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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) X03
審判 全部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) X03
管理番号 1261652 
異議申立番号 異議2011-900121 
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2012-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2011-03-17 
確定日 2012-07-17 
異議申立件数
事件の表示 登録第5379237号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5379237号商標の指定商品中「第3類 化粧品」についての商標登録を取り消す。 本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
登録第5379237号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成からなり、平成20年6月19日に登録出願、第3類「かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類,つけづめ,つけまつ毛」を指定商品として、同22年12月1日に登録審決、同月24日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は取り消されるべきものであるとして、その理由を以下のように述べ証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出している。
(1)商標法第3条第1項第3号について
本件商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、本件指定商品を取り扱う化粧品業界では、シ-ト状のパック用化粧品が普通に流通している。シート状のパック用化粧品は、呼吸や視野を確保しつつ美容成分を含んだシートを顔全体に覆うことによって使用するものであり、1枚の顔型のシートの目、鼻及び口の部分をくり抜いた形状や、顔型のシートを鼻の部分を境に2枚に切り分けた形状の商品がある。したがって、顔型のシートの目及び口の部分をくり抜き、鼻の部分を境に2枚に切り分けた外観を有する本件商標からは、シート状のパック用化粧品の形状を表したものと容易に直感できることから、本件商標からは、シート状のパック化粧品を認識するにすぎないものである。
(2)すなわち、本件商標は、これをその指定商品中「シート状のパック用商品」に使用するときは、単にその商品が「シート状のパック用商品」であることを直感させる標章にすぎないものであることから、商標法第3条第1項第3号に該当する。

3 本件商標に対する取消理由
当審において、登録異議申立に基づき、平成24年3月2日付けで商標権者に対して通知した取消理由は、以下のとおりである。
(1)申立人の提出に係る証拠あるいは当審における職権調査によれば、化粧品の業界において、呼吸や視野を確保しつつ美容成分を含んだシートを顔全体に覆うことによって使用するシート状のパック用化粧品が広く一般に流通していることが認められる。
そして、シート状のパック用化粧品には、目、鼻及び口の部分をくり抜き、あごの部分等に切り込みを入れた形状の1枚の顔型のシートのほか、顔型のシートを鼻の部分を境に2枚に切り分けたものであって、目及び口の部分をくり抜き、鼻の両端とあごの部分等に切り込みを入れた形状の商品(甲2?甲6)があることが認められる。
また、前記証拠に示された事実に加え、下記の事実も認められる。
SK-2(「2」はローマ数字)のホームページ(ttp://www.sk-ii.jp/product/LXP_urm/)の「PRODUCT」に美容保湿マスクとして、商品の現物が掲載されており、当該商品は、顔型のシートを鼻の部分を境に2枚に切り分けたものであって、目及び口の部分をくり抜き、鼻の両端とあごの部分に切り込みを入れた形状のものである。また、韓国コスメとして掲載されている「進製作所」の製造販売にかかる「ピュアダム ハイドロ CIピュアゲルマスク」(http://www.kenko.com/product/item/itm_6922281772.html)、「SKIN FOODスキンフード」の「五味子ホワイトニング マスクシート」(http://saran-heyo.com/SHOP/skin0253.html)あるいは「IRIS COSMETICS」の「アイピュアマスクシート」(http://www.iriscosme.com/iris_product04.html)に掲載されている商品の現物及び説明図をみるに、当該商品は前記と同様に顔型のシートを鼻の部分を境に2枚に切り分けられた形状からなるものである。
しかして、以上のシート状のパック用化粧品は、厳密にみれば形状にそれぞれで相違する点はあるけれども、顔型のシートに目及び口の部分をくり抜き、鼻の両端及びあごの部分に切り込みを入れた形状において共通の特徴を有するものということができる。
(2)本件商標は、別掲に示すとおり、鼻の位置を境に上下に分離した人面をモチーフとする図形であり、上部の輪郭線内で目の位置と思われる場所に、左右対称に楕円形を配し、その下で鼻の位置と思われる場所に、鼻頭形の線を配し、さらに、下半分の輪郭線内で口の位置と思われる場所に楕円形を描き、最下部のあごに当たる部分に斜めの線を引いた顔型の図形からなるものである。
しかして、本件商標を構成する図形は、その指定商品中の「化粧品」との関係では、上記2に示した実際の販売に係るパック用化粧品と同様の形状からなる構成態様及びその取引の実情に照らせば、「シート状のパック用化粧品」の一類型として認識されるに止まるというべきものであり、当該商品の形状を普通に用いられる範囲を逸脱しない方法で表示するものというのが相当である。
以上よりすれば、本件商標は、これを指定商品中「シート状のパック用化粧品」に使用するときには、商品の品質・形状を表示したと認識されるに過ぎず、自他商品の識別機能を果たし得ないものといわざるを得ない。
また、本件商標を、指定商品中「シート状のパック用化粧品」以外の化粧品に使用するときには、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、指定商品中「化粧品」について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。

