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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 X25 審判 全部申立て 登録を維持 X25 審判 全部申立て 登録を維持 X25 審判 全部申立て 登録を維持 X25 審判 全部申立て 登録を維持 X25 審判 全部申立て 登録を維持 X25 |
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管理番号 | 1269686 |
異議申立番号 | 異議2012-900118 |
総通号数 | 159 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2013-03-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2012-05-07 |
確定日 | 2013-01-30 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5468413号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5468413号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5468413号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成23年9月6日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同24年1月13日に登録査定、同年2月3日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は、以下の(1)ないし(5)のとおりであり(以下、これらを一括して「引用商標」という。)、その商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。 (1)登録第4346060号商標は、別掲(2)のとおりの構成からなり、平成6年4月4日に登録出願、第25類「被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同11年12月17日に設定登録され、その後、同21年8月4日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。 (2)登録第4409583号商標は、「F1 Cafe」(末尾の「e」には、アクサン-テギュが付されている。)の文字を横書きしてなり、平成9年7月4日に登録出願、第25類「ジャケット,スウェットパンツ,スウェットシャツ,スーツ,スポーツシャツ,その他のワイシャツ類,セーター類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,帽子,その他の被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,長靴,短靴,その他の履物,仮装用衣服,ヘッドバンド,リストバンド,その他の運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同12年8月18日に設定登録され、その後、同22年3月2日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。 (3)登録第4409584号商標は、「F1 Restaurants」の文字を標準文字で表してなり、平成9年7月4日に登録出願、第25類「ジャケット,スウェットパンツ,スウェットシャツ,スーツ,スポーツシャツ,その他のワイシャツ類,セーター類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,帽子,その他の被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,長靴,短靴,その他の履物,仮装用衣服,ヘッドバンド,リストバンド,その他の運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同12年8月18日に設定登録され、その後、同22年3月2日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。 (4)登録第4409585号商標は、「F1 Pit Stop Cafe」(末尾の「e」には、アクサン-テギュが付されている。)の文字を横書きしてなり、平成9年7月4日に登録出願、第25類「ジャケット,スウェットパンツ,スウエットシャツ,スーツ,スポーツシャッツ,その他のワイシャツ類,セーター類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,帽子,その他の被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,長靴,短靴,その他の履物,仮装用衣服,ヘッドバンド,リストバンド,その他の運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同12年8月18日に設定登録され、その後、同22年3月2日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。 (5)登録第4688587号商標は、別掲(3)のとおりの構成からなり、平成14年5月20日に登録出願、第14類「身飾品,貴金属製のがま口及び財布,宝玉及びその模造品,貴金属製コンパクト」、第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ」、第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」及び第26類「腕止め,衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,頭飾品,ボタン類,造花(「造花の花輪」を除く。),つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアカーラー(電気式のものを除く。)」を指定商品として、同15年7月4日に設定登録されたものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第15号、同項第10号、同項第11号、同項第19号、同項第7号及び同項第8号に該当するから、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第106号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)商標法第4条第1項第15号について ア 他人(申立人)の表示の周知著名性の程度 申立人「フォーミュラ ワン ライセンシング ベスローテン フェンノートシャップ(Formula One Licensing B.V.)」は、F1グループに属する法人のひとつとして、世界的に著名な商標「F1」、「Formula 1」等に関する商標権をはじめ、多数の知的財産権を保有し、それらのライセンス許諾を業務としており、日本においても「F1」の文字を含む登録商標を多数保有している。 また、「F1」は、国際自動車連盟が主管するモーター・レースの中で最高峰のレースとされるものの名称であって、「Formula 1」と同義であり、これが世界で最も有名なモーター・レースである。 そして、「F1」は、これまで多数の審決・決定において、周知・著名性が認定されている。さらに、広辞苑等の一般の国語辞典や、英和辞典、その他の事典にも、「F1」は、申立人グループが主催するモーター・レースを意味する言葉として載録されている。 したがって、「F1」は、日本においては、公衆がその文字や音に接すれば、必ず申立人グループ主催に係るモーター・レースを想起するといっても過言ではない程に広く認識されるに至っており、世界的にみても「F1」の文字は、申立人の業務を示す以外には他に存在しない唯一無二の著名商標と評せるものである。 イ 本件商標と他人(申立人)の表示との類似性の程度 本件商標は、別掲(1)のとおり、F1レースと極めて関連性が強く、印象上、容易にF1レース又はF1チームを連想させる要素、すなわち、(a)月桂樹のデザイン、(b)フェラーリ・チームやミナルディ・チームのチーム・ロゴに酷似する盾形のデザインや動物のデザイン、(c)F1チームの多くが国籍としているイタリア国の国旗色を連想させる縦縞模様のデザイン、(d)F1チームの略称としてとらえられ得る「BF1」の文字を有しており、全体としてみたときに、あたかも申立人グループと組織上又は経済上関連する者の商標であるかのように誤認されるところ、その構成中「F1」の部分が独立して、需要者及び取引者(とりわけ、モーター・スポーツ・ファン)に対して、支配的な印象を与えるとともに、その注意を強く惹く部分となることは明らかである。 他方、申立人は、「F1」を公式ロゴの態様(現在の公式ロゴは、別掲(2)のとおりである。)で使用したり、標準的な書体で使用したり、様々な態様で使用している。 したがって、本件商標と申立人の使用に係る著名商標「F1」とは、称呼及び観念上明らかに類似するものである。 ウ 他人(申立人)の表示の独創性の程度 上記アのとおり、「F1」という文字は、申立人グループ主催のモーター・レースを指す以外には他に存在しない世界で唯一無二の商標であるから、その意味において、「F1」の独自性は極めて強いと評することができる。 エ 本件商標の指定商品等と他人(申立人)の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性 申立人グループによって正規に許諾されているライセンス商品の種類は非常に多岐にわたるが、アパレル関連商品は、ライセンス商品の中でも最も種類及び数が多く、人気が高いものである。 また、「F1」を貼付した関連商品は、F1世界選手権に関するものだけでなく、F1レースに参加する各チームが申立人からの許諾を得て、自己のチーム・ロゴを付し、販売しているものも多い。 オ フリーライド又はダイリューションの意図 申立人の使用に係る「F1」は、申立人グループが主催するモーター・レースを表すものとして、日本はもとより世界中で長年著名なものであるから、本件商標権者が当該著名商標の存在について知らないはずがなく、そして、その信用にただ乗りするという疑いない意図があったことは、本件商標が「F1」の文字を顕著に含んでおり、しかも、その周りに偶然という言い訳では到底説明できないほど多くのF1レースに強く関連する要素、すなわち「月桂樹」、「イタリア国旗の縞模様」、「獅子図案」などを配して、あたかもF1チームのチーム・ロゴのような構成を採っているという観点から認められるところである。 