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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 042 |
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管理番号 | 1258346 |
審判番号 | 取消2011-300239 |
総通号数 | 151 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2012-07-27 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2011-03-03 |
確定日 | 2012-06-08 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3032824号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 登録第3032824号商標(以下「本件商標」という。)は、「FALCON」の欧文字を横書きしてなり、平成4年9月24日に登録出願、第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」を指定役務として、同7年3月31日に設定登録、その後、同17年4月12日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。 そして、本件審判の請求の登録は、平成23年3月23日にされているものである。 第2 請求人の主張の要点 請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 1 請求の理由 請求人の調査では、被請求人は、過去3年以上にわたって、我が国において本件商標を指定役務について使用していないことが判明した。よって、請求の趣旨のとおり審決を求める次第である。 2 答弁に対する弁駁 (1)本件商標が使用されているのは、第9類に属する商品「ソフトウェア」である。このことは、乙第4号証の2頁目の「補足-FALCONの特徴」として、「FALCONは、デロイトトーマツコンサルティングが開発、販売、導入、保守を一貫して行っている連結用パッケージソフトウェア」との記載があることより明らかである。 (2)乙第3号証にある「FALCON/NT 保守サービス契約書」をみても、商品「ソフトウェア」の商標として「FALCON」があり、その商品の保守サービスという内容であり、保守サービスの商標としては、何も使用されていない。 (3)乙第2号証には、「連結会計システムFALCON保守サービス提供に関する料金表」とあり、商品「連結会計システム(ソフトウェア)」の商標が「FALCON」であることは明らかである。 (4)平成23年7月13日付けで宣誓書が提出されているが、本宣誓書には、「使用許諾していることに相違ありません。」と記載されているのみで、本件商標の出所表示機能、質保証機能、広告宣伝機能を担保するために、どのような役務の質の管理のもとに使用許諾しているかの記載がない。このような宣誓書のみで、登録権者とアビームコンサルティング株式会社(以下「アビームコンサルティング」という。)との間に使用許諾があり、通常使用権者により、本件商標が指定役務「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」について使用されていると認めることは到底できない。実態のない、不使用取消審判を免れるためだけの宣誓書といわざるを得ない。 なお、品質管理条項のない権利不行使契約が使用許諾にならないことは、特許庁審判部も認めるところである(甲第2号証)。 (5)以上より、本件商標は、通常使用権者により、指定役務「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」に使用されていないことは明らかである。よって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。 第3 被請求人の答弁の要点 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。 1 商標の使用者について 乙第1号証の「契約内容の変更に関する覚書」(写し)には、覚書の締結の当事者乙として、本件商標の通常使用権者である「アビームコンサルティング株式会社」の名称が記載されている(1頁2行)。アビームコンサルティングは、「電子計算機のプログラムの保守」等を業務とする会社であり、本件商標の通常使用権者である。 本件商標は、被請求人が開発した連結会計パッケージ・ソフトウェアに関連するサービスの商標として採択されたが、1997年頃、グループ内の事業戦略により、被請求人が本件商標権を所有する一方、被請求人が100%出資する子会社であったデロイトトーマツコンサルティング株式会社(現 アビームコンサルティング)が、本件商標を使用してソフトウェアを販売し、その保守を担当することとなった。Wikipediaの「アビームコンサルティング」の欄(乙第5号証)、1頁[概要]の7行から8行及び同2頁「略歴」に記載のように、1997年から2003年まで、デロイトトーマツコンサルティング株式会社(現 アビームコンサルティング)は、被請求人である「監査法人(現有限責任監査法人トーマツ)」のソフトウェア導入コンサルティング部門に統合されていた。