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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X43
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X43
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X43
審判 全部無効 商3条柱書 業務尾記載 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X43
管理番号 1264378 
審判番号 無効2011-890034 
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-05-17 
確定日 2012-09-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第5311184号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成23年12月13日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成24年(行ケ)第10019号、平成24年5月31日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第5311184号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5311184号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1の構成のとおり、「アールシータバーン」の片仮名を書してなり、平成21年10月24日に登録出願され、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、同22年2月19日に登録査定、同年3月26日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第52号証を提出している。

2 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、請求人である株式会社ダイナックが平成21(2009)年10月1日に東京都千代田区丸の内1-8-1森トラストタワーN館1階にオープンしたレストラン「RC TAVERN/アールシータバーン」の「アールシータバーン」の部分と同一の文字よりなる商標である。そして、本件商標は、当該レストランのオープン日より僅か24日後に出願されている。
請求人は、東京、大阪その他において数多くの飲食店を経営している企業であって、本件商標と同一の商標を使用して上記レストランを経営しているから、本件登録を無効にすることについて利害関係を有する。
本件商標の権利者である、被請求人は、上記レストランのオープン前にそのオープンを宣伝するために作成した案内パンフレット、雑誌記事、レストランのウェブサイトなどの情報源のいずれかから、レストラン「RC TAVERN/アールシータバーン」のオープンの事実を入手して、出願を行ったことは明らかである。
したがって、少なくとも大都市である東京及びその近郊の地域において、レストラン「RC TAVERN/アールシータバーン」は、本件商標が出願された平成21年10月24日までには、役務「飲食物の提供」については周知商標となっており、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第3条第1項柱書について
被請求人は、平成23年5月11日現在、本件商標を含め合計45件の登録商標を有し、1件の商標登録出願を行っている(甲8)。全ての商標はいずれも手書きの商標で、かつ45件の登録の登録料金は最初の5年間分の納付である。
このうちのピックアップした13件の登録は、いずれも第43類「飲食物の提供」を指定役務とする登録商標(「麦蔵」、「イイサイイサ」、「ヨウキチ/葉吉」、「タクミシュン/匠旬」、「サンズキャッスル」、「神屋流博多道場」、「赤坂仁屋」、「ユウグウ/悠宮」、「鉄のや」、「ディアハモンド」、「ヤオマン」、「長屋の八兵衛」及び「ほろよい党」)である。この13件の商標を実際に使用して「飲食物の提供」を行っている店舗に、権利者である被請求人が関係者であるか否かを直接問い合わせたが、全く関係がないとの返事を受けている。
被請求人は、第43類に属する役務「飲食物の提供」を指定して上記13件の他に7件及び本件商標を含めて合計21件の商標を登録しているが使用実績はない。
さらに、被請求人は、「飲食物の提供」も含め、非常に多岐にわたる役務には脈絡がなく、かつ多数の商標を、登録料金を最初の5年分だけ支払い登録していることから推し量ることができる事実は、これらの商標が商標法第3条第1項柱書の「自己の業務にかかる役務ついて使用をする商標」ではないということである。
(3)商標法第4条第1項第7号及び同第19号について
被請求人については、多岐にわたる役務について事業展開を行っている事実はないことから推察するに、被請求人は、既にオープンしている店舗名が商標として登録されていないことを調べ、あるいは、これから店舗をオープンするとの情報をインターネット等から知って、登録出願に及んだものであると容易に推察できる。
このような行為を法律的に解釈すれば、まさに他人の使用する商標に対する不正な模倣あるいは寄りかかりであって、公正な競争秩序の維持を目的とする商標法の精神に惇るものであり、他人が使用する商標に蓄積された顧客吸引力や経済的・財産的利益に乗じて自己の利益を追求する不正な競争行為である。
平成22年5月31日の知財高裁判決(平成21年(行ケ)第10360号)において、商標法第4条第1項第7号が適用される事案について裁判所が見解を述べている。裁判所は、この規定に該当する商標は、商標の構成自体が「公序良俗違反」と考えられる場合と、「その商標登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に違反するものとして到底容認し得ない場合に限定されるべきである」との場合としている。
被請求人が登録した商標の多くは第三者が既に使用している商標である。
したがって、商標法第3条第1項柱書きに違反する商標であるとの判断とともに、商標法第4条第1項第7号の「公の秩序善良の風俗を害する商標」にも該当すると判断すべきである。
また、本件商標は、東京の中心街である丸の内に請求人が「アールシータバーン」というレストランをオープンし、その周知活動を行っていた後に登録出願されており、上記状況を考慮に入れれば、商標法第4条第1項第19号に規定する「不正の目的」(その事実は本件において顕在化してはいないが)を持って出願したものと解釈すべきである。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項柱書並びに同法第4条第1項第7号、同第10号及び同第19号に違反してされたものであるから、無効とされるべきである。

