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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 114
管理番号 1258277 
審判番号 取消2010-300889 
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-08-11 
確定日 2012-05-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第2378814号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2378814号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、黒塗りの長方形内に図案化した「TAG」及び黒塗りの五角形内に「HEUER」の各文字をそれぞれ白抜き風に上下に描き、これらを五角形の輪郭線で囲み全体が盾様の外形からなる部分(以下「ロゴマーク」という。)と、その下段にやや湾曲させてなる「FORMULA 1」の文字部分とから構成され、昭和61年5月9日に登録出願、第23類「時計、これらの部品及び附属品」を指定商品として、平成4年2月28日に設定登録されたものである。その後、同14年2月19日に商標権の存続期間の更新登録がされ、指定商品については、同年5月29日に第14類「時計,時計の部品及び附属品」とする指定商品の書換登録がなされたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成22年8月27日にされている。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標については、その登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めて、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、使用されていないものであるから、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録は取り消されるべきものである。
2 第1弁駁
(1)乙第1号証及び乙第2号証について
ア 乙第1号証は、コピー(写)であり、極めて不鮮明であって、同号証の下端に示された日付「2010/05/11」も確かなものか確認すべくもなく、これのみをもって、本件商標の使用は立証されない。
さらに、本件商標について請求人は、平成22年5月7日付内容証明郵便による書状(甲第2号証)を被請求人に送付し、そこで不使用取消審判を請求する旨述べた。そして、同書状は平成22年5月10日に被請求人に到達した(甲第3号証)。
このように、乙第1号証に示された日付(平成22年5月11日)が確かなものだと仮定しても、その商標の使用は、その審判が請求されることを知った後のものであることは明らかであり、商標法第50条第3項の規定により、本件商標の使用には該当するものではない。
イ 乙第1号証、乙第2号証、乙第5号証及び乙第6号証に示されている「TAG/HEUER」のロゴマークは、赤と緑で塗りわけられ、逆5角形の図形に含められており、それ自体、ひとつの商標であると容易に認識できる。また、乙第5号証ないし乙第9号証に示される時計は、「FORMULA 1」を全く含んでおらず、被請求人は、この「TAG/HEUER」のロゴマークをハウスマークとして、種々のペットネーム(プロダクトネーム)の商品を提供していることが容易に認識できる。
そして、乙第1号証及び乙第2号証では、「FORMULA 1」の文字は、中央より下に独立して配置されており、それ自体、独立した商標(ペットネーム、プロダクトネーム)と容易に認識できる。
ところで、各種商品のメーカーが、そのハウスマークの下で、商品の差別化を図るべく、種々のペットネーム、プロダクトネームを別途使用し、商品のシリーズ化等を図ることは、通常ありふれた、よく知られた事実である。
このように、乙第1号証及び乙第2号証に現れた商標は、「FORMULA 1」という商標と、「TAG/HEUER」ハウスマークの2つの商標が使用されたものとみるのが極めて合理的である。
なお、付言すれば、被請求人は、当該ロゴマーク自体を商標登録しており(登録第2318491号、甲第4号証)、乙第1号証及び乙第2号証に示されたロゴマークは、上記登録商標が使用されたというべきである。
ウ 本件商標は、結合商標であるところ、我が国は一商標一出願(商標法第6条)の原則を採用しており、本件商標も一商標として商標登録を受けたものである。しかしながら、現実の乙第1号証及び乙第2号証に示されるような使用は、2つの商標が使用されたものと容易に認識できるものであって、本件商標が使用されたとは認識できないものであり、本件商標と社会通念上の同一商標とはいえない。
