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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2011890100 審決 商標
異議2013900010 審決 商標
無効2012890075 審決 商標
不服20089915 審決 商標

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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X0708
審判 全部申立て  登録を維持 X0708
審判 全部申立て  登録を維持 X0708
審判 全部申立て  登録を維持 X0708
管理番号 1285660 
異議申立番号 異議2013-900218 
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2014-04-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2013-07-08 
確定日 2014-03-20 
異議申立件数
事件の表示 登録第5583622号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5583622号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5583622号商標(以下「本件商標」という。)は,「KAKUTA」の文字を標準文字で表してなり,平成23年12月13日に登録出願,平成25年3月29日に審決,第7類「車輌整備用機械器具,車体整備用機械器具,自動車の修繕用機械器具,その他の修繕用機械器具,自動車の洗浄用機械器具,金属加工機械器具,鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具,塗装機械器具,緩衝器」及び第8類「手動工具並びにそれらの部品及び附属品,手動利器」を指定商品として,同年5月24日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立人等
本件は,(1)東京都品川区荏原4丁目16番地14号に所在の角田興業株式会社(以下「角田興業(東京)」という。),愛知県名古屋市西区新道1丁目15番地12号に所在の角田興業株式会社(以下「角田興業(名古屋)」という。),神奈川県藤沢市鵠沼松が岡2ー9ー13に所在の谷雄一郎及びタイ王国バンコク10520・ケット ラート クラバン・クワン ランプラトュー・チャローングクルウング ロード・ラート クラバン インダストリアル エステート 219に所在のタイ カクタ カンパニー リミテッド(以下「タイカクタ」という。)を登録異議申立人とする登録異議の申立てと,(2)上記(1)における谷雄一郎及びタイカクタを登録異議申立人とする登録異議の申立てである。上記(1)及び(2)の登録異議の申立ては,いずれもその理由及び証拠方法を同一にするものである。
上記(1)及び(2)の登録異議申立人をまとめていうときは,「申立人」という。

第3 登録異議申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第7号,同第10号,同第15号及び同第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,取り消されるべきものであるとして,登録異議の申立ての理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第50号証(枝番号を含む。)を,提出した。
1 申立人等について
ア 角田興業(東京)について
角田興業(東京)は,昭和13年(1938年)に,カクタ機械製作所として創設され,その後,昭和37年(1962年)には鉄工部が設立され,さらに鉄工部は,1968年(昭和43年)に「角田興業株式会社」に称号を変更し,1971年(昭和46年)に同名の会社を設立したものであり,ハンドバイス,手動用トグルランプ,空気圧用トグルランプ等を含む各種工具を製造販売する会社である。
そして,各種工具に関する事業の年間売上高の平均は,4億6千万円程度であり,その製造販売においては,「KAKUTA」,「KAKUTA+図形」(「KAKUTA」の文字を菱形輪郭で囲んだもの)及び「カクタ」の文字を,カクタ総合カタログ,取引先のカタログ,自社のウェブサイト,新聞広告等に使用してきた。
イ 角田興業(名古屋)について
角田興業(名古屋)は,1962年(昭和37年)に,角田興業(東京)の全身であるカクタ興業株式会社の名古屋支店として創設された。その後,1980年(昭和55年)に角田興業株式会社として独立して活動してきた。角田興業(名古屋)は,角田興業(東京)から製品を仕入れ,取引先に売り渡す販売会社の役割を果たしてきたものであり,角田興業(東京)の商標については,角田興業(名古屋)に対して,黙示的な使用許諾がなされてきた。
ウ 大阪角田興業株式会社(以下「角田興業(大阪)」という。)について