したがって、本件商標は、「F1」のブランド・イメージを利用し、その信用にただ乗りすることを目的として採択されたものであることは火を見るより明らかであるから、商標法第4条第1項第15号に規定される「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に該当する。 (2)商標法第4条第1項第10号について 申立人は、上述のとおり、著名商標「F1」を、公式ロゴ又は標準的な字体の態様で、アパレル関連の商品、例えばTシャツ、帽子等について使用している。 そして、本件商標は、当該著名商標と類似するものであって、その使用に係る商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第11号について 申立人は、「F1」の文字を顕著に含む前記2の引用商標を所有している。 そして、本件商標は、引用商標と類似するものであって、引用商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (4)商標法第4条第1項第19号について 本件商標は、申立人の業務に係る商品・役務を表示するものとして、日本国内における需要者の間に広く認識されている「F1」と類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。 (5)商標法第4条第1項第7号について 上述のとおり、本件商標は、不正の目的、すなわち申立人の使用に係る著名商標の名声等に便乗する、あるいはそれを稀釈化する意図をもって登録出願されたことが明らかである。 かかる商標の登録を許し又その使用を許容することは、公正な取引秩序を乱すものであって、ひいては商標法の精神に反し、商取引の秩序に反するものといわざるを得ない。 したがって、本件商標は、公序良俗を害する商標であって、商標法第4条第1項第7号に該当する。 (6)商標法第4条第1項第8号について 「F1」は、申立人又はそのグループの名称の著名な略称である。 しかして、上述のとおり、F1チームの略称として、アルファベット1又は2文字と「F1」を組み合わせたものが頻繁に使用されているという実情があるところ、本件商標の構成中の「BF1」は、商標全体の構成から、あたかもF1チームのチーム・ロゴのようにとらえられるものであって、その中の「(B)F1」は、申立人又はそのグループの著名な略称であるととらえられるものである。 したがって、本件商標は、他人、すなわち申立人又はそのグループの名称の著名な略称を含む商標であり、申立人が、本件商標権者に対して、「F1」を含む本件商標の登録ないし使用について承諾したという事実はないから、商標法第4条第1項第8号に該当する。 4 当審の判断 (1)自動車レース「F1」の著名性について ア 「F1/F-1(エフワン)」は、「Formula One/1(フォーミュラワン)」と同義語であって、国際自動車連盟(略称「FIA」)が規定する競走用自動車の最上位級、ないし1950(昭和25)年から継続的に開催されているモータースポーツの頂点に立つ自動車レースを指称するものであって、このレースは、FIAの中のモータースポーツ関係を取り仕切るFISA(国際自動車スポーツ連盟)が統括し、FOCA(F1の製作者協会)の影響も大きいとされている。そして、我が国においても、富士スピードウェイや鈴鹿サーキットを舞台に開催され、テレビ放送、ビデオ、あるいは雑誌、書籍等を通じて宣伝されていたということができる。(以上、甲第14号証ないし甲第34号証) してみれば、本件商標の指定商品に係る一般需要者は、F1の自動車レースの主催者ないし運営者までは知らない場合が多いとしても、「F1(エフワン)」は、競走用自動車の規定や自動車レースの名称のみにとどまらず、自動車レースの開催、運営等の役務の商標としても、著名性を獲得していると認めて差し支えないものである。 なお、別掲(2)の標章がF1レースに関する写真や関連グッズにおいて散見されるが、これがF1レースに係る現在の公式ロゴであるとする事実は見いだせない。 イ 申立人の提出に係る証拠(甲第37号証、甲第38号証及び甲第42号証ないし甲第48号証)からは、申立人がFIAないしFISAと「グループ」を形成していることや、「F1/F-1(エフワン)」や「Formula One/1(フォーミュラワン)」に関する標章について、我が国における商品化事業を独占的に行う権限をFIAないしFISAから付与されていることを裏付ける証拠(承諾書)は提出されていない。 また、株式会社フジテレビジョンを通じての平成4年4月頃から同8年12月頃までの販売(契約)期間とするテレビゲーム関連商品(甲第42号証)や、取引書類と思しき「F1公式グッズ一覧」(甲第43号証の1及び2)、「F1公式グッズ紹介記事」(甲第43号証の3)、「F1公式とするキーホルダー、ペン、IDホルダー、ジャンパー、バッグ、ステッカー、キャップ、プログラム、DVD及びゲームソフト」の各写真(甲第43号証の4ないし14)、「F1公式アパレルのカタログ」(甲第44号証の1及び2)、「F1公式キャップカタログ」(甲第45号証)及び「F1公式グッズの写真」(甲第46号証)からは、F1関連グッズとしての「F1」や別掲(2)の商標と同一の構成からなる標章の使用は認められるとしても、これらは、発行者・撮影者・掲載日が不明なもの、外国語で作成されたもの、その取引や頒布状況などが定かでないものが多く含まれているばかりでなく、申立人との関連を直接的に示すものは見いだせない。