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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 009
管理番号 1265918 
審判番号 取消2012-300006 
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2012-01-04 
確定日 2012-10-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第4039352号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第4039352号商標の指定商品中,第9類『電子応用機械器具(「ガイガー計数器・高周波ミシン・サイクロトロン・産業用X線機械器具・産業用ベータトロン・磁気探鉱機・磁気探知機・地震探鉱機械器具・水中聴音機械器具・超音波応用測深器・超音波応用探傷器・超音波応用探知機・電子応用扉自動開閉装置・電子顕微鏡」を除く。),電子管,半導体素子,電子回路(「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路」を除く。),電子計算機用プログラム』については,その登録は取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4039352号商標(以下「本件商標」という。)は,「スキャンメール」の片仮名を書してなり,平成7年11月20日に登録出願,第9類「磁気探知機・超音波応用探知機等の電子応用機械器具及びその部品,測定機械器具,電気磁気測定器,郵便切手のはり付けチェック装置,電気通信機械器具,盗難警報器,火災報知機」を指定商品として,同9年8月8日に設定登録され,その後,商標権の存続期間の更新登録がなされ,現に有効に存続しているものである。
そして,本件審判の請求の登録は,平成24年1月24日である。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標の商標権者は,日本国内において,本件商標を,継続して3年以上「電子応用機械器具(『ガイガー計数器・高周波ミシン・サイクロトロン・産業用X線機械器具・産業用ベータトロン・磁気探鉱機・磁気探知機・地震探鉱機械器具・水中聴音機械器具・超音波応用測深器・超音波応用探傷器・超音波応用探知機・電子応用扉自動開閉装置・電子顕微鏡』を除く。),電子管,半導体素子,電子回路(『電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路』を除く。),電子計算機用プログラム」について使用していない。また,その商標登録原簿に徴する限り,本件商標に,専用使用権あるいは通常使用権が設定・許諾されている事実も見当たらない(甲第1号証)。
よって,前記各指定商品についての本件商標の登録は,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は,取消2008-300305審判事件における平成20年5月13日付提出の審判事件答弁書第3ページにおいて,本件商標が使用されている商品「郵便不審物選別装置とは,すなわち指定商品中に含まれる『磁気探知機』である」と自認しており(甲第2号証),その事実は同審判事件の「商標審決公報」第3頁にも記載されている(甲第3号証)。
取消2008-300305審判事件で被請求人が乙各号証を提出して本件商標が使用されていると主張している商品「郵便不審物選別装置」と,本件取消審判事件において被請求人が乙各号証を提出して本件商標が使用されていると主張している商品「郵便不審物選別装置」とは完全に同一の商品であり,一方,商品「磁気探知機」は類似商品・役務審査基準で類似群コード11C02(以下「11C02」という。)に属する商品として例示されている商品である。
したがって,被請求人が本件取消審判事件において「郵便不審物選別装置が類似群コード11C01(以下「11C01」という。)に対応する電子応用機械器具に該当する」と主張することは,取消2008-300305審判事件において「郵便不審物選別装置が11C02に属する商品である『磁気探知機』である」と自認していることと全く相反するものであり,「自己の言動(または表示)により他方がその事実を信用し,その事実を前提として行動(地位,利害関係を変更)した他方に対し,それと矛盾した事実を主張することを禁ぜられる」とする「禁反言の法理」に反するものである。
即ち,被請求人は取消2008-300305審判事件において,「郵便不審物選別装置」が現行の11C02に属する商品である「磁気探知機」に属する商品であると自認しており,これを本件取消審判において言を翻し,全く同じ商品である「郵便不審物選別装置」が「11C01に対応する電子応用機械器具」であると主張することは,禁反言の法理に反するものであって取消を免れんとするための方便以外の何ものでもなく,到底その主張が認められるものではない。