角田興業(大阪)は,1962年(昭和37年)に,角田興業(東京)の前身であるカクタ興業株式会社の大阪支店として設立され,その後,1964年(昭和39年)に,大阪角田興業株式会社として独立した。角田興業(大阪)は,角田興業(東京)から製品を仕入れ,取引先に売り渡す販売会社の役割を果たしてきたものであり,角田興業(東京)の商標については,角田興業(大阪)に対して,黙示的な使用許諾がなされてきた。
エ 株式会社三興(以下「三興」という。)及び角田興業(東京)との関係について
三興は,1976年(昭和51年)に設立以来,角田興業(東京)の各種工具の製造を長年請け負ってきた会社である。角田興業(東京)は,三興に対し,各種製品の製造に必要な金型を貸与し,意見交換会,内部監査の実施により,製品の品質向上等に努めてきた。
オ 角田工業株式会社(以下「角田工業」という。)について
角田工業(代表取締役 伊東宏,アートーン・ベンヤスリ,クリエングサック・チャヴァノワニッチ)は,平成25年9月13日付けで,角田興業(東京)の営業の譲渡許可を得たものであり,破産管財人は,破産手続を開始した角田興業(東京)の営業を継続するための措置を図っており,タイカクタの日本国内での営業拠点である。
2 商標法第4条第1項第7号該当性
本件商標は,角田興業(東京)が使用する「KAKUTA」の文字よりよりなる商標,「KAKUTA」の文字を菱形輪郭で囲んだ商標,「カクタ」の文字よりよりなる商標(これらをまとめていうときは,以下「引用標章」という。)又はこれらに類似する商標を剽窃したものであるから,商品流通社会の秩序を害し,公の秩序又は善良な風俗に反するものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
3 商標法第4条第1項第10号該当性
本件商標は,他人である角田興業(東京)の業務に係る商品又は役務を表示するものとして,取引者,需要者に広く認識されている引用標章又はこれらに類似する商標である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当する。
4 商標法第4条第1項第15号該当性
本件商標は,他人である角田興業(東京)の引用標章又はこれらに類似する商標であるから,本件商標が商標権者によって使用された場合は,商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
5 商標法第4条第1項第19号該当性
本件商標は,他人である角田興業(東京)の業務に係る商品又は役務を表示するものとして,日本における取引者,需要者の間に広く認識されている引用標章又はこれらに類似する商標であって,商標権者が不正の目的をもって使用するものである。
また,本件商標は,他人であるタイカクタの業務に係る商品又は役務を表示するものとして,外国における取引者,需要者の間に広く認識されている「KAKUTA」の文字よりよりなる商標又はこれらに類似する商標であって,商標権者が不正の目的をもって使用するものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。
6 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号,同第10号,同第15号及び同第19号に違反してされたものであるから,取り消されるべきである。

第4 当審の判断
1 事実関係
(1)甲第2号証の1ないし甲第14号証の12(甲第4号証の2及び甲第7号証の2を除く。),甲第17号証の1ないし甲第18号証,甲第20号証の1ないし14,甲第21号証ないし甲第48号証及び申立ての理由によれば,以下の事実を認めることができる(なお,甲号証において,枝番号を有するもので,枝番号のすべてを引用する場合は,以下,枝番号の記載を省略する。)。
ア 本件に関連する主な企業
(ア)角田興業(東京)について
a.角田興業(東京)は,昭和13年に,カクタ機械製作所として設立され,昭和43年に,カクタ機械製作所内の鉄工部が現在の社名である角田興業株式会社として独立し,昭和46年に,同名の角田興業株式会社の設立を経て,ハンドバイス,手動用トグルクランプ,空気圧用トグルクランプ等を含む各種工具を製造販売する会社として活動してきた(申立ての理由)。
b.角田興業(東京)の各種工具に関する事業の平成22年2月1日から平成25年1月31日までの年間売上げは,平均で約4億6千万円程度であり(甲2),その取引先は,株式会社ジーネット等がある(甲3ないし甲10)。
c.角田興業(東京)は,その業務に係る各種工具やカタログ,新聞広告等に,引用標章,すなわち,「KAKUTA」の文字よりよりなる商標(以下「『KAKUTA』商標」という。),「KAKUTA」の文字を菱形輪郭で囲んだ商標(以下「『KAKUTA』(菱)商標」という。),「カクタ」の文字よりよりなる商標(以下「『カクタ』商標」という。)を表示してきた(甲13,甲14,甲17,甲18,甲20の1ないし14)。引用標章は,角田興業(東京)の前身会社の社長の名前に由来し,当該社長らは,ハンドバイスやトグルクランプ等について,多数の実用新案登録を受けた(甲11及び甲12)。
(イ)角田興業(名古屋)について
角田興業(名古屋)は,昭和37年に,角田興業(東京)の前身であるカクタ興業株式会社の名古屋支店として開設され,その後,昭和55年に,角田興業株式会社として独立した。角田興業(名古屋)の代表取締役は,角田興業(東京)の代表取締役と同一人である。そして,角田興業(東京)は,角田興業(名古屋)が角田興業(東京)の実質的なグループ会社として,引用標章を使用することについて黙示的に許諾をしてきた(申立ての理由,甲21及び甲22)。