4 商標権者の意見
本件商標は、自他商品の識別機能を十分に有するものであり、また、品質の誤認を生じさせるおそれのないものである。以下理由を詳述する。
(1)商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものではないことについて
ア 本件商標は、「シート状のパック用化粧品」の形状(デザイン)として用いるものではない
取消理由通知によれば、該通知等に示されたシート状のパック用化粧品の形状(デザイン)をもって、本件商標は、自他商品の識別機能を有しないと認定しているが、本件商標は、シート状のパック用化粧品の形状(デザイン)として使用するものではなく、商標権者にかかる化粧品についての図形商標として使用するものであり、前記シート状のパック用化粧品の形状(デザイン)と同一視できるものではない。
商標権者は、化粧品ブランド「Lifecella」の商品パッケージ等において、人の顔をモチーフとした図形商標(乙1?乙3:なお、証拠番号については平成24年4月16日付け意見書に添付の証拠の番号を記載する。以下同じ。)を用いた化粧品を製造販売してきたものであるところ、本件商標も、同ブランドの新たに展開する「化粧品」や「化粧乳液」に付する図形商標として使用を予定しているものである。そして、使用予定の態様(乙4)から明らかなように、当該商標を、ブランド名である「Lifecella」の文字と同じ大きさで商品の包装容器の正面に表示し、商標権者のブランドを取引者や需要者に訴求させていく図形商標として採択したものであり、商標としての保護を求めているものであって、商品の形状(デザイン)の保護を求めているものではない。
化粧品の商標として人の顔をモチーフとした図形を使用することは、化粧品を取り扱う業界において一般的に用いられているものであり、例えば、化粧品のパッケージに、人の顔をモチーフとした図形商標を使用し(乙5、乙6)、その図形商標について商標登録をしている(乙7)。
このように、図形商標と商品の形状(デザイン)は、その性質を異にするものであって、通知等に示された使用例をもって、本件商標が、自他商品の識別機能を有しないと判断することはできない。
イ 本件商標は、高い独自性・創造性を有する図形商標である
本件商標は、シート状のパック用化粧品を直感的に表したものではなく、特異性ある図形商標としてデザインされ、表現されているものであり、このことは、本件商標の審理における特許庁の判断(不服2010-2176)からも明らかである。
本件商標の構成態様は、全体として横長の円形状にし、下方に2本の短い斜線と中央部に凸凹を有する2本の横線を表し、その上側の横線中央部の斜線と横長の3つの楕円をバランスよく配してなる図形商標であり、その図案は、シート状の物を記述的に表したものではなく、特定の事物から離れて抽象化、単純化された独自性、創造性を有するものである。本件商標は、全体として均整がとれた横長の円形状であって、人の顔面にうまくフィットしないことは明らかであり、また、本件商標に描かれている3つの楕円は、極めて単純な線で書かれたものであるため、それが人物の目や口、シート状物に設けられた穴であるかなど、容易に理解することはできない。
してみれば、本件商標の図形は、シート状のパック用化粧品の記述的、説明的図形というよりも、むしろ唖然としたような表情の人の顔のような印象を与える、高度に抽象化、単純化されてデザインされた図形商標と認識されるのが自然である。そして、商標権者の上記主張が正しいことは、「化粧品」を指定した図形商標について、乙第10号証ないし乙第12号証が識別力を有すると認められ、登録されていることからも明らかである。当該登録の判断基準を踏まえ、本件商標を見るに、本件商標は、人の顔を暗示させる程度のものであって、シート状のパック用化粧品を認識させるものではなく、商標としての識別機能を十分に発揮しうるものである。
ウ 本件商標の保護の必要性について
包装容器に記された識別力のある図形商標については、商標やパッケージを模倣した商品が増大する傾向が指摘されており、商標権者も乙第13号証に示すとおり、模倣の被害に遭っているものである。商品パッケージの図形商標部分についての模倣が多発することから見ても、本件商標のような使用態様で、商品パッケージに使用される図形商標は、識別力が生じていることを示すものであり、それによって意図的に出所の混同が起こされているという実情がある。
そして、本件商標は、商標権者にかかる化粧品ブランドの図形商標として使用を予定しているものであって、本件商標についても模倣される危険性が高いと懸念されるところである。このような取引実情の下において、本件商標は、格別自他商品の識別力がないと認定し、何人においても自由に使用し得るとすることは、商標の適正な保護の観点から妥当ではない。
以上のように、本件商標は、保護の必要性が高いものであるから、本件商標の登録性の判断においては、かかる保護の必要性についても十分に考慮されるべきである。
エ よって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものではない。
(2)商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものではないことについて
本件商標は、シート状のパック用化粧品を認識させるものではないから、シート状のパック用化粧品以外の化粧品との関係において、何ら品質の誤認を生じさせるおそれのないものであり、このことは、乙第4号証の使用予定の写真を見ても明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当するものではない。
(3)結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものではなく、本件異議申立には理由がない。