第3 当審の判断
1 事実認定
請求人提出に係る証拠(甲1?12、27?30、31の1?31の7、32の1?32の24、33、34、35の1?2、36?47、52)及び主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)請求人による本件店舗の開店等
請求人は、サントリーホールディングス株式会社の子会社であり、飲食店経営を業としている。請求人は、複数の飲食店を経営しているところ、平成21年ころ、新たな形態の飲食店として本件店舗を開店することとし、その名称を、自ら経営する飲食店「ローズ&クラウン」(Rose & Crown)の頭文字である「RC」(アールシー)と、英語で居酒屋や酒場を意味する「Tavern」(タバーン)を組み合わせた「RC TAVERN/アールシータバーン」とした。請求人は、平成21年10月1日、東京都千代田区丸の内1-8-1丸の内トラストタワーN館1Fに、請求人使用商標を使用し、飲食物の提供を業とする本件店舗を開店した。
(2)請求人使用商標等
請求人使用商標(1)の構成は、別掲2(1)のとおりであり、上段に「RC TAVERN」の欧文字(やや茶系の金色)と下段に「アールシータバーン」の片仮名(黒色)を配してなるものである。上段の「RC TAVERN」の文字のうち、「RC」の文字は、「TAVERN」の文字に比べて大きく表した構成からなっているものの、全体としてはまとまった印象を与えており、「アールシータバーン」の称呼が生ずる。また、「Tavern」は、日本では馴染みが浅いものの、英語で居酒屋や酒場を意味するところ、飲食物の提供に使用される場合、「RC TAVERN」からは、「RC」という名の居酒屋ないし酒場を観念する余地がある。さらに、下段の「アールシータバーン」は、各文字が、ほぼ同一の書体、大きさ、間隔で表記されており、「アールシータバーン」の称呼が生じるが、これらの文字列に対応した語は、一般には存在しない造語であり、特定の観念は生じない。
さらに、請求人使用商標(2)の構成は、別掲2(2)のとおり、請求人使用商標(1)の構成から「アールシータバーン」との片仮名部分を除いたものであり、請求人使用商標(1)と同様に、「アールシータバーン」の称呼が生じる。請求人使用商標(2)も、飲食物の提供に使用される場合、「RC」という名の居酒屋ないし酒場を観念する余地がある。
(3)請求人使用商標の使用状況等
請求人は、以下のとおり、平成21年9月17日ころから、請求人使用商標を使用して本件店舗の宣伝、広告をした。すなわち、
ア ウェブサイトにおける情報掲載等
請求人は、平成21年9月17日、飲食店に関するポータルサイトとして著名な「ぐるなび」に、本件店舗のウェブサイトを立ち上げ、同日から本件店舗開店後の同年10月9日までの間に、パソコン及び携帯電話から合計1万1489回のアクセスがされ(なお、同一日の同一回線からの複数回のアクセスを1回と計算する「ユニーク」数は、4154回である。)、同月10日から本件商標の登録出願日の前日である同月23日までの間に、パソコン及び携帯電話から合計1万0698回のアクセスがされた。また、請求人は、独自に請求人経営に係る飲食店の情報を掲載するウェブサイトを開設しているところ、同ウェブサイトに本件店舗の開店に係る情報を掲載した平成21年10月1日から同月23日までの間に、6万3586人のユーザから7万8133回のアクセスがされた。
イ パンフレットの配布等
請求人は、本件店舗の開店前に、その開店を宣伝するためのパンフレットを3万5000部作成し、(ア)平成21年9月19日から請求人が経営する他の飲食店14店舗で、同月20日から東京都内の丸の内、有楽町、新橋等の街頭で、合計8000部を配布し、(イ)同年10月5日から、請求人が経営する飲食店のメンバーズカードの会員である「倶楽部ダイナック会員」宛のダイレクトメールにより、関東地方各県在住の会員に2万4577部(うち東京都内在住の会員に1万5219部)を配布し、(ウ)請求人が経営する他の飲食店とともに本件店舗を宣伝するパンフレットを、「倶楽部8 ダイナック会員」宛のダイレクトメールにより約3万6500部、関係各社宛に2000部、それぞれ配布した。
ウ プレスリリース等
請求人は、平成21年9月30日、新聞社及び雑誌社等合計86社に対し、本件店舗の開店を知らせるプレスリリースを送付し、同年10月14日、当時約25万部ないし30万部の発行部数があった日経MJに本件店舗に関する記事が掲載された。
(4)本件商標等
被請求人は、平成21年10月24日に本件商標の登録出願をし、平成22年3月26日にその登録を受けた。本件商標の構成は、別掲1のとおり、「アールシータバーン」の文字を横書きしてなるものであり、各文字が、ほぼ同一の書体(手書きの文字と推認される。)、大きさ、間隔で表記されており、全体がまとまった印象を与えており、本件商標からは、「アールシータバーン」との称呼が生じる。本件商標の文字列に対応した語は、一般には存在せず、本件商標からは特定の観念は生じない。被請求人は、本件商標の登録前から現在に至るまで本件商標を指定役務である「飲食物の提供」に使用したことはない。
(5)本件商標と請求人使用商標(1)の類否について
上記のとおり、本件商標の構成は、請求人使用商標(1)下段の「アールシータバーン」と書体以外は同一であること、請求人使用商標(1)は、上下二段にそれぞれ「RC TAVERN」、「アールシータバーン」と書してなるものであり、全体としても「アールシータバーン」との称呼が生じ、称呼において本件商標と一致することからすれば、本件商標と請求人使用商標(1)は、外観に相違する部分があり、請求人使用商標(1)について「RC」という名の居酒屋ないし酒場を観念することができる場合に、観念において相違する余地があるとしても、全体として互いに類似する商標と認められる。
(6)被請求人によるその他の商標登録等
