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審決分類 審判 全部取消 商51条権利者の不正使用による取り消し 無効としない Z37
管理番号 1273935 
審判番号 取消2010-300705 
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-06-28 
確定日 2013-04-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第4492310号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成23年5月6日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成23年(行ケ)第10184号平成24年3月8日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4492310号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成12年4月18日に登録出願、第37類「洗濯,被服のプレス,被服の修理,毛皮製品の手入れ又は修理」を指定役務として、同13年7月19日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法51条1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を請求書、本件判決後に提出の回答書及び上申書(これに基づく面接を含む。)において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲1?96(枝番号を含む。詳細は以下のとおり。)を、提出した。
なお、当初特許庁に提出された証拠方法は、甲1?26、そして知財高裁平成23年(行ケ)10184号判決(以下「本件判決」という。)後に裁判所に提出されたものとして特許庁に提出された証拠方法は、甲1?96(枝番号含む。)、その他、本件判決後に特許庁に提出されたものは、甲27?34(枝番号含む。)及び参考資料である。
<審判における号証> <裁判所における号証>
・甲1?26(枝番号含む。)・・・甲1?26(枝番号含む。)
・該当無し・・・・・・・・・・・・甲27?96(枝番号含む。)
・甲27?34及び参考資料・・・・該当無し
したがって、甲27?34(枝番号含む。)は、内容の異なる2種類の証拠方法が存在する。
1 取消事由
本件商標の商標権者(被請求人)は、故意に、指定役務について登録商標に類似する商標を使用して、他人(請求人)の業務に係る役務と混同を生ずるもの及び役務の質の誤認を生ずるものを行っている。
したがって、本件商標は、商標法51条1項の規定により取り消されるべきである。
2 取消原因
(1)被請求人が使用している商標
被請求人は、以下に示す各商標(以下、それぞれ順次「使用商標1」?「使用商標5」という。)を役務「洗濯」について使用している(なお、このほか、請求人は、2つの使用商標を掲げているが、実質的に審理対象とされていないので割愛した。)。
ア 使用商標1(OZONE & AQUA DRY)
使用商標1は、被請求人が運営するホームページ(甲2の1)、被請求人のパンフレット(甲2の2)、及び被請求人のホームベージで開示されているIR (Investor Relation)情報の資料(甲2の3、2の4、2の7及び2の9?2の14)で使用されている。
イ 使用商標2(オゾン&アクアドライクリーニング)
使用商標2は、被請求人のパンフレット(甲2の2)で使用されている。 ウ 使用商標3(オゾン&アクアドライ)
使用商標3は、被請求人のパンフレット(甲2の2)と、被請求人のホームページで開示されているIR情報の資料(甲2の4?2の14)で使用されている。
エ 使用商標4(オゾンアンドアクアドライ)
使用商標4は、被請求人の店舗である「100円クリーニング南住吉店」(甲3の1)を紹介するホームページ(甲2の15)で使用されている。
オ 使用商標5(オゾンアクアドライ)
使用商標5は、被請求人の店舗である「きょくとうクリーニング西新店」(甲3の2)を紹介するホームページ(甲2の16)で使用されている。
(2)本件商標と被請求人の使用商標1?5との類似性
被請求人が役務「洗濯」に使用する使用商標1?5はいずれも、以下のとおりの構成よりなることから、本件商標と同一のものではなく、類似する商標である。
ア 本件商標
本件商標は、別掲のとおり、片仮名文字「オゾン」「アクア」の間に記号「&」を配置した文字列と、片仮名文字「ドライ」による文字列とを二段に配置したものであり、各文字を丸みを帯びた図形で表したものとなっている。さらに、「オゾン」「アクア」の各文字の色と「&」の文字の色と「ドライ」の各文字の色のそれぞれが異なるように、配色されている。
イ 使用商標1との比較
使用商標1は、1段の文字列によりなるだけでなく、同一色の文字で構成されており、本件商標の外観と異なる。よって、その称呼及び観念が同一又は類似となる場合であっても、使用商標1と本件商標とが同一であるとはいえない。
ウ 使用商標2との比較
使用商標2は、「オゾン&アクア」「ドライ」が一段で連続的に配置されているだけでなく、「クリーニング」が追加された構成となっており、その外観は、本件商標と異なるものである。よって、使用商標2についても、本件商標と同一とはいえず、類似する商標である。
エ 使用商標3との比較
使用商標3は、「オゾン&アクア」「ドライ」が一段で連続的に配置されている構成となっており、その外観は、本件商標と異なるものである。よって、使用商標3についても、本件商標と同一とはいえず、類似する商標である。
オ 使用商標4との比較
使用商標4は、使用商標3における「&」の文字を、その称呼となる片仮名文字「アンド」に変更したものである。よって、使用商標3が本件商標と類似する商標であることをかんがみれば、「&」を「アンド」に変更している使用商標4が本件商標と同一でないことは明らかである。
カ 使用商標5との比較
使用商標5は、使用商標3における「&」の文字が除かれたものである。よって、使用商標3が本件商標と類似する商標であることをかんがみれば、使用商標4と同様、「&」が除かれた使用商標5が、本件商標と同一でないことは明らかである。
