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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X303233
管理番号 1261585 
審判番号 不服2011-16985 
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-21 
確定日 2012-08-01 
事件の表示 商願2009-90995拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は,「八ッ場ダム」の文字を標準文字で表してなり,第30類「菓子、パン」,第32類「清涼飲料」及び第33類「日本酒」を指定商品として,平成21年11月17日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
「本願商標は,『八ッ場ダム』の文字を標準文字で表してなるものであるところ,該文字は,利根川の主要な支流である群馬県吾妻川中流部に建設が進められている多目的ダムを表す語であって,マスコミを通じて世間から注目される著名なダムとして,取引者・需要者間に広く認識されるに至っており,また,『八ッ場ダム』の建設予定地とその周辺地域は,観光スポットとして広く知られている実情も見受けられるから,『八ッ場ダム』の語は,観光スポットとなっている『八ッ場ダム』の建設予定地及びその周辺を示す地域を表す語として理解される。そうとすれば,本願商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者・需要者は,該商品が『八ッ場ダムの建設計画地及びその周辺で製造・販売される商品』であると認識するにとどまるから,単に,商品の産地・販売地を普通に用いられる方法で表示するにすぎない。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における審尋(概要)
当審において,平成24年2月14日付けで,請求人に対し,概要以下のとおり審尋を発し,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものである旨開示して,改めて意見を求めた。

本願商標は,未完成の公共建造物である「八ッ場ダム」を表示する標章のみからなるものであるところ,「八ッ場ダム」は,群馬県内に建設が予定されるダムの名称として広く知られており,一般に,ダムは,ダムやダム湖を含む周辺地域が観光地化している実情があり,かつ,「八ッ場ダム」についても,ダム湖を観光の核とする計画があり,現在においても,観光情報として「八ッ場ダム」が紹介されている事実があるから,「八ッ場ダム」の完成後には,ダムやダム湖又は周辺地域が著名な観光地として一般の需要者,取引者に認識される可能性があるといえる。
さらに,本願商標の指定商品は,「菓子、パン」,「清涼飲料」及び「日本酒」であるところ,これらは,観光地の土産品としてなじまれている上,実際に,ダムにちなんだ菓子や清涼飲料が土産品として販売されている事実もある。
そうすると,本願商標「八ッ場ダム」は,その指定商品に使用された場合,その商品が,「八ッ場ダム」を含む周辺地域で生産・販売されたものと認識され得るものであって,そしてそれにとどまるものである。
してみれば,本願商標は,その商品の産地,販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものというのが相当である。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。

第4 請求人は,上記審尋に対し,所定の期間を経過するも何らの応答もしていない。

第5 当審の判断
上記審尋でも示したとおり,商標法第3条第1項第3号における「産地,販売地」について,未完成の公共建造物(国又は地方公共団体・独立行政法人等の公法人が所有又は管理する建造物)の名称を表示する標章のみからなる商標は,当該建造物の完成後には当該建造物の所在地又は周辺地域が著名な観光地として一般の需要者,取引者に認識される可能性がある場合であって,使用する商品が当該地で生産され,販売されるものであろうと認識されるものである場合は,これを当該商品の産地又は販売地を表示するものと解釈するのが相当である。
そこで,以下,本願商標について検討する。

(1)本願商標は,前記第1のとおり,「八ッ場ダム」の文字を表してなるものであるところ,「八ッ場ダム」は,原審で説示するとおり,群馬県吾妻郡長野原町にある利根川支流の吾妻川に建設中のダムであり,その建設の是非等をめぐり,マスコミによる頻繁な報道等が行われたことにより,少なくとも群馬県内に建設が予定されるダムの名称として,一般に広く知られているとみるのが相当である。

(2)本願商標は,上記「八ッ場ダム」の名称をそのまま表示するものであり,「八ッ場ダム」は,国土交通省関東地方整備局が事業主体であるから,本願商標は,未完成の公共建造物を表示する標章のみからなるものといえる。

