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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 125
管理番号 1268330 
審判番号 取消2012-300165 
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2012-03-02 
確定日 2012-12-03 
事件の表示 上記当事者間の登録第1682056号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1682056号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1682056号商標(以下「本件商標」という。)は、「NORTHSTAR」の欧文字を横書きしてなり、昭和54年9月29日に登録出願、第22類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として同59年4月20日に設定登録され、その後、平成17年9月21日に指定商品を第25類「靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類」とする書換登録がされているものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第8号証を提出している。
1 請求の理由
請求人の調査によれば、本件商標は、継続して過去3年以上、その指定商品について使用されていた事実は認められない。また、使用権者が本件商標をその指定商品について使用していた事実もなく、不使用について正当な理由も見当たらない。
したがって、本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用していないので、商標法第50条第1項の規定により、その登録が取り消されるべきもである。
2 弁駁の理由
被請求人は、乙第1ないし第12号証を提出した上で、指定商品中の「長靴」について本件商標を使用していると主張している。しかしながら、提出された乙各号証を精査しても、以下のとおり、指定商品について本件商標を現実に使用して販売したと認めることはできない。
(1)株式会社ワークマンに対する販売の信憑性について
被請求人は、商標「NORTHSTAR」ではなく、「Light」を付加した商標「NorthStarLight」を製品「軽量長靴」に付して、2011年9月28日から12月16日にかけて株式会社ワークマン(以下「ワークマン社」という。)の各支店に被請求人の新潟倉庫から発送したとし、この事実は証拠として提出した各請求書その他の証明書類からも明らかであると主張して、あたかも商標が使用されていたかのような主張を展開している。
しかしながら、被請求人が提出した乙第7ないし第12号証はその信憑性に疑問があり、以下に詳述するとおり、使用の事実が充分に証明されたということはできない。
(ア)乙第2ないし第6号証について
乙第2号証は、「ノーススターライトNo.27MUCE」の写真であり、乙第3号証は、「ノーススターライトNo.27MUCE」の胴部拡大写真である。また、乙第4号証乃至乙第6号証は「ノーススターライトNo.27MUCE」の収納用ダンボール箱の写真である。
乙第2及び第3号証からは、商標「NorthStarLight」が製品「軽量長靴」に付されていることが確認できるが、日付も作成者も明らかでない。また、乙第4及び第6号証には、「ノーススターライト」又は「NORTH STAR LIGHT」の文字が段ボール箱の側面に記載されているが、これらについても日付や作成者が明らかでない。そのため、これらをもって審判請求の登録日から3年以内に本件商標を使用しているということは到底できない。なお、乙第5号証には、本件商標は全く表示されていない。
(イ)乙第7号証について
乙第7号証の10枚にも及ぶ「商品別実績問合せ」画面(写し)は、被請求人会社の使用するコンピュータの帳票類のコピーであって、証拠の表示から推察するに、同社内の実績を表示しているに過ぎない帳票であり、取引に直接使用する書類ではないことが明らかであるため、これをもって商標の使用ということができないことは自明である。
(ウ)乙第8ないし第12号証について
(a)物品受領書について
被請求人は、乙第7号証の「商品別実績問合せ」の記載が真実であることの証明として、乙第8ないし第12号証の「物品受領書」の伝票番号が一致することを主張している。
