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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効としない X0942
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X0942
審判 全部無効 称呼類似 無効としない X0942
審判 全部無効 外観類似 無効としない X0942
管理番号 1281540 
審判番号 無効2012-890089 
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-10-22 
確定日 2013-11-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第5443938号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第5443938号商標(以下「本件商標」という。)は、「Pサポ!」の文字を標準文字で表してなり、平成23年4月18日に登録出願、第9類「電子計算機用プログラム,電子出版物」及び第42類「電子計算機のプログラムの設計、作成又は保守,電子計算機用プログラムの提供」を指定商品及び指定役務として、同年8月22日に登録査定、同年10月14日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録第4669881号商標(以下「引用商標1」という。)は、「SAP」の欧文字を横書きしてなり、1999年8月3日にドイツ連邦共和国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、平成12年1月19日に登録出願、第9類、第16類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同15年5月9日に設定登録されたものである。
同じく、国際登録第759060号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲に示すとおりの構成からなり、2001年(平成13年)4月18日に国際商標登録出願、第9類、第16類、第41類及び第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成14年8月30日に設定登録されたものである。
上記引用商標1及び2は現に有効に存続しているものであり、以下、まとめていうときは「引用商標」という。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証(枝番を含む。)を提出した。
1 本件商標を無効とすべき理由
(1)商標法第4条第1号第11号について
ア 本件商標について
本件商標は、ローマ字の「P」と片仮名の「サポ」及び感嘆符である「!(エクスクラメーション・マーク)」で構成され、そのうち、語頭の「P」は、商品の品番・形式・規格等を表示するための記号又は符号として、また、役務の種別、等級、基準等を表示するための記号又は符号として類型的に一般に使用されているローマ字一字を表示したものと看取し得るものであり、商品又は役務の出所識別標識としての機能を果たすものではない。一方、後半の「サポ」の部分は、前半の「P」と結合して熟語的な意味合いを生じるものではなく、それ単体で特定の意味を成さない一種の造語であると認識できる。
してみれば、本件商標を指定商品又は指定役務に使用する場合、前半の「P」のローマ字一字は、単に商品又は役務の品番、形式、種別等を表示するものにすぎず、本件商標中自他商品・役務の識別標識としての機能を果たす部分は、後半の「サポ」であり、本件商標を構成する「Pサポ!」からは、「ピーサポ」と一連に称呼される場合があるとしても、単に「サポ」との称呼も生じるものである。
なお、本件商標の語尾にある感嘆符「!」は、通常、これを付加することにより、前掲の文字の意味を強調する場合に用いられるものであるが、造語である「サポ」を強調するために感嘆符「!」が付加されても、「サポ」は特定の意味を有するものではなく、また、感嘆符「!」を付すことによって「サポ」に何らかの新しい意味合いを生じさせるものでもないので、感嘆符「!」自体は、出所識別標識として機能を果たすものではない。
イ 引用商標について
引用商標1は、欧文字で「SAP」と横書きしてなり、また、引用商標2は、逆台形状の図柄の中に欧文字で「SAP」の文字を横書きしてなるものである(甲2、甲3)。
引用商標から生ずる称呼は、構成する欧文字「SAP」に相応して、「サップ」又は「エスエーピー」の称呼が生ずることは明らかである。
ウ 本件商標と引用商標との対比
(ア)本件商標と引用商標の類似性について
