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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X1235
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X1235
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X1235
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X1235
管理番号 1266084 
審判番号 無効2010-890092 
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-10-28 
確定日 2012-11-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第5256629号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成23年8月24日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成23年(行ケ)第10426号、平成24年5月31日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第5256629号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5256629号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成21年3月30日に登録出願、第12類「自動車並びにその部品及び附属品」及び第35類「自動車並びにその部品及び附属品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定商品及び指定役務として、同年7月8日に登録査定、同年8月14日に設定登録されたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標については、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第8号証を提出し、さらに、請求人がした本件商標に対する登録異議の申立て事件(異議2009-900423、以下「本件異議事件」という。)において提出した甲第5号証ないし甲第30号証(以下「異議甲第○号証」という。)を援用した。

1 請求の理由
(1)引用商標等の著名性について
請求人の所有に係る商標「LAMBORGHINI」(以下「引用商標」という。)は、請求人の名称の略称としても世界的に極めて周知著名なものであり、1970年から1980年代において世界的に大ヒットを博し一世を風靡したスーパーカー・ブームの代名詞ともなっていた。請求人の製造・販売に係るスーパーカーは、1台数千万円もする価格にかかわらず、その秀逸なデザイン及び性能からマニア垂涎の的となっている。
さらに、請求人は、本国イタリアのみならず、我が国を含めた世界103力国以上の国と地域において、引用商標のほか、「AUTOMOBILI LAMBORGHINI」、「LAMBORGHINIと牛の図形」、「AUTOMOBILI LAMBORGHINIと牛の図形」等について、第12類「自動車並びにその部品及び附属品」についてのみならず、他の分類に属する商品及び役務についても多数の商標登録を有している(異議甲第5号証ないし異議甲第30号証)。
以上のように、請求人は、引用商標はじめ、「AUTOMOBILI LAMBORGHINI」、「LAMBORGHINIと牛の図形」、「AUTOMOBILI LAMBORGHINIと牛の図形」等について、本件商標の出願日(平成21年3月30日)前より今日に至るまで継続して、商品「自動車」について使用しており、かつ、インターネット、カタログ、雑誌、自動車レース大会等において、多数宣伝広告している。その結果、引用商標は、本件商標の出願日前においてはもちろんのこと、現在においても、請求人の取扱いに係るスーパーカーを表示する商標として、マニアのみならず一般の需要者、取引者間においても周知著名となっている。
(2)商標法第4条第1項第7号及び同第19号該当性
本件商標は、デザイン化してなるアルファベットで「Lambormini」と横書きし、その上段に「牛のしっぽ」の図形を配してなるものである。してみると、本件商標は、著名な引用商標と小型を意味する英語の「MINI」を組み合わせてなるものであることが容易に推察される。しかも、請求人のシンボルとも言える牛の図形のしっぽ部分を配してなるものであることからも、請求人の所有に係る著名商標を意識して考え出されたものであることが容易に推察される。
実際、本件商標の商標権者(以下「商標権者」という。)は、そのホームページにおいて、請求人の世界的著名なスーパーカーの各車種をデフォルメしたカスタムバギー(ミニカー)を本件商標「Lambormini(ランボルミーニ)」の下、宣伝し販売している(甲第3号証)。
また、商標権者は、そのホームページで、「ランボルギーニを愛する11名が考えに考え抜いた究極のカスタムバギー」又は「ランボルギーニじゃなくてランボルミーニ!?」と表示している。
さらに、商標権者は、ユーチューブ動画サイトにおいて、請求人の製造販売に係る実際の車を横に並べて、同車種のデフォルメしたカスタムバギーの宣伝に利用している。
してみると、商標権者は、著名な引用商標の人気に便乗しようとの不正の意図があることは明白であって、かかる行為は、著名な引用商標の人気に便乗するフリーライド(ただ乗り)であり、不正の行為であること明らかである。また、かかる使用態様が、あたかも、請求人の許諾を得ているかのように、需要者、取引者に誤認されることは多言を要しない。
上記のように、著名な引用商標と極めて類似する本件商標の登録を維持することは、国際信義に反し、公序良俗に違反するものと言わなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第19号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第10号及び同第15号該当性
著名な引用商標と称呼及び観念において類似する本件商標がその指定商品について使用された場合、需要者、取引者は、あたかも請求人又は請求人と人的若しくは資本的に何らかの関連のある者の業務に係る商品であると、商品の出所について混同を生ずること必定である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号にも該当する。
付言すれば、著名な引用商標と称呼及び観念において極めて類似する本件商標の商標登録の維持を認めると、商品の出所の混同は避けられず、現実の使用に係る商標に化体した業務上の信用を保護し、もって競争秩序の維持を図る商標法の法目的に反することになり、不当であること多言を要しない。
なお、本件商標の登録が維持され、使用されるときは、請求人の信用を毀損するとともに、その顧客吸引力を奪い、財産的価値にも損害を与えることになって、公正なる競争秩序が破壊されるおそれがあることは明らかである。このような事態は、商標法及び不正競争防止法の目的に反するものであり、不法行為の一種として許されるべきでないこと当然である。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。