(ウ)角田興業(大阪)(商標権者の一人)について
大阪府大阪市天王寺区堂ケ芝2丁目16番22号に所在の角田興業(大阪)は,昭和37年に,角田興業(東京)の前身であるカクタ興業株式会社の大阪支店として設立され,その後,昭和39年に,角田興業(東京)の製品を販売する大阪角田興業株式会社として独立した。そして,角田興業(東京)は,角田興業(大阪)が角田興業(東京)の実質的なグループ会社として,引用標章を使用することについて黙示的に許諾をしてきた(申立ての理由,甲23ないし甲25)。
(エ)株式会社カクタ(以下「(株)カクタ」という。)について
東京都品川区荏原4丁目16番地14号に所在の(株)カクタは,昭和51年7月15日に設立された一般機械作業工具の受託製造等を目的とする会社であり,その代表取締役は,角田興業(東京)の代表取締役と同一人であって,角田興業(東京)の下請け管理会社として,各種工具の製造を株式会社三興に発注してきた(甲27及び甲28)。
(オ)三興(商標権者の一人)について
a.神奈川県横浜市青葉区あざみ野4丁目26番地の3に所在の三興は,昭和51年1月29日に設立された機械による金属加工等を目的とする会社であり,トグルクランプ,エアークランプ,油圧クランプ等のクランプ類の部品を製造し,他社が製造した部品と組み立てて完成したものを角田興業(東京)の関連会社である(株)カクタに納品していた。(株)カクタは,三興より納入された製品を角田興業(東京)に納品していた。三興と(株)カクタ(角田興業(東京))との取引は,平成13年3月ころから平成24年11月ころまでである(甲26,甲27及び甲32)。
b.三興は,(株)カクタに対し,平成18年の3月,6月,10月,12月及び平成19年の1月,4月,8月,12月に,金型の預かり証を提出した(甲29)。
c.角田興業(東京)と三興とは,平成14年6月に,製品の向上を図るための意見交換会をし,角田興業(東京)は,平成20年から平成23年にかけて,三興に対し,年に1回,内部監査を実施した(甲30及び甲31)。
(カ)タイカクタについて
昭和62年にタイ王国バンコクにおいて設立されたタイカクタは,角田興業(東京)との技術提携により,角田興業(東京)向けのハンドバイス,トグルクランプ等を輸出していた。タイカクタのウェブサイト,カタログには,「KAKUTA」(菱)商標が表示され,また,インボイスには,「THAI KAKUTA」の文字を菱形輪郭で囲んだ商標が表示されている(甲39ないし甲41)。また,タイカクタは,米国の関連会社であるKAKUTA USA INC.などを介して,米国,フランス,ドイツ,スペイン,イタリア,オーストラリア,香港,ベトナムなどの東南アジア等にトグルクランプを含む各種工具を販売している(甲41)。
なお,米国において,Kakuta USA Inc.の名義で「KAKUTA」商標が登録されている(甲42)。
(キ)角田工業について
神奈川県横浜市保土ヶ谷区上菅田町415番地に所在の角田工業は,平成25年8月5日に設立された一般機械用作業工具の販売等を目的とする会社であり,その代表取締役の一人には,タイカクタの代表取締役が就任している(甲46,申立ての理由)。
イ 破産手続開始の申立て等
(ア)三興は,債権者(破産手続開始の申立ての申立人)の一人として,角田興業(東京)を債務者とする破産手続開始の申立書を,平成25年7月3日に東京地方裁判所に提出した。
申立書の「第2 債権の存在」(2頁)には,三興は,(株)カクタに対し,平成24年9月27日から平成24年10月29日までに,クランプ類を販売し,その代金の総額は,1573万1760円であり,同じく平成24年10月30日から平成24年11月28日(決定注:申立書には,「平成25年10月30日?11月28日」と記載されているが,申立書提出の日付が平成25年7月3日であること,「第3 破産手続開始申立ての原因」の「1 支払不能(2)」(4頁)に,「平成24年12月4日」との記載があること,「疎明資料11,同12」に「約束手形(平成24年11月30日振出し)」の記載があることから,上記「平成25年」は,「平成24年」の誤記と認められ,以下「平成24年」として審理する。)までに,クランプ類を販売し,その代金の総額は,1517万9348円であったこと,これらを合わせた金額以外にも総額約8000万円の手形金債権を有することが記載されている。
また,「第3 破産手続開始申立ての原因」(4頁)の「2 債務超過(資産負債の状況は平成25年1月31日現在)」の「(1)」には,「債務者には,みずほ銀行に対する約4億6875万円の長期借入金及び申立外株式会社三井住友銀行に対する約2億3984万円の長期借入金を含む総額11億円を超える負債があるのに対し,純資産は総額2億7679万円余りしかなく,大幅な債務超過の状態にある。」と記載され,さらに,「第3 破産手続開始申立てに至った経緯」(5頁。決定注:「第3」は「第4」の誤記と思われる。)には,「債務者は,資金不足により2回の手形不渡りを出して銀行取引停止処分を受けたので,三興は,平成25年4月?5月にかけて,債務者代表者と複数回にわたって面談し,手形金の弁済方法について協議したが,本日まで同社から具体的な提案はない。」