(3)請求人が使用する商標
請求人の登録第4305744号商標(以下「引用商標」という。)は、「アクアドライ」の片仮名を標準文字で表してなり、平成10年1月27日に登録出願、第37類「洗濯,被服のプレス,被服の修理,毛皮製品の手入れ又は修理」を指定役務として、同11年8月13日に設定登録、その後、同21年10月13日に商標権の存続期間の更新登録がなされたものである。
請求人である「株式会社ハッピー」は、引用商標の前商標権者である「株式会社京都産業」(以下「京都産業」という。)より、引用商標の商標権を譲り受け、平成19年2月9日における引用商標の移転登録後は、商標権者として、役務「洗濯,被服のプレス,被服の修理,毛皮製品の手入れ又は修理」に関して、引用商標を使用している。
(4)請求人及び京都産業の営業活動
請求人及び京都産業(以下「両社」という。)は、引用商標により提供する役務について、以下のとおり、ホームページ、カタログ及びメディアなどにより、全国各地へ営業及び宣伝を行っている。
ア ホームページ 、カタログ、広告物及び郵便物
両社は、ホームページ、カタログ、広告物及び郵便物において、引用商標を使用し、引用商標の役務について、説明して宣伝を行っているとともに、宅配サービスを利用した日本全国を対象に役務を提供していることも宣伝している。また、請求人は、引用商標による役務における一洗浄技法として、請求人所有の特許(甲9)による洗浄技法を使用しており、これを請求人ホームページで公開している。(甲8の1?8の15、10の1?10の8、11の1、11の2、12、13の1?13の28、81の2及び82の1?82の4)。
イ 著作物、書籍
京都産業は、引用商標による役務を紹介した内容を含む著作物を発行し、全国各地に配布している(甲14の1及び2)。また、請求人の代表者が出筆した引用商標による役務を紹介した書籍が、全国各地で販売されている(甲15の1?15の3)
ウ 新聞、雑誌及びインターネット等
両社は、以下の雑誌及び新聞に引用商標を表記した広告を掲載するとともに、提供する洗浄方法として「アクアドライ」を紹介する記事を掲載した。
・繊研新聞(甲16の1?16の4及び18の7)
・日本工業新聞(甲18の1、18の2及び18の4)
・その他の業界新聞(甲18の3、18の5及び18の6)
・雑誌レタスクラブやレタスリビングクラブ(甲17の1?17の12及び19の10)
・雑誌週刊ダイヤモンド及びダイヤモンドプラス(甲17の13、19の16及び19の27)
・その他の雑誌等(甲19の1?19の9、19の11?19の13、19の15、19の17?19の26、19の28、19の29及び59の2?59の4)
・インターネット(甲80の1、80の2及び80の4?80の6)
エ 公的機関による請求人の役務の紹介情報
経済産業省の知的資産経営ポータルサイトにおいて、請求人による知的資産経営報告が紹介され、この中で、請求人は、引用商標による役務の内容が紹介されている(甲21の2)ほか、2010年度版中小企業白書においても、引用商標による役務が紹介されている(甲21の3)。
(5)出所の混同
ア 引用商標による役務の周知性
引用商標により表示される役務は、平成14年1月21日までは、京都産業により提供されるものとして、その日以降は請求人により提供されるものとして、全国各地で取引者及び需要者に認識されている。
さらに、上記(4)エで説明したように、引用商標により表示される役務が、請求人により提供されていることについては、公的機関においても認められている。
以上から、引用商標による表示される役務は、日本国内における需要者に広く認識されているものである。
イ 使用商標1?4と引用商標との類似性
使用商標1?4が使用されている役務が「クリーニング」であり、引用商標が使用されている役務が「洗濯,被服のプレス,被服の修理,毛皮製品の手入れ又は修理」であるから、使用商標1?4及び引用商標のそれぞれに使用されている役務は、同一又は類似する。
使用商標1?4は、「OZONE」と「AQUA DRY」、「オゾン」と「アクアドライ」、「オゾン」と「アクアドライクリーニング」のように分離して読めることから、これらにより提供される役務が、引用商標による役務と何らかの関係のある役務であるかのごとく、役務の出所について混同を生じさせ、若しくは、役務の出所について混同を生じさせるおそれがある。
ウ 使用商標5と引用商標との類似性
使用商標5が使用されている役務も「クリーニング」であることから、使用商標5及び引用商標それぞれに使用されている役務は同一又は類似するものである。
使用商標5は、「オゾンアクアドライ」のように、引用商標と同一の表記である「アクアドライ」の前に「オゾン」が追加された構成である。よって、使用商標5は、「オゾン」「アクアドライ」のように分離して読めるため、使用商標5により提供される役務が、引用商標による役務と何らかの関係のある役務であるかのごとく、役務の出所について混同を生じさせ、若しくは、役務の出所について混同を生じさせるおそれがある。
エ 使用商標6と引用商標との類似性
使用商標6が使用されている役務も「クリーニング」であることから、使用商標6及び引用商標それぞれに使用されている役務は、同一又は類似するものである。
オ 出所の混同の生じている事実1
請求人は、引用商標の侵害行為について、調査したところ、引用商標を一部で含む「アクアドライ+オゾン洗い」という商標でクリーニングシステムを紹介しているホームページを発見した(甲24の1)。
当該ホームページの商標「アクアドライ+オゾン洗い」によるクリーニングシステムの説明部分では、引用商標と同一の文字商標「アクアドライ」と「オゾン洗い」を分離して、それぞれのクリーニングシステムについて説明している。
カ 出所の混同の生じている事実2
請求人は、引用商標の侵害行為について、調査したところ、ロイヤルネットワーク株式会社からのファクシミリ文書で、被請求人による使用商標3と同様に販売ができるように、引用商標に似た名称「パワーアクアドライ」で販売を行ったことが回答されている(甲24の2)。
キ 出所の混同による影響
上記事実1のように、「アクアドライ」と「オゾン洗い」とを分離して説明されていることから、請求人による上記使用商標1?5などの使用により、その一部である「アクアドライ」から、被請求人の上記使用商標1?5により提供される役務が、引用商標により提供される役務と同様の品質を含むものと、取引者及び需要者に誤解を与えている。
