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審判番号(事件番号) データベース 権利
取消2013300065 審決 商標

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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z03
管理番号 1287602 
審判番号 取消2013-300415 
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-05-21 
確定日 2014-04-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第4253773号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4253773号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4253773号商標(以下「本件商標」という。)は、「Christina」の欧文字、「クリスティーナ」の片仮名及び「くりすてぃーな」の平仮名を三段に書してなり、平成10年3月10日に登録出願、第3類「せっけん類,化粧品」を指定商品として、同11年3月19日に設定登録され、その後、同20年10月28日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁(平成26年2月24日付け口頭審理陳述要領書を含む。)を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、審判の請求の登録前3年以内(以下「本件要証期間」という。)に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもがその指定商品についての登録商標を使用していないものであるから、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人が提出した乙第1号証?乙第10号証は、商標法第50条第2項の要件を満たしてはいない。
乙第1号証には、商標「クリスティーナ」「CHRISTINA」と商品「シャンプー」「ヘアパック」の記載は認められるが、当該商品ラベルが何時、何処で、どのような商品に貼付されたのかは不明である。
乙第2号証及び乙第3号証には、商品「シャンプー」「ヘアパック」の記載は認められるが、当該商品カタログが、何時、何処で、どのように配布されたのかは不明であり、また、商標の記載はない。
乙第4号証には、商標「クリスティーナ」と商品「シャンプー」の記載は認められるが、発行日が平成20年10月23日であるため、本件要証期間の要件を満たしていない。
乙第5号証には、商標「クリスティーナ」と商品「シャンプー」の記載は認められるが、当該注文書が何時発注されたのかは不明である。
乙第6号証には、商標「クリスティーナ」と商品「シャンプー」の記載は認められるが、メールの送信日付が2009年2月19日であるため、本件要証期間の要件を満たしていない。
乙第7号証には、商標「クリスティーナ」と商品「シャンプー」の記載は認められるが、何時、誰宛に注文されたのかは不明である。
乙第8号証には、商標「クリスティーナ」と商品「シャンプー」の記載は認められるが、メールの送信日付が2009年2月11日であるため、本件要証期間の要件を満たしていない。
乙第9号証には、商標「クリスティーナ」と商品「シャンプー」の記載は認められるが、請求明細書の発行日が平成21年5月20日であるため、本件要証期間の要件を満たしていない。
乙第10号証には、商標「クリスティーナ」「CHRISTINA」と商品「シャンプー」の記載は認められるが、当該商品ラベルが、何時、何処で、どのような商品に貼付されたのかは不明である。
(2)以上のとおり、被請求人が答弁書にて提出した乙第1号証?乙第10号証のいずれも本件要証期間という要件を満たしていないので、被請求人は、本件商標の使用を証明したことにはならない。また、不使用についても正当な理由が存在することは明らかにされていないから、本件商標は、「第3類 せっけん類、化粧品」の不使用を理由に取消しを免れない。
3 口頭審理(平成26年2月24日付け口頭審理陳述要領書)における陳述
(1)乙第11号証?乙第13号証について
乙第11号証は、本件商標の一部を含む標章がウェブサイトによって広告されたパウチタイプの包装フィルムに表示されていることが確認できる。ウェブサイトによる広告日は、不明である。
乙第12号証の「商品別売上明細表」の第3頁?第9頁の商品「桜川コンチェルト・ヘアカラー」(商品番号SG-311、SG-312、SG-324、SG-325、SG-331、SG-341、SG-360)については、本件要証期間に何らかの行為がなされたようである。
乙第13号証の「精算書」は、本件要証期間に何らかの行為がなされたようである。
しかるに、乙第12号証の第3頁?第9頁には、商品実体もあらわれていないし、当該「商品別売上明細表」中にも本件商標の表示が見られない。また、「商品別売上明細表」は、被請求人側の内部資料にすぎないため、商品売上日は、いかようにも改竄が可能である。乙第13号証は、いかなる商品であるかも不明であるし、本件商標の表示もない。