また、平成11年8月19日付の株式会社NTTデータのニュースリリース(乙第4号証)では、「FALCONはデロイトトーマツコンサルティング株式会社の登録商標です」との記述がある(乙第4号証、2頁16行)。 本件商標の設定登録日は平成7年(1995年)3月31日であるが、上記の事情から、被請求人は、アビームコンサルティングに対して、本件商標について黙示の使用許諾をしている。アビームコンサルティングは、その後も現在まで「FALCON」の商標の使用を継続している。 なお、被請求人は、後日、アビームコンサルティングに対する使用許諾の事実があったことを宣誓する宣誓書を提出する予定である。 2 使用を示す書類等 (1)乙第1号証 乙第1号証は「契約内容の変更に関する覚書」の写しであり、アビームコンサルティング(契約上の乙)が、顧客(契約上の甲)と締結した電子計算機用アプリケーションの「FALCON/NT 保守サービス契約書」(原契約)(乙第3号証)に対する「契約内容の変更に関する覚書」である。また、この「契約内容の変更に関する覚書」には「連結会計システムFALCON保守サービス提供に関する料金表」(乙第2号証)が添付されている。これらの作成者は、アビームコンサルティングである。 具体的には、「契約内容の変更に関する覚書」(乙第1号証)の前提となる契約(原契約)は、「FALCON/NT保守サービス契約」であって(乙第3号証、2頁3行)、アプリケーション保守(プログラム修正及びリリースセットの作成・配布等)に関するものである(乙第3号証、2頁21行)。 また、「FALCON/NT」とは、同頁9行から10行に記載のとおり「対象物件 甲が使用許諾を得ているFALCON/NT標準システム」である。「FALCON」は、デロイトトーマツコンサルティングが開発、販売、導入、保守を一貫して行っている連結用パッケージ・ソフトウェア」のことである(甲第4号証(株式会社NTTデータ発行の1999年ニュースリリース)、2頁5行)。 上記のように、乙第1号証は、上記契約の一部の変更に関する覚書の写しであり、1頁3行に「甲乙が2004年4月1日付で締結した『FALCON/NT保守サービス契約書』(乙第3号証)に基づき乙が甲に提供するサービス業務の内容に関し、以下の通り合意する。」との記述がある。 (2)乙第2号証 これは、「契約内容の変更に関する覚書」(乙第1号証)に添付の「料金表」の写しであって、連結会計システムFALCON保守サービスの提供に対する対価を示すものである。 3 使用に係る商標 (1)乙第1号証 1頁3行から4行に「甲乙が2004年4月1日付で締結した『FALCON/NT保守サービス契約書』(以下「原契約」)」の記述があり、商標「FALCON」が使用されている。 (2)乙第2号証 1頁3行から4行に、「連結会計システムFALCON保守サービス提供に関する料金表」との記述があり、商標「FALCON」が使用されている。 なお、上記のような使用商標と本件商標との関係は、商標法50条1項に規定された「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」に該当し、使用されているものは、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。 4 使用時期 (1)乙第1号証 乙第1号証の契約締結(発効)の日付は、「2008年3月24日」と記載されている。 (2)乙第2号証 乙第2号証の「日付」(右上)は、「2008年3月24日」と記載されている。 なお、乙第1号証及び乙第2号証の上記各日付は、いずれも本件審判の請求の登録日前3年以内のものである。 5 むすび 以上の乙各号証を総合すれば、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、通常使用権者により指定役務である「電子計算機のプログラムの保守」について使用されたことが明らかである。 第4 当審の判断 1 被請求人の主張及びその提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。 (1)「契約内容の変更に関する覚書」(乙第1号証)によれば、2008年(平成20年)3月24日付けで、東京都在の某株式会社を甲とし、アビームコンサルティングを乙として、甲乙の間で、両者が2004年(平成16年)4月1日付けで締結した後記(3)の「FALCON/NT保守サービス契約書」に基づいて乙が甲に提供するサービス業務に関して、年間基本サービス料金の適用範囲から除外する「サポート」についてのことや年間基本サービス料金の変更についてのこと等を内容とする合意がされた。 そして、同合意は、2008年(平成20年)4月1日より有効とされている。 (2)乙第2号証は、上記(1)の覚書の別表1とされるものであり、「連結会計システムFALCON保守サービス提供に関する料金表」の表題の下、「【1.年間基本サービス、及び対価】」と「【2.オプションサービス、及び対価】」の各項目があり、さらに、後者については、「I.土日祝祭日サポート、及び時間延長サポート」、「II.チケット増分」及び「III.オンサイトサポート」の細目が示されており、その体裁に照らし、黒く塗りつぶされている箇所には、それぞれの金額(年額又は単価)が表示されていると推認し得るものである。 そして、同別表1の右上には「2008年3月24日」の表示がある。 (3)「FALCON/NT 保守サービス契約書」(乙第3号証)によれば、2004年(平成16年)4月1日付けで、東京都在の某株式会社を甲とし、アビームコンサルティングを乙として、乙が甲に対して行う各種の業務若しくはサービスに関して契約が締結された。 