また、上記事実2からも、被請求人による使用商標3などの使用に基づいて、使用商標3の一部である「アクアドライ」から、引用商標による提供される役務が、被請求人の提供する役務と何らかの関わりがあるものとして、出所の混同が発生していることは明らかである。
ところで、使用商標3で表された役務の提供の現状についてヨミウリウィークリーの記事に掲載されたことが、「悪徳業者に気をつけましょう!」と題するホームページに紹介されている(甲25の1)。
そして、ヨミウリウィークリーの記事「だれも知らない汚れたクリーニング商法」では、「水汚れを落とす効果は全くありません」などのように、使用商標3で表された被請求人による役務の提供の現状や品質が説明されている(甲25の2)。
これらのことから、請求人による使用商標1?5の使用によって生じた引用商標との出所の混同により、インターネット上で、引用商標で表される請求人の役務に対する品質を誤認させるような記事が紹介されるなどのように(甲25の3及び25の4)、請求人が引用商標で提供している役務の品質について、取引者及び需要者に誤解を与えるといった影響が生じている。
特に、甲25の4では、「最近クリーニング業界で、『汗抜きドライ』、『水ドライ』、『アクアドライ』、『ダブルクリーン』その他いろいろな名称の洗いが出てきました。これらは、ドライクリーニングをする際、使用するソープ内に水などを添加してドライクリーニングで出来るだけ汗や食べこぼしなど水溶性の汚れを取り除こうとした洗いです。」という記載がある一方、被請求人は、使用商標3で表記したクリーニングサービスについて、「ドライクリーニングに『水』と『特殊ソープ』を加えて洗う」ものと説明している(甲2の12?2の14)。
また、2001年9月に開かれた被請求人会社の会議での議事録等に関する記事よりすれば、平成13(2009)年当時、被請求人が、使用商標3に相当する「オゾン&アクアドライ」を使用して、この「オゾン&アクアドライ」で預かった衣類について、普通のドライクリーニングと同じ機械にかけるのみで、実際には、本件商標による役務である「水と特殊ソープを加えて洗う、オゾンのドライクリーニング」を施していない事実があったほか、「水洗い」しかしないカッターシャツに至っては、被請求人が、「オゾン&アクアドライ」を薦めて預かるものの、実際には「水と特殊ソープを加えて洗う、オゾンのドライクリーニング」を施すことはなく、「ドライクリーニング」ではない「水洗い」のみで済ませている事実があった。
このことからも、被請求人が使用商標3を使用することにより、請求人が引用商標で提供している役務の品質について、取引者及び需要者に誤解を与えていることが明らかである。
(6)使用商標1?5から認識される役務の質
これらの使用商標には、「DRY」、「ドライ」若しくは「ドライクリーニング」のいずれかの部分が最後尾に付随されていることから、消費者は、提供される役務「洗濯」の質について「ドライクリーニング」と認識する。
被請求人は、答弁書において、使用商標1?5を「洗濯」に使用する場合は、役務の質、提供の方法を表示するものと認めているほか、本件判決においても、被請求人は、使用商標1?5を使用して、オゾンのドライクリーニングに水を加えて洗う洗浄方法を提供している旨、及び一般にドライクリーニングが洗剤を溶かした水の代わりに、有機溶剤を使用した洗濯である旨も記載している。
以上より、役務「洗濯」について使用商標1?5が使用される場合、消費者は、これら商標の使用により提供される役務の質について、「ドライクリーニング」と認識するものであり、被請求人が実際に提供している役務は、「ドライクリーニング」である。
(7)役務の質の誤認
Yomiuri Weekly 第61巻第31号(甲25の2)の記事及び福岡地裁、平成14年(ワ)第3844号(甲29)判決の各内容によれば、被請求人は、平成13年当時、使用商標3「オゾン&アクアドライ」により預かったカッターシャツに対して、本来施すべき「水と特殊ソープを加えて洗う、オゾンのドライクリーニング」による役務を施すことなく、水洗いを施すのみであるという事実がある。
また、現在においても、被請求人のJR伊丹駅前の店舗において、本件商標による役務として施すべき「水と特殊ソープを加えて洗う、オゾンのドライクリーニング」を消費者に宣伝するために、「アクア」という表示とともに使用商標3を使用している。
実際、当該店舗では、ドライクリーニングを推奨する洗濯絵表示がないカッターシャツ(クリーニング業界では一般的にカッターシャツには水洗いが施されるべき)を本件商標の役務である「水と特殊ソープを加えて洗う、オゾンのドライクリーニング」を施すものとして追加料金を徴収して預かった(甲34)。
以上より、被請求人は、「ドライクリーニング」を表す使用商標1?5を使用して預かったカッターシャツに対して、実際は、「ドライクリーニング」とは質の異なる「水洗い」を役務として提供していることは、提供する役務について、その質の誤認を消費者に生じさせている。
さらに、被請求人は、使用商標1?5を使用することで、消費者に対して、被請求人の基本役務であるオゾンのドライクリーニングに汗染み等がきれいに落ち、風合いをよみがえらせ、しかも、フカフカサラサラの仕上がりとなるアクアクリーニングによる効果を追加するものとしてその役務の質を認識させているにもかかわらず、実際には、当該アクアクリーニングによる効果が追加されたものとはいえない事実(甲34の1の図3、図4及び34の2の図4)からも、その質の誤認を消費者に生じさせているものである。
(8)被請求人の故意
ア 出所の誤認混同に関する被請求人の故意
(ア)京都産業による被請求人への警告
京都産業は、平成15年7月4日付けの警告書で、使用商標1又は3による役務の表示に基づく、引用商標に対する被請求人の侵害行為について警告している(甲26の1)。
(イ)被請求人による京都産業への回答
被請求人は、平成17年2月21日付けの回答書により、使用商標3による役務の表示を抹消又は変更し、引用商標との混同を避けるものとした旨が回答されている(甲26の2)。
(ウ)使用商標に対する調査
平成17年10月31日付けの調査報告により、被請求人が使用商標1?3を表記したパンフレット(甲2の2)を配布している事実と、被請求人の従業員が使用商標5による呼称で役務の提供を行っている事実とが報告されている(甲26の3)。
(エ)請求人による被請求人への通知