よって、これらの証拠方法によっても本件商標の使用は立証されていない。
(2)被請求人が提出の口頭審理陳述書に対する反論
ア 被請求人は、インターネットのウェブサイト(乙11)を通じて乙第1号証及び乙第10号証の商品ラベルが付された商品「桜川クリスティーナ・シャンプー」を広告した事実を主張し、これを証するものとしてウェブサイト用データを印刷した書面を乙第11号証として提出した。
確かに、本件商標の一部を含む標章「CHRISTINA」が「シャンプー」に表示されているが、このウェブサイト用データの画像中には、当該画像が不特定多数の者が閲覧できたとする閲覧時期を示す年月日が明示されていない。また、このことを補充する他の証拠方法の提出もない。このため当該商品について、いつ頃から、どのくらいの期間にわたり広告掲載をなされたのか不明なままである。
被請求人は、当該ウェブサイトから当該商品の注文を行うことが可能であったと主張するが、当該ウェブサイトでの受発注時の電子情報が残っているはずである。
また、通常、ネットショッピングはお客購入のための画像を備えて円滑にネットショッピングが行えるように準備している。この画像面が乙第11号証と併せて提示されていないことから、そもそも、当該ウェブサイトは、不特定多数のお客から商品の受注を受けるネットショッピングの体裁を整えていなかったと考えられる。
被請求人は、当該ウェブサイトにおいて当該商品の注文を受けることができない状況後も、ただちに同商品の掲載を停止した訳ではなく再開を見越して広告をおこなったと主張するが、当該ウェブサイト画像が閲覧できた時期が不明であるから、何時商品注文を停止したのかも、注文停止日からどのくらいの期間、当該ウェブサイトを提供され続けたのかも全く不明である。また、他の乙号証を見てみても、被請求人が需要者及び取引者に対して「桜川クリスティーナ・シャンプー」について注文を再開する趣旨の文言は全く見出せない。
イ 被請求人は、「SAKURAGAWA」(桜川)が商品のシリーズ名であり、乙第2号証及び乙第3号証の商品カタログとの関係から、需要者及び取引者は本件商標を認識しうると主張している。
しかしながら、そもそも、乙第2号証及び乙第3号証の各商品カタログ中には、「桜川クリスティーナ・シャンプー」と称される商品の掲載は認められない。
被請求人は、「桜川クリスティーナ」の「シャンプー」と、乙第2号証の商品と乙第3号証に掲載の商品「シャンプー」とを、明らかに別タイプの商品として取り扱っている。
ウ 被請求人は、乙第11号証のウェブサイトの広告を介して商品が購入された事実が注文日不明の乙第5号証に示されていると主張する。乙第5号証の「注文書」にある商品が、当該ウェブサイトを介してなされた事実を直接は証するものは何も示されていないことから、乙第11号証との関連性は不明である。
新たに提出された乙第11号証に掲載の「桜川クリスティーナ・シャンプー」は、乙第2号証及び乙第3号証の商品カタログに掲載していることを確認できない。
エ 被請求人は、乙第12号証及び乙第13号証と、乙第4号証?乙第9号証とを併せてみれば、本件商標が「桜川クリスティーナ・シャンプー」(商品番号SC-211:乙4?乙9)について使用されたと主張している。
しかしながら、乙第12号証の「商品別売上明細表」に掲載された商品は、「コンディショナー」(商品番号SG-202)、「フェース7シャンプー」(商品番号SG-212)及び「ヘアカラー」(商品番号SG-311、SG-312、SG-324、SG-325、SG-331、SG-341、SG-360)のみで、「桜川クリスティーナ・シャンプー」(商品品番SG-211)は、当該「商品別売上明細書」に掲載はない。
次いで、乙第13号証の「精算書」にいたっては、本件商標の表示もまたいかなる商品であるかも不明であるから、乙第4号証ないし乙第9号証との関連性は全く不明である。
(3)権利濫用について
被請求人は、本件商標に対する審判請求が、権利の濫用であるから棄却されるべきであると主張する。
権利濫用の理由
(ア)被請求人は、審判便覧53-01の「請求人適格の緩和」の後段にある『「なお、請求人適格を「何人」にすることとしても、当該審判の請求が被請求人を害することを目的としていると認められる場合には、その請求は、権利濫用として認められない。』とある、この点を根拠に、請求人による本審判請求が権利濫用であると主張する。
しかしながら、被請求人は、請求人が被請求人を明らかに害することを目的としている事実について何ら立証されていない。
被請求人は、「口頭審理陳述要領書」において、請求人の保護法益に関するなかで、請求人の立場や、請求人の言動に関して以下の旨を主張する。
「請求人は、自らの職業等を本件において明らかにしていないものの、本件審判請求後、自ら本件商標を使用し、本件商標と同一ないし類似の商標を出願した事実が確認できない。また、請求人の個人名、ないし請求人が代表者である会社において、本件商標の指定商品たる第3類『せっけん類,化粧品』を製造販売している形跡もない。それどころか、請求人は、過去に、取消2011-301061及び取消2011-301145の不使用取消審判を請求している。この点、上記2点の指定商品又は指定役務および本件商標の指定商品には何らの接点もなく、請求人が上記3つの商標権の全てについて、何らかの利害関係を有しながら不使用取消審判請求を行ったものとは考えられない。・・・以上から、請求人には、本件商標が取り消されることについて期待すべき何らの保護法益もないことが明らかである。」