本件商標における自他商品・役務の識別標識としての機能を果す最も重要な部分、つまり、商標の要部たり得る部分は、上記より、片仮名で構成される「サポ」の部分であり、引用商標から生ずる称呼である「サップ」と比較すると、両者は称呼における識別上の重要な要素を示す語頭の「サ」を共通にし、中間の促音「ッ」の有無及び語尾の「ポ」と「プ」の音に差異が認められる。
しかし、語尾音の「ポ」と「プ」は、共に50音図中の同音行に属し、両唇を合わせて破裂させる無声子音「P」を共通にし、それぞれに伴う母音「o」と「u」は近似した母音であって、音質が相似した音として聴取されるものであり、「ポ」と「プ」の差異が両者の全体の称呼に及ぼす影響は大きいとはいえない。また、引用商標の促音「ッ」の部分は、それ自体独立した一音として明確に発音されるものではなく、前音の「サ」と一体である如くほとんど吸収されて明確には聴取され難い微弱音である。
したがって、両者を一連に称呼した場合、全体の語調語感が近似し相紛らわしく、互いに聞き誤るおそれがある。
(イ)指定商品及び指定役務の同一又は類似について
本件商標の指定商品及び指定役務は、引用商標が指定する第9類、第16類及び第42類に属する指定商品及び指定役務と同一又は類似するものである。
(2)商標法第4条第1号第15号について
ア 引用商標の著名性について
請求人は、ドイツ中南部のヴァルドーフ(Walldorf)に本社を置く、ヨーロッパ最大級のソフトウエア会社である。請求人会社は、1972年に設立し、その年にISS標準ソフトウエアである「SAP R/1」を開発したことに始まり、1980年には、ドイツ国内の業界優良企業100社のうち50社が「SAP」を導入、1988年に、導入企業数が1,000社を突破し、2000年には、グループ全体でSAPユーザ数1,000万、導入数36,000を突破し、世界120力国で、導入企業13,500社、パートナー1,000社、対応業種別ソリューションが22種にまで拡張している。現在では、販売及び開発の拠点を50力国以上に展開し、195,000以上の顧客にSAPのアプリケーションとサービスを提供している(甲4、甲6)。
日本においては、請求人が100%出資する日本法人として、SAPジャパン株式会社(以下「SAPジャパン」という。)を1992年に設立し、2002年には、SAP製品の国内導入企業数が1,000社を超え、現在では、エレクトロニクス、精密、機械・エンジニアリング、鉄鋼・素材、航空・船舶・運輸・倉庫、自動車、化学、医薬、メディア、情報サービス、金融・保険、商社・卸売、小売、食品、消費財、公共・公益などの各業種を代表する国内企業の多くに、請求人のソフトウエア製品又はそれに関連するサービスが導入・提供されており、また、多くの中堅・中小企業においても、請求人の製品やサービスが提供されている。さらに、請求人は、我が国の国内企業との協業関係を確立することなどにより、積極的な事業展開を行い、その一方で、社会貢献活動についても積極的に行っている。(甲7、甲11)。
請求人名称は、「SAP AG(エスエーピー アーゲー)」であるが、当該名称を構成する「AG」の部分は、ドイツ語で「株式会社」を意味する「Aktiengesellshaft(アクチェンゲゼルシャフト)」の略であって、一般的には、単に「SAP」と略称され、「エスエーピー」若しくは「サップ」と称されている。
請求人が提供する代表的なソフトウエア・ソリューション及びサービスは、甲第12号証及び甲第15号証に示すとおりである。
請求人は、ソフトウエア事業及びそれに関連するサービス事業の全てについて引用商標「SAP」を使用しているわけではないが、請求人が販売する主なソフトウエア製品及びそれに関連するサービスについて、請求人の略称でもある引用商標「SAP」を共通して、他と区別できる態様で表示し、いわゆるハウスマークとして、現在に至るまで継続的に使用しており、その結果として、我が国におけるソフトウエア事業及びそのソフトウエアに関連するサービス事業の売上は、2011年度は5億7900万ユーロ、2010年度は4億4800万ユーロ、…、2006年度は3億800万ユーロとなっている(甲16、甲17)。
また、請求人は、ソフトウエア及びそれに関連するサービス事業を、世界的な規模で展開しており、その結果、引用商標であり、請求人の略称でもある「SAP」は、インターブランド社が毎年発表している「BEST GLOBAL BRANDS」において、2011年度は、「H&M」、「Pepsi」、「American Express」等の世界的に著名なブランドに続く第24位にランキングされ、そのブランド価値は、145億4200万ドルと評価されている。2010年度では、ランキングは第26位、ブランド価値は127億5600万ドル、…、2006年度は、ランキングは、第34位、ブランド価値は100億700万ドルと評価され、年々、ブランドランキングを上げている(甲18)。