,「債務者には代理人が就任しているが,三興,飯田製作所ら代理人に対して連絡した債権者にしか受任通知を発しておらず,銀行取引停止処分を受けてから2か月経った現在も資産・負債の状況や支払見込み等について,債権者に対して説明していない。」,「その一方で,債務者は,第三債務者に対し,債務者に対する支払は債務者代理人名義の預り金口座に振り込むよう呼び掛けるなど,債権者らの債権回収を困難にさせる行為に及んでいる。」,「債務者は,現在も代表者らに対する役員報酬として総額2936万円を支出しており,申立人ら債権者に対する弁済をせずに債務者代表者及びその親族らに債務者の財産を移転しようとしている可能性がある。」,「以上によれば,裁判所の選出する破産管財人が債務者代理人の預り金口座等を調査するとともに,債務者の財産の散逸及び一部債権者に対する偏頗弁済を阻止し,債務者の財産の公平な清算を図る必要性があるので,申立人らは,破産手続開始の申立てをすることを決意したものである。」などと記載されている(甲32)。
(イ)角田興業(東京)は,債務者(自己破産申立人)として,平成25年7月25日に,東京地方裁判所に破産手続開始の申立てをし(甲43),同裁判所は,同日に,上記の申立てについて,平成25年(フ)第8033号として,破産手続を開始する旨の決定をした(甲44)。
また,角田興業(名古屋)及び(株)カクタについても,平成25年7月25日に東京地方裁判所にした破産手続開始の申立てにより(甲43),同日に,同裁判所が破産手続を開始する旨の決定をした(甲21,甲28)。
(ウ)破産管財人は,平成25年8月29日に,破産者たる角田興業(東京)の営業について,破産手続開始日から2ヶ月間継続することの許可を求める旨の営業継続許可申立書を東京地方裁判所に提出し,同裁判所は,同日に該申立てを許可した(甲45)。
(エ)破産管財人は,平成25年9月13日に,破産者の営業を,角田工業に対して譲渡することの許可を求める旨の営業譲渡許可申立書を東京地方裁判所に提出し,同裁判所は,同日に該申立てを許可した(甲47)。
破産管財人は,角田興業(東京)の従前の取引者に宛てた,上記角田興業(東京)の営業譲渡に関する通知書の草案を,平成25年9月24日付けで作成した(甲48)。ただし,当該通知書の草案が成案を得て文書として作成され,従前の取引者に送付等されたことを明らかにする証拠の提出はない。
ウ 角田興業(東京)の過去の商標登録出願等について
(ア)角田興業(東京)は,「カクタのクランプ」の文字よりなる商標を第13類「クランプ」を指定商品として,昭和52年7月29日に登録出願(商願昭52-53555)したが,審査において,当該商標は,「カクタン」の文字よりなる先行登録商標に類似する商標であるから商標法第4条第1項第11号に該当するとして,当該出願は拒絶査定がされ,拒絶査定不服審判においても,上記認定は覆ることなく,請求は成り立たないとの審決がされた(甲36)。
(イ)角田興業(東京)が台湾及び中国において登録出願した「KAKUTA」(菱)商標については,それぞれ登録された(甲37及び甲38)。
エ 三興の商標登録出願等について
(ア)三興は,前記第1のとおり,「KAKUTA」の文字を標準文字で表してなる本件商標を平成23年12月13日に登録出願した。本件商標は,審査において,ありふれた氏普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから,商標法第3条第1項第4号に該当するとして,当該出願は拒絶査定がされたが,拒絶査定不服審判において,上記認定が覆り,第7類及び第8類に属する商品を指定商品として,平成25年5月24日に商標権が設定登録されたものである。
本件商標の権利者は,商標権設定の登録がされた当初は,三興であったが,平成25年7月17日を受付日とする特定承継による商標権の一部移転により,商標権は,角田興業(大阪)との共有となった(以上,甲33等)。
(イ)三興は,「K.K.」の文字を菱形輪郭で囲んだ商標を平成23年12月13日に登録出願した。当該出願は,第7類及び第8類に属する商品を指定商品とし,平成24年6月8日に,登録第5499914号として,商標権が設定登録されたものである(甲35)。
上記商標の権利者は,商標権設定の登録がされた当初は,三興であったが,平成25年10月28日を受付日とする特定承継による商標権の一部移転により,商標権は,角田興業(大阪)との共有となった。
一方,角田興業(東京)は,2000年(平成2年)4月及び2009年(平成11年)1月の取引書類並びに社員の名刺に,上記商標と極めて近似する標章を表示していた(ただし,名刺の作成日は明らかではない。甲34)。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)商標法第4条第1項第7号でいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,(a)その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,(c)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれるというべきである(知的財産高等裁判所,平成17年(行ケ)第10349号)。
本件商標は,前記のとおり,「KAKUTA」の文字を標準文字で表してなるものであるから,前記(a)に該当しないことはいうまでもなく,(b),(c),(d)にも該当しないことは明らかである。そこで,本件商標が(e)に該当する商標であるか否かについて以下検討する。