2 答弁に対する弁駁
請求人は、被請求人の答弁に対して何ら弁駁していない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。

1 本件異議事件について
請求人は、本件商標について、平成21年11月4日に本件異議事件の申立てをした。本件審判は、本件異議事件でした商標法第4条第1項第11号の主張がなく、それ以外の主張及び証拠方法は、本件異議事件と同一である。
そして、本件異議事件における決定は、「本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に該当しない。」旨の認定をした(乙第2号証)。上記認定は極めて妥当なものである。そして、本件審判の請求の理由は、上述のように、本件異議事件とほぼ同一内容であるので、本件異議事件の決定の認定が当然維持されると確信する。

2 被請求人は、本件審判における主張について、本件異議事件の決定における認定を踏襲、引用し、さらに、以下の主張を追加する。
(1)商標法第4条第1項第11号について
請求人は、証拠説明において、甲第2号証は、請求人が引用商標を我が国においても商品「自動車並びにその部品及び附属品」について、商標登録を有していることを証明するものである旨述べているが、請求人は、甲第2号証に示す登録第1507740号商標(別掲(2)の構成よりなる商標。以下「甲2商標」という。)を、第12類「自動車」等について所有しているにもかかわらず、本件審判では、商標法第4条第1項第11号を主張していない。請求人は、本件異議事件において、甲2商標を引用して商標法第4条第1項第11号を主張したが、決定で、本件商標と甲2商標は商標非類似と認定されたので、本件審判においては、商標の類否判断が再びメインテーマとなるのを回避するとともに、他の構成要件をクローズアップしつつ、審判請求をしたものと推測される。
しかしながら、本件商標と甲2商標との類否判断が、本件審判でも重要であることに変わりはない。商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号の適用について、「商標非類似」をもって、他の要件について判断するまでもなく、適用を否定することが可能である。
(2)商標非類似について
本件商標及び請求人の所有する「LAMBORGHINI(図形を含む。)」が商標非類似であるとの点について
(なお、被請求人のいう「請求人の所有する『LAMBORGHINI(図形を含む。)』」は、被請求人の以下の主張からすると、「甲2商標」を指しているのか、あるいは、「引用商標」を指しているのか判然としないが、被請求人の以下の主張では、図形部分には一切触れていないので、以下「引用商標」と表記する。)
ア 本件商標は、「ランボルミニ」と称呼され、請求人が主張するように、「ランボルミーニ」とは称呼されない。そして、その後半部「mini」及びその称呼「ミニ」は、接尾語や接頭語として、他の片仮名語等と一連に連結する(乙第3号証及び乙第4号証)。
特許庁の審査実務においても、「mini」、「ミニ」の語は他の語と結合して、一体不可分の造語的結合商標を形成するとされている(乙第5号証ないし乙第7号証)。
イ 引用商標は、「ランボルギーニ」又は「ランボルグヒニ」と一連に称呼される。
ちなみに、引用商標は、甲各号証(甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証及び異議甲第5号証ないし異議甲第30号証)にも示すように、「LAMBOR」と略されることなく、「LAMBORGHINI」と一連に表記されている。また、「LAMBORGHINI」は、個人名「Ferruccio Lamborghini」に由来し(甲第4号証)、本国イタリアにおいても、「LAMBOR」と「GHINI」に分離されることなく、一体不可分に使用されている。
ウ 本件商標の称呼「ランボルミニ」と、引用商標の称呼「ランボルギーニ」や「ランボルグヒニ」とは、全体の音数が6音(7音)と冗長にわたるものでなく、いわゆるゴロが良いことも相俟って、いずれもよどみなく一連に称呼される。
このように一連に称呼される「ランボルミニ」と「ランボルギーニ」や「ランボルグヒニ」とは、共に音調上、前半部は、口の開きが大きく明確に発音される強音の語頭音である「ラ」で始まり、次いで「ンボル」と、口の開きが小さく曖昧に発音される弱音が続く。そこで、本件商標や引用商標のように、後半部に「ミニ」や「ギーニ」、「グヒニ」のような短音集合の強音が来ると、上記語頭音とこの後半部とが、看者の注意を惹くインパクトの強い部分となる。
