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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X42
管理番号 1272511 
審判番号 取消2012-300182 
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2012-03-07 
確定日 2013-03-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第5116611号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5116611号商標に係る第42類「電子計算機用プログラムの提供」については,その登録は取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5116611号商標(以下「本件商標」という。)は,「ダイム」の文字を標準文字で書してなり,平成19年10月30日に登録出願,第35類及び第40類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務並びに第42類「デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機用プログラムの提供」を指定役務として,平成20年3月7日に設定登録されたものである。

第2 本件審判請求後の手続の経緯
平成24年 3月 7日 審判請求
平成24年 3月26日 予告登録
平成24年 6月16日 答弁書
平成24年 7月23日 弁ばく書
平成24年10月11日 審尋
平成24年10月30日 回答書(被請求人)
平成24年11月27日 審尋

第3 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求めると申し立て,その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べた。
1 請求の理由
本件商標は,その指定役務中の「第42類 電子計算機用プログラムの提供」について,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていないから,その登録は,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に登録商標「ダイム」について,いわゆるASP(アプリケーションサービスプロバイダー)として「電子計算機用プログラムの提供」を行っている旨主張する。
また,被請求人は,乙第1号証は,商標権者が顧客に対して提供しているASPサービスのウェブサイトのコピーであり,乙第2号証によると,このサービスは,「IDやパスワードの発行された顧客ユーザーからの依頼に応じてデザイナー(スタッフユーザー)がデザインを作成し,そのスタッフユーザーがサーバー装置にアップデートし,そのサーバー装置で顧客ユーザーからの閲覧や校正などを受け付けられるようにして,最終的にカタログやパンフレットとして印刷できるようにしたもの」であり,印刷やDTPに関する企画・デザイン・組版といった工程,いわゆるプリプレスにおいて,顧客ユーザーとスタッフユーザーを仲介していると主張する。
しかし,乙第2号証(トレーニングマニュアル)中には,商標権者の名称が全く表示されておらず,乙第2号証によって,商標権者が「電子計算機用プログラムの提供」を行っている事実は全く証明されていない。むしろ,これから,「Kodak(コダック株式会社,以下,社名をいう場合は,「コダック社」という。)」が「InSite Prepress Portal」なる電子計算機用プログラムの提供を行っている事実は認められる。
つまり,乙第2号証には,本件商標又は「株式会社ダイム」の表記が認められず,その表紙には「InSite Prepress Portal(Version6.0)」なる商標と,提供者であるコダック社を表す「Kodak」の文字が表示されているのみであり,商標権者が「電子計算機用プログラムの提供」を行っている事実は全くない。
以上のように,「InSite Prepress Portal」は,コダック社が提供しているサービスであることにかんがみると,乙第1号証の画面は,商標権者がコダック社から「InSite Prepress Portal」なる「電子計算機用プログラム」の提供を受けて,コダック社のASPサービスを利用している利用者の画面にすぎないと考えるのが合理的であり,乙第1号証の両面右上方に表示された商標権者の名称は,「InSite Prepress Portal」サービスの利用者名が表示されているにすぎないことは明らかである。
