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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201316054 審決 商標
不服2013800 審決 商標
不服201220419 審決 商標
不服201312300 審決 商標
不服201312525 審決 商標

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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W28
管理番号 1285650 
異議申立番号 異議2013-900111 
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2014-04-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2013-04-19 
確定日 2014-02-17 
異議申立件数
事件の表示 登録第5551336号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5551336号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5551336号商標(以下「本件商標」という。)は、「Skagit Line」の欧文字と「スカジットライン」の片仮名とを上下二段に書してなり、平成24年7月27日に登録出願、第28類「釣り具」を指定商品として、同24年12月21日に登録査定、同25年1月18日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由(要旨)
本件商標は、「Skagit Line」及びこれを片仮名で表した「スカジットライン」を上下二段に併記してなるところ、「Skagit」、「スカジット」は、アメリカ合衆国ワシントン州の西海岸部に位置する郡を示す語であり、同郡を流れるスカジットリバー(スカジット川)の釣りに適しかキャスティング方法の名称としても、多くの釣り愛好家の間で広く知られている。
他方、「Line」、「ライン」は、釣り具の分野においては「釣り糸」の意を有する語として広く知られている。
さらに、「スカジットライン(Skagit Line)」が、スカジットキャストに用いる釣り糸(道糸)を表す語として普通に用いられている。
してみれば、構成全体から「スカジット地方で生産、販売される釣り糸」又は「スカジット(キャスト)用の釣り糸」程度の観念を生じさせるに過ぎない本件商標を前記について使用したとしても、商品の品質を表示するにすぎず、自他商品識別標識として機能を果たし得ない。また、前記商品以外の商品について使用した場合、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に該当するから、その登録は、同法第43条の2第1号に基づき取り消されるべきである。