しかして、請求人が、自らの職業等を本件において明らかにしていないこと及び、仮に、本審判請求後、自ら本件商標を使用し、本件商標と同一又は類似の商標を出願しないこと、また、請求人の個人名、ないし請求人が代表者である会社において本件商標の指定商品である「せっけん類,化粧品」を製造販売していないとしても、被請求人を害することにはならない。
また、請求人が、他の取消審判請求を行ったとしても、これらの事件は、被請求人が取り扱う商標と同一または類似でもないし、さらに、これらの取り消しに係る指定商品や指定役務は、被請求人の第3類の指定商品と類似しない。よって、これらの事件の存在は、被請求人を何ら害することにはならない。
以上のとおり、被請求人の主張からみても、請求人が、被請求人を明らかに害する事実は見出せない。
(イ)被請求人は、請求人には本件商標が取り消されることについて保護法益はないとし、本件商標の保護法益については、「すなわち被請求人には、平成26年中には本件商標を使用する予定があったのであり、このような将来の使用に対する信用の蓄積は商標法第1条第1項に照らし、保護されるべきである。特に、本件においては、被請求人は、本件要証期間以前において、本件商標を付したシャンプーとヘアパックを販売し、非常に人気を博していたものであり、その時点において本件商標に対する信用を蓄積していたから、その製造販売を再開することによる将来の信用の蓄積は、新たに販売する製品とは比べようもない程大きいものとなることは明日である。以上のように、商標法が将来の使用に対ずる信用の蓄積も保護することとした商標権の本来の趣旨に照らすと、被請求人には、未だ本件商標について保謨されるベき期待利益が存すると言うべきである。」と主張して、これらの保護法益を比較衡量すれば、本件商標のそれが上回り、結局、請求人の本審判請求は権利濫用であると結論付けている。
しかし、そもそも商標法第50条第1項における不使用取消審判の請求人適格について、「商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第六十八)」で「利害関係人」から「何人」にも認めることとしたのは、「工業所有権逐条解説(第19版)」によれば、主に次の埋由によるものである。
a 不使用取消審判制度は、商標法の変遷の中では公益的な観点から職権又は審査官の審判請求により不使用商標の取消がなされていたこともあり、公益的な重要性は元々高いといえるうえに、近年、不使用の登録商標の累積により、他人の商標選択の幅の狭小化、特許庁における審査負担増・審査遅延等の事態が生じており、これを抑制する手段として当該審判の公益的重要性が一層高くなってきていること。
b 「利害関係」の有無について争われることにより審理の結論が出るのが遅れるというケースも存在すること(以下省略)。
上記逐条解説の趣旨にてらしてみれば、被請求人が、本件商標について請求人に利害関係を必要であると主張することは、不合理であり本法の立法趣旨に反する。
請求人には、利害関係が問われないと解することが相当である。利害関係が問われなければ、請求人の保護法益の有無も問題にならず、比較衡量することはできない。比較衡量できなければ、請求人による本件審判請求が権利濫用と結論付けることもできない。
(4)結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第50条に規定する使用の事実を証明していない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由(平成26年2月13日付け口頭審理陳述要領書及び上申書を含む。)を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第15号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標を使用した商品について
本件商標を使用した商品は、第3類「せっけん類」に含まれる「シャンプー」及び第3類「化粧品」に含まれる「ヘアパック」であり、いずれも被請求人の「SAKURAGAWA」というシリーズの商品の一つとして製造販売されるものである(乙1?乙3、乙10)。乙第1号証、乙第10号証で示されるラベル等は、被請求人の依頼に基づき、外部業者により包装等に貼付される(乙4)。
(2)本件商標の使用事実
商品は、電話による注文、ファクシミリによる注文(乙5、乙7)、インターネットによる注文(乙6、乙8)により、又は直接訪問等した際に美容室から注文を受けて製造販売される。特に、本件商標を使用した「シャンプー」については、月毎に連続して注文を受けるなど、需要者からも支持されている商品である(乙9)。
(3)以上のとおり、本件商標は、請求に係る商品第3類「せっけん類」に含まれる「シャンプー」、及び、第3類「化粧品」に含まれる「ヘアパック」、について使用されたものである。
2 口頭審理(平成26年2月13日付け口頭審理陳述要領書)における陳述
(1)本件商標が表示された商品ラベルの付された商品は確認できないとの暫定的見解について
本件商標の表示がある商品ラベルが付された商品を示す証拠として、乙第11号証を提出する。これは、被請求人のウェブサイト用データを印刷したものである。