しかしながら、提出された「物品受領書」には肝腎の受領印がなく、真実のものとは考えられない。更に、乙第8ないし第12号証と乙第7号証とは、伝票番号、単価(合計額)及び数量が一致するのみであって、上記受領書中には本件商標は一切表示されていない。また、乙第8ないし第12号証には、乙第7号証記載の商品番号「0271055」が存在せず、「品名・規格」欄に記載された商品番号と思われる数字も一致していない。
ちなみに、被請求人の配布するフットウェアカタログには上記商品番号「0271055」に近い商品番号が存在しており(「マクサーNo.51MUCE」:271023、「フリスクライトNo.26MUCE」:271053)、取引上使用する商品番号であると推測される(甲第2号証)。
業務用として販売されている商品の場合は、品番・型番・記号等で取引される場合が多いものと考えられるが、納品した製品の製品名、品番と一致する品番、商品名が一切記載されておらず、型番・記号の記載もない受領書が現実的に使用されているとは通常考えられない。「物品受領書」の「商品・規格」欄に記載された製品と乙第7号証に記載されている製品が一致することを証明しなければ、乙第8ないし第12号証は、別の製品の物品受領書であると評価せざるを得ず、本件商標が使用された事実が証明されたとは到底評価できない。
これらの「物品受領書」をもって本件商標が使用されていると判断することは不可能であり、商標「NorthStarLight」を使用した製品に関する物品受領書であることについても疑義が生ずるものである。むしろ、現実には使用の実績がないので、たまたま数字が一致する物品受領書を提出したに過ぎないとしか評価できないか、若しくは実在しない取引ではないかとの疑いを抱かざるを得ないものであり、証拠力に乏しい証拠といわざるを得ないものである。ちなみに、「商品別実績問合せ」(乙第7号証)が被請求人会社内で容易に作成されたものと推察されるのと同様、「物品受領書」も併せて容易に作成可能な書類とも考えられる。
すなわち、被請求人による使用証明は全く不十分であり、商標の使用と認めることはできないと考えられる。
(b)納品物について
乙第1号証を見ると、中華人民共和国より輸入された製品は、黒色と紺色のそれぞれ1190足(Mサイズ:260足、Lサイズ:480足、LLサイズ:300足、XLサイズ:150足)となっていることが確認される。また、1つの箱に同じ色とサイズの長靴が収納されていることが乙第4号証から確認される。ところが、乙第7又は第8ないし第12号証によると、色、サイズの指定がなく、単に10足を納品した事実のみが記載されている。通常の取引では、靴の色、サイズ等が取引書類には明記されるはずである。箱の中身は上記のようにすべて同じものであるため、輸入した箱をそのまま各店舗に納品しているとは通常では考えられない。色とサイズを混在させて納品すると考えるのが自然であり、どの色のサイズが何個かの内訳が記載されているのが自然である。しかし、「物品受領書」には、これらの記載が一切存在しないため、不自然といわざるを得ず、この点からも、商標「NorthStarLight」を使用した製品に関する物品受領書であることについて疑義が生ずるものである。
(エ)現実的な販売状況について
被請求人は、商標「NorthStarLight」を使用した製品「軽量長靴」をワークマン社にのみ販売する目的で輸入している旨主張している。
しかしながら、ワークマン社が発行する商品カタログを詳細に調査したが、その中には、商標「NorthStarLight」を使用した製品は掲載されていなかった。また、被請求人が自らのホームページで提供し配布するフットウェアカタログ(甲第2号証)にも、該製品は掲載されていない。ちなみに、乙第1号証に記載されている、該製品と同時に輸入された「ゴリラエンジニアNo.12MU」は、上記フットウェアカタログに掲載されている
被請求人の販売する製品は、インターネットを検索すれば見つけることができるのが通常である。ところが、商標「NorthStarLight」を使用した製品は、輸入総数が2380足、販売(納品)数が1370足もあるにもかかわらず、インターネットの検索結果からは一切発見することができない。通常、この程度の販売数量の製品であればどこかしらで紹介されているものである。インターネット上では後日ヒット数が増加するのが常態であり、どこかに現実に掲載されていれば、必ず検索結果として出力されるはずのものである。ところが、「NorthStarLight」の名称が一切発見できないという事実からすると、現実に商品の販売(納品)が行われたという被請求人の主張に疑義が生ずると考えざるを得ない。ちなみに、「価格.com」でも検索できない商品が、少なくとも137店舗で販売されていたということは現実にはあり得ないことと考えられる。
(オ)審決例について
