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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X05
管理番号 1264296 
審判番号 無効2011-890077 
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-09-07 
確定日 2012-09-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第5406715号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5406715号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5406715号商標(以下「本件商標」という。)は、「BALERT」の欧文字を標準文字で表してなり、平成21年5月28日に登録出願、第5類「生医学分野の研究におけるサンプルにB群連鎖球菌が含まれているかを調べるためのペプチドやビタミンを含有してなる医療研究用試薬,その他の生医学分野の研究で使用される薬剤」を指定商品として、同23年3月23日に登録査定がなされ、同年4月15日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、以下の(1)及び(2)のとおりであり、いずれもその商標権は現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4211722号商標(以下「引用商標1」という。)は、「BACT/ALERT」の欧文字と記号を横書きにした構成からなり、平成9年6月19日に登録出願、第5類「ヒト血液中の微生物検出用の診断用薬剤」ほか、第1類、第9類及び第10類に属する商標登録原簿記載の商品を指定商品として、同10年11月13日に設定登録され、その後、同20年12月2日に存続期間の更新がされたものである。
(2)登録第4594441号商標(以下「引用商標2」という。)は、「バラード」の片仮名を標準文字で表してなり、平成13年9月18日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同14年8月9日に設定登録されたものである。

3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録は無効とされるべきものである。
ア 本件商標と引用商標1との類似について
引用商標1は、前記のとおり「BACT/ALERT」とする構成であるが、前半の「BACT」の文字は、「BACTERIA(バクテリア、細菌、微生物)」、「BACTERIAL(バクテリアの、細菌の、徹生物の)」の省略語として、普通に使用されており、その指定商品である「微生物検出用の化学用試剤、微生物検出用の診断用薬剤、微生物検出用の実験用機械器具」との関係においては、「微生物(検出)用の?」、「微生物を使用した?」の意味合いを容易に想起させるため、商品の品質あるいは用途を表示するにすぎないものである。してみれば、引用商標1の構成中前半の「BACT」の文字は、指定商品との関係において、自他商品識別力が弱いため、引用商標1に接する取引者、需要者は、その構成中後半の「ALERT」の文字部分に着目し、当該文字部分より生ずる称呼をもって取引にあたる場合も決して少なくないといわざるを得ない。
また、「BACT」と「ALERT」は、スラッシュ「/」を介して表されているが、もともとスラッシュは、区切りを示したり、「または」の意味を示すために用いられる記号であって、通常、何らかの意味合いにおいて前後を分離するために用いられるため、「BACT」と「ALERT」の文字は、外観上又は意味的に分離して理解、把握されるものである。
以上より、引用商標1からは、「バクテアラート」、「バクトアラート」の称呼のほかに、自他商品の識別標識としての機能を有する部分と認識される「ALERT」の文字に相応して、単に「アラート」の称呼も生じるというべきである。
これに対して、本件商標は、前記のとおり「BALERT」の欧文字を書してなり、その構成文字に相応して「バラート」の称呼が生じることは明らかである。
しかして、本件商標より生じる称呼「バラート」と引用商標1より生じる称呼「アラート」とは、語頭において「バ」音と「ア」音という差異を有するとしても、両差異音は「ア(a)」の母音を共通した近似音であるから、「バラート」と「アラート」の称呼をそれぞれ一連に称呼した場合には、誤韻語調が相似たものとして聴取され、彼此相紛れるおそれのある類似の称呼であるといわざるを得ない。
また、本件商標の指定商品は、引用商標1の指定商品中、第5類「ヒト血液中の微生物検出用の診断用薬剤」と同一又は類似の商品である。
したがって、本件商標は、引用商標1と称呼上類似の商標であって、引用商標1の指定商品と同一又は類似の商品ついて使用するものである。
イ 本件商標と引用商標2との類似について
引用商標2は、前記のとおり「バラード」の片仮名を書してなり、「バラード」の称呼が生じる。
これに対して、本件商標は、上述したように、その構成文字に相応して「バラート」の称呼が生じることは明らかである。
しかして、本件商標より生じる称呼「バラート」と引用商標2より生じる称呼「バラード」とは、同音数からなり前半部の「バラー」の音を共通にし、語尾における「ド」と「ト」の音の差異を有するにすぎず、該差異音が、称呼上比較的弱く発音される語尾である点、また「ト」の音の清音と濁音の差にすぎないことを考慮すれば、この差異が称呼全体に及ぼす影響は小さく、全体をそれぞれ一連に称呼したときは、語韻、語調が相似たものとなって、互いに紛れるおそれがある類似の称呼である。
してみれば、本件商標と引用商標2とは、その外観、観念の相違を考慮するとしても、外観、称呼及び観念を総合勘案したとき、両者は類似する商標といわざるを得ない。
また、本件商標と引用商標2の指定商品は同一又は類似の商品である。
したがって、本件商標は、引用商標2と称呼上類似の商標であって、引用商標2の指定商品と同一又は類似の商品ついて使用するものである。
以上の点は、称呼において語尾における「ド」と「ト」の音の差異を有する場合の過去の審決・決定(甲第4号証ないし甲第7号証)によっても支持されるものではないかと思料する。
(2)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録は無効とされるべきものである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求について、何ら答弁するところがない。