エ さらに、乙第2号証は、その題号のとおり、時計の各種モデルを紹介する雑誌記事であり、商品の広告その他の取引書類(商標法第2条第3項第8号)に該当するものではなく、本件商標の使用証拠とはならない。
(2)乙第10号証について
乙第10号証は、極めて不鮮明な写しであり、かつ、日付も全く特定できない。また、乙第11号証は、2009年発行の被請求人の商品カタログ88頁から91頁と主張するものの、その抜粋にすぎず、この商品カタログが全体としてどのようなものか、商標法第2条第1項第8号(審決注:商標法第2条第3項第8号の誤記と認める。)が規定するとおり、いつ、どのように展示及び配布されたか全く不明であり、本件の使用証拠とはなりえない。
(3)乙第12号証について
乙第12号証も全く不明瞭なものであり、これの下端に示された日付「2010/05/11」も確かなものか確認すべくもないが、上述のとおり、その日付(平成22年5月11日)が確かなものだと仮定しても、その商標の使用は、その審判が請求されることを知った後のものであることは明らかであって、商標法第50条第3項の規定により、本件商標の使用には該当しないものである。
さらに、「TAG HEUER」と「FORMULA 1」の上下二段の単なる文字商標が、独特の五角形の図形で形作られた本件商標と社会通念上同一のものでないことは明らかである。
(4)まとめ
以上のとおり、被請求人によって提出された上記乙各号証によっては、本件商標の使用事実は、全く証明されていないから、その登録は取り消されるべきである。
3 第2弁駁
(1)乙第13号証について
ア 同号証は、本件被請求人によってすでに提出された乙第11号証について、審尋に答えて、その書証である商品カタログの原本とのことである。
しかしながら、この原本が、実際に、我が国で、どこに、いつ配布されたか、どのくらいの部数が配布されたか、不明である。
イ 仮に、当該書証が、本件審判請求人が、本件被請求人に送付した内容証明郵便の到達日(平成22年5月10日)(甲第2号証及び甲3号証)の前に、現実に配布されたものであるとしても、これには、何ら、本件商標(登録第2378814号)、すなわち、「TAG」「HEUER」の文字をデザイン化して上下二段に配置した五角形のロゴマークの下に、「FORMULA 1」のやはりデザイン化された文字が沿うように配置してなる一種の結合商標が、使用されている事実はない。
なお、今般、追加証拠として提出された甲第14号証ないし甲第28号証(審決注:乙第14号証ないし乙第28号証の誤記と認める。)についても、上記本件商標が使用された事実は全く示されていない。
(2)乙第14号証について
ア 同号証は、2007年商品カタログとのことである。
しかしながら、この原本が実際に我が国で、どこに、いつ、どのくらいの部数が配布されたかは不明である。
イ 加えて、ここに示された時計には、12時の位置に、被請求人が、タグホイヤー・ハウスマークと呼ぶ、本件商標のロゴマーク部分すなわち、赤と緑で塗りわけられ、逆5角形の図形に含められた「TAG/HEUER」の商標が、はっきりと示されている。時計の当該部分に、その時計メーカーのハウスマークが示されることは、当業界では、顕著な事実と思料する。
よって、このロゴマークは、それ自体、一つの商標であると容易に認識できる。
そして、時計の針を挟んで、その下方に、「TAG HEUER FORMULA 1」と一連に読める文字、又、別の時計においては、「TAG HEUER」と「FORMULA 1」の上下二段に配置された文字が使用されている。これはこれで、ひとつの纏まった商標と認識されるものである。けだし、時計の世界にあっては、ハウスマークの下、様々な機種に対応して、機種毎に、別の商標であるペットネーム(セカンドネーム、プロダクトネーム、シリーズネーム)が使用されることは、顕著な事実である。よって、この「FORMULA 1」もそれ自体、独立したひとつの機種を示すペットネームつまり、ひとつの商標と容易に認識できるものである。
ウ なお、提出された乙第13号証の2に示されるとおり、同書証には、「TAG Heuer Formula 1」、「掲載ページ」、「シリーズ」との記述があり、同様の形で、他にも、「TAG Heuer SLR」、「TAG Heuer Carrera Lady」等の記載がある。これらの記載からも明らかなように、「Formula 1」は、本件被請求人の時計のシリーズのひとつであり、それ自体、ひとつのペットネームとして認識され、使用されている。
(3)乙第15号証ないし乙第23号証について
ア これは、上記乙第14号証と同様、商品カタログ又はプライスリスト(価格表)と思われる。
イ これら媒体が、実際に我が国で、どこにいつ配布されたかは不明である。
ウ 加えて、本件商標、いいかえれば、「TAG」「HEUER」の文字をデザイン化して上下二段に配置した五角形のロゴマークの下に、「FORMULA 1」のやはりデザイン化された文字が沿うように配置してなる一種の結合商標が、そこに使用されている事実は全くない。
