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審決分類 審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない X1440
管理番号 1273986 
審判番号 不服2011-25080 
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-02 
確定日 2013-05-09 
事件の表示 商願2010-102352拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は「MOKUMEGANEKOUBOU」の欧文字を標準文字で表してなり、第14類「キーホルダー,宝石箱,記念カップ,記念たて,身飾品,イヤリング,ペンダント,指輪,宝石ブローチ,宝玉及びその模造品」及び第40類「金属の加工,身飾品の加工」を指定商品及び指定役務として、平成22年12月29日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『MOKUMEGANEKOUBOU』の文字を普通に用いられる方法で書してなるところ、これを構成する前半部の『MOKUMEGANE』は『杢目金』に通じ、『(江戸時代より続く)金属の色の違いを利用して木目状の文様を創り出す日本独自の特殊な金属加工技術』を、また、後半部の『KOUBOU』は『工房』に通じ、『美術家や工芸家などの仕事場』をそれぞれ意味するから、これよりは需要者に『杢目金による商品の製造・加工を行っている仕事場・工場』の意味合いを認識させる。そうとすれば、本願商標を、その指定商品及び指定役務に使用した場合、これに接する需要者は、当該商品及び役務の製造・加工場所を表しているにすぎないと理解するにとどまり、何人の業務に係る商品及び役務であるかを認識することができない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第6号について
ア 商標法第3条第1項第6号の趣旨
商標の本質は、自己の業務に係る商品又は役務を他人の業務に係る商品又は役務と識別するための標識として機能することにある。そして、この自他商品又は役務の識別標識としての本質的な機能から、商品・役務の出所を表示する、商品の品質・役務の質を保証する、及び商品・役務の広告宣伝をする機能が生じるものである。商標法第3条第1項第6号が、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を商標登録の要件を欠くと規定するのは、同項第1号ないし第5号に例示されるような、識別力のない商標は、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、自他商品又は役務の識別標識としての機能を欠くために、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである。
イ 本願商標の認定
本願商標は、前記1のとおり、「MOKUMEGANEKOUBOU」の欧文字を普通に用いられる方法で表したものである。
そして、本願商標の構成中「MOKUMEGANE」の文字は、本願の指定商品及び指定役務との関係から、金属加工技術の一種である「木目金(杢目金)」を欧文字をもって表したものというのが相当である。また、「KOUBOU」の文字は、本願の指定商品及び指定役務との関係や、前記の「木目金(杢目金)」を表した「MOKUMEGANE」に続けて表記されている構成からみれば、「工芸家などの仕事場」を意味する「工房」の語を欧文字をもって表したものというのが相当である。
また、実際に「木目金(杢目金)」の技術を体得した者により工芸品や指輪が製作されていることが、例えば、以下の新聞記事及びインターネット情報からもうかがうことができる。
(ア)「人間国宝に玉川さん 鍛金『木目金』の技術評価 文化審答申=新潟」との見出しの読売新聞の記事(2010年7月17日付け朝刊28頁)には、「文化審議会は16日、金属をたたいて器などを造形する『鍛金(たんきん)』の高度な技術を持つ、燕市花見、玉川宣夫さん(・・・)を重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定するよう文部科学相に答申した。県内では3人目、団体を含めて4件目となる。銅や銀、赤銅など種類が違う複数の金属板を重ねて表面に模様を彫り、木目模様を打ち出す『木目金(もくめがね)』の技術が高く評価された。(注:下線は、審決において付加したものである。以下同じ。)・・・30歳の頃、技法の研究書を読み、作品を金属塊から打ち出す木目金にひかれた。機械で平たくした地金を使うのではなく、塊を金づちや木づちで延ばす技術こそ鍛金家にとって大事な基礎だと考えたためだ。『工芸家は材料を大切にすることが一番の仕事。木目金は地金の存在感、力強さが魅力』。地金の美しさを引き出す作品制作を目指す。木の実や花の芽、卵などエネルギーを感じさせる題材を、器の形にイメージしているという。木目金の技術は、海外の工芸家からも注目され、直接指導を受けに来日するほどだ。・・・」との記載がある。
(イ)「杢目金屋」のインターネットウェブサイトに「木目金とは」との見出しに続いて「木目金(杢目金、杢目銅)とは、今から400年前の江戸時代に生まれた、金属の色の違いを利用して木目状の文様を創り出す日本独自の特殊な金属加工技術である。・・・」との記載があり(http://www.mokumeganeya.com/mokume.html )、当該ウェブサイト運営者は、木目金(杢目金)の技術を使用した指輪の注文製作・販売をしている(上掲ウェブサイト)。
ウ 本願商標の商標法第3条第1項第6号該当性について
本願商標は、先に説示したとおり、「木目金(杢目金)」を表す「MOKUMEGANE」及び「工房」を表す「KOUBOU」の語とを結合してなるものにすぎない。
そして、「木目金(杢目金)」は、金属加工技術の一種を表す語であるところ、本願の指定商品や指定役務は、金属を加工して製作される商品や金属の加工の役務であることからすれば、「木目金(杢目金)」の語が、本願の指定商品及び指定役務についての自他商品又は役務の識別標識として機能するものではない。さらに、漢字で表記される日本語を欧文字で表記することは、日常ごく一般的に行われているものであるから、本願商標の構成・態様が「木目金(杢目金)」を漢字ではなく、欧文字で表記したものであるとしても、当該「MOKUMEGANE」の欧文字が、本願の指定商品及び指定役務についての自他商品又は役務の識別標識として機能するものということはできない。