そして、本件商標のインパクトの強い後半部の強音は、「ミニ」であるのに対し、引用商標のインパクトの強い後半部の強音は「ギーニ」、「グヒニ」である。両者を音質上対比すると、両者は、50音図の異なる行に属するとともに、「ミ」の音は、両唇音、鼻音よりなる清音であるのに対し、「ギ」や「グ」の音は、軟口蓋音、破裂有音よりなる濁音であり、音質を著しく異にする。しかも、「ギ」や「グ」の音は、続く後音の長音「ー」や弱音「ヒ」で強調されており、強く聴覚される。
このように、本件商標と引用商標とは、音調上強いインパクトの後半部「ミニ」と「ギーニ」、「グヒニ」とにおいて、「ミ」と「ギ」や「グ」との音質差異により、明確に区別される。この差異が、比較的短い両商標の称呼全体に及ぼす影響は大きく、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標となっている。
なお、本件商標の指定商品である第12類「自動車」等の業界では、漢字や平仮名よりも、アルファベットや片仮名表記の商標が圧倒的に多用されている。もって、その取引者や需要者のアルファベットや片仮名に対する観察力、理解力、注意力の水準は高く、本件商標と引用商標とが称呼、観念、外観上非類似である旨、容易に区別可能である。
(3)商標法第4条第1項第7号及び同第19号について
ア 甲第4号証や甲第5号証によって、引用商標が商標法第4条第1項第19号の要求する周知度・著名度に達しているかは不明である。また、社名周知性と商標周知性が区別されているか、特殊マニア間の周知性と一般需要者、取引者間の周知性が峻別されているか等疑問である。しかも、両証拠は、共に本件商標の出願日(平成21年3月30日)や登録日(平成21年8月14日)より、後の日付のものであり、証拠能力がない(商標法第4条3項等参照)。
また、IPDLの「日本国周知・著名商標検索」中にも、その掲載はなかった(乙第8号証)。
イ 前記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似である。商標法第4条第1項第7号や同第19号の法適用ニーズが明らかに欠落している。
ウ 本件商標の採択、出願にあたり、買い取らせのための先取り出願、国内参入の阻止、代理店契約の締結、出所表示機能の希釈化、名声等の毀損の目的等の考慮は一切ない。
請求人の「フリーライド行為や請求人の許諾を得ているかのように需要者、取引者に誤認させる」目的の出願であったとする主張は認められない。法の予定する不正の利益を得る目的や他人に損害を与える目的等が被請求人にあったとする根拠、裏付け資料は、請求人から提出されていない。
なお、甲第3号証は、論理の飛躍が著しく評価に値するものではないとともに、2010年9月30日のものであり、本件商標の出願日や登録日より、後の日付のものである(商標法第4条3項等参照)。したがって、甲第3号証は証拠能力がない。
エ してみると、以上を前提とした「公序良俗違反」の主張も成り立たない。
請求人は、「著名商標保護の国際信義」を論拠とするが、論理の飛躍であるとともに、商標法第4条第1項第19号が新設された平成8年の法改正以降、かかるケースに、同第7号の適用はない。ちなみに同第7号については、適用を本来のものに限定すべきとする判例もある(乙第9号証参照)。
このように本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第19号には該当しない。
(4)商標法第4条第1項第10号及び同第15号について
ア 引用商標が著名商標であるか、商標法第4条第1項第10号や同第15号の要求する周知度に達しているか不明である。
イ そもそも、本件商標と引用商標とは、非類似である。商標法第4条第1項第10号や同第15号の法適用ニーズが欠落している。
ウ 本件商標が引用商標に類似しないのは、もちろんのこと、本件商標を指定商品に使用しても、需要者、取引者が、請求人の業務に係る商品であると、誤信する理由はない。また、請求人と人的若しくは資本的に何らかの関連ある者の業務に係る商品であると、誤解する可能性も存しない。
このような「商品の出所の混同」を生じるおそれといえるような裏付け証拠は、請求人から何ら提出されていない(なお、その判断基準、立証方法については、特許庁審査基準(乙第10号証)を参照)。
このように本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当しない。

