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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y33 |
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管理番号 | 1261580 |
審判番号 | 取消2011-300133 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2011-02-07 |
確定日 | 2012-08-03 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4790934号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4790934商標(以下「本件商標」という。)は、「LAVINIA」の文字を標準文字で表してなり、平成15年12月25日に登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同16年7月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、審判請求書、答弁に対する弁駁、口頭審理陳述要領書及び口頭審理における陳述において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていない。 したがって、本件商標、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 (1)被請求人提出に係る乙第1号証ないし乙第9号証の証拠書類によっては、本件商標が継続して3年以上日本国内において、商標権者によってワインについて使用されていることは証明されていない。 なお、後述するように使用権者による使用についても何ら証明されていない。 ア まず、乙第1号証から乙第9号証までの全ての書面において、本件商標に係る商標権者の表示は皆無であり、「商標権者」により使用されているという事実は証明されていない。 イ 乙第1号証は、「LAVINIA」及び「LAVINIA PARIS MADELEINE 3 boulevard de la Madeleine 75001 Paris」等の文字の記述があるウェブサイトのページ写しであるところ、これには、下線の引かれた「LAVINIA PARIS MADELEINE」は存在するが、「LAVINIA」の文字が共通するのみであり、商標権者の使用を証明するに足りるものではないと思料する。 なお、本書面は、ワインの広告に関連する記載内容とは理解されるとしても、日本国内における商標「LAVINIA」の使用の事実の証明にはなっていない。 ウ 乙第2号証は、「LAVINIA」の文字とワインの写真が掲載されたウェブサイトのページ写しであるところ、これには、本件商標権者の名称の表示が存在しないだけでなく、関連を示す表示もなく、商標権者による日本国内での使用の事実は何ら証明されていない。 エ 被請求人は、「LAVINIA」の商標が付されたワインと、それを運搬するための「LAVINIA」の商標が付された包装箱の写真を乙第3号証として提出している。 しかし、ワインボトルのラベル及び包装箱のいずれにも商標権者を示す表示は見受けられない。この写真によって、商標権者が本件商標の使用を日本で行っている事実の証明にはならない。 オ 被請求人は、「DRCが造る幻の白ワイン LAVINIA 2000」と題された丸本酒店のウェブサイトを乙第4号証として提出し、「商標権者がそのオリジナル商品として販売している『HAUTES COTES DE NUITS』のワインに本件商標『LAVINIA』が付されている。この『HAUTES COTES DE NUITS』のワインは、フランス、ブルゴーニュ地域にあるワイン製造会社であるドメーヌ・ラ・ロマネ・コンティがサンヴィヴァン修道院の敷地内で作った白ワインを、本件商標の商標権者が樽ごと買い上げ、自社のオリジナル商品として販売しているものである」と述べている。 しかし、この記載内容の真否は別として、本件商標権者が、本件商標「LAVINIA」を日本国内で使用しているか否かとは無関係の内容であり、何ら使用の事実は証明されていない。 そもそも、乙第4号証の下線の引かれた箇所より更に下段には、上記白ワインを樽ごと買い上げているのは「ラ・ヴィーニャ」というリカーショップである旨が記載されているのであり、商標権者に関する記載ではない。 