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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2012890104 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X33
管理番号 1280118 
審判番号 無効2012-890098 
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-11-13 
確定日 2013-10-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第5481980号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5481980号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5481980号商標(以下「本件商標」という。)は、「Wレモン」の文字を標準文字で表してなり、平成22年2月2日に登録出願、第33類「レモンを使用してなる日本酒,レモンを使用してなる洋酒,レモンを使用してなる果実酒,レモンを使用してなる中国酒,レモンを使用してなる薬味酒」を指定商品として、同24年1月31日に登録をすべき旨の審決がされ、同年3月30日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第54号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第3条第1項第3号又は同項第6号に該当するから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とされるべきものである。
2 本件商標についての経緯
(1)本件商標は、拒絶査定不服審判を経て登録に至っている。その登録審決における「当審の判断」において、本件商標が登録されるべきであるとして挙げた理由は、おおむね(a)本件商標は、同じ大きさ、等間隔で「Wレモン」と外観上まとまりよく一体的に表されている、(b)「W」の文字は、英語で「2重。2倍。複。」を意味する「ダブル(double)」を端的に示す文字として、「W○○」のように用いられ、「ダブル○○」と読まれることが、一般的に広く行われている、(c)そうすると、「W」が「ダブリュー」と称呼される欧文字であるとしても、本件商標の構成から、構成全体をもって「ダブルレモン」と称呼され「2重のレモン」程の意味合いを暗示させる一体不可分の造語として認識し、把握されるとみるのが相当である、として、本件商標は、商標法第3条第1項第6号には該当しないと結論づけている。
(2)上記審決は、平成22年10月29日付け起案の本件商標の登録出願を拒絶した拒絶査定に対する不服審判請求についてなされたものである。その拒絶査定の内容は、おおむね(a)「W」は、商品の規格、品番、等級を表すための記号又は符号の一類型と理解される、(b)したがって、全体として「レモンを使用した商品の一類型」程の意味合いを認識させるにとどまるから、自他商品の識別能力を発揮しているとはいえない、である。
上記拒絶査定に対し、審決は、該査定の理由とは違って、「レモンを使用した商品の一類型」とはみずに、全体として造語商標であるという内容の判断を行っている。
(3)しかし、上記拒絶査定不服審判は、結論に至るその法律判断の思考過程に飛躍がみられる。まず、審決理由中、(a)の「本件商標は、同じ大きさ、等間隔で『Wレモン』と外観上まとまりよく一体的に表されている」という理由は、本件が、商標の類否判断に関する事案ではなく、本件商標が自他商品識別性を有するか否かに関する判断であることに鑑み、無意味な理由である。次に、(b)で述べている、「2重」とは通常「二つ」を意味する言葉であるから、審決がいう「2重のレモン」とは、「二つのレモン」又は「2種類のレモン」という意味合いである、ともいえる。そして、該審決では、「W」は、英語で「2重。2倍。複。」を意味する「ダブル(double)」を端的に示す文字として一般的に広く用いられている、と判断しているのであるから、「2重のレモン」の意味合いばかりではなく、「2倍のレモン」あるいは「複数(二つの又は2種類の)レモン」という意味合いも認識されるとも判断するべきであったと思料する。
そうすると、「Wレモン」は、通常に比べて「2倍」の量の「レモン」を使用した商品を、あるいは、「二つ(又は2種類)のレモン」を使用した商品を示す表示であると容易に認識され、識別性を果たさない標章であるとも判断されるべきである。上記審決は、そのような意味合いを「暗示させる」と結論付けているが、本件商標は「Wレモン」であり、その指定商品はすべて「レモンを使用した」商品であるから、本件商標は、上記に示す意味合いを「認識させる」商標として出所機能を果たすことのできない商標であると判断されるべきである。
したがって、本件商標は、指定商品との関係において自他商品識別力を欠き、商標法第3条第1項第6号に該当して登録されるべきではなかった。上記意味合いを生じる本件商標が造語であると判断することは、法律解釈を誤ったものといわざるを得ない。
3 証拠に基づく主張
(1)有限会社ベイアトランダが運営する「InterMark」というデータベースの中に「MR3条」というデータベースがあるところ、これは、過去において、商標法第3条各号に該当するとして、特許庁の審査において拒絶された商標を示すものである。
甲第1号証は、上記データベースを利用して、「ダブル」という文字又は「W」という文字で始まる商標であって、飲食品分野の商品を指定して登録出願され、自他商品識別力に乏しいと判断された商標を抽出した一覧表である。その1頁(最初に掲載されている商標を除く。)から5頁までのすべての商標と6頁264番目までの商標とは、ほとんどすべてが「W」で始まる英語の言葉又は文字からなる商標を示すものであり、本件の事案には関係のないものであるが、約100件を超える多数の「W○○」及び「ダブル○○」(「○○」は、指定商品の普通名称又は識別性のない標章。)という構成の商標が商標法第3条第1項各号に該当するとして拒絶されている。その大部分は、「ダブル○○」という商標であるが、「W」が「ダブル」の代わりに使用されていることが一般的である現状に鑑み、最初の文字が「W」であるか、又は「ダブル」であるかを区別して判断する法律上の合理的根拠はないと思料する。そして、その大部分は、昭和40年代から平成22年までに拒絶された商標を示すものである。
上記の拒絶された商標に関する拒絶理由通知書は、ほとんどが破棄されており、その拒絶理由の具体的な内容を知ることはできないが、商願2010-68900号「Wポリフェノール」については、拒絶理由通知書及び拒絶査定書を含め出願資料の写しを入手することができた。該出願に係る拒絶理由では、「W」、「2倍の、2重(二様)の」等の意味を有する「ダブル」に通じる、と判断されており(甲第2号証。なお、括弧内の証拠番号については、以下「甲2」などのように省略して表す。)、ここでいう「二様」とは、「二通りあるいは2種類」という意味合いである。
また、上記一覧表(甲1)の中には、「W MILD CHOCO/ダブルマイルドチョコ」、「Wキノコ」、「Wダブルビーフカレー/W BEEF CURRY」、「W青汁」、「ダブルスパイシー/Wスパイシー」、「W」の下に小さく「ダブル」の片仮名を併記した「Wフラッペ」、「W」の上に「ダブル」の片仮名を併記した「Wミルク」の各商標も存在する。
