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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z07
管理番号 1258251 
審判番号 取消2010-300925 
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-08-25 
確定日 2012-05-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第4572160号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4572160号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4572160号商標(以下「本件商標」という。)は、「TANKER」の欧文字を標準文字で表してなり、平成13年4月3日に登録出願、第7類「金属加工機械器具及びその部品」を指定商品として同14年5月24日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由、答弁に対する弁駁、口頭審理における陳述及び上申書において要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、乙第2号証の商品総合カタログで「ガスシリンダー」が「自動車用金型」に使用されている掲載ページを例に挙げ、これが「プレス用金型」への使用に該当する旨を述べている。しかし、該商品総合カタログは、「TANKER」シリーズのラインアップの掲載が主たる目的で、「自動車用金型」はあくまでも「ガスシリンダー」の使用例として掲載されているにすぎない。
また、被請求人は、乙第3号証のカタログの中で、被請求人の取引先と思しきTower Automotive社が「TankerS」を金型に使用している旨述べているが、これは、被請求人がカタログに一定の欄を設け、同社が「TankerS」を金型に導入している例を掲載したにすぎず、「TANKER」が「プレス用金型」専用の部品であることを証明しているものではない。
さらに、被請求人は、乙第7号証及び乙第8号証のウェブページのコピー等を提出して、本件商標を「プレス用金型」に使用している旨述べているが、乙第7号証はHYSON社がガスシリンダーを金型に使用してきた経緯の説明をしているにすぎず、また、乙第8号証はHYSON社のガススプリングが「金属型打ち機、射出成型金型及びカスタムマシン用に高度に特化している(訳文)」ことの説明であり、「TANKER」が金型専用の部品であることの立証としては不十分である。
(2)被請求人は、本件商標を「ガスシリンダー」に使用している旨を述べ、これが「金属加工機械器具」に分類される「プレス用金型」の部品に該当する旨主張しているが、「ガスシリンダー」と「プレス用金型」はそもそも用途等の異なる別商品(完成品)である。そして、前記のとおり、本件商標に係る商品「ガスシリンダー」が「プレス用金型」の部品であるという具体的な記載はカタログ等の証拠の中には見受けらない。
したがって、これらカタログに掲載された「ガスシリンダー」は、「部品」ではなく用途を特定しない汎用性のある商品(完成品)であり、単独で商取引の目的物であると解する。
そこで、「ガスシリンダー」の分類について検討するに、「シリンダー」は、一般に09B01の類似群コードが付与される「動力機械器具」に分類されているが、本件の場合、「ガスシリンダー」は、多くの機械器具類に応用・利用可能な汎用性のある商品であると考えられることから、09F02の類似群コードが付される「動力伝導装置(機械要素)」に分類されるものと考える(甲第1号証)。
そして、取消2007-300342では、機械要素について、「寸法や形状さえ合致すれば、おおよその機械器具に適合する商品であって、需要者も多数の同種の商品の中から自己の使用する機械器具に適合した商品を選択して購入する場合が多い商品である。」と説明しており、汎用性のある商品については、「機械器具の一部に使用されているとしても、それをもって、当該機械器具の部品、付属品等として取引されているものではないというべき」としている(甲第2号証)。
したがって、被請求人が使用を主張する「ガスシリンダー」と取消請求に係る「金属加工機械器具及びその部品」とでは商品が異なり、被請求人は、本件商標を取消請求に係る商品に使用していることを立証したことにはならない。
(3)被請求人は、通常使用権者が使用するカタログ等を証拠書類として提出しているが、商品が実際に市場で取引されていることを立証する書類(納品書、売上伝票等)は提出しておらず、客観的な証拠資料としては不十分であるといえる。
3 口頭審理における陳述
