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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) X36
管理番号 1272694 
異議申立番号 異議2010-900179 
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2013-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2010-06-18 
確定日 2013-04-25 
異議申立件数
事件の表示 登録第5310533号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5310533号商標の指定役務中、第36類「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定着物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,信用購入あっせん,送金・振込事務の取扱い,その他の銀行業務,投資,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引,外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券先渡取引・有価証券店頭指数等先渡取引・有価証券店頭オプション取引若しくは有価証券店頭指数等スワップ取引又はこれらの取引の媒介・取次ぎ若しくは代理,有価証券等精算取次ぎ,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,金融又は財務に関する情報の提供,金融又は財務に関する助言及び評価,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,保険に関する指導・助言及び情報の提供,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介」についての商標登録を取り消す。 本件登録異議の申立てに係るその余の指定役務についての商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5310533号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成からなり、平成21年12月2日に登録出願、第36類に属する後記(1)に記載の役務を指定役務として、平成22年3月19日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の引用する登録商標は、以下のとおりである。
(1)国際登録第770374号商標(以下「引用商標1」という。)は、「BDO」の欧文字を横書きしてなり、2001(平成13)年8月8日にBeneluxにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、同年10月30日に国際商標登録出願、第9類、第16類、第35類、第36類、第41類及び第42類に属する後記(2)に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成15年2月21日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。
(2)国際登録第770421号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(2)に示すとおりの構成からなり、2001(平成13)年7月19日にBeneluxにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、同年10月30日に国際商標登録出願、第9類、第16類、第35類、第36類、第41類及び第42類に属する後記(2)に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成15年2月21日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。
以下、これらをまとめて「引用商標」ということがある。

3 登録異議の申立ての理由の要旨
本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第11号又は同第15号に反して登録されたものであり、その登録は、取り消されるべきものである旨述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第58号証を提出している。
(1)商標法第4条第1項第10号
本件商標は、申立人の日本の通常使用権者の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている引用商標に類似する商標であって、その役務に類似する役務について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第11号
本件商標は、当該出願日前の引用商標1及び2に類似する商標であって、その指定役務について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号
仮に上記の理由に該当しない場合においても、本件商標は、申立人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがあるものであるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 本件商標に対する取消理由の要旨
商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用商標1及び2との類否について
本件商標と両引用商標との類否についてみるに、本件商標は、別掲(1)のとおり、「BDO」「Banco」「De」「Oro」の各文字を横一列に配した構成からなるところ、全体としては冗長な構成であり、また、これらが常に不可分一体のものとしてのみ看取され理解されるとすべき理由もみいだせない。
そして、構成中の「BDO」をみると、語頭部にあって、後続の「Banco De Oro」に比して、およそ2倍程度の太さの線で表され、また、「BD」が青色、「O」が黄色に彩色されていることで、いずれも青色の同じ太さで表された後続の「Banco De Oro」部分とは、明確に分離して認識されるものである。
