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審決分類 審判 査定不服 商64条防護標章 取り消して登録 W0935
管理番号 1286567 
審判番号 不服2013-8708 
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-13 
確定日 2014-04-10 
事件の表示 商願2012-12969拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の標章は、登録第5052688号の防護標章として登録をすべきものとする。
理由 1 本願標章
本出願に係る防護標章登録を受けようとする標章(以下「本願標章」という。)は、「GREE」の欧文字を標準文字で表してなり、第7類、第9類、第11類、第16類、第35類及び第37類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務とし、登録第5052688号商標(以下「原登録商標」という。)の防護標章として、平成24年2月23日に登録出願され、その後、指定商品及び指定役務については、同年12月11日付け、同25年1月9日付け、同年5月13日付け及び同26年3月20日付け手続補正書により、第9類「業務用テレビゲーム機用プログラム,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM」及び第35類「広告業,商品の販売に関する情報の提供,電気通信機械器具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,電子応用機械器具及びその部品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に補正されたものである。

2 原登録商標
原登録商標は、本願標章と同一の構成からなり、平成18年7月27日に登録出願され、第9類、第35類、第36類、第38類、第39類、第41類ないし第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同19年6月8日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

3 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願標章は、他人がこれを本願指定商品・役務に使用しても商品・役務の出所について、混同を生じさせる程に需要者間に広く認識されていない。したがって、本願標章は、商標法第64条に規定する要件を具備しない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

4 当審においてした審尋
審判長は、平成26年2月7日付けで、請求人に対し、別掲のとおり、本願標章が商標法第64条に規定する要件を具備するか否かについて審尋を発し、意見を述べる機会を与えた。

5 審尋に対する回答の要旨及び請求人の対応
請求人は、本願の指定商品及び指定役務を前記1のとおりに補正するとともに、以下のとおり主張(回答)している。
(1)近年のパソコンや携帯電話・多機能電話等の急速な普及、ネットワーク環境の整備・普及といった事情から、かかる分野で使用される商標は、2年ないし5年程度で著名性を獲得しており、過去の登録例等に鑑みても、使用開始から10年という期間が、原登録商標の著名性獲得に短いとはいえない。
(2)原登録商標の周知性判断においては、必ずしも防護標章と物理的に同一であることまで厳格に要件を絞るべきではない。

6 当審の判断
本願標章に係る出願人と原登録商標に係る商標権者とは、本願標章に係る願書における出願人の記載及び原登録商標に係る商標登録原簿における商標権者の記載に照らせば、同一人と認められる。また、本願標章は、「GREE」の欧文字を標準文字で表してなるところ、原登録商標と同一の構成からなるものである。
また、請求人が提出した資料(甲第1号証ないし甲第169号証(枝番号を含む。))によれば、別掲2(1)のとおりの事実が認められる。
そうとすれば、原登録商標を構成する「GREE」の文字は、一部の辞書に、請求人のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)である旨の記載があり、また、請求人は、原登録商標の下で、2004年2月からSNSの運営を開始し、特に、携帯電話等のモバイル端末向けのゲーム(ソーシャルゲーム)の提供を主な事業とした請求人の売上高は、2012年1月ないし3月期において業界第1位、2012年は第3四半期までで約1,181億円、2012年3月時点での請求人の会員数は、我が国において約3,000万人であり、さらに、「GREE」の文字を使用したテレビCMの放送回数が、2010年4月から2013年1月において常に上位であること等から、原登録商標は、その指定役務中、「インターネット・携帯電話による通信を用いて行うゲームの提供」を表示するものとして、取引者、需要者間に広く認識されているものといえる。
そして、上記役務は、電気通信機械器具や電子応用機械器具を用いて提供される役務であるから需要者を共通にするものであり、また、ソーシャルゲームの作品は、業界用や家庭用(携帯用)のゲーム専用機のゲームと相互に移植等がされており、さらに、SNSやソーシャルゲームの画面を用いて広告や商品の販売に関する情報を表示することも一般に行われている。
以上からすれば、原登録商標と同一の構成からなる本願標章が、他人によって本願の指定商品又は指定役務について使用された場合には、これに接する取引者、需要者は、その商品又は役務があたかも請求人、又は、請求人と何等かの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように、その出所について混同を生じるおそれがあるものというべきである。
したがって、本願標章が商標法第64条に規定する要件を具備しないものとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(平成26年2月7日付け審尋の要旨)

