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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2011890079 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない X30
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X30
審判 全部無効 観念類似 無効としない X30
管理番号 1258341 
審判番号 無効2011-890073 
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-08-26 
確定日 2012-06-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5390973号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5390973号商標(以下「本件商標」という。)は、「天使の塩」の文字を標準文字で表してなり、平成22年7月28日に登録出願、第30類「ごま塩,食塩,セロリーソルト,調味料用岩塩,塩を主成分としハーブやスパイスをミックスした調味料」を指定商品として、平成23年2月10日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証の1ないし甲第62号証を提出した(枝番を含む。以下、枝番のすべてを引用する場合は、枝番の記載を省略する。)。
1 請求の根拠
本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号により、無効とされるべきである。
2 無効の理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 請求人が引用する登録商標は、以下のとおりである。
(ア)登録第4278662号商標(以下「引用商標1」という。)は、「てんし」の文字を標準文字で表してなり、平成9年9月30日に登録出願、第29類「食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,乳製品,食用油脂,カレー・シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,食用たんぱく」、第30類「茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,ウースターソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,化学調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,穀物の加工品,アーモンドペースト,サンドイッチ,すし,ピザ,べんとう,ミートパイ,ラビオリ,即席菓子のもと,酒かす」、第31類「果実,野菜,ドライフラワー」及び第32類「清涼飲料,果実飲料,乳清飲料,飲料用野菜ジュース」を指定商品として、平成11年6月4日に設定登録されたものであり、その後、指定商品中の「ドライフラワー」についての登録は、平成15年7月29日付けの審決により取り消され、その確定の登録が平成15年10月8日にされた。その余の指定商品についての商標権は、平成21年6月2日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。
(イ)登録第5137596号商標(以下「引用商標2」という。)は、「天使の酢」の文字を標準文字で表してなり、平成19年8月24日に登録出願、第30類「食酢入りコーヒー及びココア,食酢入り茶,食酢及びその他の食酢入り調味料,食酢入り菓子及びパン」及び第32類「食酢入り清涼飲料,食酢入り果実飲料,食酢入り飲料用野菜ジュース,食酢入り乳清飲料」を指定商品として、平成20年6月6日に設定登録されたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
(以下、引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、単に「引用商標」という。)
イ 指定商品の類否
本件商標に係る指定商品の「塩を主成分としハーブやスパイスをミックスした調味料」と、引用商標1の指定商品中、第30類「ウースターソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,化学調味料」及び引用商標2の指定商品中の第30類「その他の食酢入り調味料」は、いずれも「調味料」として分類される商品である。また、本件商標に係る指定商品「ごま塩,食塩,セロリーソルト,調味料用岩塩」も「調味料」に含まれる商品であり、「調味料」に分類される引用商標2の指定商品「その他の食酢入り調味料」とは、概念上、共通することは明らかである。
さらに、塩のメーカーは、家庭用であると業務用であるとに関わらず、塩だけでなく、同時に味噌、醤油、砂糖、はちみつや、各種のうまみ調味料等を製造販売しているメーカーが多く、むしろ、塩のみを製造しているメーカーは少ない。塩に加えて他の調味料等を製造販売する業者としては、味の素株式会社、旭食品株式会社、株式会社味食研のような総合調味料メーカーのほか、株式会社天塩、海の精株式会社、株式会社青い海、ジャパンソルト株式会社、株式会社丹羽久、焼津水産化学工業株式会社といった国内の主要塩メーカーも同様に、塩以外の調味料を製造販売等している(甲53)。
これらのメーカーが製造した商品は、塩のみが特別なルートで取引されることはなく、他の調味料と同一の販路を通じて市場に流通し、スーパーマーケットなどの店舗において、陳列棚等に並べられ、一般消費者を顧客として販売に供される。
したがって、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は、いずれも「調味料」に分類される商品として、生産部門、販売部門、流通経路、用途及び需要者の範囲が一致するから、同一又は類似の商標が使用された場合、取引者・需要者が、その出所を誤認混同するおそれが高い商品である。
よって、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品に類似するものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否
(ア)本件商標及び引用商標の構成
本件商標は、「天使の塩」の文字を横書きした商標であり、その構成中の「天使」は、「神の使者として派遣され、神意を人間に伝え、人間を守護するもの」(甲4)、すなわち「神の御使」の意味合いを有する語として我が国で一般に知られているものである。また、「塩」は、「食塩」と同義のものとして広く一般に知られている文字である(甲4、甲5)。さらに、本件商標中の「の」は、連体格を表す格助詞であるから、本件商標は、「天使」と「塩」の2語を格助詞の「の」で結合してなる結合商標と自然に理解・認識されるものである。
一方、引用商標1は、「てんし」の平仮名を書したものであり、その構成文字に照応して「テンシ」の称呼及び「神の御使い」の観念を生じる商標であって、全体をもって一体にのみ観察されるものである。また、引用商標2は、「天使の酢」を横書きした商標であり、構成中の「酢」は、「三?五パーセントの酢酸を主成分とする酸味のある液体調味料」(甲4)を表す語であって、「塩」と同じく、基本調味料の一つとして我が国で広く一般に知られたものであるから、本件商標と同様に、「天使」と「酢」の2語を格助詞の「の」で結合してなる結合商標と認識されるものである。
(イ)結合商標類否判断
最高裁判所の昭和43年2月27日第三小法廷判決は、「商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによつて決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。」(甲6)と判示して、商標の類否判断においては具体的な取引の実情を考察すべき点を明らかにしている。
