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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201119200 審決 商標
不服20121806 審決 商標
不服201118923 審決 商標
不服2012650030 審決 商標
不服2011650211 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X30
管理番号 1265973 
審判番号 不服2011-27761 
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-26 
確定日 2012-10-18 
事件の表示 商願2010-90762拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第30類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成22年11月22日に登録出願され、その後、指定商品については、原審における平成23年4月28日付け手続補正書により、第30類「蒸し鍋用のたれ」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、『蒸し鍋の』『たれ』の文字を二段にして、文字の輪郭を線で表した方法で表示してなる。そして、蒸し鍋がブームとなっている今日、食品メーカーも様々な種類の調味料(たれ)を売り出している状況にあること、商標において、文字の輪郭を線で表示することは普通に行われており、この程度の表示はいまだ普通に用いられる方法の域を脱していないものであることに照らせば、これをその指定商品に使用するときは、『蒸し鍋に用いられるたれ』程の意味合いを理解させるにとどまり、単に商品の用途を表示したものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、別掲のとおり、「蒸し鍋の」の文字を上段に、「たれ」の文字を下段に二段にして、文字の周辺に影を描き立体的に表した方法で書してなるところ、構成中の「蒸」の文字の草冠の横線を右側に伸ばし、噴き出す蒸気を想起させるよう描いてなるものであるが、文字を立体的に描いたり、文字をデザイン化すること等は、食料品を取り扱う分野の包装等において普通に行われており、かかる装飾の程度では特殊な態様よりなるものということはできず、むしろ、普通に用いられる態様の域を脱していない表現方法よりなる標章とみるのが相当である。
そして、本願指定商品との関係において、その構成中「蒸し鍋」の文字は、「油で焼いたり煮汁で煮たりせず、蒸して加熱しつけだれで食べる料理。」を意味する一般的な料理名を表したものであり、「たれ」の文字は、「焼物・鍋物の調味用の汁。」を意味する語であるから、構成全体からは、「蒸し鍋用の調味用の汁(たれ)」を意味する語として、取引者、需要者に認識されるものといえる。
さらに、本願指定商品を取り扱う業界において、「蒸し鍋用のたれ」が「蒸し鍋のたれ」または「蒸し鍋用のたれ」として、例えば、以下の事例のように用いられていることを窺い知ることができるものである(なお、下線は、審判の合議体で加えた。)。
ア 「キッコーマン食品株式会社」のウェブサイトにおいて、「蒸し鍋をいつもとはひと味違ったおいしさで楽しめる『野菜が主役 蒸し鍋のたれ』シリーズ 新発売!」の記載がある(http://www.kikkoman.co.jp/corporate/news/10034.html)。
イ 「ケンコーコム」のウェブサイトにおいて、商品カテゴリとしての「蒸し鍋のたれ」の記載がある(http://www.kenko.com/product/seibun/sei_773127.html)。
ウ 「日刊工業新聞」(2011年3月22日付け、15頁)
「富士甚醤油/豆板醤とニンニク効いたモヤシたれ」の見出しの下、「温野菜サラダや炒め物、蒸し鍋のたれとしても使える。」の記載がある。
エ 「日本食糧新聞」(2010年11月27日付け)
「中部流通特集:中部鍋つゆ市場最前線 群雄割拠の市場 商品開発・新企画に衰え見えず」の見出しの下、「今期はバラエティー鍋つゆ以外にも『トマトすき焼き』『塩すき焼き』を中心に古くからのすき焼きが見直され、また、『蒸し鍋』『水炊き』用のたれなども主要各社から多く発売されている。」の記載がある。
オ 「セブンーイレブンネット」のウェブサイトにおいて、「・・・蒸し鍋のたれ、しゃぶしゃぶ、鍋もののつけだれなど様々なお料理でお使いいただけます。」の記載がある(http://www.711net.jp/product/p/9510164)。
そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、その構成全体として「蒸し鍋用の調味用の汁(たれ)」であることを表したものと認識、理解するというのが相当であるから、単に商品の品質、用途を表示したものであり、自他商品を識別するための標識としての機能を有しないものといわざるを得ない。
なお、請求人は、本願商標構成中の「蒸」の文字は、「蒸し料理」の際に生じる「湯気」を連想させ、また、「蒸」と「鍋」の二文字をこのデザインによりつなげることにより、一体感をもたらしており、こうした一体感は、本願商標独特の構図が視覚を通じて需要者に強く印象付けられるものである。また、輪郭のわずかなぼかしにより、蒸し鍋の具材の柔らかさや湿気感への連想を促す効果を醸し出しており、標章全体をもって蒸し鍋料理のあつあつでやわらかなさまを具体的に表現している。こうしたメッセージをもつ本願商標の構成は、「商品の用途を『普通に用いられる方法で』表示する」標章の範疇から大きくかけ離れたものである旨主張している。
しかしながら、食品分野の商品のパッケージデザインにおいて、需要者の購買意欲を向上させるために、その商品に係る特徴、メッセージを暗示させるようにデザインすることは普通に行われているものの、そのようなデザインが施された商品に好感を得ることがあり得るとしても、それにより商品の出所を識別するものとはいい難いものであり、そして、構成中の文字の一部を長く伸ばして描いたり、図案化して表示する等の手法が一般的に行われているところである。
そうとすれば、本願商標の構成態様は格別特異なものとはいい難く、この程度の図案化及び装飾は、通常行われているデザイン手法であり、いまだ普通に用いられる方法の域を脱していないといえるものであって、請求人の主張は採用することができない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。

