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審決分類 審判 査定不服 商品(役務)の混同 登録しない X14
管理番号 1267123 
審判番号 不服2012-11295 
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-16 
確定日 2012-11-20 
事件の表示 商願2010-94399拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願標章
本願標章は、「JUJU」のローマ字を斜体にて横書きしてなり、登録第2131905号(以下、「原商標登録」という。)の防護標章登録出願として、第14類「貴金属,キーホルダー,宝石箱,記念カップ,記念たて,身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,貴金属製靴飾り,時計」を指定商品として、平成22年12月6日に登録出願されたものである。

第2 原商標登録に係る商標
原商標登録に係る登録商標(以下、「原登録商標」という。)は、「JUJU」のローマ字を斜体にて横書きしてなり、第4類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、平成元年4月28日に設定登録された後、二度にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、指定商品については、同21年12月16日に第3類「せっけん類,歯みがき,化粧品,香料類」を指定商品とする書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

第3 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願標章は、自己の業務に係る商品を表示するものとして需要者間に広く認識されているものでない。したがって、本願標章は、商標法第64条に規定する要件を具備しない。」旨判断し、本願を拒絶したものである。

第4 当審の判断
1 商標法第64条第1項の趣旨
商標法第64条第1項の規定は、原登録商標が需要者の間に広く認識されるに至った場合には、第三者によって、当該商標に係る商標権の効力(商標法第36条、同法第37条)の及ばない非類似商品又は役務に使用されたときであっても、出所の混同を来すおそれが生じ、出所識別力や信用が害されることから、そのような広義の混同を防止するために、「需要者の間に広く認識されている」商標について、その効力を非類似の商品又は役務について拡張する趣旨で設けられた規定である。
そして、防護標章登録においては、(1)通常の商標登録とは異なり、商標法第3条、同法第4条などが拒絶理由とされていないこと、(2)不使用を理由として登録が取り消されることがないこと、(3)その効力は、非類似の商品・役務に拡張されているため、第三者による商標の選択、使用を制約するおそれがあることなどを総合考慮するならば、商標法第64条第1項所定の「登録商標が・・・需要者の間に広く認識されていること」との要件は、当該登録商標が広く認識されているだけでは十分ではなく、商品や役務が類似していない場合であっても、なお商品・役務の出所の混同を来す程の強い識別力を備えていること、すなわち、そのような程度に至るまでの著名性を有していることを指すものと解すべきである(知的財産高等裁判所平成22年2月25日判決言渡、平成21年(行ケ)第10189号参照)。
以下、本件について上記の観点から検討する。
2 事実認定
(1)請求人は、「壽化学株式会社」の商号で1946年(昭和21年)11月19日に設立され、その翌年、「セタノール」を用いた「ジュジュクリーム」を発売、その4年後、1950年(昭和25年)に栄養オイル「卵黄リポイド」が配合された「マダムジュジュ」を発売した。この商品のキャッチフレーズは、「二十五歳以下の方は、お使いになってはいけません!」であり、女優・木暮美千代を専属モデルに起用して全国キャンペーンを展開して、ピーク時には、年間800万個、今でもコンスタントに200万個も売れる安定商品であり、その後、昭和43年に「マダムジュジュE」の「二十五歳はお肌の曲がり角」の名コピーが生まれた。この間、請求人は、昭和36年に、その商号を「ジュジュ化粧品株式会社」と変更した。(甲4、甲5及び請求人インターネットウェブサイト(http://www.juju.co.jp/company/history/))。
(2)請求人は、前記「マダムジュジュ」で一世を風靡してきたが、その後は、それを超え、あるいはそれに続くブランドを育成できなかった(甲8の2)。しかしながら、2003年(平成15年)7月に、保湿成分バイオヒアルロン酸配合のスキンケアシリーズ「ジュジュ アクアモイスト」を発売したところ、年間の出荷本数が100万本を超えれば大ヒットといわれるスキンケア市場で、2011年(平成23年)7月までに、「ジュジュ アクアモイスト」の全シリーズが累計販売本数4000万本を突破した(上掲請求人ウェブサイト、甲6の1、甲6の7及び甲6の8)。同シリーズは、成分名(ヒアルロン酸配合)と機能を商品のパッケージ前面で顕著に表示して顧客に訴求している(甲6の2、甲6の3、甲7の2、甲8の2、甲10の2、甲11の2及び請求人が「検証物」として提出した商品のパッケージ)。
