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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W14
審判 全部申立て  登録を維持 W14
審判 全部申立て  登録を維持 W14
審判 全部申立て  登録を維持 W14
審判 全部申立て  登録を維持 W14
管理番号 1285637 
異議申立番号 異議2013-900213 
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2014-04-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2013-06-28 
確定日 2014-02-27 
異議申立件数
事件の表示 登録第5570684号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5570684号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5570684号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成24年11月2日に登録出願,同25年3月11日に登録査定,第14類「貴金属,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,キーホルダー,宝石箱,身飾品,貴金属製靴飾り,時計」を指定商品として,同年3月29日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第1194262号商標(以下「引用商標」という。)は,「MOEBIUS」の欧文字を書してなり,昭和49年6月21日に登録出願,第5類に属する商標原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同51年4月12日に設定登録されたものである。
そして,該商標権は,3回にわたり存続期間の更新登録がなされ,指定商品については,平成19年5月23日に,第4類「燃料,時計用・時計部品用・その他の精密機械用合成油,その他の工業用油,工業用油脂,ろう」とする指定商品の書換登録がなされ,現に有効に存続しているものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第10号,同第11号及び同第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして,登録異議の申立ての理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第25号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 商標の称呼及び表記について
引用商標は,「MOEBIUS」の英文字を横書きしてなり,「モエビウス,モービウス,モービス,モエービウス,メービィウス,メービウス,メビウス,メービス」などの称呼を生ずるものである。
なお,引用商標に対応するもともとの表記は,「MOBIUS」(「O」の文字にはウムラウト記号及び「I」の文字の上部にはドット記号が付されている。)であり,世界的な販売戦略のため,これに対応する英語表記としたものが引用商標である。
これに対し,本件商標は,「mobus」(「o」の文字にはウムラウト記号が付されている。以下同じ。)の欧文字を横書きしてなり,これを構成する文字のうち,「o」は,欧文字のオー・ウムラウトであると認識され,この文字を英語表記した場合,「oe」となり,本件商標を対応する英語に表すと「Moebus」であることは明かである。
そして,その発音は,[o:](「o」部分にはストローク記号が付されている)となり,日本語で発音する場合,「お」の口の形で「え」と発音するため,日本語に当てはまる音はなく,日本語の音は「オ」と「エ」の中間音である。ただし,「o」の文字を全ての需要者がこの「オ」と「エ」の中間音をもって称呼するとは考えられない。してみると,需要者は,「オ」又は「エ」,もしくは「オエ」のいずれかの音をもって称呼すると考えられる。
したがって,本件商標からは,「モーブス,モブス,メーブス,メブス,モエーブス,モエブス」などの称呼を生ずるものである。
引用商標及び本件商標は,日本語表記ではないことから,需要者によりその称呼が変わるという実体があるため,上記のような多数の称呼が発生することは明らかである(甲5ないし甲7)。
イ 商標の類否について
引用商標及び本件商標から生ずる称呼を対比する。
(ア)「モエビウス」と「モエーブス」の称呼について
両称呼は,ともに5文字からなり,音節は「モエビウス」が5音節,「モエーブス」が4音節と相違するものの,「モエビウス」のうち「ビウ」の箇所については濁音の後に母音の構成となっていることから,「ウ」の母音は「ビ」の濁音の音に引きずられ「ビュ」に近い音となる。その場合,「モエビュス」と発音され4音節となる。してみると,「モエビュス」と「モエーブス」はともに5文字,音節はともに4音節となり,その相違は「エビュ」と「エーブ」の部分である。
そして,本件商標の「エーブ」の箇所は,長音と濁音のつながりであるが,長音の発音は,需要者毎にその長さは相違すると考えられる。そのことから,「モエーブス」は,「モエブス」に近い発音となりえると考えられる。 上記のことから,「モエビウス」と「モエーブス」の称呼は,「モエビュス」と「モエブス」となりえると考えられる。その場合の相違は,「ビュ」と「ブ」の箇所であり,ともに「は行」の濁音で始まり,かつ,「ビュ」は後ろの文字の「ユ」の「う行」の母音の発音が引きずられ,「ブ」の「う行」の母音の発音と極めて近い音となる。
よって,「モエビウス」と「モエーブス」の称呼は,実質「モエビュス」と「モエブス」と発音され得ることが容易に予想され,両称呼の発音は,非常に類似する。
(イ)「モービス」と「モーブス」の称呼について