なお、乙第22号証には、「TAG」「HEUER」の文字をデザイン化して上下二段に配置した五角形のロゴマークと、その左隣に「TAG HEUER」と「FORMULA 1」の上下二段にまとまった文字、その右隣に「200 METERS」と「PROFESSIONAL」の上下二段にまとまった文字が配置された態様の商標を使用をする時計の写真が存在するが、これとて、到底、本件商標、すなわち、「TAG」「HEUER」の文字をデザイン化して上下二段に配置した五角形のロゴマークの下に、「FORMULA 1」のやはりデザイン化された文字が沿うように配置してなる一種の結合商標が使用されていると認識できるものではないことは明らかである。
(4)乙第24号証は、商品の納品書であるが、これ自体に、本件商標の使用の事実はない。
(5)以上述べたとおり、被請求人によって提出された上記追加証拠では、本件商標の使用事実は、全く証明されていないから、本件商標の登録は、取り消されるべきである。

第3 被請求人に対する審尋
1 被請求人は、2009年発行の被請求人の商品カタログ(乙第11号証)の原本又は発行年月日、発行者が明確に把握できる奥付及び表紙を提出されたい。
2 その他、本件審判の請求前3月から本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者によって、本件商標をその指定商品について、使用していた事実を立証する証拠(例えば、広告等が掲載された新聞、雑誌等の印刷物、カタログやパンフレット、取引の際使用される販売伝票、発注伝票、納品伝票、請求伝票等の取引書類等であって、いずれも、使用された年月日、本件商標、使用商品及び発行者等が明確に把握できる資料)を提出されたい。

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第28号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 第1答弁
本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に、日本国内において、商標権者がその指定商品である「時計」について使用している。
(1)乙第1号証に掲載の腕時計における使用について
ア 腕時計(型式:WAC111A.BA0850)に付された使用商標の構成
被請求人が本件審判請求の予告登録の3年以上前から継続して製造及び販売をしている腕時計「TAG HEUER FORMULA 1 ALARM」(型式:WAC111A.BA0850)においては、時針・分針・秒針が接続する文字盤中央部の回転軸上方にロゴマークを配置し、回転軸の下方に「FORMULA 1」という文字を配置している。
なお、該使用商標が付された腕時計は、2006年12月11日発行の雑誌「10大時計ブランド 全モデル原寸図鑑 2007」(乙第2号証)、及び平成22年5月11日付けの被請求人の日本向けオフィシャルウェブサイト(http://www.tagheuer.com/the-collection/tag-heuer-fomula-1/men/quartz-watch)において掲載されている(乙第1号証)。
イ 商標法第50条第1項の「使用」
上記のとおり、該使用商標は、本件商標と比較するとロゴマークと「FORMULA 1」との間が若干離れて配置されている。
この点、登録商標の使用に当たるか否かの認定に当たっては、「登録商標に係る指定商品及び指定役務の属する産業分野における取引の実情を十分に考慮し、個々具体的な事例に基づいて判断すべきものである」旨が記載された特許庁の審判便覧53-01、及び使用に係る商標が登録商標と「社会通念上同一のもの」と認識し得るか否かを判示した裁判例(乙第3号証、乙第4号証の1、2)に従って、該使用商標が本件商標と「社会通念上同一のもの」と認められるかどうかを検討すると、腕時計は小さな文字盤上に、時刻を示す数字や時針・分針・秒針などを設置し、さらに日付やストップウォッチ機能なども表示するなど、腕時計の文字盤デザインは様々な制約が課せられている。
そして、「FORMULA 1」と同じ9文字のモデル名である「AQUARACER」シリーズの文字盤の配置(乙第5号証、乙第6号証)、及びモデル名が4文字の「LINK」シリーズの文字盤の配置(乙第7号証ないし乙第9号証)のように、被請求人は、腕時計という商品の性格上、文字盤上の様々な機能表示やデザインなどの制約の中で、腕時計の機能や美感を損なうことなく、ロゴマークやモデル名を配置している。
したがって、腕時計の機能及びその形態を踏まえれば、腕時計の小さな文字盤上に腕時計の機能と美感を損なうことなく本件商標を配置するため、該使用商標のように本件商標の構成要素が若干離れて配置されていたとしても、「本件商標と同一性を損わない変更」であって、「社会通念上同一のもの」と認識し得るものであるから、被請求人は本件商標を使用しているといえる。