(2)被請求人は,11C02に属する例示商品から工業用・軍事用・学術用であって比較的大規模な特殊用途装置を抜粋し,「郵便不審物選別装置」が卓上型であって大規模な装置ではないため11C02に対応する電子応用機械器具ではないと主張すると共に,11C01に属する例示商品から家庭や一般企業,官庁などで使用される電子機器を抜粋し,「郵便不審物選別装置」と需要者層が共通するということを根拠として,郵便不審物選別装置が11C01に対応する電子応用機械器具であると主張しているが,かかる主張は自己にとって都合の良い我田引水の理論を展開するものであって全く根拠のないものである。
(3)被請求人は,11C02に対応する電子応用機械器具から比較的大規模な特殊用途装置である「工業用又は軍事用の金属検出器」などを抜粋して主な需要者層が研究機関や鉱業会社,軍事関連組織等であると述べるが,11C02に属する商品として例示されている商品には「ガイガー計数器,電子顕微鏡」もあり,例えば「ガイガー計数器」,即ち「ガイガーカウンター」は,商品の購買支援サイトであって多様なジャンルの商品やサービスの価格情報・商品情報・クチコミ情報などを集約して提供している「価格.com」(http://kakaku.com/)によれば767件の商品情報があり,約10,000円からの価格で個人が購入できる商品である(甲第5号証)。
また,同様に「電子顕微鏡」についても,「価格.com」によれば41件の商品情報があり,約25,000円から約70,000円の価格で個人が購入できる商品である(甲第6号証)。
したがって,11C02に対応する電子応用機械器具には「小型機器であって個人や一般企業,官庁などが需要者である商品」も含まれているものであり,11C02から一部の商品を抜粋し,「同類似群コードに対応する電子応用機械器具が工業用・軍事用・学術用であって比較的大規模な特殊用途装置が該当し,主な需要者層として想定されるのは研究機関や鉱業会社,軍事関連組織等である」とする被請求人の主張は,自己の主張に都合の良い例示商品を我田引水して独善的な主張を行っているだけのものであって何ら根拠のないものである。
(4)被請求人は,11C01に対応する電子応用機械器具から「混信防止装置ほか」を抜粋して,需要者層が家庭や一般企業,官庁などであると述べるが,11C01に属する商品として「コンピュータ」や「コンピュータソフトウェア」があることは周知の事実であるが,「工業用・軍事用・学術用のコンピュータ(例えば工業用マイクロコンピュータ)やコンピュータソフトウェア」についてはその用途や需要者の規模を問わず11C01に属する商品であるとされ,比較的大規模な装置からなる商品であっても11C02に属するものとはされていないことは周知の事実である。
したがって,11C01から一部の商品を抜粋し,「同類似群コードに対応する電子機器が家庭や一般企業,官庁などで使用される電子機器である」とする被請求人の主張も,自己の主張に都合の良い例示商品を我田引水して独善的な主張を行っているものであって何ら根拠のないものである。
(5)被請求人が本件商標を使用している商品「郵便不審物選別装置」は,被請求人自身が述べているように,レターボム(手紙爆弾)などの郵便物に紛れこませた不審物を発見するための装置であり,使用の際には装置開口部から郵便物を挿入し,不審物の有無を検知して知らせる装置である。
この「郵便物に紛れこませた不審物を探知し知らせる」という目的は,不審物により使用者の身体等に危害が生じることを未然に発見して通知するといういわゆる「防犯・防災」を目的とするものであり(この点については被請求人が火災報知機メーカーとして創業し総合防災企業を目指すと社長メッセージで述べている点とも一致する,甲第7号証),例えば同様に「使用者に危害を与える可能性のある物を検知し,警報で知らせる」ことを目的とする防犯装置」である「センサーを用いて侵入者を検知して警報を発する防犯装置」については第9類の類似群コード09G04(以下「09G04」という。)に属する商品とされており,「侵入者検知センサー」については第9類の類似群コード10C01(以下「10C01」という。)に属する商品とされている(甲第8号証)。
かかる事実を踏まえ,上述の意義に沿って類似商品・役務審査基準における類似群の同一性を参酌して解釈すれば,被請求人が本件商標を使用している「郵便不審物選別装置」はその目的・用途・販路・需要者層は防犯装置と完全に一致するものであるため,09G04あるいは10C01に属する商品とされるべきであって,そもそも「電子応用機械器具」の範疇に属する商品ではない。そして,被請求人が自ら述べているように「郵便不審物選別装置」は「磁気探知機及び超音波応用探知機」とも全く別の機器であるのであるから,いずれにしても被請求人は本件商標を本件取消審判の請求に係る商品について使用していない。