第3 当審で通知した取消理由(要旨)
1 登録異議申立人の提出に係る甲各号証によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)「Skagit」及び「スカジット」の語について
ア 「Skagit」の語は、米国ワシントン州の西海岸に位置し、スカジット川(Skagit river)の流域にある群の名称であり、「スカジット」と片仮名表記される(甲2)。
イ スカジット川は、遡上時期を12月から翌年の4月ころとする“ウインターラン”と呼ばれる降海型のニジマス(steelhead=スティールヘッド)が生息することで釣り愛好家等に知られている川である(甲3の135、136頁ほか)。
スカジット川における“ウインターラン”のスティールヘッドを釣る手法として、「別冊つり人Vo.1236」(2008年7月発行:甲3)の「簡単、安全、楽。極めて北米的なテクニック、スカジットキャスト」の項目(135頁)には、「低水温時に釣るウインターラン・スティールヘッドには、重たいシンクティップを多用して、大型のフライを魚の目の前まで送り込む必要がある。また、釣りのシーズンは、この地域では雨季にあたり、冷たい雨の中で釣ることも少なくない。できるだけ確実に魚の視野に送り込める、『楽』なキャストが要求されるのである。それらを容易にするために考案されたある意味特殊なラインとフライを、筒単に、安全に、そして楽に投げるため、アメリカ的な合理性を重視したキャストこそがスカッジトキャストのベースになっている。」(136頁)と、また、「Wikipedia」の「スペイキャスト」の項目(甲4)には、「スカッジトキャスト\アメリカでは、ワシントン州スカジット川周辺でニジマスの降海型であるスティールヘッドを効率的に釣るために、〈スカジットキャスト〉と呼ばれる方法が地元ステールヘッダー達によって生み出された。」とそれぞれ記載され、スカジット川に適したキャスティング法を「スカジットキャスト」と称している(甲3?甲5)。
ウ 「スカジットキャスト」と呼ばれるキャスティング法は、日本の渓流等の釣り場においても、その愛好家に採用されている。例えば、前掲「別冊つり人Vo.1236」(甲3)には、「オーバーヘッド・キャストとスカジットキャストを併用\オーバーヘッド・キャストでの使用が前提だが、バックスペースが狭い場所ではスカジットキャストも行っている。」(106頁)、「重いシンクティップを繋げたフローティングのヘッド。狭い場所ではスカジットシステムが有利\バックがなく、岸近くまで水深があるポイントを意識したスタイル」(109頁)と、また、「FlyFisher」(2010年5月号:甲5)には、「『底ギリギリ』+『ナチュラルドリフト』でねらうスカジットヘッド・システムでの釣り」の見出しのもと、「アメリカ・ワシントン州北西部を流れるスカジット・リバーで生まれたスカジットキャスト。質量のあるシューティングヘッドを使い、重いシンクティップとフライを、バックスペースの有無や、通常ならキャストの障害になるような岩などに関係なく快適に投げられるようにスペイキャストから発展してきたテクニックだ。・・このラインを使った釣りは日本の本流にも非常に向いている。『遡上魚ではない』、そして『スレている』日本のマスを釣るための、スカジットヘッド・フィッシングの方法論。」などと紹介された。
エ 釣り具を取り扱う企業においては、「スカジットキャスト」に適した釣り具の一つを「スカジットライン(「Skagit Line)」と称している。例えば、釣りの専門雑誌である前掲「別冊つり人Vo.1236」(甲3)には、RIO社:「Skagit Line(スカジットライン)、Skagit VersiTip(スカジットバーサティップ)\形状:スカジットライン・・\大きいフライや沈下速度の速いシンクティップを、最も簡単にキャストできるライン。・・」、「Skagit floating tip(スカジットフローティングティプ)\・・スカジットラインをフルフローティングのシステムで使うときに使用する。」(99頁)、VARIVAS社:「Long Tail Spey(ロングテイル スペイ)\形状:スカジットライン・・\リアテーパーを長くとることにより、遠投しても今までにない操作性でメンディングを容易に行える新発想のスカジットライン。」(102頁)、そのほか、「スカジットキャスト\スカジットキャストとは、スカジットヘッド(スカジットライン)を用いて、水面の抵抗を利用しながらDループを形成するウォーターボーンアンカーのキャスティングのことである。」(67頁)、「一般的なスカジットラインよりさらに短くても、同じようなキャスティングができるかもしれない。」(75頁)、「最近、各社から短めのスカジットラインが登場している。」(77頁)等の記載や、「FlyFisher」(2010年5月号:甲5)には、「スカジットラインを初めて見た時、そのラインの太さに驚きました。・・」(97頁)等の記載がされている。
また、釣り具を取り扱う企業のウェブサイトなどにも、「スカジットライン」の語が、「スカジット」、「スカジットキャスト(キャスティング)」等の語と共に普通に使用されている(甲12?甲17)。
例えば、「SKAGIT COMPACT\スカジット コンパクト」の項に「もともとスカジットラインとは、米国北西部のスティールヘッド狂いたちが開発したもので、・・・」(甲12)、「[VARIVAS社]ロングテールスペイ(ニューコンセプトスカイジットタイプ)\ロングベリースペイラインとスカジットラインの長所を兼備する新コンセプト。」(甲13)などと記載されている。
オ インターネット情報(ブログ等)においても、当該キャスティング法の紹介やそれ専用の釣り具を使用したことなどについての投稿が渓流釣りの愛好家などから多数寄せられ、「スカジットキャスト」の語をはじめ、これを略した「スカジット」等の語と共に、当該キャスティング法に用いる釣り具について、「スカジットライン」の語が使用されている(甲21、甲23、甲24、甲26等)。
(2)「Line」、「ライン」の語について
「Line」及び「ライン」の語は、「線、回線、糸」等の意を有する英語であるが(甲6)、釣り具の分野においては、「釣り糸」の意として一般的に用いられている(甲7?甲11)。
2 前記1で認定した事実によれば、「Skagit」の語及びその片仮名表記である「スカジット」は、米国ワシントン州の北西部を流れるスカジット川(Skagit river)の流域にある群の名称であり、該スカジット川は、“ウインターラン”と呼ばれる12月から翌年の4月ころに遡上する降海型のニジマス(steelhead=スティールヘッド)が生息することで釣り愛好家等に知られている川であること、“ウインターラン”のスティールヘッドを釣るためには、深場にいる魚の視界に速く届くように、重いシューティングヘッド、重いシンクティップとフライ及びラインなど専用の釣り具が地元の釣り愛好家などにより開発され、さらに、これらの釣り具に合わせたキャスティング法が生み出され、これを「スカジットキャスト」と称していること、我が国においても、釣りの専門雑誌等を介して我が国の渓流釣りの愛好家などにも、「スカジットキャスト」「Skagit(スカジット)?」として紹介され、その専用のラインも、本件商標の登録査定時には既に、我が国の市場において、「スカジットライン(Skagit Line)」と称して出回っていたこと、我が国の渓流釣りの愛好家などにより、スカジットキャスト専用の釣り具として「スカジットライン」の語が使用されていることなどを認めることができる。
3 本件商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
本件商標は、前記第1のとおり、「Skagit Line」の欧文字と「スカジットライン」の片仮名を二段に横書きしてなるものである。
そうすると、本件商標は、前記2で認定した事実によれば、これをその指定商品である「釣り具」について使用した場合は、その需要者である釣りの愛好家及び釣り具関連の取引者に、直ちに「スカジットキャストに用いるライン(釣り糸)」程の意味を認識させるにとどまり、単に商品の品質、用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきである。
したがって、本件商標は、その登録査定時において、その指定商品である「釣り具」について、商標法第3条第1項第3号に該当する商標であったというべきである。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものと認める。