加えて、「F1」が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、雑誌、新聞、テレビCMなどに使用され、商品の広告宣伝を継続的に行った事実を証する証拠も見当たらない。 なお、ライセンス商品とする雑誌の裏表紙(甲第37号証及び甲第38号証)や通販サイトのウェブページ(甲第47号証及び甲第48号証)は、いずれも本件商標の登録出願後に係る証拠である。 そうすると、上記証拠のほか、申立人提出に係る甲各号証からは、「F1」がFIA主催に係る自動車レースを想起させる場合があるとしても、申立人の業務に係る商品を表示する商標として、ないしその著名な略称として、我が国の需要者等に広く認識されていたとするのは困難である。 (2)本件商標と「F1」標章の類否について 本件商標の構成は、別掲(1)のとおり、月桂樹の枝葉一対の内側に、王冠を上部に配した左から緑、地色、赤、地色及び青からなる縞模様の盾と盾状の枠があり、その中にステムの一部を切り取った欧文字と数字から構成される「BF1」と、その下に王冠をかぶった獅子をシルエット風に描いてなるものである。 そして、その構成中のやや図案化された「BF1」の文字及び数字部分は、まとまりよく一体的に表されているものであり、この文字及び数字から生ずると認められる「ビーエフワン」又は「ビーエフイチ」の称呼は、よどみなく称呼され、かつ、その綴りからは特定の意味合いが生じることのない一種の造語と認識されるとみるのが相当である。 なお、申立人は、本件商標の図形要素である月桂樹や盾形、動物及びイタリア国の国旗色を連想させる縦縞模様の各デザインからは、F1レース又はF1チームを連想させるものである旨述べているが、Jリーグエンブレムや各国の軍隊などの紋章にも、月桂樹や盾形、獅子などの図形要素が使用されているところであり、当該図形要素がモータースポーツに特化したものということはできない。また、アルファベット1又は2文字と「F1」を組み合わせたものが、F1チームの略称として頻繁に使用されている旨述べているが(甲第102号証ないし甲第105号証)、わずか4チームの使用例であり、まして「SAF1」及び「HRF1」については、現在において使用されている略称ではなく、そのほかの「MF1」及び「RF1」が特定チームの略称として広く認識されていることを裏付ける証拠は見いだせないし、「BF1」の文字部分がF1チームの略称のように誤認されるおそれがあるということはできない。 そうすると、本件商標の構成中の「BF1」の文字及び数字部分は、一体不可分に表したものと認識されるものであるから、その構成中の「F1」の文字及び数字部分のみが独立して把握、認識されるものではなく、これより直ちに国際的な自動車レースの名称等を含むものということはできない。また、本件商標の構成中の「BF1」の文字及び数字部分と「F1」標章とは、その外観において明らかに区別でき、それぞれから生じる称呼「ビーエフワン」又は「ビーエフイチ」と「エフワン」とは明らかに相違し、相紛れるおそれはない。そして、観念においては比較することができない。 したがって、本件商標と「F1」標章とは、非類似である。 (3)商標法第4条第1項第15号について 本件商標と「F1」標章とは、たとえ「F1(エフワン)」が自動車レースの名称や、その開催、運営等の役務を示す商標として、本件商標の登録出願時において、著名性を既に獲得しているとしても、上記(2)のとおり、両者は非類似のものであって、十分に区別できる別個のものといえるものであり、ほかに商品の出所について混同を生ずるおそれがあるとすべき特段の事情も見いだせないものである。 してみれば、本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する需要者は、該商品が国際自動車連盟(FIA)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように連想、想起することはなく、まして、申立人の業務に係る商品とその出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。 なお、申立人は、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当すると主張する根拠の一つとして、過去の登録異議の決定(甲第50号証ないし甲第60号証)を挙げるが、本件商標が申立人の主張する規定に該当するか否かは、本件商標の全体の構成に基づいて個別具体的に検討、判断すべきものであるから、本件商標とはその構成、称呼等を異にする上記過去の事例に係る商標についての判断が、本件における判断を左右するものではない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものとはいえない。 (4)商標法第4条第1項第10号について 本件商標と「F1」標章とは、上記(2)のとおり、非類似のものであって、十分に区別できる別個のものといえるから、「F1(エフワン)」が、自動車レースの開催、運営等の役務を示す商標として、その需要者等において広く認識され、かつ、本件商標の指定商品とTシャツ、ジャンパー、キャップ等のいわゆるF1レース関連グッズに係る商品とが同一又は類似するものであるとしても、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当するものとはいえない。 