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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200135265 審決 商標
無効2012890002 審決 商標
無効200135424 審決 商標
無効2010890099 審決 商標
無効2012890001 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない X31
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X31
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない X31
審判 全部無効 観念類似 無効としない X31
審判 全部無効 外観類似 無効としない X31
管理番号 1280059 
審判番号 無効2012-890100 
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-11-14 
確定日 2013-09-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第5488638号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5488638号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「PROmanage」の欧文字を書してなり、平成23年11月30日に登録出願され、第31類「ペットフード,飼料用骨,飼料添加物(医療用のものを除く。),動物用噛み餌,動物用ビスケット,その他の飼料,飼料用たんぱく,獣類・魚類(食用のものを除く。)・鳥類及び昆虫類(生きているものに限る。),動物用寝わら,愛玩動物用芳香砂(寝わら)」を指定商品として、同24年4月4日に登録査定、同月20日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人の引用する登録第2120191号商標は、別掲2のとおり、「PRO PLAN」の欧文字と「プロプラン」の片仮名を上下二段に書してなり、昭和61年6月17日に登録出願され、第33類「穀物、豆、粉類、飼料、種子類、その他の植物及び動物で他の類に属しないもの」を指定商品として、平成元年3月27日に設定登録され、その後、平成10年11月17日及び同21年3月17日の2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに、平成21年4月1日に指定商品を第31類「飼料」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁書に対する上申の内容を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第60号証を提出している。
1 利害関係について
請求人は、引用商標を現に使用しており、これに類似する本件商標の使用に由来する出所の混同及び引用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力の毀損を防止すべく、無効審判の請求を行うものである。よって、請求人は本件審判請求を行うことについての利害関係を有する。
2 無効理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号の規定に違反して商標登録がされたものであるから、その登録は、同法第46条に基づき無効とされるべきものである。
3 具体的理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 指定商品の抵触
本件商標の指定商品中「第31類 ペットフード,飼料用骨,飼料添加物(医療用のものを除く。),動物用噛み餌,動物用ビスケット,その他の飼料」は、引用商標の指定商品「飼料」と同一又は類似することは明らかである。
イ 商標の類似性
(ア)両商標に係る語句の意味
本件商標と引用商標の語頭部分において共通する「PRO」は、「専門家」を意味する語である(甲4)。また、本件商標の構成中「manage」は、「何とか成し遂げる」といった意味を有する語であり(甲5)、「目標、目的を明確化し、成功するために手を打つ」といった一連の行為を意味するものである(甲6)。これに対し、引用商標の構成中「PLAN」は、「計画を立てる」といった意味合いを有する語であり(甲7)、「目的を達成するために、どのような手順でどのように行動するのかを決める」といった一連の行為を意味する(甲8)。したがって、「manage」と「PLAN」からは、「目的へのアプローチ(計画・管理)」といった共通のイメージが生じることは明らかである。
(イ)本件商標及び引用商標から生じる観念
本件商標は、ローマ字大文字「PRO」と小文字「manage」を横書きにしたものであるのに対し、引用商標は、ローマ字大文字「PRO」及び「PLAN」と、カタカナ「プロプラン」からなるものである。
上述のとおり、これらを構成する語は、いずれも平易な英単語である。両者は「PRO」の語頭部分において一致しており、一致していない「manage」と「PLAN」の語からは、「目的へのアプローチ(計画・管理)」といった共通のイメージを連想させる。そのため、本件商標と引用商標は構成全体をして、専門家[プロフェッショナル]の(健康・食品)管理[プラドン]といった共通の観念が生じる。
(ウ)本件商標と引用商標との類否
本件商標は、ローマ字大文字「PRO」と小文字「manage」を横書きにしたものであるのに対して、引用商標は、ローマ字「PRO」及び「PLAN」とカタカナ「プロプラン」からなるものである。そのため、外観及び称呼は相違する。しかしながら、上述のとおり、本件商標と引用商標からは、専門家[プロフェッショナル]の(健康・食品)管理[プラン]といった共通の観念が生じる。
(エ)取引の実情(商品の共通性)
実際、両ブランド名は、「専門家(プロフェッショナル)による健康・食事管理(プラン)」を表現したものである(甲11、12)。また、両製品は、最新の設備と技術により、多方面の専門がペットの理想的な総合栄養食の開発を目指し研究した成果を反映した、品質の高い製品づくりを実現していることを最大の宣伝文句にしている。