3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号には該当しない。
したがって、本件商標の登録は、同法第46条の規定により無効とすべきではない。

第4 当審の判断
請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号に該当すると主張して甲各号証を提出しているので、以下、この点について検討する。
1 事実認定
(1)請求人における引用商標の使用状況その他取引状況等
請求人は、1962年(昭和37年)にイタリアで設立された自動車会社であり、主に高級スポーツカーを製造、販売しており世界的に著名である。請求人の製造に係る自動車は、日本においても、1968年(昭和43年)ころから輸入が始まり、1970年代に「カウンタック」などがスーパーカーなどと呼ばれて人気となり、請求人の名称の一部である「LAMBORGHINI」との引用商標も、請求人又は請求人の業務に係る商品「自動車(スーパーカー)」を表示するものとして、「ランボルギーニ」と称呼され、日本国内の自動車の取引業者や愛好家の間においても広く認識されるようになった。請求人は、日本を含む世界103か国以上の国と地域において、引用商標である「LAMBORGHINI」のほか、「AUTOMOBILI LAMBORGHINI」、「『LAMBORGHINI』の文字と牛の図柄」(甲2商標等)、「『AUTOMOBILI LAMBORGHINI』の文字と牛の図柄」などについて、自動車等を指定商品等として、数多くの商標登録をしている。このうち、甲2商標は、「LAMBORGHINI」の文字部分は、上向きに弧を描くように横書きされた文字部分に特徴があり、また、牛の図柄部分は、S字状に細長く上方に伸び、さらに先端部は丸みを帯びてふくらむよう描かれた特有の尾の形状(右側下に細い切り欠きがある)に特徴があるといえる(甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証)。
(2)被請求人における本件商標の使用状況その他取引状況等
被請求人は、請求人の製造、販売に係る自動車を模したカスタムバギーを、「Lambormini」や「ランボルミーニ」との商標を使用して、宣伝し販売している。また、被請求人は、そのホームページ上において、「ランボルギーニを愛する11名が考えに考え抜いた究極のカスタムバギー/ランボルミーニ登場!」、「2009.6.1発売開始」、「あのフェラーリやランボルギーニなどスーパーカー業界でも有名な『リバティーウォーク社』による夢のカスタムマシーンがついに登場!こだわりにこだわりぬいたフォルムはランボルギーニを完全再現!」、「ラボルギーニじゃなくてランボルミーニ!?」、「Lambormini/他では絶対見ることの出来ない。LBカスタムバギー!」、「ムルシエラゴのボディラインを巧みにデフォルメしたランボルミーニ。」との表示をしている。
さらに、インターネット動画共有サービスであるYouTube(ユーチューブ)上には、請求人の製造、販売に係る自動車と、被請求人の製造、販売に係るカスタムバギーを横に並べた動画がアップロードされている。被請求人は、欧文字「Lamborghini」(先頭のLの文字が大文字、その他の文字は小文字)を筆記体(斜体)で書した商標を付したカスタムバギーも製造している(甲第3号証、甲第6号証及び甲第7号証)。
(3)引用商標の外観、称呼、観念等
引用商標は、欧文字「LAMBORGHINI」が横書きされたものであり、欧文字である「LAMBORGHINI」との外観が看取できる。また、引用商標からは、「ランボルギーニ」、「ランボルグヒニ」などの称呼が生じ得るが、上記のとおり、引用商標は、請求人又は請求人の業務に係る商品「自動車(スーパーカー)」を表示するものとして、日本国内の自動車の取引業者や愛好家の間においても広く認識されていることから、需要者において、「ランボルギーニ」との称呼が生ずると解される。
さらに、引用商標は、欧文字で表記され、通常の日本人にとって、格別の観念を生じることはない。
(4)本件商標の外観、称呼、観念等
本件商標の構成は、別掲(1)のとおりである。
本件商標は、欧文字「Lambormini」(先頭のLの文字が大文字、その他の文字は小文字)が、立体的に見えるように陰影を付した筆記体(斜体)により、上向きに弧を描くように横書きされた文字部分と、「Lambormini」の中央の「o」の文字の上部から、S字状に細長く上方に伸び、さらに先端部は丸みを帯びてふくらんだ特有の形状(右側下に細い切り欠きがある)が付された、全体として動物の尾のように描かれた図形部分からなる商標である。本件商標は、文字部分が図形部分に比較して大きいことに照らすならば、看者に対して強い印象を与える部分は、文字部分であるといえる。
また、本件商標の文字部分からは、「ランボルミニ」の称呼のほか、上記のとおり、被請求人が、そのホームページ上で、「Lambormini」とのアルファベットと「ランボルミーニ」との片仮名を併用していることなどからすれば、「ランボルミーニ」との称呼が生じ得るものと認められる。
さらに、本件商標の文字部分は、後半の「mini」から、「ミニ」、「小さい」、「小型」を連想する余地はあり得るとしても、欧文字で一連に表記され、これらの文字列に対応した語は一般には存在せず、需要者において、その意味を認識、理解することはできない。また、本件商標の図形部分は、必ずしも何を描いたものか、明確に理解できるものとまではいえない。したがって、本件商標からは、全体として特定の観念を生じない。