このように,乙第1号証は,商標権者がコダック社から「電子計算機用プログラム」の提供を受けて,コダック社の電子計算機用プラグラムを使用しているにすぎず,これによって,商標権者が「電子計算機用プログラム」の提供に係る役務について本件商標の使用を行っているとは認められないことは明らかである。
(2)この点,被請求人は,乙第1号証により商標権者が,この画面に表示された「顧客」に対してASPサービスを提供していると主張する。
しかし,商標権者とこれら顧客との間で,「電子計算機用プログラム」の提供を行っている事実を示す契約書などの証拠などは全く提出されておらず,かかる事実の証明は全く行われていない。
したがって,乙第1号証の画面のみをもってそのような事実を認めることはできず,被請求人の主張は明らかに失当である。
(3)以上のことから,被請求人がASPとして提供していると主張するサービスは,実際にはコダック社が「InSite Prepress Portal(Version6.0)」という商標で提供しているものであり,商標権者は,かかるASPサービスを利用して顧客にデザインを提供する場として,コダック社の「InSite Prepress Portal(Version6.0)」を利用しているにすぎないことは明らかである。
(4)したがって,乙第1号証及び乙第2号証は,本件審判の請求の登録前3年以内に,請求に係る指定役務について,商標権者が本件商標を使用している事実を証明していない。

第4 被請求人の主張
被請求人は,「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し,その理由を次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
1 答弁書
(1)使用の事実
以下のとおり,商標権者は,本件請求に係る指定役務に関して,2008年(平成20年)4月ころから現在に至るまで,本件商標を,いわゆるASPとして使用している。
ア 乙第1号証は,そのサービスを実施している事実を示すウェブサイトを印刷したものであり,乙第2号証は,そのシステムの仕様書である。
なお,登録商標は「ダイム」であるのに対して,乙第1号証では,「株式会社ダイム」と記載されているという点で相違するが,「株式会社」の文字は,法人の種類を示すものであって,これらの文字自体では識別標識としての機能を果たし得ないものであるため,「ダイム」の文字からなる本件商標の本質的機能は損なわれておらず,実質的に「ダイム」を使用しているものである。このことは,過去の取消審判においても同様の判断がされている(取消2002-30131,取消2003-30508等)。
イ 商標権者が行っているサービスの概要を説明すると,乙第1号証や乙第2号証に記載されるサービスは,IDやパスワードの発行された顧客ユーザーからの依頼に応じてデザイナー(スタッフユーザー)がデザインを作成し,そのスタッフユーザーがサーバー装置にアップデートし,そのサーバー装置で顧客ユーザーからの閲覧や校正などを受け付けられるようにして,最終的にカタログやパンフレットとして印刷できるようにしたものである(乙2の3頁?9頁参照)。このサービスの具体的仕様については,乙第2号証に記載されている。なお,乙第2号証は,本件審判の請求の登録前3年以内である2010年(平成22年)11月12日に作成されたものであり,現在でも使用されているものである。
このサービスの内容について詳述すると,次のような処理を行っている。
(ア)ログイン・ログアウト
当該サーバー装置は,管理者(Administrator)の「ユーザー名」や「パスワード」を管理し,Administratorによって入力されたそれらの情報を照合することによってログインを許可する。
(イ)スタッフユーザー
当該サーバー装置は,デザインなどを作成してアップデートするスタッフユーザーのユーザー名やパスワードを管理し,スタッフユーザーから入力されたそれらの情報を照合することによってログインを許可する。
(ウ)顧客
当該サーバー装置は,ユーザーである顧客の情報やジョブに関する情報の入力を受け付ける。
(エ)ジョブ(乙2)
当該サーバー装置は,作成されたデザインのアップデート(48頁など)や,ファイルのダウンロード(54頁など),Jobs View(65頁など)などの処理を行っている(45頁?74頁)。
(オ)顧客ユーザー作業(乙2)
当該サーバー装置は,ログインされた顧客ユーザー(77頁)による表示確認作業(78頁)や校正作業(79頁,97頁「Smart Review」?)のアップロード処理(79頁など)などの受け付けを行っている。
(カ)Smart Review(乙2)