3 まとめ
以上述べたとおり,乙第1号証ないし乙第14号証によっては,被請求人及び通常使用権者であるとするスキャナ・ジャパン株式会社(以下「スキャナ・ジャパン」)という。)が,本件商標を本件取消審判の請求に係る商品である「電子応用機械器具(「ガイガー計数器・高周波ミシン・サイクロトロン・産業用X線機械器具・産業用ベータトロン・磁気探鉱機・磁気探知機 ・地震探鉱機械器具・水中聴音機械器具・超音波応用測深器・超音波応用探傷器・超音波応用探知機・電子応用扉自動開閉装置・電子顕微鏡」を除く。),電子管,半導体素子,電子回路(「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路」を除く。),電子計算機用プログラム」に使用していることは何ら証明されていないものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第14号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標は,「磁気探知機・超音波応用探知機等の電子応用機械器具及びその部品」の範囲内にある商品の一つである「郵便不審物選別装置」について,商標権者である被請求人が使用を許諾したスキャナ・ジャパンにより使用されている。
ア 乙第1号証には,スキャナ・ジャパンが販売する郵便不審物選別装置(以下「本製品」という。)の写真を示す。本製品の正面には「SCANMAIL」の文字が付されている。「SCANMAIL」は,片仮名により表記された本件商標「スキャンメール」をアルファベット表記したものであるから,本件商標と社会通念上同一の商標である。
イ 乙第2号証は,スキャナ・ジャパンが発行しているカタログである。本製品は,レターボム(手紙爆弾)等に使用される小型電子回路や刃物等の不審物を発見するための郵便不審物選別装置であり,「磁気探知機・超音波応用探知機等の電子応用機械器具及びその部品」の範囲内にあることは明らかである。また,乙第2号証にも本製品の製品名として「スキャンメール」及び「SCANMAIL」が使用されている。なお,これらの一部には型番として「10K」が付されているが,これは自他商品識別機能を有しないから,「スキャンメール 10K」及び「SCANMAIL 10K」は,いずれも本件商標と社会通念上同一である。
ウ 乙第3号証は,スキャナ・ジャパンのホームページ(平成24年2月20日現在)の写しであり,卓上型レターボム検知器として「スキャン・メール」の表記が見られる。
エ 乙第4号証ないし乙第7号証は,スキャナ・ジャパンが平成23年に「スキャンメール」を輸入・販売したことを示す証明書面である。
オ 乙第4号証は,発注元からスキャナ・ジャパンに対する注文書であり,平成23年12月7日にスキャナ・ジャパンに対し,発注元から注文がなされている。品名の欄の「DESC-0201」とは,後述するように「スキャンメール 10K」のことである。
カ 乙第5号証は,注文された「スキャンメール」を英国スキャナMSC社から取り寄せた際の送り状であり,送り元(1 From)の欄において,日付に「12/14/11」(2011年12月14日),送り元の会社に「SCANNA MSC LTD.」とあり,送り先(2 To)の欄において,送り先の会社に「SCANNA JAPAN INC.」とある。また,輸送情報(3 Shipment Information)の欄において,品名が「DESKTOP MAIL SCANNER」とある。
キ 乙第8号証は,英国スキャナMSC社のホームページの写しであり,「SCANMAIL 10K」が「electronic desktop mailscanner」と記載されていることからも,当該品が「スキャンメール 10K」であることは明らかである。これらから,上記注文書に対応して,スキャナ・ジャパンが英国スキャナMSC社に「スキャンメール」を注文し,商品が平成23年12月14日に発送されたことが分かる。
ク 乙第6号証はスキャナ・ジャパンから発注元に対する納品書であり,乙第7号証はスキャナ・ジャパンから発注元に対する請求書である。これらから,スキャナ・ジャパンから発注元に対し平成23年12月22日に「スキャンメール」が納入されたことが分かる。
ここで,納品書及び請求書の品名の欄には「スキャンメール 10K」と記載され,品番の欄には「DESC-0201」と記載されている。すなわち,乙第4号証の注文書において「DESC-0201」と記載されていたのは,「スキャンメール 10K」のことである。
これらの証明書面から,スキャナ・ジャパンは,平成23年12月に乙第1号証ないし乙第3号証に記載された「スキャンメール」を英国から輸入し,譲渡したことは明白である。