また、一般に、商標の類否を考察するに際しては、原則として、商標の全体を一体のものとして観察することが前提とされているが、最高裁判所の昭和38年12月5日第一小法廷判決は、「簡易、迅速をたつとぶ取引の実際においては、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常に必らずしもその構成部分全体の名称によって称呼、観念されず、しばしば、その一部だけによつて簡略に称呼、観念され、一個の商標から二個以上の称呼、観念の生ずることがあるのは、経験則の教えるところである(昭和三六年六月二三日第二小法廷判決、民集一五巻六号一六八九頁参照)。しかしてこの場合、一つの称呼、観念が他人の商標の称呼、観念と同一または類似であるとはいえないとしても、他の称呼、観念が他人の商標のそれと類似するときは、両商標はなお類似するものと解するのが相当である。」(甲7)と説示し、結合商標類否判断における要部観察の重要性を明らかにしている。さらに、東京高等裁判所の昭和58年11月7日判決も、商標の類似とは、「二個の商標が、外観、称呼または観念のうちのいずれか一つ以上の点で相紛らわしく、その結果それらの商標が同一または類似の商品に使用された場合、取引者や一般需要者によりそれらの商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがある程度に似ていることをいうのであって、その類似するか否かの判断は、右の三要素につき全体的かつ離隔的に対比観察し、当該商標が使用されている商品の取引の実情を考慮し、取引者や一般の需要者が商品購入時に通常払うであろう注意を基準として決すべきものであるが、商標中に商品識別機能を有するとは認められないような付記や付飾部分が存在する場合には、これを除いた部分を要部として特定し、これを比較対照する要部観察も、全体的観察と併せてする必要がある。」(甲8)との判断を明確に示している。
一方、商標審査基準によれば、商標の類否の判断は、「商標が使用される商品又は役務の主たる需要者層(例えば、専門家、老人、子供、婦人等の違い)その他商品又は役務の取引の実情を考慮し、需要者の通常有する注意力を基準として」、「商標の有する外観、称呼及び観念のそれぞれの判断要素を総合的に考察しなければなら」ず、特に結合商標の類否については、その結合の強弱の程度を考慮し、「形容詞的文字(商品の品質、原材料等を表示する文字、又は役務の提供の場所、質等を表示する文字)を有する結合商標は、原則として、それが付加結合されていない商標と類似する」(甲9)とされる。また、取引の実情については、当該指定商品全般についての一般的、恒常的なものを指すとされているのみならず、後述する請求人のエンゼルマークに代表される「天使(エンゼル)」の著名性等、商標の周知著名性も勘案することは許されるとされており、近時ますますこの傾向は強くなっている(甲10)。
そこで、上記判決等を踏まえ、本件商標を考察する。
(ウ)本件商標及び引用商標2の要部
「天使」は、宗教に基礎をおく想像上の存在であって、本来、食料品とは全く関連性のない語であるから、本件商標の「天使」は、その指定商品との関係において自他商品識別機能を十分に果たす部分である。これに対して、本件商標中の「塩」の語は、飲食料品の分野では、基本調味料の一つを表す普通名称(甲4)であるから、「塩」又はその類似商品及び「塩を主成分とし」た商品との関係において、自他商品の識別標識としての機能を発揮しないか又は極めて微弱な部分である。したがって、本件商標は、互いに何ら観念的な結びつきを有しない「天使」と「塩」の2語を格助詞の「の」で単純に結合させただけのものであり、上記2語が「分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標」(甲7)にあたるから、「天使」及び「塩」の各部分が分離して観察されるものである。
また、引用商標2の「酢」は、「塩」と同様に、飲食料品の分野において、基本調味料の一つを表す普通名称(甲5)として広く知られているものであって、「食酢」又は「食酢」にのみ関連した指定商品との関係において、商標の形容詞的部分にあたる。特に、塩と食酢(酢)は、古来より味を調えるための基本調味料とされ、密接な関係があり(甲11)、調味料の中でも深いつながりを有する代表的なものとして認識されると考えられるから、「取引者や一般の需要者が商品購入時に通常払うであろう注意を基準として」考察すれば、本件商標の「塩」及び引用商標2の「酢」は、いずれも「商品識別機能を有するとは認められないような付記や付飾部分」(甲8)に当たり、識別力がないか又は極めて微弱な部分であるといえる。
したがって、本件商標及び引用商標2は、いずれも「天使」を要部とする商標である。
(エ)本件商標と引用商標の類否
そこで、本件商標の要部である「天使」を引用商標と対比すると、両商標からは、いずれも「テンシ」の称呼及び「神の御使い」との観念が生じる。
したがって、本件商標は、引用商標とは要部から生じる称呼及び観念が同一である類似商標である。
(オ)裁判例及び特許庁の商標登録実務
本件商標と引用商標が互いに類似する商標である点については、過去の裁判例及び審決例に照らし明らかである(甲12)。甲12に示す裁判例や審決等は、いずれも指定商品又は指定役務との関係において、商標の構成中に識別力を有するとは認められないような付記や付飾部分が存在する場合には、これを除いた部分を要部として特定すべき点を明確に示しており、上記(イ)で示した判決例が明らかにした商標の類否判断の考え方に沿った判断をしたものである。
このような多数の先例を踏まえれば、本件商標は、「天使」を要部として観察すべき商標であることは明白である。また、「天使」を要部として観察すべき商標である点は、「食酢」に関連した商品のみを指定商品とする引用商標2にも同様に当てはまる。
したがって、本件商標は、要部観察に基づいて類否を検討することが許される典型的な商標であるといわなければならない。
エ まとめ
以上のとおり、本件商標は、引用商標とは、要部から生じる称呼及び観念が同一である類似商標であり、引用商標に係る指定商品と類似する商品を指定商品とするものであって、引用商標の後願に係るものであるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 出所の混同のおそれ
商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品又は役務の取引者・需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品又は指定役務の取引者・需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきものである(最高裁平成12年7月11日第三小法廷判決、甲14)。
そこで、上記判決が判示する判断基準に沿って、本件商標が請求人の業務に係る商品との間で出所の混同を生じさせるおそれについて検討する。
イ 請求人のエンゼルマーク及び企業シンボルたる「天使(エンゼル)」の著名性
(ア)請求人の業務とエンゼルマーク
請求人は、明治32年の会社創立以来、キャラメル、チョコレート、ビスケット、スナック、キャンディ、アイスクリームなどの菓子類を製造販売している老舗の食品メーカーであり、「天使(エンゼル)」を創業の精神を体現するシンボルとして、明治38年に天使の図柄を使用したエンゼルマーク(商標登録第23373号、甲15)を採用した。以来、請求人は、大正、昭和と時代の変遷とともに態様を少しずつ変化させながら、エンゼルマークを1世紀以上の永きにわたって自社が提供する製品に使用(甲16の1)し、その商標出願も積極的に行って自社製品の商標による保護の強化を図ってきた(甲19)。特に、昭和26年から昭和61年までの35年間にわたって使用されたエンゼルマーク(登録第437635号、甲17の1)、及び昭和61年から現在に至るまで用いられているエンゼルマーク(登録第2125472号、甲18の1)は、我が国の有名企業のマークの一つとして、新聞、書籍等で度々取り上げられ(甲20)、防護標章としても登録されている(甲17の2及び甲18の2)。
