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審決分類 審判 一部申立て  登録を取消(申立全部取消) X11
審判 一部申立て  登録を取消(申立全部取消) X11
管理番号 1269682 
異議申立番号 異議2012-900153 
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2013-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2012-06-06 
確定日 2013-01-09 
異議申立件数
事件の表示 登録第5478485号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5478485号商標の指定商品中、第11類「家庭用電熱用品類」についての商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5478485号商標(以下「本件商標」という。)は、「まほうびん保温」の文字を標準文字で表してなり、平成23年8月17日に登録出願、第11類「暖冷房装置,冷凍機械器具,業務用加熱調理機械器具,業務用食器乾燥機,業務用食器消毒器,家庭用電熱用品類,加熱器,調理台,流し台,家庭用浄水器,化学物質を充てんした保温保冷具」を指定商品として、同24年3月16日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標の登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第14号証を提出した。
1 本件商標
本件商標は、「まほうびん保温」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「まほうびん」の文字は、これに続く「保温」の文字による連想により、一般に広く知られた「魔法瓶」を直ちに想起させるものである。
また、「魔法瓶」は、電気を使用することなく物理的構造をもって、長時間の保温機能を持たせた液体保温容器の一般的名称であって、該容器は、広く一般的に使用されているものである。
そうすると、本件商標は、「魔法瓶」を平仮名で表してなる「まほうびん」の文字と「保温」の文字とを結合してなるものと直ちに認識されるものであり、その構成全体からほぼ一義的に「魔法瓶(まほうびん)で保温する」との観念を生じるものである。
2 取引の実情
本件商標の指定商品中に含まれる「電気ポット(ジャーポットを含む。以下同じ。)」を取り扱う業界においては、近年、省エネルギーの観点から、まほうびん構造(内外二層の容器壁の間を真空にするか又は容器を真空断熱材にて包んだ構造)を採用し、通電を切った後でも保温状態を長く保つ機能を持たせた商品が広く普及してきているところ、該構造を採用する電気ポットについて、「まほうびん」、「魔法びん」、「まほうびん構造」等の語が「まほうびん構造を有する商品」であることを示すものとして使用されており、また、「まほうびん保温」、「まほうびんで保温」、「魔法びんのように保温」等の語が「まほうびん構造で電気を使わずに保温する」効能を表す表現として、電気ポットを取り扱う業界(取引者)において普通に使用され、需要者においても広く知られている事実がある(甲第3号証ないし甲第14号証)。
してみれば、本件商標をその指定商品中の「電気ポット」について使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品の品質及び効能を表示したものと認識するにとどまるから、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきであり、さらに、上記商品以外の「家庭用電熱用品類」について使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるというべきである。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、同法第43条の2第1号により、その指定商品中の「家庭用電熱用品類」について、登録を取り消されるべきものである。

第3 本件商標に対する取消理由
当審において、平成24年10月9日付けで商標権者に対し通知した取消理由は、要旨次のとおりである。
1 「まほうびん保温」の語について
(1)本件商標について