(2)以上のように,審判請求前3年以内に,スキャナ・ジャパンにより郵便不審物選別装置について本件商標と社会通念上同一の商標が使用されていることは明らかである。
(3)被請求人がスキャナ・ジャパンに対して使用許諾した経緯について
被請求人は従前,本製品の製造元である英国スキャナMSC社(Scanna MSC Ltd.)と代理店契約を締結し,その商品を輸入・販売してきたが,英国スキャナMSC社は,日本法人(スキャナ・ジャパン株式会社)を介した輸入・販売も行うこととなった。この日本法人による輸入・販売を開始するにあたって,被請求人とスキャナ・ジャパンとの間で話し合いがなされ,平成18年7月26日に,スキャナ・ジャパンが郵便不審物選別装置に商標「スキャンメール」並びに「SCANMAIL」を使用することを,被請求人が許諾するに至った(なお,当時,スキャナ・ジャパンは設立準備中)。当該使用許諾を行った事実は,乙第9号証でスキャナ・ジャパンの社長が認めるとおりである。なお,乙第10号証にて乙第9号証の川口氏がスキャナ・ジャパンの代表者であることが確認できる。
以上のとおり,被請求人がスキャナ・ジャパンに本件商標の通常使用権を許諾していたことは明らかである。
(4)スキャナ・ジャパンが輸入・販売する「スキャンメール」が,「磁気探知機・超音波応用探知機等の電子応用機械器具及びその部品」の範囲内にある商品の一つである「郵便不審物選別装置」であることは明らかであるが,該商品は,以下に述べるとおり,11C01に対応する電子応用機械器具に該当するものである。
ア 「スキャンメール」は,乙第2号証に記載されているように,レターボム(手紙爆弾)等に使用される小型電子回路や刑務所の囚人向けの差し入れ品や手紙に挿入された刃物等の不審物を発見するための卓上型検知装置である。本体の上面と背面には,連通する開口が形成され,その間の空間部には斜面が形成されている。使用する際には,郵便物を本体上面の開口から挿入し,斜面に沿って滑らせ,本体背面の開口から取り出す。このとき,郵便物内に不審物を検知した場合には,音と表示でアラームを発する。このように「スキャンメール」は,持ち運び可能な卓上型であって,一般企業や官庁などにおいて,小規模な不審物発見業務に用いられるセキュリティ用品としての電子機器である。近年,テロ対策の一環として,一般企業や官庁等でも郵便物の検査を行う需要が高まっていることもあり,「スキャンメール」は,サービス業を含む一般企業や,要人・会場警備を行うセキュリティ会社,外国大使館,官庁などに販売されており,これらが主な需要者層である。
イ 国際分類第10版に対応する類似商品・役務審査基準では,11C02に対応する電子応用機械器具としては,「ガイガー計数器・高周波ミシン・サイクロトロン・産業用X線機械器具・産業用ベータトロン・磁気探鉱機・磁気探知機・地震探鉱機械器具・水中聴音機械器具・超音波応用測深器・超音波応用探傷器・超音波応用探知機・電子応用扉自動開閉装置・電子顕微鏡」が例示されている。
また,第9類の商品のうち11C02に該当する商品として挙げられているのは,例えば「工業用又は軍事用の金属検出器・レーザー光発生装置(医療用のものを除く。)・超音波応用海中深度針・粒子加速装置・X線防護装置(医療用のものを除く。)・工業用の放射線装置・工業用の放射線透写スクリーン・ソナー・音源標定機器・測深用機械器具・X線装置(医療用のものを除く。)」などである。
これらから明らかなように,11C02に対応する電子応用機械器具には,工業用・軍事用・学術用であって比較的大規模な特殊用途装置が該当し,主な需要者層として想定されるのは,研究機関や鉱業会社,軍事関連組織等である。すなわち,一般企業や官庁において小規模に使用されるセキュリティ用品としての電子機器である「スキャンメール」とは,用途及び流通経路が大きく異なり,需要者層も全く異なるから,「スキャンメール」は11C02に属するものではない。
ウ 一方,11C01に対応する電子応用機械器具としては,「電子計算機及びその周辺機器・電子応用静電複写機・電子式卓上計算機・電子辞書・ワードプロセッサ」が例示されている。
また,第9類の商品のうち11C01に該当する商品として挙げられているのは,例えば「混信防止装置・磁気コードを利用した識別用腕輪・電光掲示板・商品用電子タグ・磁気エンコーダ・電気式錠・スキャナー(データ処理装置)」などである。これらは,家庭や一般企業,官庁などで使用される電子機器であり,「スキャンメール」はこれらと同様に一般企業や官庁用において,小規模に使用されるセキュリティ用品としての電子機器であるから,両者は需要者層が共通する。よって,「スキャンメール」は,11C01に対応する電子応用機械器具であると言える。