被請求人は、平成20年6月27日から平成21年12月10日までの間に、本件商標以外にも44件の商標登録出願をし、その登録を受けている。このうち、飲食物の提供を指定役務とする14件の商標については、被請求人とは無関係にこれと類似の商標を使用して飲食物の提供を行っている店舗が存在する。また、飲食物の提供以外を指定役務とする16件の商標についても、被請求人とは無関係にこれと類似の商標ないし商号を使用して業務を行っている会社等が存在し、このうち、10件の商標と類似の商標ないし商号を使用する会社については、被請求人が商標登録の出願をした日よりも前に、類似の商標ないし商号を使用している。被請求人は、上記各商標についても、現在に至るまで、指定役務に使用したとはうかがわれない。
2 判断
(1)商標法第3条第1項柱書は、商標登録要件として、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」であることを規定するところ、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは、少なくとも登録査定時において、現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標、あるいは将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される。
これを本件についてみるに、上記認定事実によれば、(ア)請求人は、平成21年9月17日ころから、ウェブサイトにおける情報掲載、パンフレットの配布、プレスリ10リース等を行い、東京都を中心に、請求人使用商標を使用して本件店舗の宣伝、広告を行っていたこと、(イ)請求人は、同年10月1日、東京都千代田区丸の内に、請求人使用商標を使用し、飲食物の提供を業とする本件店舗を開店したこと、(ウ)被請求人は、同月24日、本件商標の登録出願をし、平成22年3月26日にその登録を受けたが、現在に至るまで本件商標を指定役務である「飲食物の提供」やその他の業務に使用したことはないこと、(エ)本件商標と請求人使用商標(1)は、類似すること、(オ)請求人使用商標は、請求人が経営する飲食店「ローズ&クラウン」(Rose & Crown)の頭文字である「RC」(アールシー)と、英語で居酒屋や酒場を意味する「Tavern」(タバーン)を組み合わせた造語で、特徴的なものである上、本件店舗の宣伝、広告及び開店と本件商標の登録出願日が近接していることからすれば、被請求人は、請求人使用商標を認識した上で、請求人使用商標(1)と類似する本件商標を出願したものと考え得ること、(カ)被請求人は、平成20年6月27日から平成21年12月10日までの短期間に、本件商標以外にも44件もの商標登録出願をし、その登録を受けているところ、現在に至るまでこれらの商標についても指定役務やその他の業務に使用したとはうかがわれない上、その指定役務は広い範囲に及び、一貫性もなく、このうち30件の商標については、被請求人とは無関係に類似の商標や商号を使用している店舗ないし会社が存在し、確認できているだけでも、そのうち10件については、被請求人の商標登録出願が類似する他者の商標ないし商号の使用に後れるものであることが認められる。
上記事情を総合すると、被請求人は、他者の使用する商標ないし商号について、多岐にわたる指定役務について、本件商標以外にも44件の商標登録出願をし、登録された商標を収集しているにすぎないというべきであって、本件商標は、登録査定時において、被請求人が現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標に当たらない上、被請求人に将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思があったとも認め難い。
(2)これに対し、被請求人は、本件商標について、登録査定時においてその指定役務に使用していること、または、使用する意思があることについて証明すべきところ、何ら答弁していない。
(3)したがって、本件商標は、その登録査定時において、被請求人が現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標にも、将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標にも当たらず、本件商標登録は、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に関して行われたものとは認められず、商標法第3条第1項柱書に違反するというべきである。
3 結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書に違反して登録されたものであるから、他の無効理由について論及するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
1 本件商標


2 請求人使用商標
(1)


(2)



審理終結日 2012-07-26 
結審通知日 2012-07-30 
審決日 2012-08-13 
出願番号 商願2009-84369(T2009-84369) 
審決分類 T 1 11・ 18- Z (X43)
T 1 11・ 22- Z (X43)
T 1 11・ 222- Z (X43)
T 1 11・ 25- Z (X43)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 幸一 
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 田中 亨子
瀬戸 俊晶
登録日 2010-03-26 
登録番号 商標登録第5311184号(T5311184) 
商標の称呼 アールシータバーン 
代理人 青木 博通 
代理人 柳生 征男 
代理人 中田 和博 

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