そうとすれば、簡易迅速を旨とする商取引の実際において、語頭部で顕著に表された前記「BDO」が、看者の注意を惹く部分として独立して印象され、記憶されて、取引に資される場合も決して少なくないとみるのが相当であるから、本件商標は、当該文字部分から「ビーディーオー」の称呼をも生ずるものというべきである。
他方、引用商標1は、その構成文字「BDO」に相応して「ビーディーオー」の称呼を生ずるものである。
また、引用商標2は、鉤状に構成された線の上に「BDO」の文字が配されているものであるところ、該「BDO」の文字に相応して、「ビーディーオー」の称呼を生ずるというのが相当である。
してみれば、本件商標と両引用商標とは、「ビーディーオー」の称呼を共通にするものであり、「BDO」の構成文字を同じくする外観上の類似性をも併せ考慮すれば、本件商標は、両引用商標に類似する商標といわなければならない。
(2)本件商標の指定役務と引用商標1及び2の指定役務との類否について
本件商標の指定役務中、「建物又は土地の情報の提供」以外の役務は、両引用商標の指定役務中、第36類の「tax consultancy; tax agency(税務相談,税務代理)」を除く役務と同一又は類似のものである。
(3)まとめ
したがって、本件商標の指定役務中、「結論掲記の指定役務」についての登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである。

5 取消理由の通知に対する商標権者の意見
商標権者は、前記4の取消理由の通知に対して要旨以下のように意見を述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出している。
(1)本件商標から生ずる称呼認定の誤り
本件商標の構成全体から生ずる「ビーディーオーバンコデオロ」の称呼は、12音構成からなるものであり、また、その構成中、前半部分に位置する「ビ」、「ディ」、「オ」がそれぞれ長音を伴うものの、一気一連に称呼した場合には「ビー、ディー、オー」と一音一音が明瞭に発音されるというよりは、「ビディオ」といった風に該長音が明瞭には発音されないこととなり、それに伴い、本件商標の構成全体から生ずる称呼も、実際の12音よりも短い音として発音され、また聴取されると考えるのが相当であるから、本件商標を一気一連に称呼した場合には、無理なく、よどみなく一連に称呼されることは明らかである。してみれば、本件商標の構成について、決して冗長であるということはできない。
そして、本件商標と引用各商標において共通する「BDO」の文字が、本件指定役務の分野において、商標権者又は申立人の業務に係る役務を表示するものとして広く知られているといった事実は一切見出せないのであるから、当該部分が、本件商標において、強く支配的な印象を与えると認めることもできない。また、「Banco De Oro」は、商標権者の名称の略称であるから、当該部分が出所識別標識としての称呼、観念が生ずることについて疑いの余地はない。さらに、本件商標を構成する「BDO」は、これに続く「Banco」、「De」、「Oro」の各語の頭文字を抽出して構成された頭字語であることは一見して容易に理解することができるから、「BDO」と「Banco De Oro」の間には密接な観念上の一体性が認められると考えるのが相当であり、してみれば、観念においても、本件商標を「BDO」と「Banco De Oro」とに分離すべき理由は存在しない。
以上のとおり、本件商標の構成全体から生ずる称呼は、特段冗長とはいえず、また、「BDO」が何人かの業務に係る役務を表示する標識として周知、著名となっていると認めることもできず、商標権者の略称として十分に出所識別標識として機能する「Banco De Oro」を捨象してまで当該「BDO」の部分を本件商標の要部と認定するべき理由は存在しない。
以上から、本件商標からは、常にその構成全体に相応して「ビーディーオーバンコデオロ」との称呼が生ずると考えるのが相当である。
(2)本件商標の外観構成に係る認定の誤り
「BDO」と「Banco De Oro」の部分が、異なる太さの線で表されていることは認めるにやぶさかではないが、それをもって、本件商標が、「BDO」と「Banco De Oro」とに分離されると判断すべき事情はみいだせない。
すなわち、本件商標は、「BDO」と「Banco De Oro」の「B」、「D」及び「O」の部分が同じ高さに統一して表わされており、一見して、一体不可分に表されていると看取することができる。しかも、本件商標は、「O」の文字が黄色で彩色され、その前後を青色で彩色された「BD」及び「Banco De Oro」に挟まれるように表されており、本件商標の両端が青色で統?的に彩色され対になって表されていると認識されるから、外観上、色彩の統一性も認められる。
また、本件商標の構成において、どの部分が他の構成部分と表示態様が異なるものとして看者の注意を惹くかを検討すると、取消理由通知において認定されている構成文字の線の太さの違いよりも、「BD」及び「Banco De Oro」に彩色されている青色と、「O」に彩色されている黄色の相違が、より一層看者の注意を惹くことは想像に難くない。
本件商標は、その外観構成上の特徴より、外観上も常に一体不可分のものとして看取されることは上述のとおりであるが、仮に簡易迅速を尊ぶ実際の取引において本件商標の何れかの構成部分が出所識別標識として機能するとすれば、それは、やや太字で表わされた「BDO」ではなく、他の文字と異なる彩色がされている「O」を除いた「BD」の部分であることは明らかである。
よって、本件商標は、その外観上も、「BDO」の部分が単独で出所表示機能を発揮すると考えるべき特段の事情は存在しない。
(3)本件商標の観念上の一体性について
本件商標は、上述のとおり、「BDO Banco De Oro」の欧文字からなるものであるが、このうち、「Banco De Oro」は、商標権者の名称「バンコ デ オロ ユニバンク インコーポレイテッド」の略称である。
取消理由通知では、本件商標は、「常に不可分一体のものとしてのみ看取され理解されるとすべき理由もみいだせない」としているが、「BDO」が「Banco De Oro」という三語のそれぞれの頭文字から構成されていることから、観念上も、構成全体の一体不可分性が認められることは明らかである。
また、万が一にも、「BDO」と「Banco De Oro」とが分離される場合があるとしても、本件商標は、「BDO」ではなく、「BDO Banco De Oro」と表示されているのであるから、本件商標の外観構成を見た需要者等が、即座に「BDO」を「Banco De Oro」の頭字語であると理解、認識することに疑いの余地はない。
