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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない X33
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X33
管理番号 1281417 
審判番号 不服2012-18325 
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-20 
確定日 2013-10-11 
事件の表示 商願2011-26005拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第33類「料理用清酒」を指定商品として、平成23年4月13日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、格別特異な方法をもって表示したものとも認められない『料理のための』の文字と『清酒』の文字とを2行に書してなるところ、食品業界において、『料理のための』の文字は『料理用』の意味合いで使用され、また、『料理用清酒』が一般に製造、販売されていることからすれば、これをその指定商品『料理用清酒』に使用しても、単に商品の品質、原材料を表示したと理解するにとどまるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、出願人は、永年にわたり本願商標を使用してきた結果、顕著性を獲得した旨主張し、証拠を提出しているが、その証拠を総合して見ても、出願人の主張を認めるに足りない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、別掲のとおり、「料理」、「のための」及び「清酒」の各文字の大きさに差違を有するものの、看者をして、容易に「料理のための」及び「清酒」の各文字を2行に筆書き風の書体をもって表したものと認識され得るものであって、格別特徴的な構成態様からなるともいえないものであるから、普通に用いられる方法をもって表された標章からなるものとみるのが相当である。
ところで、本願の指定商品を取り扱う業界においては、原審で「参考情報」として挙げたもののほか、以下の(1)ないし(5)に示すとおり、「料理のため」に用いる日本酒(清酒)が一般に広く製造、販売されているのが実情である(下線は当合議体で付加)。
(1)2003年(平成15年)12月1日付け産経新聞(東京朝刊、25頁)に、「【安心マークの食べ物さがし】料理酒(福島県矢吹町)」の見出しの下、「慶応元(1865)年創業の同店では、その歴史にふさわしくさまざまな酒が造られているが最近、料理研究家などに評判なのが、料理酒『蔵の素』だ。現在、市場で売られている料理酒には、アルコールや糖類、塩分などが添加されていて、酒とは名ばかりのものが多い。『蔵の素は、米と麹、水だけで造った純米酒。合成食品添加物は、一切使っていません。この酒には、料理をおいしくするうまみ成分がたっぷり含まれていて、天然のアミノ酸は通常の純米酒の3倍、清酒の4倍もあります』と、4代目大木代吉さん(66)は胸を張る。・・・料理のための本格派純米料理酒『蔵の素』は、和食に限らず、どんな料理にも使うことができる。・・・」との記載がある。
(2)「株式会社杜の蔵」のウェブサイトにおいて、「商品のご案内」中の「琥珀の料理酒」の見出しの下、「天然由来の濃潤なコクとうまみが琥珀色に輝くおいしい料理のためのお酒 福岡・糸島で農薬を使わずに契約栽培した酒米『山田錦』を贅沢に使用。・・・糖類・塩・化学調味料 不使用」との記載がある。
(http://www.morinokura.co.jp/hyakufukura/products/shouhin.html)
(3)「幸せの酒 銘酒市川」のウェブサイトにおいて、その取扱商品の一として、「純米料理酒 花美蔵 1.8L/白扇酒造株式会社・・・この『花美蔵』はまさしく『料理のためのお酒』なのです。・・・この料理酒は酒税法の日本酒ですので、食塩は加えてありません。」との記載がある。
(http://www.e-sakaya.com/search/item.asp?shopcd=07070&item=606801L)
(4)「Sake Suzuya 寿々屋酒店」のウェブサイトにおいて、その取扱商品の一として、「こだわりの料理酒 厨酒 くりやざけ」の見出しの下、「料理は素材はもとより調味料で決まると言っても過言ではありません。でもその『お酒』は大部分は飲むために造られており、『料理酒』として料理をおいしくするという専門的なものはあまりありません。この『厨酒』はまさしく『料理のためのお酒』なのです。・・・/料理にコクと旨み!/そのため、あらゆる料理の調理にご使用いただくと、コクと旨みが増量し、より美味しくお楽しみいただけます。/呑んでも美味しい!/酵母と米が醸し出した美味しさをそのまま呑んでいただける、今までになかった極めて個性豊かな純米酒です。」との記載がある。
(http://www.sake-suzuya.com/pick_up/kuriya.htm)
(5)「日本名門酒会公式サイト」のウェブサイトにおいて、「伝統調味料/料理酒について/旨み成分たっぷり、料理のために生まれたお酒」の見出しの下、「◆料理酒の力・・・ここでご紹介している『料理酒』は料理のために生まれたお酒。伝統的な醸造技術を活かした各蔵元独自の製法で、“調味料としての酒”にポイントを置いて造られ、料理に旨みやコクを与えてくれるアミノ酸や有機酸がたっぷり含まれています。『料理酒』として売られているものの中には、糖類や調味料、はたまた塩まで添加されているものもありますが、そうした無用な添加もいっさいしていません。」との記載があり(http://www.meimonshu.jp/modules/xfsection/article.php?articleid=2121)、また、同ウェブサイトにおいて、「千代寿 純米料理酒『千代之味』/煮物が格別に美味しくなる! 旨みたっぷり純米原酒・・・『千代之味』は料理のために造られた原酒タイプの純米酒です。・・・【原料】米・米麹」との記載がある(http://www.meimonshu.jp/modules/xfsection/article.php?articleid=2119)。
