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審決分類 審判 判定 その他 属さない(申立て成立) W16192728374142
管理番号 1281598 
判定請求番号 判定2013-600021 
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2013-12-27 
種別 判定 
判定請求日 2013-06-05 
確定日 2013-11-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第5539378号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 役務「トリックアート美術品の展示、トリックアート美術品の展示施設の提供、トリックアート美術品の制作」に使用するイ号標章は、登録第5539378号商標の商標権の効力の範囲に属しない。
理由 第1 本件商標
本件登録第5539378号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成24年2月15日登録出願、第16類「紙製包装用容器,紙製のぼり,紙製タオル,荷札,印刷したくじ(「おもちゃ」を除く。),紙製テーブルクロス,紙類,はがき,絵はがき,複製画の絵はがき,ノート,本カバー,クリアファイル,下敷き,シール,ステッカー,文房具類,ホログラムシール,絵本,雑誌,絵画作品集,イラスト作品集,カレンダー,印刷物,複製画,書画,グラフィック複製画,写真」、第19類「 プラスチック製壁板,リノリューム製壁板,木製壁板,陶磁器製壁板,れんが,フェンス(金属製のものを除く。),階段(金属製のものを除く。),屋根材(金属製のものを除く。),プラスチック製外壁材,ステンドグラス窓,コンクリート製建築用壁材,セメント製外壁板,コンクリート製カーテンウォール,壁用又は壁材用の木材,壁材用の木製パネル板材,木材製外壁板,アルミニウムと組み合わせてなる木製カーテンウォール,石材製外壁板,石材製壁板,ガラス製壁材,ガラス製外壁板,石製郵便受け,建具(金属製のものを除く。),灯ろう,石製彫刻」、第27類「洗い場用マット,畳類,敷物,壁掛け(織物製のものを除く。),タペストリー(織物製のものを除く。),じゅうたんの下敷き,カーペットの下敷き,木製の壁掛け,人工芝,体操用マット,壁紙,ビニール製壁紙,プラスチックスシート製の壁紙,天井用壁紙」、第28類「遊園地用機械器具,愛玩動物用おもちゃ,おもちゃ,人形,紙製おもちゃ,カードおもちゃ,いたずらおもちゃ,パズルおもちゃ,絵合わせパズル,立体パズルおもちゃ,ジグソーパズル,手品おもちゃ,万華鏡,トランプ,手品用具,遊戯用器具,釣り具」、第37類「塗装工事,建設工事,壁工事,建設工事に関する助言,家具の修理,看板の修理,身飾品の修理,おもちゃの修理,遊戯用器具の修理」、第41類「知識又は技芸の教授,セミナーの企画・運営又は開催,デザインに関する展示会の企画・運営又は開催,美術品の展示,絵画の展示,博物館・美術館の展示に関する情報の提供,アルバム・絵本・カレンダーの制作の企画,書籍の制作,娯楽・文化に関するイベントの企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),撮影会などのイベントの企画・運営又は開催,娯楽施設の提供,公開・展示を行う美術館の提供,美術品の展示施設の提供,遊戯用器具の貸与,絵画の貸与,書画の貸与,写真の撮影」、第42類「建築物の設計,デザインの考案,壁画デザインの考案,グラフィックアートデザインの考案,印刷物のデザインの考案,内装デザインの考案,コンピュータプログラム設計,コンピューター用プログラムの提供,画像・イラスト・文字・図形を作成・編集・加工するための電子計算機用プログラムの提供」を指定商品および指定役務として、同年11月30日に設定登録されたものである。

第2 イ号標章