1 本願標章に係る出願人と原登録商標に係る商標権者とは、本願標章に係る願書における出願人の記載及び原登録商標に係る商標登録原簿における商標権者の記載に照らせば、同一人と認められる。
また、本願標章は、「GREE」の欧文字を標準文字で表してなるところ、原登録商標と同一の構成からなるものである。

2 原登録商標の著名性について
(1)請求人は、本願標章が商標法第64条に規定する要件を具備するものである旨主張し、当審において、甲第1号証ないし甲第169号証(枝番号を含む。)を提出している。
そこで、請求人の提出に係る甲各号証についてみるに、以下の事実が認められる。
ア 原登録商標は、請求人が、SNS(「ソーシャル・ネットワーキング・サービス。リアル社会のネットワークを意識して、それに近いものをネット上に構築したサービス。」甲第3号証の1、甲第3号証の3、甲第26号証など)について使用するものとして、辞書等にも記載のあるものであり(甲第2号証)、該SNS(GREE)は、2004年2月にサービスを開始し、その運営を目的として同年12月に請求人であるグリー株式会社が設立され(甲第1号証、甲第24号証)、請求人は、2008年12月に東京証券取引所マザーズに上場(第1位)、2010年6月に東京証券取引所市場第一部に上場し、同月の該SNS(GREE)の会員数は2,000万人を超えており、2012年3月時点での請求人のグループ会員数は、欧米アジア等を含め約2億3,481万人、うち日本の会員数は12.9%(約3,000万人)であるといえる(甲第20号証、甲第24号証、甲第25号証)。
イ SNS業界においては、mixi(株式会社ミクシィ)、Mobage(株式会社ディー・エヌ・エー)、Ameba(株式会社サイバーエージェント)及び請求人が国内4大ソーシャルアプリプラットフォームといわれており、それらの業績を比較すると、2012年1月ないし3月期において、請求人が約461億円で売上第1位となっている(甲第156号証)。
ウ 請求人が原登録商標の下で行う事業の内容は、携帯電話等のモバイル端末向けのソーシャルゲーム事業、写真・テレビ番組・メールマガジンのアプリの提供等を行うソーシャルメディア事業、ビジネスプラットフォームを提供・運営するプラットフォーム事業、バナー広告やリワード広告を提供する広告・アドネットワーク事業、IPのライセンスアウトやゲームキャラクターの商品化、販売等を行うライセンス&マーチャンダイジング事業、スタートアップ企業への出資と支援を行うベンチャーキャピタル事業とされている(甲第27号証)。
エ 請求人の売上高は、2011年が約641億円、2012年が第3四半期までで約1,181億円、うち、有料課金収入が、2011年が約543億円、2012年が第3四半期までで約1,086億円、広告収入が、2011年が約97億円、2012年が第3四半期までで約94億円と認められる(甲第20号証の14頁、15頁から算出)。
オ 特に、請求人は、携帯電話等のモバイル端末向けのゲームを多数提供しており(甲第3号証の3、甲第4号証の9及び10、甲第20号証、甲第28号証、甲第34号証、甲第58号証、甲第140号証の2ないし15、甲第140号証の17、甲第140号証の21、甲第141号証の4ないし6、甲第141号証の8、甲第142号証、甲第144号証、甲第145号証、甲第150号証)、また、該ゲームに係る業界においては、業務用テレビゲーム、家庭用・携帯用ゲーム機用のゲーム及び携帯電話等のモバイル端末向けのゲームとの間において、相互に提携がされていることが伺える(甲第140号証の12、17、21など)。
カ 請求人に係るテレビCMは、2008年5月から開始されており(甲第119号証)、2010年4月から2013年1月においては、その放送回数が常に上位であることが認められる(甲第77号証ないし甲第108号証、甲120号証、甲第121号証)。他方、甲第119号証の「グリー株式会社 オンエア代表作品キャプチャ」によれば、そのほとんどは、携帯電話等のモバイル端末向けのゲーム(ソーシャルゲーム)の提供に係るCMと認められ、また、それらのテレビCMにおいて継続して使用(表示)されているのは、六角形の図形と「GREE」の文字を一連一体に水色で表した標章(以下「図形付き使用商標」という。)であるところ、該「GREE」の文字は、原登録商標とは書体を異にするものであり、かつ、これらのテレビCMにおいて、原登録商標と同一の構成態様からなる商標が使用されている事実は見当たらない。
