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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201120793 審決 商標
不服20118833 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 登録しない X41
管理番号 1263056 
審判番号 不服2011-23104 
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-27 
確定日 2012-09-03 
事件の表示 商願2011- 4340拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第41類「防衛技術に関する資格の認定・資格の付与,防衛技術に関するセミナーの企画・運営又は開催,防衛技術に関する電子出版物の提供,防衛技術に関する書籍の制作」を指定役務として、平成23年1月25日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、その構成中に『技術士』の文字を含むものであるところ、当該文字は、技術士法第57条第1項の規定により、技術士以外の者が使用することを禁止している名称である。そして、技術士法に定める技術士とは認められない出願人が、本願商標をその指定役務に使用するときには、それが、あたかも技術士により提供される役務であるかのように誤認されるおそれがあることや、国家資格たる技術士とも紛らわしいことから、提供する役務が国家資格に係るものと認識されるおそれがあり、また、前記技術士法による名称の使用制限に関する規定にも抵触するから、技術士制度に対する社会的信頼を害し、ひいては、公の秩序を害するおそれがあるものといわざるを得ない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第7号該当性について
本願商標は、別掲のとおり、「防衛技術士」の漢字と「Defense Technology Specialist」のローマ字を上下2段に書してなるものである。
ところで、国家資格は、法律の定めにより、試験の実施を行い、一定の基準を満たした能力、あるいは知識や技能を備えたと認定された者に限って、一定の地位や権限を与え、一定の義務を課すものが多く、資格に対する一般の国民の信頼性が高いといえるものである。
かかる観点から、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するかについて検討する。
ア 国家資格「技術士」について
「技術士」は文部科学省が所管する技術士法に基づく国家資格の名称であり、同法第2条では、「この法律において、『技術士』とは、第三十2条第1項の登録を受け、技術士の名称を用いて、科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務(他の法律においてその業務を行うことが制限されている業務を除く。)を行う者をいう。」と規定されている。
そして、同法では、試験の内容等(第二章)、登録制度(第三章)、信用失墜行為の禁止、秘密保持義務、公益確保の責務や資質向上の責務といった技術士の義務に関する規定(第四章)等が定められている。
また、技術士には、他の弁護士や医師等の国家資格のように特定の業務を独占する権限はないが、「技術士でない者は、技術士又はこれに類似する名称を使用してはならない。」(同法第57条第1項)との名称の使用の制限に係る規定が置かれ、この規定に違反した者に対しては罰金刑が科される(同法第62条第3号)ところ、その趣旨は、「技術士としての適格者のみに技術士の名称を用いることを認める反面、技術士でない者にはその名称の使用を厳に禁止することにより、技術士制度に対する社会の関心と認識を高めようとする」点にあると解される(平成24年4月付け公益社団法人日本技術士会発行の「技術士制度について」24頁「1.技術士の特典」の項参照)。
(http://www.engineer.or.jp/c_topics/001/attached/attach_1680_2.pdf)。
さらに、技術士は、国家資格として、相当程度の国際的、社会的信頼及び知名度を得ていることが、以下の事実から認められる。