近年の不使用取消審判では、使用の証明が不十分であるため、商標登録を取り消されている審決例が多数存在している(甲第3ないし第5号証)。一見すると使用しているかに見えるが、証拠を精査すると何ら使用の証明になっていない場合や、証拠の信憑性に疑義がある場合、証拠全体からみて実際に指定商品について登録商標を使用しているかが判然としない場合等には、使用の立証が充分でないとの評価がされているのであり、簡単なコンピュータ帳票の打ち出しで安易に使用していると認定されるものではない。
(カ)証拠提出の容易性
現実に商品の販売があれば、商標が記載されているパンフレットや請求書、納品書など何れかが必ず存在するはずであり、単純に現実的な使用が行われているのであれば、何等かの資料が、極めて容易に提出できるはずである。そのために、挙証責任は権利者側に分配されているのである。それにもかかわらず、本件では、そのような現実の使用に関連する証拠は一切提出されていない。ちなみに、被請求人は乙第8ないし第12号証の「物品受領書」の伝票番号が「商品別実績問合せ」(乙第7号証)と一致することを主張しているが、137店舗のうちのわずか5店舗の伝票であり、かつ、「物品受領書」には商標が記載されていないばかりか、「物品受領書」と「商品別実績問合せ」の内容が一致すると認定できるような要素は何ら存在しない。更に、受領印のない受領書には信憑性が全くないことは基本的な了解事項と考えられる。
したがって、「物品受領書」が商標「NorthStarLight」を使用した製品の取引書類であると認定できる証拠であるということはできない。
なお、使用の立証の証拠の作成に関し、真実と相違する証拠を提出すると、虚偽の証拠を提出して審決を得たことになり、これにより詐欺の行為の罪が問われた事案に関する判決(平成20年(行ケ)第10101号)も存在することを付言する。
(キ)小括
本件では、提出された乙各号証からでは商標の使用を認定することはできないと考えられる。被請求人からは、現実に取引がなされている状況が明確に分かる証拠が全く提出されておらず、提出された乙各号証のような実態を疑わせるような不明確な証拠のみで使用が証明されたと判断することはできない。また、乙第8ないし第12号証のような物品受領書が、本件商標を使用した製品の取引書類として現実に押印のないまま発行されたとは考えられない。このような状況では、本件審判請求に係る商品について本件商標が使用されていないと推察せざるを得ない。
本件商標は継続して3年以上不使用であり、使用の事実が証明されたということはできず、本件商標の登録は取り消されるべきである。
(2)社会通念上同一の商標について
被請求人は、商品「ノーススターライト No.27MUCE」に付した商標「NorthStarLight」は、本件商標「NORTHSTAR」に軽量であることを示す「Light」を付したものであり、本件商標を使用していることに他ならないと述べ、本件商標の使用に該当する旨主張している。
しかしながら、以下のとおり、商品「ノーススターライト No.27MUCE」に付された「NorthStarLight」及び商品の包装に付された「ノーススターライト」、「NORTH STAR LIGHT」が、本件商標と社会通念上同一の商標であるということはできないと考えられる。
(ア)本件商標及び被請求人が使用する商標の特定
本件商標は、「NORTHSTAR」の欧文字9文字からなり、纏まりよく一体的な構成となっており、その構成文字から「北極星」の観念が生ずるものと考えられる。
一方、被請求人が使用する商標は、乙第3号証のように、斜め上方から見た立方体の3面にそれぞれ「N」「S」「L」が大きく記載され、該図形の下に「N」「S」「L」部分を朱書きとした「NorthStarLight」の欧文字14文字が配置されており、更にその下に「Light Weight Model of Mitsuuma」の欧文字が小さく記載された態様となっている。
また、乙第4及び第6号証には、「ノーススターライト」の片仮名9文字又は「NORTH STAR LIGHT」の欧文字14文字が商品の包装に付された態様で使用されている。
被請求人が使用する商標は、その構成から「北極星の光」や「北の星光」の観念が生じることになると考えられる。なお、乙第3号証の使用態様の場合は、最下段に小さく記載された文字を認識することにより初めて「NorthStarの軽量版」のような観念が生ずることになると考えられる。
(イ)被請求人が使用する商標は一体不可分