カ 乙第5号証ないし乙第9号証は、日本人の顧客に宛てた請求書であるところ、これらには、「Hautes cotes de nuits ROMANEE CONTI」の記載があるが、これは単に「Hautes cotes de nuits ROMANEE CONTI」の名称がリスト中に存在するにすぎず、これをもって「LAVINIA」なる商標の付されたワインが販売された証明には全くなり得ないものである。 したがって、これら乙第5号証ないし乙第9号証の書面は、本件商標「LAVINIA」についての使用の事実を示す資料たり得ないものである。 すなわち、「Hautes cotes de nuits」は、ブルゴーニュ地域のワインの産地名称であり、有名なコート・ド・ニュイ地区の西に接する区域である。したがって、この産地名称が表示されていることと、本件商標「LAVINIA」が使用されていることとは到底同一視することはできない。 なお、乙第5号証ないし乙第9号証のいずれの請求書の発行者の名称も「LAVINIA FRANCE,S.A.S.」であり、商標権者のラヴィニア セレクシオン エス・アーとは相違する。 (2)以上述べたように、上記各乙号証は、被請求人が述べるような商標権者による日本国内における商標「LAVINIA」のワインについての使用の証明にはなり得ない。 また、乙第1号証ないし4号証の資料についてもこれが専用使用権者又は通常使用権者の使用である事実の証明も何ら為されていない。 したがって、本件商標「LAVINIA」の日本における使用は証明されておらず取り消されるべきものである。 (3)まとめ 以上のとおり、本件商標は、その指定商品中の「ワイン」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていないものである。 3 平成24年2月10日付け口頭審理陳述要領書 (1)乙第1号証ないし9号証、今回提出された乙第10号証ないし20号証を総合的に検討しても、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、「ワイン」について本件商標を使用していることは明確に示されていない。 (2)乙第10号証及び12号証のラベル及び乙第3号証及び12号証のワインボトルの写真に貼られたラベルには、「LAVINIA」の記載があるが、我国において、本件審判の請求登録前の3年間において、ワインについてこのラベルが使用されたのか否かは、その単独のラベルや写真だけでは確認できるものではない。 また、唯一、我国での使用の可能性を確認できる乙第4号証については、何時からこの日本におけるネット上での販売が開始されたのか認識することができない。乙第4号証に現されている日付は全て本件審判の請求登録後の日付となっている。 さらに、仮に日本国におけるネット上での宣伝販売が本件審判の請求登録前であることが証明されたとしても、上記ラベル中のどこにも本件商標権者の名称は記載されていないので、このラベルの使用のみによっては、本件商標権者が本件商標を使用していると確認することはできない。 (3)乙第5号証ないし乙第9号証の請求書に記載された「Hautes cotes de nuits ROMANEE CONTI 2007」と被請求人の提出した乙第3号証、4号証、10号証などのラベルの記載の共通性は、「Hautes cotes de nuits」(オート コート ド ニュイ)というブルゴーニュ地方に存在する葡萄及びワインの生産地域の名称のみである。 「Hautes cotes de nuits」(オート コート ド ニュイ)は、世界的に最も著名なワインである「ロマネコンティ」の畑の存在する「Cotes de nuits」(コート ド ニュイ)地域に隣接する地域である。 この「Hautes cotes de nuits」(オート コート ド ニュイ)の地域で生産されているワインは種々存在しており、この地域表示が行われているワインが、全て「LAVINIA」であると言えるものでないことは勿論である。 したがって、産地を示す「Hautes cotes de nuits」の記載が一致することをもっては、「LAVINIA」が日本国において、ワインについて使用されたとする証明にはなり得ない。 (4)審理事項通知書では、被請求人に、答弁書の乙第6号証ないし乙第9号証として提出の請求書に記載されたワインの代金が入金されたことを確認できる書類を提出するよう求めている。 これに対して、被請求人はワインの代金が入金されたこと確認できる書類を提出していないが、仮に提出されたとしてもそのワインが「LAVINIA」であることが認識できる書類でなければ、本件商標についての使用の証明にはなり得ないものである。 (5)まとめ 乙第1号証ないし9号証及び今回提出された乙第10号証ないし20号証によっても、本件商標「LAVINIA」が、日本国内で使用された状況が確認できない。 