請求人が役務「トリックアート美術品の展示」、「トリックアート美術品の展示施設の提供」、「トリックアート美術品の制作」に使用をする標章は、「TRICK ART」の欧文字を横書きしてなるものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の判定を求めて、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
1 判定請求の必要性
請求人が、イ号標章を使用して、「トリックアート美術品の展示」、「トリックアート美術品の展示施設の提供」、「トリックアート美術品の制作」を行ったところ、被請求人から請求人及び請求人の取引先に、「Trick Art」や「トリックアート」の名称の使用が、本件商標の商標権を侵害する旨の通知がなされた(甲第2号証及び甲第3号証)。
請求人は、請求人の取引先に対して、イ号標章の使用が本件商標の商標権を侵害しないものであることの説明を行う必要があるため、概説明における客観性のある根拠とすべく、本件判定を求める。
2 イ号標章が本件商標の商標権の効力の範囲に属しないとの説明
「トリックアート」の語ならびにその英文字表記「TRICK ART」は、「だまし絵」の意の普通名称であり(甲第4号証ないし甲第8号証)、本件商標権の効力の範囲は、識別力のあるデザイン化された文字の外観と類似するもののみに限定されるものであって、称呼が共通するもの全てにその権利範囲が及ぶものではない。
よって、イ号標章を、「トリックアート美術品の展示,トリックアート美術品の展示施設の提供,トリックアート美術品の制作」のいずれの役務に使用する行為も、本件商標の商標権の効力の範囲に属しないものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は「イ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲内に属する」旨の判定を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第29号証を提出した。
1 「トリックアート」「Trick Art」が意味するもの(定義)と、日本におけるその歴史について
「トリックアート」「Trick Art」は、被請求人である株式会社エス・デーの創業者剣重氏によって創られた和製英語としての造語である。
剣重氏が創り上げたトリックアートは、トロンプ・ルイユの技法を取り入れた独特の絵画作品であり、それぞれの絵のコンセプトに沿って、「見て、触って、写真を撮って遊べる体験型のアミューズメントアート」ということができ、トリックアートとトロンプ・ルイユは異なる概念である。
1980年代にトリックアートは誕生し、1991年にトリックアート最初の商業施設となるJAIB美術館をオープンし、途中、廃館に追い込まれた展示施設もあるが、その後、全国各地に数多くの常設展示施設を設置し、期間限定のイベントも多数実施してきた。
被請求人のこうした活動は、新聞・雑誌等でも紹介されている(乙第12号証ないし乙第24号証)。
このように、トリックアートとは、あくまでも被請求人の創業者である剣重氏が創り上げた、「見て、触って、写真を撮って遊べる体験型の新しいアミューズメントアート」の世界であり、決してトロンプ・ルイユでも、その訳語である騙し絵でもなく、かつ一貫して実施し、世に広めてきたのは、創始者である被請求人に他ならない。
2 他社による模倣、盗用行為の多発
2010年頃から、トリックアートを名乗って、全国百貨店等の期間限定イベントを開催するなど、被請求人のビジネスモデルを模倣し、盗用するものが出てくるようになっており、請求人もその内の1社である。
そして、請求人の代表者と被請求人とは、かつて取引関係を有していたが、請求人代表者による支払を巡る金銭トラブル等により、被請求人は請求人代表者との取引を停止した。
また近年、第三者による模倣・盗用行為は、日本国内に限らず、韓国、中国、台湾、東南アジア諸国でも見られるようになってきた。
3 被請求人による知的財産の保護強化対策について