被請求人が使用する商標は、上記のような構成であり、外観において極めて纏まりよく構成されているため、これに接する需要者・取引者は、本件商標を認識するより、むしろ「NorthStarLight」、「ノーススターライト」、「NORTH STAR LIGHT」のように、商標全体として一体的に認識することになると考えられ、また、観念においても、「北極星の光」や「北の星光」という一定の観念を認識することになり、「北極星」の観念を生ずる「NorthStar」、「ノーススター」、「NORTH STAR」部分のみを敢えて抽出して本件商標であるとして認識し、取引に資するのは極めて稀と考えられる。すなわち、外観・観念の一体性から考えると、「NorthStarLight」、「ノーススターライト」、「NORTH STARLIGHT」の一連一体の商標の使用であると考えられる。
被請求人は、商標「NorthStarLight」は、本件商標に軽量であることを示す「Light」を付したものであり、本件商標の使用にほかならないと主張しているが、英語の「Light」は第一義的に「光、明るさ」の意味をもつ語であり、2番目の意味として「軽い、軽量の」の意味が来る多義語であり(甲第6及び第7号証)、片仮名にあっては更に「右、右側」の観念が生ずる語であって、必ずしもこれに接する需要者・取引者が軽量であることを示す「Light」、「ライト」として認識するとは限らず、商標全体としで「NorthStarの軽量版」のように認識することは極めて稀ではないかと考えられる。
また、乙第3号証のように、「Light Weight Model of Mitsuuma」の欧文字が最下段に存在するとしても、簡易迅速を尊ぶ取引界においては当該欧文字部分まで含めて認識することはなく、「NorthStarLight」の一連の文字のみを認識し、これをもって取引に資することになると考えるのが自然である。そもそも、本件商標を使用する意図があり、「Light」や「ライト」を、軽量を意味する品質表示語として付加的に使用するということであれば、書体や大きさを変更するとか、2段に書すなどの方法によって商標「NorthStar」を独立して認識可能な態様として使用するのが通常であると考えられる。このような使用態様によって、商標に、法の保護対象である顧客吸引力が生ずることになる。被請求人による商標の使用態様では、本件商標に顧客吸引力が生ずることになるとは考えられず、法による保護を商標権者自らが放棄したと評価せざるを得ない使用態様であると考えられる。すなわち、被請求人が使用する商標中の「Light」、「ライト」、「LIGHT」は商品の品質を表示する語として需要者・取引者に認識されることはなく、「NorthStarLight」、「ノーススターライト」、「NORTH STAR LIGHT」は一体不可分の商標を構成するため、いずれも一連一体の商標の使用であると評価されるべきである。
また、乙第3号証の態様での使用に関して、商標の類否に関する審決ではあるが、商標の構成文字の頭文字を抜き出したと認識される語を含み、語頭部分が商標中において特徴付けられている態様であることから、商標の一体不可分性を認め、構成各単語からなる引用商標とは非類似であると判断された審決例(不服2011-18473、不服2009-7869、不服2009-25796、不服2004-1877、不服2002-10027)が多数存在している。
本件はもちろん事案が異なるが、被請求人が使用する商標中の上部図形は「NorthStarLight」の各構成語の頭文字を抜き出したものであり、「NorthStarLight」の各語の頭文字は朱書きで特徴付けられている。このような態様の商標である以上、被請求人が使用する商標は一体不可分の商標であると評価されるべきものであり、これに接する需要者・取引者も、目立つ図形部分や文字部分の構成から「NorthStarLight」の一連一体の商標を認識することになると考えられる。
更に、本件商標は「NORTH STAR」及び「ノース スター」の2段書きであるが、乙各号証にはこの態様の商標は一切見受けられない。
すなわち、被請求人が使用する商標は「NorthStarLight」、「ノーススターライト」、「NORTH STAR LIGHT」であって、本件商標とは別異のものであり、非類似と評価され、本件商標と同一の商標の使用には該当せず、更に社会通念上同一の商標の使用にも該当しないと考えられる。
(ウ)商標の分離可能性
「Starlight」は、英語の辞書にも掲載されている既成語であり(甲第8号証)、我が国においても「星の光」を指す英語として親しまれているものである。このため、仮に、被請求人が使用する商標が分離して認識されると考えても、被請求人が主張するような「NorthStar」と「Light」の分離のほか、「North」と「StarLight」(同様に、「ノース」と「スターライト」、「NORTH」と「STARLIGHT」)に分離して認識されることも考えられ、後者の方がむしろ多いのではないかと考えられる。