なお、上記(1)のとおり、申立人の提出に係る証拠をもってしては、本件商標の登録出願時において、「F1(エフワン)」標章が申立人の業務に係る商品を表示する商標として、需要者に広く認識されていたものとは認められない。 (5)商標法第4条第1項第11号について 前記2又は別掲(2)若しくは(3)のとおりの構成からなる引用商標が、申立人が述べるように、「F1」の文字を顕著に含むものであって、仮に「F1」ないし図案化された「F1」が独立しても識別標識として機能するとしても、本件商標と「F1」標章とは、上記(2)のとおり、非類似のものであって、十分に区別できる別個のものといえるものである。 してみれば、本件商標と引用商標とは、上記「F1」標章との類否同様に、その外観、称呼及び観念のいずれからみても相紛れるおそれはないから、両商標は、非類似の商標といわなければならない。 したがって、本件商標は、その指定商品が引用商標の指定商品と同一又は類似するものであるとしても、商標法第4条第1項第11号に該当するものとはいえない。 (6)商標法第4条第1項第19号について 本件商標と「F1」標章とは、上記(2)のとおり、相紛れるおそれのない非類似のものである。また、申立人の提出に係る証拠のいずれを見ても、商標権者が本件商標を不正の利益を得る又は他人の著名商標に蓄積された信用若しくは名声にフリーライドするなどの不正の目的をもって使用すると認めるに足る事実は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものとはいえない。 (7)商標法第4条第1項第7号について 申立人は、同人の使用に係る著名商標の名声等に便乗するあるいはそれを稀釈化する意図をもって出願されたことが明らかである旨述べているが、申立人の提出に係る甲各号証からは、「F1」がFIA主催に係る自動車レースを想起させる場合があるとしても、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたとするのは困難であること、また、仮に商標権者が当該自動車レースの存在を認識していたとしても、本件商標と「F1(エフワン)」標章とは、上記(2)のとおり、互いに紛れるおそれのない非類似のものであること、当該自動車レースの信用を不当に利用しようとするものということはできないことから、国際信義に反するものではない。 してみれば、商標権者が不正の利益を得るために使用する目的で本件商標を登録出願し、商標登録を受けたものということはできないから、かかる行為が、直ちに公正な取引秩序を乱すものであって、ひいては商標法の精神に反し、商取引の秩序に反するものともいえない。 その他、本件商標が、不正な意図をもって登録出願されたものとして、その経緯において著しく社会的妥当性を欠くものがあるということもできない。 したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標といえないから、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。 (8)商標法第4条第1項第8号について 申立人は、「F1」は申立人又はそのグループの名称の著名な略称である旨述べているが、上記(1)のとおり、申立人の提出に係る証拠からは、「F1」が、その著名な略称として、本件商標の登録出願時に我が国の需要者に広く認識されていたと認めることはできない。また、申立人のグループの名称とは、いかなる組織を指称しているのか不明である。 そして、本件商標の構成中の「BF1」の文字及び数字は、外観、称呼及び観念のいずれからみても、構成全体をもって、一体不可分の商標を表したと認識されるとみるのが相当であるから、その構成中の「F1」の文字及び数字の部分のみが独立して把握、認識されるものではない。 してみれば、本件商標が申立人の著名な略称を含むものであるとする申立人の主張は、その前提を欠くものであり、採用することはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものとはいえない。 (9)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 (1)本件商標 (色彩については原本参照のこと) (2)引用登録第4346060号商標 (3)引用登録第4688587号商標 |
異議決定日 | 2013-01-21 |
出願番号 | 商願2011-64256(T2011-64256) |
審決分類 |
T
1
651・
25-
Y
(X25)
T 1 651・ 26- Y (X25) T 1 651・ 222- Y (X25) T 1 651・ 23- Y (X25) T 1 651・ 271- Y (X25) T 1 651・ 22- Y (X25) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 半田 正人 |
特許庁審判長 |
寺光 幸子 |
特許庁審判官 |
酒井 福造 田中 敬規 |
登録日 | 2012-02-03 |
登録番号 | 商標登録第5468413号(T5468413) |
権利者 | 王 淑堅 |
商標の称呼 | ビイエフワン、ビイエフイチ |
代理人 | 井滝 裕敬 |
代理人 | 松尾 和子 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 藤倉 大作 |