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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) X03
審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) X03
審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) X03
管理番号 1285488 
審判番号 無効2013-890041 
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-06-20 
確定日 2014-02-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第5441025号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5441025号の指定商品中、「美容液」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
登録第5441025号商標(以下「本件商標」という。)は、「Up Serum」の欧文字を標準文字に表してなり、平成23年4月8日に登録出願、第3類「美容液,美容液の成分を含んでなるせっけん類」を指定商品として、同年9月5日に登録査定、同月22日に設定登録されたものである。

2 引用商標
被請求人が引用する登録第4222217号商標(以下「引用商標」という。)は、「UP」の欧文字及び「アップ」の片仮名を上下二段に横書きしてなり、平成8年9月26日に登録出願、第3類「化粧品」を指定商品として、平成10年12月18日に設定登録されたものである。

3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第79号証を提出した。
(1)本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
(2)4条1項11号に該当する理由
ア 「Serum」の自他商品識別力
本件商標中の「Serum」は、以下の理由により、化粧品のうち特に美容液を示す語として普通に用いられており、商品「美容液」について、自他商品識別力を有しないものである。
(ア)本件商標の出願に対する拒絶理由通知書(甲3)において、「その構成中に、指定商品との関係では、『美容液』を表す『Serum』の文字を有するものですから」と述べ、「Serum」が「美容液」を意味することが認定されている。このように、特許庁の審査官が、「Serum」が「美容液」を意味するものとして、判断している。
(イ)最近、多くの人に用いられているインターネット上の英語辞書「英辞郎on the WEB」(甲4)によれば、「Serum」は化粧品用語として「美容液」を意味することが示されている。
(ウ)化粧品業界のパンフレット、ちらし、雑誌、新聞、インターネット上の広告等をみれば、以下の証拠に見られるとおり、「SERUM」、「Serum」及び「serum」やその片仮名表記の「セラム」が「美容液」を表すものとして、極めて広く頻繁に用いられている(甲5ないし甲56)。(エ)さらに、化粧品業界の記事をみれば、「SERUM」、「Serum」及び「serum」並びにその片仮名表記の「セラム」が「美容液」を表すものとして、極めて広く頻繁に用いられている(甲57ないし甲70)。(オ)化粧品業界における書籍(甲75ないし甲79)に見られるとおり、「SERUM」が「美容液」を表すものとして、また、「美容液」を表すカテゴリー名として、記述的に用いられている。
以上のとおり上記の(ア)ないし(オ)の事実から見て、「Serum」や「セラム」が、「美容液」を意味するものとして化粧品業界の多くの企業や出版社等において広く用いられていることが明らかである。
イ 両商標の比較
本件商標は、上記したように、「Serum」が自他商品識別力を有しない以上、それが省略され、「Up」の部分から「アップ」の称呼が生じることがあるのは否定できず、したがって、本件商標から「アップ」の称呼が生じることがあることは明らかである。
ところで、本件商標の商標登録に対する異議申立の決定(甲71)において、「職権調査によっても、該文字が『美容液』について使用されていることは確認できたものの、『美容液』であることを表示するものとして認識されるというべき事情は見いだせなかった。」と認定されている。