平成21年11月20日において、被請求人のホームページにおいて、被請求人の役務を紹介するために使用商標3による表記があった(甲26の4)ことから、当該事実について、請求人が、平成21年11月20日付けの通知書により、被請求人に通知した(甲26の5)。
(オ)被請求人による請求人への回答
被請求人は、平成21年12月3日付けの被請求人の回答書で、使用商標3の修正の必要性がないことを主張した(甲26の6)。
(カ)請求人による被請求人への2回目の通知
請求人は、平成21年12月29日付けの通知書で、被請求人からの平成21年12月3日付けの回答書における回答に対して、平成17年2月21日付けの被請求人による回答書において、使用商標3による役務の表示を抹消又は変更したことが報告されたことを通知した(甲26の7)。
(キ)被請求人による請求人への2回目の回答
被請求人は、平成22年1月15日付けの被請求人の回答書で、使用商標3の修正の必要性がないことを再び主張した(甲26の8)。
(ク)被請求人によるホームページ上の表記の変更
被請求人は、使用商標3の修正の必要性がないことを再三主張したにもかかわらず、平成22年2月24日に被請求人のホームページを確認したときには、使用商標3による表記が変更されていた(甲26の5)。
上記(イ)のように、被請求人は、少なくとも使用商標3による役務の表示が、引用商標による役務に対して出所の混同が生じることについて認識している。しかしながら、上記(イ)の回答を行った後においても、被請求人は、上記(ウ)、(エ)のように、使用商標3による役務の表示を行っている。
さらにいえば、上記(エ)のような使用商標3の使用については、上記(カ)?(ク)のように、請求人からの通知があれば、その使用を停止していることからも、被請求人は、引用商標による役務に対して出所の混同が生じることについて認識しているものといえる。
よって、被請求人は、故意に、請求人の業務に係る役務と混同を生じている商標を、本件商標の指定役務について使用してきたものである。
イ 役務の質の誤認に関する被請求人の故意
被請求人は、ドライクリーニングが役務の質として想起される使用商標3を使用して「ドライクリーニング」ではない「水洗い」を施すカッターシャツを受け付けながらも、実際には水洗いしか施していない事実について、週刊誌による告発を受けただけでなく、その事実が前記(7)に記載した福岡地裁の判決で認められたにもかかわらず、現在でも、同じ行為がなされていることから、被請求人による使用商標1?5の使用による役務の質の誤認は、被請求人の故意によるものといえる。
(9)結論
以上説明したところにより、被請求人が、故意に、指定役務について、本件商標に類似する商標を使用し、請求人の業務に係る役務と混同を生ずるもの及び役務の質の誤認を生ずるものをしているものである。
よって、本件商標は、商標法第51条第1項の規定に該当し、同規定により取り消されるべきものである。
(10)本件判決後における上申書及び面接審理
被請求人は、本件判決後に提出の平成25年1月11日受付け上申書における主旨内容に沿って、それまでの主張を含む概略、以下の内容を面接時において提示又は主張した。
なお、当該上申書に添付の参考資料1?4においては、引用商標の洗浄技法に関する説明及びこれに関する各メディアによる番組内容を収録したDVDのほか、当該洗浄技法に関する新聞、雑誌等が添付されている。
ア ドライクリーニングと水洗いのそれぞれの洗浄方法における長所及び短所の説明及び実試料によるドライクリーニングと水洗いの洗浄結果の違いの提示
イ 被請求人のJR伊丹駅前の店舗における使用商標3を使用したクリーニングの結果の洗濯物の現物(甲34の1の図3、図4及び34の2の図4に写っているカッターシャツ)の提示
ウ 本件判決では、引用商標「アクアドライ」の周知性を否定しているが、これは目玉商品を引き立たせるための営業戦略であり、単に「目立たない」、「記憶に残りにくい」との主観的要素を理由に周知性を否定するのは心外である。そもそも標準文字である引用商標は、外観的特徴の保護を目的に申請したものではないことを考慮されたい。
また、引用商標の「アクアドライ」洗浄方法は、特許取得の「無重力バランス洗浄技法」であって、水洗いの概念を覆すものとしてメディアで多数紹介され、公的機関からも表彰も受けている。つまり、請求人のクリーニングサービスは、「水洗い」が主体であることの周知性があり当該技法を用いた基本洗浄である「アクアドライ」も同様に周知性を有する。
エ 引用商標「アクアドライ」は、「水溶性の汚れに強いこと」及び「油溶性の汚れに強いこと」を併せ持つ洗浄方法という観念を生ずる。
また、引用商標は、意味が曖昧な用語をまとまりよく結合させたもので、識別力を十分に有し、引用商標の宣伝広告にいたっては、引用商標を翻訳した「水油系」の登録商標と併記することで識別力を強化している。
したがって、引用商標「アクアドライ」の称呼を含む本件商標及び使用商標1?5は、引用商標と類似し、出所の混同を生じる。
オ yomiuri Weekiyによる記事(甲25の2)からも被請求人による使用商標3の「オゾン&アクアドライ」が請求人の引用商標と混同・誤認されることによる被害者は、消費者であり、見逃せない。
カ 被請求人は、請求人(実際には、京都産業)から警告書を受け、使用商標の1及び3の表示の変更や抹消をするなどしていることは、被請求人は、故意に請求人の業務にかかる役務と混同を生じている商標を使用してきたものといえ、また、外観に特徴ある本件商標を有しながら、これと相違する使用商標1?5(引用商標に類似する)の使用は、引用商標に擦り寄る意図があるものと認識している。
以上のとおり、被請求人が故意に本件商標に類似する商標を使用し、請求人役務と混同を生じ、消費者の期待が著しく損なわれることは、大きな問題であり、今後さらに引用商標「アクアドライ」の周知性が高まれば高まるほど、全く質が異なる本件商標との混同(質の混同)により、不利益を被る消費者が増加することになる危惧がある。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙1?5(枝番号を含む)を提出した。
なお、当初特許庁に提出された証拠方法は、乙1?3、そして本件判決後後に特許庁に提出された証拠方法は、これらを含めた乙1?5であるところ、乙1?3は、当初提出の証拠方法と重複しているものである。
答弁の理由