(2)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標権者である被請求人によって、本件審判請求の登録前3年以内に、我が国においてその指定商品である「時計」について、被請求人の発行した商品カタログ等において「譲渡若しくは引渡しのために展示」されており、本件商標が使用されていることは明らかである。
2 審尋に対する回答
(1)第1項の「2009年発行の被請求人の商品カタログ(乙第11号証)の原本又は発行年月日、発行者が明確に把握できる奥付及び表紙」については、当該カタログの原本を乙13号証の1として提出する。当該奥付の記載によれば、発行年月日は「2009年」、発行者は「TAG Heuer SA」である。
なお、当該カタログに挟み込んで配布している「THE CATALOG 2009-2010 PRICELIST」の原本も合わせて乙第13号証の2として提出する。この乙第13号証の2によれば、「価格は2009年7月現在の価格です」との記載があることから、当該カタログの発行年月日は「2009年7月」であると特定できる。
(2)第2項の「本件審判の請求前3月から本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者によって、本件商標をその指定商品について、使用していた事実を立証する証拠」については、以下のとおり、乙第14号証ないし乙第23号証(2007年?2010年カタログ)、乙第24号証(取引の際に使用された納品伝票)、乙第25号証(TAG HEUER FORMULA 1商品が掲載された雑誌)、乙第26号証(TAG HEUER FORMULA 1商品を販売している店舗内の写真(2008年?2010年撮影))、及び乙第27及び28号証(2010年に国内店舗で使用されていたディスプレイ・ツールとこれについてのタグホイヤーのリーガル・ディレクターによる2011年6月10日付宣誓陳述書)を追加証拠として提出する。
乙第13号証ないし乙第23号証(2007年?2010年カタログ)及び乙第27号証(2010年に国内店舗で使用されていたディスプレイ・ツール)は、いずれも原本を提出するが、審理及び請求人検討のため、乙第14号証ないし乙第23号証については、本件商標が使用されている箇所の抜粋を、乙第27号証についてはディスプレイ・ツールの写真をその写しとして提出する。
(3)2007年?2010年カタログについて、被請求人の分類に従って、本件商標の具体的な使用態様を、整理、分類した上で、各々のカタログ中でどのように使用されているかを明示・特定した(以下のアないしウは、抜粋したものである。)。
ア WAH1111.BA0850(乙14の124頁、乙15の42頁、乙18の48頁、乙20の15頁、乙22の48頁)
イ WAH1111.BT0714(乙14の124頁、乙15の42頁、乙18の48頁、乙20の15頁)
ウ WAH111C.BA0850(乙22の50頁)
(4)納品書(乙第24号証の1ないし9)について、被請求人の分類に従って、本件商標の具体的な使用態様を、以下のとおりに整理、分類した上で、各々のカタログ中でどのように使用されているかを明示・特定した(以下のアないしウは、抜粋したものである。)。
ア WAH1111.BA0850(乙24の4)
イ WAH1111.BT0714(乙24の6)
ウ WAH111C.BA0850(乙24の7)
3 第2答弁
(1)第1弁駁に対する反論
ア 乙第1号証について
乙第1号証において掲載された時計(WAC111A.BA0850)は、2007年発行の2007年商品カタログ(乙第14号証)の123頁、2007年8月発行の「GENERAL CATALOG 2007-2008」(乙第15号証)の41頁、2008年発行の「GENERAL CATALOG 2008-2009」(乙第18号証)の51頁に掲載されている。今回、その原本を提出したこれらの商品カタログは、タグホイヤーの「FORMULA l」モデルを販売していた日本各地に所在する国内店舗内で配布されていたものである、したがって、これらのカタログは、本件登録商標を使用した時計(WAC111A.BA0850)が2007年8月から2009年に日本国内で販売されていたことを裏付ける証拠でもある。
乙第1号証と今回新たに追加した乙第14号証、乙第15号証及び乙第18号証を照らし合わせて判断するならば、被請求人が、本件審判の請求前3月前であり、かつ本件審判請求の登録前3年以内の期間(すなわち、2007年8月27日から2010年5月11日)に、被請求人が、日本国内において本件商標を使用していたことは明らかである。
イ 請求人による本件商標を使用していないとの反論について
請求人は、乙第1号証及び乙第2号証の使用態様について、「FORMULA 1」という商標と、「TAG/HEUER」ハウスマークの2つの商標が使用されたものとみるのが極めて合理的である」、「2つの商標が使用されたものと容易に認識できるものであって、本件一商標が使用されたとは到底認識できない」と主張する。