請求人の業務は、主たる商品であるチョコレート、キャンディ、ビスケット、ケーキ、アイスクリーム等の菓子類、ココア等の飲料、ホットケーキ(のもと)等の食品、サプリメントと呼ばれる栄養補助食品等といった飲食料品の製造販売にとどまらず、関係会社を含めると、外食産業、リゾート開発産業、研究実験用試薬などの製造販売等、極めて多岐に及んでいる(甲16の2)。
(イ)請求人の宣伝広告活動
請求人は、戦前より新聞紙面を利用した宣伝広告を早くから実施し(甲16の3)、我が国で民間によるラジオ放送やテレビ放送が開始されるや、その情報伝播力と訴求力に注目して当初よりこれを積極的に活用した(甲16の4)。
ラジオ放送では、プロ野球中継や連続ドラマの「永遠に答えず」などを提供したほか、昭和26年には、ラジオ番組として提供した「森永エンゼルタイム」の放送の中で、エンゼルのテーマ曲である「エンゼルはいつでも」を制作しこれを流した。請求人は、昭和47年に、小学校の音楽教材として、上記「エンゼルはいつでも」を含む「行進曲特集」(甲21の1)のレコードのを制作して全国約27,000の小学校及び幼稚園に寄贈した(甲21の2)。昭和27年に「やっぱり森永ネ」を制作し、これらの歌は、懐かしのCMソングとして現在でも広く親しまれている(甲21の3)。
上記連続ドラマ「永遠に答えず」は、昭和32年に、劇場用映画(甲21の4)として制作され、その併映作品として請求人はPR映画「天使の調べ」を制作し、全国の日活直営映画館55館で上映した(甲21の5)。
テレビ放送では、「暮らしのセンス」、「字宙少年ソラン」、「怪人二十面相」などの定時番組のほか、昭和34年4月10日の皇太子殿下御成婚式を生中継した。また、チューイングガムの広告に、当時、ラテン音楽で世界中に名の知れていた「トリオ・ロス・パンチョス」を我が国で初めて外国人タレントとして起用し、その日本公演の実況中継を2ヶ月間にわたって行った(甲16の5)。最近では、平成15年1月から平成21年3月まで、日本テレビ系列による「エンゼルのいる星?あなたの一番たいせつなもの?」(以下「エンゼルのいる星」という。)を提供した(甲21の6)。エンゼルのいる星は、全放送期間を平均しても10%以上の視聴率を獲得した人気番組であり(甲21の7)、平成15年6月及び同年11月に株式会社ビデオ・リサーチが実施した「共同コーポレートブランド認知・広告評価調査」(甲21の8)における請求人のエンゼルマークに対する「ロゴマーク評価」では、「認知度(見た+見たような気がする)は6月:91%→11月:93%と共に9割以上に達している。」などと報告された(甲21の8)。
その他、請求人は、現在に至るまで数々の人気番組を提供し、人気歌手や俳優など多数の人気タレントを起用したテレビCMを制作し(甲16の5)、その最後には原則として天使(エンゼル)のマーク(甲21の9)を画面上に表示するよう努めた(甲21の10?14)。
(ウ)「天使(エンゼル)」の語を使用したブランドイメージのアピール
請求人は、「天使(エンゼル、ANGEL)」を自己の商品名やキャッチコピーに積極的に使用している。
例えば、昭和33年に販売を開始した「エンゼルパイ」は、比較的商品サイクルが短い菓子類にあって、半世紀もの間継続して販売されているロングセラー商品であり(甲22の1・2)、1998年(平成10年)度から2010年(平成22年)度の販売実績だけをみても、年間平均売上額が20億円を超えるほど消費者の間で高い人気を誇っている。最近では、平成22年11月10日から平成23年2月14日までの間、東京ドームシティで開催されたイルミネーションイベント「Super Light City 2010?present for you?」(株式会社東京ドーム主催)に協賛し、エンゼルパイを模したクリスマスツリーを設置した(甲22の3?10)。請求人は、同イベント展示施設内の自社エリアである「エンゼル・スポット」のパンフレットを、平成22年11月10日から同年12月25日の間に、「東京ドームポイントカード」の優良顧客ヘダイレクトメールで送付すると共に、東京ドームシティ内で約48,000部を頒布した。上記「エンゼル・スポット」は、各種の雑誌、ウェブページ、フリーペーパー等でも紹介され、平成22年12月7日には、テレビ朝日系列の「やじうまテレビ!」でも紹介された(甲22の11)。また、隣接する東京ドームホテルでは、「天使(エンゼル)」をモチーフにしたオリジナルスイーツやエンゼルパイを使用したスイーツなどを提供した(甲22の12)。
請求人は、「エンゼルパイ」のパッケージに、商標登録表示記号(○内に「R」。以下「マルアール」という。)を付したエンゼルマークや天使の図形と共に、「マルアール」を付した「天使」の商標を使用しており(甲22の13)、「天使(エンゼル)」が請求人の企業シンボルであること、「天使」が請求人の業務に係る商品を表す重要な登録商標及びその類似商標であることを取引者及び需要者にアピールしている。請求人のウェブページ内においても、「天使のレシピカレンダー」の「天使」の部分の右隅に「マルアール」を付すと共に、画面の下方に「『天使』は森永製菓株式会社の登録商標です。」の文字が表示されている(甲23)。
また、請求人は、平成16年には、健康食品「天使の健康」シリーズの通信販売を開始し(甲24の1?3)、その会員となった顧客に、情報誌「エンゼル通信」を発行し、ここに「エンゼル」をタイトルに冠したコーナーを設け、天使(エンゼル)のキャラクターを掲載するなどして、天使(エンゼル)のブランドイメージを顧客に強く印象付けるよう常に心がけている(甲24号証の4の1?4の7)。
その他、本格生チョコレートの「エンゼルスイーツ(ANGEL SWEETS)」など、多数の「天使(エンゼル)」を商標の一部に使用している(甲25の1?3)。さらに、請求人は、キャッチコピーにも「天使(エンゼル)」の語を頻繁に使用し、天使の図形を表示するなどして、取引者、需要者に「天使(エンゼル)」のブランドイメージを常にアピールするように鋭意努めている(甲25の4?7)。
(エ)「天使(エンゼル、ANGEL)」による請求人のキャンペーン等販促活動
請求人は、自社商品の販売、宣伝広告だけでなく、「天使(エンゼル、ANGEL)」を冠した名称のキャンペーン、企画やイベント等も積極的に行っている(甲26?甲28の1)。また、100周年事業の一環として、創業者・森永太一郎の出身地である佐賀県伊万里市の森永公園に、天使(エンゼル)をあしらった時計台を設置した(甲28の2)。
昭和42年に販売が開始された「チョコボール」における「おもちゃのかんづめ」は、40年以上継続して実施されている人気企画であり(甲16の6)、「エンゼル(天使)」の名称を冠した「金のエンゼル」、「銀のエンゼル」は、請求人の「チョコボール」を表す代名詞として用いられるほど広く知られている。昭和53年には、「森永カリンチョ」のテレビCMにおいて、「エンゼル体操」が人気となり、請求人は、その踊り方の図解とともに歌を収録したソノシートが抽選でもらえるキャンペーンを実施した(甲29の1・2)。また、主力商品の一つである「森永ココア」の販売では、「飲んだ人にだけ、天使はやってくる」といったキャッチコピーで「天使のグッズ」プレゼントキャンペーンを実施した(甲30の1・2)。平成7年の秋には、請求人は、テレビCMシリーズの舞台として架空の街「エンゼルが丘三丁目」を設定し、チョコレート菓子「ダース」の宣伝広告の一環として、「小沢くんの『エンゼルの鍵』プレゼント」(甲31の1?3)、「ありさの電気自転車『エンゼル号』プレゼント」などを実施した(甲32?甲34)。