〔注:以下、下線は当合議体が付したもの。〕
(ア)2003年10月2日付け朝日新聞朝刊2頁
「技術士の資格、日豪相互承認 機械、化学分野など」の見出しのもと、「高い専門知識と応用能力を持つ技術者に与えられる『技術士』資格を2国間で通用するようにするため、文部科学省とオーストラリアの代表者が1日、同省で相互承認の文書に署名した。日本が相互承認するのは初めて。来年から、機械、電気、化学分野のエンジニアが自国で取得した技術士資格を相手国で活用できる。アジア太平洋経済協力会議(APEC)は95年から、加盟国同士が資格を標準化して技術協力を進める『APECエンジニア・プロジェクト』を進めている。技術士の標準化はその一環だ。」との記載。
(イ)2003年7月7日付け電気新聞8頁
「[電力動向2003]原子力技術士 合格率15%の難関国家資格」の見出しのもと、「専門知識に優れ、高い職業倫理を持つ技術者に与えられる技術士(国家資格)。」及び「もっとも、原子力分野はさまざまな法律で規制されるだけに『放射線取扱主任者』『原子炉主任技術者』『核燃料取扱主任者』『発電所運転責任者』など、法律上、必ず取得しなければならない資格はある。だが、これらの資格は仕事に必要な“運転免許”のようなもの。高度の専門知識や技術者倫理が問われるわけではない。難易度、求められる知識の広さで技術士とはレベルが違う。」との記載。
(ウ)1991年8月1日付け読売新聞・家庭経済2頁
「[徹底研究シリーズ]資格試験ますます人気 転職、第二の人生の武器」の見出しのもと、「数多い資格の中でも、一つ取得すれば本業として独立しても十分やって行くことができる『大型資格』は、一ダースにも満たない。弁護士や弁理士、公認会計士、不動産鑑定士、技術士などがこれに当たるが、取得は大変難しいという。」との記載。
(エ)株式会社自由国民社2007年1月10日発行「自由国民ガイド版 国家試験資格試験全書」575頁「技術士」の項
「◆概要」の見出しのもと、「科学技術の応用面に携わる技術者にとって最も権威のある資格である。」との記載。
(オ)文部科学省ホームページにおける「平成23年度技術士第二次試験の結果について」と題する資料4頁
「7.技術士第二次試験の状況(昭和33年度?平成23年度)」の表によれば、昭和33年度から平成23年度までの受験申込者数が合計802,178名、合格者数が合計98,949名を数えており、過去5ヵ年度(平成19年度?平成23年度)の受験申込者数が毎年3万人台で推移している事実。
(http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/24/03/__icsFiles/afieldfile/2012/03/05/1317119_1.pdf)

イ 国家資格「技術士」の名称の表示について
技術士は、前記のとおり、科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての様々な業務を行う者であるところ、技術士の取り扱う科学技術の範囲は、文部科学省令で定める技術の部門により明示されており、同省令では、技術士の取り扱う技術の部門として、「機械部門、船舶・海洋部門、航空・宇宙部門、電気電子部門、化学部門、繊維部門、金属部門、資源工学部門、建設部門、上下水道部門、衛生工学部門、農業部門、森林部門、水産部門、経営工学部門、情報工学部門、応用理学部門、生物工学部門、環境部門、原子力・放射線部門、総合技術監理部門」の、計21部門が定められている(技術士法施行規則第2条)。
また、技術士は、その業務に関して技術士の名称を表示するときは、その登録を受けた技術部門を明示してする必要がある(同法第46条)。そして、表示の仕方としては、「技術士(○○部門)」のように表記するほか、例えば、以下に掲げるように「○○技術士」という表示も用いられている事実が認められる。

(カ)2007年1月21日付け毎日新聞地方版/島根25頁
「『石見銀山』世界遺産へ:県技術士会が研究発表 観光コース『街道十景』提案/島根」の見出しのもと、「石見銀山遺跡をテーマに県技術士会(渡部修会長、215人)の研究発表会が20日、大田市の県立男女共同参画センターで開かれた。同会は、機械、建設、農業、情報科学など県内の幅広い職業分野で活躍し、国家試験に合格した技術士で構成する団体。・・・1級建築士で環境技術士の宇野真一さん(46)は銀山街道温泉津沖泊道の魅力を分析。」との記載。
(キ)2006年4月7日付け日刊工業新聞26頁
「改革本番・大学トップに聞く/鈴鹿医療科学大学学長・作野史郎氏」の見出しのもと、「放射線技術士、栄養士、理学療法士、臨床工学技士、鍼灸(しんきゅう)師など多岐にわたり医療福祉関連産業に人材を送り出している。」との記載。
(ク)2003年5月11日付け読売新聞大阪朝刊8頁
「日本の“お家芸”繊維技術を伝授 業界OBらが中小企業向け講習会」の見出しのもと、「繊維工場の海外移転などによって、日本の“お家芸”だった繊維関係の高度な技術が失われることを懸念し、『繊維技術士』と呼ばれる国家資格を持つ業界OBらが、技術の伝承に向けた活動に乗り出した。・・・OBらは、繊維技術士の団体である日本繊維技術士センター(本部・大阪府吹田市、北浦滋夫理事長)のメンバーら約四百人で、繊維の加工技術や縫製、染色など、素材から最終製品までの専門家がそろっている。繊維技術士は、弁護士や医師などと並ぶ資格だが、技術指導などの法定報酬が高額なため、これまで活動の場は限られていた。」との記載。