(1)被請求人のいう「プレス用金型」とはいかなる商品であるのかについて、被請求人はるる述べているが、被請求人も認めているとおり「プレス金型」とは「打抜き、曲げ、絞り、圧縮加工などに使われる金型」そのものであり、それ以上でもそれ以下でもない。
そして、「金型」自体に「ガスシリンダー」のごとき部品が存在しないのは明らかであるから、広義であれ狭義であれ、「『ガスシリンダー』は『プレス用金型』の部品」という被請求人の説明は、事実を自己の都合の良いようにわい曲したものであって妥当性・信頼性を欠く。
被請求人が「ガスシリンダー」が「プレス機械」の部品であるとの新たな主張を展開していることから、被請求人のいう「プレス用金型」とは「プレス用金型を用いた材料加工装置」のごとき意味合いとして理解した。
(2)被請求人は、被請求人の製造、販売する「ガスシリンダー」は、「プレス用金型」に圧力をかけるための部品又は「プレス機械」の圧力源として使用されるものであり、その他の用途を想定しておらず、また、その他の用途に使用されている事実もないので、汎用性はなく、「金属加工機械器具」に包含される「プレス用金型」又は「プレス機械」の専用部品であると主張する。
しかし、この主張も「金型」及び「プレス用金型」「プレス機械」並びに「ガスシリンダー(ガススプリング)」の本質からすれば整合性を欠くものである。
商標法施行令別表では第7類に属する商品は「加工機械、原動機(陸上の乗物用のものを除く。)、その他の機械」とあり、これを受けた規則別表には、たとえば「金属加工機械器具」や「食料加工用又は飲料加工用の機械器具」、「プラスチック加工機械器具」、「石材加工機械器具」等が項目を別にして掲げられている。こうした規定振りからも明らかなように、これらの「加工機械」は、「何を」加工するための機械かによって、異なる(非類似の)商品として分類・整理される。
これを踏まえ、「金型」「プレス用金型」「プレス機械」並びに「ガスシリンダー(ガススプリング)」について説明する。
(ア)「金型」について
「金型」には「プレス用金型」のみでなく「射出成形用金型」や「圧縮成型用金型」等の各種の金型がある(甲第3号証)。その中には、たとえば「射出成形用金型」のようにプラスチックなどの樹脂素材を加工するために用いられる「金型」もある(甲第4号証)。つまり、「金型」は「金属」加工用だけに利用されるものではないのである。そして、第7類の加工機械は、「何を」加工するための機械かによって異なる商品として扱われていることは前記のとおりである。この点は、商品・役務名リストで「金型」を含んだ登録例として「ゴム用金型」について「ゴム製品製造機械器具」と同じ類似群(09A69)が、「プラスチック用金型」について「プラスチック加工機械器具」と同じ類似群(09A67)が認定されていることからも明らかである(甲第5号証)。
しかるに、被請求人の「ガスシリンダー(ガススプリング)」が「金属加工機械器具」の専用部品であることの根拠を述べた口頭審理陳述要領書3頁24行「この点」以下をみると、乙第13号証の「金属プレス工程」以外は全て単に「金型」として記述されるのみであって(これとて我が国における使用証拠ではない)、これが「何を」加工するための金型かは明示されていない。このように請求人の主張からはこれが「金属」を加工する金型用なのか、「プラスチック」を加工する金型用なのか、あるいは「その他の何か」を加工する金型用なのかは判断できず、これらの証拠に基づいて本件「ガスシリンダー」が「金属加工機械器具」の専用部品であるということはできない。
甲第6号証ないし甲第9号証は、被請求人の商品と同じ「ガススプリング」(「ガススプリング」と「ガスシリンダー」が同義であることは被請求人が既に主張したとおりである。)を紹介するパンフレットないしウェブサイトの写しである。「DADCO」(登録商標)のパンフレットでは「ガススプリング」が金属加工のみならず「プラスチック射出成形を始め、世界中の数多くの産業で幅広く」利用可能であり(甲第6号証)、「高品質なプレス金型、プラスチック成形型、及び産業機器」に利用されている事実が分かる(甲第7号証)。「キリーガススプリング」のパンフレットにおいても「ガススプリング」が「プラスチック金型」に利用されている事実が分かるし(甲第8号証)、「KALLER」(登録商標)についてのウェブサイトにおいても「ガススプリング」が「樹脂型メーカー」で利用されていることが分かる(甲第9号証)。
このように「ガスシリンダー(ガススプリング)」は各種の「金型」と共に利用されるものであり、「各種金型」は「各種材料」を加工するために「各種産業分野」で利用されている。