一方、商品の販促活動では、昭和20年代後半から昭和40年代前半にかけて、優良直接小売店の育成等を目的として、地区別に「森永エンゼル会」を設け、「森永エンゼルストア」を全国各地で展開した(甲16の7)。森永エンゼルストア各店は、その店頭に「森永エンゼル会の店」(甲16の7)の看板やエンゼルマークをあしらった「森永エンゼルストア」の看板(甲35の2)を掲げ、「エンゼル(天使)」ブランドを一般消費者に対して大いにアピールする役割を担った。森永エンゼルストアは、最盛期の昭和30年には全国で約4,500店舗が存在した(甲16の7)。
昭和61年6月には、セールスマンによる店頭フォロー活動を開始し、取引の促進や陳列提案などの支援をするため、パート制の婦人販促員の「エンゼルメイト」の導入を行った(甲16の8)。
このように、請求人は、商品の販売やそのキャンペーン等において、「天使(エンゼル)」を使用し、これが自己のブランドイメージであることを取引者・需要者に印象付けることを常に心がけている。
(オ)「天使(エンゼル、ANGEL)」による請求人の社会貢献活動
請求人は、財団法人ベルマーク教育助成財団(旧・財団法人教育設備助成会、以下「ベルマーク財団」という。)が実施している、学校等の教育施設や福祉施設での設備の助成を目的としたベルマーク運動の協賛会社として、昭和35年の開始当初より参加し、「スクールエンゼル」と呼んでいる右手に鈴(ベル)を持った天使(エンゼル)の図案をベルマークとして採用した。請求人によるベルマーク運動の協賛金は、昭和50年には1億円を超え、請求人は、同年にベルマーク財団より表彰を受けた(甲36)。
また、請求人は、平成21年から、フィリピン、カメルーン、ガーナ共和国、エクアドル共和国、インドネシアといった、十分な教育環境が整っていない国の子供たちを支援するため、一部のチョコレート商品の売り上げから、国際NGO団体及び我が国のNGO団体を通して寄付する「1チョコfor1スマイル」を実施している(甲37)。
請求人は、こうした社会貢献活動を「エンゼル(天使)」を冠した「エンゼル・スマイル・プロジェクト」の名称で実施している(甲38の1)ほか、環境教育型のCSR活動も実施している(甲39、甲40)。
請求人は、平成8年7月19日から同年10月13日までの間、佐賀県で催されたジャパンエキスポ’96「世界・○(審決注:○は、火が3つ。)の博覧会」(吉野ヶ里サテライト会場)に、菓子情報及び来訪者参加型クイズの提供を中心とするパビリオン「MORINAGAエンゼル館」を出展し、その来館者数は、吉野ヶ里サテライト会場の入場者数とほぼ同数の52万人超という盛況ぶりであった。
請求人は、昭和30年代より、一般消費者を対象とした自社工場の見学を実施し(甲42)、その来場者に、「エンゼルランド(ANGEL LAND)」など「エンゼル(天使)」の語を冠した見学用パンフレット類を配布してきた(甲43?甲45)。
(カ)飲食料品以外の分野における実績及び他業種とのコラボレーション
昭和40年に、株式会社森永エンゼルボウル(後に、株式会社エンゼル・レジャーに改称)を設立してボウリング場経営等のレジャー産業へ進出し、昭和52年には、森永エンゼルカントリー株式会社を設立してゴルフ場経営も開始した(甲16の9)。また、天使(エンゼル)を共通のイメージコンセプトとする「天使のブラ」を、大手ランジェリーメーカーのトリンプ・インターナショナル・ジャパンと提携して共同で販売した(甲46)。
平成13年には、創業者の森永太一郎の半生を描いた舞台劇の「天使が微笑んだ男 ?森永太一郎伝?」が佐賀県と東京都で上演され(甲47の1?4)、請求人はこれに協賛した。
また、映画「ダ・ヴィンチ・コード」の続編である「天使と悪魔」の劇場公開にあわせて、映画タイトル「天使と悪魔」の「天使」と「エンゼルパイ」の「エンゼル(天使)」をかけた、ソニー・ピクチャーズエンターテインメント株式会社と特別優待割引券付きエンゼルパイを発売するタイアップキャンペーン(甲48)など、「天使(エンゼル)」をキーワードとする異業種企業とのコラボレーションも積極的に行っている。
他方、請求人は、平成3年に経済企画庁(現・内閣府)の認可のもと、「健全な肉体」の研究とその応用にも努めるべく、「財団法人エンゼル財団」を設立し、生涯学習ニーズにあわせた動画コンテンツの「森永エンゼル・カレッジ」がeラーニングによって提供されている(甲49の1及び2)。さらに、請求人は、「エンゼルのように地球にやさしく!!」をスローガンとする環境企業理念を提唱し、社会活動を積極的に行っている(甲49の3)。
(キ)インターネット等でみられる請求人のブランドイメージ
インターネット上には、「天使(エンゼル)」を請求人に結び付けて説明している各種ウェブサイトが見受けられる(甲50)。このように天使(エンゼル)の説明に「森永」(請求人)を引き合いに出すことは、古くは、我が国の児童文学作家である小川未明が、大正時代に発表した著書「飴チョコの天使」の中で「天使(エンゼル)」が請求人と強く結びついて認識されていたことを示唆している(甲51)。
さらに、90年代の前半にアメリカで起こったと言われる「天使ブーム」の際には、天使(エンゼル)関連商品(天使グッズ)を取り扱う店舗として、請求人の「森永ラヴ銀座店」の「エンゼルコーナー」が新聞で紹介された(甲52)。
(ク)まとめ
上記の諸事実は、我が国における一般的な「天使(エンゼル)」のイメージは請求人が定着させたといえ、100年以上にわたって「天使(エンゼル)」を企業シンボルとして一貫して使用してきた請求人の企業努力の結果、「天使(エンゼル)といえば森永」、「森永といえば天使(エンゼル)」といわれるほど、老若男女を問わず、「森永製菓=天使(エンゼル)」は人々の記憶の中に深く刷り込まれ、「天使(エンゼル)」が、請求人及びその関連会社に係る商品や業務を指称する著名な企業シンボルとして、取引者・需要者の間に広く知られたところとなっている。
ウ 本件商標とエンゼルマーク及び企業シンボルとしての「天使(エンゼル)」との類似性の程度
既述のとおり、本件商標は、その構成中の「天使」が要部として認識され、ここから「テンシ」の称呼及び「神の御使い」たる観念が生じる。一方、請求人のエンゼルマーク及び企業シンボルとしての「天使(エンゼル)」からも、「テンシ」の称呼及び「天使、神の御使い」の観念が自然に生じる。
本件商標の要部「天使」とエンゼルマーク及び「天使」を対比すると、両者は称呼及び観念が同一であることは明らかである。
そうすると、本件商標は、請求人のエンゼルマーク及び企業シンボルとしての「天使(エンゼル)」とは、要部から生じる称呼及び観念が同一又は類似する商標である。
なお、後述のとおり、本件商標の指定商品に含まれる塩は、菓子とは、単なる調味料と食品という関係を超えた強い関連性を有するものであるところ、請求人は、引用商標1以外にも、「菓子」を指定商品に含む商標を有しており(甲54?甲56)、これらは、いずれも「テンシ」の称呼及び「神の御使い」等の観念を生じる商標であって、エンゼルマークと共に請求人の企業シンボルを象徴する存在であることを併せ考えると、本件商標とエンゼルマーク及び「天使」との類似性の程度は相当程度高いといえる。
エ エンゼルマークの独創性の程度
天使(エンゼル)は、キリスト教やユダヤ教をはじめとする西洋宗教に基礎を置く存在であり、請求人が最初にエンゼルマークを採用した明治38年当時、我が国における西洋宗教の普及度を考えれば、天使の概念は一般に知られたものでなかった。したがって、天使をモチーフにした図案が一般に用いられることはなかったのであるから、請求人のエンゼルマークは、他に類例をみないほど斬新かつ独創的な商標であったことは明白である。
オ 商品間の関連性、取引者・需要者の共通性