被請求人は、こうした国内外の盗用・模倣行為を排除するため、数々の対策を講じている。
「Trick Art」(通常書体又は本件商標態様)は、既に韓国・台湾においても、絵画の展示等を指定した登録商標として保護されており(乙第25号証及び乙第26号証)、東南アジア各国にも出願済である。世界各国政府においてTrick Artは普通名称ではなく、被請求人が創造した造語であって、美術作品の展示等を指定しても出所表示機能を有しており、登録商標としての要件を満たしていると判断されている。
4 本件商標について
請求人は、本件商標の権利範囲がその書体に限定されるものであると主張しているが、断じて受け入れることができない。
本件商標は、審査の過程において(ア)書体に顕著性が無い、(イ)Trick Art及びトリックアートは普通名称であり、指定商品・役務との関係において品質表示に過ぎない、との拒絶理由を受けたが、被請求人の意見により拒絶理由は覆され登録されたものである。
本件商標は、まさに商標法第1条に記載のとおり、被請求人が創造し、一貫して使用してきた「Trick Art」及び「トリックアート」商標を保護し、被請求人の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護するために、特許庁により登録されたものである。
5 請求人が提示した各証拠について
(1)甲第4号証について
甲第4号証は、「大辞泉(第二版)下巻」であり、一民間企業が発行する辞書にすぎず、全ての説明内容が事実に基づき、正確であることが保証される出版物ではない。また、「大辞泉(第二版)下巻」のトリックアートの記述は、トロンプ・ルイユの説明に過ぎず、被請求人が25年に渡って築きあげてきたトリックアートの内容とは異なっている。
また、もともと造語でありながらも辞書に掲載されている言葉だからと言って、全てが普通名称(普通名詞)である訳ではなく、商標として登録されているもの(例えば、「カップヌードル」、「セロハンテープ」、「ブルートゥース」等)も掲載されている。
また、「ブルートゥース」は、登録商標でありながら、大辞泉には「携帯情報端末などの無線接続に用いられる通信規格。パソコン、携帯電話などでケーブルを使わずにデータの送受信ができる。」とだけ説明され、「商標名」との記述はどこにもない。
このように、甲第4号証は、事実を全て正確に記載されていることが何ら担保されていない単なる出版物にすぎない上、事実、「ブルートゥース」を一例としてその記述内容は不正確である。よって、そこに掲載されたトリックアートの説明(しかも間違った説明)だけで、これを普通名称であるとする請求人の論理は成立しない。
(2)甲第5号証について
甲第5号証「imidas(イミダス)」もまた集英社という一民間企業が発行する辞書にすぎず、甲第4号証と同様に、全ての説明内容が事実に基づき、正確であるとは限らない。しかも、甲第5号証のトリックアートの記述の内容は、「だまし絵。目の錯覚などを用いて鑑賞者をだます美術作品。」となっており、甲第4号証と同様にトロンプ・ルイユの説明にすぎず、被請求人のトリックアートとは異なっている。
したがって、甲第5号証の存在もまた、「トリックアート」が普通名称であるとする根拠にはならない。
(3)甲第6号証について
甲第6号証は、ネット上から誰でも編集可能なウィキペディア(ネット上のフリー百科事典)の記述であって、その記述内容もトロンプ・ルイユに関するものであることから、これをもって「トリックアート」が一般名称・普通名称であるとの根拠とはいえない。
請求人は、ウィキペディアは、「一般需要者がどのように理解しているか、については辞書よりも敏感に反映している」と主張しているが、誰でも編集可能である以上、請求人本人が故意に記載した可能性を排除できず、請求人が本判定請求を有利に進めるために、事前に「故意に自ら記述したのではないか」との疑念を抱かせるものである。自ら編集に関与していないことを証明できない以上、そもそも証拠としての能力を欠くものである。