これには、商品を撮影した写真が表示されており、当該商品に添付された商品ラベルには、本件商標と社会通念上同一の商標「CHRISTINA」が表示され、そして、商品が「シャンプー」であることが確認できる。つまり、指定商品の包装に標章を付した事実があることが示されている(商標法第2条第3項第1号)。
乙第11号証においては、「桜川 クリスティーナ・シャンプー」という表示があり、これは、当該商品が、被請求人のカタログで示した「SAKURAGAWA」(桜川)というシリーズの商品の一つとして販売されたことを示すものであって、その内容をインターネットによる広告として提供した事実、つまり、商品に関する広告を電磁的方法により提供した事実がある(商標法第2条第3項第8号)。
なお、同ウェブサイト用データは、実際にインターネット上でアクセス可能なウェブサイトにおいて掲載されたものであるが、ウェブサイトは停止状態にあり、現在はインターネット上で閲覧することはできない。また、同ウェブサイト用データには、「ただいま注文をお受けできません」との表示がされているが、これは最後の更新情報であり、商品販売期間中は、同ウェブサイトからも商品の注文を行うことが可能であった。また、同表示からは、被請求人による実際の販売の中断後にも、直ちに同商品の掲載を停止した訳ではなく、販売の再開を見越して、本件商標を付した商品が広告されていたことが認められる。
(2)商品カタログにおいて、本件商標及び本件商標の付された商品が確認できないとの暫定的見解について
本件商標を付した商品は、「SAKURAGAWA」(桜川)というシリーズの商品の一つであり、乙第2号証、乙第3号証のカタログには掲載されていないが、需要者・取引者からの注文書において、「”桜川” クリスティーナ・シャンプー」と表示された事実からも明らかなとおり(乙5等)、本件商標は、需要者・取引者において被請求人のシャンプーの一商標であることが実際に認識されている。
このことは、カタログ以外の方法で、商品の広告を行っていたからに他ならず、乙第11号証のウェブサイト用データを用いた商品に関する広告の電磁的方法による提供の事実がその一例といえる。
(3)乙第4号証?乙第9号証は、本件要証期間(平成22年6月10日?平成25年6月9日)の取引書類とは認められないとの暫定的見解について
新たに、乙第12号証として商品別売上明細表、また、乙第13号証として清算書を提出する。これらに示されるとおり、本件要証期間において、少なくとも、平成22年7月9日までは、「SAKURAGAWA(桜川)」関連の商品の取り引きがされた事実がある(乙12)。本件商標を付した商品は、「SAKURAGAWA(桜川)」というシリーズの商品の一つである。
ア ラベル等は、被請求人の依頼に基づき外部業者により包装に貼付され、その証拠として提出した乙第4号証(商品の「充填・包装記録」)に示すところによれば、ラベルが495枚、商品内容であるシャンプーの調合容量は500kgであり当該シャンプーの容量は1000mlであるところ、ラベルの枚数に近い商品が(約495個の1000mlのシャンプーが)、実際に製造・商品化されたであろうことが、無理なく推認できる。
イ 乙第5号証ないし乙第9号証の取引書類でも示されるとおり、本件商標を付した商品の1回の取り引き数量は決し多くはない(1回の取り引きで1個から20個程度である)。
ウ 第12号証として提出した商品売上明細表の中で、少なくとも、平成22年7月9日までは、「SAKURAGAWA(桜川)」関連の商品の取り引きがされた事実があったことが明らかである。
エ 本件商標を付した商品の製造・商品化を示す乙第4号証の日付(平成20年10月23日)から、「SAKURAGAWA(桜川)」関連の商品の取引きが確認できる日付(平成22年7月9日)までは、約1年9ヶ月の期間であり、1回の取り引き数量は決して多くはない本件商標を付した商品が、平成22年7月9日頃まで、シリーズ品である「SAKURAGAWA(桜川)」関連の商品の一つとして、販売されていたであろうことは、無理なく推認できる。
実質的に見た場合、本件要証期間前には明らかな商標の使用事実が確認でき、かつ、本件要証期間においても商標が使用されていたと無理なく推認できる状況下で、仮に提出した証拠資料の各ーが単独では直接的な書証とは評価されない場合でも、取引書類等全体に基づき、総合的に見た場合は、美容室を主な取引先として、1回当たりの取り引き数量は決して多くはないものの、本件商標を付したシャンプーの販売が、本件要証期間を含む少なくとも平成22年7月9日頃まではされたとみることについて、合理的な疑義はないというべきである。
(4)本件審判請求が不使用取消請求権の権利濫用であること
ア 仮に被請求人による本件要証期間での本件商標の使用が認められないとしても、本件の具体的事情に照らすと、請求人の本件審判請求は、権利の濫用として棄却されるべきである。
イ そもそも不使用取消請求権を認めた趣旨は、商標法上の保護は、商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるのが本来的な姿であるから、一定期間登録商標の使用をしない場合には保護すべき信用が発生しないかあるいは発生した信用も消滅してその保護の対象がなくなると考え、他方、そのような不使用の登録商標に対して独占排他的な権利を与えておくのは国民の一般の利益を不当に侵害し、かつ、その存在により権利者以外の商標使用希望者の商標の選択の余地を狭めることになるから、請求をまってこのような商標登録を取り消すことにした点にある(工業所有権法逐条解説〔第19版〕)。
