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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない X10
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X10
管理番号 1269651 
審判番号 不服2011-25330 
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-24 
確定日 2013-01-28 
事件の表示 商願2010-99576拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第10類「家庭用電気マッサージ器」を指定商品とし、平成22年12月22日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、緩やかな稜線部を有する四角錐状の立体的形状を表してなるところ、該立体的形状は、その指定商品「家庭用電気マッサージ器」との関係においては、その商品の機能及び美感上一般に採用され得るものであるから、本願商標をその指定商品に使用したときには、該商品の形状そのものを認識するにとどまり、自他商品の識別力を有するものとは認められないものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、出願人は、本願商標について、同法第3条第2項の適用を主張し、本願商標の使用の事実を示す証拠として資料1の1ないし資料4の38を提出しているが、これらを総合勘案するも、本願商標が使用による識別力を有するに至っているものと認めることはできない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審においてした証拠調べ
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権により証拠調べをした結果、別掲2に示すとおりの事実を発見したので、平成24年7月17日付けで、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、それを請求人に通知し、相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えた。

4 証拠調べ通知に対する請求人の意見の要点
(1)出願人(請求人)は、本願商標に係る商品(以下「本願商品」という場合がある。)を遅くとも2009年8月29日には販売を開始し、2009年8月29日から2011年9月30日に至るまでの約2年1月の間に、当該商品を約290万台以上販売している。したがって、本願商標は、遅くとも2011年9月30日までには、特別顕著性を獲得していたものと考える。なお、本願商品は、2012年8月1日現在、販売累計が400万台を超える大ヒット商品である。
(2)証拠調べ通知書の1及び2の商品は、同一の商品と考えられ、それは、背の低い1つの円柱形状からなり、その円柱の側面を周回するファスナーが設けられ、家庭用電気マッサージ器として使用する際には、ファスナーを開くことによりマッサージ器が設けられたマッサージャー部分とクッション部分とに分離する構造の商品である。
(3)証拠調べ通知書の3の商品は、本願商標と類似する立体的形状からなるものであるが、この商品は、本願商品販売開始後に、製造販売されたものであり、本願商品の名声、人気にただ乗りする意図を有するものであるから、出願人(請求人)は、この商品を製造販売する者に対して、意匠権や不正競争防止法に基づく警告書を送付するとともに、口頭でも警告を行っている。この商品によって、本願商標の特別顕著性が害されるのは信義則によって許されるものではない。
(4)証拠調べ通知書の4ないし7の商品は、円形の饅頭型、略長方形型のものであるが、本願商品の販売開始後に販売されたものであり、これらの商品の形状は、本願商品の模倣であるといえる。
(5)本願商標の登録出願日前に、本願商標のような態様の家庭用電気マッサージ器は、本願商品を除いて存在していないという意味で個性的であり、本願商標が、独占不適商標に該当するものとは認めることはできない。
(6)本願商標が与える総合的な印象は、本願商標が付された家庭用電気マッサージ器の需要者である一般消費者において、次回の購入や、知人への推奨を検討する際に、本願商品の購入等を決定する上での標識とするに足りる程度に十分特徴的であり、本願商標に係る標章が「一般的に使用される標章」であると認めることはできず、本願商標が「自他商品識別力欠如商標」であると認めることはできない。