甲第3号証は、トムソンロイタープロフェッショナル株式会社のデータベース「Brandy」からのプリントであって、「W MILD CHOCO/ダブルマイルドチョコ」の審査経緯を示す書誌情報であり、甲第4号証ないし甲第9号証は、インフォソナー株式会社のデータベース「TM-SONAR」からのプリントであって、「Wキノコ」ほか、上記5件の商標登録出願の審査経緯を示す書誌情報を示すものである。これらを拒絶した理由も、上記「Wポリフェノール」における理由と大差がないと思料する。
また、上記一覧表(甲1)の中には、その278番目以降の商標から明らかなように、「ダブル」の文字と商品の一般名称又は品質を表示する言葉を組み合わせた商標が多数存在しており、「ダブルアーモンド」、「ダブルイチゴ」、「ダブルウコン」、「ダブルチョコ」、「ダブルピーチ」、「ダブルソーダ」、「ダブルフコイダン」、「ダブルベリー」、「ダブルメロン」、「ダブルコラーゲン」等の商標が商標法第3条第1項各号又は同法第4条第1項第16号に該当するとして拒絶された商標である。
(2)甲第10号証ないし甲第16号証は、請求人のウェブサイトからのプリントであるところ、2004年には、「サントリーチューハイダブル搾り」という商標で、「レモンダブル」、「オレンジダブル」及び「グレープフルーツダブル」という3種類を市場に提供した。「レモンダブル」については、「地中海産のレモン」と「カリフォルニア産のレモン」の2種類のレモンを使用しているということを示すために「レモンダブル」と銘打っているが、本件商標「Wレモン」あるいは「ダブルレモン」も、同様に記述的な意味合いを示す場合の普通の使い方である。2009年2月からは、「STRONG ZERO」の商標の下で、「レモン浸漬酒」と「レモン果汁」という「レモン」を使用した2種類の商品を材料として使用しているという意味合いを示すために「ダブルレモン」を使用している。その後、2009年5月には「ダブルグレープフルーツ」を、2010年8月31日には「ダブルシークワーサー」を、2011年8月30日には「ダブル完熟梅」という商品(酎ハイ)を市場に供給してきた。これらは、いずれも果実の浸漬酒と果汁(「ダブル完熟梅」については、梅酒。)の2種類を使用していることを示すために、「ダブル」の後に原材料となる果実名を付加した態様であり、「2種類」の材料を示す言葉として、この「ダブル」が使用されていることが容易に認識されるものである。そして、該商品は、その缶の上にも上述した内容の商品であることが表示されており、売れ行き好調と相まって、「ダブル○○」の意味する内容も需要者の間に浸透してきている。
(3)本件商標のように、「ダブル」を「W」に置き換え、その後に本件商標の指定商品の原材料を示す「レモン」との結合からなる本件商標は、商品の特定の出所を示す商標ではなく、何人かの業務に係るかを特定できない商標として商標登録は許されるべきではないから、その登録は無効とされるべきである。
いくつかのウェブサイト(甲17?甲20)では、請求人の「ストロングゼロ ダブルレモン」を「ストロングゼロ Wレモン」と表示して商品を販売している。これらの例からもみられるように、「ダブルレモン」と「Wレモン」には、その意味するところに違いはない。
(4)被請求人は、2004年に「ダブルミックスで新登場」と銘打って、「タカラcanチューハイ『SUKISH(スキッシュ)』Wmix(ダブルミックス)」を新発売した(甲21)。そのニュースリリースによれば、該商品は、「2種類の異なる果汁、2種類の異なる品種や産地のフルーツを絶妙にミックス」した5種類のフレーバーを使用した5種類の商品であって、(a)カリフォルニア産とシシリー産のレモン果汁を使用したもの、(b)アセロラとレモンの果汁を使用したもの、(c)グレープフルーツの「グレープ種」と「ホワイト種」の果汁を使用したもの、(d)黄桃と白の果汁を使用したもの、(e)梅酒と梅果汁を使用したもの、を内容とするものである。すなわち、請求人と同業を営む被請求人においても、「W」を「2種類の」という意味合いで使用している。
(5)「ダブル○○」の使用例
飲食料品の分野において、「ダブル○○」で構成される標章が市場においてどのように使用されていたか、また、現在も使用されているかを示すために、日本食糧新聞の電子版からのプリント及びインターネットウェブサイトからのプリントを甲第22号証ないし甲第50号証として提出する。
ア アルコール飲料の分野における「ダブル○○」の使用例
(ア)「リキュール」についての「ダブルカシス」という標章の使用がある(甲22)。ヨーロッパ、特にフランスでは、複数のメーカーが「ダブルカシス」(フランス語では「double cassis」)という名前を使用した「リキュール」を製造・販売している。この商品は、カシスの実をスピリッツに漬け込んだ後、最初に取れる一番おいしいエキストラバージンカシスのみを使用して作ったリキュールである。被請求人は、本件商標に係る拒絶査定不服審判事件の請求書において、この「ダブルカシス」は、フランスで周知のカシスリキュールに特有の慣用呼称であり、ほかの酒に共通する呼称とはいえない、と主張しているが、まさに、カシスリキュールに特有の呼称であり、その意味するところは、上記したように、「カシスの実をスピリッツに漬け込んだ後に、最初に取れる一番おいしいエキストラバージンカシス」を使用したという意味で、「ダブルカシス」(double cassis)が使用されているので、品質表示であるといわざるを得ない。
(イ)アサヒビールは、1995年に、2種類の酵母を使用したビールを「ダブル酵母生ビール」と銘打って発売したことがある(甲23)。
(ウ)サントリー株式会社は、2004年に、期間限定で、桃のワインと上質な桃の果汁を使った「ダブルピーチ」ワインを発売したことがある(甲24の1・2)。
イ アルコール飲料以外の飲食料品についての「ダブル○○」の使用例
(ア)ファミリーマートは、1999年に、「スーパーベーグルサンド」ハム&チーズという商品を販売したが、「チェダーチーズ」と「エレメンタールチーズ」の2種類のチーズを使用したという意味で「ダブルチーズ」という言葉を使用していることが説明されている(甲25)。
(イ)小岩井乳業は、2002年に、「ダブルキャラメルオ・レ」(乳飲料)を発売したが、それは、「甘いキャラメル」と「苦みのあるキャラメル」の2種類をブレンドしたものであるとの説明がある(甲26)。
(ウ)キリンビバレッジは、2004年に、「トロピカーナ ムースシャーベット ダブルピーチ」という氷菓を発売した。「ダブルピーチ」の意味は、「白桃の果汁に黄桃の果肉を加えた2種類の味」であるとの説明がある(甲27の1・2)。
(エ)当時のサントリー株式会社は、2006年、果汁飲料の「なっちゃん」シリーズに、「赤りんご果汁と青リンゴ果汁」の2種類をブレンドした「なっちゃん ダブルりんご」という商品を加えた(甲28の1・2)。
(オ)キューピーは、2007年に、「ダブルベリー&チェリージャム」という商品を発売したが、その「ダブルベリー」の意味合いは、「ラズベリーとストロベリー」の2種類を使用していることの説明がある(甲29)。
(カ)キリンビバレッジは、2007年、「午後の紅茶スベシャルシリーズ」に、アールグレイ紅茶にイタリア産ベルガモット果汁を加えた、ベルガモットの香りと味わいがダブルで楽しめる「ダブルベルガモット」紅茶を発売した(甲30の1・2)。
(キ)江崎グリコは、2008年に、「カルフェ ダブルショコラ」というチョコレート菓子を発売した。この商品は、「ココアメレンゲとビターチョコ」のダブルのカカオ感が楽しめると説明されている(甲31)。
(ク)森永乳業は、2008年に、2種類のマンゴーを使った「南国ダブルマンゴー」というヨーグルトを発売した(甲32)。
(ケ)アサヒフードアンドヘルスケアは、2008年に、「レモンとグレープフルーツのダブル果汁入り」と「マンゴーとオレンジのダブル果汁入り」のヨーグルトを発売した(甲33)。
(コ)敷島製パンは、2009年に、「シュレッドとレッドチェザー」の2種類のチーズをトッピングしたピザを「ダブルチーズピザ」として発売した(甲34)。