本件商標は、「まほうびん保温」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「まほうびん」の文字は、これに続く「保温」の文字による連想により、一般に広く知られた「魔法瓶」を直ちに想起させるものである。そして、「魔法瓶」の語は、「中に入れた液体の温度を長時間保つようにした瓶。内外二層のガラスまたはステンレスの間を真空にし、熱の伝導・対流・輻射の程度を少なくしたもの。」であり(甲第2号証)、これに続く「保温」の語も、「温度を保つこと」を意味するものとして、一般に広く知られているものであるから、「まほうびん保温」の文字からなる本件商標は、これに接する者をして、容易に「魔法瓶により温度を保つこと」程の意味を認識させるものである。
(2)「まほうびん保温」の語又はこれに関連する語の使用状況について
申立人の提出に係る甲各号証によれば、以下の事実が認められる。
ア 本件商標の商標権者発行のカタログ(甲第3号証ないし甲第6号証)
(ア)甲第3号証は、記載内容を2008年(平成20年)2月現在のものとする「タイガー総合カタログNo.60/2008spring&summer」(抜粋)であって、そのうちの商品「電気ポット」の紹介に係る15頁には、「電気で沸かしてまほうびんで保温。/省エネVE とく子さん」、「省エネVE保温は電気保温に高真空2重瓶での保温も併用した経済的な保温方式。VEはVacuum(真空)+Electric(電気)の略称です。」及び「※まほうびん保温とは・・・保温には電気を使わず、まほうびんの保温力で保温しますので、時間経過とともに冷めていきます。」の記載があり、同じく、16頁には、「高真空2重瓶(VEまほうびん構造)の容器は、通電を切っても保温できる頼もしい構造。※プラグを抜くと時間経過とともに冷めていきます。」、「自動的にヒーターをOFF/まほうびん保温に。」、「さらに使いやすくなった『まほうびん保温』コース/ワンボタンで簡単に選べます。」及び「6段階の保温温度の設定選択/熱湯だけではなく、お好みの湯温(98°C・90°C・85°C・80°C・75°C+まほうびん保温)に調節できるから、お料理の下ごしらえやコーヒー、お茶など、最適な湯温をお使いいただけます。」等の記載がある。
(イ)甲第4号証ないし甲第6号証は、それぞれ記載内容を、2009年(平成21年)2月現在のものとする「タイガー総合カタログNo.62/2009spring&summer」(抜粋)、2010年(平成22年)2月現在のものとする「タイガー総合カタログNo.64/2010spring&summer」(抜粋)、2011年(平成23年)2月現在のものとする「タイガー総合カタログNo.66/2011spring&summer」(抜粋)であって、そのいずれにおいても、甲第3号証における「まほうびん保温」の語等に係る記載内容と同旨の内容からなる記載がある。
イ 象印マホービン株式会社発行のカタログ(甲第7号証ないし甲第10号証)
(ア)甲第7号証は、作成日を平成20年2月とする「象印 総合カタログ/2008 No.90」(抜粋)であって、その2葉目の商品「電気ポット」の紹介に係る頁には、「スーパーVE構造で、もっと省エネ!/まほうびんの象印だから、保温と省エネの一挙両得!」、「省エネのひみつは『優れた断熱層』。/2時間後でも90°C以上!/VEまほうびん構造 高真空2重瓶/3枚のステンレスの壁でサンドイッチされた『真空断熱層』と『空気断熱層』の2つの層が逃げる熱を強力に抑えます。」の記載のほか、商品に備えられた保温温度表示部の拡大写真中に、「98」、「90」、「80」、「60 まほうびん」の表示があり、同じく、その3葉目及び4葉目の商品概要説明における保温設定の項目中には、「高温/98°C」、「自動節約/90°C」、「煎茶/80°C」、「省エネ/まほうびん」等の記載がある。
(イ)甲第8号証ないし甲第10号証は、それぞれ作成日を、平成21年2月とする「象印 総合カタログ/2009 No.95」(抜粋)、同22年1月とする「象印 総合カタログ/2010 No.101」(抜粋)、同23年2月とする「象印 総合カタログ/2011 No.106」(抜粋)であって、そのいずれにおいても、甲第7号証における「まほうびん」の語等に係る記載内容と同旨の内容からなる記載があるほか、「電気で沸かしてまほうびんで保温する/スーパーVE構造」、「VEまほうびん構造/高真空2重瓶/※VEとは真空保温と電気保温を併用した『Vacuum & Electric』の略です。」、「(まほうびん保温時は除く)」等の記載がある。
ウ 松下電器産業株式会社及びパナソニック株式会社発行のカタログ(甲第11号証ないし甲第14号証)