また、ペットの最適な体型を知り、成長の段階に合った適切な給与量を把握することが健康管理の基本となる。そのため、ペットの多用な課題ニーズに対応するために、年齢や生活環境などライフステージ別に様々な製品ラインナップを用意していることを共通の特徴としている(甲12?14)。
(オ)取引の実情(引用商標の周知・著名性)
「PROPLAN(プロプラン)」は、1926年に、獣医師やペット栄養士などの研究者により構成された世界最大規模のペットケア研究施設が創生されて以来、長期にわたる研究に基づき、ペットの長生きで健康な生活のために開発された製品である。プロプランは、機能性ペットフードとして、1986年にアメリカで発売された当初より、ペットショップやブリーダーなどにおいて、一歩一歩信頼を築きながら成長してきた。その20年の間に、成長段階、飼育環境、体質等の特別な要求に合わせた様々な製品ラインナップを拡大している。
1990年代には、日本を含む世界各国で発売されるようになり、その高い品質が評価を受け、トップブリーダー、獣医師、ペットショップスタッフなどから強い支持を受けている(甲14)。
日本のペットフード市場には、食品世界最大大手の請求人の傘下となった2002年以降から攻勢し、ブランドの浸透を図ってきた。機能性ペットフードとして「フラッグシップ(プロプラン)」の厚い信頼をもとに、新ブランド「ピュリナプロプラン」を軸とし、(2002年当時の)2位からトップブランドヘの進出を目指し、宣伝広告活動を始動した(甲15)。愛犬のお食事事情の異変として、請求人の高品質・高機能ペットフードが新聞記事に取り上げられるなど、その当時より、プロプランの注目度が窺える(甲16)。
プロプランは、日本市場発売以来、成長を続け、2007年には、有力ブリーダーは約2500、販売しているペットショップは1100店に増加した。推奨ペットショップも518店と増えている(甲27)。
さらに、2009年に、新たに食の細い小型犬シリーズを発売する(甲28)。その一方、月7万部を発行するブリーダー及びオーナー向け雑誌「愛犬の友」等への広告の掲載、カタログ・割引クーポンの配布、キャンペーンを実施するほか、約1万名の会員数を持つ「プロプランクラブメンバー」に対するダイレクトメールを継続的に実施することにより(甲28?38)、プロプランは今なお成長を続けている。
そして、米国における品質に関する確かな信頼、評価と相まって、プロプランは機能性ペットフードのブランドとして、日本においても少なくとも本件商標の出願時に、著名性を獲得していたものと確信する。
(カ)取引の実情(本件商標と引用商標の比較)
「PROmanage(プロマネージ)」は、現代を生きる犬特有の様々な生活環境に対応することを目的として、ペット栄養学を専門とするウォルサム研究所と共同で開発し、栄養設計された高品質・高機能ペットフードである(甲47)。
このような機能性ペットフードの需要者は、主として商品の効能・品質、すなわち、年齢や生活環境など、ライフステージ別に特別に対応して、専門家が栄養設計したものである点に専ら興味を引かれて購入を決めるものであり、必ずしも、店頭で実際の商品を手に取り、吟味した上で購入するわけではない。
両製品の需要者層も共通していることを考慮すると、使用されている文字が「PRO」の語頭部分において一致しており、一致していない「PLAN」と「manage」の語は、いずれも、目的へのアプローチ(計画・管理)を連想させ、両商標の取引に与える印象、記憶、連想は紛らわしものとなる。
さらに、引用商標の著名性ゆえ、出所の混同のおそれを増幅されるものとなることをも考慮すると、たとえ、本件商標と引用商標の外観及び称呼において類似するものとはいえないものであるとしても、両商標は、商品の出所につき誤認混同されるおそれがあると考えるべきである。
ウ 小括
したがって、本件商標は、出願の日前の商標登録出願に係る引用商標と類似する商標であって、引用商標に係る指定商品と同一・類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するというべきである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標の著名性
上述のとおり、引用商標には、専門家が栄養設計した高品質・高機能のペットフードとして、高い名声、信用、評判を獲得するに至っていたことは明らかである(甲11?47)。
イ 商品の関連性
本件商標を検討すると、上述のとおり、本件商標の使用されている商品は機能性ペットフードであり、これに接するであろう需要者は、専門家が栄養設計した高品質・高機能なペットフードである点に専ら興味を引かれて購入を決める愛犬家である(甲12、13)。
そのため、本件商標の需要者は、本件商標と引用商標との構成上の相違にもかかわらず、本件商標よりに生じるイメージ、専門家[プロフェッショナル]の(健康・食品)管理[プラン]といった共通の観念に着目し、その出所について誤認混同するおそれがあるといわざるを得ない。
ウ 小括
したがって、指定商品を「ペットフード、飼料用骨、飼料添加物(医療用のものを除く。)、動物用噛み餌、動物用ビスケット、その他の飼料」とする商標「PROmanage」について、世界的に有名な機能性ペットフードブランド「PROPLAN(プロプラン)」を連想し、これらの商品が、その出所について誤認混同するおそれがあるというべきである。
なお、機能性ペットフードとして世界的に周知・著名であるこの「PROPLAN(プロプラン)」ブランドに化体された信用の保護を図るため、請求人は、計107の商標登録を取得している(甲50)。
本件商標は、請求人の周知・著名商標「PROPLAN(プロプラン)」へのただ乗り及び当該表示の希釈化を図るものであり、請求人の企業経営の多角化、ブランドの成立等、請求人の正当な利益を害するものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号について
ア 引用商標の著名性
上述のとおり、引用商標には、専門家が栄養設計した機能性ペットフードとして、少なくとも、被請求人の親会社「マースリミテッド」(以下「マース社」という。)のあるアメリカにおいて高い名声、信用、評判を獲得するに至っていたことは明らかである(甲39?47)。
イ 被請求人の不正の目的