(サ)ハウス食品は、2010年に、「ダブルベリークリームサンド」を発売した。この商品は、「ブルーベリー果汁とストロベリー」をサンドした商品である旨の説明がある(甲35)。
(シ)日本ハムデリニューズは、2010年に、「ダブルソース ハンバーグ」及び「ダブルソース チキン南蛮」の弁当総菜を発売した。いずれも、異なるソース2種類を使用したものである(甲36)。
(ス)江崎グリコは、2010年に、「ダブルグレープフルーツゼリークリームin」を発売した。この商品は、「ホワイトとピンクの2種類のグレープフルーツ」を使用したゼリー菓子である(甲37)。
(セ)日本クラフトフーズは、2011年に、諸々のフルーツが入った「フルーツのど飴」を発売したが、その中で、「黄桃と白桃」の2種類の桃を使用していることを表現するために、「ダブルピーチ」という言い方をしている(甲38)。
(ソ)明星食品は、2011年に発売した「究極 つけ麺 特濃魚介だれ」という商品に使用した粉末と液体の2種類のスープを「ダブルスープ」と表現している(甲39)。
(タ)江崎グリコは、2011年発売のアイスクリームに「ダブルチョコ」という表示を使用しているが、これは、「2つのチョコが折り重なる」形状を示す表現である(甲40)。
(チ)森永乳業は、2011年4月、6月及び11月に、それぞれ期間限定商品として、「ピノ W(ダブル)ストロベリー」、「ピノ W(ダブル)抹茶」及び「ピノ W(ダブル)コーヒー」というアイスクリームを発売した。これらの商品は、それぞれ、ストロベリーアイスクリームをストロベリーチョコで、抹茶アイスクリームを抹茶チョコで、コーヒーアイスクリームをコーヒーチョコでコーティングした商品である(甲41の1?3)。
(ツ)アサヒフードアンドヘルスケアは、2011年12月に、バランス栄養食品として、「GATZUN ダブルチョコ」の発売を開始し、2012年8月には、新たに「GATZUN ダブルバナナ」を追加している。これらの商品は、それぞれ、「チョコ味の生地にチョコレートクリームをサンド」したものと「バナナペーストを生地にバナナクリームをサンド」したものである(甲42の1・2)。
(テ)不二家は、2011年に、「ミルクチョコクリームとビターチョコクリーム」の2種類を使用した「ダブルチョコケーキ」と「ホイップチーズクリームとチーズクリーム」の2種類を使用した「ダブルチーズケーキ」を発売した(甲43)。
(ト)カゴメは、現在、「かつおの煮汁と鰹節」の「ダブルかつお」のうまみがきいたソースを販売している(甲44)。
(ナ)キリン協和フーズは、現在、「フリーズドライ粉末スープと粉末スープ」のダブルのスープを混合した濃厚ポタージュを販売している(甲45)。
(ニ)アオハタは、現在、「ブルーベリーとクランベリー」をミックスした「ダブルベリージャム」を販売している(甲46)。
(ヌ)ミスタードーナツは、チョコレートをコーティングし、それにチョコクランチをトッピングした「ダブルチョコレート」と銘打ったドーナツを販売している(甲47)。
(ネ)ミニストップは、カットされたマンゴーとマンゴーソースを組み合わせた「ダブルマンゴー」を販売している(甲48)。
(ノ)シャトレーゼは、「カスタードクリームと生クリーム」を詰めた「ダブルシュークリーム」を販売している(甲49)。
(ハ)敷島製パンは、各種のサンドロールパンを製造販売しているが、その中には「ダブルピーナッツ」、「ダブルミルク」、「ダブルチョコ」、「ダブルカスタード」、「ダブルいちご」、「ダブルホワイトチョコ」、「ダブルマロン」、「ダブルメープル」、「ダブル宇治茶」、「ダブル山形白桃」等がある(甲50の1?4)。
ウ 「ダブル○○」の使用例の評価及び「W○○」の使用例について
上記イにおいて示した商品は、すべて同種商品であるが、内容の異なる2種類の原材料を使用しているという意味合いを示すために「ダブル」の文字が使用されていることは、その商品説明から明らかであり、また、「ダブルソース」、「ダブルチョコ」、「ダブルバナナ」等、同一の品質表示を使用している商品が異なるメーカーから販売されている。
さらに、特許庁において識別性がないという理由で拒絶された「W○○」という標章についても、実際にあまたと使用されている。例えば、既に使用されてはいないようだが、日清食品は、2006年に、「デカ王」の商標の下、「液体ソースと粉末ソース」の2種類のソースを使用した「Wソース焼そば」を販売し(甲51)、セブンイレブンで販売されている「贅沢Wソースオムライス」は、「ガーリック風味のトマトソースと濃厚なクリームソース」が使用されていると説明されており(甲52)、大阪にある洋菓子のサフランという店舗は、デンマーク産のクリームチーズと十勝カマンベールを使用した「W Cheese/ダブル・チーズ」というクリームチーズを販売している(甲53)。これらをみても、2種類の異なった材料が使用されているという意味においては、「ダブル○○」と「W○○」の使用には差がないことが分かる。
(6)調査報告書(甲54)
請求人は、本件審判の請求の前に、「ダブルレモン」という標章について、一般需要者がどのような認識を有しているか知るために、株式会社インテージという調査会社に依頼して、ウェブサイト上での調査を行った(甲54)。この調査は、「ダブルレモン」という言葉についての認識調査であることが分からないように、また、この調査に対して回答を行う者が、偏見を持たないで回答するように、質問事項を極めて簡単にして、各種アルコール飲料のパッケージに表示されている言葉が、商品の「ブランド」であるか、商品の「品質表示」であるかを端的に答えさせる方法で行った(「ブランド」と「品質表示」の意味合いについての説明も加えてある。)。すなわち、各種アルコール飲料のパッケージに表示されている言葉の中には、日本人でアルコール飲料を嗜む人であれば多くの人が知っているであろうと思われる「いいちこ」、「スーパードライ」、「松竹梅」及び「氷結」という商標と、「糖質ゼロ」、「辛口」、「芋焼酎」及び「まろやか」という品質表示と、「アルコール飲料」の分野においては、自他商品識別性がないとして同業他社により使用されている「プレミアム」を取り入れ、これら9件の言葉に対する認識と「ダブルレモン」に対する認識の程度にどの程度の差があるかを調査したものである。
上記調査の結果によれば、「いいちこ」、「スーパードライ」、「松竹梅」及び「氷結」という商標に対する需要者の認識の程度は、それなりに高く、「糖質ゼロ」、「辛口」、「まろやか」という品質表示についても同様である。また、普通名称の「芋焼酎」については、「ブランド名」という認識が20.6%とやや高く(「品質表示」認識は71.9%)、また、「プレミアム」については、「ブランド名」という認識が43%であり、「品質表示」との認識が48.5%と、「ブランド名」との認識がかなり高いとの結果が出ている。これに対して、「ダブルレモン」については、「ブランド名」という認識が27.6%であり、「品質表示」との認識が50.7%と、「プレミアム」に対する認識よりも、「品質表示」であるという認識が高くなっている。「ダブルレモン」を「ブランド」であると回答した者が27.6%とやや高くなっているのは、市場に出回っている商品が請求人の商品のみであり、それがかなりの売れ行きを示している結果によるものであるが、それにもまして、「品質表示」との認識がその倍近い50.7%と半数を超えているのは、請求人による上記主張が正しいものであることを裏付けるものであり、また、特許庁において、長年行われてきた審査結果の妥当性を示すものである。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録を認めた審決において、「W」は、英語で「2重。2倍。複。」を意味する「ダブル(double)」を端的に示す文字として、「W○○」のように用いられ、「ダブル○○」と読まれることが一般的に広く行われている、という判断を行ったにもかかわらず、本件商標は、造語であるという判断に至る思考過程には法律的判断の合理性がないといわざるを得ず、本件商標は、その指定商品との関係において、全体として自他商品識別力を欠き、商標法第3条第1項第3号又は同項第6号に該当するものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第30号証(枝番を含む。)を提出した。