しかし、商標法上、商標とは、「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」をいうものとされ(商標法第2条)、請求人のいうとおり、一つの結合商標と認識されたからこそ、本件商標は一商標一出願(商標法第6条)の要件を満たす商標として商標登録を受けたのである。すなわち、取引上一個のまとまった標識として需要者に一体的に認識されるものと判断しうる限りは、1個の商標として登録を受けることができるのであり、「たとえば社標であるである記号(すなわちハウスマーク)と、商品ないしは役務の呼び名である文字(すなわちプロダクトネーム)と、その他の文字・図形を適宜に配して出願された商標は、その社標の部分のみ、商品ないしは役務自体の呼び名の部分のみでも1個の商標として登録され得るが、これらのものが結合されて有機的な関連を有し、取引において一体的に商品ないしは役務に使用されるものである場合においては、1個の商標である」とされている(網野誠著「商標[第6版]」677頁)。
(2)結論
以上のとおり、被請求人の提出した乙号証によれば、本件商標は、商標権者である被請求人によって、本件審判請求の登録(予告登録)前3年以内に、日本国内において、その指定商品である「時計」について使用されていることが明らかである。

第5 当審の判断
(1)被請求人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 乙第18号証は、「TAGHeuer(TAGの文字は、太字で表されている。以下同じ。)/SWISS AVANT-GARDE SINCE 1860/GENERAL CATALOG/2008-2009」と題する商品カタログであるところ、48頁の中段の左から2番目には、別掲2のとおり、文字盤が白で皮帯が黒である腕時計の写真が掲載され、その右に「WAH1111.BT0714」の記載がある。そして、該腕時計の写真の文字盤の上部にはロゴマークが存在し、文字盤の下部には、「TAG HEUER」及び赤い色で表された「FORMULA 1」の文字部分を有するものである。
また、乙第18号証の奥付には、「TAG HEUER SA/6a,Louis-Joseph Chevrolet 2300 La Chaux-de-Fonds/Switzerland」及び「Printed in Switzerland,2008」の記載がある。
イ 乙第24号証は、「納品書」であるところ、6枚目の左上には、「得意先:・・・100-0006/東京都千代田区有楽町1-11-1/6F 時計コーナー/(株)ビッグカメラ 有楽町店 御中・・・」の記載があり、右上には、ロゴマークと、その右に「TAGHeuer/SWISS AVANT-GARDE SINCE 1860」「発行日:2009/02/13」「00624/LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン株式会社/102-0092/東京都千代田区隼町3-16 住友半蔵門ビル/TAG HEUER/TEL:・・・ FAX:・・・」の記載があり、下には「品番」の欄に「WAH1111.BT0714」、「商品名」の欄に「THF1 WHITE DIAL/BLACK STRAP」、「数量」の欄に「1」、「上代価格」の欄に「100,000」の記載がある。
(2)以上の事実によれば、以下のアないしエのとおりである。
ア 商品カタログの作成者
商標登録原簿によれば、本件審判の請求の登録前3年以内の商標権者である「タグ - ホイヤ- エス ア-」の名称及び「スイス国 2300 ラ・ショー・ド・フォン ルイ・ジョセフ・シボレー 6a」の住所は、乙第18号証の商品カタログの奥付に記載されている「TAG HEUER SA」の名称及び「6a,Louis-Joseph Chevrolet 2300 La Chaux-de-Fonds Switzerland」の住所と一致するから、当該商標権者が、乙第18号証の商品カタログを作成したものということできる。
イ 使用商品
乙第18号証は、「TAGHeuer/SWISS AVANT-GARDE SINCE 1860/GENERAL CATALOG/2008-2009」と題する商品カタログであるところ、48頁には、別掲2のとおり、ロゴマーク、「TAG HEUER」及び「FORMULA 1」の文字が付された「腕時計」が掲載されており、この商品は、本件取消請求に係る指定商品中の「時計」に属する商品である。
ウ 使用時期
乙第18号証の商品カタログの奥付には、「Printed in Switzerland,2008」の記載があることから、商標権者である「タグ - ホイヤ- エス ア-」が、乙第18号証の商品カタログを2008年に作成したものということできる。
そして、当該商品カタログ(乙第18号証)の48頁に掲載された商品の品番「WAH1111.BT0714」の商品「腕時計」は、文字盤が白であり、皮帯が黒である。
