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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200813097 審決 商標
不服20087368 審決 商標
不服200413365 審決 商標
審判199919966 審決 商標
不服2011650108 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X2930
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない X2930
管理番号 1264350 
審判番号 不服2011-19960 
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-14 
確定日 2012-09-18 
事件の表示 商願2010-88819拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、「阿蘇小国ジャージー」の文字を標準文字で表示してなり、第29類及び第30類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成22年11月15日に登録出願、その後、指定商品については、当審における平成23年9月14日付けの手続補正書により、第29類「熊本県阿蘇郡小国町及び南小国町で飼育したジャージー種の牛から採取した牛乳を使用した乳製品」及び第30類「熊本県阿蘇郡小国町及び南小国町で飼育したジャージー種の牛から採取した牛乳を使用した菓子及びパン」に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、『阿蘇小国ジャージー』の文字を表してなるところ、その構成中の『阿蘇小国』の文字は、本願指定商品との関係において、『熊本県阿蘇郡小国町及び南小国町』のことを、また、『ジャージー』の文字は、『ジャージー種の牛から採取した商品,ジャージー種の牛乳を使用した商品』程の意味合いを容易に想起させるものであり、全体として『熊本県阿蘇郡小国町及び南小国町産のジャージー種の牛から採取した商品・ジャージー種の牛乳を使用した商品』程の意味合いを容易に認識・理解させるものである。そうとすれば、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者等は、該商品が前記文字に照応する商品であると認識するにとどまり、単に、商品の品質、産地を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、提出にかかる証拠によっては、本願商標は同法第3条第2項に該当するものとは認められない。」旨認定し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、「阿蘇小国ジャージー」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「阿蘇」の文字は、「熊本県北東部、阿蘇山を中心とした地域」(コンサイス日本地名辞典)を意味し、さらに、熊本県北東部の阿蘇郡には、小国町が存在することから、「阿蘇小国」の文字よりは、「熊本県阿蘇郡小国町」を容易に理解、認識させるものである。
そして、「ジャージー」の文字は、「乳牛の一品種。」(広辞苑第六版)の意味を有する語であり、以下のとおり、「ジャージー」の文字が、本願指定商品を取り扱う業種において「ジャージー種の乳牛から採取した牛乳を使用した商品」を表すものとして使用されている事実が見受けられる。
(1)「蒜山ジャージークラブ」のウェブサイトにおいて、「ジャージー牛の故郷 蒜山高原よりおいしい牛乳・乳製品をお届けします。」との記載により「ジャージー種の乳牛から採取をした牛乳を使用した商品」が販売されている(http://jersey-club.com/club/mindex.htm)。
(2)「オハヨー乳業株式会社」のウェブサイトにおいて、「自然でコクのあるジャージー乳のソフト」との記載により「ジャージー種の乳牛から採取をした牛乳を使用したアイスクリーム」が販売されている(http://www.ohayo-milk.co.jp/products/ice/1103_jersey-soft.html)。
そうとすれば、「阿蘇小国ジャージー」の文字からなる本願商標を、その指定商品について使用したときは、これに接する取引者、需要者をして、「熊本県阿蘇郡小国町を産地とするジャージー種の乳牛から採取した牛乳を使用した商品」であると理解、認識させるに止まり、本願商標は、商品の産地及び品質を表示する標章のみからなるものであると認められる。
したがって、本願商標は、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。