(2)前記1で認定した事実によれば,角田興業(東京)は,ハンドバイス,手動用トグルクランプ,空気圧用トグルクランプ等を含む各種工具を販売する会社であり,その業務に係る商品やカタログに引用標章を表示していたこと,角田興業(東京)の業務に係る商品の製造は,平成13年3月ころから平成24年11月ころまで,三興が請け負い,角田興業(東京)のグループ会社である(株)カクタを介して角田興業(東京)に納品されていたものである。
しかし,平成24年9月27日から平成24年10月29日まで及び平成24年10月30日から平成24年11月28日までに,三興が(株)カクタに売却したクランプ類の代金は,角田興業(東京)が,資金不足により2回の手形不渡りを出して銀行取引停止処分を受け,三興に支払われていないこと,上記代金以外にも,三興は,角田興業(東京)に対し約8000万円の手形金債権を有すること,角田興業(東京)は,平成25年1月31日現在において11億円を超える負債があったこと,その後の角田興業(東京)の,債権者たる三興に対する行為は誠意のあるものではなかったところから,三興は,平成25年7月3日に,角田興業(東京)を債務者として,東京地方裁判所に破産手続開始の申立てをしたこと(当該申立ての結果がどのようになったのかは証拠の提出がなく明らかではない。),その後,角田興業(東京),角田興業(名古屋)及び(株)カクタは,債務者(自己破産申立人)として,平成25年7月25日に,東京地方裁判所に破産手続開始の申立てをし,同裁判所は,同日に,いずれも破産手続を開始する旨の決定をしたものである。
また,角田興業(東京)の破産管財人は,平成25年8月29日に,破産者たる角田興業(東京)の営業について,破産手続開始日から2か月間継続することの許可を求める旨の営業継続許可申立てを東京地方裁判所にし,同裁判所は,同日に該申立てを許可し,さらに,同破産管財人は,平成25年9月13日に,破産者の営業を,平成25年8月5日に設立された角田工業に譲渡することの許可を求める旨の営業譲渡許可申立てを東京地方裁判所にし,同裁判所は,同日に該申立てを許可したことが認められる。
一方,本件商標は,三興により,平成23年12月13日に登録出願され,平成25年5月24日に設定登録されたものであるが,平成25年7月17日を受付日とする特定承継による商標権の一部移転により,その商標権は,角田興業(東京)のグループ会社であった角田興業(大阪)との共有となったものである。
(3)申立人は,本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する理由として,三興は,「KAKUTA」の文字が角田興業(東京)の商標として日本国内における取引者,需要者の間に広く認識されている商標であることを認識した上で,これにフリーライドし,その顧客吸引力を利用しようとして,本件商標を角田興業(東京)に無断で出願し登録を受け,角田興業(東京)に対して破産手続開始の申立てをし,さらに,本件商標の商標権について角田興業(大阪)への移転登録申請をしたから,本件商標は,商品流通社会の秩序を害し,公の秩序又は善良な風俗に反する商標である旨を主張する。
しかし,以下のとおり,上記申立人の主張は理由がない。
ア 三興による本件商標の登録出願等及び該商標権についての角田興業(大阪)との共有について
確かに,本件商標を構成する「KAKUTA」の文字は,引用標章中の「KAKUTA」の文字部分とは,同一の綴りよりなるものであり,引用標章より生ずる「カクタ」の称呼と同一の称呼を生ずるものである。また,三興は,角田興業(東京)とは,平成13年ころから,角田興業(東京)の販売するクランプ等の工具類の製造を行ってきた会社であるから,角田興業(東京)の使用する引用標章の存在については,十分知り得ていたものと推認することができる。
しかし,角田興業(東京)が,その業務に係る商品に引用標章を使用していたとしても,引用標章は,未だ登録されていない商標であり,角田興業(東京)に排他的独占権があるものではなく,また,後記3(1)認定のとおり,引用標章は,角田興業(東京)の業務に係る各種工具類を表示するものとして,本件商標の登録出願前より周知・著名性を獲得していたものとは認めることができないこと,本件商標は,その構成文字から氏の「角田」が想起される場合の多い商標であって,格別高い独創性を備えた商標とはいえないものである。
そして,商標法においては,商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていること,これらに加えて,平成25年1月31日の時点で,角田興業(東京)の負債総額は11億円を超えるものであったことからすれば,上記時点よりはるか以前から,その取引関係会社の間においては,角田興業(東京)の経営状態に危機感を抱いていたことが推測されるものである。
このような状況から,三興は,自己が製造する商品について,その販売経路を確保するために,本件商標の登録出願をし,登録を受けたものであり,その登録後に,以前より自己が製造する商品を販売して来た角田興業(東京)のグループ会社の一つであった角田興業(大阪)を,本件商標の商標権の共有者として,商品の安定供給並びに双方の経営の存続を図ったものと推認することができる。