1 本件商標の使用は、本件商標の商標権者(被請求人)がその指定役務について正当に使用しているものであって、指定役務について本件商標と同一範囲内の商標の使用であり、他人(請求人)の業務に係る役務と出所について混同を生じさせるおそれのある商標を使用しているものとはいえないものであるから、商標法51条1項の規定に該当するものであるとして、その登録を取り消すべき理由はない。
2 被請求人が役務「洗濯」に使用しているとする使用商標1?5
(1)使用商標1「OZONE & AQUA DRY」(甲2の1?2の4、2の7及び2の9?2の14)の使用は、本件商標と同一許容範囲内の使用である。
(2)使用商標2「オゾン&アクアドライクリーニング」(甲2の2)の使用は、乙1?3より明らかなように、指定役務「洗濯」との関係において、「オゾンと水によるドライクリーニング」であることを認識させるにとどまるものであるから、役務「洗濯」に使用するときは、単に役務の質、提供の方法を表示するにすぎないものであって、甲2の2のタイトルを含む説明文からも明らかなように「『オゾンクリーニング』『アクアクリーニング』『ドライクリーニング』3つの効果でこれまでとれにくかった汗染み等がきれいに落ち、風合いをよみがえらせ、しかも、フカフカサラサラの仕上がりです。」さらに、「より美しく、最高の品質にこだわった『きょくとう』(被請求人)のサービス」のタイトルからみても、その役務の質、提供方法を強調した一種の広告、宣伝文句として理解、認識されるものであって、単独では独立して自他役務の識別標識としての機能を有しないものである。
(3)使用商標3「オゾン&アクアドライ」(甲2の2、2の4及び2の14)の使用は、甲2の14 P20の説明文章中に、「オゾンによるドライクリーニングに水と特殊ソープを加えて洗うオゾン&アクアドライ」と記載されていることからも、単に、役務「洗濯」の質、提供の方法を表示するにすぎないものである。
(4)使用商標4「オゾンアンドアクアドライ」(甲2の15)の使用は、使用商標3と同じく、単に役務「洗濯」の質、提供の方法を表示するにすぎず、独立して自他役務の識別標識としての機能を有しないものである。
(5)使用商標5「オゾンアクアドライ」(甲2の16)の使用は、単に役務の質、提供の方法を表示するにすぎず、独立して自他役務の識別標識としての機能を有しないものである。
3 出所の混同
(1)引用商標の周知性については不知である。
しかし、例え、引用商標が日本国内において需要者間に広く認識されていて周知であるとしても、使用商標は、前記2(1)?(5)で説明したように、その使用商標は、本件商標と同一又は類似の商標の範囲内で使用しているものであって、使用商標とされているその他の使用商標は、いずれも、役務の質、提供の方法を表示した標章の使用にすぎず、独立して自他役務の識別標識としての機能を有しない標章の使用であり、請求人が主張するように、引用商標と類似し、あるいは、出所の混同を生じさせるような使用商標は存在しない。
(2)出所の混同を生じている事実1(甲24の1)の主張について
「アクアドライ」+「オゾン洗い」の表示は、本件商標「オゾン&アクア/ドライ」のドライクリーニングシステムを紹介するものであり、役務の質、提供の方法を紹介したものであって、独立して自他役務の識別標識としての機能を有しないものである。すなわち、「アクアドライ」は、アクアドライクリーニングシステムを意味し、ドライクリーニング洗剤に水を含ませて、ドライクリーニングの度合いで、水溶性汚れを除去できる未来を先取りしたクリーニングシステムである。
「オゾン洗い」は、オゾンの持つ強い酸化力、殺菌力を利用して清潔で臭いがなく、殺菌、抗菌効果に優れている。オゾンは酸素から作られるクリーンな気体で、ふんわりサラサラ仕上がるのが特徴です。という説明内容、また、乙1?3の拒絶理由からみても「アクアドライ」+「オゾン洗い」の表示が、役務の質、提供方法を表したものであることは明白であり、請求人の役務と出所の混同を生じさせるおそれのある商標とはいえないものである。
(3)出所の混同を生じている事実2(甲24の2)について
被請求人は、甲24の2に記載のロイヤルネットワーク株式会社と何ら関係がなく、当該ロイヤルネットワーク株式会社による「パワーアクアドライ」の表記及びその表記態様について不知である。
(4)出所の混同による影響
前記の出所の混同を生じている事実1については、前記イで説明したとおり、その説明内容及び乙1?3の拒絶理由からみても、該表示は、役務の質、提供の方法を表したものであることは明らかであり、使用商標1?5により提供される役務が、引用商標により提供される役務と同様の品質を含むものと取引者及び需要者に誤解を与えている根拠はどこにも存在しない。
また、使用商標3は、本件商標と同一又は類似の範囲内の使用であるところ、上記事実2から使用商標3などの使用に基づいて、引用商標による提供された役務が、被請求人の提供する役務と何らかの関わりがあるものとして出所の混同が生じるおそれはない。
さらに、請求人は、使用商標1?5及び甲2の12?2の14の使用が、引用商標で提供している役務の品質について、取引者、需要者に誤解を与える影響が生じている旨主張しているが、前記、使用商標の各々について述べたとおり、これらの使用商標は、本件商標と同一範囲内の使用及び役務の質、提供の方法等を表示したものであって、引用商標で提供されている役務の品質について取引者、需要者に誤解を与えるといった影響は生じ得ないものであり、そのような根拠も存在しないものである。
4 被請求人の故意の有無について
使用商標は、請求人の登録商標とは非類似のものであり、正当な使用であって、被請求人が故意に請求人の業務に係る役務と混同を生じている商標を本件商標の指定役務について使用してきたものではない。
5 結論
以上のように、本件商標の使用は、故意に不正競争の目的をもって使用したものではない。

第4 当審の判断
商標法51条1項は、商標権者が指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用であって商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものを、故意にしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる旨定めている。
以下、請求人が指摘する被請求人の商標の使用行為が、上記規定に該当するものであるか否かについて検討する。