1 理由の概要
ある商標が商標法第3条第1項第3号又は同項第6号の顕著性を有するか否かについては、該商標の構成自体の記述力(self descriptivity)の度合いないし指定商品の品質に関する自己説明力(self explanativity)の有無と度合いによって個別に判断すべきであり、さらに、該商標が使用により特定品質表示としての意味理解が確立されたものかどうかについては、該品質表示語としての成熟の度合いにより判断されるべきである。
本件審判は、上記のとおり、本件商標の構成自体の記述力ないし説明力及び使用による理解内容の成熱度によって判断されるべき事案であるから、本件商標と関係のない拒絶例が100件あるからといって、これを十把一絡げに商標法第3条第1項第5号のアルファベット1文字2文字記号の顕著性のごとき類型と称して拒絶されるべきではないし、本件審判と無関係の「ダブル○○」の酒や食品の使用例があるから、本件商標は、「二種類のレモンを使用した商品」の品質表示として、その顕著性が否定されるべきであるとはいい難く、まして請求人のみが特殊なレシピの商品に「ダブルレモン」を使用しているからといって、これをもって「Wレモン」の普遍的品質とみなければならない理由など存しないのであるから、これらの点に関する請求人の主張は、いずれも失当であり理由がない。
2 本件商標「Wレモン」の構成とその理解
(1)「Wレモン」という既成の熟語は存在しない。そして、構成自体の記述力ないし自己説明力についてみれば、「Wレモン」、「ダブルレモン」は、「two lemons(二個のレモン)」や「two kind of lemon(二種類のレモン)」のことでない漠然たる「Wのレモン」、「ダブルのレモン」程の内容の記述力ないし説明力があるというにすぎず、これを「『二重のレモン』程の意味合いを暗示させる一体不可分の造語」と認定した本件商標に係る拒絶査定不服審判の審決の判断に誤りはない。
そして、使用との関係については、「Wレモン」が使用により特定品質表示としての意味理解が確立されたものかどうかについて、いまだ具体的な意味合いを認識させるものということはできない「全体として一種の造語を表したもの」との認定にも誤りはない。
上記本件商標の認定が正当なことについては、以下詳述する。
(2)本件商標について、請求人は、「外観上一体的に表されている」との造語認定は不必要であると拒絶査定不服審判の審決を論難するが、商標を構成する文字がどのように表示されるかによって該商標の認識が異なることがあることは自明であり、「外観上一体的に表されている」ことは、商標の類否判断のみにかかわらず顕著性判断においても必要なことであり、本件商標の造語認定に当然必要な条件として考慮された結果であるから、一体的に表された造語認定の結果導かれた帰結として本件商標が顕著性を有するとされた拒絶査定不服審判の審決は、至極妥当なものである。
(3)過去の「ダブル○○」の拒絶例の存在
請求人は、「本件の事案には関係がないものであるが」と断って、「約100件を超える多数の『W○○』及び『ダブル○○』(「○○」は指定商品の普通名称又は識別性のない標章。)という構成の商標が商標法第3条第1項各号に該当するとして拒絶されているから、本件商標も登録されるべきではないという判断を肯定せざるを得ない根拠になる。」旨主張する。
しかし、請求人もあらかじめ「本件の事案には関係がないものであるが」と断って引用するとおり、本件商標が商標法第3条第1項第3号又は同項第6号の顕著性を有するか否かは、上記のとおり、商標の構成自体の記述力ないし説明力及び使用による理解内容の成熟度によって個別に判断されるべき事案であるから、該商標と関係のない拒絶例が100件あるからといって、これを類型のごとく解して拒絶されるべきであるとの主張は理由がない。
(4)「ダブルレモン」の使用例
請求人は、請求人会社の商品「STRONG ZERO」の「ダブルレモン」の使用例をもって、その品質である「レモン浸漬酒」と「レモン果汁」を使用したチューハイの品質表示を主張しているが、この請求人会社固有のこれほど特殊な品質をもって「ダブルレモン」の一般的品質表示とは到底いい難いものであり、そして、自らその特徴的品質が特殊であることの表明は、請求人会社自らが製造販売する二種類のレモンを使用したチューハイを「レモンダブル」と称していることであり、「レモンダブル」と「ダブルレモン」を自ら言い訳しているくらいであるから、「ダブルレモン」が「二種類のレモン」を使用した酒の意の一般的品質表示とは到底いえないことは自明である。
このことからも、いまだ「ダブルレモン」は、自己記述力ないし自己説明力の程度が漠然と「ダブルのレモン」程であって「二種類のレモン」、まして「レモン浸清酒とレモン果汁を使用した酒」のごとき特殊な酒の品質を一般的に想起させるとは到底いい難く、請求人会社の使用をもって本件商標が顕著性を否定させられるべきであるとの主張は理由がない。
(5)被請求人の「SUKISH Wmix」
被請求人は、以下の登録商標下で「SUKISH Wmix」チューハイを発売したものであり、「二種類の原材料のミックス」に限定して解さなければならない根拠とはならないものである。
(a)商標登録第4812385号「TaKaRa Can CHU-HI\SUKISH\タカラcanチューハイ/スキッシュ\W\mix\ダブルミックス」第33類(乙24)
(b)商標登録第4823106号「W\mix\ダブルミックス」第33類(乙25)
(6)「ダブル○○」の酒類の使用例
請求人は、「ダブル○○」の酒類について使用例が3件ある(甲22?甲24)から、本件商標は品質表示であると主張する。
しかしながら、そのうちの「ダブルカシス」は、複数者に慣用の商品名かと理解しているが、ルジェ社の商品説明にも、エギュベル社の商品説明にも、同種商品でありながら決して二種類のカシスを使用したリキュールとの説明はなされていないものであり、ルジェ社の商品説明による「カシスの最高品種といわれるノアール・ド・ブルゴーニュの『一番絞り』ともいえるエキストラバージンジュースを100%使用し」て製せられたリキュールに固有の名称として、エギュベル社も同種商品に使用しているという意味で慣用的名称といい得るとしても、どちらも二種類のカシスを使用した酒類の品質表示としての品質表示ではなく、ルジェ社のそれはノアール・ド・ブルゴーニュ種のみを100%使用されているところ、このカシスリキュールに固有の「ダブル」に「2種類の」の普遍的意味合いは存しないものである。その意味で、このカシスリキュールに固有の慣用される「ダブル」は、別の意味が込められているものと推定されるが、いずれにせよ本件商標「Wレモン」の理解とは次元の異なる無関係の使用例である。
また、アサヒビールの「ダブル酵母生ビール」も、アサヒビールの商品のレシピに係る品質が同種商品の一般的品質表示とまではいえないものであり、アサヒビールの該商品の商品名とみられたことはあっても、アサヒビールの品質と同等の「二種類の酵母を使用した生ビール」の品質を表示するものとして、これが当業者に一般的に使用されることも定着もみなかったものである。
さらに、サントリーの「ダブルピーチ」ワインも、サントリー社のオリジナルレシピとしての特殊製法による「二種類の桃」ワイン(サントリー社の言い訳だと「ピーチダブル」が「二種類の桃」ワインではないかとみられるが)の任意かつ固有の商品名として理解されるところはあっても、ワインの一般的品質表示とみられることもなく、むしろ、同社の特定商品名としての理解の方が一般的であったと思料する。