2 使用による自他商品識別力の獲得について
(1)商標法第3条第2項の趣旨
知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10054号判決(平成18年6月12日判決言渡)は、「・・・商標法3条2項は,商標法3条1項3号等に対する例外として,『使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識できることができるもの』は商標登録を受けることができる旨規定している。その趣旨は,特定人が当該商標をその業務に係る商品の自他識別標識として他人に使用されることなく永年独占排他的に継続使用した実績を有する場合には,当該商標は例外的に自他商品識別力を獲得したものということができる上に,当該商品の取引界において当該特定人の独占使用が事実上容認されている以上,他の事業者に対してその使用の機会を開放しておかなければならない公益上の要請は薄いということができるから,当該商標の登録を認めようというものであると解される。上記のような商標法3条2項の趣旨に照らすと,同条項によって商標登録が認められるためには,以下のような要件を具備することが必要であると解される。(ア)使用により自他商品識別力を有すること 商標登録出願された商標(以下「出願商標」という。)が,商標法3条2項の要件を具備し,登録が認められるか否かは,実際に使用している商標(以下「使用商標」という。)及び商品,使用開始時期,使用期間,使用地域,当該商品の生産又は販売の数量,並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して,出願商標が使用された結果,判断時である審決時において,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否か(いわゆる『自他商品識別力(特別顕著性)』の獲得の有無)によって決すべきものである。(イ)出願商標と使用商標の同一性が認められること 商標法3条2項の要件を具備するためには,使用商標は,出願商標と同一であることを要し,出願商標と類似のもの(例えば,文字商標において書体が異なるもの)を含まないと解すべきである。なぜなら,同条項は,本来的には自他商品識別力がなく,特定人の独占にもなじまない商標について,特定の商品に使用された結果として自他商品識別力を有するに至ったことを理由に商標登録を認める例外的規定であり,実際に商品に使用された範囲を超えて商標登録を認めるのは妥当ではないからである。そして,登録により発生する権利が全国的に及ぶ更新可能な独占権であることをも考慮すると,同条項は,厳格に解釈し適用されるべきものである。・・・」と判示しているところである。
(2)商標法第3条第2項について
請求人(出願人)は、本願商標をその指定商品に使用した結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとなっている旨主張し、その主張に係る書面として、原審における平成23年4月21日付け手続補足書をもって、商品出荷販売数、商品の容器及び包装の画像、商品の広告等を提出し、また、当審における同年9月16日受付の手続補足書をもって、資料1ないし資料6を提出している(以下「資料1ないし資料6」を「資料4ないし資料9」と読み替える。)。
そこで、以下、請求人の前記主張について検討する。
ア 使用商標について
本願商標は、前記第1のとおり、「阿蘇小国ジャージー」の文字からなるものであるところ、請求人(出願人)が提出した証拠等をみると、商品の包装容器の見本として提出された資料4及び資料5によれば、指定商品「牛乳」及び「カフェオレ風味の乳飲料」については、本願商標と同一視できる「阿蘇小国ジャージー」の文字が使用されているものと認められる。
しかしながら、資料6ないし資料9の商品の包装容器の見本には、「阿蘇小国」(「蘇」は旧字体。以下同じ。)と「ジャージー」の文字を上下二段に表した構成からなる商標(別掲(資料8アイスクリーム))の使用であって、本願商標とは、その構成態様が相違するものである。
イ 使用により自他商品識別力を有すること
そして、商標が使用により自他商品識別力を有するに至ったか否かは、前記(1)のとおり、例えば、実際に使用している商標及び商品、使用の開始時期、期間及び地域、販売数量、広告宣伝の方法、回数及び内容、新聞や雑誌又はインターネット等における記事掲載の回数及び内容等の事実を総合勘案して判断すべきところ、請求人は、「この数年で、商標『阿蘇小国ジャージー』を付した阿蘇農業協同組合の商品を、首都圏のデパート、大規模スーパーマーケット、駅ナカ(エキュート)、通信販売サイト等で目にする機会が増えていることは、需要者のみんなが認めるところであると考える」旨主張しているが、これを証する証拠を提出していない。
そして、本願商標が使用されている商品は、前記アのとおり、指定商品中「牛乳」及び「カフェオレ風味の乳飲料」のみであるが、平成19年から平成22年の出荷販売数は明示されているが、その販売地域、市場に占めるシェアは明らかでない。
また、首都圏デパート等において、実際に販売している商品(具体的にどの指定商品)、販売されている期間及び地域など(販売された時期や地域)、これを客観的に裏付ける証拠の提出はなく、さらに、販売数量についても、各商品の同種商品に占める具体的な市場に占めるシェアも明らかではない。
加えて、資料3のジャージー導入50周年記念誌及び新聞記事においては、熊本県阿蘇郡小国町においてジャージー牛が飼育されている事実は伺えるものの、請求人が本願商標を付した商品を販売していることは明らかではない。
なお、資料2は、山崎製パン株式会社が製造販売している商品に使用する商標であるから、請求人が本願商標をその指定商品について使用したとはいえないものである。
ウ まとめ
以上のとおり、請求人の提出した証拠を勘案しても、本願商標が、その指定商品について使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められないものである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものということもできない。

3 まとめ
したがって、本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同法第3条第2項の要件を具備しないとして、拒絶した原査定は、妥当なものであって取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
使用商標(資料6アイスクリーム)


審理終結日 2012-07-19 
結審通知日 2012-07-20 
審決日 2012-07-31 
出願番号 商願2010-88819(T2010-88819) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (X2930)
T 1 8・ 17- Z (X2930)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小田 明 
特許庁審判長 鈴木 修
特許庁審判官 瀬戸 俊晶
田中 亨子
商標の称呼 アソオグニジャージー、オグニジャージー 
代理人 吉村 勝博 

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