該契約の内容としては、対象物件が「甲が使用許諾を得ているFALCON/NT標準システム」であること及びサービス業務が「甲が利用する対象物件の保守サービスの提供」であること(契約第2条)、サービス業務の範囲として、(i)コンタクトデスクの開設、(ii)対象物件に対する一般問い合わせに対する対応、(iii)対象物件のアプリケーション保守(プログラム修正及びリリースセットの作成・配布)、(iv)上記に関連するその他の事項であること(契約第3条)等が定められている。 そして、別表1として、上記(2)と同様に、2004年(平成16年)4月1日付けの料金表が示されている。 (4)乙第4号証(1999年(平成11年)8月19日付けの株式会社NTTデータ及びデロイトトーマツコンサルティング株式会社の連名によるリリース記事)及び乙第5号証(Wikipediaを用いて行った「アビームコンサルティング」の語の検索結果)並びに被請求人の主張によれば、アビームコンサルティングの前身は、本件商標の前商標権者である有限責任監査法人トーマツ(以下「前商標権者」という。)の前身の監査法人のコンサルティング部門から独立して設立されたものであって、1997年(平成9年)ころ、グループ内の事業戦略により、前商標権者が100%出資する子会社であったデロイトトーマツコンサルティング株式会社(現 アビームコンサルティング)が、本件商標を使用してソフトウェアを販売し、その保守を担当することとなった。1997年(平成9年)から2003年(平成15年)まで、デロイトトーマツコンサルティング株式会社は、前商標権者のソフトウェア導入コンサルティング部門に統合されていたが、その後、前商標権者との資本関係は解消されたことが認められる。 そして、被請求人提出の宣誓書(平成23年7月7日付けで前商標権者及びアビームコンサルティングの代表者印のあるもの)では、1997年(平成9年)4月ころから、前商標権者がアビームコンサルティングに対し、本件商標の使用を許諾していると宣誓している。 2 上記1において認定した前商標権者とアビームコンサルティングとの関係及び宣誓を総合してみれば、アビームコンサルティングは、少なくとも本件審判の請求の登録前3年以内(平成20年3月23日から同23年3月22日まで)に、前商標権者から本件商標について黙示の使用許諾があった者(通常使用権者)と認めるのが相当である。 なお、請求人は、被請求人の宣誓には、どのような役務の質の管理のもとに使用許諾しているかの記載がないとして、品質管理条項のない権利不行使契約が使用許諾にならない旨主張しているが、該宣誓が権利不行使契約の性格を有するものとすべき客観的な証左は見いだせない上、黙示の許諾とするものであるから品質管理の条項のないのは自然といえるし、また、請求人が引用する審決例(甲第2号証)は、本件と事案が異なり、本件に適切ではないから、請求人の主張は採用することができない。 3 本件商標は、前記第1のとおり、「FALCON」の欧文字からなるものであり、上記1で認定した事実において表示された標章も「FALCON」の欧文字からなるものであるから、該標章をもって、本件商標と社会通念上同一の商標が表示されたと認め得るものである。 また、該標章「FALCON」は、上記1のとおり、「連結会計システムの保守」に係る価格表に表示されたものであるから、指定役務の一である「電子計算機のプログラムの保守」について、本件審判の請求の登録前3年以内において、通常使用権者によって使用されたというのが相当である。 4 請求人は、本件商標が使用されているのは、商品「ソフトウェア」であるとし、保守サービスの商標としては、何も使用されていないと主張している。 確かに、証拠(乙第4号証)によれば、商標「FALCON」が商品「ソフトウェア」についても使用されていることが窺える。しかしながら、商品「ソフトウェア」について使用されている商標と同じ構成の商標が、同時に該ソフトウェア(電子計算機のプログラム)に関連したシステムの保守に係る商標とされることが直ちに否定されるものではない上、上記認定のとおり、独立して取引の対象と認められる保守サービスに関して該標章が使用されたと認め得るものであるから、請求人の主張は採用することができない。 5 以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内において、取消請求に係る役務「電子計算機のプログラムの保守」について使用をされたと認められるから、商標法第50条の規定に基づき、その登録を取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-01-11 |
結審通知日 | 2012-01-13 |
審決日 | 2012-01-31 |
出願番号 | 商願平4-202392 |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(042)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 修、渡邉 健司 |
特許庁審判長 |
石田 清 |
特許庁審判官 |
酒井 福造 田中 敬規 |
登録日 | 1995-03-31 |
登録番号 | 商標登録第3032824号(T3032824) |
商標の称呼 | ファルコン |
代理人 | 永田 豊 |
代理人 | 柳生 征男 |
代理人 | 押野 宏 |
代理人 | 中田 和博 |
代理人 | 青木 博通 |
代理人 | 大島 孝文 |
代理人 | 加藤 公延 |