そして、乙第8号証において被請求人自身が「Hyson gas spring are highly specified for use in(中略)injection molds(後略)。(ハイソンガススプリングは(中略)射出成形金型用に高度に特化している。)」旨自認しているのであるから、被請求人の「ガスシリンダー」も同業者の「ガスシリンダー(ガススプリング)」同様、「金属」加工にも「プラスチック」加工にもその他の材料を加工するためにも使用できると考えるのが自然である(なお「injection mold」は「射出成形」の意味であって、プラスチック製造に関するものである。甲第10号証)。
(イ)「プレス用金型」及び「プレス機械」について
同様に「プレス用金型」及び「プレス機械」も「金属」の加工のみでなく、「プラスチック(樹脂)」や半導体用の「ガラス基材」、「紙」に至るまで各種材料を加工の対象とするものである。合議体の認定するとおり「プレス金型」とは「打抜き、曲げ、絞り、圧縮加工などに使われる金型」であり、圧力を加えることで切断できたり、曲げたり、圧縮したりできる素材であれば加工対象となる。現に、甲第11号証及び甲第12号証は「プラスチック」をプレス加工するための「プレス機械」を紹介するウェブサイトの写しであるし、甲第13号証は「紙(絶縁紙)」をプレス加工する業者のウェブサイトである。その他、「ガラス基材」(甲第14号証)、「木材」(甲第15号証)、「ゴム・ウレタン」(甲第16号証)、「各種積層板」(甲第17号証)用の「プレス機械」が存在することが分かる。
このように、「ガスシリンダー(ガススプリング)」は各種「金型」の中で「プレス用金型」と共に「プレス機械」に利用される可能性はある。しかし、「プレス機械」は「金属」加工にも「プラスチック」加工にも「紙」加工にも「木材」加工にも用いられる。そうとすれば、前記のとおり「何を」加工するための機械に利用されているか不明な本件「ガスシリンダー」が「プレス用金型」「プレス機械」に利用可能であるからといって、そのことをもってこれが「金属加工機械器具」の専用部品にあたるとはいえない。
(ウ)「ガスシリンダー(ガススプリング)」について
被請求人は「ガスシリンダー(ガススプリング)」がプレス加工を行う際の「圧力源」であるとし、あたかもその他の用途では用いられないかのように主張する。
しかし、前記「KALLER」(登録商標)のホームページによると、「ガススプリング」は「圧力源」となると同時に、「緩衝装置」としても利用可能であることがわかる(甲第18号証)。また、「ガススプリング」に係る発明についての公開特許公報には「従来、ガススプリングは、プレス成形装置や打抜き加工装置等に付設される衝撃緩衝の為のスプリング手段や、金型内で金型にクッション力を付与したり或いは金型内の可動型を動かしたりするスプリング手段として広く適用されている」(甲第19号証)、「プレス金型」に係る発明についての公開特許公報にも「本発明における弾性装置の一つの例はコイルスプリングであり、他の例ではガススプリング又はゴムスプリングである」(甲第20号証)との記載がある。
このように、「ガスシリンダー(ガススプリング)」は、「圧力源」としての用途と「緩衝器」としての用途を併せ持つ多用途の商品なのである。
以上をまとめれば、「ガスシリンダー(ガススプリング)」は、「各種材料」を加工するための「各種金型」と共に用いられる商品であるから、「ガスシリンダー(ガススプリング)が利用される個別の「金型」によって利用される産業分野が異なることとなる。もちろん、「金型」の中には「プレス用金型」も含まれるが、「プレス用金型」「プレス機械」も「金属」のみでなく「各種材料」を加工するための商品であるから、「ガスシリンダー(ガススプリング)」が利用される個別の「プレス用金型」「プレス機械」によって利用される産業分野が異なることとなる。加えてその用途も「圧力源」であったり「緩衝器」であったりと様々であることが分かる。このような汎用性をもった商品が特定の商品の「専用部品」に該当することはない。
(3)以上のとおり、本件「ガスシリンダー(ガススプリング)」は「各種」の材料を加工するために「各種」の産業分野で利用される汎用的・多目的な商品であるので「金属加工機械器具」の専用部品ではない。
4 上申書における主張
被請求人と大石機械株式会社(以下「大石機械」という。)との関係について、平成23年9月12日付けで提出された被請求人上申書によれば、被請求人と大石機械とは独占販売権を付与する旨の「基本契約」が存在したと主張するのみで、何ら証拠を提出していないから、該基本契約の内容が全く不明確であり、契約の目的や本件商標について何らかの取り決めがあったのかどうか確認することもできない。しかも該基本契約は1995年に満了しているとのことである。
よって、被請求人と大石機械との関係は、被請求人の全主張及び提出された全証拠によっても具体的に証明されておらず、被請求人が立証責任を果たしているとは到底言えない。