しかし、甲第5号証ないし甲第70号証に見られるように、「Serum」は「美容液」であることを表示することが化粧品業界で認識されている。 また、被請求人は、ウェブ上の広告(甲72)において、「Up Serum」に(導入用美容液)という表示を付加して、「Serum」が美容液を意味することを自ら認めている。
したがって、被請求人を含めた化粧品業界において、本件商標中の「Serum」が「美容液」であることを表示する多くの事情があることは明らかである。
ここで、商標審査基準の考え方に照らして本件商標を見れば、本件商標のうち「Serum」の部分は、上述のとおり、化粧品を取り扱う業界において、「美容液」の品質を表示する部分としてごく一般的に使用され、取引されているものであり、それが付加されていない部分は「Up」であり、これと引用商標とは類似するものである。
一方、引用商標からは、当然「アップ」の称呼が生じる。
よって、本件商標は、引用商標と称呼上類似することは明らかであり、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、4条1項11号に該当する。
ウ 審決例
過去の審決(甲74)によれば、商標「PLASMA ESSENCE/プラズマ エッセンス」が先行商標「プラズマ」と類似すると判断されている。
つまり、当該商標から、美容液の意味を有する「ESSENCE」部分を除いた「PLASMA」部分と、先行商標の「プラズマ」を比較し、相互に類似すると判断している。
上記審決の考え方は、そのまま本件商標と引用商標との比較において当てはまる。すなわち、本件商標のうち「Serum」の部分は、「美容液」を表すもので自他商品の識別標識としての機能は果たし得ないものであるから、この部分を除いた「Up」と引用商標とを比較すれば、出所の混同を生じることは明らかであり、相互に類似するものである。
これは、実際の「化粧品」の取引市場において、たとえば、請求人が「UP」又は「アップ」と称した「セラム」、「serum」(美容液)を販売する場合において、被請求人が「Up Serum」、「アップセラム」と称した美容液を販売しているならば、互いに商品の出所の混同が生じるおそれがあることは明白な事実であるとするのが相当である。
(3)むすび
以上の理由により、本件商標は引用商標と同一又は類似であって、その商標に係る商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。

3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第15号証を提出した。
(1)4条1項11号に該当しない理由
ア 本件商標について
本件商標は、「Up Serum」の欧文字を標準文字で書してなり、その構成各文字は、ともに頭文字を大文字、他を小文字とする同一の書体で等間隔に書され、間にスペースを介して横一連に結合され、外観上まとまりよく一体的に表されており、これより生ずる「アップセラム」の称呼もよどみなく一気一連に称呼できるものである。しかも、構成中の「Up」の文字は、その構成上、後ろに続く文字を修飾する語としてこれと一体をなす機能を有することから、本件商標は、その構成上、全体として一体不可分の商標と認識され、かつ、全体として成語としての特定の観念を有することのない造語商標と認識されるものである。
イ 引用商標について
引用商標は、横書きの欧文字「UP」と、同じく横書きの片仮名「アップ」を上下二段に配してなるものである。かかる構成においては、下段の「アップ」は上段の「UP」の称呼を特定するものと認識されるため、「アップ」の称呼を生じ、英語の「UP」に相応する「上へ、上方に、の上に、上りの、上昇」等の観念を生ずる。
ウ 両商標の対比
本件商標と引用商標とは、上記のとおりの構成をなし、外観において顕著な差異を有するものであるから、両者は外観において本件商標の需要者、取引者に混同を生じさせることがないことは明らかである。また、本件商標から生ずる「アップセラム」の称呼と、引用商標から生ずる「アップ」の称呼は、音数において顕著な差異があり、音量、音調、音感いずれの点からも両者は容易に聴別することができるものである。
さらに、引用商標が英語の「UP」に相応する日本語の観念を有するのに対して、本件商標は特定の具体的観念を生じるものではなく、観念の有無の点において両者は顕著に差異を有するという関係において、観念上からも両者を混同することはないというべきである。
以上を総合して、本件商標と引用商標とは、外観、称呼、観念いずれの点においても彼此混同することのない非類似の商標というべきである。
エ 「Serum」の自他商品識別力について
請求人は、「Serum」の語は、商品「美容液」との関係において自他商品識別力を有しないから、本件商標から「アップ」の称呼が生じ、本件商標は引用商標と称呼において類似すると主張する。