ウ 本願商標について
そうすると、前記アのとおり、国家資格「技術士」は相当程度の国際的、社会的信頼及び知名度を得ていること、及び、前記イのとおり、技術士が業務を行う際には登録を受けた技術の部門を明示してする必要があり、その場合「○○技術士」のように技術の部門の名称「○○」と資格の名称である「技術士」とを一連に表記することがあることからすれば、本願商標の構成中の「防衛技術士」の文字は、看者をして「防衛」の文字と「技術士」の文字とを結合したものと認識させるというのが相当である。
そして、「防衛」の文字は「ふせぎまもること」(株式会社岩波書店発行「広辞苑第六版」参照)を意味する語であるが、例えば、以下に掲げるように、「防衛技術」は「軍事技術」を容易に連想させるものであるから、本願商標全体としては、「防衛(軍事)部門の科学技術に関する高度の専門的能力を有する資格者(技術士)」との意味合いを理解、認識させるものといえる。また、防衛(軍事)に関する技術は、以下に掲げるように、いずれにしても科学技術の範疇に入るものである。

(ケ)2007年1月29日付け日刊工業新聞37頁
「卓見異見/防衛上の技術優位-世界平和研究所副会長・佐藤謙」の見出しのもと、「軍事技術と民生技術の相互作用も重要である。軍事技術は、国家の安全保障をかけて最先端のものを追求するため、民生技術へのスピンオフにより民間の技術革新にも大きな影響を与える。米国で、軍事用コンピューターシステムからインターネットが生まれたのはよく知られている。また、一方において、最近の民間におけるIT技術の高度化等を背景に、民生技術から軍事技術へのスピンオンも進んでいる。」との記載。
(コ)2010年1月13日付け日本経団連防衛生産委員会作成の「科学技術国際戦略と安全保障関連技術」と題する資料6?7頁
「4.スピンオフ事例1」〔注:「1」は丸付き数字〕及び「4.スピンオフ事例2」〔注:「2」は丸付き数字〕の見出しのもと、「防衛技術」が「民生技術」に転用された事例として、「1インターネット 2燃料電池 3原子力発電 4GPS(Global Positioning System) 5セミモノコックボディ 6アンチ・スキッド・システム 7電子飛行制御システム 8複合材 9潜水調査船」〔注:「1」ないし「9」は丸付き数字〕の記載。
(http://www8.cao.go.jp/cstp/sonota/kagigaiko/7kai/siryo3-1-1.pdf)
(サ)平成22年4月8日付け経済産業省作成の「防衛産業基盤について」と題する資料9?10頁
・「民生技術と防衛関係技術を巡る最近の動向1」〔注:「1」は丸付き数字〕の見出しのもと、「○従来、高度な防衛技術を基に民生分野への応用を行う「スピン・オフ」が中心であったが、近年、民生技術の高度化を受けて民生技術から防衛分野への「スピン・オン」も増加。」との記述及び事例の記載。
・「民生技術と防衛関係技術を巡る最近の動向2」〔注:「2」は丸付き数字〕の見出しのもと、「○防衛技術、民生技術の双方が高度化し、両者の境界が曖昧に。」及び「我が国の高度な民生技術は国内外の防衛産業から注目されている。(材料、IT、部品等)→防衛産業基盤の維持・育成や、外国との産業間協力を通じた広義の安全保障への活用が重要。」との記述及び事例の記載。
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shin-ampobouei2010/dai5/siryou2.pdf)