仮に、請求人が甲第6号証の編集に直接又は間接的に関与していないことを証明できたとしても、甲第6号証は、トロンプ・ルイユに関する記述に過ぎず、トリックアートが一般名称・普通名称であるとの根拠にはならない。
トロンプ・ルイユ=トリックアートと認識している人が存在するからと言って、被請求人の「トリックアート」が普通名称である証拠とは成り得ない。
(4)甲第7号証1について
甲第7号証の論文中の「トリックアートが実際にどのようなものであり、この語が正確には、いったい何を指しているのかについては、じつはまだ、はっきりとした共通了解のようなものがあるわけではない。」との記述こそが、トリックアートが何かを特定できる明確な普通名称ではないことを、示している。
また、該論文では、広義のトリックアートが最上位概念であり、その中に、「トロンプ=ルイユ」、「狭義のトリックアート」、「モダン・アートとしてのトリックアート」の3つがあると説明しているが、この説明は、請求人が主張する「トロンプ・ルイユ」=「騙し絵」=「トリックアート」の説明とも矛盾している。この説明は、甲第4、5号証の辞書の説明とも一致しておらず、請求人が提出した各証拠に一貫した論理性は無い。
(5)甲第7号証2について
甲第7号証2は、同じく「トリックアートの世界」と題する書籍の中の川西氏の論文であるところ、当該説明には、トリックアートが普通名称であることの記述は無く、また、その内容はトロンプ・ルイユ、騙し絵についてのものであり、被請求人の「トリックアート」に関するものではない。
このように、専門家であっても正確に理解がなされていない言葉が、万人が等しく正確かつ共通に理解する普通名称と言うことはできない。
更に言えば、請求人が提出した甲第7号証1、2に記載の論文は、美術の世界の専門家よるものであり、アミューズメントであるトリックアートの世界の専門家によるものではないため、剣重氏のこともトリックアートのことも、全く理解していないで書いたものと言わざるを得ない。
(6)甲第8号証について
甲第8号証は、被請求人が当事者の審決である。当時の被請求人は、知的財産権に関する知識・経験・認識の不足から拒絶査定を覆すことができなかっただけであり、決して審決内容を「容認」したわけではない。
6 「TrickArt」は被請求人に使用の独占権があり本件商標の効力の範囲内であることについて
トリックアートとは、被請求人の創業者が創り上げた、「見て、触って、写真を撮って遊べる体験型の新しいアミューズメントアート」の世界であり、決してトロンプ・ルイユでも、その訳語である騙し絵でもない。
また、意味を特定できないながらも「何となくトリックアートを使っている者」が存在する現実、即ちトリックアートが、広く一般に知られ、使用されている言葉であることは認めるとしても、だからと言って、錯覚や視覚のトリックを利用しアミューズメントとして大衆に提供する行為が、トリックアートを特定する普通名称であることは証明できない。
被請求人は、こうした現実・実態があるからこそ、錯覚や視覚のトリックを利用しアミューズメントとして大衆に提供する「トリックアート」を、被請求人が運営するアミューズメント施設としての出所を示す商標権として保護し、不明確な使用や普通名称化することを阻止しているのである。
現在の法体系では、錯覚や視覚のトリックを利用し、アミューズメント化するトリックアートのビジネスモデル自体は、残念ながらいかなる知的財産権法によっても保護されず、誰でも自由に行うことができる。しかしながらその名称は、自ら創造・創作し、需要者との間で独自の信用を構築すべきであって、創始者・成功者の名声・名称にただ乗りすることは、限りなく不正競争行為であると言うべきであり、また法律以前の問題としても当然許されるべき行為ではない。
トリックアートは、被請求人が、25年に渡って一貫して実施してきた「トリックアート美術館」等においてのみ体験できるものであり、だからこそ、乙第4号証ないし乙第11号証に示す被請求人の那須美術館、お台場美術館等には、毎年多くの来場者があり、かつ、乙第27号証ないし乙第29号証に示すとおり、海外からの旅行者も満足して楽しんでいるのであって、請求人がイ号標章を用いて実施している展示施設とは、作品の質、面白さ、完成度において大きな差異がある。