しかし、請求人の上記主張は誤りというべきである。
(ア)本件商標の構成
本件商標の構成各文字は、ともに頭文字を大文字、他を小文字とする同一の書体で等間隔に書され、間にスペースを介して横一連に結合され、外観上まとまりよく一体的に表されており、これより生ずる「アップセラム」の称呼もよどみなく一気一連に称呼できるものである。しかも、本件商標を構成する2語の中の「Up」の文字は、副詞、前置詞、形容詞、名詞、動詞等多様な性格とそれに相応する多様な意味を有する語であるが、例えば、「up escalator(上りのエスカレーター)」のように、これが他の語の前に位置するときは、形容詞としての「上りの、上へ向かう」のごとき意味を有し(乙3)、後ろに続く文字を修飾する語として、これと一体をなす性格を持つ語であるといえるところから、その構成文字全体をもって一体不可分のものとみるのが自然である。かかる「Up」の形容詞としての後続語修飾機能は、後続語の自他商品識別力の有無によって左右されるものでないことは明らかであるから、ここで本件商標における「Serum」の自他商品識別力の有無は論ずるまでもないところではあるが、請求人は、これを問題とするので、以下に、「美容液」との関係における「Serum」の自他商品識別力について詳述する。
(イ)「Serum」の意義
「Serum」の語は、ジーニアス英和辞典第4版(乙4)によれば、「血清」の意味を有し、中学学習語約1,150語、高校学習語約3,100語及び大学生・社会人に必要な語約5,300語までの合計約9,550号にも含まれない難解語に位置付けられている。また、研究社英和中辞典第7版(乙5)によれば、「1.漿液、リンパ液、2.血清」の意味を有し、最重要語約2,000語、それに続く基本語約5,000語の合計約7,000語にも含まれず、次の約8,000語に含まれる難解語に位置付けられている。ここで日本語に訳された「血清」についても、広辞苑で「血液が凝固するときに血餅から分離する黄白色透明の液体。血漿からフィブリノゲンを除いたもので、アルブミン・グロブリンなどの蛋白質(血清蛋白質)を含む。」とされており(乙6)、日本語に訳された語としても難解語である。「漿液」に至っては広辞苑にさえ掲載されていない語である。
したがって、「Serum」の語は、極めて難解な語に位置付けられるものである。
ジーニアス和英辞典第3版(乙7)には、「美容液」は、「serum」ではなく「beauty essence」となっている。研究社新和英中辞典には「美容液」の項目さえなく、一般的に用いられている英和辞典と和英辞典においては、「Serum」と「美容液」との関係は見出すことができない。
また、「セラム」については、現代用語の基礎知識他のカタカナ語辞典、池田書店「スキンケア美容医学事典」にも記載はなかった。
次に、「美容液」の意義については、「正しいスキンケア事典」(乙8)に記載があり、ここには、スキンケアのステップとして、クレンジング?洗顔?化粧水?美容液?乳液&クリ?ム?UVケアのステップが紹介され、この中の「美容液」の項に「美容液」の定義について次のような記載が発見された。
「美容液の大きな特徴は、保湿成分や美白成分など、有効成分が豊富に含まれていること。肌にうるおいや栄養を与える、いわばスキンケアのメインとなる重要なアイテムです。美容液は、密度が濃くて、その分サイズは小さめのものが多いようです。じつは、『こういうものが美容液』という正確な定義はありません。ですから、各メーカーがいろいろなものを美容液として発売しています。ジェル状のもの、クリームのようにコクのあるもの、化粧水のように水っぽいもの、テクスチャーもさまざまです。」
さらに、美容液の種類として、「保温美容液」、「美白美容液」、「アンチエイジング美容液」の3種類が紹介されており、「保湿美容液」には、「セラミドやヒアルロン酸、コラーゲンなどの保湿成分が配合されたもの。肌の水分をキープして、うるおいを逃さない効果がある。」の説明がある。「美白美容液」には、「ビタミンC誘導体やアルブチン、カモミラETなど、美白成分を含む。シミのもとであるメラニンの生成をブロックするなどの作用がある。」、「アンチエイジング美容液」には、「レチノール、ナイアシン、ポリフェノールなどの有効成分を配合したもの。ハリや弾力のもととなる綿維芽細胞に働きかけるものが多くある。」との説明が付されている。
「スキンケア基本事典」にも「美容液」についての記載があるが、その記述内容は、上記「正しいスキンケア事典」のものと殆ど同じと言っていいほどである。
上記いずれのスキンケア事典における「美容液」に関する記述の中にも、「Serum」や「セラム」に関する記述は見出すことができない。