請求人のエンゼルマーク及び企業シンボルたる「天使(エンゼル)」の著名性を獲得した商品は、キャラメル、チョコレート、キャンディ、アイスクリーム、スナック菓子等を中心とする菓子であるのに対し、商標権者が本件商標を使用することを企図している指定商品は、塩又は塩を主とする調味料である。塩は、基本調味料の一つである以上、食料品全般について広く用いられるものではあるが、そうした一般的実情の中でも、菓子と塩の結び付きは一際強いものがある。すなわち、塩分は甘みを引き立てる作用をすることから、塩大福、塩ようかん、塩せんべいなど、古来より塩味を謳った菓子は多く存在しており、我が国では塩と菓子の相性の良さは昔から認識されていた。また、ポテトチップスなどのじゃがいも系スナック菓子では、塩味の商品が一般的であることは顕著な事実であり、特に、近年では、単に甘みを引き立てるためだけなく、塩をアクセントにして、取り合わせの意外性や後味の良さを狙った菓子が「塩スイーツ」と呼ばれて、一つの商品ジャンルを形成するほど人気となっており、多数の新聞・雑誌においても取り上げられ、紹介されている(甲57)。
さらに、請求人は、自社製品の「ミルクキャラメル」にフランス・ブルターニュ地方産の塩を100%使用した「塩キャラメル」を平成20年2月から製造販売している(甲58の1)。また、請求人は、塩スイーツや塩味系菓子やスナック菓子も製造販売している(甲55の8?甲58の9)。
そして、請求人の「塩キャラメル」は、他社製品も含めた数ある塩スイーツの中でもヒット商品となり、右肩上がりの売上推移を報じており(甲59)、コンビニエンスストアにおける売上としても、キャンディの分野で度々上位にランクされ(甲60)、本件商標が登録出願された平成22年には、約38億円の売上実績を上げた。
菓子と調味料は、同じ飲食料品として広く一般消費者を需要者としている点はいうまでもなく、陳列販売方式を採用するスーパーマーケットなどの同一店舗で取り扱われ、同一事業者により販売されるから、本来、取引者、需要者としての共通性は決して小さなものではないが、塩スイーツという一つの商品ジャンルが形成されるほど、菓子と塩は強固に結び付いて認識される取引実情があること及び塩スイーツの中でも「塩キャラメル」というヒット商品が、本件商標の登録出願時ないし査定時の前後を通じて市場で取引されていることを考え併せれば、塩に関連する商品のみを指定商品とする本件商標は、請求人商標とは、極めて強い商品間の関連性を有するといえるから、当然にその需要者・取引者の範囲は一致する。
カ 本件商標の指定商品の需要者が普通に払われる注意力その他取引の実情
本件商標の指定商品は、日常的に消費される商品であり、その購入者には必ずしも商標について詳細な知識を持たない者も多数含まれる。このような商品については、商品の購入に際し、消費者がメーカー名などについて常に注意深く確認するとは限らず、小売店の店頭などで短時間のうちに購入商品を決定するということも少なくないことからすれば、需要者が商品購入時に払う注意力は高いものではなく(甲61)、商標構成中の覚えやすく親しみやすい印象及び過去に購買した際の記憶に基づいてその商品を選択ないし購買すると考えられる。
しかるに、既述のとおり、塩に関連した商品のみを指定商品とする本件商標は、「塩スイーツ」を始めとする菓子との関係において、極めて強い関連性をもって認識される素地があり、また、食酢に関連した商品のみを指定商品とする引用商標2との関係では、塩と食酢(酢)は調味料として密接な関係があるため(甲11)、「天使」を要部とする商標として、とりわけ深いつながりがあるものと一般に認識される関係にある。
キ まとめ
上記のとおり、(ア)本件商標と請求人のエンゼルマーク及び企業シンボルたる「天使(エンゼル)」が、いずれも需要者の注意を惹き印象に残りやすい「テンシ」の称呼及び「神の御使い」の観念を生じる点において高い類似性を有すること、(イ)請求人の業務に係る商品であることを表す著名なエンゼルマークが我が国において1世紀以上の永きにわたって使用された結果、エンゼルマーク及び「天使(エンゼル)」は、本件商標の出願時及び査定時には、請求人の業務に係る商品であることを指称する著名性を獲得していたこと、(ウ)請求人のエンゼルマークは、我が国で最初に採用された明治38年当初において、極めて斬新かつ独創的なものであったこと、(エ)本件商標の指定商品及び指定役務とエンゼルマーク及び「天使(エンゼル)」が使用されて著名性を獲得した商品が、「塩スイーツ」に代表されるように、強い関連性を持って認識されるものであること、(オ)飲食料品は日常的に売買費消される商品であって、需要者がその取引に当たって払う注意力はさほど高いものではなく、また、エンゼルマーク及び「天使(エンゼル)」に通じる「天使」の文字を有する本件商標に接した多くの需要者が、当該商品等が請求人の業務に係るものと認識すると考えられる取引の実情があることなどを総合して考慮すると、本件商標をその指定商品等に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、本件商標の「天使」に着目し、ここから請求人の著名な請求人商標を想起・連想し、あたかも請求人又はその関連会社の取扱い業務に係る商品であるかのように認識して取引にあたると考えられるため、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは明白である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用商標との類否
ア 本件商標は、短く、一連一体のまとまりのよい商標であり、常に「天使の塩」と呼ばれる。そして、「天使」と「の塩」に分離しなくてはならない理由は存在しない。したがって、本件商標から「天使」の部分のみを不自然に分離・抽出して、その部分の称呼を引用商標1の称呼と比較するような観察手法は不合理なものである。
そこで、「天使の塩」と「てんし」を比較すると、両者は、称呼も外観も観念も異なり、類似する商標とはいえない。したがって、本件商標は、引用商標1とは類似しない。
イ 引用商標2は、短くまとまりのある一連一体の商標である。「天使の酢」と「天使の塩」は、共に文字数の少ない短い商標であるが、このような商標は少しの発音の違いでも大きく語感が変わる。
そして、「天使の酢(テンシノス)」と「天使の塩(テンシノシオ)」とでは、称呼も外観も観念も異なり、類似する商標とはいえない。よって、本件商標は、引用商標2とも類似しない。
ウ ところで、引用商標1が登録されているのにもかかわらず、同一又は類似の商品について、査定時及び登録時において、引用商標1の商標権者とは異なる出願人(内堀醸造株式会社)に対して、引用商標2の登録が認められている。つまり、特許庁の審査において、「てんし」と「天使の酢」とは類似しないという判断がなされたことがわかる。このことからも同様に、「てんし」と「天使の塩」とが類似しないということがわかる。
(2)まとめ
以上述べたように、本件商標は、引用商標とは類似しないので、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号について
請求人は、その製造販売している菓子類に関して、請求人商標を、長期間使用しているとして膨大な証拠資料を提出し、本件商標の使用は、請求人の業務と混同を招くとの主張をする。
請求人の提出した証拠によれば、請求人が「菓子類」について、請求人商標を繰り返し使用していることがわかる。したがって、「エンゼルミルクチョコレート」、「エンゼルチューイングガム」、「エンゼルまんじゅう」、「エンゼル飴」のような「エンゼル**」という名称の「菓子類」があれば、使用の仕方によっては、業務混同を生じる可能性は否定しない。
しかしながら、本件商標の指定商品は「食塩、ごま塩」等であり、「菓子類」とは全く異なる商品である。通常、食塩と菓子とでは、メーカーも流通も取扱業者も販売店も大きく異なる。仮にスーパーマーケットなどの大型食料品店において、同じ店舗内で売られるとしても、別のコーナーで別カテゴリーの商品として扱われている。
そして、取引者・需要者の通常の感覚から常識的に考えても、「食塩、ごま塩」等と「菓子類」との間に直接的な強い業務上の関連を認識することはない。
したがって、商標権者が指定商品である「食塩、ごま塩」等に「天使の塩」という商標を使っても、請求人の業務と混同を生じることはない。