請求人による紛らわしい行為は、被請求人が需要者との間で長年に渡り築き上げてきたトリックアートの信用を棄損し、被請求人の経済的損失にもつながるものであり、断じて容認できない。
そして、請求人がイ号標章として実際に使用しているのは、被請求人が商業化した「トリックアート」ビジネスであって、辞書記載の「トリックアート=トロンプ・ルイユ(騙し絵)」ではない。
7 結論
被請求人が創造し、日本で初めて使用し、25年間、一貫して使用してきた「トリックアート」「Trick Art」は、請求人が各証拠として例示したトロンプ・ルイユ(騙し絵)ではなく、全く別次元の概念である。
トロンプ・ルイユ(騙し絵)を意味する言葉(同義語)として、一部にトリックアートが誤って使用されている事実があるからと言って、これとは次元の異なる別の意味を有する被請求人のオリジナルである「トリックアート」が一般名称となるものではない。請求人が日本で初めて創り上げたトリックアートはトリックアートであり、それ以上でもそれ以下でもない。ましてやトロンプ・ルイユ(騙し絵)を意味する同義語では決してない。
本件商標は、本件商標に係る審査と登録に至るまでの過程から判断し、また上記した全ての答弁の理由から、「トリックアート」の称呼も含めて、被請求人だけに許される独占の範囲内であると確信する。
以上のとおり、本件商標から生じる称呼である「トリックアート」(イ号標章)は、本件商標の効力の範囲内である。

第5 当審の判断
1 商標権の効力の範囲について
本件判定は、イ号標章が被請求人の所有に係る本件商標の商標権の効力の範囲に属するものか否かについての判定を求めるものである。
そもそも商標権の効力は、商標権の本来的な効力である専用権(使用権)にとどまらず、禁止的効力(禁止権)をも含むものであって、指定商品と同一又は類似の商品についての登録商標と同一又は類似の商標の使用に及ぶものであるが(商標法第25条第37条)、同時に同法第26条第1項各号のいずれかに該当する商標(他の商標の一部となっているものを含む。)には、その効力は及ばないものとされている。
そして、例えば、同法第26条第1項第3号には、「当該指定役務若しくはこれに類似する役務の普通名称、提供の場所、質、…を普通に用いられる方法で表示する商標」と規定されているところ、イ号標章が同号に該当する商標であれば、本件商標の商標権の効力は及ばないことになるので、以下検討する。
2 「トリックアート」の文字について
(1)請求人、被請求人から提出された証拠および職権での調査によれば、「トリックアート」の文字について、以下の事実が認められる。
ア 辞典
(ア)大辞泉第二版(小学館発行)では、トリックアートを、「(trick art)視覚的な錯覚を利用した作品。実物の窓や扉があるように描かれた壁画、実際にはありえない立体を描いた絵画など。」と説明している。(甲第4号証)
(イ)imidasイミダス2006(集英社発行)では、トリックアートを「(trick art)だまし絵。目の錯覚などを用いて鑑賞者をだます美術作品」と説明している(甲第5号証)。
イ 書籍、新聞記事
(ア)書籍「トリック・アートの世界」(美術館連絡協議会発行)の「名画と遊ぶ?福田美蘭と<ラス・メニーナス>」(加藤哲弘著)には、「広義のトリック・アートには、どうやら3つの種類がある。再現の迫真性を追求する西洋美術の伝統に根ざした『トロンプ=ルイユ』、錯視や視覚のトリックを利用し多くの場合はアミューズメントとして大衆に提供されるトリック・アート、最後に、イメージの画一化に反抗しながらヒトの視覚構造や視覚習慣に大胆に挑戦する、モダン・アートとしてのトリック・アートなどがそうだ。」との記載がある。(甲第7号証1)
(イ)朝日新聞1991年1月12日
「全国初のトリックアート」の見出しのもと「ルーブル美術館が所蔵する印象派の絵画や彫像に、トリックをちょっぴり仕掛けた百二十点の模写絵の美術館があす十三日、江戸川区内にオープンする。絵画の人物の手足が額縁の外に飛び出していたり、本物の彫像がそこにあるように見えたり・・・・・全国で初めてのトリック・アートの美術館となる。」との記載がある。(乙第12号証)