キ 甲第36号証によれば、請求人は、図形付き使用商標の下、「グリーショップ」と称するグリーオフィシャルグッズ通販サイト(ウェブサイト)において、文房具等の通信販売を行っているが、原登録商標が、該商品の販売や製造等の出所を表すものとして使用されている事実は見当たらない。
ク 「アプリ☆プラザ iPhone by GREE」又は「アプリ☆プラザ Android by GREE」のウェブサイトにおいて、動画視聴アプリ(甲第37号証、甲第50号証)、地図アプリ(甲第44号証ないし甲第46号証、甲第73号証,甲第74号証、)、教育アプリ(甲第49号証)、書籍アプリ(甲第53号証)、翻訳アプリ(甲第61号証)、天気予報アプリ(甲第63号証)、その他のアプリ(甲第47号証、甲第48号証、甲第64号証ないし甲第68号証、甲第75号証、)が紹介され、それぞれがダウンロード可能であり、また、図形付き使用商標の下、きゃりーぱみゅぱみゅ氏などの芸能人のブログが公開されている(甲第70号証ないし甲第72号証)。
ケ 甲第157号証ないし甲第162号証は、「GREE」の文字からなる商標が、「携帯電話機用ゲームプログラム」及び「携帯電話を利用したソーシャルゲームの提供の役務」については平成18年11月から、「広告事業の役務」については平成16年12月から継続して使用され、これらの商品又は役務について、請求人が該商標を使用していることが取引者、需要者の間において広く認識されているとした証明書である。
(2)上記(1)において認定した事実によれば、原登録商標を構成する「GREE」の文字は、一部の辞書に、請求人のSNSである旨の記載があること、また、請求人は、原登録商標の下で、2004年2月からSNSの運営を開始し、請求人の売上高は、2012年1月ないし3月期において業界第1位、2012年は第3四半期までで約1,181億円であり、2012年3月時点での請求人の会員数は、我が国において約3,000万人であること、さらに、原登録商標と構成態様に相違はあるものの、「GREE」の文字を有する図形付き使用商標を使用したテレビCMの放送回数が、2010年4月から2013年1月において常に上位であることと等が認められ、これらに照らせば、原登録商標は、需要者の間において、ある程度は知られているといえる。
しかしながら、請求人が設立されてから約10年にすぎず、請求人の周知のためのテレビCMが開始されてからは約5年であり、かつ、その内容は携帯電話等のモバイル端末向けのゲーム(ソーシャルゲーム)の提供に係るものにとどまること、請求人の提供する役務等を表す標章としては、図形付き使用商標が顕著に使用されており、例えば、前記テレビCMにおいても原登録商標は使用されていないため、ソーシャルゲームやSNSを利用しない者には、原登録商標に接する機会が多いとはいえないこと、請求人の事業内容は、ソーシャルゲーム事業、ソーシャルメディア事業、プラットフォーム事業、広告・アドネットワーク事業、ライセンス&マーチャンダイジング事業、ベンチャーキャピタル事業と決して広範囲とはいえず、また、これらの詳細は、ソーシャルゲームやSNSと何らかの関係を有する事業がほとんどであること等からすれば、上記需要者の間に知られている程度は、自ずと限定的なものに限られるといわざるを得ない。

3 まとめ
以上のとおり、原登録商標は、本願のすべての指定商品及び指定役務との関係において、需要者の間に、商品や役務が類似していないものに使用された場合においてもなお、商品又は役務の出所について混同を来すほどの著名性を有していると認めることはできない。
したがって、本願標章は、商標法第64条に規定する要件を具備しない。


審決日 2014-03-28 
出願番号 商願2012-12969(T2012-12969) 
審決分類 T 1 8・ 8- WY (W0935)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小松 孝 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 手塚 義明
根岸 克弘
商標の称呼 グリー 
代理人 廣中 健 
代理人 鳥海 哲郎 
代理人 田中 克郎 
代理人 小林 彰治 

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