してみれば、本件商標の「BDO」の部分のみをとっても、そこからは、商標権者「バンコ デ オロ ユニバンク インコーポレイテッド(の略称)」との観念が生ずる。
(4)本件商標と引用各商標の対比
本件商標中、「BDO」が、商標権者又は申立人の業務に係る役務を表示する語として周知、著名であると認めることもできないし、また、「Banco De Oro」も商標権者の略称であるから、当該部分が指定役務との関係で識別力が弱いということもできない。
よって、本件商標からは、「ビーディーオーバンコデオロ」との一連の称呼のみが、また、「バンコ デ オロ ユニバンク インコーポレイテッド」という観念のみが生じ、さらに、本件商標の外観構成の特徴からも、「BDO」の部分のみを抽出して、当該部分が単独で出所識別機能を発揮すると考えるべき特段の事情は存在しない。
他方、引用各商標は、欧文字「BDO」又は鉤状に構成された線の上に欧文字「BDO」の文字を配してなるものであるから、これらからは、常に「ビーディーオー」という称呼のみが生ずる。また、「BDO」が申立人の商標として周知、著名となるに至っている事実は一切認められないから、引用各商標から、特定の観念が生ずることもありえない。さらに、引用各商標は、上述した態様からなるから、本件商標とは、その構成に「BDO」の語を含む点でのみ共通するだけであって、その全体構成を比較すれば、一見して容易に峻別できる。
(5)本件商標と引用各商標とが用いられる役務について
商標権者は、フィリピンでは、最も大きな銀行であり、過去10年間に数多くの賞を受賞し(乙第4号証)、同国において最も認知度の高い銀行である一方、日本においては、日本在住のフィリピン人を中心とした需要者に対して、提携している代理人や事務所(affiliated agents and offices)を通じて行なう本国フィリピンヘの送金業務が主たる業務であり、その需要者層は、ほぼ日本に在住し、働いている個人のフィリピン人に限られ、例外として、フィリピンの物産品等を日本へ輸入する法人が、商標権者が提供する送金サービスを利用する程度である。この限られた業務範囲において、本件商標は、相当程度需要者等に浸透しており、本件商標に接する需要者等は、これに表象されるサービスが商標権者によって提供されるサービスであることを理解、認識し、該サービスを利用している。
他方、申立人ないしその通常使用権者とされている者は、申立ての理由や提出された書証から明らかなとおり、会計監査(auditing)サービスや財政評価(fiscal assessments)、金融財政調査(financial and fiscal research)を法人に対して行なっている。
そうすると、我が国における現実の取引において、本件商標と引用各商標とが用いられるサービスの需要者層は、明らかに異なっており、商標権者のサービスを利用する需要者が申立人のサービスを利用するとは到底考えられず、その逆もまた然りである。特に、申立人が提供している会計コンサルタントないしそれに関連するサービスを享受しようとする需要者が、商標権者が提供するような日本に在留する外国人の本国への送金事務処理を利用することはあり得ない。
さらに、「Banco De Oro」ないし「Banco」の語は、ユニバーサルバンク(商業銀行業務・投資銀行業務・証券業務のほか、リース・ファクタリングなどいっさいの金融業務のできる銀行)としての業務を行なう資格を有するもののみが使用できる、記述的ではなく、極めて示唆的な(suggestive)語であり、商標権者の組織としての性質や、現に従事している事業の性質を示唆する語である。商標権者は、フィリピンで適式に組織され、その運営が認められたユニバーサルバンクであり、同国において最大であり、最も利用されている銀行である。ユニバーサルバンクとして業務を行なう商標権者「Banco De Oro Unibank, Inc.」は、法律により、その名称に「Banco De Oro」若しくは「Banco」又はこれらに類する語を用いることが義務付けられており、これにより、その名称を見た需要者等は、商標権者がユニバーサルバンクとして事業を行なっていることを強く印象付けられる。ユニバーサルバンクを利用する需要者は、極めて洗練され、高度の注意力を有する者であることは周知の事実であるから、商標権者のサービスを享受する者は、極めて高い注意力をもって取引に当たることは明らかである。そのような状況の下、本件商標に接する需要者は、常に、これが用いられるサービスは、ユニバーサルバンクとして業務を行なっている商標権者が提供するサービスであると認識することは明らかであり、かかる場合に、該サービスの出所について誤認し、申立人の業務に係る役務と混同することはあり得ない。
他方、申立人は、銀行機関ではなく、主として会計コンサルタントに従事している。してみれば、送金や預金口座開設等の銀行業務サービスを享受しようとする者が、本件商標が用いられるサービスについて、銀行業務を行なっていない申立人のサービスであると誤認することなどあり得ない。同様に、会計コンサルタントないしこれに類するサービスを利用しようとする者が、ユニバーサルバンクとして業務を行なうことが認可された者のみが使用できる「Banco De Oro」ないし「Banco」の語を含む本件商標を見て、申立人の業務に係るサービスであると誤認することも、またあり得ない。なお、「Banco De Oro」ないし「Banco」の語の意味を認識していない者にとっては、当該語は、正に自他役務識別力を有する語として理解されるのであるから、これらの者にとっても、「Banco De Oro」の部分は、それが用いられる役務の出所を特定するための重要な要素であることは明らかであり、当該部分を捨象して類否を判断することは、決してできない。
上述のとおり、本件商標と引用各商標との間には、外観、称呼、観念のいずれにおいても顕著な差異が存するに加え、現実の取引において、これらの商標が用いられるサービスの内容や需要者層も明らかに異なっている。商標の類否を判断するに当たっては、「取引の実情等によって、何ら役務の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては、これを類似商標と解すべきではない」とされている。
本件商標と引用各商標とは、外観、称呼、観念において相紛れる点のない別異な商標であるから、両商標間に抽象的な誤認混同のおそれを想定し得ないのみならず、上述のサービス内容や需要者層の明らかな相違を考慮すれば、実際の取引においてもこれらの商標が相紛れることは、あり得ない。
(6)結論