(2)その他の請求人の主張について
請求人は、請求人が本願商標を付して使用する商品(以下「請求人商品」という。)の周知性や販売実績を踏まえれば、外観的な特徴とも相俟って、本願商標は、取引者及び需要者には請求人の商品を表す標識として十分に機能している旨述べ、その根拠となる証拠として、甲第1号証ないし同第64号証を提出している。
そこで、本願商標が、その指定商品との関係において、自他商品の識別力を有しているか否かについて、以下、検討する。
請求人商品は、平成22年(2010年)9月から販売されていることが認められる(甲1及び甲2)。
請求人商品のテレビCMは、平成23年(2011年)1月から同年10月まで断続的に全国ネットのものを含む放送局により放映されている(甲3ないし甲12及び甲31ないし甲50)。
請求人商品の雑誌における記事及び宣伝広告は、2010年9月から2011年12月にかけて発行された雑誌(NHKテレビテキスト 今日の料理ビギナーズ 2010年12月号(2010年11月21日発行)、おかずラックラク! 2010年11-12月号(2010年11月11日発行)、同 2011年1-2月号(2011年1月11日発行)、生活協同組合神戸コープ発行 ステーション 2010年11月号(2010年10月10日発行)、saita 2012年1月号(2011年12月7日発行)、きょうの料理ビギナーズ 2011年6月号(2011年5月21日発行)、Mart 2010年11月号(2010年9月28日発行)、同 2011年1月号(2010年11月27日発行)、おはよう奥さん 2010年11月号(2010年10月2日発行)、同 2011年2月号(2010年12月2日発行))に掲載されたことが認められる(甲14ないし甲21及び甲56ないし甲60)。
しかしながら、テレビCMについては、甲第13号証、甲第51号証及び甲第52号証によれば、15秒間のものであるが、その間「エバラ蒸し鍋のたれ」のナレーションがされているものであり、また、この間に2ないし3種類の請求人商品が映し出されるものの、商品全体が映っている中から、それに表示されている商標が印象に残るものとはいい難いものである。
また、雑誌の記事、宣伝広告においても、請求人商品の写真が掲載されているとしても、その多くは紙面の大きさに比して、請求人商品の写真、特に本願商標部分は非常に小さく表示されているのみであり、これらの記事等をもってしては、請求人が主張する本願商標の構成態様における特徴的な部分について、需要者等が自他商品識別標識として認識することは困難であるといわざるを得ない。
さらに、雑誌の記事、宣伝広告において、「すき焼きのたれ、すき焼きのたれ マイルド、蒸し鍋のたれ バーニャカウダ味」(甲16)などのように、「蒸し鍋のたれ」を他の商品表示と同列に扱ったり、「蒸し鍋のつけだれシリーズ」の商品として請求人商品を宣伝していることに加えて、いずれも請求人であるエバラ食品工業株式会社の商品であることがわかるように記載されているものであることからすると、「蒸し鍋のたれ」の文字(語)自体が請求人商品を表示するものとして認識されるようになったとは認められない。
そして、甲第22号証において、2010年8月ないし2011年3月の月平均で、「その他のたれ類」の分野において、トップの売上げとなった旨の記載があるが、対象となっている商品はわずか8商品にすぎないものであり、「エバラムシナベノタレバーニヤカウダ270」と「エバラムシナベノタレカンコクミソアジ275」を合計しても1世帯あたり月約0.002個であり、また、甲第23号証によれば、2010年8月ないし2011年3月の期間における、「エバラ 蒸し鍋のたれ バーニャカウダ味 270g」は、1店舗における1か月の販売数量は約3.5個、「エバラ 蒸し鍋のたれ 韓国味噌味 275g」は、1店舗における1か月の販売数量は約2個である。
以上の事実によれば、請求人商品は2010年9月の発売開始以来、現在まで2年程度販売されているが、その総販売数量は不明であるものの、2010年8月ないし2011年3月の期間における販売数量は決して多いとはいえないものである。
また、請求人商品は、全国ネットを含むテレビ及び雑誌において広告宣伝されていることが認められるものの、「蒸し鍋のたれ」は元来、その文字どおりの意味合いとして一般的に表示される語であり、前記のとおり、請求人以外の者においても使用されているものである。
さらに、本願商標は、テレビCM、雑誌等において、「エバラ」の語とともに使用されるなど、常に請求人の取り扱う商品であることを明確にして使用されているものであるから、請求人の使用の事実を考慮しても、「蒸し鍋のたれ」の文字自体が、請求人の業務に係る商品を認識させるものとはいえない。
さらにまた、本願商標の態様は、ややデザイン化されたものであるが、普通に用いられる方法の域を脱しないものであり、また、宣伝、広告においても、当該態様が顕著に表示されているものではない。
以上、総合考慮すると、本願商標は、請求人の使用の事実を考慮しても、請求人の業務に係る商品であることを認識できるものとはいえないもの
である。

(3)まとめ
前記(1)及び(2)のとおり、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、その構成全体として「蒸し鍋用の調味用の汁(たれ)」であると認識、理解するというのが相当である。
したがって、本願商標は、単に商品の品質、用途を表示したものと認識するにとどまるといわなければならない。
以上のとおりであるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本願商標)



審理終結日 2012-08-13 
結審通知日 2012-08-20 
審決日 2012-09-05 
出願番号 商願2010-90762(T2010-90762) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (X30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 薩摩 純一大橋 信彦 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 堀内 仁子
豊瀬 京太郎
商標の称呼 ムシナベノタレ、ムシナベ、ムシ 
代理人 中山 俊彦 
代理人 下坂 スミ子 

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