5 当審の判断
(1)本件商標と引用商標1との類似について
本件商標は、その構成前記のとおり「BALERT」の欧文字よりなるところ、該綴りからは、特定の語義をもって一般に馴染まれた外国語ないし外来語などの言葉は見出せず、一種の造語として看取されるものであるから、該綴りに相応して英語風に「バラート」と読まれ、その称呼をもって取引に資されるものとみるのが自然である。
他方、引用商標1は、その構成前記のとおり「BACT/ALERT」の欧文字と記号を横書きにした構成からなるものであるところ、その構成中の「BACT」の文字は、職権により調査したが、「BACTERIA(バクテリア、細菌、微生物)」、「BACTERIAL(バクテリアの、細菌の、徹生物の)」の省略語として普通に使用されている事実は見出せず、また、請求人からはその事実を裏付ける何らの証拠の提出もないから、該文字を商品の品質あるいは用途を表示する語とは認められない。
そうとすれば、引用商標1は、スラッシュ「/」を介してなる前後の文字が常に外観上又は意味的に分離されて理解、把握されるとはいい難いものであることから、「バクトアラート」若しくは「バクトスラッシュアラート」の称呼を生じ、特定の観念を生じない全体が一体不可分のものといわなければならない。
したがって、本件商標と引用商標1は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(2)本件商標と引用商標2との類似について
本件商標は、前記(1)のとおり「バラート」の称呼が生じ、特定の観念を有しない一種の造語と認められるものである。
他方、引用商標2は、前記のとおり「バラード」の片仮名により構成されてなり、これよりは音楽用語程の観念を想起し、また、文字通りに「バラード」の称呼が生じ、これをもって取引に資されるものとみるのが相当である。
そこで、本件商標より生ずる称呼「バラート」と引用商標2より生ずる称呼「バラード」とを比較すると、両称呼は、いずれも4音の構成音よりなり、そのうち称呼の識別上、最も重要な要素を占める語頭音を含む「バラー」の3音の称呼を同じくするものであって、異なるところは明確に聴取され難い語尾におけるの清音「ト」の音と濁音「ド」の音の差異にすぎない。そして、当該差異音にしても、「ト」の音は、舌尖を上前歯のもとに密着して破裂させる無声子音〔t〕と母音〔o〕との結合したものであり、「ド」の音は、舌尖を上前歯のもとに密着して破裂させる有声子音〔d〕と母音〔o〕との結合したものであるから、両者の差異は、子音が有声音か無声音かにすぎず、しかも、共に破裂音であり、調音位置も共通にする音であるから、近似した音というべきである。
してみれば、本願商標と引用商標2とは、外観において相違し、観念においては比較できないとしても、その称呼において相紛らわしい類似の商標というべきであり、かつ、本件商標の指定商品は、引用商標2の指定商品「薬剤」に包含される商品であるから、両商標の指定商品は同一又は類似であることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2012-04-12 
結審通知日 2012-04-17 
審決日 2012-05-07 
出願番号 商願2009-39478(T2009-39478) 
審決分類 T 1 11・ 262- Z (X05)
最終処分 成立  
前審関与審査官 堀内 真一蛭川 一治中束 としえ目黒 潤竹内 耕平 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 前山 るり子
内山 進
登録日 2011-04-15 
登録番号 商標登録第5406715号(T5406715) 
商標の称呼 バラート、ビイアラート、アラート 
代理人 佐藤 嘉明 

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