(ア)甲第11号証は、記載内容を2008年(平成20年)2月1日現在のものとする「National 2008/春 調理器具総合カタログ」(抜粋)であって、そのうちの商品「ジャーポット」の紹介に係る2頁には、「すっぽりVIP魔法びん/VIPとは真空断熱材(Vacuum Insulation Panel)の略語です。」、「真空断熱材の性能がさらにUP!/すっぽりVIP魔法びん/熱が逃げやすい上面と、内容器の側面を真空材ですっぽり包みこみ、魔法びんのように保温。」及び「コードを外してもお湯が出る!/自動充電コードレス出湯/湯沸かし中に自動充電するので、電池交換の手間が不要で、しかも経済的。『真空断熱材』の高い保温性で、沸騰後コードを外して約3時間後でも約90°Cを維持します。」等の記載がある。
(イ)甲第12号証は、記載内容を2009年(平成21年)2月1日現在のものとする「Panasonic 2009/春 調理器具総合カタログ」(抜粋)であって、そのうちの商品「ジャーポット」の紹介に係る4頁には、「省エネ大賞受賞の真空断熱材 U-Vacua(Ver.IV)/熱が逃げやすい上面と、内容器の側面を断熱材ですっぽり包みこみ、魔法びんのように保温します。」等の記載があり、また、甲第13号証及び甲第14号証は、それぞれ記載内容を、2010年(平成22年)6月1日現在のものとする「Panasonic 2010/夏 調理器具総合カタログ」(抜粋)、2011年(平成23年)1月4日現在のものとする「Panasonic 2011/春 調理器具総合カタログ」(抜粋)であって、そのいずれにおいても、甲第12号証における「魔法びんのように保温」の語等に係る記載内容と同旨の内容からなる記載がある。
エ 小括
以上認定した事実によれば、「電気ポット」は、従来、電気を使ってお湯を沸かし、かつ、お湯の保温時にも電気を使っていたところ、近年においては、省エネルギーの観点から、魔法瓶と同様の構造を採用することにより、電気を使わずに保温状態を長く保つ機能を有する商品が普及し始めており、そのような機能を有する商品であることを表すために、「まほうびんで保温」、「魔法びんのように保温」、「まほうびん保温」といった表示(語)が用いられているというのが取引の実情といえる。
そうとすると、「まほうびん保温」の語は、「家庭用電熱用品類」を取り扱う業界においては、「電気ポット」について、「魔法瓶と同様の構造により電熱によらずに保温すること」程の意味ないしそのような品質(機能)を有する商品であることを表したものとして認識され、使用されていると認められる。
2 本件商標の商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
「まほうびん保温」の文字からなる本件商標は、上述のとおり、その構成文字から容易に「魔法瓶により温度を保つこと」程の意味を認識させるものであり、また、「家庭用電熱用品類」を取り扱う業界においては、「電気ポット」について、該文字がその意味に照応する品質を有する商品であることを表したものとして認識され、使用されている実情にあることからすれば、本件商標をその指定商品中、「電気ポット」について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、これが商品の品質を表示してなるものと認識するにとどまるというべきである。
してみれば、本件商標は、「電気ポット」について使用するときは、商標法第3条第1項第3号に該当するものであり、また、本件商標をその指定商品中、上記商品以外の「家庭用電熱用品類」について使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当するものである。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものである。

第4 商標権者の意見
前記第3の取消理由に対して、商標権者は、要旨次のように意見を述べている。
1 本件商標の識別性について
本件商標を構成する「まほうびん保温」という一連の文字は、取消理由に挙げられているとおり、商標権者だけが唯一、商標的使用を行っているものである。すなわち、商標権者は、「まほうびん保温」コースのように、本件商標のみを括弧で区切って使用し、また、四角で囲われたアイコンのような枠の中に「まほうびん保温」とするなど、一連で極めて特徴的な使い方をしてきていることから、本件商標は、商標として十分識別力を有するものと思料する。
他方、取消理由に挙げられた他社に係る証拠においては、単に「まほうびん」の文字や、「まほうびん構造」、「まほうびん保温時」、「まほうびんで保温」の文字のように、本件商標とは異なる文字が文章中に用いられているにすぎない。
さらに、上記他社というのは、象印マホービン株式会社とパナソニック株式会社(松下電器産業株式会社)の2社にすぎず、このわずかな使用事例をもって、本件商標を取り消そうとすることは到底できないものと思料する。
2 本件商標が造語であることについて
本件商標は、「まほうびん保温」という一連一体の商標であり、その構成全体として、「まほうびん保温」という1つの造語といえる。