以上に述べたように、本件商標と引用各商標とは全く別異な商標であって、また、両商標を使用するサービスの内容や需要者層も全く関連性がないことから、いずれか一方に接したとしても他方を想起することはあり得ず、本件商標とこれらの商標との間に誤認混同が生ずるおそれは皆無である。
よって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものではなく、これを取り消す理由はない。

6 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第10号及び同第15号について
申立人が引用商標の周知、著名性を裏付けるものとして提出している証拠は、BDO international、BDOコンサルティング株式会社及び三優監査法人のウェブサイトの写し並びに同監査法人が我が国においてその看板や封筒等に引用商標を使用していること及び同監査法人が我が国の監査法人において、第5位から第7位に掲載された旨の新聞記事等である。
しかしながら、これらの証拠をもってしては、引用商標の周知、著名性を判断するに充分なものとはいい難く、本件商標の登録出願時及び査定時において、引用商標が申立人の業務に係る役務を表示する商標として、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
してみれば、商標権者が本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、引用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その役務が申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、その役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 最高裁判決において、商標はその構成部分全体によって他人の商標と識別すべく考案されているものであるから、みだりに、商標構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判定するがごときことは許されないが、簡易、迅速をたっとぶ取引の実際においては、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常に必らずしもその構成部分全体の名称によって称呼、観念されず、しばしば、その一部だけによって簡略に称呼、観念され、1個の商標から2個以上の称呼、観念の生ずることがあり、この場合、一つの称呼、観念が他人の商標の称呼、観念と同一又は類似であるとはいえないとしても、他の称呼、観念が他人の商標のそれと類似するときは、両商標はなお類似するものと解するのが相当である(最高裁 昭和37年(オ)第953号 昭和38年12月5日第一小法廷判決参照)。
そこで、以上の観点により、本件商標と引用商標1及び2との類否について検討する。
イ 本件商標と引用商標1及び2との類否について
本件商標は、別掲(1)のとおり、「BDO」「Banco」「De」「Oro」の各文字を横一列に配した構成からなるところ、「BDO」「Banco」「De」「Oro」の各文字の間にある半文字程度の間隔を含め、全体として16文字と冗長な構成であり、また、これらが常に不可分一体のものとしてのみ看取され理解されるとすべき理由もみいだせない。
しかして、構成中の「BDO」をみると、語頭部にあって、後続の「Banco De Oro」に比して、およそ2倍程度の太さの線で表され、また、「BD」が青色、「O」が黄色に彩色されていることで、いずれも青色の同じ太さで表された後続の「Banco De Oro」部分とは、明確に分離して認識されるものである。
そして、構成中の「BDO」の文字は、大文字で表されており、該「B」「D」「O」の大文字は、重なって表されているのに対し、「Banco」「De」「Oro」の文字は、大文字と小文字で表されており、これらを構成する大文字と小文字が、重なって表されてはいないことから、「BDO」の文字と「Banco De Oro」の文字は、異なる表記方法で表されており、また、「BDO」と「Banco」の文字の間には、半文字程度の間隔を有することから、「BDO」の文字と「Banco De Oro」の文字は、視覚上、明確に分離して認識されるものである。
さらに、構成中の「Banco De Oro」の語は、商標権者が、意見書において述べているように、ユニバーサルバンク(商業銀行業務・投資銀行業務・証券業務のほか、リース・ファクタリングなどいっさいの金融業務のできる銀行)としての業務を行なう資格を有するもののみが使用できる、極めて示唆的な語であり、商標権者の組織としての性質や、現に従事している事業の性質を示唆する語であるとすると、自他役務の識別標識としての機能を果たさないか、又は極めて弱い語であるということができるから、本件商標中、自他役務の識別標識としての機能を果たす部分は、「BDO」の文字部分にあるというのが相当である。
そうとすれば、簡易迅速を旨とする商取引の実際において、語頭部で顕著に表された前記「BDO」が、看者の注意を惹く部分として独立して印象され、記憶されて、取引に資される場合も決して少なくないとみるのが相当であるから、本件商標は、当該文字部分から「ビーディーオー」の称呼をも生ずるものというべきである。
他方、引用商標1は、その構成文字「BDO」に相応して「ビーディーオー」の称呼を生ずるものである。
また、引用商標2は、鉤状に構成された線図形の上にやや図案化された「BDO」の文字が配されているものであるところ、該「BDO」の文字に相応して、「ビーディーオー」の称呼を生ずるというのが相当である。
してみれば、本件商標と両引用商標とは、「ビーディーオー」の称呼を共通にするものであり、「BDO」の構成文字を同じくする外観上の類似性を有するものであるから、これらを併せ考慮すれば、本件商標は、両引用商標に類似する商標といわなければならない。
ウ 本件商標の指定役務と引用商標1及び2の指定役務との類否について
本件商標の指定役務中、「建物又は土地の情報の提供」以外の役務は、両引用商標の指定役務中、第36類の「tax consultancy; tax agency(税務相談,税務代理)」を除く役務と同一又は類似のものである。
エ 商標権者の主張について
(ア)商標権者は、「商標権者の業務は、日本においては送金業務が主たる業務である、他方、申立人等は、会計監査サービスや財政評価、金融財政調査を法人に対して行なっているから、我が国における現実の取引において、本件商標と両引用商標とが用いられるサービスの需要者層は、明らかに異なっている。」旨主張している。