エ このように,「スキャンメール」が11C01に対応する電子応用機械器具であることは,明らかであるが,本件商標権では,指定商品が「磁気探知機・超音波応用探知機等の電子応用機械器具及びその部品」と記載されていて,「スキャンメール」が「磁気探知機」あるいは「超音波応用探知機」であると誤解されるおそれもあるので,「磁気探知機」及び「超音波応用探知機」の商品の意義につき,念のため主張する。
まず,商標法施行規則別表において定められた商品又は役務の意義は,商標法施行令別表の区分に付された名称,商標法施行規則別表において当該区分に属するものとされた商品又は役務の内容や性質,国際分類を構成する類別表注釈において示された商品又は役務についての説明,類似商品・役務審査基準における類似群の同一性などを参酌して解釈するのが相当である(最三小判平成23年12月20日(平成21年(行ヒ)第217号))。
「磁気探知機」とは,地表の磁場のわずかな乱れを探知する装置をいい,特に潜水艦を探知するための軍用の磁気センサのことである(乙第11号証及び乙第12号証)。商標法施行規則別表においては,近い内容や性質の商品を並べて記載してあるところ,「磁気探知機」は「磁気探鉱機」の次に記載されている。「磁気探鉱機」は,地表の磁場の乱れから,鉄鉱石等の鉱物を発見する機器であり,「磁気探知機」もこれに近い原理及び用途のものであると言える。また,類似商品・役務審査基準に照らして,「磁気探知機」の属する商品群に「スキャンメール」が該当しないことは,上記イで述べたとおりである。なお,国際分類の類別表注釈には,「磁気探知機」の商品の意義を解釈するのに資する情報は記載されていない。
以上に照らせば,「磁気探知機」は,地表の磁場の乱れを検出することによって,近傍に存在する磁性体の存在を検知する,特に軍事用として使用される機器のことであり,一般企業や官庁で小規模に使用されるセキュリティ用品としての電子機器である「スキャンメール」と全く別の機器であることは明らかである。
「超音波応用探知機」は,包括的な名称であって特定の機能の機器を指す一般名称としては用いられていないが,字義通りに解釈すれば,超音波を利用して何らかの探知を行う機器であると言える。商標法施行規則別表では,「超音波応用探知機」は「超音波応用測深器,超音波応用探傷器」の次に記載されている。「超音波応用測深器」は,船舶や潜水艦において,超音波を海底に向かって発振し,反射した超音波を受信するまでの時間によって,深さを検出する機器である。また,「超音波応用探傷器」は,超音波を表面に当てて,その反射率によって視認できない表面の傷を検知する機器である。 これらは,いずれも軍事用あるいは工業用に使用されるものであり,「超音波応用探知機」も,同様に軍事用あるいは工業用に使用されるものであると言える。また,類似商品・役務審査基準に照らして,「超音波応用探知機」の属する商品群に「スキャンメール」が該当しないことは,上記2)で述べたとおりである。なお,国際分類の類別表注釈には,「超音波応用探知機」の商品の意義を解釈するのに資する情報は記載されていない。
以上に照らせば,「超音波応用探知機」は,超音波を何らかの表面に対し発振し,反射した超音波を受信することで,探知を行う軍事用あるいは工業用として使用される機器のことであり,一般企業や官庁で小規模に使用されるセキュリティ用品としての電子機器である「スキャンメール」と全く別の機器であることは明らかである。
(5)本件商標については,以前,請求人により商標法第50条に基づく取消審判が2度請求されたが,いずれも請求不成立が確定している。
平成21年9月29日付判決によれば,(2)ア?ウ,(3)で述べた事項は,既に確定判決において認定された事項である(乙第13号証)。
第2回審判の審決でも,同様に各事実が認定されている(乙第14号証)。
2 まとめ
以上の証拠から,本件商標と社会通念上同一の商標が,電子応用機械器具(「ガイガー計数器・高周波ミシン・サイクロトロン・産業用X線機械器具・産業用ベータトロン・磁気探鉱機・磁気探知機・地震探鉱機械器具・水中聴音機械器具・超音波応用測深器・超音波応用測深器・超音波応用探傷器・超音波応用探知機・電子応用扉自動開閉装置・電子顕微鏡」を除く。)の範囲内にある商品の一つである「郵便不審物選別装置」について,商標権者である被請求人が使用を許諾したスキャナ・ジャパンにより,過去3年以内に使用されたことは明白である。

第4 当審の判断
1 商標法第50条に規定する商標登録の取消しの審判にあっては,その第2項において,その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての使用をしていることを被請求人が証明しない限り,使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにした場合を除いて,商標権者は,その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れないとされている。