また、納品書(乙第24号証)の6枚目には、「品番」の欄に「WAH1111.BT0714」、「商品名」の欄に「THF1 WHITE DIAL/BLACK STRAP」の記載があり、「WHITE DIAL」は、文字盤が白であることを表し、「BLACK STRAP」は、皮帯が黒であることを表したものと認めることができる。
してみれば、商標権者は、本件審判の請求の登録前3年以内である乙第24号証(6枚目)の納品書の発行日の2009年2月13日頃に、日本国内において、当該「腕時計」を販売していたものと認められる。
エ 使用商標
本件商標は、別掲1のとおり、ロゴマークと、その下段にやや湾曲させてなる「FORMULA 1」の文字部分とからなるものであるから、「タグホイヤーフォーミュラーワン」称呼を生ずるものである。
一方、乙第18号証の商品カタログにおいて商品「腕時計」に付された使用商標は、別掲2のとおり、文字盤の上部にはロゴマークを有し、文字盤の下部には、「TAG HEUER」及び赤い色で表された「FORMULA 1」の文字部分を有するものであるから、「タグホイヤーフォーミュラーワン」称呼を生ずるものである。
したがって、本件商標と前記使用商標とは、「タグホイヤーフォーミュラーワン」称呼を共通にする社会通念上同一の商標ということができる。
(3)小活
以上によれば、商標権者は、本件商標と社会通念上同一の商標を腕時計に付して、販売していたものであるから、その使用は、商標法第2条第3項第2号における商品に標章を付したものを譲渡する行為に該当するものと認められる。
(4)請求人の主張について
駆け込み使用について
請求人は、「本件商標の使用は、その審判が請求されることを知った後のものであるから、商標法第50条第3項の規定する、いわゆる『駆け込み使用の期間内』の使用である。」旨述べているが、商標権者は、本件審判の請求の登録前3年以内である2009年2月13日頃に、日本国内において、当該「腕時計」を販売していたものであるから、本件商標は、請求人が主張するその審判の請求がされることを知った日(平成22年(2010年)5月10日)より前に使用されたものである。
したがって、本件商標の使用は、商標法第50条第3項に規定する、いわゆる「駆け込み使用の期間内」の使用ということはできない。
イ 2つの商標の使用について
請求人は、「『FORMULA 1』という商標と、『TAG/HEUER』ハウスマークの2つの商標が使用されたものとみるのが極めて合理的である。」旨述べている。
しかしながら、商品「腕時計」は、小さな文字盤上に時刻を示す数字や時針、分針、秒針、日付等を設置するなど、腕時計の文字盤デザインは、様々な制約が課せられており、商品「腕時計」の機能及びその形態を踏まえれば、該腕時計の小さな文字盤上に腕時計の機能と美感を損なうことなく使用商標を配置することになるため、使用商標の構成要素が若干離れて配置されていたとしても、何ら不自然なものではないから、当該使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標ということができる1つの商標が使用されたと認識し得るものである。
したがって、本件商標の使用は、2つの商標を使用したものということはできない。
(5)まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、商標権者が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を請求に係る指定商品中、「腕時計」について登録商標の使用をしていたことを証明したものというべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 本件商標



別掲2 使用商標(乙第18号証)



審理終結日 2011-12-22 
結審通知日 2012-01-04 
審決日 2012-01-17 
出願番号 商願昭61-47733 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (114)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 井出 英一郎
渡邉 健司
登録日 1992-02-28 
登録番号 商標登録第2378814号(T2378814) 
商標の称呼 タッグ、タグ、テイエイジイ、ハユアー、タッグハユアー、フォーミュラー、フォールミュアラー、タグホイヤー、ホイヤー 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 中村 稔 
代理人 東谷 幸浩 
代理人 松尾 和子 
代理人 渡辺 広己 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 藤倉 大作 

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