2 判断
(1)商標法第4条第1項第7号該当性について
「商標法4条1項7号にいう『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標』の該当の有無を判断するに際し、当該商標の構成に、非道徳的、卑わい、差別的、矯激、若しくは他人に不快な印象を与えるような文字、図形等を含まない場合においては、同項15号、19号の各規定が置かれている趣旨に照らすと、単に他人の業務に係る商品や役務と混同を生ずるおそれがあるか、あるいは、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものであるかが問われるときには、15号、19号に規定された各要件を充足するか否かによって、4条1項所定の障害事由の成否を検討すべきであって、そのような事実関係が存在することのみをもって7号の障害事由に該当すると解するのは相当とはいえない。」(知財高裁 平成22年(行ケ)第10040号 平成22年11月8日判決言渡)
これを本件についてみると、請求人は、「『LAMBORGHINI』(引用商標)は、請求人の業務に係る商品『自動車(スーパーカー)』を表示するものとして、本件商標の登録出願前より周知著名であるところ、本件商標は、引用商標と『小型』を意味する『mini』とを組合せ、さらに、請求人のシンボルマークといえる『牛の図形』中の尾を配してなるものであって、引用商標に類似するものである。商標権者には、著名な引用商標にフリーライドする不正の行為がある。また、かかる使用態様が、あたかも、請求人の許諾を得ているかのように、需要者、取引者に誤認される。このように、著名な引用商標と極めて類似する本件商標の登録を維持することは、国際信義に反し、公序良俗に違反する。」旨主張する。
上記請求人の主張は、商標法第4条第1項第15号又は同第19号で規定する各要件を充足するか否かについての商標登録障害事由であって、これらの要件の充足の有無により同第15号又は同第19号の障害事由の成否を判断すべきであるから、請求人主張の事実関係をもって、商標法第4条第1項第7号で規定する商標登録障害事由に該当すると解するのは相当ではない。
してみると、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する、との請求人の主張は、無効の理由として妥当ではなく、採用することができない。
その他、本件商標は、その構成自体が矯激、卑わい、差別的若しくは他人に不快を与えるような文字又は図形ではなく、商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合にも該当せず、他の法律によって、その使用が禁止されている商標、特定の国若しくはその国民を侮辱する商標又は一般に国際信義に反する商標にも該当しないから、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(2)本件商標と引用商標との類否の認定、判断について
本件商標は、その文字部分が看者に対し強い印象を与える部分といえるところ、本件商標の文字部分と引用商標を対比すると、本件商標の文字部分10文字中9文字が引用商標と同一であり(なお、本件商標は、Lの文字以外が小文字で構成されている。)、引用商標の中程に位置する「GH」が「m」である点のみが相違するといえる。そして、本件商標からは、「ランボルミニ」ないし「ランボルミーニ」との称呼が生じるのに対し、引用商標からは、「ランボルギーニ」との称呼が生じ、本件商標の「ミ」ないし「ミー」と引用商標の「ギー」の部分のみが相違し、相違する音は母音構成を共通にする近似音であることからすれば、本件商標と引用商標とは、称呼において類似する。
本件商標は、字体における特徴があり、また図形部分が付加されている点で、引用商標と外観において若干の相違があるものの、全体として類似するといえる。
以上によれば、本件商標と引用商標は、本件商標の文字部分10文字中9文字が引用商標と共通すること、称呼において、相違する1音が母音構成を同じくする近似音であり類似すること、外観においても、若干の相違があるものの、全体として類似することに加え、前記請求人、被請求人の各商標の使用状況等取引の実情等を総合して判断すると、本件商標と引用商標は、互いに類似する商標であると解される。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