以上のように、当該商標の使用者が誰であり、その使用者と本商標権者の関係を証明する議論を行う前段階の本件商標自体の日本での使用の事実が証明されていないものである。 (6)以上のとおり、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが本件商標をワインについて使用していることは証明されていない。 4 口頭審理における陳述 (1)「Hautes cotes de nuits ROMANEE CONTI 2007」のワインは、「LAVINIA」の商標を付したもの以外のものもあり、乙第5号証ないし乙第9号証のワインが「LAVINIA」の商標を付したものとは限らない。 (2)乙第5号証ないし乙第9号証に記載されている商品の販売価格が、日本国内の販売価格に比べ非常に安いのは不自然である。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、答弁、口頭審理陳述要領書、口頭審理における陳述及び上申書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第26号証を提出した。 1 理由 本件商標の商標権者は、以下に述べるように、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、その請求に係る指定商品中「果実酒」に属する「ワイン」について、本件商標を使用しているものである。 (1)本件商標の商標権者は、世界各国のワインを始めとする酒類を扱っているものであり、スペイン国のみならず、フランス国にもその店舗を進出させているものである(乙第1号証)。 (2)本件商標の商標権者のウェブサイトにおいては、ワインを始めとする酒類が、通信販売されており、このウェブサイトを通じて、日本の顧客もそれらを購入できるものである(乙第2号証)。 (3)本件商標の商標権者がそのオリジナル商品として販売している「HAUTES COTES DE NUITS」のワインに本件商標「LAVINIA」が付されている。 この「HAUTES COTES DE NUITS」のワインは、フランス、ブルゴーニュ地域にあるワイン製造会社であるドメーヌ・ラ・ロマネ・コンティがサンヴィヴァン修道院の敷地内で作った白ワインを、本件商標の商標権者が樽ごと買い上げ、自社のオリジナル商品として販売しているものである(乙第3号証及び乙第4号証)。 また、それらのワインを運搬する際に使用する包装箱にも本件商標「LAVINIA」が付されている(乙第3号証)。 (4)これらの「HAUTES COTES DE NUITS」のワインは、本件商標の商標権者のウェブサイトを通じた通信販売により、日本の顧客にも販売されているものである。 その販売の際に発行された請求書(乙第5号証ないし乙第9号証)において、clientの欄(顧客の欄)に日本人の氏名及び日本の住所が記載されており、Descriptionの欄(商品の内訳の欄)に「Hautes cotes de nuits」のワインの銘柄が記載されている。また、それらの販売の日付は、Dateの欄(日付の欄)に、いずれも2010年の7月又は8月の日付が記載されている。 (5)まとめ 以上のことから、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者により、指定商品中「果実酒」に属する「ワイン」について使用していることが明らかである。 2 平成24年1月27日付け及び同年2月17日付け口頭審理陳述要領書及び同年3月2日付け上申書 (1)本件商標の商標権者は、本件商標「LAVINIA」を「HAUTES COTES DE NUIT」のワインのラベルに付して使用している(乙第3号証、乙第10号証ないし乙第12号証)。 (2)本件商標の商標権者は、本件商標「LAVINIA」を付したワインをオンラインによる通信販売により、日本の顧客にも販売している。 その販売の際に発行された請求書(乙第5号証ないし乙第9号証、乙第13号証ないし乙第17号証)において、発行者が「LAVINIA FRANCE,S.A.S.」であるところ、同社は、商業登記簿の抄本の写し(乙第18号証及び乙第19号証)に示されているように、同社の「President(社長)」として本件商標の商標権者である「LAVINIA SELECCION SA」が登録されている。 フランス法において、フランスに進出する企業が子会社を設立しようとする場合、よく利用される法人形態が「S.A.S.(単純型株式会社)」である。 「S.A.S.(単純型株式会社)」においては、「President(社長)」の設置が義務付けられているが、法人を社長として選任することができる(乙第20号証)。 