1 事実認定
(1)本件商標について
本件商標は、別掲に示したとおり、上段に藍色のグラデーションを施したかご文字風の「オゾン」と「アクア」の間に、朱色でやや小さく「&」を配した「オゾン&アクア」の片仮名を、下段には、上段と同じ藍色・書体により「ドライ」の片仮名を配し、上下二段に横書してなるものである。
(2)被請求人の事業内容について
クリーニング業を営む被請求人は、自身のウエブサイト及びパンフレット、会社説明会資料等において、すべての商品をオゾンで洗浄し、これにより水溶性の汚れの除去率が上昇したこと、オプションとして、オゾンのドライクリーニングに水を加えて洗う「オゾン&アクアドライ」があり、これを利用するとさらに水溶性の汚れが落ち、水溶性の汚れと油溶性の汚れが1回の工程で落とせること(甲2の3ないし2の5、2の7ないし2の14)、オゾンクリーニング、アクアクリーニング(ウエットクリーニング)、ドライクリーニングの3つの効果により、それまで取れにくかった汗染み等がきれいに落ちることなどを説明して、宣伝、広告をしている(甲2の1、2の2、2の15)。
(3)被請求人の使用商標1?5について
ア 使用商標1
被請求人は、自身が運営のウエブサイトやパンフレット等において、使用商標1を使用しているところ、その構成は、「OZONE & AQUA DRY」の欧文字を横書きした商標であり、これは、本件商標(ただし、各文字の輪郭の有無や「ドライ」の文字の色等において本件商標とは異なるものを含む。)の上部に、本件商標の各文字よりも小さく表記されている(甲2の1?2の4、2の7、2の9?2の14及び26の4)。
イ 使用商標2
被請求人は、パンフレットにおいて、使用商標2を使用しているところ、その構成は、「オゾン&アクアドライクリーニング」の文字を横書きした商標である(甲2の2)。
ウ 使用商標3
被請求人は、パンフレットや決算説明会資料等において、使用商標3を使用しているところ、その構成は、「オゾン&アクアドライ」の文字を横書きした商標である(甲2の2、2の4?2の14及び26の4)。
エ 使用商標4
被請求人は、自身が経営する店舗のウエブサイトにおいて、使用商標4を使用しているところ、その構成は「オゾンアンドアクアドライ」の片仮名文字を横書きした商標である(甲2の15及び3の1)。
オ 使用商標5
被請求人は、自身が経営する店舗のウエブサイトにおいて、使用商標5を使用しているところ、その構成は、「オゾンアクアドライ」の片仮名を横書きした商標である(甲2の16及び3の2)。
(4)引用商標について
請求人の引用商標は、登録第4305744号商標権にかかる「アクアドライ」なる片仮名を標準文字で表した商標であるところ、当該商標権は、平成11年8月13日、第37類「洗濯,被服のプレス,被服の修理,毛皮製品の手入れ又は修理」を指定役務として京都産業が設定登録を受けた。
(5)請求人について
請求人である「株式会社ハッピー」は、平成14年に設立され、その頃、京都産業から、引用商標使用の許諾を受け、さらに平成19年2月、京都産業から商標権の移転登録を受けたものである。
(6)引用商標の使用状況等
両社は、共にクリーニング業を営む会社であり、平成13年12月までは京都産業が、平成14年1月以降、両社が本件審判を請求した平成22年6月までは請求人が、それぞれ行うクリーニング業に関して、以下のとおり、引用商標が使用された。
なお、上記した京都産業は、本件審判請求時には、現在の請求人と共同の審判請求人であったが、本件判決後において、請求取下書の提出(平成24年6月20日受付け)があったことから、審判請求人は、株式会社ハッピーのみとなったものである。
ア 両社は、それぞれ運営するウエブサイトやカタログ、ちらし、葉書、ハッピー通信等において、引用商標を使用していた(甲8の1?8の15、10の1?10の8、11の1、11の2、12、13の1?13の28、81の2及び82の1?82の4)。
(ア)以下の新聞等に、両社は、引用商標である「アクアドライ」を表記した広告を掲載した。また、同様の新聞等に、両社の提供する洗浄方法として「アクアドライ」を紹介する記事が掲載された。
繊研新聞(甲16の1?16の4及び18の7)、日本工業新聞(甲18の1、18の2及び18の4)、その他の業界新聞(甲18の3、18の5及び18の6)、雑誌レタスクラブやレタスリビングクラブ(甲17の1?17の12及び19の10)、雑誌週刊ダイヤモンドやダイヤモンドプラス(甲17の13、19の16及び19の27)、その他の雑誌等(甲19の1?19の9、19の11?19の13、19の15、19の17?19の26、19の28、19の29及び59の2?59の4)、インターネット(甲80の1、80の2及び80の4?80の6)
(イ)請求人代表者は、「クリーニングの謎」、「間違いだらけのクリーニング業界」、「クリーニング店の秘密」、「小さな会社の負けない発想」、「サービス業の底力」などの書籍において、「アクアドライ」を、請求人の提供する洗浄方法として紹介している(甲14の1、14の2及び15の1?15の3)。
(ウ)書籍「感動を創造する中小企業」においても、請求人が「アクアドライ」と称する洗浄方法を用いていることが紹介されている(甲20)。
イ 請求人は、「アクアドライ」の洗浄方法について、油性汚れと水性汚れを同時処理できる洗浄であり、洋服を構成する繊維・デザイン・縫製・色彩と、洋服の着用状態・損傷状態とに応じて、洗浄剤や薬剤を使い分け、その洗浄方法は約900通りあるなどと説明している(甲8の15、10の7、10の8及び15の3)。
2 被請求人使用商標と請求人引用商標との出所の混同についての判断
(1)本件商標と使用商標1?5の類似性
ア 本件商標について
本件商標は別掲のとおりの構成よりなるところ、これより、「オゾンアンドアクアドライ」の称呼を生じるほか、二段構成よりなることからして、上段の「オゾン&アクア」の部分から「オゾンアンドアクア」の称呼を生じる。また、本件商標における「オゾン」は酸素の同素体を意味し、「アクア」は他の語と複合的に使用した場合に「水」を意味し(甲43)、また、「ドライ」はその指定役務中の「洗濯」との関係においては、「ドライクリーニング」を意味すると認められ、一般に「ドライクリーニング」が、有機溶剤を使用した洗濯を意味することからすると(乙4の1)、「オゾン」「アクア」「ドライ」はそれぞれ別個の意味を有する語句であり、これらの語句が結合された本件商標からは、ただちに、特定の観念を生じないと認めるのが相当である。