ソフトウエア分野における売上ランキング(GLOBAL SOFTWARE TOP100)においては、2011年度、2010年度、2009年度いずれも、「Microsoft」、「IBM」、「Oracle」に続く、第4位にランキングされ、各年度のそれぞれの売上は、2011年度は、166億5400万ドル、2010年度は、153億7300万ドル、2009年度が、161億1100万ドルとなっている(甲19)。
これらのことから、引用商標「SAP」が世界的なブランド価値と世界的な名声を獲得していることは明らかであり、また、上記に示した我が国での引用商標の使用状況を勘案すれば、引用商標「SAP」が、本件商標の出願時に、既にソフトウエア業界及びこれら関連する商品又はサービスの取引者・需要者において広く認識されるに至り、日本国内のみならず世界的規模で著名性を獲得したものであることは明白であると思料する。
さらに、引用商標は、それ自体が造語であって、そこから生ずる「サップ」との称呼は取引者・需要者の記憶・印象に強く残るものである。
イ 出所の混同のおそれ
引用商標及びその称呼である「サップ」の周知・著名性は前述より明らかであり、これに対し、本件商標は、その出願時前に既に著名性を獲得している請求人の略称でもある引用商標から生ずる「サップ」と称呼上相紛らわしい「サポ」を商標の要部としており、その指定商品及び指定役務は、引用商標が指定する第9類、第16類及び第42類に属する商品及び役務と同一又は類似のものである。
そのような商標が、その指定商品及び指定役務に使用されたときには、これに接する取引者・需要者においては、引用商標を連想、想起し、その商品又は役務が、請求人の業務に係る商品又は役務であると誤信するものであり、そうでなくとも、請求人と何らかの組織的・経済的関係を有する者の製造に係る商品又はサービスであると認識し、請求人の業務に係る商品又はサービスと出所の混同を生ずるおそれがある。
フリーライド及びダイリューションについて
商標法第4条第1項第15号の規定は、平成10年(行ヒ)第85号審決取消請求事件における平成12年7月11日最高裁判所第三小法廷判決で説示されているとおり、著名商標の顧客吸引力へのフリーライド、その出所表示力のダイリューションを防止する趣旨を含むものであると解される(甲20)。
本件商標は、請求人の主力商品及び主サービスと同一又は類似の商品、サービスに使用されるものである。
したがって、本件商標の登録は、世界的に広く認識されている引用商標「SAP」の顧客吸引力へのフリーライド及びダイリューション行為を実質的に助長することになりかねず、取引者又は消費者を混乱させる可能性が高いものである。
よって、本件商標は、フリーライドやダイリューションの防止の観点からみても、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであることは明らかである。

2 むすび
(1)商標法第4条第1項第11号について
上述より、本件商標の要部となる「サポ」は、引用商標から生ずる称呼である「サップ」と称呼上相紛らわしく類似するものであり、その指定商品及び指定役務についても、引用商標が指定する第9類、第16類及び第42類に属する指定商品及び指定役務と同一又は類似のものである。よって、本件商標登録は、商標法第4条第1項第11号の規定に反してなされたものであり、無効とすべきである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本件商標が、その指定商品及び指定役務に使用された場合、その商品又は役務の取引者・需要者は、請求人の業務に係る商品又は役務と出所を混同するおそれがある。したがって、本件商標登録は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反してなされたものであり、無効とすべきである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証(枝番を含む。)を提出した。
〈答弁の理由〉
本件商標「Pサポ!」は、決して「P」と「サポ」と「!」とを分離し「サポ」のみを取りだして考察されるべきではない。可分した前後の欧文字「P」と感嘆符「!」は、仮名の「サポ」が付加されることで意をもち、あくまで「Pサポ!」全体で一連不可分の固有の観念を有する語と考察されるべきである。
したがって、無理なく一連に称呼し得る「ピーサポ」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
また、本件商標は、欧文字1文字、片仮名2文字、感嘆符記号1文字の合計4文字にて「Pサポ!」と横書きしてなり、他方、引用商標は、全て欧文字のみ3文字にて「SAP」と横書きしてなり、明らかにその文字体系、その表記は異なるものであり、表示使用するにあたり、判然と区別できるものである。