当該サーバー装置は,「Smart Review」という名称のもと,表示されたページの確認・承認・却下などの校正作業や,変更前と変更後のページ比較などの作業に関するプログラムを提供している(97頁?)。具体的には,顧客ユーザーに校正作業を簡単に行えるようにするためのプログラムとして,「チャット」のプログラムの提供(106頁?109頁)や,校正前後の画像の差分処理(112頁),校正作業の完了した「異なる名前」のファイルの比較表示(113頁など)など多種にわたるプログラムをASPとして提供している。
ウ また,このマニュアルに基づく使用の事実を示すものとして,乙第1号証にサービスの内容と日付を記したページを示す。乙第1号証の1頁の「ジョブの作成」と「顧客」は,その「顧客」からの要求に応じて作成されたデザインに関するジョブの名前である。なお,「ジョブの作成」及び「顧客」に関しては秘密保持の関係上塗りつぶした。また,「作成日時」は,最終的にデザインの内容が確定して印刷可能となった状態の日付を意味し,「校正が必要なページ」は顧客ユーザーからの要求に応じて校正すべきページを意味する。ここで「校正が必要なページ」が「0」とは,校正が必要ないことを意味する。また,「修正待ちのページ」(乙1では一部のみ表示)は「校正が必要なページ」に対して修正作業を待機しているページを意味する。この「修正待ちのページ」についても「0」という値は,修正がすべて完了していることを意味する。このようなデータのもと,乙第1号証の2頁1行目などに記載されているように「10/05/2011 5:52:11PM」という作成日時などにおいて当該サービスであるプログラムの提供などを行っていたことが分かる。
(2)むすび
以上のように,商標権者は,本件審判の請求の登録前3年以内において,本件商標を,いわゆるASPとして「電子計算機用プログラムの提供」に使用していた。
2 平成24年10月11日付け審尋に対する回答書
商標権者である被請求人は,Kodakが市販している商品受発注用プログラムを購入し,これを用いてインターネットを用いてASPの事業を行っている。すなわち,被請求人の顧客(ユーザー)は,乙第1号証の黒塗りされた「○○株式会社」であり,コダック社は顧客ではなく,当該ソフトの販売元である。乙第2号証は,乙第1号証のソフトの内容を示すための仕様書である。
また,株式会社ダイム(以下「使用標章」という。)は,先の取消審判で判断されているように,被請求人の役務を表示するための自他役務の識別標識と認識されることもあるといえ,自他役務を識別するという機能からすれば,使用標章の表示と本件商標とは,社会通念上同一の商標と理解されるべきものである。

第5 審尋
当合議体は,当事者双方に以下の審尋を発し,意見を求めた。
1 平成24年10月11日付け審尋(抜粋)
乙第1号証は,商標権者が作成した文書であると推認されるが,これには,「InSite Prepress Portal/Version6.0」に関する記載やコダック社が顧客であるなどの記載はなく,これからは,商標権者が本件請求に係る役務を行っていると推認することはできない。 また,乙第2号証のトレーニングマニュアルには,商標権者に関する記載はなく「Kodak」の文字が表示されているだけである。仮に,ASPとして提供する役務のトレーニングマニュアル等にユーザーの名称のみが表示される場合があり得るとしても,「Kodak」(コダック社)と商標権者との関係を裏付ける証拠の提出はなく,乙第2号証をもってしても,商標権者が本件請求に係る役務を行っているものと推認することはできない。
2 平成24年11月27日付け審尋(抜粋)
被請求人の回答書により,乙第2号証がコダック社の販売に係る商品受発注用のアプリケーションソフトウエアであること,被請求人の行うという役務が,被請求人が当該コダック社のソフトウエアを購入し,これをASPとしてユーザーに提供していることが確認できた。
しかしながら,乙第1号証は,被請求人が本件商標を使用し,前記ソフトウエアをPC上でASPとしてユーザーに提供していることの証明になり得ない。よって,被請求人が本件商標を役務に使用している具体的な事実を証する書面を提出すると共に,その使用が商標法第2条第3項各号のいずれに該当するのかを釈明されたい。

第6 当審の判断
1 乙第1号証及び乙第2号証及び当事者の主張によれば,以下の事実を認めることができる。
(1)乙第1号証は,答弁書の「7.証拠方法」によれば,「『InSite』の作業データを示すサイトのコピー」との記載がある2頁からなる文書である。
そして,その1頁の右上には,「株式会社ダイム」と記載されている。また,「InSite http://www.skyrip.jp」の下には,「ジョブ」の文字が記載され,「ジョブの作成」の一覧表には,「名前」,「顧客」,「作成日時」,「校正が必要なページ」,「修正待ちのページ」(当該「ページ」の文字部分は,印刷がされていないが,該文字部分が「ページ」であることについては,当事者間に争いがない。)の各項目に分かれているところ,「名前」及び「顧客」の各欄は,すべて黒く塗りつぶされており(ただし,「顧客」欄の「株式会社」の文字部分のみは表示されている。),「作成日時」欄には,1頁上段から2頁下段にかけて,「04/26/2012」から「06/03/2009」までの日付が記載されている。