また、「Wikipedia」には、「『美容液(びようえき)』とは基礎化粧品の一つ。保温成分や美白成分などの美容成分が濃縮して配合されている。通常、美容成分の肌への吸収性を高めるため、化粧水等で肌を整えた後に、油分を含む基礎化粧品を使用する前に肌に塗布することが多い。1975年発売のコーセーRCリキッドが先駆け。さらに1980年代に外資系化粧品メーカーであるエスティローダーと資生堂が高機能の美容液と銘打った商品を売り出した後、日本においても急速に広まった。有効成分が高濃度で配合されているために、通常、他の基礎化粧品と比較して高価格であることが多い。」と記載されている(乙9)。しかし、ここにおいても「Serum」や「セラム」の語はまったく用いられていない。
(ウ)ここで、美容液に関する商品ランキングリストに現れる商品名をみると、美的ベストコスメランキングの美容液部門ベストコスメランキング2010(乙10)には、ベスト10に挙げられた10件の中に、1件だけその商品名の一部に「セラム」の語が用いられている。その他の9件中には「セラム」の語は全く用いられておらず、「エッセンス」の語が用いられているものが1件見出される。
美白美容液ランキング(乙11)には、第4位までの5商品中、1件に「セラム」の語が用いられており、2件には「エッセンス」の語が用いられている。
しわ対策の美容液おすすめランキング(乙12)においては、第5位までの5件中、1件に「セラム」の語が、2件に「エッセンス」の語が用いられている。
ここにおいては、国内で販売されている美容液の商品名には、その一部に「セラム」の語が用いられているものがある一方、「エッセンス」の語が用いられているものもあり、これらの語が全く用いられていないものも多いという実情を把握することができる。
さらに、「セラム」の語は、単に商品の一部として用いられているのみで、ここから「セラム」の語がその商品の含有成分、機能等何らかの品質内容を表示するものとして用いられているのか否か全く窺い知ることができない。
したがって、美容液の取引者、需要者が、その商品名の一部に「セラム」の語が用いられた商品に接したとき、その「セラム」の語から、「エッセンス」の語が用いられた商品あるいはこれらの語が用いられていない商品との間に、いかなる具体的な品質上の差異を有するかについて認識することは困難であるという実情を理解することができる。
また、一部のブログには、美容業界に身を置く個人が、「セラム」と「エッセンス」との違いについて自問自答し、結局はよく分からない、とするものがあり(乙13)、上記の実情を反映したものということができる。
以上により、美容液との関係における「セラム」ないし「Serum」の語は、難解かつ曖昧な語であって、これが美容液について使用されているからといって、それが直ちに美容液の特定の成分や機能などの具体的な品質を表示するものでないことは明らかであり、請求人提出の証拠をもってしても、「Serum」が美容液について自他商品識別力を欠くということができるものでないことは明らかであり、これを自他商品識別力なしとする請求人の主張は誤りというべきである。
したがって、本件商標を構成する「Up」と「Serum」の語は、いずれか一方が、指定商品の取引者、需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるものでもなく、また、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる関係にもないことが明らかであるから、本件商標は一体不可分の商標と評価されるべきものである。
(エ)登録例にみる「Serum」の自他商品識別力
「serum」の語が、商品「美容液」について、自他商品識別力を有しないものとすれば、特許庁の審査登録の実務において「serum」を含む商標が、「化粧品」を指定商品に含むものとして登録を許されることはないはずであるが、本件商標の登録日の前後にわたって多数の登録がされている(乙14)。これは「美容液」について「serum」が品質表示語、すなわち、自他商品識別力を欠く語でないことの証左というべきである。
同様に、指定商品に「化粧品」を含む「○○○」からなる商標と「○○○+Serum」の結合商標とが、多数併存登録されている(乙15)。このことは、「美容液」を含む「化粧品」について「○○○+Serum」からなる商標が、一体不可分のものとして登録された証左ということができる。 オ 本件商標と引用商標との類否
以上を総合すれば、本件商標は、全体として一体不可分の商標と評価されるべきことは明らかであって、本件商標から生ずる称呼は「アップセラム」のみというべきことは明らかである。よって、本件商標と引用商標とは、称呼において類似することのない商標というべきである。