なお、請求人は、「塩キャラメル」などの塩を使った特殊な菓子があることを示して、「菓子類」と「塩」とが密接な関係にあるかのような主張をするが、塩を使った菓子が存在するからといって、「菓子類」のメーカーと「食塩」のメーカーとが同一メーカー又は完全子会社であると認識するような取引者・需要者は存在しない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも該当しない。
3 むすび
以上述べたように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号にも該当せず、登録適格性を具備した商標である。よって、本件審判の請求には理由がない。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、「天使の塩」の文字を同じ書体、同じ大きさ、等間隔で表してなるものであり、その指定商品は、第30類「ごま塩,食塩,セロリーソルト,調味料用岩塩,塩を主成分としハーブやスパイスをミックスした調味料」とするものであるところ、本件商標を構成する文字は、「天子の使。勅使」、「神の使者として派遣され、神意を人間に伝え、人間を守護するというもの。セラピム(熾天使)・ケルビム(智天使)など。エンゼル。エンジェル」、「比喩的に、やさしく清らかな人」の意味(甲4)を有する「天使」の語と、「塩化ナトリウムを主成分とする、しおからい味のある白色の結晶。食用・工業用に重要。けがれを清めるのにも使われる。一般に、食塩。」の意味(甲4)を有する「塩」の語を、「前の語句の内容を後の体言に付け加え、その体言の内容を限定する」働きを有する格助詞「の」で結びつけられている結合商標である。
そして、「天使」の語と「塩」の語を格助詞「の」で結合することにより、本件商標の構成全体をもって親しまれた熟語的意味合いが生ずるものとは認められないのみならず、本件商標の構成中の「塩」の文字部分は、その指定商品中の「ごま塩,食塩,セロリーソルト,調味料用岩塩」との関係からみると、商品の普通名称ないし品質を表したと理解されるものであり、また、本件商標の指定商品中、「塩を主成分としハーブやスパイスをミックスした調味料」は、たとえ、「調味料」といえども、原材料を「塩」とすること明らかであるから、本件商標の構成中の「塩」の文字部分は、その指定商品中の「塩を主成分としハーブやスパイスをミックスした調味料」との関係からみると、商品の原材料を表したと理解されるものである。
これに対して、本件商標の構成中の「天使」の文字部分は、上記のとおり、「天子の使、エンゼル」等の意味を有するものであって、本件商標の指定商品のいずれについても性状等を表すものではなく、本件商標の指定商品との関係では商品の出所識別標識としての機能を十分発揮するというべきである。
そうすると、本件商標は、たとえ、同じ書体、同じ大きさ、等間隔で表されているとしても、その指定商品について使用した場合、その構成中の「塩」の文字部分は、商品の品質、原材料などを表すものとして自他商品の識別標識としての機能を有しない部分であるといえるから、かかる「塩」の文字部分からは、商品の出所識別標識としての称呼及び観念は生じない。
以上によれば、本件商標は、これをその指定商品について使用する場合には、その構成中の「天使」の文字部分が商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるといえるから、構成文字全体に相応して生ずる「テンシノシオ」の称呼のほかに、「天使」の文字に相応して「テンシ」の称呼をも生じ、「天子の使、エンゼル」の観念を生ずるものである。
(2)引用商標
ア 引用商標1は、前記第2の2(1)ア(ア)のとおり、「てんし」の文字を標準文字で表してなるものであるから、これより「テンシ」の称呼を生ずるものである。また、「てんし」の平仮名からは、我が国において親しまれている「天使」の語が直ちに連想、想起されるといえるから、引用商標1は、「天子の使、エンゼル」の観念を生ずるものとみるのが相当である。
イ 引用商標2は、前記第2の2(1)ア(イ)のとおり、「天使の酢」の文字を標準文字で表してなるものであり、その指定商品は、第30類「食酢入りコーヒー及びココア,食酢入り茶,食酢及びその他の食酢入り調味料,食酢入り菓子及びパン」及び第32類「食酢入り清涼飲料,食酢入り果実飲料,食酢入り飲料用野菜ジュース,食酢入り乳清飲料」であるところ、引用商標2を構成する文字は、「天使」の語と、「三?五パーセントの酢酸を主成分とする酸味のある液体調味料」の意味(甲4)を有する「酢」の語を、格助詞「の」で結合したものと認められる。そして、「天使」の語と「酢」の語を格助詞「の」で結合することにより、親しまれた熟語的意味合いが生ずるものとは認められないのみならず、引用商標2の構成中の「酢」の文字部分は、その指定商品中の「食酢」との関係からみると、指定商品の普通名称を表したと理解されるものである。
これに対して、引用商標2の構成中の「天使」の文字部分は、上記のとおり、「天子の使、エンゼル」等の意味を有するものであって、引用商標2の指定商品のいずれについても性状等を表すものではなく、引用商標2の指定商品との関係では商品の出所識別標識としての機能を十分発揮するというべきである。
そうすると、引用商標2は、たとえ、同じ書体、同じ大きさ、等間隔で表されているとしても、その指定商品中の「食酢」について使用した場合、その構成中の「酢」の文字部分は、自他商品の識別標識としての機能を有しない部分であるといえるから、引用商標2に接する需要者は、その構成中の「の」の文字部分が所有、所属を意味するものと理解し、「天使」の文字部分が要部であると認識して、該「天使」の文字から生ずる称呼及び観念のみをもって、商品の取引に当たる場合も決して少なくないものとみるのが相当である。
してみれば、引用商標2は、構成文字全体に相応して生ずる「テンシノス」の称呼のほか、その指定商品中の「食酢」について使用した場合は、「天使」の文字部分から「テンシ」の称呼及び「天使、エンゼル」の観念をも生ずるものといわなければならない。
また、引用商標2の指定商品中、上記「食酢」以外の商品は、「食酢入り」の商品であるとしても酢そのものではないところから、引用商標2を当該商品について使用する場合は、その構成中の「酢」の文字部分が商品の出所識別標識として弱いということができないから、これを「天使」の文字部分と「酢」の文字部分とに分離し、「天使」の文字部分のみを抽出しなければならない格別の理由は存在しないから、引用商標2は、構成全体をもって一体不可分の商標を表したと認識されるとみるのが相当である。
したがって、引用商標2は、これをその指定商品中、「食酢」以外の商品について使用するときは、その構成文字に相応して、「テンシノス」の称呼を生ずるものであって、構成全体として、特定の観念を有しないものである。
(3)本件商標と引用商標との対比
本件商標は、上記(1)認定のとおり、その指定商品について使用した場合は、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える「天使」の文字部分から「テンシ」の称呼及び「天使、エンゼル」の観念をも生ずるものである。
これに対し、引用商標1は、上記(2)ア認定のとおり、その構成文字に相応して、「テンシ」の称呼及び「天子の使、エンゼル」の観念を生ずるものである。
また、引用商標2は、上記(2)イ認定のとおり、これをその指定商品中の「食酢」について使用した場合、その要部と認識される「天使」の文字部分より「テンシ」の称呼及び「天子の使、エンゼル」の観念をも生ずるものであり、「食酢」以外の商品に使用した場合、構成文字に相応して「テンシノス」の一連の称呼のみを生じ、特定の観念を有しないものである。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品について使用した場合、引用商標1とは、「テンシ」の称呼及び「天使、エンゼル」の観念を同じくする場合がある類似の商標というべきである。