これにより、本件商標の商標権者である「LAVINIA SELECCION SA」は、フランスにおける「LAVINIA FRANCE,S.A.S.」の社長として選任されており、「LAVINIA FRANCE,S.A.S.」を実質的に完全に支配する関係にあるものである。 したがって、本件商標の商標権者と上記関係にある者によって、本件商標「LAVINIA」を付したワインは、日本の顧客にも販売されている。 (3)その販売の際に発行された請求書(乙第5号証ないし乙第9号証)におけるDescriptionの欄(商品の内訳の欄)において、「Hautes cotes de nuits ROMANEE CONTI 2007」の記載があるところ、この商品は、本件商標「LAVINIA」をワインのラベルに付して使用していることを示す乙第10号証ないし乙第12号証における「HAUTES COTES DE NUITS 2007」の商品と同じものである。 したがって、請求書に記載のワイン中には、本件商標を付したワインが含まれている。 なお、商品の内訳の欄の方には「ROMANEE CONTI」の記載があるが、「ROMANEE CONTI(ロマネ・コンティ)」は、ブルゴーニュ地方のCOTES DE NUITS(コート・ド・ニュイ)地域にあるぶどう畑の名称であり、本件商標を付したワインは、「ROMANEE CONTI(ロマネ・コンティ)」で生産されたものであるため、その記載があるものである。 また、上記の請求書において、販売の日付は、2010年7月又は8月の日付が記載されている。 (4)乙第5号証ないし乙第9号証の請求書に「LAVINIA」の文字がないのは、商品の内訳記載欄は、記載スペースが限られていること、また、「Hautes cotes de nuits」のワインが、自社のオリジナル商品として販売しているもので、社名の略称でもある本件商標を付したものしかないという理由によるものである。 (5)請求書の発行者であり、本件商標権の通常使用権者である「LAVINIA FRANCE,S.A.S.」は、請求書記載の「Hautes cotes de nuits ROMANEE CONTI 2007」が、乙第12号証の写真に示されているワインであることを宣誓している。 3 口頭審理における陳述 (1)「LAVINIA FRANCE,S.A.S.」は通常使用権者にあたる。 (2)請求人の主張(1)に対して、「Hautes cotes de nuits ROMANEE CONTI 2007」のワインは「LAVINIA」の商標を付したもの以外のものがあったとしても、本件のワインは、「LAVINIA」の商標を付したものしかない。 (3)請求人の主張(2)に対して、ワインは現地で直接買い付けているので、日本での販売価格に比べて安いのである。 第4 当審の判断 1 被請求人提出の乙各号証によれば、以下の事実が認められる。 (1)乙第3号証は、箱詰めされているワインボトル3本の写真写しであるところ、該ワインボトルのラベルには、「BOURGOGNE」、「HAUTES-COTES DE NUITS」、「1999」及び「LAVINIA」の表示が認められる。 そして、その包装箱には、「LAVINIA」(語尾の「A」の部分は、赤紫色の図案に白抜きで記載されている。)の表示が認められる。 (2)乙第4号証は、「丸本酒店」の「2011/06/01」付け打ち出しのウェブサイト写しであるところ、これには、乙第3号証のワインラベルの「1999」を「2000」とする表示の違い以外は同じワインラベル及びワインボトルの写真が掲載され、また、「商品名」欄に、「DRCが造る幻の白ワイン LAVINIA2000」、「商品説明」欄に、「世界で最も有名な『ドメーヌ・ラ・ロマネ、コンティ(DRC)』は様々な畑を所有しています。このブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイは、なんとDRCがサンヴィヴァン修道院の敷地内で作った白ワインです。しかも、そのワインを、世界NO.1のリカー・ショップといわれている『ラ・ヴィーニャ』が樽ごと買い上げ、そのオリジナルとして販売しているという珍品。・・・その『ラ・ヴィーニャ』が、DRCから直接4?5樽を買い取り、DRCにボトリングしてもらい販売しています。」、「容量」欄に、「750ml」及び「販売価格」欄には「SOLD OUT」の記載がされている。 (3)乙第5号証ないし乙第9号証は、商標権者のウェブサイトを通じ、ワインを日本の顧客に販売した際の請求書とするものであり、また、乙第13号証ないし乙第17号証はその訳文であるところ、これらの書面には、その上部左角に「LAVINIA FRANCE,S.A.S./ラヴィニア フランス エス・エー・エス」の記載、「client/顧客」の欄に、「TOKYO/東京都」、「KOBE/神戸市」等の日本国在住の顧客の氏名の記載、「Facture/請求書」の欄中の「Date/日付」に、「16/08/2010」、「03/08/2010」、「26/07/2010」、「27/07/2010」及び「02/08/2010」の各記載がされている。 