ペットフードの日本国市場を牛耳っているのは、請求人及び被請求人のようなペット先進国の外資系であり(甲52)、多額の宣伝費をかけて認知度を高める一方、世界トップ水準にある研究開発力を生かした製品投入が目立つ。
こうした状況のもと、被請求人の商品カタログには、N社(ネスレピュリナペットケア)、I社(アイムス)及びH社(ヒルズ・コルゲート)との比較がなされおり、被請求人は請求人の商品を意識していることは明らかである(甲48)。
そうとすれば、機能性ペットフードのブランドとして認知されている引用商標と、あえて同一の商品イメージを想起させる商標を採択・使用することは、請求人の営業上の努力の成果を不当に利用し、また、請求人の出所表示機能を希釈化することを目的とした、不正の目的をもって使用するものとなるといわざるを得ない。
ウ 小活
したがって、本件商標は、請求人の周知・著名商標の只乗りし、また、その出所表示機能を希釈化させることを目的とした、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当するというべきである。
(4)むすび
以上詳述した通り、本件商標は商標法第4条1項11号、15号及19号の規定に該当するにもかかわらず登録されたものであるから、その登録は同法第46条に基づき無効とされるべきである。
4 答弁書に対する上申の内容
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標から生じる観念
本件商標及び引用商標を構成する「PRO」、「manage」又は「PLAN」の語は、いずれも日本人にとってなじみの深い英単語である。そして、両商標は、各構成語を一様に連なり、その各語に対応する文字の大きさや形態に差異なく一体的に表されてなることから、これに接する需要者は構成全体として、各構成語の有する意味に基づき、「専門家の管理・計画」といった意味合いを想起することは明らかである。
すなわち、本件商標と引用商標は構成全体をして、専門家[プロフェッショナル]の管理[プラン]といった共通の観念は、各構成語の有する意味に基づき導かれたものであって、被請求人が主張するような、本件商標から生じる観念を引用商標から生じる観念に近づけるために歪曲したものでは、決してない。
イ 取引の実情
一般社団法人ペットフード協会による平成20年全国大猫飼育率調査によれば、ペットの寿命も長くなり、人と同じようにペットにも幼児・成人・老人などといったライフステージに合わせた食事を摂ることの重要性が、飼い主の間で幅広く認知された結果、ペットフード購入時の最重要確認項目は、ペットフードの「成長段階(対象年齢)」であることが示されている(甲53)。また、アニコム損害保険株式会社(ペット保険会社)のペットフードに関するアンケートによれば、年齢別・品種別・目的別に栄養設計されたいわゆる機能性ペットフードを選択している飼い主は相当数おり、「市販のフード」を選択する飼い主と、「手作り食」や「市販のフード+トッピング」と食事に手をかける飼い主とて、ほぼ三分されていることが示されている。
また、このアンケートによれば、ペットフードを選ぶ際にメーカーを重視するのは、わずか7.1%にすぎず(甲54)、パッケージデザインを確認する飼い主に至っては、わずか3.6%にすぎない。そうとすれば、被請求人の主張こそが、客観的根拠を欠き、事実に反することは明らかである。
ウ 引用商標の著名性
一企業が頒布する商品カタログの配布方法については、店舗に置かれ顧客が自ら手にしたり、販売員が手渡す形で頒布されたり、場合によっては氏名・住所等の情報を登録している顧客に送付される形で頒布されるのが通常である。このことは、経験則上からも明らであるため、これを証明することを必ずしも要しないと考える。一方、請求人の2011年の売上高836億4,600万スイスフラン(約7兆4,600億円)中、ペットケア製品の売上高は11.7%の97億8,700万スイスフラン(約8,700億円)であったことをここに申し述べる(甲55)。
「プロプラン」は、請求人のペットケア製品の主力製品(甲55、56)として、我が国においても2002年以降、広告宣伝に力を入れ、2007年8月には、有力ブリーダーは約2500、販売しているペットショップは1100店に増加し、また、推奨ペットショップも518店と急激に増えたことは、甲第15号証及び甲第27号証に示されているとおりである。その後、プロプランシリーズとして、2007年10月1日には、アレルケア子犬用小粒、成犬用小粒及びシニア犬用(甲57)、2010年4月1日には、超小型犬成犬用(甲58)、2012年9月1日には、やさしくケアしてあげたい小型犬用[筋骨格と腸内環境の健康維持](甲59)及び避妊・去勢した小型用[避妊・去勢後の適切な体型と健康的な食生活を維持](甲60)が発売され、今なお成長を続けていることからすると、少なくとも本件商標の出願時に、著名性を獲得していたものと言わざるを得ない。
エ 小括
上述のとおり、本件商標と引用商標が使用される機能性ペットフードは、主として商品の効能・品質にもっぱら興味を引かれて購入を決めるものであり、メーカーやブランドは重視されていない。本件商標及び引用商標の各構成文字が「PRO」の語頭部分において一致しており、一致していない「PLAN」と「manage」の語も、「目的へのアプローチ(計画・管理)」といった共通の観念を連想させるため、両商標の取引に与える印象、記憶、連想は、紛らわしいものとなる。
さらに、引用商標の著名性ゆえ、出所の混同のおそれを増幅させるものとなることをも考慮すると、たとえ、本件商標と引用商標の外観及び称呼において類似するものとはいえないものであるとしても、両商標は、商品の出所につき誤認・混同されるおそれがあると考えるべきである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
一企業が頒布する商品カタログの配布方法等については、必ずしも証明することを要しないことは上述のとおりである。そして、「プロプラン」が、ペットケア製品の売上高97億8,700万スイスフラン(約8,700億円)を有する請求人の主力商品であることからすれば、請求人が提出した証拠(甲11?47)によって、引用商標には、機能性ペットフードとして高い信用を獲得するに至っていたことは明らかである。