そうすると、「ダブル○○」の酒を「2種類の○○」の酒の意の普遍的品質表示として限定的に理解しなければならない理由はなく、いまだこれをもって、「Wレモン」が顕著性を有しないとはいえないものである。上記の「ダブル○○」の酒類の使用例は、「ダブル○○」という酒類の使用例があるというだけで、これをもって、本件商標が「二種類のレモンを使用した商品」の品質に限定してみなければならない理由もないものである。
「Wレモン」の品質記述力ないし品質説明力は、例えば、「はちみつとレモン」を使用した商品であることを記述した「はちみつレモン」の品質記述力ないし品質説明力に比して、「Wレモン」の記述力・説明力のレベルに上記の使用例をあわせて考慮しても、依然「ダブルのレモン」、「二重のレモン」程の漠然たる記述性しかない暗示域の観念表出にとどまるものである。
(7)「ダブル○○」の食品の使用例
請求人は、「ダブル○○」が「二種類の原材料」を使用した食品に使用されている例があるから、「ダブル○○」商標が「二種類の原材料」を使用した商品の品質表示であると主張するが、これは、「ダブル」の語が「二種類」を意味する場合があり、二種類の原材料を使用した食品についての使用例があるというに尽きるものであって、単に「ダブル」に「二倍」、「二個」、「二重」、「二種類」の意があるから、その意味で「ダブル」には商標としての顕著性がないというにすぎず、これら「ダブル○○」の「ダブル」を「二倍」、「二個」、「二重」、「二種類」のいずれかに限定してみなければならない理由はない。
さらに、二種類の原材料といっても、各商品は、各社各様の特殊なレシピの品質内容をうたって売り口上としていることをみても分かるとおり、その商品がどのような品質なのかは、その説明を聞いて初めて理解される程度で、それぞれの品質は、聞いてみなければ分からないほど任意で特徴的な固有の品質をいうものであって、その機能は、もっぱら自社商品のみが持つ特別すぐれた商品名を打ち出すためのものとして使用しているのが特徴的であり、いわば各社の「ダブル○○」商品の品質は、すべて別品質の商品と称して過言ではないし、これら各「ダブル○○」の「ダブル」の語の意味する内容は、単に「ダブル」が「2個、2重、二倍、二種類」程の意味で使用されているというにすぎず、「ダブル○○」の「ダブル」を「2個」、「2重」、「二倍」、「二種類」等のいずれかに限定してみなければならない理由はない。まして、「二種類の原材料」を使用した商品に限定して解しなければならない理由は全くないものであって、しかも、「二種類の原材料」を使用した商品に関しても、その品質記述力ないし品質説明力は、それのみでは備わっていないため、逆に各社自社商品としての特長的説明が売り口上となっているのであり、これらのことからみても、いまだ「ダブル○○」は、「二種類の原材料」に限定して使用される品質表示とはいえないこと明らかである。
したがって、本件商標と無関係な食品のこれら使用例をもって、本件商標「Wレモン」が「二種類のレモンを使用した商品」の品質表示とは到底いえないものである。
(8)「ダブル○○」と称する食品の「二種類の原材料以外」の使用例
「ダブル○○」が食品について使用されるとしても、必ずしも「二種類の○○」を使用した商品の品質表示として使用されるものでなく、また、「W」が顕著性を欠くからといって、「二種類」、「二倍」、「二個」のいずれかに限定して解すべき根拠はなく、「W○○」、「ダブル○○」の食品は、直ちに顕著性を有しないとはいえないものである。しかも、「二種類の原材料」に限定して解すべき理由もないことは、下記使用例及び後述(9)の登録例のとおりであって、「W○○」、「ダブル○○」の商標は、それぞれの構成自体の記述力ないし説明力及び使用による理解内容の成熱度によって個別に判断されるべきであるところ、該商標の品質記述力ないし品質説明力及び使用による定義の定着度によれば、いまだ本件商標「Wレモン」が顕著性を有しないとはいえないものである。
ア 「ウィスキーのダブル」
ウィスキーの飲用量シングル(約30ミリリットル。タンブラーグラスに注いで指1本相当。)に対し、ダブル(約60ミリリットル。同指二本相当。)は、使用によって品質内容の理解の定着したものであって、「ウィスキーのダブル」が「二種類のウィスキー」のことをいうのに用いられないことは、自明である。この「ウィスキー」を「レモン」に置き換えて「レモンのダブル」と称しても意味不明であるごとく、単に「ダブル」の文字を含むとか、冠した語として共通性を有するからといって、同じ品質表示にはならず、同等品質表示の理解もないように、商標の顕著性の有無は、該商標を構成する文字による自己記述性ないし自己説明性と、その語の使用によって形成せられた品質内容とによって、品質表示か否か、商標として顕著性を有するか否かが判断されるべきであり、機械的方程式に値を代入して決せられるがごとき性質のものではない。
イ 「キリン淡麗 W(キリンタンレイダブル)」(乙26)
キリンビールの特定商品名であり、この「ダブル」は、「二種類」、「二倍」又は「二個」のいずれでもない。
ウ 「マルちゃん ダブルラーメン」(乙27)
二種類の原料でもなく、二種類の味表示でもない。二食分入りラーメンである。
エ 「森永 ダブルソーダ」(乙28)
二種類の原材料でも味でもない。二本入り氷菓である。
オ 「白鶴 ダブルパック」(乙29)
二種類の原材料でもなく、ブレンドでもない。一升瓶2本分(3.6L)の容量である。
(9)「ダブル○○」の酒類及び食品の商標登録
請求人の主張に反して、「ダブル○○」、「W○○」に関し、酒類及び食品についての商標登録が以下のとおり存在する。これらは、請求人の登録も含めて拒絶例に反しないこと、かつ、幾多の使用例があっても登録された商標であること、すなわち、商標としての自他商品の識別機能を備えた商標として登録されたものであり、請求人の類型的拒絶違反の主張は理由がない。
ア 「ダブルミント」
(ア)商標登録第1541388号「ダブルミント」第30類(ウィリアムリグレイカンパニー)(乙1)
(イ)商標登録第1541390号「ダブルミント」第30類(ウィリアムリグレイカンパニー)(乙2)
(ウ)商標登録第1782704号「DABURU MINTO/ダブルミント」第30類(ウィリアムリグレイカンパニー)(乙3)
イ 「ダブルコーラ」
商標登録第1687631号「DOUBLE-COLA」第32類(ダブル-コーラコムパニイ-ユーエスエイ)(乙4)
ウ 「ダブルソフト」
(ア)商標登録第2474078号「ダブルソフト」第30類(山崎製パン株式会社)(乙5)
(イ)商標登録第2580214号「Double Soft」第30類(山崎製パン株式会社)(乙6)
(ウ)商標登録第3019599号「ダブルソフト」第30類(山崎製パン株式会社)(乙7)
エ 「ダブルベリー」
(ア)商標登録第2582268号「ダブルベリー」第31類(鐘淵化学工業株式会社)(乙8)
(イ)商標登録第4981534号「ダブルベリー」第33類(メルシャン株式会社)(乙9)
(ウ)商標登録第3007407号「ダブルベリー」第32類(日本たばこ産業株式会社)(乙10)
オ 「ダブルグレープ」
商標登録第4093846号「Double Grape/ダブルグレープ」第30類(クラシエフーズ株式会社)(乙11)
カ 「ダブルカレー」
(ア)商標登録第4205560号「ダブルカレー」第29類(明治製菓株式会社)(乙12)
(イ)商標登録第5222031号「ダブルカレー」第29類(明治製菓株式会社)(乙13)
キ 「ダブルオリゴ」
商標登録第4868576号「ダブルオリゴ」第29類及び第32類(株式会社東洋新薬)(乙14)
ク 「ダブルウォーター」
商標登録第5308235号「ダブルウォーター」第30類(江崎グリコ株式会社)(乙15)
ケ 「ダブルじたて/W仕立て」