次に、「工房」は、「工芸家などの仕事場」の意味で広く一般に親しまれている語であるところ、本願の指定商品や指定役務は、手作りで製作される商品や手作業による役務をも含むものであることからすれば、「工房」の語が、本願の指定商品及び指定役務についての自他商品又は役務の識別標識として機能するものではない。さらに、前記のとおり、日本語を欧文字で表記することは、日常ごく一般的に行われているものであるから、本願商標の構成・態様が「工房」を漢字ではなく、欧文字で表記したものであるとしても、当該「KOUBOU」の欧文字が、本願の指定商品及び指定役務についての自他商品又は役務の識別標識として機能するものではない。
してみれば、本願商標は、「木目金(杢目金)」及び「工房」を欧文字で「MOKUMEGANEKOUBOU」と一連に表してなるものであるところ、これに接する需要者は、「木目金(杢目金)の技術による商品の製作ないし同技術を用いた金属(金属製品)の加工を行っている工房」程の意味合いを認識するにとどまるものである。
そうすると、本願商標は、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」というべきである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標はその外観の特徴から「MOKUMEGANE」と「KOUBOU」に分節して認識され難く、全体が一つのまとまりをもった造語として認識される旨主張する。
しかしながら、本願の指定商品及び指定役務について自他商品又は役務の識別標識としての機能を果たさない「木目金(杢目金)」及び「工房」の語を、欧文字で一連に表したものであるとしても、そのことにより、本願商標が自他商品又は役務の識別標識として機能するものということはできない。そして、本願の指定商品中には、「木目金(杢目金)」の技術により製造される金属製の商品が含まれるものであり、また、本願の指定役務は、金属の加工及び金属製品を含む身飾品の加工の役務であることからすれば、当該商品及び当該役務の分野の需要者は、本願商標を前記(1)のとおり、「木目金(杢目金)工房」を欧文字で表したものと無理なく理解するというのが相当である。
イ 請求人は、「MOKUMEGANEKOUBOU」をローマ字読みした場合、「モクメガネコウボウ」の他にも、例えば「モクメガンエコウボウ」、「モクメガンエコーボー」などの様々な読み方が存在し、これを途中で区切って称呼する場合には、「モクメガネ・コウボウ」の他にも、例えば「モク・メガネ・コウボウ」、「モクメ・ガネコウボウ」、「モク・メガ・ネコウボウ」など、非常に多様な読み方が存在する。このように多様な称呼が存在することは、本願商標を「杢目金(木目金)」と「工房」の組み合わせとして認識することを阻害する大きな要因になる旨主張する。
しかしながら、本願商標が自他商品又は役務の識別標識として機能するか否かは、その指定商品及び指定役務との関係とその商標の構成・態様から判断されるものであり、本願商標の読み方や音節の区切り方が多様でありうるか否かにより左右されるものではない。
ウ 請求人は、伝統的金属加工技術の「木目金」・「杢目金」は、一部の取引者・需要者において慣用されている伝統技術の用語であるとは言えるものの、「MOKUMEGANE」の欧文字が「木目金」・「杢目金」と同一視されるほどに慣用されているとは言えない。海外においては「MOKUME GANE」として紹介されている場合があるが、日本国内では「木目金」・「杢目金」が一般的に認知されているのであって、これらの漢字と欧文字の「MOKUMEGANE」とは認知度が全く異なる。「MOKUMEGANE」の認知度が低いことは、本願商標を「木目金(杢目金)」と「工房」の組み合わせとして認識することを阻害する大きな要因になる旨主張する。
しかしながら、我が国において漢字で表記する日本語を欧文字で表記することは、ごく一般的な表記方法であることは、前記(1)のとおりである。そして、「木目金(杢目金)」が、金属加工技術として一般的に認知されていることを請求人も認めている以上、「木目金(杢目金)工房」を欧文字で表記した場合においても、自他商品又は役務の識別標識に関する需要者の認識において異なるところはないものというべきである。
エ 請求人は、本願商標の構成中「KOUBOU(コウボウ)」の読みに対応する日本語は「工房」だけでなく、「攻防」、「興亡」、「幸房」など非常に多く存在する。例えば「光芒」は、宝石や貴金属などのアクセサリが放つ光を表現する言葉として比較的よく使用されているから、本願商標を身飾品等に使用した場合、本願商標中に含まれる「KOUBOU」を取引者・需要者が「光芒」として認識することは十分にありえる。このように、本願商標中に含まれる「KOUBOU」の同音異義語が多数存在することは、これを「工房」として認識することを阻害する大きな要因になる旨主張する。
しかしながら、本願の指定商品及び指定役務との関係からみると、本願商標の構成中の「KOUBOU」と同音である熟語が複数存在するとしても、それらの熟語の語意を考えれば、当該「KOUBOU」は、「工房」を表したものと認識するというのが自然である。
また、金属加工技術である「木目金(杢目金)」を表した「MOKUMEGANE」に続けて表記される「KOUBOU」は「すじのように見える光」を意味する「光芒」を認識させるというよりも、「木目金(杢目金)」の技術を体得した工芸家の仕事場である「工房」を表したものと認識するというのが相当である。
したがって、前記の請求人の主張は、いずれも理由がなく採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するものとして、本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すべき限りではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2012-06-25 
結審通知日 2012-06-29 
審決日 2012-07-19 
出願番号 商願2010-102352(T2010-102352) 
審決分類 T 1 8・ 16- Z (X1440)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 半田 正人 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 前山 るり子
内田 直樹
商標の称呼 モクメガネコウボウ、モクメガネコーボー 

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