以上、述べた理由からも明らかなように、本件商標と引用商標とは、外観、観念はもとより称呼上も全く非類似のものであり、また、その他、本件商標と引用商標とを類似するものとする特段の理由も見いだせない。よって、本件商標は充分に登録適格性を有するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当せず、登録適格性を具備した商標である。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、「Pサポ!」の文字からなるところ、その構成各文字は、同じ大きさ、同じ書体及び等間隔をもって、一連に表されており、かかる構成態様の本件商標にあって、構成中の「サポ」の文字部分のみが独立して強く認識され記憶され、当該文字部分に相応した称呼や観念をもって取引に資されるとすべき特段の事情は見いだせない。また、構成全体に相応して生じる「ピーサポ」の称呼も、格別冗長ではなく一気に称呼し得るものである。
してみると、本件商標は、「ピーサポ」のみの称呼を生じるというべきであり、また、特定の観念を生じさせない造語として看取されるものである。
なお、請求人は、本件商標について、「P」、「サポ」及び「!」の各文字が結合した標章として構成され、前半の「P」が単に商品又は役務の品番、形式、種別等を表示するものにすぎず、自他商品・役務の識別機能を果たす部分は、後半の「サポ」であるから、本件商標を構成する「Pサポ!」からは、「ピーサポ」と一連に称呼される場合があるとしても、単に「サポ」との称呼も生じるものである旨主張している。
しかし、本件商標が、「P」、「サポ」及び「!」の各文字を結合した標章からなるものであり、たとえ、「P」が、それ自体のみでは、商品・役務の記号・符号として認識され、識別機能を十分に果たし得ないものであるとしても、本件商標の態様からすれば、「サポ」の前後に「P」及び「!」(感嘆符)を単に付加したものとみるよりは、これらを一体的に結合させて表した一の標章として把握するのが自然というべきであって、その構成全体をもって固有の識別性を発揮するものとみるのが相当であるから、取引上「ピーサポ」と一連にのみ称呼され、単に「サポ」の称呼をもって取引に資されるとは認められないというべきである。
よって、請求人の上記主張は、採用し得ない。
(2)引用商標について
引用商標1は、「SAP」の文字を横書きしてなるものであるところ、当該欧文字に相応して「サップ」あるいは「エスエイピイ」の称呼を生じさせるものであり、特定の観念を生じさせない造語として看取されるというのが相当である。
また、引用商標2は、別掲に示すとおり、黒塗り台形内に「SAP」を白抜きしてなるものであるから、当該「SAP」部分に相応して「サップ」あるいは「エスエイピイ」の称呼を生じさせるものであり、特定の観念を生じさせない商標というのが相当である。
(3)商標の類否について
本件商標と引用商標とを比較すると、その外観構成において、両者には顕著な相違があり、これらから受ける印象は全く異なるものであるから、外観上相紛れるおそれはないものである。
つぎに、本件商標の称呼「ピーサポ」と引用商標の称呼「サップ」を対比すると、両者は構成音数が相違する上、相違する各音の音質が全く異なるものであるから、これらをそれぞれ一連称呼するときには、全体の音感が異なり、称呼上相紛れるおそれはないものである。
また、本件商標の称呼「ピーサポ」と引用商標の称呼「エスエイピイ」を対比しても、上記同様に、全体の音感が異なり、称呼上相紛れるおそれはないものである。
さらに、本件商標と引用商標とは、観念について比較することができないものであるから、観念上相紛れる余地はないものである。
したがって、本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれからみても、引用商標に類似する商標ということはできないものである。
(5)小括
以上によれば、指定商品及び指定役務の類否について論及するまでもなく、本件商標は、引用商標をもって、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものと認めることはできない。

2 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の周知性
請求人提出の甲各号証によれば、請求人は、1972年に設立されたドイツのソフトウエア関連の法人であり、ISS標準ソフトウエアである「SAP R/1」を開発したことに始まり、1980年には、ドイツ国内の業界優良企業100社のうち50社が「SAP」を導入、1988年に、導入企業数が1,000社を突破し、2000年には、グループ全体でSAPユーザ数1,000万、導入数36,000を突破し、世界120力国で、導入企業13,500社、パートナー1,000社、対応業種別ソリューションが22種にまで拡張し、現在では、販売及び開発の拠点を50力国以上に展開し、195,000以上の顧客にSAPのアプリケーションとサービスを提供している(甲4、甲6)。
