称呼についてみると、上記第3「2 平成25年2月21日付け口頭審理陳述要領書における陳述」中の(5)に示された「?avid?」という綴りの英単語では、中間「vi」は全て「ビ」と発音されている(ランダムハウス英語辞典(CD-ROM版))ことからすれば、「DAVIDA」の文字からは「ダビダ」の称呼が生じるとみるのが自然である。
また、「ダビダ」及び「DAVIDA」の文字からは特定の観念を生じないから、両者は、観念において異なるところはない。
そうすると、使用商標「DAVIDA」と本件商標とは、「ダビダ」の称呼を共通にし、外観も「DAVIDA」の欧文字において共通するものであり、観念においても異なるものではないから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標というのが相当である。
(3)使用者について
被請求人は、メトラスが本件商標の通常使用権者であると主張しているところ、確認書(乙第8号証)は、互いの代表者の記名、捺印をもって作成されたものであって、その確認内容を否定する合理的な理由は見いだせないから、メトラスが本件商標の通常使用権者であることを認めて差し支えない。
(4)メトラスの行為が、「商品又は商品の包装に標章を付したものを引き渡す行為」(商標法第2条第3項第2号)に該当するか否かについて
本件において、商標法第2条3項第2号の「商品又は商品の包装に標章を付したものを引き渡す行為」に該当するというためには、輸入された使用商品が、メトラスを経由して医師又は医療機関に納品されたことを被請求人(商標権者)が証明しなければならない。
これについて被請求人は、上記第3「2 平成25年2月21日付け口頭審理陳述要領書における陳述」中の(2)キのとおり「…使用商品は輸入報告及び確認を経て(乙第6号証の1)、同年5月1日に、通常使用権者から聖心美容外科に納品された(乙第5号証)。なお、厚生労働大臣宛に輸入報告を行ったのは、自然人である医師Xであるが(乙第6号証の1)、厚生労働省による確認後に、使用商品は、通常使用権者に引き取られ、通常使用権者による検品を経て、聖心美容外科に納品された(乙第5号証)。」と主張し、同(3)では「通常使用権者は、輸入報告(乙第6号証の1)後、引き取った使用商品を現実に支配し、検品を行い、検品終了後、需要者に引き渡し、使用商品のうえの現実の支配を移転しており、これは同項第2号の使用行為に該当する。」旨主張している。
また、被請求人は、上記第3「3 平成25年3月22日差し出しの第2口頭審理陳述要領書における陳述」の(2)のとおり、「…使用商品が我が国に到着したならば、その旨が輸送業者から通常使用権者に報告される。輸送業者から報告を受けた通常使用権者は、輸入報告書の申請を行う(いわゆる薬監証明書の申請と承認)。そして、輸入報告書が承認された時点で、通常使用権者は、前記輸送業者に輸入報告書が承認された旨を連絡する。連絡を受けた輸送業者は、宅配便にて通常使用権者に使用商品を送付する。前記輸送業者から通常使用権者に使用商品が送付された後、通常使用権者は、送付された使用商品を自社にて検品する。そして、納品書(乙第5号証)と共に、医師又は医療機関に使用商品を納品する。…上記取引の内容について、通常使用権者が証明書(乙第22号証)を作成した。当該証明書には、通常使用権者が医師に使用商品を引き渡す行為の詳細が証拠書類と共により具体的に記載されている。」と主張している。
さらに、被請求人は、上記第3「4 平成25年4月5日付け上申書における主張」の(2)のとおり、「乙第1号証、乙第2号証の商品は、宅配便により医療機関へ納品するか、あるいは、通常使用権者の従業員が医療機関へ持参している。乙第24号証は、乙第5号証と同様な納品書を添付して、乙第1号証、乙第2号証の商品を宅配便で納品した際の伝票の控えである。」旨主張している。
しかしながら、要証期間内に、輸送業者が宅配便でメトラスに使用商品を送付するなどして、それをメトラスが受領し、その後、医師又は医療機関に使用商品を納品(引き渡し)したことが明らかとなる具体的な事実は確認できない。
なお、被請求人は、乙第24号証は、乙第5号証と同様な納品書を添付して、乙第1号証、乙第2号証の商品を宅配便で納品した際の伝票の控えである旨主張しているが、該宅配便の伝票の控えは、平成25年3月14日に宅配業者が受け付けたものであって、要証期間内に使用商品を納品したことを証明するものとはいえない。
そうすると、メトラスの行為は、「商品又は商品の包装に標章を付したものを引き渡す行為」に該当するということはできない。
(5)メトラスの行為が、「商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当するか否かについて
これについて被請求人は、上記第3「2 平成25年2月21日付け口頭審理陳述要領書における陳述」中の(3)で「通常使用権者は、本件商標を付した取引書類、即ち、注文書(乙第3号証)を、受注のために需要者に頒布しており、同項第8号の使用行為に該当する。」と主張し、また、上記第3「4 平成25年4月5日付け上申書における主張」の(1)のとおり、「乙第3号証の注文書は、医療機関から乙第1号証、乙第2号証の商品を注文したい旨の連絡を受けて、通常使用権者が当該医療機関に対してファクシミリ又はeメール等により頒布している。乙第23号証は、乙第3号証と同様な注文書をファクシミリで医療機関に頒布した際のファクシミリ送信票である。」と主張している。
しかしながら、乙第3号証は、品名、注文数等の必要事項が記載された医療法人からの「注文書」であって、そこには「DAVIDA」の欧文字標章の記載が認められるとしても、要証期間内に、商品注文用の「注文書用紙」が通常使用権者によって作成され、かつ、ファクシミリ等により、受注のために医療機関に頒布されたと認めるに足りる事実は確認できない。
なお、被請求人は、乙第23号証は、乙第3号証と同様な注文書をファクシミリで医療機関に頒布した際のファクシミリ送信票である旨主張しているが、「注文書」の内容が明らかでなく、かつ、2012年12月11日のものであるから、要証期間内に「注文書」が頒布されたことを証明するものとはいえない。
そうすると、メトラスの行為は、「商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為」に該当するということはできない。
(6)小括
以上によれば、被請求人(商標権者)の通常使用権者であるメトラスは、商品「医薬品」について、「DAVIDA」の商標が付された商品を取り扱っていることはうかがえるものの、被請求人が主張する商標法第2条第3項第2号及び同第8号に該当する行為を行っていることは確認できない。

3 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、その取消請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていることを証明したとは認められず、また、本件商標を使用していないことについて、正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その指定商品中「結論掲記の指定商品」について、取り消すべきである。
別掲
審理終結日 2014-03-03 
結審通知日 2014-03-05 
審決日 2014-03-28 
出願番号 商願2004-37810(T2004-37810) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y05)
最終処分 成立 
特許庁審判長 大橋 信彦
特許庁審判官 渡邉 健司
大森 健司
登録日 2004-11-26 
登録番号 商標登録第4820924号(T4820924) 
商標の称呼 ダビダ、ダバイダ 
代理人 特許業務法人高橋特許事務所 
代理人 福田 秀幸 
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