すなわち、「Light」、「ライト」は品質表示語であるため「NorthStar」が分離して認識されるという趣旨の被請求人の主張は、被請求人の偏った主観に過ぎないと評価せざるを得ない。客観的に被請求人が使用する商標を観察すると、これに接する需要者・取引者は「NorthStar」と「Light」(「ノーススター」と「ライト」、「NORTH STAR」と「LIGHT」)に分離せず「North」と「StarLight」(「ノース」と「スターライト」、「NORTH」と「STARLIGHT」)に分離して認識することも少なからず存在するのであって、この場合は商標「StarLight」、「スターライト」、「STARLIGHT」の使用となると考えられるため、被請求人が使用する商標は、本件商標「NORTHSTAR」と同一の商標の使用となると言い切ることはできない。
すなわち、被請求人が使用する商標は、登録商標と同一の商標の使用には該当せず、社会通念上同一の商標の使用にも該当しないと考えられる。
(エ)小括
本件では、提出された乙各号証からでは使用していると主張する商標は、本件商標と同一の商標ではなく、社会通念上同一の商標でもないと考えられる。顧客吸引力を発揮しない態様での使用の場合は、保護すべき蓄積された業務上の信用が存在しない以上、商標が使用されているとはいえないため、そのような商標は取り消して、第三者に商標の選択の余地を与えるのが商標法第50条の趣旨に沿った判断であると考えられる。
(3)「ノーススターライト No.27MUCE」の輸入について
被請求人は、商標「NorthStarLight」を付した製品「軽量長靴」を、ワークマン社にのみ販売する目的で、中華人民共和国の杭州鯤鵬製品有限公司に製造を依頼し、「ノーススターライト No.27MUCE」2380足を輸入している旨主張している。
乙第1号証によると、商品「ノーススターライト No.27MUCE」を中華人民共和国より、黒色と紺色のそれぞれ1190足(Mサイズ:260足、Lサイズ:480足、LLサイズ:300足、XLサイズ:150足)を輸入していることが確認できる。
しかしながら、乙第1号証は、本件商標が付された商品の輸入に関する証拠ということはできないと考えられる。担当者や管理者の押印等が何らなされておらず、取引において使用された真正な取引書類であると認定することは到底できない。また、乙第1号証には、「ノーススターライト」の片仮名9文字が確認できるが、前述のように、本件商標と同一の商標ではなく、社会通念上同一の商標でもないことは明らかである。
上記商品は、日本国内に流通しておらず、輸入に関する事実も信憑性に問題があると考えざるを得ず、自他商品の識別標識としての機能を発揮した態様での使用は存在しないと考えられる。
すなわち、被請求人による上記行為をもってしても、商標の使用には該当しない。
(4)結語
被請求人は、審判請求に係る指定商品中の「長靴」を使用しているとして、乙第1ないし第12号証を提出して主張しているが、これらの証拠からは指定商品について登録商標を使用していると考えることはできない。すなわち、被請求人の答弁の全趣旨及び乙各号証を総合的に判断しても、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその指定商品のいずれかについて、本件商標あるいは本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたことを証明したとは認められないものと考えられる。
したがって、被請求人の答弁は失当である。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第15号証を提出している。
1 理由
(1)本件商標の使用について
ア 被請求人は、「NorthStarLight」なる商標を使用した製品「軽量長靴」をワークマン社にのみ販売する目的で中華人民共和国の杭州鯤鵬製品有限公司に製造を依頼し、乙第1号証の「船積み案内」に示されているように、2011年8月3日にその製品「ノーススターライト No.27MUCE」2380足が新潟港に到着している。
イ 上記製品「ノーススターライト No.27MUCE」は、乙第2及び第3号証の写真から明らかなように、その胴部に「NorthStarLight」と記載されており、乙第4ないし第6号証の写真のダンボール箱内にそれぞれ各10足が収納されて運搬・保管されていた。
ウ 上記製品は、2011年9月28日から12月16日にかけてワークマン社の各支店に被請求人の新潟倉庫から発送されているのであり、これは乙第7号証の被請求人の「商品別実績問合せ」の2011年10月7日分の抜粋から明らかである。