そもそも、被請求人が本件商標を使用する商品は、各種材料の加工に利用される汎用的な「ガスシリンダー」であって、「金属加工機械器具」ではない。加えて、大石機械と被請求人の関係も上記のとおり全く不明である。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由、口頭審理における陳述及び上申書において要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第23号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)通常使用権者であるバーンズグループインコーポレーテッドは、以下のとおり、本件審判請求の登録前3年以内に本件商標をその指定商品に使用している。
(2)乙第1号証に示すとおり、被請求人は、アソシエーテッドスプリングコーポレーションの100%子会社であり、当該会社はバーンズグループインコーポレーテッドの100%子会社であるから、被請求人は、バーンズグループインコーポレーテッドの完全孫会社にあたり、被請求人名義の本件商標の使用を含め、その営業活動については、バーンズグループインコーポレーテッドの完全な支配下にある。使用許諾は商標権者と使用権者の意思表示の合意によって成立し、口頭による契約も認められることから、被請求人を完全に支配するバーンズグループインコーポレーテッドには事実上の使用許諾がなされているといえるので、バーンズグループインコーポレーテッドは通常使用権者といえる。なお、通常使用権者は、主にその事業部門の名称である「ハイソンプロダクツ」の名の下で、本件商標を展開している。
(3)通常使用権者は、乙第2号証ないし乙第5号証に示すとおり、本件商標をその指定商品「金属加工機械器具及びその部品」中に含まれるガスシリンダーについて使用している。
本件商標は、ローマ字の標準文字で「TANKER」と表された商標であるのに対して、使用商標は、ガスシリンダーの製品仕様に応じて種々の態様の商標を使用しているが(乙第6号証)、いずれの使用商標も商標法第50条第1項括弧書の「登録商標の書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」又は「登録商標と社会通念上同一と認められる商標」であるから、被請求人は、登録商標を使用しているといえる。
次に、本件商標の指定商品は、「金属加工機械器具及びその部品」である。他方、被請求人が使用している商品は、「ガスシリンダー」であるが、当該商品が「金属加工機械器具」に分類される自動車用金型等の「プレス用金型」に使用される部品であることは、乙第2号証の商品総合力タログ9頁の「自動車用金型での応用例」、乙第3号証の商品カタログ(Tシリーズ及びSシリース)3頁の「そこで、金型の改造をせずに内部シール方式のTankerSに変更し、問題を解決しました。」との記載、乙第7号証の「当社はプレス金型に使用する米国はハイソン社製小型高圧窒素ガスシリンダーを日本で初めて紹介し、以来タンカーシリンダー、ナイトロダインシステムの名称で知られてきました。」との記載、乙第8号証の「ハイソンガススプリングは金属型打ち機、射出成型金型及びカスタムマシン様に高度に特化している。」との記載等から明らかである。
したがって、通常使用権者が本件商標を使用している商品は、本件商標の指定商品中の「金属加工機械器具の部品」に該当し、通常使用権者は、本件商標を指定商品について使用しているといえる。
なお、「プレス用金型」には「金属加工機械器具」と同じ類似群コード09A01が付与されている(乙第9号証)。
以上述べたとおり、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に本件商標をその指定商品に使用しているから、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取消されるものではない。
2 口頭審理における陳述
(1)「プレス用金型」とは、合議体の暫定的見解のとおり、「打抜き,曲げ,絞り,圧縮加工などに使われる金型」のことをいい、金属などの被加工材に強い力を加えることにより自動車部品等を製造するプレス加工の工程において使用される商品であるが、このプレス加工を行う際の圧力源となる部品が「ガスシリンダー」である。「プレス用金型」は、圧力を加えることによって初めてその機能を発揮するものであるから、広義において圧力源となる「ガスシリンダー」は、「プレス用金型」の部品と言うことができる。
なお、株式会社ミスミのホームページにおいて「プレス金型用標準部品」、「圧力源」の項目に「ガススプリング」の記載があるが(乙第10号証)、「ガススプリング」と「ガスシリンダー」は同義であるので、当該記載は当業者間においても「ガスシリンダー」が「プレス用金型」の部品と認識されていることの証左であると言える。