その一方、商標法第3条第1項柱書では、「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標について」商標登録を受けることができると規定するところ、ここでいう「使用する」とは、現在使用しているもののみならず、使用をする意思があり、かつ、近い将来において信用の蓄積があるだろうと推定されるものも含む(同)。
つまり、我が国の商標法は、現在の使用による信用の蓄積に対する保護のみならず、将来の使用による信用の蓄積をも保護することを明確にしているのである。
ウ しかるに、本件において、被請求人は、本件要証期間においても営業を継続しており、本件商標を使用していたことについては、審判事件答弁書にて主張したとおりである。ただ、3年以上も前の使用の事実であり、使用日時まで特定された明確な書証が残っていないにすぎない。
また、被請求人は、本件要証期間である平成23年11月25日の会議において、一旦製造が中止されていた本件商標を付した商品の製造販売について、平成27年4月という近い将来に再開することを確認していた。なお、販売の再開が平成27年4月と予定されていたから、製造の発注、広告宣伝等は、当然それよりも早い時期、少なくとも平成26年中には行う予定であった。
すなわち、被請求人は、平成26年中には本件商標を使用する予定があったのであり、このような将来の使用に対する信用の蓄積は、商標法第3条第1項に照らし、保護されるべきである。特に、本件においては、被請求人は、本件要証期間以前において、本件商標を付したシャンプーとヘアパックを販売し、非常に人気を博していたものであり(乙1?乙3、乙10)、その時点において本件商標に対する信用を蓄積していたから、その製造販売を再開することによる将来の使用に対する信用の蓄積は、新たに販売する製品とは比べようもない程大きいものとなることは明白である。
以上のように、商標法が将来の使用に対する信用の蓄積も保護することとした商標権の本来の趣旨に照らすと、被請求人には、未だ本件商標について保護されるべき期待利益が存すると言うべきである。
エ 一方、商標法第50条不使用取消審判の請求人適格については、平成8年以前は利害関係人に限られていたものの、同年の商標法改正により、何人であっても請求人適格を認めることとし、その旨が同条第1項に明記された。
本件では、大阪府に在住する個人である請求人が、本件商標の不使用取消を請求している。しかし、請求人はその職業や勤務する会社名等を明らかにしておらず、本件商標の指定商品たる「第3類 せっけん類,化粧品」について、業として本件商標を現在ないし将来において使用するものか否か、明らかでない。
この点、審判便覧53-01では、請求人適格を「何人」にすることとしても、当該審判の請求が被請求人を害することを目的としていると認められる場合には、その請求は、権利濫用として認められない旨が規定されている。
そこで思うに、民法第1条第3項権利濫用法理を定め、権利者の権利行使を制限した趣旨は、特殊の権利義務で結ばれていない私人間の利害の調節を行うことにある(「新訂民法総則(民法講義1)」我妻榮著)。そして、商標権の行使についても権利濫用法理による利害の調整が必要であり、かつその基準は各種の権利についてできるだけ客観的に定めなければならない(同)。
とすれば、本件においても、審判便覧53-01にあたり、請求人の請求が権利濫用として認められないことになるか否かについて、上記のような商標法の趣旨に照らして認められる被請求人の保護法益と、本件商標が不使用により取消されることを期待する請求人の保護法益の比較衡量により決すべきであると解する(最判昭和40年3月9日板付事件判決、および「新コンメンタール民法(財産法)」松岡久和、中田邦博編)。
つまり、上記の比較衡量により、請求人の保護されるべき法的利益よりも被請求人のそれの方がはるかに大きいのであれば、請求人の本件請求は、自らには法的利益がない請求を行うことにより、被請求人の法的利益を害することになるから、審判便覧53-01にいう「当該審判の請求が被請求人を害することを目的としていると認められる場合」に該当し、請求人の本件請求は権利濫用として不成立とすべきである。
オ 被請求人が有する保護法益は、本件商標の過去の使用による信用の蓄積を前提とした、将来の使用による更なる信用の蓄積と、それによる経済的利益である。
しかるに、請求人は、自らの職業等を本件において明らかにはしていないものの、本件審判請求後、自ら本件商標を使用したり、本件商標と同一ないし類似の商標を出願したりした事実は確認できない。また、請求人の個人名、ないし請求人が代表者である会社において、本件商標の指定商品たる第3類「せっけん類,化粧品」を製造販売している形跡もない。
それどころか、請求人は、過去に、取消2011-301061および取消2011-301145の不使用取消審判を請求している。
この点、上記2件の指定商品または指定役務、および本件商標の指定商品には何らの接点もなく、請求人本人が、上記3つの商標権の全てについて、何らかの利害関係を有しながら不使用取消請求を行ったものとは考えられない。
カ 以上から、請求人には、本件商標登録が取り消されることについて期待すべき何らの保護法益もないことが明らかである。