そもそも角田興業(大阪)は,角田興業(東京)のグループ会社の一つであったことは,申立人が主張するところであり,角田興業(東京)は,グループ会社の一つとして角田興業(大阪)が引用標章を使用することについて黙示的に許諾していたものということができる。
そして,角田興業(東京)並びにそのグループ会社であった角田興業(名古屋)及び(株)カクタは,いずれも平成25年7月25日に東京地方裁判所の破産手続開始の決定を受けたものであり,さらに,角田興業(東京)の破産管財人が,角田興業(東京)の営業を,東京地方裁判所の破産手続開始決定後の平成25年8月5日に設立された角田工業に譲渡すべく営業譲渡許可を得たものの,角田工業が引用標章を使用して営業活動を行っている事実を裏付ける証拠の提出がなく,現実に営業を開始しているか否かは定かではない。
かかる現状において,角田興業(東京)のグループ会社の一つであった角田興業(大阪)が,本件商標の商標権の共有者として,本件商標をその指定商品について使用することが,角田興業(東京)にとって,格別不都合な事情があるとは考えられない。
また,上記商標権の共有について,申立人は,三興が勝手に角田興業(大阪)への移転登録申請をしたような主張をするが,そこには,当然のことながら,角田興業(大阪)との間で合意があったものと優に推認することができる。
その他,角田興業(大阪)が本件商標の商標権の共有者となったことについて,三興に不正の目的があったと客観的に認めるに足りる的確な証拠の提出はない。
イ 三興による破産手続開始の申立てについて
三興が,平成24年9月27日から同年11月28日までに,角田興業(東京)のグループ会社であった(株)カクタを介して角田興業(東京)にクランプ類を納品したことに対し,角田興業(東京)は,資金不足により2回の手形不渡りを出して銀行取引停止処分を受け,三興にその代金を支払っていないこと,三興は,角田興業(東京)に対するそれ以前の手形金債権,約8000万円を有していたことからすれば,三興は,その措置として,角田興業(東京)を債務者として,東京地方裁判所に破産手続開始の申立てをするなどの法的手段に訴えるのは極めて自然な行為であるといえる。
したがって,三興が,角田興業(東京)を債務者として,東京地方裁判所に破産手続開始の申立てをしたことをもって公序良俗に反するものとすることはできない。
ウ 以上によれば,三興が,角田興業(東京)の商標として日本国内における取引者,需要者の間に広く認識されている引用標章にフリーライドするなど不正の目的をもって本件商標を登録出願したものと認めることはできない。
エ 申立人のその他の主張について
申立人は,角田興業(東京)は自己の使用する商標の登録を行う意思があったが,かつて「カクタのクランプ」なる「カクタ」を要部とする商標登録出願(商願昭52-53555)をしたところ,当該出願が先行登録商標を引用され拒絶となったので,引用標章の構成よりなる商標の登録は難しいと認識していた旨主張する。
しかし,「カクタ」を要部とする商標が自他商品の識別機能を有しない商標と認定されたのであればともかく,先行登録商標に類似する旨の認定であったのであれば,その後,当該先行登録商標が有効に存続しているか否かなどを調査することはさほど困難な作業とはいえないし,必要とあれば,商標登録出願の障害となる先行登録商標を排除するために,その不使用による商標登録の取消審判の請求をすることも十分に考えられるところ,申立人は,そのような措置を何ら講ずることなく,三興が本件商標を登録出願し,登録を得るまで,自己の使用に係る商標について登録出願するなどの手当をしなかったものと推認することができる。
したがって,上記に関する申立人の主張は理由がない。
(4)以上のとおり,本件商標は,その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合にも該当しないというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号,同第15号及び同第19号該当性について
(1)引用標章等の周知,著名性
申立人が提出した甲第2号証ないし甲第10号証,甲第13号証ないし甲第18号証,甲第20号証,甲第22号証,甲第24号証,甲第25号証,甲第27号証,甲第39号証ないし甲第42号証によれば,以下の事実を認めることができる。
ア 年間売上げ
前記1(1)ア(ア)認定のとおり,角田興業(東京)の業務に係る各種工具についての平成22年2月1日から平成25年1月31日までの年間売上げは,平均約4億6千万円である(甲2)。これを月平均すると,約8300万円であり,クランプ類の単価が1000円以下のものから2万円弱のものまで様々な価格のものがあるとはいえ(例えば,甲25),決して多い売上高とはいえない。
イ 取引先企業のウェブサイトへの表示
角田興業(東京)の業務に係る各種工具についての取引先企業であるとするウェブサイト(甲3ないし甲10)には,これら企業が取り扱う商品の一つとして「角田興業(株)」などの記載は認められるものの,その掲載日が明らかではなく,取扱い開始時点が不明なものが多く存在する。また,「角田興業(株)」など角田興業(東京)と関連する記載が全くないものも存在する(甲8,甲10)。さらに,取引先とする企業のうち,株式会社ヤマモリ及び柏木工機株式会社のそれぞれの代表取締役は,「KAKUTA」商標が角田興業(東京)の業務に係る商品を表示するものとして取引者,需要者に広く認識されていたことなどを証明しているが,これらの証明書は,予め記載された定型文書に上記者が一部必要事項を書き加えた上で,記名押印等をしたものであって,「KAKUTA」商標が角田興業(東京)の業務に係る商品を表示するものとして取引者,需要者に広く認識されていたとする根拠等が全く明らかにされていない。