エ 小括
してみれば、以上のような事情のもとで、一般の国民が「技術士」の文字を含む本願商標に接した場合、全体として、「防衛(軍事)部門の科学技術に関する高度の専門的能力を有する資格者(技術士)」なる意味合いをもって、国家資格の一種を表したと理解する場合も決して少なくないとみるのが相当であるから、本願商標は国家資格「技術士」と一見紛らわしいものというべきである。
殊に、国家資格に対する一般の国民の高い信頼性を踏まえると、本願の指定役務中「防衛技術に関する資格の認定・資格の付与」は、民間資格を認定・付与するものであり、国家資格と一見紛らわしい本願商標を民間資格の認定・付与について使用すると、一般の国民が当該民間資格を国家資格の一種と誤認して役務の提供を受けたときに不測の損害を与えるおそれがあるから、このような場合には、国家資格に対する社会的信頼を失わせ、ひいては公の秩序を害するおそれがあるといわなければならない。また、本願の指定役務中「防衛技術に関するセミナーの企画・運営又は開催,防衛技術に関する電子出版物の提供,防衛技術に関する書籍の制作」は、防衛技術に関する資格に係るセミナー・電子出版物・書籍に関する役務を含むから、「防衛技術に関する資格の認定・資格の付与」の役務と密接に関連するものである。
したがって、本願商標をその指定役務について使用することは、国家資格制度(技術士制度)に対する社会的信頼を失わせ、ひいては、社会公共の利益に反するおそれがあるものといわざるを得ない。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、「技術士」資格は、当該技術分野における専門家にとっては著名なものであっても、「一般国民」にとっては、その存在すらも知られてないものであるといえ、この点は、甲第1号証ないし同第4号証を挙げ、技術士の加入団体である日本技術士会自体が「技術士」資格の知名度が十分ではないことを認識しているのを見て取ることができる旨、主張する。
また、請求人は、国家資格である「技術士」は、関連業界を除いた人々にとっては、知名度が低いという状況にある一方、関連業界の人々にとっては、「技術士」資格を知悉しているため、誤認混同することはない、すなわち、知らない人は、そもそも誤認混同することはできず、知っている人は、技術士の内容や技術士制度の動向を十分に把握している(例えば、技術士制度を知悉している人にとっては、現行の技術士に「防衛部門」が存在しないことは自明の事項である。)ため、誤認混同することはあり得ない旨、主張する。
しかしながら、たとえ、甲第1号証ないし同第4号証において、日本技術士会が技術士資格の知名度の低さを述べているとしても、その根拠は何ら示されておらず、単に同会が自己の認識を示したに過ぎないというべきものであるから、請求人の主張は、その前提を欠くものである。また、本件では、国家資格「技術士」の存在を前提に、一般の国民にとって、本願商標が国家資格の一種と一見紛らわしいかどうかを判断するものであるから、国民の範囲を国家資格「技術士」を「知っている人」及び「知らない人」に分けて限定する請求人の主張は、失当である。
イ また、請求人は、「技術士」と他の文字とが結合した過去の登録例等(甲第5号証ないし同第17号証)を挙げ、本願商標も同様に登録されてしかるべき旨主張する。
しかしながら、本願商標が、商標法第4条第1項第7号に該当するか否かは、本願商標自体の具体的な構成をもって、審決時において、個別かつ具体的に判断されるべきものであって、他の商標登録の事例の存在によって、本件の判断が左右されるものではない。
よって、前記の請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(3)まとめ
したがって、本願商標を商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当なものであって、これを取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本願商標)


審理終結日 2012-07-09 
結審通知日 2012-07-13 
審決日 2012-07-24 
出願番号 商願2011-4340(T2011-4340) 
審決分類 T 1 8・ 22- Z (X41)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 正樹 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 小川 きみえ
冨澤 武志
商標の称呼 ボーエーギジュツシディフェンステクノロジースペシャリスト、ボーエーギジュツシ、ディフェンステクノロジースペシャリスト 
代理人 杉山 誠二 

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