そして、消費者が自分の手にとって確かめて購入する形式の化粧品(対面販売による化粧品以外の化粧品、いわゆるセルフ化粧品)の分野、特にスキンケア化粧品における国内の販売シェアは、2006年(平成18年)から2011年(平成23年)において、上位を維持していることがうかがえる(甲12及び甲13)。
(3)広告宣伝
請求人は、前記の「ジュジュ アクアモイスト」を付す商品のテレビ広告(甲23)を行っている。ただし、その放映の回数やその視聴地域は、立証がされていない。また、当該商品の出所識別標識として使用されているのは、「ジュジュ化粧品」、請求人ハウスマーク(請求人ウェブサイトにいう「あこがれの花」、以下「あこがれの花図形」という。)及び「AQUAMOIST」である。
また、請求人は、週刊誌その他の雑誌、新聞及び電車内の広告についても主張するが、その主張を裏付ける証拠方法の提出はない。
(4)「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN」への登載など
原登録商標は、AIPPI・JAPAN発行の「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN」に登載され(甲1)、原登録商標については、韓国・台湾その他の国において商標権を取得している(甲3の1ないし10)。
(5)観光客向けの情報誌
外国人観光客向けの情報誌(甲14)には、あこがれの花図形及び「ジュジュ化粧品株式会社」との併記で、「JUJUCOSMETICS」の表示がある(甲14の3)ほか、「JUJU COSMETICS」の表記(甲14の4)もあるが、甲第14号証の4は、「Highlighted Items」の特集頁であり、英語、中国語、ハングルなどで記載がされ、かつ、商品の販売店の所在地も英文で頁の下部に表記されていることからすれば、その読者は、我が国に観光に訪れる外国人向けのものである。
(6)商品の総合カタログ
請求人の商品総合カタログの表紙、裏表紙には、「JUJU COSMETICS」の表示がある(甲15ないし甲22)。しかしながら、当該カタログの表紙、裏表紙には「ジュジュ化粧品」及びあこがれの花図形が使用されているものである。
(7)商品のパッケージ
請求人は、商品のパッケージ中に「JUJU COSMETICS」を使用している。しかしながら、それらは、「ジュジュ アクアモイスト」、図形中に白抜きで「AQUAMOIST」(「保湿化粧水a」、「ピュアH100」、「保湿乳液a」、「保湿クリームa」、「保湿化粧下地a」、「保湿化粧水a(ミニサイズ)」、「薬用ホワイトニング化粧水H」、「薬用ホワイトニング乳液H」、「薬用ホワイトニングクリームH」)、「NATURAL JUJU(双葉の図形と結合してなるもの)」(「保湿クリームA」)及び「マダムジュジュ」(「マダムジュジュ」、「クリーム(敏感肌用)」)が、それらの態様から商品の出所識別標識として認識されるものであり、いずれも、請求人の代表的出所識別標識であるあこがれの花図形及び「ジュジュ化粧品」が使用されている上で、「JUJU COSMETICS」の文字がパッケージの面積に比して大変小さく表示されているにすぎないものである。なお、「JUJU COSMETICS」があこがれの花図形とパッケージ前面に併記されたもの(「カバーコンシーラー2.ナチュラル」、「UVコンシーラーファンデーション11.明るい肌色」、「フェイスパウダー」、「コントロールベースUV」)もあるが、それらの裏面には、あこがれの花図形及び「ジュジュ化粧品」が使用されている上、これらの販売実績などは証拠上、明らかではない。
(8)「JUJU」についての需要者の認識
職権で新聞記事、インターネットウェブサイトを調査したところ、「JUJU」は、当該文字を芸名とする女性歌手を指すものとして一般に認識されている状況がうかがえる(2012年5月2日付けスポーツ報知22頁によれば、同人のプロフィールとして「<JUJU>(ジュジュ)本名、年齢とも非公表。12歳でジャズシンガーを目指し18歳で渡米。ニューヨークで音楽経験を積み04年、『光の中で』でデビュー。06年の『奇跡を望むなら・・・』で注目され、07年の『素直になれたら』が大ヒット。09年には映画『余命1ヶ月の花嫁』の主題歌『明日がくるなら』がヒットし、アルバム『JUJU』が同年の日本レコード大賞優秀アルバム賞を受賞した。」との記載がある。)。
(9)請求人のグループ会社
請求人のグループ会社として、株式会社ジュジュウェルネス(化粧品)、株式会社フレッシュオリーブ(オリーブオイル、化粧品)、タイヨー株式会社(段ボール、紙器)及び株式会社ジャパンナナ(不動産管理)が存する(請求人ウェブサイトhttp://www.juju.co.jp/company/group/)が、いずれも本願の指定商品に係る業務を行うものではない。