また、ペットフードを選ぶ際にメーカーに重視する飼い主は、わずか7.1%にすぎず、また、パッケージデザインを確認する飼い主に至っては、わずか3.6%にすぎない(甲54)。ましてや、いわゆる機能性ペットフードを選択している飼い主は、被請求人が主張するような、ペットフードブランドに対し高度な注意を有する者でもないことから、被請求人の主張こそが、客観的根拠を欠き、事実に反することは明らかである。
したがって、商品の関連性を考慮すれば、本件商標と引用商標の間に出所の混同の虞があると考えるべきである。
(3)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、請求人の「機能性ペットフード」を表示するものとして、少なくとも米国において周知著名な引用商標と観念上共通する、類似の商標である。請求人の商品を意識していた被請求人が、引用商標の存在を知らずに、これを偶然に採択したとは考え難く、引用商標の周知著名性にただ乗りし、不正の利益を得る目的など不正の目的をもって使用するものと言わざるを得ない。

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第27号証を提出した。
1 利害関係について
利害関係については、不知である。
2 無効理由について
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、外観、称呼、観念のいずれの点においても引用商標と類似しない。
ア 本件商標と引用商標は、全体で不可分一体の商標である。
本件商標は、ローマ字の大文字で表した「PRO」の語と、小文字で表した「manage」の語を、両語の間に空欄を設けることなく、一連に「PROmanage」と横書きに書してなるものであり、構成文字に相応して「プロマネージ」の称呼が生じる。また、本件商標のうち、「manage」の部分は、確かに辞書には「何とか成し遂げる」の意味が掲載されている語ではあるものの、かかる意味はわが国において一般的に知られているものではなく、むしろ、我が国では「経営する、管理する」の意味合いで一般的に理解されている語である。したがって、「専門家」を意味する「PROFESSIONAL(プロフェッショナル)」の略語として我が国で広く知られている「PRO」の語と、「経営する、管理する」等の意味を有する英語の動詞である「manage」を不可分一体に組み合わせた造語商標であり、既成語ではないため、これより特定の観念は生じない。
一方、引用商標は、ローマ字の大文字で表した「PRO」と「PLAN」の語を、両語の間に空欄を設けて「PROPLAN」と横書きに書したものを上段に、片仮名で「プロプラン」と一連に書したものを下段に、上下二段に併記してなるものであり、構成文字に相応して「プロプラン」の称呼が生じる。また、引用商標は、「PROFESSIONAL」の略語として我が国で広く知られている「PRO」の語と、「計画、企画、計画を立てる」等の意味を有する英単語の「PLAN」を組み合わせた造語商標であり、既成語ではないため、これより特定の観念は生じない。
そこで、本件商標と引用商標の構成をそれぞれ検討すると、先ず、本件商標は、上記のとおり「PRO」と「manage」の二つの語を結合した、文字のみからなる商標である。本件商標を構成する上記の2語は、大文字と小文字の区別はあるものの、両語の間に空欄を設けることなく密接して一様に連なった構成で、非常に纏まりよく一体的に表されている。また、本件商標中の「PRO」の部分は大文字で表記されているため、「manage」の部分よりも大きく表されてはいるが、「PRO」の語は、「専門家」等を意味する「PROFESSIONAL(プロフェッショナル)」の略語として、専門家用の商品等に広く一般に使用されている語であるため、識別力が弱く、「PRO」の部分が大きく表されているからといって、この部分が需要者等に対して商品役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえない。さらに、本件商標全体から生じる称呼「プロマネージ」は、全体で僅かに6音(長音を含む)と非常に短い音構成であり、無理なく一連に称呼し得るものである。一方、引用商標も、上記のとおり文字のみからなる商標であり、上段は「PRO」と「PLAN」の二つの語を結合してなるものであるが、各語の文字の大きさや形態に差異もなく、同書・同大で纏まりよく一体的に表されている。また、下段の「プロプラン」は、「プロ」と「プラン」の間に空欄が設けられることなく一様に連なった構成である上、上段と下段の文字の横幅が揃えられており、上下二段で非常に纏まりよく一体的に表されている。さらに、引用商標全体から生じる称呼「プロプラン」は、全体で僅かに5音と非常に短い音構成であり、無理なく一連に称呼し得るものである。
かかる構成からなる本件商標と引用商標は、各商標を構成する各文字が一様に連なり、各商標を構成する「PRO」、「manage」、「PLAN」の語が日常使用されない特異な語であるなど、その語自体が特別顕著な印象を与えることはなく、また、構成の一部だけが、取引者及び需要者に対して、商品等の出所識別標識として強く支配的な印象を与える構成でもない。さらに、両商標から生じる称呼は、何れも5音又は6音と非常に短く、称呼が殊更冗長であるなどといった特段の事情もない。したがって、本件商標と引用商標の類否判断は、原則どおり全体観察に基づいて行われるべきものである。なお、本件商標は、その指定商品と類似の商品を指定商品に含む商標「マネージ」(登録第5054788号)と併存して登録が認められており(乙5)、かかる事実からは、特許庁が、実際に、本件商標を「PRO」と「manage」の部分に分離して観察せず、全体で一体不可分の商標であると認定していることが伺える。
イ 本件商標と引用商標は類似しない。
そこで、本件商標全体と引用商標全体の類否を外観・称呼・観念に基づいて検討する。先ず、外観においては、本件商標は欧文字のみからなる商標であるのに対して、引用商標は欧文字と片仮名からなる二段書き商標であり、欧文字部分のみを比較しても、本件商標と引用商標では、第4文字以降において「manage」と「PLAN」で構成文字が全く相違するため、両商標の外観が顕著に異なることは明白である。
次に、称呼においては、本件商標から生じる「プロマネージ」の称呼と引用商標から生じる「プロプラン」の称呼は、前半の「プロ」の2音が共通してはいるものの、後半の「マネージ」と「プラン」は一音も一致せず、全体で5音又は6音の音構成のうち、実に3音が相違する。したがって、本件商標と引用商標の称呼は、明らかに聴別可能な差異を有し、称呼上類似しないことは明白である。