(ウ)日本経済新聞 1991年1月19日
「メトロポリス新景 名画が飛び出す?」の見出しのもと、「このところ美術館が名画の模写を収集する動きが全国的に広まりつつあるが、同館のユニークな点はただの模写にとどまらず、平板にペンキとセラミック粉を使った特殊なペイント方法で描写した『トリックアート』作品ばかりで構成していることだ。個々の作品には独特の陰影が施してあり、照明をあてると額縁や画中の人物が浮かび上がってくる。」との記載がある。(甲第14号証)
(エ)朝日新聞 1992年6月7日朝刊 大阪
「トリックアート・ミュージアム(遊び場最前線)大阪」の見出しのもと、「陰影のつけ方や色使い、光の反射などを工夫して平面を立体的に見せる。そんなトリックアートの美術館が人気を集めている。」との記載がある。(乙第16号証)
(オ)読売新聞 1996年4月28日 地域ニュース
「今、話題になっているトリックアート」の見出しのもと、「【トリックアート】遠近法や明暗法など伝統的な絵画技法を駆使し、二次元の作品を三次元的に見せる表現方法。」との記載がある(乙第20号証)。
(カ)産経新聞 1999年7月11日
「秋田ふるさと村 トリックアート29点常設」の見出しのもと、「トリックアートは、透明度の高い工業用ペンキを使い、遠近感覚、目の錯覚などを利用し、平面に描いているのに立体的に見えるという絵画の手法。」との記載がある(乙第22号証)。
(キ)日本経済新聞 1999年4月15日朝刊 39ページ
「超感覚ミュージアム、21日から銀座・松屋で。」の見出しのもと、「日本経済新聞社は平面の魔術師、トリックアートの奇才と言われた版画家、M・C・エッシャー生誕百年に捧げる『超感覚ミュージアム』を開催します。本展は『錯覚と錯視』『二次元、三次元、多次元的世界を表現したトリック』などをテーマに、国内外の招待作家による絵画、版画、コンピューターグラフィックス、アニメーション、立体作品など約八十点を中心に、公募入選作品も合わせ、約百二十点を一堂に紹介します。」との記載がある。
(ク)日本経済新聞 2006年3月22日夕刊 19ページ
「忍者健在、滋賀・甲賀??謎の歴史、今に伝える(夕&Eye)」の見出しのもと、「JR草津線甲賀駅に着くと、いきなり忍者の姿が目に飛び込んできた。通路の壁面や天井に描かれたトリックアート(だまし絵)だ。目の錯覚を利用し、忍者が立体的に壁から浮き上がって見える絵など七枚がある。」との記載がある。
(ケ)日本経済新聞 2013年8月14日朝刊 36ページ
「絵画の面白さ直感的に、『若冲が来てくれました』展。」の見出しのもと、「次のコーナーは『数がものをいう』。『おたふく』の群像、鳥の群れ、釈迦の死を悼む人々と群像を描いた絵のオンパレード。数羽の鶴が妙な姿で体を絡み合わせる若冲の作品を見れば『いったい何羽いるの』とそのトリックアートに、思わず見入ってしまう。」との記載がある。
(コ)中日新聞 2012年7月21日朝刊 三重総合版 21頁
「不思議な絵画集合 きょうから 大トリックアート展 松阪」の見出しのもと、「【三重県】動物や恐竜などが立体的に飛び出したように見える不思議な絵画を集めた「大トリックアート展」が二十一日、松阪市船江町の松阪ショッピングセンターマームで始まる。(略)トリックアートとは、遠近法や陰影を駆使した美術作品で、目の錯覚を利用し、描かれているものが飛び出したり、揺れているように見えたりする。巨大なワニや恐竜が壁を突き破って出てきたような迫力ある絵や、カメラのファインダー越しに見ると階段が浮かび上がる絵など五十三点が並ぶ。来場者が作品の中に入り込んだような写真を、自由に撮影して楽しむこともできる。」との記載がある。
(サ)毎日新聞 2011年12月22日 地方版/三重 22頁