なお、請求人は、本件商標を、引用商標と称呼においてのみ対比して、両者の類似を主張するが、本件商標は、その外観においても引用商標と顕著に相違しており、観念の有無の違いを含めて、引用商標とは顕著な差異を有するものであり、全体として彼此混同のおそれのない非類似の商標というべきことは明らかである。
(2)結論
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号には該当せず、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすることはできない。

4 当審の判断
(1)「Serum」について
ア 請求人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)2012年3月19日付「週刊粧業」(甲57)及び同年8月8日付「粧業日報」(甲63)、2010年11月10日付「大阪日日新聞」(甲58)、2010年3月11日付、2009年11月19日付及び2007年12月20日付「訪販ニュース」(甲59ないし甲61)、2005年9月26日付「週刊粧業・訪販ジャーナル」(甲62)の記事中に、いずれも、「セラム(美容液)」との記載がある。
(イ)「ナチュラル美容手帖」(甲75)には、「SERUM 美容液」の項があり、ロクシタンのほか各社から販売される商品(美容液)の説明が掲載されている。
また、「オーガニック・スキンケア入門」(甲76)、「真実のナチュラルコスメ読本」(甲77)及び「美容事典」(甲78)には、「Serum」の項、「大人のオーガニック&ナチュラルコスメ」(甲79)には、「美容液 Serum」の項がそれぞれあり、商品(美容液)が掲載されている。
(ウ)化粧品を取り扱う者に係るパンフレット(甲5)において、「SERUM(BODY)」、「SERUM(FACE)」及び「SERUM」の項があり、同じくパンフレット(甲15)において、コンディショニングや化粧水と並んで、「セラム」の項がある。いずれにも、商品(美容液)が掲載されており、パンフレット・ちらしにおいて、「美容液」の項に、「○○セラム」と表示する商品が掲載されている(甲6,甲13,甲20、甲30及び甲35)。
そのほか、化粧品を取り扱う者に係るパンフレットに、「○○セラム」との表示とともに、商品の写真が掲載され、それらにはいずれも「美容液」である旨の説示が掲載されている(甲14、甲18、甲19、甲21、甲22、甲24ないし甲29及び甲31ないし甲34)。
また、パンフレットにおいて、容器に「SERUM」が表示された商品の写真が掲載され、「○○セラム」と表記した商品として、「美容液」であるとの説示がある(甲36)。
(エ)WEBサイトにおける掲載記事中に、「SERUM 美容液」の項があり、「○○セラム」との表示とともに、商品の写真が掲載され、それらにはいずれも「美容液」である旨の説示が掲載されている(甲12)。
また、WEBサイトにおける掲載記事中、「○○セラム」との表示とともに、商品の写真が掲載され、それらにはいずれも「美容液」である旨の説示が掲載されている(甲41ないし甲43、甲45ないし甲48、甲50ないし甲52及び甲56)。
さらに、WEBサイトにおける掲載記事中に、「Serum(美容液)」の項があり、商品が掲載されている(甲8)。
(オ)「serum」又は「セラム」について、WEB上の英語辞典や美容を内容とするサイトには、「serum 4.セラム、美容液◆化粧品用語」(甲4)との記載、「セラムとは、医学用語では本来『血清』を意味し、細胞培養の際に血清が重要な役割を果たすことから、『皮膚の細胞再生をうながす機能あるいは美容液』を表します。」(甲66)との記載、「セラムとは、皮膚の再生を促進する効能や美容液のことをいいます。」(甲67)などの記載がある。
イ 以上によれば、「Serum」、「SERUM」、「serum」、「セラム」の文字は、「皮膚の再生を促進する効能や美容液」を意味するものであって、化粧品を取り扱う業界においては、「美容液」を表す文字として取引上普通に用いられている実情があるというのが相当である。
(2)本件商標及び引用商標
ア 本件商標
本件商標は、「Up Serum」の文字からなるところ、「Up」と「Serum」の間に1文字程度の空白が存し、両文字からなると容易に看取し得るものである。そして、両文字が結合して熟語的な意味合いを表現するものとなっているなど、これを常に不可分一体のものとしてのみ観察しなければならないとすべき合理的な理由及び証拠はみいだせないものである。