イ 本件商標と使用商標1との比較
使用商標1は、前記1(3)アに記載したとおりの構成よりなるところ、これより「オゾンアンドアクアドライ」の称呼を生じる。
また、使用商標1は、クリーニングに関して使用されているものであって、「DRY」は「ドライクリーニング」を意味するものと解されることから、自他役務の識別機能が生じない。
してみると、使用商標1は「OZONE & AQUA」が、自他役務の識別機能を生じる特徴的な部分であるとも考えられることから使用商標1からは、「オゾンアンドアクア」の称呼をも生じるものであるが、いずれの場合も、特定の観念を生じない。
したがって、使用商標1は本件商標に類似する。
ウ 本件商標と使用商標2との比較
使用商標2は、前記1(3)イに記載したとおりの構成よりなるところ、その構成中の「ドライクリーニング」部分は、その使用役務であるクリーニングとの関係よりすれば、自他役務の識別機能が生じない部分であることから、自他役務の識別機能が生じる部分の「オゾン&アクア」の部分より、「オゾンアンドアクア」の称呼が生じ、特定の観念は生じない。
したがって、使用商標2は本件商標に類似する。
エ 本件商標と使用商標3及び4との比較
使用商標3及び4は、前記1(3)ウ及びエに記載したとおりの構成よりなるところ、いずれも、「オゾンアンドアクアドライ」の称呼を生じる。また、その構成中の「ドライ」部分は、その使用役務であるクリーニングとの関係よりすれば、「ドライクリーニング」を意味するものと解され、自他役務の識別機能が生じない部分であることから、自他役務の識別機能を生じる部分は、それぞれ、「オゾン&アクア」及び「オゾンアンドアクア」である。
してみると、使用商標3及び4からは、「オゾンアンドアクア」の称呼をも生じるものであるが、いずれの場合も、特定の観念は生じない。
したがって、使用商標3及び4は本件商標に類似する。
オ 本件商標と使用商標5との比較
使用商標5は、前記1(3)オに記載したとおりの構成よりなるところ、「オゾンアクアドライ」の称呼が生じる。また、その構成中の「ドライ」部分は、前記事情と同様、自他役務の識別機能が生じない部分であることから、自他役務の識別機能を生じる部分は、「オゾンアクア」である。
してみると、使用商標5から、「オゾンアクア」の称呼をも生じるものであるが、いずれの場合も、特定の観念は生じない。
したがって、使用商標5は、本件商標の「&」が表記されてないことなどの点で外観上の相違はあるものの、全体として本件商標と類似するといえる。
以上のとおり、被請求人が、クリーニング業において使用商標1?5を使用したことは、本件商標の指定役務である「洗濯」に本件商標に類似する商標を使用したことに該当する。
(2)引用商標の周知性
前記のとおり、両社は、それぞれ運営するウエブサイトやカタログ、ちらし等において、引用商標を使用していたが、「アクアドライ」による洗浄について、役務の出所を識別する態様で表記されるのではなく、洗浄方法の一つを示すものとして、他の洗浄方法やサービスとともに説明、表記されているものもある(甲8の1?8の3、8の5、8の7、8の9、8の10、8の13及び11の2)。
また、両社は、新聞や雑誌等に引用商標である「アクアドライ」の表記を含む広告を掲載しているが、これら広告には、引用商標が表記されているものの、文字を拡大したり、太文字にしたり、色彩を変えたりするなど、看者の注意を引くような態様で表記されていないものも多い(例えば、甲17の1?17の12は、「Happy クリーニング」や「全国宅配システム」や「リプロン」の標章は、看者の注目を引くような態様で表記されているのに対して、引用商標は、看者の注目を引くような態様で表記されているわけではない。)。
新聞や雑誌等に掲載された両社に関する記事についても、両社が提供する洗浄方法やサービス、両社の営業方針等に関する記事の一部に、引用商標が表記されているものも多く、引用商標が、看者の記憶に残るように表記されているわけではない。
また、引用商標が使用されたアンケート葉書やハッピー通信は、既に両社と取引を行っている顧客らに送付されるものである。
以上によると、引用商標が特定のクリーニング業者の提供する洗濯(洗浄方法)を表示するものとして、周知であったとは認め難い。
なお、請求人は、平成25年1月11日受付けの上申書において、「アクアドライ」を目立たせていないのは、処理前と処理後が目視ではっきりとわかる「リプロン」などの技術メニュー、いわゆる目玉商品を引き立たせるための営業戦略である旨、主張しているものであり、請求人自ら引用商標が周知性を獲得しない理由を述べている。
また、請求人は、洗濯物の宅配サービス、カルテによる洗濯物の管理等の業務を展開していること、請求人代表者が、家庭でできる洗濯方法について紹介していること、請求人は、被服を扱う事業者等と提携して営業活動を展開していること、請求人の登録者が平成22年6月末時点で全国で数万人に達していることなどが認められるが、そのような事実から直ちに、引用商標「アクアドライ」が、請求人の役務を示すものとして、周知になったと認めることはできない。
(3)使用商標1?5と引用商標との出所の混同の有無
ア 引用商標は、「アクアドライ」の称呼を生じる。また、引用商標がクリーニングに関して使用されていることから、引用商標のうち「ドライ」の部分は、「ドライクリーニング」を意味するものと解され、「アクア」は他の語と複合的に使用した場合に「水」を意味することから、「アクア」と「ドライ」は、それぞれ別個の意味を有する語句であり、「アクアドライ」はこれらを結合した造語であって、特別な観念は生じないものと認められる。
使用商標1は「オゾンアンドアクアドライ」又は「オゾンアンドアクア」の称呼を、使用商標2は「オゾンアンドアクア」の称呼を、使用商標3及び4は「オゾンアンドアクアドライ」又は「オゾンアンドアクア」の称呼を、使用商標5は「オゾンアクアドライ」又は「オゾンアクア」の称呼をそれぞれ生じることから、引用商標と使用商標1?5は、称呼において異なるうえ、外観も異なることから、これら各使用商標は引用商標とは類似しない。
したがって、被請求人が、使用商標1?5を使用することによって、請求人の業務に係る役務と混同を生じるとは認めることができない。