2 被請求人は,本件商標は「磁気探知機・超音波応用探知機等の電子応用機械器具及びその部品」の範囲内にある商品の一つである「郵便不審物選別装置」について,商標権者が使用を許諾したスキャナ・ジャパンにより使用されている旨主張し,これに対し,請求人は,「郵便不審物選別装置」は,「防犯・防災」を目的とする防犯装置であり,そもそも「電子応用機械器具」の範疇に属する商品ではないから,本件審判の取消請求に係る指定商品には含まれない旨主張する。
したがって,被請求人が本件商標を使用したと主張する「郵便不審物選別装置」が,本件審判の取消請求に係る指定商品に含まれるか否かが争点であることから,以下,判断する。
(1)請求人及び被請求人が提出した証拠によれば,以下の事実が認められる。
ア 被請求人提出の乙第2号証及び請求人提出の甲第2号証の参考資料3は,スキャナ・ジャパンが発行したカタログ(抜粋,写し)であるところ,「スキャンメール 10K-卓上型レターボム検知器」として「郵便物内の不審物を確実に発見します。本製品は,レターボム(手紙爆弾)等に使用される小型電子回路や刑務所の囚人向けの差し入れ品や手紙の挿入された刃物等の不審物を発見するための卓上型検知装置です。」との記載がある。
また,請求人提出の甲第2号証は,取消2008-300305の審判事件について被請求人が提出した答弁書(写し)であるところ,その第3頁において,本件商標「スキャンメール」が使用されている商品についての説明に,「本件商標が使用されているのは郵便不審物選別装置である。郵便不審物選別装置とは,すなわち本願指定商品中に含まれる『磁気探知機』であり,・・・」との記載がある。
イ 請求人提出の甲第2号証の参考資料1は,「HOCHIKI」「セキュリティ設備機器 製品カタログ 2005」(ホーチキ株式会社,平成17年4月現在のもの,抜粋,写し)であるところ,その2葉目の目次「不審物選別装置」の項には,「郵便不審物選別装置」「X線透視装置」「ポータブルX線透視装置」との記載があり,その3葉目の「不審物選別装置郵便不審物選別装置」には,「郵便不審物選別装置/スキャンメール10K(英国SCANNA MSCLTD製)」が紹介されている。
そして,その商品説明には「高い選別能力 高感度磁気センサは,クリップ,ホチキス針,金属タグなどの一般的な金属製品と,爆発物の部品と思われるような不審な金属片や刃物などとの違いを見分けることができます。また,テストカードにより精度チェックが行えます。」との記載がある。
また,同葉の下部には,郵便物をスキャンメール10Kに通す手順が図とともに紹介され,「高感度磁気センサーが金属物体の有無を選別します」との記載がある。
ウ 前記イの,郵便物をスキャンメール10Kに通す手順の図や同一の記載は,被請求人提出の乙第13号証の平成21年(行ケ)第10118号判決,第16頁にも記載されている。
(2)以上によれば,以下のとおり認められる。
ア 使用商標について
被請求人は,本件商標と社会通念上同一と認められる「スキャンメール」を,「郵便不審物選別装置」に使用しているものと認められる。
イ 使用商品「郵便不審物選別装置」について
上記(1)の事実によれば,「郵便不審物選別装置」は,「卓上型レターボム検知器」を商品名とする,レターボム(手紙爆弾)等に使用される小型電子回路や刑務所の囚人向けの差し入れ品や手紙の挿入された刃物等の不審物を発見することを目的とするものであって,高感度磁気センサーにより,クリップ,ホチキス針,金属タグなどの一般的な金属製品と,爆発物の部品と思われるような不審な金属片や刃物などとの違いを見分けて金属物体の有無を判別する機器であることから,磁気により郵便物に金属が内包されているかを探知するための機器ということができる。
これに対し,本件の指定商品には「磁気探知機」が含まれているところ,この磁気探知機も磁気により金属等を探知するための機器であることから,「郵便不審物選別装置」は,その機能,用途からして「磁気探知機」に相当する商品と認められる。
また,被請求人自身,取消2008-300305審判事件において「郵便不審物選別装置は,すなわち,指定商品中に含まれる『磁気探知機』である」と自認している(甲第2号証)ものである。
ウ 被請求人の主張について
被請求人は,「郵便不審物選別装置」は,「ガイガー計数機・高周波ミシン・・・電子顕微鏡」を除いた電子応用機械器具,すなわち,類似商品・役務審査基準【国際分類第10版対応】において「11C01」とグルーピングされた商品群に属するものであって,同基準によって「11C02」とグルーピングされた商品群に属する磁気探知機ではない」旨主張し,その理由として,当該磁気探知機は,特に,工業用・軍事用・学術用であって比較的大規模な特殊用装置が該当し,・・・一般企業や官庁において小規模に使用されるセキュリティ用品としての電子機器である「スキャンメール」とは,用途及び流通経路が大きく異なり,需要者も全く異なる旨主張する。