さらに、観念においては、本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念を生じない造語商標であるため、観念上比較することができず、両商標が観念上類似しないことも明らかである。
したがって、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念の何れの点においても、相互に相紛れることのない非類似の商標である。
ウ 本件商標と引用商標は、分離観察によっても類似しない。
前述のとおり、本件商標及び引用商標は、複数の語を組み合わせた結合商標ではあるものの、いずれも全体で不可分一体の商標と認定されるべきであり、各商標を分離観察して、構成の一部を各商標の要部と認定すべきものではないと思料するが、仮に、本件商標と引用商標とをそれぞれ分離観察したとしても、本件商標と引用商標は、互いに相紛れることのない非類似の商標である。
エ 取引の実情を考慮しても、本件商標と引用商標の間に誤認混同が生じるおそれはない。
以下に詳述するとおり、上記の取引の実情に関する請求人の主張には誤りがあり、仮にこれらの取引の実情を考慮したとしても、本件商標と引用商標が非類似である事実にかわりはない。
(ア)商品の共通性
本件商標を使用した被請求人のペットフードは、いわゆる「機能性ペットフード」と呼ばれる、体格や生活環境、種類等が異なるペットがそれぞれ独自に抱える様々な問題、例えばアレルギー、肥満、関節・目・耳等の病気等の問題に対応したペットフードであり、ペット栄養学の専門的な研究に基づき、ペットが抱える問題ごとにその改善や予防に適した栄養成分、成分比率等を用いて製造されたペットフードである。
請求人の商品ブランド「PROPLAN」と被請求人の商品ブランド「PROmanage」の商品コンセプトが共通していることや、かかる商品コンセプトに従い、両ブランドにライフステージ別の商品ラインナップがあることは、昨今のペットフードの新たな流行に起因するものであり、請求人と被請求人の商品にのみにみられる共通点ではなく、同種の機能性ペットフードを製造・販売する他社のブランドにおいてもみられる共通の特徴である。
(イ)需要者の共通性
本件商標及び引用商標が使用されているいわゆる機能性ペットフードは、前述のとおり、ペットの室内飼育化が進み、ペットを人間と同様に家族の一員と考える飼い主が、ペットの健康に配慮し、ペットを長生きさせることを希望して購入する商品であり、一般的なペットフードに比べてその販売価格も2倍以上と高額である。かかる機能性ペットフードの需要者層であるペットの飼い主は、通常のペットの飼い主よりも、ペットの健康・食事に対する意識が高く、自らの家族であるペットの食するペットフードの成分・効能・品質等について強い関心を持っていると考えられる。このような機能性ペットフードの需要者が、請求人の主張するように、商品を吟味せず、単にライフステージ別に特別に対応して、専門家が栄養設計したものである点にのみ注目して商品を購入するなどとは到底考えられない。むしろ、自らのペットの為に、機能性ペットフードの需要者は、商品の成分・特徴・効能・品質を吟味して、自らのペットに合うペットフードを選択するのはもちろんのこと、かかるペットフードが信頼できる製造業者の商品であるか等、そのブランド・商標も注意深く観察した上で商品を購入すると考えるのが自然である。
(ウ)引用商標の著名性
請求人は、甲第14号証ないし甲第47号証の証拠に基づき、引用商標が周知・著名であると主張する。しかしながら、請求人が提出する上記の証拠は、引用商標が周知・著名であることの証拠としては不十分であり、これらの証拠に基づいて、引用商標の周知・著名性は到底認められない。
オ 小括
以上述べたとおり、本件商標は、外観・称呼・観念の何れの点においても引用商標とは類似せず、取引の実情を考慮してもなお、本件商標と引用商標の間に誤認混同が生じるおそれはないため、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標は周知・著名ではない
請求人は、甲第14号証ないし甲第47号証に基づき、引用商標は、専門家が栄養設計した高品質・高機能のペットフードとして、高い名声、信用、評判を獲得するに至っていると主張する。しかしながら、請求人の提出する証拠によっては、引用商標が我が国及び米国において周知・著名であるとは到底認められない。なお、請求人は、「PROPLAN(プロプラン)」ブランドに化体された信用の保護を図るために、計107件の商標登録を外国で取得している旨述べているが、単に外国で商標登録を取得している事実のみでは、引用商標が外国で周知であることの立証にならないことは言うまでもない。
イ 商品の関連性を考慮しても、本件商標と引用商標の間に出所の混同のおそれはない
請求人は、本件商標の使用されている商品と引用商標の使用されている商品である機能性ペットフードの需要者は、専門家が栄養設計した高品質・高機能なペットフードである点に専ら興味を引かれて購入を決める愛犬家であるため、本件商標と引用商標との構成上の相違にも関わらず、本件商標より生じるイメージ、専門家「プロフェッショナル」の(健康・食品)管理[プラン]といった共通の観念に着目し、その出所について誤認混同するおそれがあると主張する。しかしながら、いわゆる機能性ペットフードの需要者であるペットの飼い主は、ペットを家族の一員と考え、ペットの健康・食事に対して強い関心と高い意識を有しており、機能性ペットフードが、一般的なペットフードに比べて2倍以上の価格で販売されている点も考慮すれば、機能性ペットフードの需要者は、単に専門家が栄養設計した高品質・高機能なペットフードである点に専ら興味を引かれて、商品の製造者及びその信頼性を表示する商標に注意を払うことなく、商品の購入を決定するなどとは到底考えられない。むしろ、機能性ペットフードの需要者は、一般的なペットフードの需要者と比べて高い注意力をもって商品の品質・効能・出所を比較検討し、商品の購入を決定すると考えるのが自然である。かかる高い注意力を有する機能性ペットフードの需要者が、前述した本件商標と引用商標の構成上の著しい相違を看過して、商品の出所について誤認混同することなどありえない。
ウ 小括