また、本件商標と引用商標2とは、引用商標2をその指定商品中の「食酢」について使用した場合、「テンシ」の称呼及び「天使、エンゼル」の観念を同じくする場合がある類似の商標というべきであるが、引用商標2を「食酢」以外の商品に使用した場合、外観において顕著に相違するのみならず、本件商標から生ずる「テンシノシオ」又は「テンシ」の称呼は、引用商標2から生ずる「テンシノス」の称呼とは明らかに相違し、また、引用商標2は、特定の観念を有しない造語からなるものであり、本件商標とは、比較することができず、観念において類似するということができないから、非類似の商標というべきである。
(4)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の類否
ア 本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品中、「ウースターソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,化学調味料」(以下、これらを「引用1商品」という。)との類否
本件商標の指定商品は、その用途を調味料とする食塩のたぐいであり、「塩を主成分としハーブやスパイスをミックスした調味料」についても、「調味料」といえども塩を主成分とするものであるから、食塩のたぐいとみるのが相当である。
そして、引用商標1の指定商品中、引用1商品も同様に、調味料といえるものであって、その主たる需要者は、一般の消費者であるといえる。
しかして、請求人の提出に係る証拠(甲53)によれば、塩とめんつゆ、しょうゆ、はちみつを同一の事業者が製造している事実が認められるものの、その数はわずかであり、今日、塩、しょうゆ、めんつゆの製造業者は多数にのぼることを勘案すれば、調味料としての塩と、マヨネーズ・ドレッシング・そばつゆ・しょうゆ・味噌等の調味料が同一の業者により生産され、販売されていることが一般的とまではいえない。
してみると、本件商標の指定商品と引用1商品とは、商品の用途、需要者を同じくするとしても、生産者、流通系統を一般に異にする場合が多いというべきである。
そうすると、本件商標の指定商品と引用1商品とは、同一又は類似の商標を使用した場合に、その出所の混同を生ずるおそれのない非類似の商品というべきである。
イ 本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品中、第29類「食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,乳製品,食用油脂,カレー・シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,食用たんぱく」、第30類「茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,穀物の加工品,アーモンドペースト,サンドイッチ,すし,ピザ,べんとう,ミートパイ,ラビオリ,即席菓子のもと,酒かす」、第31類「果実,野菜」及び第32類「清涼飲料,果実飲料,乳清飲料,飲料用野菜ジュース」(以下、これらを「引用1その余商品」という。)との類否
本件商標の指定商品と引用1その余商品は、前者は調味料のたぐいに属する商品であるのに対し、後者は、肉製品、加工水産物、野菜、飲料、菓子、加工食品などであって、その主たる需要者は、たとえ、一般の消費者であるといえるとしても、これらは、原材料・製造方法等において大きく異なるものであり、一般に同一の事業者によって生産され、販売される商品とはいえず、また、同一の事業者によって生産され、販売される商品であることを明らかにする証拠も見いだせない。
してみると、本件商標の指定商品と引用1その余商品とは、同一又は類似の商標を使用しても、その出所の混同を生ずるおそれのない非類似の商品というべきである。
ウ 本件商標の指定商品と引用商標2の指定商品との類否
本件商標の指定商品と引用商標2の指定商品中、「食酢」は、いずれも調味料のたぐいに属する商品であって、その主たる需要者は、一般の消費者であるといえるが、これらは、原材料・製造方法等において大きく異なるものであり、また、「食酢」以外の引用商標2の指定商品も本件商標の指定商品とは、用途、原材料等を異にするものである。そして、本件商標の指定商品と引用商標2の指定商品とは、同一の事業者によって生産され、販売される商品とはいえず、また、同一の事業者によって生産され、販売される商品であることを明らかにする証拠も見いだせない。
してみると、本件商標の指定商品と引用商標2の指定商品とは、同一又は類似の商標を使用しても、その出所の混同を生ずるおそれのない非類似の商品というべきである。
(5)まとめ
以上によれば、本件商標と引用商標とは、称呼及び観念において類似する場合のある商標であるが、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは、これらに本件商標及びこれに類似する引用商標を使用しても、出所の誤認混同を生じさせるおそれがない非類似の商品というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)「エンゼルマーク」、「天使」及び「エンゼル」の文字からなる商標の著名性について
ア 本件商標の登録出願前に発行されたと認められる甲号証によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、その創業者である森永太一郎が明治32年8月に東京赤坂に「森永製洋菓子製造所」を開業したことに始まり、以来今日に至るまで、キャラメル、チョコレート、ビスケット、スナック、キャンディ、アイスクリームなどの洋菓子類(以下「請求人商品」という。)の製造販売を主たる業務とする我が国有数の食品メーカーである(甲16、甲20等)。請求人は、明治38年に、別掲(1)のとおりの構成からなる商標を、「西洋菓子」を指定商品として商標登録し、以来、エンゼルの図形と「TM」のモノグラムとを結合させた構成からなる「エンゼルマーク」をトレードマークとして採用した。その後、請求人の使用する「エンゼルマーク」は、そのデザインに多少の変遷があったが、昭和26年から昭和61年まで、別掲(2)のとおりの構成からなる「エンゼルマーク」を請求人商品について使用した。昭和61年6月ころから、別掲(3)のとおりの構成からなる「エンゼルマーク」の使用が開始された(甲15、甲16の1?8、甲20。なお、以下「エンゼルマーク」というときは、別掲(1)及び(2)のように、エンゼルの図形と「TM」のモノグラムとを結合させた「エンゼルマーク」及び別掲(3)の「エンゼルマーク」とを合わせたものをいう。)。請求人は、上記「エンゼルマーク」のほか、エンゼルの図形からなる商標(例えば、別掲(4)の構成からなる商標)を多数商標登録した(甲17?甲19)。
(イ)請求人の使用する「エンゼルマーク」は、菓子メーカーとして著名な請求人の使用する商標として、多数の新聞、雑誌等で、その変遷等と共に、紹介された(甲20)。
(ウ)請求人は、明治37年に、初めて新聞に請求人商品の宣伝広告をして以来、新聞や雑誌等に、請求人商品と共に、「エンゼルマーク」を表示して宣伝広告を行った(甲16の3)。また、請求人は、ラジオ放送では、戦後から連続ドラマ番組などのスポンサーとなり、その提供した番組の中で、エンゼルのテーマ曲である「エンゼルはいつでも」を制作した(甲16の4、甲21の4・5)。さらに、請求人は、テレビが一般の家庭に普及し始めた昭和30年前後から、テレビ放送の多数の番組のスポンサーとなって、著名な芸能人を起用した請求人商品の宣伝広告を行うと共に、「エンゼルマーク」を表示した(甲16の4・5、甲21の6?14)。
(エ)請求人は、請求人商品のうち、「エンゼルパイ」なる商品について、「エンゼルマーク」のほか、マルアールを付した「天使」の文字からなる商標を表示している(甲22の13)。また、請求人は、請求人商品について、「エンゼルマーク」を付すほか、「エンゼルスイーツ」のように、商標の一部に「エンゼル」の文字を使用したり、「天使の微笑み」などのように、キャッチコピーの一部に「天使」、「エンゼル」の文字を使用した(甲25)。