両称呼は,いずれも「モー」の長音と「ビス」又は「ブス」との結合であり,ともに3音節からなる4文字である。両称呼の相違は,「ビ」と「ブ」のみであり,ともに「は行」の濁音である。両称呼のアクセントをみてみると,先頭の文字が長音であり,全体の文字数も4文字と少ないことから,通常長音である「モー」部分にアクセントがあるものと考えられる。両称呼の相違部分は,長音のあとの一文字であり,アクセントのある文字の後の文字であり,さらには,ともに「は行」の濁音であることから,「ビ」と「ブ」の部分の発音は,アクセントのある同一の文字に比べ小さな音となる。
よって,両称呼の発音は,非常に類似する。
(ウ)「メービス」と「メーブス」の称呼について
両称呼は,いずれも上記称呼「モービス」と「モーブス」との対比で述べたものと,先頭の文字が「モ」と「メ」の相違のみであることから,同様に両称呼の発音は,非常に類似する。
ウ 商品の類否について
引用商標の指定商品のうち「時計用・時計部品用・その他の精密機械用合成油」と,本件商標の「時計」は,ともに主な需要者は「時計店」である。
特に,アナログ時計については,その構造上,「時計用・時計部品用・その他の精密機械用合成油」が不可欠なものであり,また,そのメンテナンス,修理等は,「時計販売店の専門家」が行なうことが通常である(甲8ないし甲10)。
引用商標の指定商品「時計用・時計部品用・その他の精密機械用合成油」と,本件商標の指定商品「時計」とは,その区分及び類似群コードは相違する。
しかし,これらの商品が,同時に,また,同一の場所で取扱われるという事情があることからすると,実際の市場においては明らかに類似する商品である。
以上のとおり,引用商標と本件商標は,その商標の称呼が類似し,かつ,指定商品も類似する。
エ 小括
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 引用商標と本件商標は,既に述べたとおり,その称呼及び指定商品が類似する。
イ 引用商標の周知性について
引用商標は,1855年,ドイツのハノーファー(ハノーバー)にて,Moebius & Sohn社が設立され,その社名の一部として使用開始されている(甲4)。
当時は,時計のメーカーとして発足したが,創設者のMoebius氏は,牛脚油が時計の潤滑油として特別な性質を持つことを最初に認識した人物であり,以来,精密機械用油及び時計油の製造販売を,2008年までの約150年もの長い年月にわたり行なってきた(甲4及び甲11)。
そして,2008年1月10日に,申立人(以下「スウォッチグループ」という場合がある。)に営業を伴い商標権が譲渡され,それ以降,スウォッチグループが,引用商標が付された商品を継続して販売している。
引用商標が付された商品は,時計用オイル他,精密機械用オイル,グリース,基盤用オイル,腐食防止用オイルなどであり,ドイツのみならず,日本を含む世界中にて販売を行なっている。また,日本においては,時計専門店ほか,商品の単体を,楽天,アマゾンなどでも通信販売をしているため,全国的に販売されている。さらに,楽天に出店しているDOS時計工具店のウェブサイトの記事によると,「Moebiusの時計オイルは世界でもっとも愛用されているスイスの時計オイルメーカーです」との記載がある(甲16ないし甲23)。
このことからも,日本国内の周知性のみならず,世界においても引用商標が著名であることを示している。
ウ 以上のことから,引用商標は,本件商標の出願時および査定時に,すでに需要者の間に広く認識されている商標であり,本件商標は,引用商標に類似し,かつ,指定商品が類似する。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の周知性及び著名性については,既に述べたとおりであり,引用商標と本件商標は,その称呼及び指定商品が類似する。
イ 出所の混同について
「Moebius oil」をグーグルにて画像検索をした結果,腕時計の写真も検索結果として表示される(甲24)。このことから,引用商標は,その商標の著名性及び使用している商品との関係から,商品「時計」に関連した商標であることは明らかである。
また,本件商標は,その指定商品に「時計」を含んでいる。
引用商標が周知であり,本件商標と類似し,上記の画像検索結果から総合的に判断すると,明らかに本件商標を商品「時計」に使用した場合は,申立人の業務に係る商品又は役務と混同を生じるおそれがあると認められる。
さらに,引用商標の権利者は,スウォッチグループであり,世界的に著名な時計ブランドの「オメガ」を含み,ブランド「スウォッチ」は,商品「時計」において世界的に著名なブランドと認められている(甲25)。
以上のことから,引用商標は,本件商標の出願時および査定時にすでに著名であり,本件商標がその指定商品に使用された場合,申立人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
申立人が提出した甲第16号証ないし甲第23号証によれば,申立人は,時計油,オイル,グリース等のメーカーであって,該社のウェブサイトには,いわゆるハウスマークとして引用商標を使用していること(甲16及び甲17)及び当該オイル等の商品に,引用商標を表示していることが認められる(甲19ないし甲23)。
そして,本件商標の登録出願時前の事実かどうかは不明であるものの,申立人は,我が国の2社を含む世界11か国及び地域に販売店を有し,また,申立人の商品を取り扱う「BERGEON(社)」は,わが国に11社の取扱店を有していることが認められる(甲17ないし甲19)。
さらに,我が国においては,楽天やAmazonで,複数の店舗が,申立人の商品を広告し,販売していることが認められる(甲20ないし甲23)。
なお,これらの店舗においては,引用商標及び申立人に係る「MOEBIUS社」について,「メービス」(甲20,甲22及び甲23),「メイビス」(甲21)と記載していることが認められ,甲第23号証のウェブサイトには,「MOEBIUS(メービス)時計用オイルと言えば『メービス』の通称でお馴染みですが,本名は『H.MOEBIUS&Fils』という会社なのです。世界でもっとも愛用されているスイスの時計オイルメーカーです。」の記載がある。
しかしながら,申立人提出の証拠において,我が国における引用商標の使用開始時期,商品「時計油」の譲渡の数量又は売上高等,該商品に関する広告宣伝の方法,回数及び内容等を証する書面は提出されていない。