したがって、引用商標と外観・称呼・観念の何れの点においても類似しない本件商標を、その指定商品である「ペットフード、飼料用骨、飼料添加物(医療用のものを除く。)、動物用噛み餌、動物用ビスケット、その他の飼料」に使用した場合に、需要者等が請求人の業務に係る機能性ペットフードブランド「PROPLAN(プロプラン)」を連想することはなく、本件商標を付した商品が、請求人の業務に係る商品であるか、または請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、需要者等が商品の出所について混同するおそれはないため、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
(3)商標法第4条第1項第19号について
ア 引用商標は米国で周知著名ではない。
請求人は、引用商標は、専門家が栄養設計した機能性ペットフードとして、少なくとも、被請求人の親会社「マース社」のあるアメリカにおいて高い名声、信用、評判を獲得するに至っていたことは明らかであると主張する。
しかしながら、請求人が、引用商標のアメリカにおける周知性を立証するものとして提出している証拠は、僅かなものであって、質・量共に極めて乏しい証拠に基づいて、請求人のペットフードが、アメリカにおいて高い名声、信用、評判を獲得し、引用商標が米国で周知となっていると認めることなど到底できない。
イ 本件商標は引用商標と同一又は類似する商標ではない。
商標法第4条第1項第19号の適用が認められるためには、本件商標が引用商標と同一又は類似であることが必要であるが、本件商標は、その外観・称呼・観念の何れの点においても引用商標と著しく相違するため、引用商標とは非類似の商標である。
ウ 被請求人に不正の目的はない。
請求人は、被請求人が請求人の商品を意識していると主張するが、商標法第4条第1項第19号不正の目的とは、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他信義則に反するような目的のことをいうと解されており(乙27)、他人の業務に係る商品及びその商品に使用されている商標等の存在を認識しているとか、意識していることが仮にあったとしても、19号にいう「不正の目的」を有しているといえるか否かは全くの別問題である。そもそも引用商標は、我が国及び外国において周知とは認められないうえに、本件商標と引用商標とは、上記のとおり全く非類似の商標である。したがって、引用商標とは全く非類似の商標である本件商標を機能性ペットフードの商標として採択し、使用することが、請求人の営業上の努力の成果の不当な利用に該当したり、引用商標の出所表示機能の希釈化を招くことはありえない。被請求人による本件商標の使用に不正の目的があるとの請求人の主張は、何の根拠もなく被請求人を誹謗するものといわざるを得ず、到底容認できない。
エ 小括
したがって、引用商標は、我が国及び外国において周知ではなく、本件商標は引用商標とは非類似の商標であり、また、被請求人による本件商標の使用に不正の目的も認められないのであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。
(4)結語
以上のとおり、本件商標は、被請求人の業務にかかる機能性ペットフードが、一流の研究者による研究によって最高品質を実現し(=プロ)、犬をより深く理解し、犬それぞれの課題に対応している(=マネージ)ことを表現するために、「PRO」と「manage」の2語を組み合わせて創出した一体不可分の造語であり、「PRO」と「PLAN」の2語及び「プロプラン」の片仮名からなる引用商標とは外観・称呼・観念の何れの点においても著しく相違する非類似の商標である。また、引用商標は、我が国及び外国において周知の商標ではないため、本件商標が引用商標との間に混同を生じるおそれはなく、また、被請求人による本件商標の使用に不正の目的もない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号の何れの規定にも該当しない。

第5 当審の判断
1 本案前の主張(利害関係の有無)について
請求人は、引用商標を現に使用しており、本件商標との出所の混同及び引用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力の毀損の防止のため、これを引用して本件商標が商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたことを請求の理由として、本件商標の登録の無効を主張するものであるから、本件審判の請求をすることについて、法律上の利害関係を有するというべきである。
よって、本案に入って判断する。
2 引用商標の周知・著名性について
(1)請求人は、同人のウェブサイト(甲14)を根拠として、引用商標が、1990年代には、日本を含む世界各国で発売されるようになった旨主張する。
しかしながら、該ウェブサイトには、「1990年代には、世界各国で発売されるようになり・・・」と記載されているのみで、「日本」での販売についての記載はない。
これに加え、請求人の平成17年3月7日付けのニュースリリースには、記述部分の冒頭に「ネスレピュリナペットケア株式会社(・・・)では、2002年の発売以来、着実にファン層を拡大しているスーパープレミアムドッグフード『ピュリナ プロプラン 小型犬シニア』と、・・・」の記載があり、また、次頁の「『ピュリナ プロプラン』とは」の項には、その末尾に「日本では、2002年8月より発売を開始しています。」と記載されている(甲11)。
2002年9月2日付けの日刊工業新聞には、「ネスレジャパン、ペットフード市場で攻勢・高級ブランド投入」の見出しのもと、「グループ傘下のペットフードメーカー、フリスキーを1日付でネスレピュリナペットケア(・・・)に社名変更したのを機に、新たに高級ブランド『ピュリナプロプラン』の投入やお客様相談室を強化する。」、「社名変更に伴い同社は、フラッグシップブランドにあたる新ブランドのドッグフード『ピュリナプロプラン』を2日に発売する。」と記載されている(甲15)。
2007年8月31日付けの日本食糧新聞には、「ネスレピュリナペットケア、新シリーズ『プロプラン』を5年で3倍増へ」の見出しのもと、「同ブランドは02年に日本市場発売以来、成長を続けている。」と記載されている(甲27)。