取消理由においては、申立人の提出に係る甲第3号証ないし甲第6号証(商標権者の発行に係る商品総合カタログの写し)から、「※まほうびん保温とは・・・電気を使わないで保温(保温電力0W)するから省エネに効果的です。」という文章等を挙げて、本件商標の文字は、「魔法瓶により温度を保つこと」や「魔法瓶同様の構造により電熱によらずに保温すること」という概念を生ずるとしているが、上記文章は、本件商標をただ単に説明しただけのものであって、このように商標を説明することはごく一般に行われている。
仮に、本件商標が「まほうびんによる保温」や「まほうびん構造による保温」等の文字で構成されているのであれば、これらを「魔法瓶により温度を保つこと」や「魔法瓶同様の構造により電熱によらずに保温すること」と同義に解釈する余地があるかもしれないが、本件商標は、あくまでも「まほうびん保温」の文字で構成されているものであるから、そのような解釈がされるとするには、合理的な根拠を欠くといわざるを得ない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商品「電気ポット」を取り扱う業界において、商品の品質を表すものとして、取引上普通に用いられている事実はないから、自他商品の識別標識として十分に機能を果たし得るものであり、また、商品の品質を表示したものとして理解されない以上、本件商標を「電気ポット」以外の商品に使用したとしても、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはないものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものではない。

第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本件商標についてした前記第3の取消理由は妥当なものであって、本件商標の登録は、その指定商品中、第11類「家庭用電熱用品類」について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものといわざるを得ないものである。
2 商標権者の意見について
商標権者は、本件商標を構成する「まほうびん保温」の文字は、それ自体1つの造語であり、これから直ちに「魔法瓶により温度を保つこと」や「魔法瓶同様の構造により電熱によらずに保温すること」といった意味を認識させることはなく、また、該文字と同一の文字からなる表示(語)は、商標権者のみが使用し、かつ、その使用に当たり、括弧書きとするなどして、商標的使用を行っている旨主張している。
しかしながら、ある商標が商標法第3条第1項第3号の品質の表示に該当するというには、我が国の取引者、需要者が品質を表示するものとして認識するものであれば足りるといえるものであり、実際に品質を表示するものとして使用されていることまでは必要とせず、また、該商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであるか否かの判断は、該商標の構成態様と指定商品とに基づいて、個別具体的に判断されるべきと解される(平成12年(行ケ)第76号、東京高裁平成12年9月4日判決言渡)ところ、本件商標「まほうびん保温」については、前記第3の取消理由において認定したとおり、本件登録異議の申立てに係る商品「家庭用電熱用品類」を取り扱う業界における取引の実情に照らし、その取引者、需要者をして、商品「電気ポット」との関係において、商品の品質を表示したものとして認識するにとどまるというべきであり、かつ、該商品以外の「家庭用電熱用品類」との関係においては、商品の品質の誤認を生じるおそれがあるから、該商標権者の主張は、採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中、結論掲記の指定商品について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2012-11-29 
出願番号 商願2011-58799(T2011-58799) 
審決分類 T 1 652・ 272- Z (X11)
T 1 652・ 13- Z (X11)
最終処分 取消  
前審関与審査官 日向野 浩志 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 酒井 福造
田中 敬規
登録日 2012-03-16 
登録番号 商標登録第5478485号(T5478485) 
権利者 タイガー魔法瓶株式会社
商標の称呼 マホウビンホオン、マホービンホオン、マホービン 
代理人 藤田 典彦 
代理人 藤田 邦彦 

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