しかしながら、「送金事務の取扱い」と「財政の評価,金融に関する調査,財務に関する調査」は、いずれも銀行等が行う業務であり、業種が同じであって、同一の事業者が提供し得るものである。
また、商標権者が、意見書において述べているように、商標権者は、ユニバーサルバンク(商業銀行業務・投資銀行業務・証券業務のほか、リース・ファクタリングなどいっさいの金融業務のできる銀行)としての業務を行なう資格を有するとすれば、「送金事務の取扱い」や「財政の評価,金融に関する調査,財務に関する調査」に限らず、本件商標の指定役務中の一切の金融業務を行うことができるはずである。
したがって、商標権者の主張は、採用することができない。
(イ)商標権者は、審決例等を挙げて、本件商標と引用商標1及び2とが非類似である旨、主張している。
しかしながら、商標権者が挙げる過去の審決例等は、対比する商標の構成態様等において本件商標とは異なるものであるばかりでなく、商標の類否の判断は、当該出願に係る商標と他人の登録商標との対比において、個別・具体的に判断すべきものであり、過去の審決例等の判断に拘束されることなく検討されるべきものである。
したがって、この点についての商標権者の主張も採用することができない。
オ まとめ
してみれば、本件商標は、引用商標1及び2と類似し、本件商標の指定役務中の「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定着物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,信用購入あっせん,送金・振込事務の取扱い,その他の銀行業務,投資,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引,外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券先渡取引・有価証券店頭指数等先渡取引・有価証券店頭オプション取引若しくは有価証券店頭指数等スワップ取引又はこれらの取引の媒介・取次ぎ若しくは代理,有価証券等精算取次ぎ,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,金融又は財務に関する情報の提供,金融又は財務に関する助言及び評価,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,保険に関する指導・助言及び情報の提供,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介」は、引用商標1及び2に係る指定役務と同一又は類似のものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
しかしながら、本件登録異議の申立てに係るその余の指定役務については、引用商標1及び2に係る指定商品及び指定役務と類似しないものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。

7 むすび
したがって、本件商標の指定役務中の「結論掲記の指定役務」についての登録は、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものとする。
また、本件登録異議の申立てに係るその余の指定役務については、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号に該当するものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
(1) 本件商標

(色彩については原本を参照。)


(2) 引用商標2



後記
(1)本件商標の指定役務
第36類「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定着物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,信用購入あっせん,送金・振込事務の取扱い,その他の銀行業務,投資,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引,外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券先渡取引・有価証券店頭指数等先渡取引・有価証券店頭オプション取引若しくは有価証券店頭指数等スワップ取引又はこれらの取引の媒介・取次ぎ若しくは代理,有価証券等精算取次ぎ,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,金融又は財務に関する情報の提供,金融又は財務に関する助言及び評価,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,保険に関する指導・助言及び情報の提供,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」

(2)引用商標1及び2の指定商品及び指定役務
第9類「Computer software; electronic publications.」
第16類「Printed matter; printed publications; newsletters; reports; forms; handbooks on the subject of computer software.」
第35類「Accountancy; forensic accountancy, including fraud investigation and research; internal and external auditing; book-keeping; tax research; tax preparation; consultancy and services rendered in the administrative and secretarial field; business investigations; business investigations and business consultancy relating to insolvent companies; formation of companies; providing commercial and commercial business information, whether or not on-line; cost price analysis and consultancy related thereto; providing temporary management to an organization (interim management); business management assistance and consultancy; market research, market studies and market analysis; business management and organization consultancy; business consultancy for the benefit of companies; consultancy in the field of marketing and business efficiency; consultancy relating to mergers, acquisitions, franchising, company sales and winding-up; consultancy in the field of risk management and business process management; personnel management, selection and recruitment; personnel management consultancy; outplacement of personnel; counselling in dismissal procedures; business management analysis or business consultancy; preparation, auditing or certification of financial statement.」
第36類「Fiscal assessments; consultancy relating to financial and fiscal matters; consultancy relating to credit and debtor control; actuarial services and consultancy related thereto; financial and fiscal research; consultancy in the field of investments and subsidies; consultancy in the field of (obtaining) financing and loans; consultancy in the field of company financing; real estate appraisal; real estate management; consultancy in the field of insurance and risk management; pension fund administration and management; management of pension funds; debt collection services; investment trust services; providing (whether or not online) information in the field of insurance, financial matters and fiscal matters; tax consultancy; tax agency.」
第41類「Education, courses and training in the field of accountancy, book-keeping, financial and fiscal management, personnel and business management; arranging and conducting conferences, seminars, symposiums and workshops; editing and publishing in the field of accountancy, book-keeping, financial and fiscal management, personnel and business management.」
第42類「Consultancy on the subject of information technology, computer hardware and computer software; system analysis; computer programming and programming for data processing; providing information on legal services, agencies or supports for legal procedures relating to lawsuits or other legal issues outside Japan, legal consultancy, legal research; consultancy in the field of tax law; consultancy and services rendered by a notary public; arbitration services; consultancy regarding rules and legislation in the field of environment; quality control, quality research; scientific research; translation.」


異議決定日 2011-08-31 
出願番号 商願2009-91044(T2009-91044) 
審決分類 T 1 651・ 262- ZC (X36)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 津金 純子 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 井出 英一郎
渡邉 健司
登録日 2010-03-19 
登録番号 商標登録第5310533号(T5310533) 
権利者 バンコ デ オロ ユニバンク インコーポレイテッド
商標の称呼 ビイデイオオバンコデオロ、ビイデイオオ、バンコデオロ、バンコ、デオロ、オロ、オオアアルオオ 
代理人 北口 貴大 
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 
代理人 城山 康文 
代理人 岩瀬 吉和 

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