商標登録第5394544号「ダブルじたて/W仕立て」第30類(ヤマダイ株式会社)(乙16)
コ 「ダブルのコク」、「コクダブル」
(ア)商標登録第5498509号「ダブルのコク」第29類(森永乳業株式会社)(乙17)
(イ)商標登録第5498510号「ダブルのコク」第30類(森永乳業株式会社)(乙18)
(ウ)商標登録第5188719号「コクダブル」第30類(サントリーホールディングス株式会社)(乙19)
サ 「W WHISKY SHOP」
(ア)商標登録第5378614号「W WHISKY SHOP」第35類及び第43類(サントリーホールディングス株式会社)(乙20)
(イ)商標登録第5449597号「W WHISKY SHOP」第33類(サントリーホールディングス株式会社)(乙21)
シ 「Wの香り」
(ア)商標登録第5498511号「Wの香り」第29類(森永乳業株式会社)(乙22)
(イ)商標登録第5498512号「Wの香り」第30類(森永乳業株式会社)(乙23)
(10)「ダブルレモン」の顕著性に関するアンケート
請求人が実施したアンケートは、一般消費者を対象に実施されたものであり、必ずしも商標の顕著性について熟知し精通しているとは限らない回答者においては、自己の知っている実在の商品を想起できるか否か、また、想起した商品での使用態様において、該文字が大書使用(「芋焼酎」、「プレミアム」)されているかどうか、また、主商標表示に対し添え書き的使用(「ダブルレモン」)されているかどうかの範囲で回答している可能性が高い。参考までに、アンケートにおいて提示された語から想起されるであろう商品を例示する(乙30)。
以上を考慮すれば、「ダブルレモン」が品質表示と回答した者が50.7%あるのは、添え書き的使用されたパッケージを想起して回答していることを考えると、大書されていたら商標であると回答した者が27.6%と入れ替わっていたかもしれず、言い換えれば、「ダブルレモン」が「添え書き」されたものであっても、特定会社の商品名、すなわち、商標であると回答している者が27.6%もあることの方がむしろ当を得ている可能性があるというべきであり、ここに一般消費者が請求人のいう「二種類のレモンを使用した酒」の品質表示と理解している可能性は極めて低いといわなければならない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、いまだ特定の品質を表わしたものとはいえない全体で一種の造語商標とみられるものであるから、商標法第3条第1項第3号又は同項第6号のいずれにも該当しないものである。

第4 当審の判断
1 甲各号証について
請求人の提出に係る甲各号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)日本食糧新聞の電子版の写しによれば、以下のとおりである。
ア 1995年3月13日付けの記事(甲23)において、「アサヒビール、北海道でも『ダブル酵母生ビール』発売」の見出しの下、「【札幌】アサヒビール(株)北海道支社・・・は1日、新開発の“マリッジ製法”による“のどごしの良さ”と“口あたりの良さ”を同時に実現した新しい味わいの『アサヒダブル酵母生ビール』四品種・・・を道内でも新発売した。今回、新開発した“マリッジ製法”は、・・・同社独自の研究開発の中から実現されたもの。まず、二種類の酵母をそれぞれに最適な成分組成の麦汁で主発酵させ、それぞれの酵母の特長を充分に引き出した二つの若ビール(主発酵の終了したビール)をつくり、この二種類の酵母が新しい味わいのビールを実現させた。」と記載されている。
イ 2004年1月26日付けの記事(甲24の1)において、「サントリー、バレンタインシーズンの贈り物にハートラベルのワイン3種発売」の見出しの下、「サントリー(株)・・・は27日、『フルーツワインセレクション・ダブルピーチ〈ハートラベル〉』(写真)を数量限定で全国発売する。・・・『ダブルピーチ』は○一年3月に発売した『フルーツワインセレクション』の新アイテムで、桃のワインと上質な桃の果汁を使った“ダブルピーチ”のワイン。」と記載されている。
ウ 2002年3月8日付けの記事(甲26)において、「『小岩井牛乳』・『ダブルキャラメルオ・レ』発売(小岩井乳業)」の見出しの下、「▽『小岩井ダブルキャラメルオ・レ』(乳飲料)は、甘いキャラメルと苦みのあるキャラメルの2種類をブレンドし、ミルクを加えた新しい味わいに仕上がっている。」と記載されている。
エ 2004年6月21日付けの記事(甲27の1)において、「『トロピカーナ ムースシャーベット ダブルピーチ』発売(キリンビバレッジ)」の見出しの下、「キリンビバレッジ・・・は、氷菓『トロピカーナ ムースシャーベット〈ダブルピーチ〉』などシリーズ品3品を5月18日から関東甲信地区・・・で発売した。・・・〈ダブルピーチ〉は、白桃の果汁に黄桃の果肉を加えた2種類の味が楽しめる。」と記載されている。
オ 2007年9月26日付けの記事(甲30の1)において、「『キリン 午後の紅茶スペシャル ダブルベルガモット』発売(キリンビバレッジ)」の見出しの下、「◆会社名=キリンビバレッジ・・・アールグレイ紅茶にさらにイタリア産ベルガモット果汁を加え、アールグレイ紅茶由来のベルガモットのさわやかな香りと、果汁そのものの味わいがダブルで楽しめるぜいたくな味わい。」と記載されている。
カ 2008年5月2日付けの記事(甲31)において、「『カルフェ ダブルショコラ』発売(江崎グリコ)」の見出しの下、「ココアメレンゲとビターチョコのダブルのカカオ感が楽しめる。」と記載されている。
キ 2008年6月25日付けの記事(甲32)において、「『ぎゅっとフルーツヨーグルト 南国ダブルマンゴー』発売(森永乳業)」の見出しの下、「◆会社名=森永乳業・・・◆商品特徴=発酵乳。・・・手軽に食べられるパウチ型ヨーグルト。2種類のマンゴーを使い、マンゴーの食感・風味が楽しめる。」と記載されている。
ク 2008年10月17日付けの記事(甲33)において、「『シーズケース果実できゅっ レモン&グレープフルーツ』発売(アサヒフードアンドヘルスケア)」の見出しの下、「◆会社名=アサヒフードアンドヘルスケア・・・◆商品特徴=健康食品(錠菓)。・・・〈レモン&グレープフルーツ〉レモンとグレープフルーツのダブル果汁入りで、ジューシーで甘酸っぱい・・・」と記載されている。
ケ 2010年10月20日付けの記事(甲37)において、「『Dororich ダブルグレープフルーツゼリークリームin』発売(江崎グリコ)」の見出しの下、「◆会社名=江崎グリコ◆商品特徴=生菓子。シリーズ新アイテム。ストローで飲むゼリー。ホワイトとピンクの2種類のグレープフルーツを使用したフルーツゼリーとさわやかなクリームで、今までにない・・・飲むデザートに仕上げた。」と記載されている。
コ 2011年3月28日付けの記事(甲38)において、「『クリアイン フルーツのど飴』発売(日本クラフトフーズ)」の見出しの下、「◆会社名=日本クラフトフーズ◆商品特徴=菓子。リニューアル。フルーツのおいしさ、みずみずしさを、透き通った2色のキャンデーで表現した2層キャンデー。2層の特徴を生かし、人気のレモン、グレープ、青リンゴに加えて黄桃と白桃を重ねた“ダブルピーチ”が入った。」と記載されている。
サ 2011年9月23日付けの記事(甲40)において、「『パリッテ ダブルチョコ』発売(江崎グリコ)」の見出しの下、「◆会社名=江崎グリコ◆商品特徴=アイスクリーム類。・・・2つのチョコが折り重なる深い味わい。」と記載されている。
シ 2011年12月2日付けの記事(甲42の1)において、「アサヒフードアンドヘルスケア、20?30代男性向けバランス栄養食『ガツン』発売」の見出しの下、「アサヒフードアンドヘルスケアは・・・バランス栄養食『GATZUN(ガツン)〈ダブルチョコ〉=写真、・・・『ガツン〈ダブルチョコ〉』は、しっとりとやわらかいチョコ味の生地に、風味豊かなチョコレートクリームをサンドした。」と記載されている。