(オ)請求人は、「エンゼルマーク」を表示して、様々なキャンペーン活動を行ってきたが、これらのキャンペーン活動には、「夢のエンゼル便」、「天使の素敵な贈りもの」などのように、「天使」、「エンゼル」の文字を使用した(甲26?甲35)。
イ 前記アで認定した事実を総合すれば、請求人は、我が国有数の菓子類を中心とした食品メーカーであり、請求人が長期間にわたり、その業務に係る請求人商品について使用してきた「エンゼルマーク」は、別掲(1)?(3)のとおり、エンゼル(天使)が「MT」のモノグラムをつかんでいる図形など、その構成全体が一種独特の構成からなるものであること、これが使用される菓子類は、一般的に、子供から年配者に至るまで好まれる比較的安価な商品であること、請求人は、長期にわたり請求人商品に「エンゼルマーク」を表示して宣伝広告等をしてきたことなどを併せ考慮すれば、「エンゼルマーク」は、本件商標の登録出願時(平成22年7月28日)はいうまでもなく、その登録査定時(平成22年12月22日)においても、これに接する需要者が、請求人の業務に係る商品を表示する商標であると直ちに認識し得るほどに、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。
しかし、「エンゼルマーク」が請求人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願前から、需要者の間に広く認識されていたとしても、「エンゼル」ないし「天使」の文字からなる商標は、以下のとおり、請求人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時を通して、需要者の間に広く認識されていたものとは認めることができない。
すなわち、請求人がエンゼルマークの使用を開始した当初において、「天使」ないし「エンゼル」の語が我が国において一般に知られていないものであったとしても、広辞苑(甲4)において、「天使」の項に「天子の使。エンゼル」等の説明が記載されている一方、請求人の使用する商標としての記載が認められないように、「天使」の語は、本件商標の登録出願時及び登録査定時においては、既に「天子の使、エンゼル」の意味を有する成語として普通に知られているといい得るものであり、「天使」の語が専ら請求人が請求人商品等に使用する商標として知られ、今日に至っているとまでは到底いえない。
そうすると、単に「天使」ないし「エンゼル」の語に接した需要者は、これらの語自体から直ちに請求人が請求人商品に使用する商標を連想、想起するほどに広く認識されているとはいい難いものである。
そして、今日の我が国において、「天使」、「エンゼル」の語や、格別に特徴的な要素を有しない天使をモチーフにした図柄は、さほど珍しいものではなく、これらを題材とした商標は、むしろありふれたものの部類に属する商標というのが相当であること、例えば、「エンゼルパイ」などのように、「エンゼル」の文字を含む商標が使用される請求人商品には、必ず著名な「エンゼルマーク」が付されていること、請求人が行う社会貢献活動等に、「エンゼル」ないし「天使」の語を一部に含む文字が使用されている事実が認められるものの、これらは、請求人の業務に係る商品等とは関連性を有しないこと、などを勘案すれば、請求人の使用する「エンゼル」ないし「天使」の文字からなる商標は、「エンゼルマーク」から派生した付随的な商標といった程度の認識にとどまるものというべきであって、「エンゼルマーク」から切り離して、「エンゼル」ないし「天使」の文字からなる商標それ自体は、需要者の間に広く認識されていたものとは認めることができない。
(2)出所の混同について
ア 本件商標と請求人の使用する「エンゼルマーク」との類似性
本件商標は、前記1(1)認定のとおり、「天使の塩」の文字を同じ書体、同じ大きさ、等間隔で表されているとしても、その指定商品について使用した場合、その構成中の「塩」の文字部分は、商品の品質、原材料などを表すものとして自他商品の識別標識としての機能を有しない部分であるといえるから、かかる「塩」の文字部分からは、商品の出所識別標識としての称呼及び観念は生じない。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品について使用する場合には、その構成中の「天使」の文字部分が商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるといえるから、構成文字全体に相応して生ずる「テンシノシオ」の称呼のほかに、「天使」の文字に相応して「テンシ」の称呼をも生じ、「天子の使、エンゼル」の観念を生ずるものである。
これに対して、「エンゼルマーク」は、エンゼルの図形と「MT」のモノグラムとを結合させた商標及び別掲(3)のとおりの構成からなる商標であるから、これより、「エンゼルマーク」の称呼及び観念が生ずるものということができる。
してみると、本件商標と「エンゼルマーク」は、外観において著しく相違するばかりでなく、称呼及び観念においても相違するというべきである。
イ 本件商標の指定商品と請求人商品との関連性、取引の実情等
本件商標の指定商品と請求人商品は、いずれも食品の範ちゅうに属する商品であることは認め得るとしても、前者は調味料のたぐいであり、後者は嗜好品のたぐいであるから、商品の品質、用途、目的等を異にするのみならず、一般的には、生産者、流通系統、販売場所等をも異にする商品であって、社会通念に照らしても全く異なる商品として、一般の消費者に認識されているものといえる。
ウ まとめ
以上によれば、「エンゼルマーク」は、一種独特の図形からなるものであることから、その独創性は、ある程度高いものと認めることができ、かつ、請求人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願前から我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができるとしても、本件商標と「エンゼルマーク」は、商標において著しく相違するものであること、本件商標の指定商品と請求人商品は、商品の品質、用途等を異にするのみならず、一般的には、生産者、流通系統、販売場所等をも異にする商品であり、社会通念に照らしても全く異なる商品として、一般の消費者に認識されている商品であること、さらに、「エンゼルマーク」が、調味料の分野で高い著名性を獲得していると認めるに足りる証拠の提出はないこと、などの点を併せ考慮すると、本件商標に接する需要者が、「エンゼルマーク」を連想又は想起することはないというべきである。
してみると、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、該商品が請求人又はこれらと営業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)


(2)


(3)


(4)


審理終結日 2012-03-06 
結審通知日 2012-03-14 
審決日 2012-04-23 
出願番号 商願2010-59228(T2010-59228) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (X30)
T 1 11・ 262- Y (X30)
T 1 11・ 263- Y (X30)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 深田 彩紀子早川 真規子 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 末武 久佳
田中 亨子
登録日 2011-02-10 
登録番号 商標登録第5390973号(T5390973) 
商標の称呼 テンシノシオ、テンシ 
代理人 西川 幸慶 
代理人 関 真也 
代理人 阪田 至彦 
代理人 鳥海 哲郎 
代理人 小林 彰治 
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