一方、本件商標登録が取り消されると、被請求人は今後、当該登録に係る商標権に基づく本件商標の使用はできなくなる。そうなると、過去における本件商標に蓄積された信用を基礎とした将来における本件商標の使用、および将来に亘る本件商標への更なる信用の蓄積と、それによる経済的利益の獲得は不可能となるから、被請求人の保護法益に加わる被害は甚大である。
つまり、本件請求において、請求人には保護法益が皆無である一方、被請求人に認められる保護法益は請求人のそれと比してあまりにも大きいのである。
キ 以上から、請求人の本件請求は、自らには何らの利益もないにもかかわらず、被請求人の本件登録商標を取り消すことで、これまで被請求人が蓄積してきた本件商標に対する信用を無にし、被請求人の本件商標に係る利益を害する目的でなされているとしか評価できない。
よって、上記審判便覧53-01に照らし、請求人の本件請求は、権利濫用として直ちに棄却されなければならない。
(5)むすび
以上のとおり、万が一、使用の立証ができていないとしても、請求人による本件審判請求は被請求人の有する法益を害する目的でなされたものとの謗りを免れないから、権利濫用として不成立とされるべきである。
3 平成26年2月13日付け上申書について
本件審判に対して、仮に、本件商標の本件要証期間の使用の立証が十分でないことを理由に、使用がされていなかったと評価される場合であっても、被請求人には、正当理由というべき事情がある。
被請求人は、いわゆる家族経営により運営されている有限会社であり、平成23年頃から休業状態に入り、その経緯の一つとして、会社運営に欠かせない者が平成23年4月に病に倒れ、後遺症によるリハビリ生活を余儀なくされたという事情があった。しかし、社会復帰を目指し、平成23年11月26日に行われた会議において、顧客からも強い要望があった本件商標を付した商品を含む複数の商品を中心に、販売再開を目指している。
被請求人の会議の議事録を、乙第14号証として提出する。
販売再開を望む需要者と取引者のために商標権を維持する必要性と、商標権者の責めに帰すことのできないやむを得ない事情が存在し、このような場合に、商標の使用の立証が不十分であるとして、不使用を理由に商標登録を取り消すことは、商標権者にとって酷というべきである。
そもそも、不使用商標を審判で取り消すことができるとした制度趣旨は、「不使用の登録商標に対して排他独占的な権利を与えておくのは国民一般の利益を不当に侵害し、かつ、その存在により権利者以外の商標使用希望者の商標の選択の余地を狭めることになる」点である。
実質的に見た場合、本件要証期間前には明らかな商標の使用事実が確認でき、かつ、本件要証期間においても商標が使用されていたと無理なく推認できる状況下で、かつ、使用再開に向けて鋭意努力をしている被請求人が本件商標を維持することが、国民一般の利益を不当に侵害すると評価すべきではなく、かかる状況において、被請求人の商標登録を取り消してまで優先すべき同一・類似の商標に関する他人の利益を見出すことはできず、それに鑑みれば、上記の事情は正当理由と評価すべきものと思料する。

第4 当審の判断
1 被請求人提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 乙第1号証は、橙色のグラデーションの中に「クリスティーナ シャンプー」、「CHRISTINA」、「SHAMPOO」の文字が表示された四角形のラベルと、緑色のグラデーションの中に「クリスティーナ ヘアパック」、「CHRISTINA」、「HAIR PACK」の文字が表示された四角形のラベルであり、これには、他に「SAKURAGAWA」、「発売元 有限会社ビーコン・コーポレーション」及び「製造販売元 株式会社アバンス」の記載はあるが、ラベルの使用時期を特定する記載は見当たらない。
イ 乙第2号証及び乙第3号証は、「ヘアカラー」商品の商品カタログであり、これには、「SAKURAGAWA」、「コンチェルトヘアカラー」、「(有)ビーコン・コーポレーション」等の記載はあるが、本件商標の表示及び使用時期を特定する記載は見当たらない。
ウ 乙第4号証は、「充填・包装記録」と題する業務記録である。これには、発行日として平成20年10月23日の日付があり、「商品名」の欄に「クリスティーナ シャンプー(1,000ml)」、「調合数量」の欄に「500Kg」、「資材名」及び「合計」の欄に、「チアパック(A-10G)」が「494」、「キャップ」が「600」、「ラベル」が「495」等の記載がある。
エ 乙第5号証?乙第8号証は、被請求人あてのファックス、または、メールによる注文書であるところ、これらには、「“桜川”クリスティーナ・シャンプー」等の記載はあるものの、日付が記載されていないか、また、日付があったとしても本件要証期間以前の「2009年2月11日」、「2009年2月19日」の日付が記載されている。
オ 乙第9号証は、被請求人から「たみこ美容室」あての平成21年5月20日締切分の「請求明細書」である。これには、「日付」、「商品コード/商品名」、「数量」及び「金額」の欄に、「04.28」、「“桜川”クリスティーナ・シャンプー」、「2本」及び「2,400」の記載、「05.16」、「“桜川”クリスティーナ・シャンプー」、「3本」及び「3,600」の記載がある。
しかし、この「請求明細書」に記載された日付は、本件要証期間以前である。