以上を踏まえれば、本願商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、該商品が「料理のために用いる日本酒(清酒)」であること、すなわち、商品の品質、用途を表示したものとして認識するにとどまるとみるのが相当である。
したがって、本願商標は、商品の品質、用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
なお、請求人は、原料に食塩を使用していない酒類で酒税がかかる「酒類調味料」のうち、「清酒」については、「料理用清酒」の名称が使用されるのが一般的であって、「料理のための清酒」とは呼び習わされておらず、また、「料理のための清酒」の文字が、本願の指定商品を取り扱う業界において、商品の品質表示として使用されている事実は見当たらないから、本願商標は、自他商品識別力を備えたものである旨主張している。
しかしながら、商標法第3条第1項第3号に該当する商標であるか否かの判断においては、取引者、需要者が品質を表示するものとして認識するものであれば足りるといえるものであり、その商標の表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、必ずしも要求されないものと解すべきであるところ、本願商標については、上述のとおり、取引者、需要者をして、商品の品質、用途を表示したものとして認識するにとどまるものであるから、請求人の主張は、採用することができない。
2 商標法第3条第2項該当性について
請求人は、本願商標は使用をされた結果、特別顕著性を獲得したものであるから、商標法第3条第2項の要件を具備するものであり、登録を受けることができるものである旨主張し、甲第2号証ないし甲第59号証を提出しているので、以下検討する。
(1)本願商標の使用について
ア 使用の期間並びに販売の数量及び金額
請求人の子会社である宝酒造株式会社(以下「宝酒造」という。)は、遅くとも平成13年(2001年)10月以降継続して、自己の製造、販売に係る調味料の一として、本願商標を付した商品(以下「本件商品」という。)の製造、販売を行っているところ、平成14年(2002年)4月から平成24年(2012年)3月までの間、その販売の数量及び金額は増加傾向にあり、同期間の累積数量(1.8Lパック換算)は約1,760万本、累計金額は約138億円に及ぶ(甲第2号証ないし甲第25号証)。
イ 使用態様
(ア)本件商品についての使用
本願商標は、商品の容器側面に付されており、かつ、その近傍の概ね同時に視認し得る範囲内に、請求人が自己の製造、販売に係る商品であることを表示するものとして広く用いている「タカラ」の文字からなる標章が表されている。
なお、本件商品は、発売当初、「1.8L紙パック」のもののみであったが、近時においては、複数の容量及び容器のものが製造、販売されているところ、いずれの容器についても、上記同様、本願商標の近傍に「タカラ」の文字からなる標章が表されている(甲第3号証ないし甲第23号証)。
(イ)広告宣伝における使用
宝酒造は、遅くとも平成18年(2006年)11月以降、雑誌、新聞、ウェブサイト、料理教室、イベント及びセミナー等を通じて、本件商品の広告宣伝を以下のように行っている。
(a)雑誌及び新聞における宣伝広告は、主に女性誌や料理雑誌において、2006年(平成18年)11月から2007年(平成19年)3月までの間に6誌に計20回、2007年(平成19年)9月から2008年(平成20年)2月までの間に6誌に計10回、2008年(平成20年)10月から2009年(平成21年)1月までの間に6誌に計12回及び1紙に計2回、2009年(平成21年)6月から2010年(平成22年)1月までの間に12誌に計34回、2010年(平成22年)4月から2011年(平成23年)3月までの間に4誌に計22回、2011年(平成23年)4月から2012年(平成24年)3月までの間に3誌に計17回行われており、該広告は、本件商品の画像の直上に「料理のための、清酒です。」の文字が大書されるとともに、「タカラ料理のための清酒」(「料理のための清酒」の文字部分は、本願商標と同様の書体で表されている。)との記載があるもの、「料理には“食塩無添加”のタカラ『料理のための清酒』です。」又は「食塩無添加のタカラ『料理のための清酒』」の見出しとともに、本件商品の画像が掲載されているものである(甲第30号証)。
(b)ウェブサイトにおける広告宣伝は、主に料理関連のウェブサイトとのタイアップの下、2006年(平成18年)11月から2007年(平成19年)1月までの間に3媒体(期間は媒体ごとに異なる。以下同じ。)、2007年(平成19年)9月から2008年(平成20年)3月までの間に3媒体、2008年(平成20年)6月から12月までの間に2媒体、2009年(平成21年)6月から12月までの間に2媒体、2010年(平成22年)6月から12月までの間に2媒体、2011年(平成23年)7月から2012年(平成24年)3月までの間に2媒体で行われており、該広告は、宝酒造のPR企画に係る商品紹介の一として、「料理をおいしくするために生まれたタカラ『料理のための清酒』」等の記載とともに、本件商品の画像が掲載されているもの、管理栄養士向け情報サイト上で「栄養士なら知っておきたい料理清酒のチカラ」の見出しの下、「タカラ『料理のための清酒』でさらにおいしい減塩を」等の記載とともに、本件商品の画像が掲載されているもの、本件商品のモニター当選を契機として、該商品を使用したレシピ(材料の一として、「料理のための清酒」の記載のあるもの。)が掲載されているもの等である(甲第30号証及び甲第45号証)。