この乙第7号証の記載が真実であることは、乙第8ないし第12号証の「物品受領書」(乙第8号証は乙第7号証第2頁の第7番目の船引店宛のもの、乙第9号証は乙第7号証第2頁の第8番目の東部町店宛のもの、乙第10号証は乙第7号証第2頁の第10番目の矢板店宛のもの、乙第11号証は乙第7号証第2頁の第12番目の大町店宛のもの、乙第12号証は乙第7号証第4頁の第2番目の皆野店宛のもの、であることがその伝票番号から判る。)から自明である。
エ 上記商品に付した商標「NorthStarLight」は、本件商標「NORTHSTAR」に軽量であることを示す「Light」を付したものであるから、本件商標を使用していることに他ならない。
(2)まとめ
以上に述べたように、本件審判の請求登録前3年以内に日本国内において被請求人自身が本件商標の指定商品中「長靴」について本件商標を使用していることは、乙第1ないし第12号証から明白な事実であるので、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録が取り消されるべきものではないことは明らかである。
よって、本件審判の請求は成り立たない。
2 第2答弁
(1)乙第2号証ないし乙第6号証の各写真は、下記の者が下記の撮影場所で下記の時期に撮影したものであることを示す。
住所:東京都台東区寿3丁目9番6号株式会社ミツウマ東京販売部内
氏名:販売係長 村木 功
撮影場所:新潟県北蒲原郡聖麹町東港3丁目170番地16
株式会社リンコーコーポレーション東港支社ミツウマ営業倉庫
撮影日時:2011年10月7日
(2)ワークマン社は乙第13号証に記載されているように日本全国に約750の店舗を要しており、被請求人は株式会社ワークマンの多数の店舗に乙第2号証ないし乙第6号証に示された商品を販売した(乙第15号証)。
(3)請求人は甲第2号証の被請求人のカタログには乙第2号証ないし乙第6号証に示された商品が掲載されていないことを示しているが、そもそもカタログはその発行時点で販売可能な製品を掲載するのであって、或る特定の顧客のみに販売する製品を掲載することはあり得ない。
(4)被請求人が乙第14号証として提示する弘進ゴム株式会社の2010-2011の秋冬物ブーツの総合カタログには、「シーラックスライト」と「シーラックス」、「アスパーライト」と「アスパー」、「マリアンライト」と「マリアン」及び「リスターライト」と「リスター」の記載の如く、軽量靴にはその商品名の後に「ライト」の文字を付して使用することが常識になっているのであり、商品名の最後に記載されている「Light」、「ライト」の文字を「光」と判断することはない。

第4 当審の判断
1 本件商標の使用について
被請求人は、本件商標をその指定商品中の「長靴」について使用している旨主張し、証拠を提出しているので、該証拠について検討する。
(1)乙第1号証は、「船積み案内」と題する書面の写しと認められるところ、この書面には、仕向港「新潟」、上海出港日「2011年7月29日」、仕向港着予定日「2011年8月3日」、船会社「神原汽船」等が記載されると共に、「杭州鯤鵬総ゴム靴船積指示一覧表」が掲載され、そのうちのロットNo.W11SK-4欄に「ノーススターライト」及び「No.27MUCE」の文字が二段に記載され、それに対応する色、サイズ毎の数量、合計数、入数、箱数等が記載されている。上記書面によれば、2011年8月3日に、「ノーススターライトNo.27MUCE」と称する商品のM、L、LL、XLの各サイズ合計2380足(1箱10足入りで238箱)が新潟港に到着したものといえる。
(2)乙第2ないし第6号証は、商品「長靴」の本体及び包装箱を撮影した写真と認められるところ、被請求人の主張によれば、当該写真は、2011年10月7日に、新潟県北蒲原郡聖麹町所在の株式会社リンコーコーポレーション東港支社ミツウマ営業倉庫において、被請求人の東京販売部内の販売係長である村木が撮影したということである。
該写真によれば、長靴本体の胴部には、立方体形状に「N」、「S」及び「L」の文字を組み合わせた図形が表示され、その下部に「NorthStarLight」及び「Light Weight Model of Mitsuuma」の文字が二段に表示されていること、包装用ダンボール箱の側面の一つには、「ノーススターライトNo27MUCE」の文字が記載され、その下部にサイズ、色名、数量等を示す表が記載されていること、他の側面には「CNTNo.8503-LT-1」、「NIIGATA JAPAN」、「NORTH STAR LIGHT No.27MUCE」、「C/NO.」及び「MADE IN CHINA」の文字が4段に記載されていること、などが認められる。