しかして、上記(1)の実情に照らし、化粧品、殊に「美容液」との関係においてみれば、本件商標の「Serum」部分は、商品の品質を表示したと認識される場合が決して少なくないというのが相当である。
そうとすれば、本件商標において、「Up」が出所の識別上で強く支配的印象を与える部分というべきであるから、これに相応して、「アップ」の称呼、「上へ」の観念をも生じるものである。
してみれば、本件商標は、構成全体に相応した「アップセラム」の称呼のほか、「アップ」の称呼をも生じ、また、「上へ」の観念を生じるものである。
イ 引用商標
引用商標は、上段に「UP」、下段に「アップ」の文字を配してなるものであり、下段の片仮名は上段の欧文字の表音としても自然なものである。
してみると、引用商標は、構成文字に相応して、「アップ」の称呼、「上へ」の観念を生じるものである。
ウ 商標の類否
(ア)本件商標と引用商標とを比較すると、外観構成全体を対比すれば相違を有するものであるが、本件商標の要部といえる「Up」と引用商標の欧文字部分とは、同じ欧文字綴りであって、近似した印象を与えるものである。 また、本件商標と引用商標の称呼についてみると、「アップ」の称呼を共通にするものであるから、称呼が同一であることによって、聞き違え、取り違えられて相紛れるおそれがあるものである。
さらに、本件商標の要部「Up」と引用商標からは、いずれも「上へ」の観念が生じるから、両者の観念は共通するものである。
しかして、上記(1)の実情のもと、本件商標と引用商標の外観、称呼及び観念から受ける印象・記憶・連想を総合してみた場合、これらを同一又は類似の商品(美容液)について使用したときには、同一の事業者の製造又は販売に係る商品であるかの如く誤認混同されるおそれがあるというのが相当であるから、本件商標は、引用商標に類似する商標と判断されるものである。
(イ)被請求人は、登録例を挙げて、これらは、「美容液」を含む「化粧品」について「○○○+Serum」からなる商標が一体不可分のものとして登録された証拠であり、本件商標と引用商標も非類似である旨主張している。
しかしながら、商標の類否は、検討されるべき商標について、当該判断時の取引の実情等を勘案しつつ、個別具体的に判断されるべきものである。被請求人が示す登録例と本件商標とは構成を異にするものである上、本件については、上記(1)認定の実情のもと、前記のとおり判断するのが相当というべきであるから、被請求人の主張は採用できない。
(3)商標法第4条第1項第11号該当性について
上記のとおり、本件商標は、引用商標に類似する商標と判断されるものである。そして、本件商標の指定商品中「美容液」については、引用商標の指定商品「化粧品」に包含されるものであるから、指定商品において相抵触すること明らかである。
したがって、本件商標は、指定商品「美容液」について、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
しかし、本件商標の指定商品中「美容液の成分を含んでなるせっけん類」は、引用商標の指定商品と商品の用途、原材料が異なるものであり、その指定商品と同一又は類似する商品に使用をするものとは認められないから、引用商標をもって、商標法第4条第1項第11号に該当するものとはいえない。
(4)まとめ
以上のとおり、指定商品「美容液」について、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、同法第条46第1項第1号により、その登録を無効とすべきものであり、その余の指定商品については、その登録を無効とすべきものではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2013-12-03 
結審通知日 2013-12-06 
審決日 2013-12-20 
出願番号 商願2011-24813(T2011-24813) 
審決分類 T 1 11・ 261- ZC (X03)
T 1 11・ 262- ZC (X03)
T 1 11・ 263- ZC (X03)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 田中 幸一 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 前山 るり子
渡邉 健司
登録日 2011-09-22 
登録番号 商標登録第5441025号(T5441025) 
商標の称呼 アップセラム、アップセルム、ユウピイセラム、ユウピイセルム、セラム、セルム 
代理人 深見 久郎 
代理人 櫻木 信義 
代理人 森田 俊雄 
代理人 竹内 耕三 

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