(c)料理教室における広告宣伝は、宝酒造及びNHK出版「今日の料理」テキストの共同企画「京 名料理人に学ぶ日本料理教室」として、平成22年(2010年)2月から2012年(平成24年)10月までの間、京都、東京、名古屋、大阪において、計12回開催(各回40名の参加と推認される。)されたものであり、各回に係る上記テキストに「『タカラ本みりん・料理清酒』の調理効果を一流料理人の技で実感」等の見出しの下、「タカラ『料理のための清酒』」の記載とともに、本件商品の画像が掲載されている(甲第31号証)。
(d)イベントにおける宣伝広告は、2012年(平成24年)5月26日及び27日に広島県呉市で開催された「減塩サミットin呉 2012」(宝酒造は、協賛企業の一として参加。)において、「味くらべ体験ブース」を設置したものであり、該ブースには、宝酒造の名称である「宝酒造株式会社」の表示のほか、請求人が、自己の製造、販売に係る商品であることを表示するものとして広く用いている「タカラ」の文字からなる標章と「料理のための清酒」の文字との2段書きからなる表示(「料理のための清酒」の文字部分は、本願商標と同様の書体で表されている。)や「アンケートに答えると、『タカラ料理のための清酒』プレゼント!」の記載のあるのぼりが掲げられている(甲第34号証、甲第35号証及び甲第41号証)。
(e)セミナーにおける広告宣伝は、平成24年(2012年)6月8日に女子栄養大学駒込キャンパスで開催された「減塩が健康への要!高血圧を予防する減塩セミナー」(宝酒造は、協賛企業として参加。)において、「タカラ『料理のための清酒』/?おいしい減塩のご提案?」と題する資料を用いた講演等が行われ、該資料には、料理用の清酒として、「タカラ『料理のための清酒』ご紹介」の見出しとともに、本件商品の画像が掲載されている(甲第40号証及び甲第41号証)。
(ウ)その他
日本酒を取り扱うインターネットショッピングのウェブサイトにおいて、2012年(平成24年)9月又は10月に、「料理のための清酒」の文字とともに、本件商品の画像が掲載されている(甲第48号証ないし甲第50号証)。
ウ 小括
上記ア及びイによれば、宝酒造は、平成13年10月以降継続して、本件商品の製造、販売を行っており、同18年末以降に行っている広告宣伝や異なる容量(容器)での商品展開とあいまって、該商品の販売の数量及び金額は増加傾向にあるといえる。
しかしながら、上述のとおり、本願商標は、本件商品について、請求人が自己の製造、販売に係る商品で有ることを表示するものとして広く用いられている「タカラ」の文字からなる標章の近傍の概ね同時に視認し得る範囲内に付されており、また、本件商品の広告宣伝の大多数において、「タカラ『料理のための清酒』」のように、請求人の製造、販売に係る商品であることを表示する「タカラ」の文字とともに用いられており、その際に、本件商品の画像が掲載されている場合も少なくないというのが実情である。
そうとすると、本件商品に接する取引者、需要者は、相当数に及ぶといえるものの、それらの者は、本件商品に接する際に、本願商標のみならず、その近傍に付された請求人が自己の製造、販売に係る商品であることを表示するものとして広く用いている「タカラ」の文字からなる標章をも同時に視認するとみるのが相当であり、また、本件商品に係る広告宣伝に接する際に、請求人の製造、販売に係る「タカラ『料理のための清酒』」として認識するとみるのが相当である。
なお、請求人は、本願商標が使用により自他商品識別力を獲得するに至っている旨の証拠として、本願商標に係る商品の新聞記事(甲第51号証ないし甲第57号証)及び検索エンジン「Google」を用いた「料理のための清酒」の文字及び画像の検索結果(甲第58号証及び甲第59号証)を提出しているが、前者は、専ら宝酒造が本願商標に係る商品を発売した旨を内容とするものであり、また、後者は、「料理のための清酒」の文字を検索タグとする情報の一覧にすぎず、これをもって、直ちに「料理のための清酒」の文字のみが請求人の製造、販売に係る特定の商品名を表すものとして取引者、需要者間に認識されているということはできない。
その他、請求人の主張及びその提出に係る証拠を総合してみても、本願商標をその指定商品について使用した結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識するに至っていると認めるに足る事実を見いだせない。
してみれば、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するものであるとの請求人の主張は、採用することはできない。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号及に該当し、かつ、同法第3条第2項の要件を具備するものではないとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものであり、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本願商標)



審理終結日 2013-08-08 
結審通知日 2013-08-14 
審決日 2013-08-27 
出願番号 商願2011-26005(T2011-26005) 
審決分類 T 1 8・ 17- Z (X33)
T 1 8・ 13- Z (X33)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 裕子 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 浦辺 淑絵
田中 敬規
商標の称呼 リョーリノタメノセーシュ、リョーリノタメノ 
代理人 特許業務法人みのり特許事務所 

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