• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X33
審判 全部申立て  登録を維持 X33
審判 全部申立て  登録を維持 X33
管理番号 1275360 
異議申立番号 異議2012-900355 
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2013-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2012-12-06 
確定日 2013-06-13 
異議申立件数
事件の表示 登録第5519445号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5519445号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5519445号商標(以下「本件商標」という。)は、「GLEN STEWART」の欧文字を横書きしてなり、平成24年3月2日に登録出願、第33類「洋酒」を指定商品として、同年9月7日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
本件登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第26号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、「GLEN STEWART」の欧文字を横書きにしてなるところ、「GLEN」及び「STEWART」の語はそれぞれ、主に英国スコットランドを中心に諸外国において人名として多く用いられているものである。そして、米国のメジャーリーグ野球選手である「Glen Stewart」(甲第9号証)や、オーストラリアのプロラグビー選手である「Glenn Stewart」(甲第10号証)などの存在も実際に確認できるところである。
したがって、本件商標は、他人の氏名を含む商標に該当するものである。
(2)商標法第4条第1項第16号について
本件商標は、「GLEN STEWART」の欧文字を横書きしてなり、第33類「洋酒」を指定しているところ、「GLEN」の語は、英国スコットランドの深い峡谷の名称として知られているものである(甲第13号証)。そして、スコットランドでは、当該「GLEN」の名称に由来して、「GLEN」の文字を伴う多数の地名が存在しているものである(甲第14号証)。
さらに、日本では世界5大ウイスキーの1つに数えられる、スコットランドで製造されるウイスキー(スコッチ・ウイスキー)の銘柄についても、スコットランド産であることを象徴する文字として「GLEN」の語を伴う商品がきわめて多数存在している。なお、スコッチ・ウイスキーの銘柄だけではなく、スコットランドのスコッチ・ウイスキー蒸留所の名称としても「GLEN」の文字を伴うものがきわめて多数存在している(甲第15号証)。
このように、「GLEN」の語は、英国スコットランドに関係のあること、スコットランドで製造されるウイスキーであることを象徴する文字であることから、本件商標「GLEN STEWART」を「スコッチ・ウイスキー」以外の「洋酒」に使用するときは、当該商品の需要者・取引者に「スコットランドで製造された洋酒」、「スコッチ・ウイスキー」であるとの商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるものである。
(3)商標法第4条第1項第7号について
上述の通り、スコットランドで製造されるウイスキー(スコッチ・ウイスキー)の銘柄(商標)として、「GLEN」の文字を含む商品が多く存在している事実がある。そして、それらの銘柄の一つに本件商標「GLEN STEWART」と同一の名称のものが現に存在しているものである。
本件商標の商標登録出願人が、洋酒の輸入貿易及び販売を事業としていることに照らすと、このような事実については十分に認識しているものと考えられる。特に、本件商標「GLEN STEWART」を構成する文字である「GLEN」及び「STEWART」の語がそれぞれ人名として用いられているものであることを考慮すると、商標登録出願人が自己の使用する商標としてこれらを組み合わせた構成とすることを独自に発想するというのは些か不自然といわざるを得ない。そして、このような恣意的な構成からなる商標を採用する根拠は全くもって存在していないことをも踏まえると、商標登録出願人が実在するスコッチ・ウイスキーの銘柄である「GLEN STEWART」の存在を知っていたとしか考えられないものである。
このように、輸入貿易を事業とする商標登録出願人が、外国の銘柄(商標)が我が国で登録されていないことを奇貨として、剽窃的に商標登録を受けようとすることには、不正の目的が推認できるものであり、国際信義にも反するものである。
よって、本件商標は、公序良俗を害する商標に該当する。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第16号及び同項第7号に違反して登録されたものであるから、本件商標の登録は、取り消されるべきものである。

3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第8号該当性について
本件商標は、前記1のとおり、「GLEN STEWART」の欧文字を横書きしてなるものであるところ、「Glen」及び「Stewart」の文字が人名にも用いられる語であって、特に「Stewart」は、ファミリーネームとしても用いられる語である(甲第7号証、甲第8号証)ことからすれば、本件商標は、欧文字圏の者の氏名を表したものとみるのが相当である。
ところで、商標法第4条第1項第8号は、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」とするものであって、この趣旨は、人格権を保護する点にあると解される。