カ 乙第10号証は、2穴の台紙に貼られた、「クリスティーナ シャンプー」、「CHRISTINA」、「SHAMPOO」の文字が表示された四角形のラベルであり、これには、他に「発売元 有限会社ビーコン・コーポレーション」及び「製造販売元 株式会社アバンス」の記載はあるが、使用時期を特定する記載は見当たらない。なお、手書きで、「1,050枚」の記載がある。
キ 乙第11号証は、シャンプーの詰め替え用のパッケージに、「CHRISTINA」の文字が表示されたラベルが付された商品が掲載されたウェブページ用のデータとされるものである。
これには、「桜川クリスティーナ・シャンプー ¥1,200(税別)」、「容量 1000ml」、「ただいま注文をお受けできません。」「(有)ビーコン・コーポレーション」の記載がある。
しかし、ウェブサイトが掲載されていた時期は不明である。
ク 乙第12号証は、平成22年4月1日?平成23年3月31日までの間の「桜川アミノベース・コンディショナー」、「フェーズ7シャンプー」等の商品別売上明細表である。
これには、平成22年7月9日以降の取引についての記載はなく、また、本件商標に係る商品の取引は認められない。
ケ 乙第13号証は、「ヤマトフィナンシャル株式会社」から被請求人にあてた「ご精算書」であるが、これは、運送時に委託集金した商品代金を被請求人に振り込み、精算したものであって、これには、「期間」が「自10年7月10日 至10年7月16日」、「お振込日」が「10年7月21日」の記載があり、乙第12号証の商品別売上明細表中の取引に係るものである。
コ 乙第14号証は、平成23年11月26日付けの被請求人会社の会議の議事録である。これには、「有限会社ビーコン・コーポレーションは現在休業状態になっているが、将来どうすべきかを話し合った。/矢野 幹彦が平成23年4月に脳梗塞をおこし、後遺症が若干ある為、現在リハビリに専念しているが、今後4年で社会復帰し、再びわが社の営業マンとして活動したいと強く希望している。依って、矢野幹彦に協力するべく、矢野博也及び矢野麻理はその間に会社の財政面を立て直し、販売の再開ができるようにする。/この時、販売再開する商品は、以下の通りである。/1.“Christina Shampoo”/2.“Christina Conditioner”/3.“Christina Treatment”/・・・販売再開は、平成27年4月1日を目標にする。」の記載がある。
2 判断
(1)使用の事実の有無について
ア 上記1によれば、乙第4号証、乙第9号証?乙第10号証からは、平成20年10月23日に充填・包装したシャンプーの詰め替え用のパックに本件商標と社会通念上同一と認められる「CHRISTINA」、及び「クリスティーナ・シャンプー」の商標が使用され、平成21年5月16日頃まで、当該シャンプーが販売されていたことが認められるものである(他に、乙5?乙8)。
しかしながら、本件要証期間における本件商標の使用を証明する証拠は、一切見あたらない。
イ 被請求人は、「本件商標を付した商品の製造・商品化を示す乙第4号証の日付(平成20年10月23日)から、『SAKURAGAWA(桜川)』関連の商品の取引きが確認できる日付(平成22年7月9日)までは、約1年9ヶ月の期間であり、1回の取り引き数量は決して多くはない本件商標を付した商品が、平成22年7月9日頃まで、シリーズ品である『SAKURAGAWA(桜川)』関連の商品の一つとして、販売されていたであろうことは、無理なく推認できる。実質的に見た場合、本件要証期間前には明らかな商標の使用事実が確認でき、・・・本件要証期間を含む少なくとも平成22年7月9日頃まではされたとみることについて、合理的な疑義はないというべきである。」旨の主張をしている。
しかしながら、被請求人は、乙第12号証の平成22年4月1日?平成23年3月31日までの間の取扱商品ごとの売上明細表には、本件商標に係る商品の売上げを示すものはなく、提出された証拠からは、平成21年5月16日以降の販売事実を示す証拠はないことからすると、平成22年7月9日頃まで当該商品が販売されていたことを積極的に推認することはできない。また、乙第11号証のウェブページのデータが、いつ頃までインターネット上に配信されていたかも不明であり、加えて、これには、「ただいま注文をお受けできません。」と記載され、このウェブページが、当該商品の注文を受け付けるために掲載されていたものということができない。
ウ そうすると、提出された証拠からは、被請求人によって、本件要証期間において、商標法第2条第3項第1号、第2号及び同第8号に規定する商標の使用行為が本件商標について行われたものということはできない。
(2)権利の濫用について
被請求人は、本件の具体的事情に照らすと、請求人の本件審判請求は、権利の濫用として棄却されるべきであると主張する。