3 判断
(1)前記認定事実によれば、請求人とその代表的出所識別標識「ジュジュ化粧品」は、ロングセラーの化粧品「マダムジュジュ」、近年の大ヒット商品である「ジュジュ アクアモイスト」シリーズの成功により、化粧品の商標としてその需要者の間において広く知られているということができる。
しかしながら、本件の全証拠によっても、原登録商標「JUJU」のみで商品、その広告、それに関する新聞、雑誌に掲載されたものはなく、「ジュジュ化粧品」が請求人の代表的出所識別標識として認識されるものであること、「JUJU COSMETICS」が、請求人の商号の英文表記(JUJU COSMETICS Co.,LTD.)の略称に相当するものとして表示された商品パッケージについても、「COSMETICS」が化粧品を意味するとの前提で、需要者に「ジュジュ化粧品」を認識させるものであること、前掲の請求人ウェブサイトについても、「あこがれの花図形」及び「ジュジュ化粧品株式会社」が請求人のインターネットウェブサイトの目立つ位置に表示されていること、本件審決時において「JUJU」から、本願の指定商品の分野における需要者が有名女性歌手の「JUJU」を想起することも少なくないといえること、請求人のグループ会社が、本願の指定商品に係る業務を行っていることが見当たらないことなどの事実が認められる。
そうすると、原登録商標「JUJU」は、本件の審決時において、その指定商品とは類似しない本願の指定商品に付された場合においてもなお、商品の出所に混同を来す程度に至る著名性を有しているとは認められない。
したがって、本願の願書並びに原登録商標に係る願書及び商標登録原簿の記載から、本願標章と原登録商標とが同一の構成からなること及び請求人が原商標登録の権利者と同一人であることが認められるとしても、本願は、商標法第64条に規定する「需要者の間に広く認識されている場合において、その登録商標に係る指定商品及びこれに類似する商品以外の商品又は指定商品に類似する役務以外の役務について他人が登録商標の使用をすることによりその商品又は役務と自己の業務に係る指定商品とが混同を生ずるおそれがあるとき」との要件を具備するものではない。
してみれば、本願標章は、商標法第64条の要件を具備するものではない。
(2)請求人の主張について
請求人は、要旨、提出した証拠中に「JUJU」の商標がそれ自体独立して表示されている使用例は少なく、「JUJU COSMETICS」の使用であるが、「COSMETICS」の語は、この商標を使用する商品を表しているものであるから、社会通念上、「JUJU」の使用とみて差し支えないものである。このことは、登録商標にこれを付す商品名を付加して使用した場合、これを登録商標の使用とみるべきことは、侵害事件や不使用取消審判事件等の判決の判示事項として多く見られるところであり、これと異なる解釈をしなければならない理由は見いだせない。また、提出した証拠においては「JUJU」ではなく「ジュジュ」又は「ジュジュ化粧品」の使用例がほとんどであるが、片仮名からなる商標は、それが著名となれば、併用している欧文字もその影響で著名となる例は多く見られるから、「ジュジュ」又は「ジュジュ化粧品」のほかに「JUJU」が使用されている以上、「JUJU」についても著名性が生じているというべきである。さらに、原審が、原登録商標が「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN」に掲載されていること及び外国において商標登録されていることを理由に著名性を否定するのは失当であるなどと主張する。
しかしながら、請求人の使用する商標は、前記のとおり「ジュジュ化粧品」がほとんどを占めることは請求人の主張のとおりであり、これが需要者に広く認識されるに至ったとしても、「ジュジュ」の音をローマ字で表記した「JUJU」が、「ジュジュ化粧品」と同等の周知性を獲得したものと同列に評価できるものではない。また、「JUJU COSMETICS」と表示されれば、「ジュジュ化粧品」を想起する者があるとしても、原登録商標の指定商品と類似しない本願の指定商品について、「JUJU」のみから請求人を商品の出所として認識するということはできない。さらに、請求人は、不使用取消審判、侵害事件の判示事項などを根拠としてその主張をなすが、本件の争点は、商標の使用の有無ではなく、原登録商標が、その指定商品と非類似の商品についても出所の混同を来す程度に著名であるか否かであるところ、その著名性の判断に際して、実際に使用されている態様を考慮して判断するのは、理の当然というべきである。
また、原査定の説示は、請求人が原審の拒絶理由に対して意見書において主張した点について、「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN」に掲載されていること及び外国において商標登録されていることの事実から原登録商標「JUJU」の著名性が直ちに立証されるものではないとの趣旨で説示されたものというべきであって、当該事実が存することゆえに原登録商標の著名性を否定したものと解することはできず、請求人の主張は当を得ないものである。
したがって、請求人の主張は、いずれも理由が無く採用することができない。
(3)結語
以上からすれば、本願標章が、商標法第64条に規定する要件を具備しないものとして、本願を拒絶した原査定は、妥当なものであって、取り消すべき限りではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2012-09-10 
結審通知日 2012-09-14 
審決日 2012-09-28 
出願番号 商願2010-94399(T2010-94399) 
審決分類 T 1 8・ 82- Z (X14)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩本 和雄庄司 美和 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 前山 るり子
内田 直樹
商標の称呼 ジュジュ 
代理人 新垣 盛克 

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