以上によれば、請求人が我が国において「ピュリナ プロプラン」の商標の使用を開始したのは、平成14年(2002年)8月頃以降と認められる。
(2)また、請求人は、新ブランド「ピュリナプロプラン」を軸とし、(2002年当時の)2位からトップブランドヘの進出を目指し宣伝広告活動を始動した旨を主張する。
しかしながら、上記の平成14年(2002年)9月2日付け日刊工業新聞には、「ネスレは、日本のペットフード市場が関連商品を含めて現在の5000億円から今後5兆円規模まで拡大すると推定、新ブランドを軸に中期的に現在の2位からトップブランドへ推進を目指す。」と記載されているものの(甲15)、必ずしも新ブランド「ピュリナプロプラン」が当時知名度が第2位であったとは記載されていない。
これに加えて、2003年3月15日の日付がある「週刊東洋経済」には、「勢力図 ペットフード業界 主役たちの『素顔』」見出しのもと、「Nestle/ネスレピュリナペットケア」の項には、「犬向け『ピュリナワン』のブランドが有名で、マーケットでは知名度抜群。国内2位級」と記載されており、また、「Master Foods/マスターフーズ」の項には、「世界的な食品メーカー、マース社傘下。日本上陸は69年と外資でも古参で国内最大シェア(約20%強)を誇る。」と記載されている(甲52)。
以上の事実からすると、請求人は、2002年当時ペットフード業界においてペットフード関連商品を含めた国内シェアが2位であると推察されるとしても、「ピュリナプロプラン」の知名度が第2位であったとは認められないものである。
(3)そして、ニュースリリースやカタログの配布部数、配布時期、配布場所などは不明であって、また、引用商標を使用した商品の販売数量、売上高及び市場占有率なども明らかにされていないことなどを総合すると、我が国において、本件商標の登録出願時における引用商標の周知・著名性の程度は、ペットフードを取り扱う業界において、取引者、需要者に一定程度知られていたとしても、広く知られていたものということはできないというのが相当である。
3 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、「PROmanage」の欧文字よりなるところ、その文字構成に照らせば、「PRO」の語と「manage」の語とを組み合わせてなるものと看取されるものである。
そして、該「PRO」の語は、「職業的な、専門職の、専門家」等の意味を有する英語の「professional」の略称表記として、また、該「manage」の語は、「をなんとかなし遂げる、経営する、管理する、を世話する」等を意味する英語として、いずれも我が国おいて一般に知られているものであるが、両語を組み合わせた「PROmanage」の文字からは、直ちに特定の意味合いを想起させるものではなく、また、辞書類に載録されている既成の成語とは認められないから、一種の造語として理解されるというのが相当である。
そうすると、本件商標は、上記のとおり、「PRO」と「manage」の2語の組み合わせからなるものの、同じ書体で表された両語の間に軽重の差はなく、また、そのいずれかが捨象されるとみるべき特段の実情も見いだし得ないから、その構成文字全体をもって、一連一体の造語を表したものとして看取、理解されるものであって、その構成文字に相応して「プロマネージ」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
他方、引用商標は、別掲2のとおり、「PRO PLAN」の欧文字と「プロプラン」の片仮名を上下二段に書してなるところ、その構成中の「PRO」及び「プロ」の文字部分は、「職業的な、専門職の、専門家」等の意味を有する英語「professional」又はその外来語「プロフェッショナル」の略称表記として、同じく「PLAN」及び「プラン」の文字部分は、「計画、案、策、プラン」等を意味する英語又はその外来語として、いずれも我が国おいて一般に知られているものであるが、これらを結合した「PRO PLAN」及び「プロプラン」の各文字からは、直ちに特定の意味合いを想起させるものではなく、また、辞書類に載録されている既成の成語とは認められないから、一種の造語として理解されるというのが相当である。
そうすると、引用商標は、上記のとおり、「PRO」及び「プロ」と「PLAN」及び「プラン」のそれぞれ2語の組み合わせからなるものの、同じ書体で表された両語の間に軽重の差はなく、また、そのいずれかが捨象されるとみるべき特段の実情も見いだし得ないから、それぞれその構成文字全体をもって、一体不可分の造語を表したものとして看取、理解されるものであって、その構成文字に相応して「プロプラン」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
なお、請求人は、本件商標と引用商標とは、語頭部分において「専門家」を意味する「PRO」を共通にし、本件商標の構成中の「manage」は、「何とか成し遂げる」の意を有し、また、引用商標の構成中の「PLAN」は、「計画を立てる」の意を有するから、「manage」と「PLAN」とは、「目的へのアプローチ(計画・管理)」といった共通のイメージが生じ、構成全体として、専門家「プロフェッショナル」の(健康・食品)管理「プラン」の共通した観念が生じる旨主張する。
しかしながら、該「manage」の語は、「何とか成し遂げる」の意を有することが辞典に掲載されているとしても、我が国においてこの意味で広く知られているというよりは、むしろ「経営する、管理する」を意味する英語として使用され、知られているといえるものである。また、被請求人が本件商標の採択に関し「『プロマネジメント』とは、一流の研究者による研究によって最高品質を実現し(=プロ)、犬をより深く理解し犬それぞれの課題に対応している(=マネージ)ことを表現したもの」であることを表明し、また請求人が引用商標の採択に関し「『ピュリナプロプラン』のブランド名は、犬・猫の専門家(プロフェッショナル)の健康・食事管理(プラン)という意味と共に、製品特長であるたん白質(プロテイン)と脂肪を最適な比率にした理想的な製品による健康・食事管理(プラン)を意味しています。」旨を公表していても、本件商標及び引用商標からいかなる観念が生じるかは、これらに接する取引者、需要者が客観的にどのように認識されるかによるものであって、必ずしも商標採択者の意思によって決定されるようなものではない。そして、本件商標の「PROmanage」と引用商標の「PRO PLAN」及び「プロプラン」は、いずれも一体不可分の語として認識されるものであって、甲各号証によっては、構成全体として、専門家「プロフェッショナル」の(健康・食品)管理「プラン」の共通した観念が生じるとは認められないから、この点に関する請求人の主張は、採用することができない。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標の類否について検討すると、外観において、両者は、その欧文字に関して、「PRO」の文字部分を有する点において共通するものの、「manage」と「PLAN」の構成文字が相違する点において明確な差異を有するものであり、また、片仮名の「プロプラン」の文字の有無の相違も加わって、外観上、互いに相紛れるおそれはないものである。