上記のとおり、引用商標は、本件商標の出願以前から現在に至るまで、イタリアの高級自動車メーカーである請求人又は請求人の業務に係る商品「自動車(スーパーカー)」を表示するものとして、日本国内の自動車の取引業者や愛好家の間で広く知られているから、他人の業務に係る商品(自動車)を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標に該当するものと認められる。また、本件商標は、上記のとおり、引用商標に類似し、本件商標の指定商品には、「自動車」を含んでいる。そうすると、本件商標は、他人の業務に係る商品(自動車)を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標であって、その商品(自動車)に使用をするものに該当すると認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
また、上記のとおり、請求人は、本件商標の出願以前から現在に至るまで、引用商標である「LAMBORGHINI」等の商標を使用して、「自動車(スーパーカー)」を製造、販売する業務を行っていること、本件商標は、引用商標と類似する商標であり、その指定商品に引用商標が使用されているのと同一商品(自動車)を含むこと、被請求人は、「Lambormini」や「ランボルミーニ」との商標を使用して、請求人の製造、販売に係る自動車を模したカスタムバギーを製造、販売していること等を総合すると、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれのある商標に該当すると認められる。
したがって、仮に本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当しないとしても、同第15号に該当するものと認められる。
(5)商標法第4条第1項第19号該当性について
さらに、被請求人は、上記のとおり、請求人が世界的に著名な自動車メーカーであり、引用商標も請求人の業務に係る商品(自動車)を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることや、かかる引用商標と本件商標が類似の商標であることを認識しながら、自動車等を指定商品等とする本件商標登録を行い、実際に「Lambormini」や「ランボルミーニ」との商標を使用して、請求人の製造、販売に係る自動車を模したカスタムバギーを製造、販売していることが認められる。そうすると、本件商標は、被請求人が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認められる。
したがって、仮に本件商標が商標法第4条第1項第10号、同第15号に該当しないとしても、同第19号に該当するものと認められる。

3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであり、また、仮に本件商標が同号に該当しないとしても、同第15号に違反して登録されたものであり、また、仮に本件商標が商標法第4条第1項第10号、同第15号に該当しないとしても、同第19号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標


(2)甲第2号証に示す登録商標(甲2商標)



審理終結日 2012-09-06 
結審通知日 2012-09-11 
審決日 2012-09-28 
出願番号 商願2009-23083(T2009-23083) 
審決分類 T 1 11・ 222- Z (X1235)
T 1 11・ 22- Z (X1235)
T 1 11・ 25- Z (X1235)
T 1 11・ 271- Z (X1235)
最終処分 成立  
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 小林 正和
前山 るり子
登録日 2009-08-14 
登録番号 商標登録第5256629号(T5256629) 
商標の称呼 ランボルミーニ、ランボルミニ 
代理人 森川 正仁 
代理人 原田 洋平 
代理人 中田 和博 
代理人 合志 元延 
代理人 森本 義弘 
代理人 青木 博通 
代理人 柳生 征男 
代理人 特許業務法人森本国際特許事務所 

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