しかしながら,磁気探知機は,以下の例示のとおり,乾電池で作動するものや小型で低価格のものも市場に流通しており,軍事用に限られるものとはいえない。
(ア)「島津の磁力計-磁気探知機」と題するインターネットウェブページにおいて,商品の紹介に「磁気探知器MB100,101形および120形は,鉄,ニッケルなどの強磁性体の金属で構成されている物体や,電流が流れている物体を探査する 1軸差動フラックスゲート形の高感度な磁気探知器です。」との記載があり,商品の電源について「単2乾電池8個」との記載がある(http://www.shimadzu.co.jp/products/enviro/mb100.html)。
(イ)株式会社タートル工業のインターネットウェブページにおいて,「磁気探知機」の紹介に「磁気探知機 GA-52Cx他 」「低価格,高感度,持ち運びに便利 株式会社タートル工業 SCHONSTEDT INSTRUMENT COMPANY(米国)製の磁気探知機で,地中の鉄および鋼鉄を探知します。探知機の先端がターゲットの真上に来ると,音声信号を発します。」との記載がある(http://www.ipros.jp/product/detail/2000091182/)。
そして,省令表示である「磁気探知機」に「軍事用」「工業用」等の用途を限定する表示がされていないことからしても,当該「磁気探知機」が軍事用に限られるものでないことは明らかである。
さらに,前記のとおり,被請求人自身が「郵便不審物選別装置」が「磁気探知器であることを認めているのである。
したがって,「郵便不審物選別装置」が,前記の11C02とグルーピングされた「磁気探知器」ではなく,11C01とグルーピングされた商品群である電子応用機械器具に属する旨の被請求人の主張は,採用することができない。
エ 「郵便不審物選別装置」が取消請求に係る商品に含まれるか否かについて
本件の取消請求に係る商品は,前記第2に記載のとおり,第9類「電子応用機械器具(「ガイガー計数器・高周波ミシン・サイクロトロン・産業用X線機械器具・産業用ベータトロン・磁気探鉱機・磁気探知機・地震探鉱機械器具・水中聴音機械器具・超音波応用測深器・超音波応用探傷器・超音波応用探知機・電子応用扉自動開閉装置・電子顕微鏡」を除く。),電子管,半導体素子,電子回路(「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路」を除く。),電子計算機用プログラム」であるから,「磁気探知機」及びこれに類似すると推定される商品は,取消請求に係る商品から全て除かれているものである。
そうとすれば,「郵便不審物選別装置」は,取消請求に係る商品には含まれない商品である。
3 むすび
以上のとおりであるから,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,取消請求に係る指定商品のいずれかについての本件商標(社会通念上同一のものを含む。)の使用をしていることを証明したものと認めることができない。
また,被請求人は,取消請求に係る指定商品について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,その指定商品中,「電子応用機械器具(「ガイガー計数器・高周波ミシン・サイクロトロン・産業用X線機械器具・産業用ベータトロン・磁気探鉱機・磁気探知機・地震探鉱機械器具・水中聴音機械器具・超音波応用測深器・超音波応用探傷器・超音波応用探知機・電子応用扉自動開閉装置・電子顕微鏡」を除く。),電子管,半導体素子,電子回路(「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路」を除く。),電子計算機用プログラム」について,商標法第50条の規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-07-17 
結審通知日 2012-07-25 
審決日 2012-08-30 
出願番号 商願平7-120456 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (009)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩本 和雄 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 田中 亨子
鈴木 修
登録日 1997-08-08 
登録番号 商標登録第4039352号(T4039352) 
商標の称呼 スキャンメール 
代理人 香原 修也 
代理人 藤田 雅彦 
代理人 広川 浩司 

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