そして、その理由について、被請求人は、「審判便覧53-01では、請求人適格を『何人』にすることとしても、当該審判の請求が被請求人を害することを目的としていると認められる場合には、その請求は、権利濫用として認められない旨が規定されている。民法第1条第3項権利濫用法理を定め、権利者の権利行使を制限した趣旨は、特殊の権利義務で結ばれていない私人間の利害の調節を行うことにある。そして、商標権の行使についても権利濫用法理による利害の調整が必要であり、かつその基準は各種の権利についてできるだけ客観的に定めなければならない。とすれば、本件においても、請求人の請求が権利濫用として認められないことになるか否かについて、商標法の趣旨に照らして認められる被請求人の保護法益と、本件商標が不使用により取消されることを期待する請求人の保護法益の比較衡量により決すべきであると解する。・・・つまり、本件請求において、請求人には保護法益が皆無である一方、被請求人に認められる保護法益は請求人のそれと比してあまりにも大きいのである。以上から、請求人の本件請求は、自らには何らの利益もないにもかかわらず、被請求人の本件商標を取り消すことで、これまで被請求人が蓄積してきた本件商標に対する信用を無にし、被請求人の本件商標に係る利益を害する目的でなされているとしか評価できない。よって、審判便覧53-01に照らし、請求人の本件請求は、権利濫用として直ちに棄却されなければならない。」旨述べている。
しかしながら、不使用取消審判の請求人適格について、商標法は、「何人」にも認めることとし、その旨を法文上明示しているものである。また、審判便覧において、「請求人適格を『何人』にすることとしても、当該審判の請求が被請求人を害することを目的としていると認められる場合には、その請求は、権利濫用として認められない。」とされているが、請求人は、当該審判の請求が被請求人を害することを目的としていると認められる直接的な事情について、何ら主張、立証していない。
そして、被請求人は、請求人が自らの職業等を本件において明らかにはしていないこと、本件審判請求後、自ら本件商標を使用したり、本件商標と同一ないし類似の商標を出願したりした事実がないこと、また、請求人の個人名、ないし請求人が代表者である会社において、本件商標の指定商品を製造販売している事実がないこと、その他、請求人が、過去に複数の不使用取消審判を請求していること、などを理由に、当該審判の請求が被請求人を害することを目的としていると主張しているが、このような主張は、利害関係の存在を求めるにほかならず、利害関係を必要とせず、その要件を「何人」にも認めることとしたその趣旨を没却することになる。
そうとすれば、被請求人の主張は採用することができず、その他、権利の濫用と認めるべき事実もないといわざるを得ない。
(3)商標法50条2項ただし書の「正当な理由」の有無について
ア 商標法50条2項ただし書にいう「正当な理由」とは、地震、水害等の不可抗力によって生じた事由、放火、破壊等の第三者の故意又は過失によって生じた事由、法令による禁止等の公権力の発動に係る事由その他の商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰すことができない事由(以下「不可抗力等の事由」という。)が発生したために、商標権者等において、登録商標をその指定商品又は指定役務について使用することができなかった場合をいうと解するのが相当である。
イ 被請求人は、「被請求人は、会社運営に欠かせない者が平成23年4月に病に倒れた等の事情があって、平成23年頃から休業状態に入った。販売再開のために商標権を維持する必要性と、商標権者の責めに帰すことのできないやむを得ない事情が存在し、このような場合に、商標の使用の立証が不十分であるとして、不使用を理由に商標登録を取り消すことは、商標権者にとって酷というべきである。よって、使用再開に向けて鋭意努力をしている被請求人が本件商標を維持することが、国民一般の利益を不当に侵害すると評価すべきではなく、かかる状況において、被請求人の商標登録を取り消してまで優先すべき同一・類似の商標に関する他人の利益を見出すことはできず、それに鑑みれば、上記の事情は正当理由と評価すべきものと思料する。」旨を主張している。
しかしながら、上記の事情は、企業運営における私的な理由によるものであって、このような事情をもって、前記不可抗力等の事由に該当するものと認めることはできない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、本件要証期間に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、請求に係る指定商品について使用されていなかったものといわざるを得ない。また、その使用をしていないことについて正当な理由があるものとも認められない。
なお、被請求人は、請求人が本件審判を請求することは権利の濫用であると主張しているが、前記(2)における事情があるとしても、請求人が本件審判を請求することが権利の濫用とはいうことができない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定に基づき、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決日 2014-03-19 
出願番号 商願平10-19569 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Z03)
最終処分 成立  
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 小川 きみえ
井出 英一郎
登録日 1999-03-19 
登録番号 商標登録第4253773号(T4253773) 
商標の称呼 クリスティーナ、クリスチーナ 
代理人 特許業務法人浅村特許事務所 
代理人 岡田 全啓 

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