そうとすれば,申立人提出に係る証拠によっては,本件商標の登録出願時(平成24年11月2日)において,引用商標が申立人の業務に係る「時計油」を表示するものとして我が国の需要者の間に広く知られているものと認めることができない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は,別掲のとおり,「mobus」の文字からなるところ,「mobus」の文字は,特定の意味合いを有しない一種の造語といえるものであるから,本件商標からは,特定の観念が生じないものである。
そして,特定の語義を有しない造語にあっては,我が国において広く親しまれているローマ字読み又は英語読みに倣って称呼されるとみるのが自然であるから,本件商標の「mobus」の文字からは,「モーブス」及び「モーバス」の称呼を生ずるものである。
また,「o」部分にドイツ語で用いられるウムラウト記号が付されていることから,これをドイツ語風に読むとすれば,ウムラウト記号を付した「o」の部分は,「エー」と発音される(「プログレッシブ独和辞典」株式会社小学館)ものであるから,本件商標は,「メーブス」の称呼をも生ずるものと認められる。
イ 引用商標について
引用商標は,「MOEBIUS」の欧文字を書してなるものであり,該文字は,特定の意味合いを有しない一種の造語といえるものであるから,引用商標からは,特定の観念が生じないものである。
そして,引用商標からは,ローマ字読み又は英語読みに倣って,「モエビウス」,「モエビアス」及び「モービアス」の称呼を生ずるものと認められる。
ウ 本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標との類否について検討するに,外観においては,それぞれの構成態様に照らし,明らかな差異を有するものであるから,両商標は,外観上,明確に区別できるものである。
次に,称呼においては,本件商標から生ずる「モーバス」,「モーブス」及び「メーブス」の称呼と,引用商標から生ずる「モエビウス」,「モエビアス」及び「モービアス」の称呼とは,その構成音及び構成音数に明らかな差異を有するものであるから,それぞれを称呼するときは,語調,語感が相違し,判然と聴別し得るものである。
なお,引用商標の称呼については,前記(1)のとおり,「メービス」又は「メイビス」と記載されているところ,該称呼と本件商標から生ずる「モーバス」及び「モーブス」の称呼とは,語頭から第3音目までの「メービ」及び「メイビ」と,「モーバ」及び「モーブ」の音の明らかな差異を有するものであるから,互いに相紛れるおそれはなく,また,引用商標の該称呼と,本件商標から生ずる「メーブス」の称呼とは,いずれも4音という短い音数であって,後半における「ブス」と,「ビス」又は「イビス」の音の差異を有するものであるから十分に区別できるものである。
また,観念においては,両商標からは,特定の観念が生じないものであるから,比較することができず,両商標は,観念上,類似するところはないものである。
そうとすれば,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても十分に区別することができる非類似の商標である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
なお,申立人は,引用商標の指定商品「時計用・時計部品用・その他の精密機械用合成油」と,本件商標の指定商品「時計」とは,その区分及び類似群コードは相違するが,これらの商品が,同時に,また,同一の場所で取扱われるという事情があることからすると,実際の市場においては明らかに類似する商品である旨,主張する。
主として「時計」を販売する店舗においては,各種の「時計」を販売するとともに,その修理を行っていることが多いものということができる(甲8ないし甲10)。
しかしながら,商品「時計」の取引者,需要者は,広く一般の需要者であるのに対し,「時計油」は,該専門家が時計を修理する際に使用する商品であること等からすれば,「時計」と「時計油」とは,その需要者,取引者を異にし,また,用途,品質,原材料等をも異にする非類似の商品というのが相当である。
(3)商標法第4条第1項第10号及び同第15号該当性について
引用商標は,前記(1)のとおり,本件商標の登録出願時に,我が国において申立人の業務に係る「時計油」を表すものとして広く知られているものとは認めることができないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。
また,本件商標と引用商標とは,前記(2)のとおり,非類似の商標であり,明らかに相紛れるおそれのない別異の商標というべきである。
そうとすれば,商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者・需要者に引用商標を連想又は想起させるとはいえないものであって,その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第10号,同第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録は維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲 (本件商標)






異議決定日 2014-02-17 
出願番号 商願2012-89235(T2012-89235) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (W14)
T 1 651・ 263- Y (W14)
T 1 651・ 261- Y (W14)
T 1 651・ 271- Y (W14)
T 1 651・ 25- Y (W14)
最終処分 維持  
前審関与審査官 浜岸 愛 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 小川 きみえ
田中 亨子
登録日 2013-03-29 
登録番号 商標登録第5570684号(T5570684) 
権利者 ムーブス ゲーベーアール
商標の称呼 モーバス、モーブス、ムーブス、モブス 
代理人 山川 政樹 
代理人 竹原 懋 
代理人 稲岡 耕作 
代理人 川崎 実夫 
代理人 山川 茂樹 

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