(2)乙第2号証は,答弁書の「7.証拠方法」によれば,「『InSite Storefront』のトレーニングマニュアル抜粋」との記載がある文書である。
そして,乙第2号証の記載によれば,「InSite Prepress Portal/Version6.0」は,あらかじめID及びパスワードが発行されている顧客からの依頼に応じて,デザイン事務所等でデザインを作成し,デザイン事務所等は作成したデザインをサーバーにアップデートし,そのサーバーを介しSmart Review機能を使用して,デザイン事務所やクライアント(広告主)等がデザインの閲覧,校正,修正等をするができ,校了したデザインは印刷会社を介して,プリントアウトされることを目的としたアプリケーションソフトウエアと認めることができる。
これに対し,被請求人は,回答書において,「InSite Prepress Portal/Version6.0」は,コダック社の市販している商品受発注用のプログラムであって,被請求人はこれを購入しAPSの事業を行っている。また,乙第2号証は,乙第1号証のソフトの内容を示す仕様書である旨主張している。
2 以上の認定事実及び当事者の主張によれば,乙第2号証の「InSite Prepress Portal/Version6.0」は,コダック社の販売に係る商品受発注用のアプリケーションソフトウエアであり,被請求人は,このコダック社のソフトウエアを購入し,これをASPとしてユーザーに提供していることが推認し得る。
そして,「InSite Prepress Portal/Version6.0」なるアプリケーションソフトウエアをPC上でASPとしてユーザーに提供する行為は,本件の請求に係る指定役務「電子計算機用プログラムの提供」に含まれるものと認めることができる(当事者間に争いのない事実)。
しかしながら,乙第1号証は,その体裁からして,被請求人作成の顧客管理のためのデータ(顧客管理簿)といえるものであって,これをもって,被請求人が本件商標を使用し,「InSite Prepress Portal/Version6.0」をPC上でASPとしてユーザーに提供していることの証明になり得ない。すなわち,これからは,被請求人が,本件商標の表示の下で,前記役務を他人に提供したことの具体的な事実を確認することはできない。
これに対し,当合議体は,平成24年11月27日付け審尋により,被請求人が本件商標を使用し,「InSite Prepress Portal/Version6.0」をPC上でASPとしてユーザーに提供していることの具体的な事実を証する書面の提出と,その使用が商標法第2条第3項各号のいずれに該当するかについての釈明を求めたが,被請求人からは,何らの書面の提出も釈明もなかった。
したがって,乙第1号証及び乙第2号証をもってしては,商標権者が,本件審判の請求の登録(平成24年3月26日)前3年以内に,請求に係る指定役務について登録商標を使用していたと認めることはできない。
3 むすび
以上のとおりであるから,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが請求に係る指定役務のいずれかについて,本件商標の使用をしていたことを証明し得なかったのみならず,使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていないものであるから,本件商標の登録は,その指定役務中の「第42類 電子計算機用プログラムの提供」について,商標法第50条第1項の規定に基づき,取り消すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2013-01-16 
結審通知日 2013-01-18 
審決日 2013-01-29 
出願番号 商願2007-110978(T2007-110978) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X42)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 亨子 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 鈴木 修
小川 きみえ
登録日 2008-03-07 
登録番号 商標登録第5116611号(T5116611) 
商標の称呼 ダイム 
代理人 久留 徹 

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