したがって,取引先企業のウェブサイトや証明書をもって,引用標章が周知,著名ということはできない。
ウ カタログへの表示
平成元年1月に発行された角田興業(東京)の取扱いに係る商品を掲載したカタログ(甲13の6),平成11年3月及び平成20年5月に発行された角田興業(東京),角田興業(名古屋),角田興業(大阪),角田興業(札幌市所在)の各取扱いに係る商品を掲載したカタログ(甲13の4,5),平成21年,同22年及び同24年に発行された角田興業(東京),角田興業(名古屋),角田興業(大阪)の各取扱いに係る商品を掲載したカタログ(甲13の1?3)には,引用標章が表示されている。
そして,カタログの印刷業者の請求書(甲13の7)によれば,これらカタログは,平成21年5月及び同22年11月に1万部,同23年6月に3000冊(英語版),同24年3月に1万部がそれぞれ作成されたことが認められる(ただし,平成24年3月に作成されたカタログは,本件商標の登録出願(平成23年12月13日)後のものである。)。また,これらカタログに掲載された商品にも,「KAKUTA」商標や「カクタ」商標が表示されていた(甲14)。
しかし,上記カタログが平成21年5月から同24年3月までに,英語版を含み約3万3千部(冊)作成されたとしても,これらは,角田興業(東京),角田興業(名古屋),角田興業(大阪)がそれぞれその顧客に配布したものといえるから,単純に計算すれば,各社が年間約3600部程度を配布したことになり,その配布部数は決して多いということはできない。
したがって,角田興業(東京),角田興業(名古屋),角田興業(大阪)の取扱いに係る商品を掲載したカタログやその製品に引用標章が表示されていたことをもって,引用標章が周知,著名ということはできない。
エ 「オレンジブック」への掲載
トラスコ中山株式会社発行の「オレンジブック」は,「モノづくりの現場で必要とされるあらゆる工具や作業用品などのプロツールが20万6000アイテムの豊富さで掲載されている」カタログで,毎年約30万部発行されている(2013年版:甲15,ただし,2013年版は,本件商標の登録出願後のものである。)ところ,2005年(平成17年)版,2007年(平成19年)版から2013年(平成25年)版までには,角田興業(東京)の取扱いに係る商品が引用標章とともに掲載された(甲17)。
しかし,例えば,本件商標の登録出願日と同じ年に発行された「オレンジブック2011年版」をとってみれば,当該カタログには,15万5000アイテムという膨大な商品が掲載されている(甲15)のであって,角田興業(東京)の取扱いに係る商品が掲載されているといっても,上記15万5000アイテムのうちのわずかな商品にすぎず,作業現場のニーズに応えるため,できる限り多くの商品を掲載することを目的とする「オレンジブック」に掲載されたことをもって,引用標章が周知,著名ということはできない。
オ 自社のウェブサイトへの掲載
角田興業(東京)のウェブサイト(ただし,掲載日が明らかでないが,「最新情報」に「2012.8.30」の記載があることからすると,本件商標の登録出願後のものと推認される。)には,その取扱いに係る商品とともに,「KAKUTA」,「角田興業株式会社」の各文字が掲載されている(甲18)。
カ 新聞広告
角田興業(東京),角田興業(名古屋)及び角田興業(大阪)は,日刊工業新聞に,以下のとおり,その取扱いに係る商品に「カクタ」商標及び「KAKUTA」(菱)商標を表示して,広告の掲載をした(甲20)。
1994年(平成6年)から2003年(平成15年)まで,それぞれ年に2回(ただし,1995年(平成7年)は年に1回),2008年(平成20年),2009年(平成21年)及び2010年(平成22年)は,それぞれ年に1回,2013年(平成25年)は,年に1回(本件商標の登録出願後のもの)である。
しかし,上記日刊工業新聞における広告は,必ずしも多いとはいえず,これらの広告をもって,引用標章が周知,著名ということはできない。
キ タイカクタの使用に係る標章
タイカクタのウェブサイト(甲39の1)及び角田興業(東京)宛のタイカクタのINVOICE(甲40)からは,タイカクタが,角田興業(東京)とトグルクランプに関して取引関係にあること,タイカクタのカタログ(甲39の2)には,その業務に係るトグルクランプについて,「KAKUTA」(菱)商標が表示されていることが認められる。
しかし,上記ウェブサイトは,上記事実関係が窺えるのみであり,その掲載日も明らかではない。また,タイカクタのINVOICEは,2006年(平成18年)1月ころに,角田興業(東京)との間で取引が1回あったことを示すだけのものである。さらに,カタログにしても,タイカクタの業務に係るトグルクランプに「KAKUTA」(菱)商標が使用されていることを示すのみであり,その作成日又は発行日も明らかではない。