そして、取引の経験則に従えば、上記写真に表された商品「長靴」は、乙第1号証の書面に記載された商品「ノーススターライト No.27MUCE」を指すものと見ても不自然ではないし、また、上記「NorthStarLight」、「ノーススターライトNo27MUCE」、「NORTH STAR LIGHT」及び「ノーススターライト」の各文字は、自他商品の識別標識たる商標としての機能を果たすものといえる。
しかして、上記「NorthStarLight」、「NORTH STAR LIGHT」及び「ノーススターライト」の各文字(以下「使用商標」という場合がある。)は、いずれもまとまりよく一連一体に表されており、これより生ずる「ノーススターライト」の称呼もよどみなく一連に称呼することができるものである。
また、使用商標は、「North(ノース)」「Star(スター)」「Light(ライト)」(欧文字部分は、全てを大文字で表記されたものを含む。以下、同じ。)のそれぞれ平易な英語及びその表音を組み合わせたものと認識され、そして、「North Star」が「北極星」を意味し、また、「Light」は「軽い」の意味のほかに「光」や「右」の意味を有する多義語であるが、当該文字の前に位置する「North Star」(北極星)との関係からすれば、「光」を意味するのが自然であって、使用商標の構成全体からは、「北極星の光」程の観念を生ずるといえるものである。
そうすると、使用商標は、全体として一体不可分のものとして認識し把握されるというのが相当である。
この点に関し、被請求人は、軽量靴にはその商品名の後に「ライト」の文字を付して使用することが常識になっているのであり、商品名の最後に記載されている「Light」、「ライト」の文字を「光」と判断することはない旨主張し、乙第14号証(弘進ゴム株式会社の2010-2011の秋冬物ブーツ総合カタログ)を提出した。
そこで、乙第14号証をみると、「シーラックスライト」と「シーラックス」、「アスパーライト」と「アスパー」、「マリアンライト」と「マリアン」及び「リスターライト」と「リスター」を商品名とするブーツ(長靴)の記載があり、「ライト」の文字を付加したものには、「超軽量」である旨の記載がされている。
これによれば、「ライト」の文字が、長靴について、軽量を示す表示として使用されていることがうかがわれるとしても、その使用事例である「シーラックスライト」などの表示は、使用商標と同様に一体不可分に結合された表示であって、殊更に、「ライト」の文字を軽量を示す表示として認識し、理解されるとは言い得ない。
そうとすると、その使用事例をもって、「ライト」の文字が、長靴について、軽量を示す表示として、取引上普通に使用されているとは言い難い。
しかも、使用商標は、上記したとおり、全体から「北極星の光」程の観念を生ずるものであるから、かかる被請求人の主張は採用することができない。
他方、本件商標は、「NORTHSTAR」の文字からなるものであり、「ノーススター」の一連の称呼及び「北極星」の観念を生ずるものといえる。
してみれば、使用商標は、本件商標とは外観、称呼及び観念を異にするものであって、社会通念上同一のものとはいえない。
(3)乙第7号証は、最上段枠内に「(株)ミツウマ販売管理システム」等の表示があり、最下段に「スタート」等のタスクボタンの表示がある、その体裁からすると、被請求人会社で使用されるコンピュータの帳票類の画面をプリントアウトしたものと認められるから、これ自体は対外的に取引上使用するものとはいい難く、社内でのみ用いられるものというべきであり、いわゆる取引書類には当たらないというべきである。
その内容は、「商品別実績問合せ」と題し、商品「0271055ノーススターライトNo.27MUCE」、入数「10」及び色「899」について、「出荷日」、「納品日」、「伝区分」、「伝票番号」、「出庫倉庫」、「サイズ明細」、「総数」、「原/売」、「金額」等の項目毎に整理されたものである。このうち、サイズ明細については空欄になっている。
そして、上記「ノーススターライト」の文字が自他商品識別標識たる商標として機能する場合があるとしても、前示のとおり、乙第7号証は取引書類といえない以上、同号証のみをもって「ノーススターライト」の商標が使用されているということはできない。
また、上記「ノーススターライト」の文字は、上記(2)のとおり、一連不可分のものとして認識し把握されるものであり、本件商標と社会通念上同一のものとはいえない。