5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号について
立体商標は、商品若しくは商品の包装(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるところ、商品等の形状は、本来それ自体の有する機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の有する美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品の出所を表示する自他商品の識別標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは、前示したように、商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するにとどまり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
さらに、本来的には自他商品を識別するための標識として採択されるものではない立体商標については、登録によって発生する商標権が全国的に及ぶ更新可能な半永久的な独占権となることを考慮すれば、その識別性について厳格に解釈し、適用することが求められるところである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において、当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
これを本願についてみれば、本願商標は、別掲1のとおり、4つの緩やかな稜線が交わる中央部分がやや高く、上面又は下面から見たときにはほぼ正方形であり、下面には、上部左右の角にボタンが表示された立体的形状からなるところ、本願の指定商品の分野において、本願商品の販売開始以前から、クッション型の家庭用電気マッサージ器が存在しており、今日において、家庭用電気マッサージ器は、椅子型、手持ち型と同様に、円形状や四角形状などのクッション型のものがそのタイプの一つとなっていること、ファスナーなどを開いて使用するものがあることが、前記3の証拠調べ通知において示した情報からも裏付けられるところである。
また、リビング等において用いられるクッションは、四角形状や丸形(円盤)状のものが一般的であり、請求人が当審において、平成23年12月15日付け手続補正書により提出した資料には、本願商品について、「クッション顔のマッサージャー」(資料5の5)、「クッションなのに本格派マッサージャー」(資料5の11)、「クッションにしか見えない本格マッサージ器」(資料5の18)、「クッションと思ったら本格派マッサージャーでした。」(資料7の2)などの説明が見受けられる。
さらに、同手続補正書により提出した資料には、本願商品について、「マッサージ面のカバーをめくるとよりしっかりもみ玉が当たる」(資料5の11)、「カバーを外した状態。普段はクッションとして使える」(資料5の12)などの説明と使用時の形状を表した写真が見受けられる。
上記実情からすれば、本願商標は、これに接する者に、クッション型であって、カバーを留めるボタンを外して使用する家庭用電気マッサージ器の立体的形状を表したものと容易に、認識、把握させるものということができる。
してみれば、本願商標に係る立体的形状は、4つの緩やかな稜線が交わる中央部分がやや高く、下面の上部左右の角にボタンが付されているという特徴を有するとしても、該立体的形状は、「クッション型の家庭用電気マッサージ器」の形状の一つであって、上述の特徴は、「クッション型の家庭用電気マッサージ器」の機能、美感をより発揮させるために施された形状というべきであり、特異な形状とまではいい難いものであるから、本願商標をその指定商品に使用しても、取引者、需要者は、「クッション型の家庭用電気マッサージ器」の形状を普通に用いられる方法で表示したものとして理解するにとどまり、自他商品を識別するための標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
なお、請求人は、平成24年8月17日付け意見書において、該証拠調べ通知において示した本願商品より後発の商品により本願商標の特別顕著性が害されるのは、信義則によって許されないことであり、請求人は、意匠権(登録第1404812号)や不正競争防止法に基づく警告書の送付などの警告を行っている旨説明するとともに、本願商標は、独占不適商標及び自他商品識別力欠如商標には該当しない旨主張している。
しかしながら、登録出願された商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かは、該商標の構成態様と指定商品との関係において、個別具体的に判断されるものであって、かつ、その判断時期は、査定時又は審決時と解されるべきものである。
そうとすると、クッション型の商品は、審決時において、家庭用電気マッサージ器のタイプの一つとなっていること、本願商品の形状が、クッションの一般的な形状の一つである正方形状の範ちゅうのものであること、及びその形状が有する特徴は、「クッション型の家庭用電気マッサージ器」の機能又は美感をより発揮させるために施された形状というべきものであることから、本願商標は、自他商品を識別するための標識とは認識し得ないものであることは、前記認定、判断のとおりである。
また、東京高裁平成14年7月18日平成13年(行ケ)第446号判決では、「商品等の立体的形状は、その機能・美感の発揮を第一の目的として選択されることが通常であるから、出所を表示することを第一の目的として選択され、これに接する需要者もそのように理解するのが一般である、平面商標と同一視することはできない。このような立体的形状が第一義的に果たす機能・美感については、制度上、本来、それぞれ特許法・実用新案法、意匠法で一定期間に限り保護が与えられ、その後は何人も自由に使用することが認められるべきものとされているのであるから、商標登録して、これに半永久的な保護を与えるには、慎重でなければならないのは当然だからである。」と判示していることからすると、自他商品を識別するための標識とは認識し得ない本願商品の立体的形状の保護は、前述の意匠権等で足りるというべきであって、さらに、本願商標を登録することによって、保護を与えることは、意匠権の存続期間を超えて半永久的に独占権を請求人に認めることになり、自由競争を不当に制限することになるから、公益に反すること明らかである。
以上のとおり、請求人の上記主張は、採用することができない。
(2)商標法第3条第2項該当性について
請求人は、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備すると主張し、証拠方法として、当審における平成23年12月15日付け手続補正書により、資料1ないし資料7(枝番を含む。ただし、以下、枝番のすべてを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)を提出している。
そこで検討するに、本願商品は、平成21年9月に発売されており、全国の量販店及び通販などによっても販売されている商品と認めることができるものの、本願商品の使用期間は、現在までの3年余りにすぎない。
そして、商品の包装及びカタログ中には、本願商品の写真とともに、「ルルド マッサージクッション」や「LOUrdes」の文字、該「LOUrdes」の文字の上方に配されたロゴと思しき図形などが表されていることが認められる(資料7の1など)。
次に、出願人(請求人)のウェブサイト、テレビ放送、雑誌及びインターネット等において、本願商品を紹介・説明する際には、本願商品が「ルルド」や「アテックス」の文字などとともに表されていることが認められ、「絶賛ヒット中!これが『ルルド』だ!!」(資料5の16)、「キュートな癒し系のマッサージャー〈ルルド〉。」(資料5の41)の表示からも、本願商品は、特に「ルルド」の文字を商品に表示して取引に資されていることがうかがわれる。
以上のことよりすれば、本願商品に接する取引者、需要者は、「ルルド」等の文字及びロゴが商品の出所表示と認識するとみるのが商取引の実際に照らして自然というべきである。
そうとすると、本願商品は、本願商標に係る立体的形状のみをもって、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識されるとはいい得ない。
してみれば、請求人の提出した証拠を総合して勘案しても、本願商標が、その指定商品に使用された結果、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められない。
したがって、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するものであるとする請求人の主張は、採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、かつ、同法第3条第2項の要件を具備しないものであるとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものであり、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1
本願商標