さらに、これらのいずれにも「Hautes cotes de nuits ROMANEE CONTI 2007 Blanc 0.75/オート・コート・ド・ニュイ ロマネ・コンティ 2007 白ワイン 75cl」の記載がされている。 (4)乙第10号証は、ワインのラベルの原物であり、乙第11号証はその訳文及び乙第12号証はそのラベルが貼付されたワインボトルの写真写しであるところ、このラベルには、乙第3号証及び乙第4号証のワインラベルと同じ「BOURGOGNE」、「HAUTES-COTES DE NUITS」及び「LAVINIA」の表示が認められ、異なるところは、収穫した年と認められる「RECOLTE 2007」の表示のみである。 (5)乙第18号証は、「LAVINIA FRANCE,S.A.S.」の商業登記簿抄本の写しであり、乙第19号証はその訳文であるところ、これらによれば、「LAVINIA FRANCE,S.A.S./ラヴィニア フランス エス・エー・エス」の「President/社長」として、本件商標の商標権者である「LAVINIA SELECCION(Societe anonyme)/ラヴィニア セレクシオン エス・アー」が登録されている。 (6)乙第20号証は、「単純型株式会社(SAS)における権能の委任・・」の表題のあるウェブサイトであり、これには、フランスに進出する企業が子会社を設立しようとする場合、よく利用される法人形態が「S.A.S.(単純型株式会社又は簡易型株式会社)」であり、「S.A.S.」においては、「President(社長)」の設置のみが法定で義務付けられているところ、株主は、法人を社長として選任することができる旨記載されている。 (7)乙第21号証は、「空の旅/AIR TRAVEL」の表題のあるウェブサイト及び乙第22号証は、「あるくの家?」の表題のブログ写しと認められるところ、これらには、パリのマドレーヌにあるワイン店「LAVINIA」を紹介する記載とともに、その店舗正面の写真が掲載されている。そして、その店舗の看板には、「LAVINIA」(語尾の「A」の部分は、赤紫色の図案に白抜きで記載されている。)の文字が記載されている。 2 上記1で認定した事実及び被請求人の主張を総合すれば、以下の事実が認められる。 (1)商標権者は、自己のウェブサイトを通じてワインをはじめとする酒類を通信販売しているところ、商標権者が社長を務める商標権者の子会社「LAVINIA FRANCE,S.A.S.」を通じて、日本の顧客に、本件審判の請求の登録前3年以内である、「2010年7月及び8月」に、「Hautes cotes de nuits ROMANEE CONTI 2007 Blanc 0.75」(以下「本件ワイン」という。)を販売したことが推認できる。 そして、本件ワインの表示中の「Hautes cotes de nuits」は、ブルゴーニュ地方のぶどう等の生産地域の名称を、また、「ROMANEE CONTI」はぶどう畑の名称を、さらに、「2007 Blanc 0.75」は、「2007年収穫 白ワイン 0.75cl」をそれぞれ意味することについては、当事者間に争いはないものである。 ところで、請求人は、本件ワインの表示中には、本件商標である「LAVINIA」の表示がされていないから、「LAVINIA」なる商標の付されたワインが販売されたとはいえない旨主張する。 これに対し、被請求人は、請求書(乙5ないし9)に「LAVINIA」の文字がないのは、商品の内訳記載欄の記載スペースが限られていること、また、「Hautes cotes de nuits」のワインが、自社のオリジナル商品として販売しているもので、社名の略称でもある本件商標を付したものしかないから、「LAVINIA」の文字を記載する必要がないという理由によるものである旨主張しているところ、かかる被請求人の主張は、普通一般の取引の事情として、不自然なところはなく、肯首し得るものである。 加えて、「LAVINIA FRANCE,S.A.S.」が、同人の略称である「LAVINIA」の文字を、実際に、店舗の看板やワインの包装箱に使用していることからも、乙第12号証等のワインボトルに貼付されたラベルの表示中「LAVINIA」の文字が、需要者をして、同人の略称である商標と認識され、同人のオリジナル商品であることを理解させるとみるのが自然である。 