ス 2011年12月14日付けの記事(甲43)において、「『スイーツトルテ ダブルチョコケーキ』発売(不二家)」の見出しの下に、「◆会社名=不二家◆商品特徴=菓子。・・・ケーキのおいしさをチョコに閉じ込めた、“ケーキinチョコ”。・・・〈ダブルチョコケーキ〉チョコレートクリームにチョコレートビスキュイをダブルで組み合わせて、チョコケーキのおいしさを表現した。」と記載されている。
(2)ニュースリリースの写しによれば、以下のとおりである。
ア 1999年9月20日付けの「ファミリーマート」のニュースリリース(甲25)において、「ファミリーマートのバージョンアップ第10弾『スーパーベーグルサンド』ハム&ダブルチーズ 新発売!・・・」の見出しの下、「『スーパーベーグルサンド』ハム&ダブルチーズはチェダーチーズに、スイスのベルン北部のエメンタール渓谷周辺が発祥の地で酸味が少なく、くるみのような香りと甘い風味があるエメンタールチーズをプラスすることにより、コクと風味豊かな味わいに仕立て上げました。」と記載されている。
イ 2004年5月31日付けの「キリンビバレッジ」のニュースリリース(甲27の2)において、「キリンビバレッジ株式会社・・・は、ふんわりとした食感と果実のおいしさが楽しめるフルーツアイスデザート『トロピカーナ ムースシャーベット』(デザートオレンジ、ダブルピーチ、スイートミックスベリー)の販売を、関東甲信地区・・・で5月18日(火)から開始しました。」と記載されている。
ウ 2007年7月13日付けの「キューピー」のニュースリリース(キューピーアヲハタニュース)(甲29)において、「アヲハタ55/『ダブルベリー&チェリージャム(ラズベリー・ストロベリー)』/『アップル&シナモンジャム(メープルシロップ・レーズン入り)各165g』/8月17日(金)から全国に出荷/・・・『ダブルベリー&チェリージャム』は、ケーキのベースソースとしても使われるラズベリーとストロベリーのダブルベリーにチェリーをミックスしたジャムで、クリスマスなどにもぴったりです。」と記載されている。
エ 2007年8月20日付けの「キリンビバレッジ」のニュースリリース(甲30の2)において、「キリンビバレッジ株式会社・・・は、紅茶飲料のNo.1ブランド『キリン 午後の紅茶』のスペシャルラインから、ベルガモットの香りをつけた紅茶(アールグレイ)に、さらにベルガモット果汁を加えた『キリン 午後の紅茶スペシャル ダブルベルガモット』を、9月4日(火)から全国で新発売します。」と記載されている。
オ 2009年9月10日付けの「敷島製パン株式会社」のニュースリリース(甲34)において、【商品概要】として、「ダブルチーズビザ」の欄に「オニオンシートを折り込んだ生地にピザソースを塗り、シュレッド、レッドチェザーの2種類のチーズをトッピングしました。」と記載されている。
カ 2010年2月12日付けの「ハウス食品」のニュースリリース(甲35)において、「ハウス食品は、1日分のビタミン全13種類を配合した、手軽に栄養補給ができるフルーツ風味のクリームをサンドしたビスケット、ハウス『C1000 1日分のビタミン』<はちみつレモンクリームサンド><ダブルベリークリームサンド>を、2月22日から全国の全チャネルで新発売いたします。・・・【製品特徴】・・・ダブルベリー:ブルーベリー果汁0.41%、ストロベリー0.06%使用(生換算)」と記載されている。
キ 2010年8月26日付けの「日本ハム株式会社」のニュースリリース(甲36)において、「日本ハムグループの日本ハムデリニューズ・・・は、9月1日(水)より『ダブルソース ハンバーグ』と『ダブルソース チキン南蛮』の2品を新発売します。・・・この『ダブルソース ハンバーグ』と『ダブルソース チキン南蛮』は、・・・素材と相性の良い2種類のソースを合わせた‘ダブルソース’を使用した商品です。」と記載されている。
ク 2011年5月24日付け「明星食品 NEWS RELEASE」(甲39)において、「明星 究麺 つけ麺 特濃魚介だれ」の見出しの下、「明星食品株式会社・・・では、カップめん『明星 究麺 つけ麺 特濃魚介だれ』を2011年6月20日(月)から全国で新発売いたします。」の記載とともに、「商品の特徴」の項に「つけだれ:・・・極太麺に絡みつく特濃仕立てのダブルスープ(粉末、液体)で酸味、甘み、辛みをバランスよく効かせ、食べ飽きしないつけだれに仕上げました。」と記載されている。
ケ 2011年4月1日付けの「森永乳業株式会社」のニュースリリース(甲41の1)において、「森永乳業はこのたび、ストロベリーアイスクリームをストロベリーチョコでコーティングした、一口タイプアイス『ピノ W(ダブル)ストロベリー』を4月4日(月)より期間限定商品として全国にて発売いたします。」と記載されている。
コ 2011年9月28日付けの「森永乳業株式会社」のニュースリリース(甲41の3)において、「森永乳業は、コーヒーアイスクリームをコーヒーチョコでコーティングした、一口タイプアイス『ピノ W(ダブル)コーヒー』を10月3日(月)より期間限定商品として全国にて販売いたします。・・・発売35周年の今年は、アイスもコーティングチョコも同じフレーバーに統一した“W(ダブル)シリーズ”を展開しております。」と記載されている。
サ 2006年4月24日付けの「日清食品株式会社」のニュースリリース(甲51)において、「超大盛りカップ焼そば『日清 デカ王 Wソース焼そば』リニューアル新発売のご案内」の表題の下、「・・・2005年11月に発売した『日清 デカ王 Wソース焼そば』は超大盛り焼そばとして大変好評を頂いております。・・・“ソース力(りょく)アップ!”をコンセプトに、スパイス感溢れる粉末ソースとコクと旨みのある液体ソースのダブルソースをより濃厚にすることで、ソース焼そばの本流的な味がより一層楽しめるようにいたしました。」と記載されている。
(3)甲第54号証は、調査目的を「請求人の依頼による、各種『アルコール飲料』のパッケージに表示されている言葉が、一般需要者が商品の『ブランド』と認識するか、商品の『品質表示』であると認識するかの意識調査を目的とする。」、調査方法を「ウエブサイトによる調査に協力することを目的に当社に、『Web調査対象者』として登録されている者に対して、調査を行うウエブサイトのURLを記載した電子メールを発信し、当該ウエブサイトにアクセスした対象者が、画面上に表示される調査事項に回答する。」、調査対象者を「『アルコール飲料を飲まれる方を対象とする調査』であることを告知し、条件を満たす20歳以上の対象者のみが回答する。」、調査実施期間を「2012年8月17日?8月19日」とするものであり、画面に表示される調査事項は、「以下に記載されている語が『アルコール飲料』のパッケージに表示されている場合、あなたは商品の『ブランド名』、商品の『品質表示』どちらに近いと思いますか。お気持ちをお答えください。」であって、その「以下に記載されている語」は「(a)いいちこ、(b)糖質ゼロ、(c)辛口、(d)スーパードライ、(e)ダブルレモン、(f)芋焼酎、(g)松竹梅、(h)まろやか、(i)氷結、(j)プレミアム」とする調査であり、その調査結果とともに、株式会社インテージから請求人あてに平成24年10月25日付けでされた「調査報告書」である。
調査結果として報告された添付書類3(4枚目)の一覧には、上記「(a)いいちこ」ないし「(j)プレミアム」の10の語の欄が設けられており、「ダブルレモン」の語については、「ブランド名(コカ・コーラのような特定の商品名)」が27.6%、「品質表示(商品の味わい、原料、産地等)」が50.7%、「分からない」が21.7%であることが記載されている。
2 本件商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)本件商標及びそれを構成する文字又は語について