(4)乙第8ないし第12号証は、「物品受領書」と題する書面の写しと認められ、取引先名として「(株)ミツウマ」、社名として「KKワークマン」、店名として「フナヒキ」等の各記載があるところから、被請求人からワークマン社の各店舗に宛てた商品に係る受領書と推認されるものの、その発行者は必ずしも明らかでない。いずれも、その「発注日」欄には「11.10.06」の、「納品日」欄には「11.10.15」の、「品名・規格」欄には「018758」及び「27 ミツウマウラウレタンケイリョウカラーワーク 5625700」の各記載が見られるほか、「入数」、「数量」、「原単価」、「原価金額」等の欄にそれぞれに応じた数字が記載され、各店舗に応じて伝票番号が記載されているが、上記書面には、本件商標は一切表示されていない。
これらの記載のうち、ワークマン社の各店舗に応じた伝票番号及び金額は、乙第7号証に表示されたワークマン社の各店舗名、伝票番号、金額と一致しているが、品名・規格欄に記載された「018758」及び「27 ミツウマウラウレタンケイリョウカラーワーク 5625700」は、乙第7号証に表示された「商品0271055ノーススターライトNo.27MUCE」とは相違している。
一般に、商品を特定するために品名・規格等として文字と共に数字が用いられることが多いことからすると、上記「018758」、「5625700」及び「0271055」の数字も商品を特定するために用いられていると見るのが自然であるから、乙第7号証の数字と乙第8ないし第12号証の数字が一致しない以上、乙第8ないし第12号証に記載された商品は、乙第7号証に表示された商品を示すものとはいい難い。
そうすると、乙第7号証に表示された「ノーススターライト」の文字が商標として認識されるとしても、同号証に係る商品が実際に取引されたものと認めることはできない。
また、上記「ノーススターライト」の文字は、上記(2)のとおり、一連不可分のものとして認識し把握されるものであり、本件商標と社会通念上同一のものとはいえない。
(5)乙第13号証は、ワークマン社に関するウェブサイトであるが、これには、日本全国に約750の店舗を要していることが認められるとしても、これのみをもって、被請求人が、ワークマン社の多数の店舗に長靴を販売したものとは認められない。
(6)乙第15号証は、乙第2号証ないし乙第6号証に示した商品を乙第7号証ないし乙第12号証で示したワークマン社の各店舗に販売したことを、ワークマン社で証明した証明書として提出されたものである。
そして、該証明書には、平成24年9月24日付けでワークマン社が、被請求人から納品(納品日 2011年10月15日)された別紙添付写真(乙2ないし乙6の写真と同様のものと認められる。)の製品「ノーススターライトNo.27MUCE」をワークマン社の船引店等の店舗において販売したことを証明する旨の内容が記載されている。
ところで、上記(4)のとおり、乙第7号証の数字と乙第8ないし第12号証の数字が一致しない以上、乙第8ないし第12号証に記載された商品は、乙第7号証に表示された商品を示すものとはいい難いところである。
仮に、上記証明書の記載内容から、乙第2号証ないし乙第6号証の写真の製品「ノーススターライトNo.27MUCE」をワークマン社の船引店等の店舗において、実際に販売されたものと推認できるとしても、これら写真に表示された使用商標は、上記(2)のとおり、一体不可分のものとして認識し把握されるものであり、本件商標と社会通念上同一のものとはいえない。
(7)以上のとおりであるから、被請求人の提出に係る証拠によっては、本件商標(本件商標と社会通念上同一と認識し得る商標を含む。)が取消請求に係る指定商品中「長靴」について使用されていたものと認めることはできない。
その他、本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内にその指定商品について使用されているものと認めるに足る証拠はない。
2 むすび
以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定商品について使用されていなかったものであるから、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-10-03 
結審通知日 2012-10-09 
審決日 2012-10-23 
出願番号 商願昭54-73434 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (125)
最終処分 成立  
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 小川 きみえ
鈴木 修
登録日 1984-04-20 
登録番号 商標登録第1682056号(T1682056) 
商標の称呼 ノーススター 
代理人 末岡 秀文 
代理人 広瀬 文彦 
代理人 野間 忠之 

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