また,タイカクタのKAKUTA USA INC.等に宛てたINVOICE(甲41の1?11)は,2004年(平成16年)のものが1通,2005年(平成17年)のものが2通,2006年(平成18年)のものが8通であり,いずれも本件商標の登録出願日よりかなり古いものであり,カタログ(甲41の12?15)に至っては,日本の国旗や「JAPAN」の文字が表示されているものもあり(甲14の14),これらのカタログがタイカクタのものであることを示す箇所は見いだせない。
さらに,KAKUTA USA INC.名義の「KAKUTA」商標が米国で登録された事実(甲42)をもって,当該商標がタイカクタの使用する商標として外国において広く認識されていたことを裏付ける証拠となり得ないことはいうまでもない。
したがって,上記証拠をもって,タイカクタの使用する「KAKUTA」(菱)商標,「KAKUTA」商標等が,外国において周知,著名ということはできない。
前記アないしキで認定した事実によれば,引用標章は,角田興業(東京)の業務に係る各種工具を表示するものとして,本件商標の登録出願日(平成23年12月13日)はもとより,その審決日(平成25年3月29日)においても,取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
また,「KAKUTA」(菱)商標及び「KAKUTA」商標が,タイカクタの業務に係るトグルクランプ等を表示するものとして,本件商標の登録出願日及びその審決日において,外国における取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
なお,申立人は,「角田興業(東京)の業務に係る商品又は役務」,「タイカクタの業務に係る商品又は役務」と主張するが,角田興業(東京)及びタイカクタが工具を取り扱う以外に,役務を行っている事実を明らかにする証拠を何ら提出していない。
(2)商標法第4条第1項第10号該当性
前記(1)認定のとおり,引用標章は,角田興業(東京)の業務に係る各種工具を表示するものとして,本件商標の登録出願日及び審決日の時点において,取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性
前記(1)認定のとおり,引用標章は,角田興業(東京)の業務に係る各種工具を表示するものとして,本件商標の登録出願日及び審決日の時点において,取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものであり,かつ,該標章は,いずれも申立人の名称の一部である「角田」部分を欧文字又は片仮名で表したにすぎないものであって,ことさら申立人による創造標章とはいえないものであるから,その独創性は低いというべきである。
そうとすれば,本件商標は,商標権者が,これをその指定商品について使用しても,これに接する需要者に,直ちに角田興業(東京)に係る商品と想起又は連想させることはなく,角田興業(東京)又はこれと何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性
引用標章が角田興業(東京)の業務に係る各種工具を表示するものとして,本件商標の登録出願日及びその審決日の時点において,取引者,需要者の間に広く認識されていたものでなく,三興が引用標章にフリーライドし,不正に利益を得ようとする意図があったものとすべき具体的事実は,見いだすことができない。
また,同様に,「KAKUTA」(菱)商標及び「KAKUTA」商標が,タイカクタの業務に係るトグルクランプ等を表示するものとして,本件商標の登録出願日及びその審決日の時点において,外国における取引者,需要者の間に広く認識されていたものでなく,三興がこれを剽窃して,タイカクタの日本における営業活動を妨げる意図があったとすべき具体的事実は見いだすことができないから,本件商標は,不正の目的をもって使用する商標ということはできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号,同第10号,同第15号及び同第19号のいずれにも違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
異議決定日 2014-03-10 
出願番号 商願2011-89517(T2011-89517) 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (X0708)
T 1 651・ 25- Y (X0708)
T 1 651・ 22- Y (X0708)
T 1 651・ 271- Y (X0708)
最終処分 維持  
前審関与審査官 堀内 真一 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 田中 亨子
手塚 義明
登録日 2013-05-24 
登録番号 商標登録第5583622号(T5583622) 
権利者 株式会社三興 大阪角田興業株式会社
商標の称呼 カクタ 
代理人 特許業務法人 大島特許事務所 
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代理人 松下 昌弘 
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代理人 特許業務法人 大島特許事務所 
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