別掲2
証拠調べ通知に記載した事実
1 2003年2月27日付け「朝日新聞」(大阪朝刊10頁)に、「クッション型のマッサージ器 松下(情報ファイル・商品)【大阪】」の表題の下、「松下電工が3月発売する指圧マッサージ器は、普段はクッションになり、チャックを開いて寝ころぶと、首や肩のマッサージ器として使える。電動でクッションに内蔵されたエアバッグが膨らみ、指圧玉を押し上げる。」との記載がある。
2 パナソニック株式会社のウェブサイト中に、「指圧マッサージャー EP5000 ぎゅぎゅっとクッション EP5000 生産終了」の表題の下、「・・・開くと指圧マッサージャー、閉じるとクッション エアーバッグについた指圧玉が回転しながら移動し、首すじから肩を指圧感覚でほぐします・・・普段はクッションとして、お部屋に気軽に置けます いつも清潔、洗えるクッションカバー」との記載とその商品の写真がある(http://ctlg.panasonic.jp/product/info.do?pg=04&hb=EP5000)。
3 「こだわりキッチン プロの道具屋さん」のウェブサイト中の「リラックス・癒し系」の項目中に、「高機能マッサージクッション・CUMO(キューモ)電気マッサージ器」の表題の下、「マッサージといえば、マッサージチェアが欲しいけど、、、とにかく高いし、サイズも大きすぎて置き場に困ったりしますよね、、、そんな、悩みをもってる方に当店がオススメするアイテムは、お手頃なのに、高機能マッサージクッションの『CUMO(キューモ)』です♪ 一見、可愛らしいデザインのミニクッションにしか見えないけど、実は、『医療機器認証番号』も取得している、信頼のできるマッサージクッションなんです!・・・このマッサージクッションの内部に入っている、大・小の高さが異なる4個のもみ玉が、くるくると回って丁寧にマッサージしてくれます♪ もみ玉が適度の硬さなので、強すぎず、弱すぎないから、まるで、手で丁寧にマッサージしてもらっているような気持ちよさです」との記載とその商品の写真がある(http://www.pro-douguya.com/re-hb-7200.html)。
4 ツカモトエイム株式会社のウェブサイト中の「製品一覧」の項目中に、「大人気スイーツマカロンがマッサージクッションになりました!」の表題の下、「かわいいスイーツマカロンが、マッサージクッションになりました。4つのもみ玉がぐるぐる回って、本格的なもみ心地を体感出来ます。スイッチひとつの簡単操作で、誰でも手軽に使うことが出来ます。また、コンパクトなので持ち運びも簡単!!クッションのように椅子やソファーに使用したり、広げて首や肩の集中マッサージにも!疲れた足にもしっかりマッサージ!!」との記載とその商品の写真がある(http://www.tsukamoto-aim.co.jp/products_all/mc301.html)。
5 株式会社クロシオのウェブサイト中に、「マッサージクッション プチシフォン(ベージュ ピンク)」の表題の下、「高さの異なる4ヶのもみ玉が回転し、手もみ感覚のマッサージで首・背中・腰・太もも・ふくらはぎ・足裏などのコリをもみほぐします。ファスナーを開いて使うこともできます。」との記載とその商品の写真がある(http://www.kuroshio.co.jp/prod/healtycatlogue.html)。
6 オムロン株式会社のウェブサイト中の「商品情報」の項目中に、「クッションマッサージャHM-341」の表題の下、「椅子に置いて腰や背中にあてたり、床に置いてふくらはぎや太ももにあてるなど、どこでも気軽にマッサージを行えます」との記載とその商品の写真がある(http://www.healthcare.omron.co.jp/product/basic/188)。
7 スライヴ株式会社のウェブサイト中の「コンパクトマッサージャー」の項目中に、「スライヴ クッションマッサージャーココモ-i MD-8201(C)アイボリー・(T)ブラウン」の表題の下、「小さくてかわいい、クッションマッサージャー せり出したもみ玉で、ぎゅぎゅっとはさみもみマッサージ!」との記載とその商品の写真がある(http://www.daito-thrive.co.jp/compact/md_8201.php?ct=4)。

審理終結日 2012-11-14 
結審通知日 2012-11-16 
審決日 2012-12-12 
出願番号 商願2010-99576(T2010-99576) 
審決分類 T 1 8・ 17- Z (X10)
T 1 8・ 13- Z (X10)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白倉 理 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 山田 和彦
堀内 仁子
代理人 住友 慎太郎 

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