我が国においては、1992年に、請求人が100%出資する日本法人「SAPジャパン」を設立し、2002年には、SAP製品の国内導入企業数が1,000社を超え、現在では、エレクトロニクスを始めとする広範に亘る各種業種の企業に請求人のソストウエア製品やこれに関連する役務を提供している(甲7ないし甲10)。
請求人は、2011年度の「BEST GLOBAL BRANDS」(インターブランド社発表)において、「H&M」、「Pepsi」、「American Express」等の著名なブランドに続く第24位にランキングされ、そのブランド価値は、145億4200万ドルと評価されており(甲18)、ソフトウエア分野における売上ランキング(GLOBAL SOFTWARE TOP 100)においては、2011年度ないし2009年度のいずれも、「Microsoft」、「IBM」、「Oracle」に続く、第4位にランキングされ、2010年度の売上は153億3730万ドル、2011年度の売上は166億5400万ドルとなっている(甲19)。また、日本におけるSAPジャパンの売上高は、平成22年6月4日付けの決算公告によれば641億円を、平成23年6月30日付けの決算公告によれば600億円を超えたとされている(甲17)。
請求人が販売するソフトウエア製品及びそれに関連する役務について、請求人に係る製品カタログ等には、引用商標が表示され、請求人の略称、商標として「SAP」が継続的に使用されていることが認められる(甲13の1ないし6)。
以上によれば、請求人は、標章「SAP」と共に、世界的なブランド価値と評価を獲得していることが認められ、引用商標の使用状況を勘案すれば、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、ソフトウエア業界及びソフトウエアに関連する商品又は役務の取引者・需要者の間で、請求人を表示する標章、あるいは同人に係る商品及び役務を表示する商標として、相当に広く認識されるに至っていたと認め得るものである。
(2)商標の類似性
本件商標の指定商品及び指定役務は、「電子計算機用プログラム,電子出版物」及び「電子計算機のプログラムの設計、作成又は保守,電子計算機用プログラムの提供」であるから、引用商標が使用される商品や役務と同一又は類似するものが包含されており、関連性の程度は高いものであって、また、これらの商品及び役務は、その需要者を共通するものといえる。
一方、商標の類似性についてみると、上記1(3)のとおり、本件商標は引用商標に類似する商標とは認められないものであり、さらに、例えば、本件商標の構成中に引用商標を構成する標章が含まれるといったような、両者の関連性を更に検討すべき事情は見いだせないものであるから、結局、両者は、別異の出所を看取させる商標であるといわざるを得ないものである。
(3)混同のおそれ
前記(1)のとおり、引用商標が相当に広く知られているとしても、前記(2)のとおり、両商標は別異の出所を看取させる非類似の商標といえるものであるから、本件商標をその指定商品及び指定役務に使用した場合、これに接する需要者、取引者が、引用商標又は請求人を想起し連想して、当該商品や役務を請求人の業務に係るものであるとか、あるいは、同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品や役務であるかの如く誤信するとは認められないものであるから、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあったということはできない。
(4)小括
以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものとは認められない。

3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定によって、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(引用商標2)


審理終結日 2013-06-11 
結審通知日 2013-06-19 
審決日 2013-07-03 
出願番号 商願2011-30801(T2011-30801) 
審決分類 T 1 11・ 263- Y (X0942)
T 1 11・ 262- Y (X0942)
T 1 11・ 261- Y (X0942)
T 1 11・ 271- Y (X0942)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨澤 美加 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 大森 健司
村上 照美
登録日 2011-10-14 
登録番号 商標登録第5443938号(T5443938) 
商標の称呼 ピイサポ、サポ 
代理人 加藤 恒久 

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