そして、称呼において、本件商標から生ずる「プロマネージ」の称呼と引用商標から生ずる「プロプラン」の称呼とは、本件商標が6音構成であるのに対し、引用商標が5音構成であって、そのうちの語頭における「プロ」の2音を共通にするものの、これ以外の「マネージ」と「プラン」の構成音において明らかな差異を有するから、称呼上、互いに相紛れるおそれはないものである。
さらに、観念において、本件商標と引用商標とは、いずれも観念を生じないものであるから、観念上、互いに相紛れるおそれはないものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においも相紛れるおそれはなく、非類似の別異の商標というべきものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標の指定商品と引用商標に係る使用商品が「機能性ドッグフード」で共通し、その取引者、需要者が共通であるとしても、上述したとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においも相紛れるおそれはなく、非類似の別異の商標というべきものであり、また、引用商標は、我が国において広く知られているとは認められないから、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、取引者・需要者において、その商品が請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれはないというべきである。
なお、請求人は、「機能性ペットフードとして世界的に周知・著名であるこの『PROPLAN(プロプラン)』ブランドに化体された信用の保護を図るため、請求人は、計107の商標登録を取得している(甲50)。」旨主張する。
しかしながら、請求人が「PROPLAN(プロプラン)」ブランドに化体された信用の保護を図るため、多数の商標登録を取得しているとしても、本件商標と引用商標とは、上記のとおり、非類似の別異の商標というべきものであり、また、引用商標は、我が国において広く知られているとは認められないから、本件商標をその指定商品に使用しても、商品の出所について混同を生じさせるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
請求人は、引用商標がアメリカにおいて専門家が栄養設計した機能性ペットフードとして、高い名声、信用、評判を獲得するに至っていた旨主張する。
しかしながら、この点に関する甲各号証は、米国における請求人商品のカタログ3件、米国における請求人による消費者支援・宣伝活動戦略を記載した作成者不明の文書1件、2009年ないし2011年のAKCオールショードッグランキング表及び当該オールショードッグランキングについて言及した日本のインターネットサイトの抜粋2件にすぎず(甲39ないし47)、しかも、カタログの配布部数、配布時期、配布場所などが一切明らかにされていないうえ、請求人による消費者支援・宣伝活動戦略を記載した甲第39号証は、作成者が不明であり、実際に記載されている宣伝活動が行われたか否かも明らかではなく、引用商標が米国で周知・著名性を有する事実を認めるに足りないものである。
そして、引用商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国において、需要者の間に広く認識されているものとは認められないものであって、また、本件商標は、引用商標とは、非類似の別異の商標である。さらに、請求人は、被請求人が不正の目的をもって使用するものであることを示す証拠を提出していないから、本件商標は、不正の目的をもって使用するものとは認められないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものではない。
6 結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものとはいえないから、同法46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標)



行政事件訴訟法第46条に基づく教示)

審理終結日 2013-04-25 
結審通知日 2013-04-30 
審決日 2013-05-14 
出願番号 商願2011-86098(T2011-86098) 
審決分類 T 1 11・ 222- Y (X31)
T 1 11・ 261- Y (X31)
T 1 11・ 263- Y (X31)
T 1 11・ 271- Y (X31)
T 1 11・ 262- Y (X31)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤平 良二 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 井出 英一郎
田中 亨子
登録日 2012-04-20 
登録番号 商標登録第5488638号(T5488638) 
商標の称呼 プロマネージ、プロ、ピイアアルオオ、マネージ 
代理人 宮川 美津子 
代理人 田中 克郎 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 森川 邦子 
代理人 小暮 君平 
代理人 太田 雅苗子 
代理人 工藤 莞司 
代理人 稲葉 良幸 

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