(3)「ダム」は,本来,発電,利水,治水等の目的で水をためるために,河川や渓谷等を横切って築かれる建造物であるところ,上記審尋でも示した以下のとおりの事実を踏まえれば,そのような「ダム」の中には,その立地や景観等とあいまって,その本来の目的とは別に,ダムやダム湖を含む周辺地域が観光地化しているものがあるというのが実情である。
ア 「黒部ダムオフィシャルサイト」に係るウェブサイトに,「黒部ダム観光情報」として,「立山黒部アルペンルート」や「黒部ダムトラベルガイド」が紹介されているほか,「周辺のみどころ」として,「黒部ダムカレー」や「大町温泉郷」が紹介されている(http://www.kurobe-dam.com/kankou/index.html及びhttp://www.kurobe-dam.com/shuuhen/index.html)。
イ 「月山ダム」と題するウェブサイトに,「月山ダム見学のごあんない」「月山ダムの内部に潜入。放流ゲート等を内部からご覧いただけます。大人の社会見学,学校等の社会見学など団体・個人を問わず見学いただけます。」と記載されているほか,「月山ダム周辺マップ」には,周辺の観光情報が紹介されている(http://www.thr.mlit.go.jp/gassan/及びhttp://www.thr.mlit.go.jp/gassan/kitemite/sightseeing-map.html)。
ウ 「秩父イーナビ」と題するウェブサイトに,「秩父には,秩父さくら湖(浦山ダム)をはじめ多くの湖(ダム湖)があります。奥秩父の大滝地区には,秩父湖(二瀬ダム),奥秩父もみじ湖(滝沢ダム)などがあり,紅葉の時期には美しい景観を見せてくれます。秩父に訪れた時には,秩父のダム・湖に行ってみてはいかがでしょうか。」と記載されている(http://www.chichibu-enavi.jp/contents/105/index.html)。

(4)「八ッ場ダム」についても,ダム湖を観光の核とする計画があり,現在においても,観光情報として「八ッ場ダム」の建設予定地が紹介されている事実が,上記審尋でも示したように,以下のとおり見受けられる。
ア 読売新聞2011.12.27 東京朝刊 31頁
「[八ッ場ダム継続](下)生活再建 待望の再始動(連載)=群馬」の見出しで,「・・・前田国土交通相がダム本体の建設継続を決定。ダム湖を観光の核とする生活再建路線が再び動き出す。具体案として『水陸両用バス』の運行が浮上している。これまでに水没関係5地区連合対策委員会や町議会が,先進地の川治ダム(栃木県日光市)を視察。車ごと湖に飛び込むスリルと迫力に,・・・『観光の目玉になる』と期待を膨らませる。」と記載されている。
イ 「吾妻観光情報」と題するウェブサイトに,「ニュースなどで,大々的に取り上げられたのが,『八ツ場ダム』です。八ツ場ダムの建設予定地は,群馬県の草津温泉に向かう途中です。日本全国の方々は,『八ツ場ダム』といえば,ご存じでしょうが,その『八ツ場ダム建設予定地』が群馬県のしかも草津温泉手前の場所であることは,知らない人が多いのではないでしょうか?八ッ場ダムの象徴,湖面2号橋がものすごいパノラマで横たわっています。 その湖面2号橋の道路手前の右側に『やんば館』がありますので,興味のある方は,是非お立ち寄りください。そこで,湖面2号橋を背景に記念写真をとる方も大勢います。」と記載されている(http://www.hanamame.com/nakanojo/yanbadam.html)。

(5)そして,観光地において,その観光の対象となる施設等の名称や絵図等を用いた様々な商品が土産品として販売されていることは,一般に広く知られているところであり,本願商標の指定商品である「菓子,パン,清涼飲料,日本酒」は,観光地の土産品として,一般になじみ深いものといえる。