「古代エジプトトリックアート展:四日市で開催/三重」の見出しのもと、「カメラ持参で楽しむ体験型の『古代エジプトトリックアート展』(毎日新聞社など後援)が、四日市市諏訪栄町の近鉄百貨店四日市店で開かれている。トリックアートとは、目の錯覚を利用した芸術作品。(略)会場には、カメラのファインダーを通すと飛び出して見える馬車などの平面画、左右に見る角度を変えていくと作品が動くように見える立体作品など、計15点を展示。訪れた人たちは、思い思いのポーズで作品に加わり、写真撮影を楽しんでいる。」との記載がある。
(2)以上によれば、「トリックアート」の文字は、「視覚的な錯覚を利用した作品。だまし絵。」の意を持って理解され、一般的に使用されていることが認められる。
そうとすると、「トリックアート」の欧文字表記である「TRICK ART」の文字を、役務「トリックアート美術品の展示,トリックアート美術品の展示施設の提供,トリックアート美術品の制作」に使用する場合、取引者・需要者をして、該文字を、「視覚的な錯覚を利用した作品。だまし絵。」を意味するもの、すなわち、役務の内容を理解、認識させるものとみるのが相当である。
3 イ号標章について
「TRICK ART」の文字を普通に表示する方法の域を脱しない程度に横書きしてなるイ号標章は、役務「トリックアート美術品の展示,トリックアート美術品の展示施設の提供,トリックアート美術品の制作」について役務の質を普通に用いられる方法で表示するものといえる。
4 被請求人の主張について
被請求人は、「Trick Art」、「トリックアート」の文字は、被請求人の創始者である剣重氏による造語であること、辞書の「トリックアート」に関する記載は、正確性、信憑性に欠けること、また、剣重氏が創り上げたトリックアートは、トロンプ・ルイユの技法を取り入れた独特の絵画作品であって、それぞれの絵画作品は様々なコンセプトを有しており、立体的に見える絵画を中心として、人を楽しませる悪戯やびっくりさせる仕掛けを加えて表現し、それぞれのコンセプトに合わせる形で、その近傍に人を立たせたり、座らせたり、触れさせたりして、絵画と人とがあたかも一体化し、超現実の世界を作りだして遊べるようにしたものであることをあげ、請求人の提出した証拠は、「Trick Art」、「トリックアート」が、「だまし絵」の意の普通名称ということはできない旨主張している。
しかしながら、前記2(1)で示したとおりのイ号標章が使用される役務の分野における取引の実情を踏まえれば、「トリックアート」の文字は、被請求人の主張するコンセプト、トロンプ・ルイユ、だまし絵等を含めて、広く「視覚的な錯覚を利用した作品。だまし絵。」として、一般的に理解され、使用されているものであり、普通名称とはいえないとしても、役務の質を表す語として、需要者に認識されるものというのが相当である。
5 まとめ
したがって、役務「トリックアート美術品の展示,トリックアート美術品の展示施設の提供,トリックアート美術品の制作」について使用するイ号標章は、単に役務の質を普通に用いられる方法で表示するものといえ、商標法第26条第1項第2号に該当するものであるから、本件商標の商標権の効力の範囲に属しないと言わざるを得ない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲 別掲(本件商標)

判定日 2013-11-07 
出願番号 商願2012-10377(T2012-10377) 
審決分類 T 1 2・ 9- ZA (W16192728374142)
最終処分 成立 
前審関与審査官 今田 尊恵宗像 早穂 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 小川 きみえ
内藤 順子
登録日 2012-11-30 
登録番号 商標登録第5539378号(T5539378) 
商標の称呼 トリックアート、トリック、アート、エイアアルテイ 
代理人 飯田 昭夫 
代理人 江間 路子 
代理人 安藤 敏之 
代理人 杉浦 英樹 
代理人 上田 千織 
代理人 日高 賢治 
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