第4 商標権者の意見(要旨)
1 本件商標について
本件商標を構成する単語の一つである「Skagit\スカジット」は、河川の名称として外国に実在する(乙1)も、我が国においては、「リーダーズ英和辞典」や広辞苑第6版への収録もなく(乙2、乙3)、殆ど知られていない名称にすぎない。
一方、「Line\ライン」は、「線、行、列、輪郭線、航路」等の意として知られているほか、「網、ひも、縄、ロープ、釣糸」等といった意味を有する単語である(乙4、乙5)。
そうすると、本件商標からは、これらの意味を掛け合わせた意味内容が想起され得るものである。
2 商標法第3条第1項第3号について
(1)本件商標は「Skagit Line\スカジットライン」であり、日本では殆ど知られていない河川の名称を利用した造語であって、言語構成上直接的に想起される意味内容は上記で示したとおりであって、特定の種類の釣り手法ないしは商品の用途を表現するにあたって、本件商標たる「Skagit Line\スカジットライン」の文字を使用しなければならない理由も全く存在せず、何人もその使用を欲するものでもない。
(2)需要者の間に広く認識されている程度には及ばないものの、「Skagit\スカジット」の語が、特定の会社(有限会社スカジットデザインズ)を意味する語として取引者・需要者に認識されている現実がある(乙6?乙14)。
なお、上州屋社及びキャスティング社は、釣り具販売業界において最大手並びにそれに準ずる立場の会社であり、これら会社のスタッフが上記のように認識して商品が需要者に対して紹介され取引されている現実は無視できるものではない。
このように、本件商標の指定商品である「釣り具」の業界において、「Skajit\スカジット」の語は、十分に識別力を発揮し得る語であり、取引者・需要者が「Skajit\スカジット」の語に接すると直ちに「スカジットキャスト」の意味を想起するとの判断は誤りであるし、本件商標は、全体として十分に識別力を備える商標である。
(3)辞書はおろか、インターネット上の釣り用語を解説するようなウェブサイトにさえ、「Skagit」、「スカジット」、「Skagit Line\スカジットライン」という言葉に対する説明等は一切なされていない(乙16?乙22)。すなわち、これらの言葉は、仮に、品質表示的な使われ方がなされているとしても、それは釣り業界における極々一部の者による使用であり、本件商標の登録を取り消す必要性が生じる程度には到底及ばない。

第5 当審の判断
1 本件商標についてした前記第3の取消理由は妥当であって、本件商標は、商標法第3条第1項3号に違反して登録されたものである。
2 商標権者の主な意見について
(1)商標権者は、「釣り具」の業界において、「Skagit\スカジット」の語が、有限会社スカジットデザインズを意味するものとして取引者・需要者に認識されているものであって、十分に識別力を発揮し得るものである旨、主張する。
しかしながら、商標権者の提出に係る証拠(乙6?乙14)は、個人のブログ記事(乙6?乙8)及び上州屋、キャスティング等の釣り具店の各店舗の担当者による紹介記事やそのブログ記事(乙9?乙14)であるが、わずか9件にすぎず、しかもその記事中に「スカジットデザインズ」の語も併用しているものが多く、また、これらは、話口調で記載されているが、話口調の場合は、略して使用されることも多いから、この程度の証拠をもって、「Skagit\スカジット」が、「有限会社スカジットデザインズ」を一般に認識するとは認めることができない。
(2)商標権者は、辞書やインターネット上の釣り用語を解説するようなウェブサイトにさえ「Skagit」、「スカジット」、「Skagit Line\スカジットライン」という言葉に対する説明等は一切なされていないものであって、仮に、これらの言葉が品質表示的な使われ方がなされているとしても、それは釣り業界における極々一部の者による使用であり、本件商標の登録を取り消されるものではない旨、主張する。
しかしながら、たとえ、「Skagit」、「スカジット」等の語が、辞書やインターネット上の釣り用語を解説するようなウェブサイトに掲載されていないとしても、前記第3で示したとおり、釣り具関連業界における取引の実情を踏まえれば、本件商標は、「スカジットキャストに用いるライン(釣り糸)」程の意味を認識させ、単に商品の品質を表す語として、取引者・需要者に認識されるというのが相当であり、本件商標は、自他商品識別標識としての機能は果たし得ないというべきである。
したがって、商標権者のいずれの主張も採用することができない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであるから、その登録は、商標法第43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2014-01-06 
出願番号 商願2012-60967(T2012-60967) 
審決分類 T 1 651・ 13- Z (W28)
最終処分 取消  
前審関与審査官 鈴木 斎 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 小川 きみえ
井出 英一郎
登録日 2013-01-18 
登録番号 商標登録第5551336号(T5551336) 
権利者 株式会社フィッシュ・マーケティング・リンク
商標の称呼 スカジットライン、スカジット 
代理人 北口 貴大 
代理人 永岡 愛 
代理人 岩瀬 吉和 
代理人 城山 康文 
代理人 岩崎 博孝 

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