イ 請求人は、使用商標について、a)「アクアドライ」には識別力があること、b)「アンド」や「&」の前後は分断されて観察されること、c)「オゾン」からは「オゾン洗浄」の観念が、「AQUA DRY」、「アクアドライクリーニング」、「アクアドライ」からは「水溶性の汚れと油溶性の汚れの双方を同時に処理できる洗浄方法」の観念が、それぞれ生じ、これらは別個の洗浄方法であること、d)被請求人は、「オゾンクリーニング」を基本サービスとし、本件商標を使用した役務はオプションサービスとしていることなどから、使用商標1?5における自他役務の識別力を有する部分は、「AQUA DRY」、「アクアドライクリーニング」又は「アクアドライ」部分であると主張する。
しかしながら、請求人の主張は、採用することができない。すなわち、前記したとおり、a)引用商標は、「アクア」と「ドライ」の2語を結合させた造語であって、周知であるとは認められないこと、b)使用商標1?4における「オゾンアンドアクア」の称呼は冗長ではなく、一連に称呼し得るものであること、c)被請求人は、使用商標1?5を使用して、オゾンのドライクリーニングに水を加えて洗う洗浄方法を提供していること等を考慮すると、使用商標1?5における自他役務の識別力を有する部分は、「AQUA DRY」、「アクアドライクリーニング」又は「アクアドライ」の部分であるとする請求人の主張は採用できない。
なお、被請求人は、「オゾン」の表記のない使用商標(アクア/ドライ)も使用しているが、この商標が使用されているのは、証拠上、被請求人の店舗の運営するウエブサイト上の1か所にすぎない(甲2の17、3の2)ことから、上記判断を左右するものではない。
(4)小括
以上のとおり、被請求人による使用商標1?5の使用は、請求人の業務に係る役務と混同を生じさせるものではない。
3 役務の質の誤認に関する判断
前記のとおり、使用商標1?5は特別な観念を生じるものではないゆえ、これらを使用することにより、被請求人の提供する役務の質の誤認を生じさせると認めることはできない。
なお、請求人は、a)使用商標1?5は、「水溶性の汚れと油溶性の汚れの双方を同時に処理できる洗浄方法」の観念を生じる「AQUA DRY」又は「アクアドライ」を含んでおり、使用商標1?5により提供される被請求人の役務が、引用商標により提供している請求人の役務のように、水を用いた水系洗浄による役務であるという誤認を生じさせる、b)引用商標からは「水溶性の汚れと油溶性の汚れの双方を同時に処理できる請求人が独自に開発した洗浄方法」の観念が想起される、c)「ドライクリーニング」を表す使用商標1?5を使用して預かったカッターシャツに対して、実際は、「ドライクリーニング」と質の異なる「水洗い」を役務として提供していることから、使用商標1?5により提供される役務は、「水溶性の汚れと油溶性の汚れの双方を同時に処理できる請求人が独自に開発した洗浄方法」を使用していると消費者を誤認させると主張する。
しかしながら、請求人の上記主張は、使用商標1?5の使用による役務が引用商標の使用による役務と混同することを前提とした主張であり、その前提において、採用することはできない。また、「AQUA DRY」又は「アクアドライ」が「水溶性の汚れと油溶性の汚れの双方を同時に処理できる洗浄方法」や、「水溶性の汚れと油溶性の汚れの双方を同時に処理できる請求人が独自に開発した洗浄方法」の観念を生じるとはいえないことは、前記のとおりである。
また、請求人は、使用商標1?5を使用することで、消費者に対して、オゾンのドライクリーニングに汗染み等がきれいに落ち、・・・しかも、フカフカサラサラの仕上がりとなるアクアクリーニングによる効果を追加するものとしてその役務の質を認識させているにもかかわらず、実際には、当該アクアクリーニングによる効果が追加されたものとはいえないことからも、その質の誤認を消費者に生じさせていると主張している。
しかしながら、被請求人の当該主張は、被請求人の使用商標2の説明として記載(甲2の2)されているものであるが、上記の「汗染み等がきれいに落ち、・・・しかも、フカフカサラサラの仕上がりとなる」旨の記載は、特定の観念が生じない使用商標2「オゾン&アクアドライクリーニング」との関係においては、何ら役務の質の誤認を生じさせるものとはいえない。
そのほか、被請求人が故意に本件商標に類似する商標を使用し、請求人役務と混同を生じ、消費者の期待が著しく損なわれることは、大きな問題であり、今後さらに引用商標「アクアドライ」の周知性が高まれば高まるほど、全く質が異なる本件商標との混同(質の混同)により、不利益を被る消費者が増加することになる危惧があるとも主張する。
しかしながら、前記(2)において記載したとおり、本件審決時においては、請求人の引用商標が、引用商標が特定のクリーニング業者の提供する洗濯(洗浄方法)を表示するものとして、周知であったとは認め難いものであって、今後の周知性の高まりを前提にして判断することはできないことは明らかであることから、いずれにおいても、請求人の主張は理由がない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標権者である被請求人による使用商標の使用は、取引者、需要者をして、役務の質の誤認、又は他人の業務にかかる役務と混同を生ずるおそれがあるものとはいえず、また、故意に、役務の質の誤認又は他人の業務にかかる役務と混同を生ずるものとしたとも認められない。
したがって、本件商標は、商標法51条1項の規定に該当するものではないから、その登録を取り消すべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本件商標:色彩については原本参照)



審理終結日 2013-02-22 
結審通知日 2013-02-26 
審決日 2013-03-22 
出願番号 商願2000-41360(T2000-41360) 
審決分類 T 1 31・ 3- Y (Z37)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平松 和雄 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 井出 英一郎
渡邉 健司
登録日 2001-07-19 
登録番号 商標登録第4492310号(T4492310) 
商標の称呼 オゾンアンドアクアドライ、オゾンアンドアクア 
代理人 平井 安雄 
代理人 栫 生長 

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