5 当審の判断
(1)本件商標について商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとした前記3の取消理由通知は妥当なものであり、これに対する商標権者の意見は、以下の理由により採用することができない。
ア 商標権者は、本件商標は、商標権者が新たに展開する化粧品(化粧水、化粧乳液)に付する図形商標として使用を予定するもの(乙4)であって、シート状のパック用化粧品形状(デザイン)として使用するものではなく、商品の形状(デザイン)の保護を求めているものではない。また、図形商標と商品の形状は、その性質を異にするものであるから、「シート状のパック用化粧品」のパッケージにその形状が示されている使用例をもって、本件商標が、自他商品の識別機能を有しないと判断することはできない旨、述べている。
しかしながら、請求人が本件商標の使用を予定する商品が、化粧品ボトル(容器)や1回分の乳液の小袋であったとしても、取消理由通知で提示した使用例のように、商品のパッケージ上に当該商品の形状を表示することがごく一般的に行われていることからすれば、当該予定商品の外箱に本件商標が使用された場合には、中の商品は見えないことから、あたかも「シート状のパック用化粧品」であるかのように誤認させるものであり、また、本件指定商品は、化粧品全般を指定しているものであることからして、本件商標を、その指定商品中の「パック用化粧品」に使用した場合には、需要者は、当該商品の形状であると認識するというべきであり、自他商品の識別機能を有しないものと判断するのが相当である。
イ 商標権者は、本件商標が高い独自性・創造性を有する図形商標であることは、本件商標に対する拒絶査定不服審判の判断からも明らかであるとし、また、本件商標の構成については、提示された使用例とは違い、高度に抽象化、単純化されてデザインされた図形商標と認識されるのが自然であり、強いて考えるならば、人の顔を漠然と暗示させるとしても、商品の品質を暗示させる程度の商標は、商標法第3条第1項第3号には該当しない旨述べ、また、商標権者の主張が正しいことの根拠としてマスク様の登録例を挙げている。
しかしながら、本件商標は、あごや鼻と思われる部分に入った斜線により、人の顔面にフィットするような工夫が施されたシート状の化粧品の特徴を有しているものであって、明らかに「シート状のパック用化粧品」(マスク)の形状を表したものと認識されるものである。また、商標権者が挙げる登録例は、いずれも顔に表情がある等の特徴を有するものであって、単に、「シート状のパック用化粧品」(マスク)を表したものと容易に認識される本件商標と同一視することはできない。
さらに、登録異議の申立て制度は、商標登録に対する信頼を高めるという公益的な目的を達成するために、登録異議の申立てがあった場合に特許庁が自ら登録処分の適否を審理し、瑕疵ある場合にはその是正を図るというものであって、登録異議の申立てを受けて重ねて審理した結果、登録が誤りであるとの結論に達したときは、その商標登録を取り消すべき旨の決定がされることは有り得るものであり、本件における判断も、拒絶査定不服審判の判断に拘束されることなくなされるものである。
ウ 商標権者は、模倣の被害に遭った事例を挙げ、包装容器に記された識別力のある図形商標については模倣されやすく、本件商標のような使用態様で商品パッケージに使用される図形商標は識別力が生じていることを示すものであり、また、本件商標は、化粧品ブランドの図形商標として使用することを予定している模倣される可能性が懸念されるものであるから、保護の必要性が高いものである旨述べている。
乙第13号証によれば、被模倣品商品のブランド名及び顔図形と雑誌に掲載されている被模倣品商品の写真の一部を組み合わせた「模倣商品」が存在したことは認められるとしても、本件商標は、上記のとおり、明らかに商品の形状を表示したものと認識される図形のみからなるものであって、自他商品の識別機能を果たすとは認められないものであるから、その判断が左右されるものではない。
エ 以上よりすれば、本件商標は、これを指定商品中「シート状のパック用化粧品」に使用するときには、商品の品質・形状を表示したと認識されるに過ぎないもので、商標法第3条第1項第3号に該当し、また、指定商品中「シート状のパック用化粧品」以外の化粧品に使用するときには、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当するものである。

(2)結論
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中「化粧品」について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項により、その登録を取り消すべきものとし、その余の指定商品については、取り消すべき理由はないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録は維持すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲(本件商標)


異議決定日 2012-06-05 
出願番号 商願2008-48715(T2008-48715) 
審決分類 T 1 651・ 272- ZC (X03)
T 1 651・ 13- ZC (X03)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 堀内 真一 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 前山 るり子
内山 進
登録日 2010-12-24 
登録番号 商標登録第5379237号(T5379237) 
権利者 久光製薬株式会社
代理人 工藤 莞司 
代理人 黒川 朋也 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 佐藤 英二 

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