(6)「ダム」についても,以下のとおり,ダムにちなんだ菓子や清涼飲料が販売されている事実が,以下のとおり見受けられることは,上記審尋でも示したとおりである。
ア 「黒部ダムオフィシャルサイト」に係るウェブサイトに,「人気のおみやげランキング」の「2位」として「黒部ダムカレーせんべい」が紹介されており,「ご当地グルメとしてブレイクした黒部ダムカレーがおせんべいになりました」と記載されている(http://www.kurobe-dam.com/kankou/omiyage.html)。
イ 「えだまめ日記 since2007」と題するウェブサイトに,「徳山ダムのお土産」「『徳山ダム』の文字入りのせんべい 3枚×6袋入り@525円 ダム見学に行ったら必ず買おう。味見したが,なかなかいけてる。」と記載されている(http://milky.geocities.yahoo.co.jp/gl/edamamex3/comment/20070822/1187840878)。
ウ 「NUKUI SPRINGS」に係るウェブサイトに,「お土産品の御案内」として「温井ダムラムネ」「株式会社 中元本店 製造 こちらは,スタンダードな味のオリジナルラベルのラムネ。ぜひ,風呂上がりのお供に!」と記載されている(http://www.nukui-sp.com/html/omiyage_ramune.html)。

以上を踏まえれば,本願商標は,未完成の公共建造物(「八ッ場ダム」)を表示する標章のみからなるものであるところ,「八ッ場ダム」は,群馬県内に建設が予定されるダムの名称として広く知られており,一般に,ダムは,ダムやダム湖を含む周辺地域が観光地化している実情があり,かつ,「八ッ場ダム」についても,ダム湖を観光の核とする計画があり,現在においても,観光情報として「八ッ場ダム」が紹介されている事実があるから,「八ッ場ダム」の完成後には,ダムやダム湖又は周辺地域が著名な観光地として一般の需要者,取引者に認識される可能性があるといえる。
さらに,本願商標の指定商品は,「菓子、パン」,「清涼飲料」及び「日本酒」であるところ,これらは,観光地の土産品としてなじまれている上,実際に,ダムにちなんだ菓子や清涼飲料が土産品として販売されている事実もある。
そうすると,本願商標「八ッ場ダム」は,その指定商品に使用された場合,その商品が,「八ッ場ダム」を含む周辺地域で生産・販売されたものと認識され得るものであって,そしてそれにとどまるものである。
してみれば,本願商標は,その商品の産地,販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものというのが相当である。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。

(7)請求人の主張について
請求人は,「八ッ場ダム」は,計画された公共建造物の名称であって,地域の名称ではないこと,八ッ場ダムの建設予定地にはダム本体は存在しないこと,ダム本体の建設予定地に相当数の観光客が訪れ,同地が観光スポットになったという事実は存しないこと,「八ッ場ダム」の文字が商品の産地又は販売地を表示するものとして取引上普通に使用されている事実が存しないことなどを根拠に,本願商標は,本願商標の指定商品の産地や販売地として認識されないから,登録されるべきである旨,主張する。
しかしながら,既に述べたとおり,「八ッ場ダム」の完成後には,ダムやダム湖又は周辺地域が著名な観光地として一般の需要者,取引者に認識される可能性があり,さらに,本願商標の指定商品は,観光地の土産品としてなじまれている上,実際に,ダムにちなんだ菓子や清涼飲料が土産品として販売されている事実もある。
そうすると,本願商標「八ッ場ダム」は,その指定商品に使用された場合,その商品が,「八ッ場ダム」を含む周辺地域で生産・販売されたものと認識され得るものであって,そしてそれにとどまるものである。
そして,商標法第3条第1項第3号の趣旨は,同号に列挙されている商標は,商品の内容に係わるものであるために,現実に使用されるか,又は,将来一般的に使用されるものであることから,出所識別機能を有しないことが多く,また,これを特定人に独占させることは適切でないために登録することができないものとされていると解されるから,商標登録出願に係る商標が,商標法第3条第1項第3号にいう「商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するというためには,必ずしも,当該指定商品が当該商標の表示する地域等において,現実に生産され又は販売されていることを要しない。
したがって,上記請求人の主張は,採用できない。

(8)まとめ
以上のとおりであるから,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するものとした,上記審尋は妥当であって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するので,本願は,拒絶をすべきである。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-05-17 
結審通知日 2012-05-25 
審決日 2012-06-11 
出願番号 商願2009-90995(T2009-90995) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (X303233)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 目黒 潤小田 明 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 小川 きみえ
守屋 友宏
商標の称呼 ヤンバダム、ヤツバダム 

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