また、収穫年を2007年とするワイン(乙12)と収穫年2000年の表示のみを異にする同様のワイン(乙4)が、販売時期等は不明であるとしても、実際に、丸本酒店を介して、日本においても、販売されていたものと推認し得ることからすれば、2007年収穫の本件ワインについても、少なくとも2007年以降に日本国内においても販売されていたものと推認し得る。 さらに、請求書の発行者である「LAVINIA FRANCE,S.A.S.」の宣誓書訳文(乙26)を併せ考慮すれば、結局、請求書記載の本件ワインは、本件商標と同一の「LAVINIA」の商標が付されたワイン(乙12。以下、「使用商品」という。)であるとみて差し支えないものというべきである。 そして、請求書の発行者である「LAVINIA FRANCE, S.A.S.」は、商業登記簿抄本等(乙18ないし20)からすれば、同社の社長として商標権者が選任されている商標権者と親子会社の関係にあるといえるから、両者間には、本件商標について黙示の使用許諾があったとみても不自然でなく、「LAVINIA FRANCE,S.A.S.」は、本件商標権に係る通常使用権者とみて差し支えないというべきである。 そうとすると、通常使用権者は、本件審判の請求の登録(平成23年2月24日)前3年以内の2010年7月及び8月に、本件商標を付したワインを販売したことが推認されるものであって、通常使用権者の上記行為は、「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡・・・」(商標法第2条第3項第2号)に該当するものである。 (2)してみれば、通常使用権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を請求に係る指定商品について使用をしていたというべきである。 3 請求人の主張について (1)請求人は、「請求書に記載されている『Hautes cotes de nuits ROMANEE CONTI 2007』のワインは、『LAVINIA』の商標を付したもの以外のものもあり、乙第5号証ないし乙第9号証のワインが『LAVINIA』の商標を付したものとは限らない」旨主張する。 確かに、「Hautes cotes de nuits ROMANEE CONTI 2007」のワインが、「LAVINIA」の商標以外の商標を付したものもあることは推認し得る。 しかしながら、当該ワインは、DRCがサンヴィヴァン修道院の敷地内で作った白ワインであって、その流通量は極めて限定されているものと推認し得るから、通常使用権者がワインラベルに出所識別標識としての同人の略称「LAVINIA」の商標のオリジナル商品のみ取扱い、販売することは、一般商取引上、不自然なところはない。 したがって、かかる請求人の主張は採用することができない。 (2)請求人は、「本件ワインの販売価格は、日本国内の販売価格に比べ非常に安く不自然である」旨主張する。 しかしながら、請求人は、本件ワインの日本国内における販売価格を具体的に示さないばかりでなく、また、本件ワインの販売価格が、日本国内の販売価格に比べ安いものであったとしても、通常使用権者が、販売代理店などを介さずに、直接、日本国内の顧客に販売する方法からすれば、何ら不自然なところはない。 したがって、かかる請求人の主張も採用することができない。 4 むすび してみれば、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者が、請求に係る指定商品に含まれる「ワイン」について、本件商標を使用していたことを証明したものと認めることができる。 以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-03-09 |
結審通知日 | 2012-03-15 |
審決日 | 2012-03-27 |
出願番号 | 商願2003-115075(T2003-115075) |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(Y33)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 斎 |
特許庁審判長 |
小林 由美子 |
特許庁審判官 |
小川 きみえ 鈴木 修 |
登録日 | 2004-07-30 |
登録番号 | 商標登録第4790934号(T4790934) |
商標の称呼 | ラビニア |
代理人 | 江藤 聡明 |
代理人 | 幡 茂良 |
代理人 | 小出 俊實 |
復代理人 | 飯村 重樹 |
代理人 | 吉田 親司 |
代理人 | 橋本 良樹 |
代理人 | 石川 義雄 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 潮崎 宗 |