本件商標は、「Wレモン」の文字を標準文字で表してなるところ、「W」のローマ字と「レモン」の片仮名とを結合してなるものと看取されるものである。
そして、「W」のローマ字は、「2重。2倍。複。」の意味を有する「ダブル(double)」の記号を表したものとして、一般に広く理解、認識されているものである。
また、「ダブル(double)」の語は、「ダブル○○」、「double ○○」のように、他の語と結合して一つの意味を有する語又は句を成立させたものが多数存在する。そのような語などにおいて、「ダブルプレー」を「Wプレー」、「ダブルカフス」を「Wカフス」、「ダブル幅」を「W幅」などのように、省略して記載されることも一般に行われていることがうかがわれる。
さらに、「レモン」の語は、例えば、「大辞林(第3版)」に「果肉は酸味が強く香気があり、料理の添え物・菓子・清涼飲料などに用いる。」と記載されているものであり、レモンの果汁・果肉は、食品に幅広く使用されているものである。
(2)「ダブル○○」及び「W○○」の語の使用について
請求人の提出に係る証拠によれば、飲食料品の業界では、本件商標の登録審決時前より、2種類の原材料、品質等を有する商品であることを表すための語として、例えば、ビールに「ダブル酵母生ビール」(甲23)、ベーグルサンドに「ダブルチーズ」(甲25)、乳飲料に「ダブルキャラメルオ・レ」(甲26)、氷菓に「ムースシャーベット<ダブルピーチ>」(甲27)、ジャムに「ダブルベリー&チェリージャム」(甲29)、紅茶飲料に「ダブルベルガモット」(甲30)、チョコレート菓子に「ダブルショコラ」(甲31)、ヨーグルトに「ダブルマンゴー」(甲32)、パン・菓子において「ダブルチーズピザ」(甲34)、ビスケットに「ダブルベリークリームサンド」(甲35)、ハンバーグなどの加工食品に「ダブルソース」(甲36)、生菓子に「ダブルグレープフルーツゼリー」(甲37)、アイスクリームに「ダブルチョコ」(甲40)などのように、「ダブル○○」の語が使用されていることが認められる。
また、2011年3月28日付け日本食料新聞(電子版)において、「『クリアイン フルーツのど飴』発売(日本クラフトフーズ)」の見出しの下、「商品特徴=菓子。リニューアル。フルーツのおいしさ、みずみずしさを、透き通った2色のキャンデーで表現した2層キャンデー。2層の特徴を生かし、人気のレモン、グレープ、青いリンゴに加えて黄桃と白桃を重ねた“ダブルピーチ”が入った。」(甲38)、同年5月24日付け「明星食品 NEWS RELEASE」において、「明星 究麺 つけ麺 特濃魚介だれ」の見出しの下、「商品の特徴」の項に「つけだれ:・・・極太麺に絡みつく特濃能仕立てのダブルスープ(粉末、液体)で酸味、甘み、辛みをバランスよく効かせ、・・・」(甲39)との記載にあるように、文章中においても「ダブル○○」の語が使用されている。
さらに、アイスクリームにおける「ピノ W(ダブル)ストロベリー」、「ピノ W(ダブル)コーヒー」、「W(ダブル)シリーズ」(甲41の1・3)の記載や2006年4月24日付け「日清食品株式会社」のニュースリリースにおける「・・・2005年11月に発売した『日清 デカ王 Wソース焼そば』は超大盛り焼そばとして大変好評を頂いております。・・・“ソース力(りょく)アップ!”をコンセプトに、スパイス感溢れる粉末ソースとコクと旨みのある液体ソースのダブルソースをより濃厚にすることで、・・・」(甲51)との記載にあるように、「W」を「ダブル」と言い表す旨の表記がされていることも認められる。
(3)小括
以上よりすると、本件商標「Wレモン」が、本件商標に係る指定商品について使用された場合、これに接した取引者・需要者は、該商品が2種類の原材料ないし品質を有するものであることを直ちに理解し、認識するというのが相当である。
したがって、本件商標は、商品の原材料又は品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきであるから、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。
3 被請求人の主張について
被請求人は、「『ダブル○○』の『ダブル』には多様な意味の使用例があり、これを『2種類』に限定して理解しなければならない理由はなく、辞書においても『ダブル』は、『2重。2倍。複。』など多様な意味として広く認識されており、また、『2種類』の意味についても、請求人が挙げた飲食料品の使用例でもいかなる2種類なのかは個々の商品ごとに特徴があり、その説明を聞いて初めて理解できるものばかりであるから、本件商標が顕著性を有しないとはいえない。」旨主張する。
しかしながら、2つ以上の語を結合したものが、商標として顕著性を有するか否かは、それぞれの語の意味、各語の続き具合による意味の特定、使用商品や関連商品についての各語の使用状況等により、取引者、需要者がどのように認識するかを考慮して判断されるべきところ、「ダブル」又は「W」の語が多様な意味を有するとしても、該語の後に続く「レモン」の語との組み合わせにより、上記2のとおり、「Wレモン」の語全体として、該語が使用された商品が2種類の原材料ないし品質を有するものであることを直ちに理解、認識させるものであるといわざるを得ないものであり、また、いかなる2種類なのかは個々の商品ごとに特徴があるとしても、結局、個々の商品ごとにみれば、該商品が2種類の原材料ないし品質を有するものと認識されることに変わりはないものであるから、請求人の上記主張は、採用できない。
また、被請求人は、請求人が実施したアンケートについて、該アンケートにおいて提示された語から想起されるであろう商品を例示して(乙30)、『ダブルレモン』が品質表示と回答しているものが50.7%あるのは、添え書き的に使用されたパッケージを想起して回答していることを考えると、大書されていたら、商標であると回答した者が27.6%と入れ替わっていたかもしれず、一般消費者が請求人のいう「二種類のレモンを使用した酒」の品質表示と理解している可能性は極めて低い。」旨主張する。
しかしながら、上記アンケートは、10の語(文字のみ)について調査したものであるところ、回答者において、被請求人が例示する商品を想起したとは必ずしもいい難く、そもそも、商品に付された文字等が大書されていればブランド名であり、小さく書されていれば品質表示であると一概にいえるわけでもない。そして、アンケート結果において、「ダブルレモン」の語について、「ブランド名」が27.6%、「品質表示」が50.7%、「分からない」が21.7%との各比率は、本件商標が顕著性を有しないことを首肯することはあっても、上記認定、判断を否定する根拠にはなり得ないというのが相当である。
よって、被請求人の該主張も採用することはできない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものであるから、同法第46号第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決日 2013-08-23 
出願番号 商願2010-7166(T2010-7166) 
審決分類 T 1 11・ 13- Z (X33)
最終処分 成立  
前審関与審査官 早川 真規子石井 亮 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 酒井 福造
田中 敬規
登録日 2012-03-30 
登録番号 商標登録第5481980号(T5481980) 
商標の称呼 ダブリュウレモン、ダブルレモン 
代理人 特許業務法人みのり特許事務所 
代理人 中田 和博 
代理人 青木 博通 
代理人 片山 礼介 
代理人 柳生 征男 

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