そして、ここでいう「氏名」は、フルネームを意味するものであり、「他人」とは、現存する者であって、また、外国人も含まれるものである。
申立人は、「米国のメジャーリーグ野球選手である『Glen Stewart』(甲第9号証)や、オーストラリアのプロラグビー選手である『Glenn Stewart』(甲第10号証)の存在が確認できた。」旨主張している。
しかしながら、米国のメジャーリーグ野球選手であった「Glen Stewart」は、1997年に没しており、生存していないことから、本号には該当しないものであり、また、オーストラリアのプロラグビー選手である「Glenn Stewart」については、生存している者であるとしても、本件商標とそのつづりが異なり、同一氏名をもつ者とは認められないので、これも本号に該当するということはできない。
また、申立人は、「上記のプロスポーツ選手以外にも、このような氏名を有する外国人が多数存在することは容易に予測できるものである。」旨主張しているが、その他、本号にいう「他人の氏名」に該当する具体的な者を示しておらず、本号の趣旨を考慮すれば、このようなケースにおいても人格権保護の規定を適用する必要はなく、申立人の主張は採用できない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第16号について
申立人は、「『GLEN』の文字は、英国スコットランドを象徴する名称であって、スコットランド産のウイスキーに広く用いられており、その品質や原産地を保証する機能を果たしているものであるため、スコットランドで製造されたスコッチ・ウイスキーのみにその使用が許されるべき文字といえるから、本件商標『GLEN STEWART』を指定商品中『スコッチ・ウイスキー』以外の『洋酒』に使用するときは、当該商品の需要者・取引者に『スコットランドで製造された洋酒』又は『スコッチ・ウイスキー』であるとの商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるといわざるを得ない。」旨主張している。
しかしながら、たとえ、「GLEN」の文字がスコットランド産のウイスキーに広く用いられているとしても、本件商標は、上記(1)で述べたとおり、その構成全体をもって、欧文字圏の者の氏名を表したものとして認識されるというのが相当であるから、その構成中の「GLEN」の文字部分が需要者・取引者をして、品質表示として認識されることを前提とする上記申立人の主張は、採用することができない。
その他、本件商標について、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるものとする事由は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第7号について
申立人は、「輸入貿易を事業とする商標登録出願人が、本件商標を採用して商標登録を受けようとすることは、すでに存在している外国の銘柄(商標)が我が国で登録されていないことを奇貨として、剽窃的に商標登録を受けようとすることにほかならず、このような行為からは、不正の目的が容易に推認できるものであり、国際信義にも反するものである。」旨主張する。
しかしながら、本件商標は、「GLEN STEWART」の構成よりなるところ、申立人が提出している、ウイスキー銘柄の写し(甲第21号証)及びインターネットサイト「WHISKY PARADISE」の写し(甲第22号証)によれば、「GLEN STEWART」の文字を付したウイスキーが存在することは認められるとしても、該証拠のみをもって、本件商標の登録出願の経緯に不正の目的があったということはできない。
また、「GLEN STEWART」の文字が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は同人の業務に係る商品を表示するものとして、日本全国及び外国における需要者の間に広く認識されていると認められる事実は見いだせない。
そうとすれば、本件商標は、その構成からみて、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような構成のものでないことは明らかであり、また、上記のとおり、本件商標の登録出願の経緯に不正の目的があったとはいえないものであり、国際信義に反する事情が存在するともいえないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものとはいえない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号、同項第16号及び同項第7号に違反してされたものでないから、同法43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2013-06-05 
出願番号 商願2012-19636(T2012-19636) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (X33)
T 1 651・ 23- Y (X33)
T 1 651・ 272- Y (X33)
最終処分 維持  
前審関与審査官 冨澤 美加 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 酒井 福造
手塚 義明
登録日 2012-09-07 
登録番号 商標登録第5519445号(T5519445) 
権利者 ドーバー洋酒貿易株式会社
商標の称呼 グレンスチュワート、グレン、スチュワート 
代理人 永露 祥生 
代理人 木村 吉宏 
代理人 伊東 美穂 
代理人 長谷川 綱樹 
代理人 小谷 武 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