そして、「プレス用金型」が「金属加工機械器具」に包含される商品であることは、同一の類似群コード「09A01」が付与されていることからも明らかである。(乙第9号証)。
また、仮に「ガスシリンダー」が「プレス用金型」の部品でないとしても、当該商品が少なくとも金属などを金型等で加工する際に用いられる機械である「プレス機械」(乙第11号証)の部品であることは明らかであり、また、当該機械が「金属加工機械器具」に包含される商品であることは、同一の類似群コード「09A01」が付与されていることからも明らかである(乙第12号証)。
したがって、「ガスシリンダー」は、「金属加工機械器具」に包含される「プレス用金型」又は「プレス機械」の部品であり、本件商標の指定商品である「金属加工機械器具の部品」に該当するものである。
(2)被請求人の製造、販売する「ガスシリンダー」は、「プレス用金型」に圧力をかけるための部品又は「プレス機械」の圧力源として使用される部品であり、その他の用途を想定していない。また、その他の用途に使用されている事実もないので、汎用性はなく、「金属加工機械器具」に包含される「プレス用金型」又は「プレス機械」の専用部品と言える。
この点、乙第3号証2頁の「新しいTankerTとTankerSシリーズは貴社のスタンピングに貢献する強さと耐久力を持っています。」との記載、乙第3号証3頁の「自動調芯ピストンロッドが通常の金型の動きと偏心に耐える!ピストンロッドは窒化されていますので腐食に強くなっています。又、自動調芯ロッドなので通常の金型の動きやある程度の偏荷重に対しシール面が傷つかないようになっています。」との記載、乙第4号証3頁の「自動調心ピストンロッドが通常の金型の動きと偏心に耐える!ピストンロッドは窒化されていますので腐食に強くなっています。又、自動調心ロッドなので通常の金型の動きやある程度の偏心に対しシール面が傷つかないようになっています。」との記載がある。また、乙第13号証として提出する雑誌「Metal Forming magazine」には、被請求人の「ガスシリンダー」を紹介する記事が掲載されているが、当該記事に統く広告には“Call us today at 1-800-876-XXXX and take them for a test drive in your metal stamping operations.(1-800-876-XXXXにお電話下されば、お客様の金属プレス工程での試験運転用に弊社商品をお持ちします。)”の一文が掲載されている。以上の事実を総合的に勘案すると、被請求人の製造、販売する「ガスシリンダー」が「プレス用金型」又は「プレス機械」の専用の部品であることが容易に推認される。
なお、「スタンピング」とは、「プレス加工」を意味する語であります。
(3)通常使用権者は、要証期間内に我が国の輸入販売代理店である大石機械に対して本件商標を使用した「ガスシリンダー」を販売している(乙第14号証ないし乙第17号証)。また、2008年から2009年における大石機械向けに出荷したリスト(乙第20号証ないし乙第22号証)を提出する。なお、参考までに要証期間後の出荷リストを提出する(乙第18号証、乙第19号証、乙第23号証)。
また、大石機械のホームページ上で「ガスシリンダー」が同社の取扱製品として掲載されていることは、乙第5号証のとおりである。
したがって、「ガスシリンダー」が、我が国で取引(譲渡)されていることは、明らかである。
(4)被請求人は、上述のとおり、「金属加工機械器具の部品」である「ガスシリンダー」に本件商標表示物(乙第6号証)を付してこれを販売しているので、係る使用は商標法第2条第3項第1号及び第2号の使用に該当する。
また、被請求人は、上述のとおり、商品のインボイス、カタログ等に本件商標を使用しており、また、商品に関する広告が大石機械のホームページ上等に掲載されているので、係る使用は、商標法第2条第1項第8号の使用に該当する。
3 上申書における主張
被請求人と大石機械間においては、本件商標「TANKER」がブランドの製品を含むその他の被請求人の製品について、被請求人が大石機械に対して独占販売権を付与する旨の基本契約書が締結されており、当該契約書自体は1995年頃に期間満了しているものの、その後も口頭による合意により両者の上記関係は良好に継続し、現在に至っている。
したがって、大石機械は、要証期間内おいて本件商標の通常使用権を有していたといえる。
なお、上記契約書については、締結後相当期間が経過していることもあり、上申書提出期間までに被請求人において提出することができなかった。

第4 当審の判断
1 被請求人は、通常使用権者であるバーンズグループインコーポレーテッドが使用している商品は「ガスシリンダー」であり、当該商品は「金属加工機械器具」に分類される自動車用金型等の「プレス用金型」に使用される部品であるから、本件商標を指定商品中の「金属加工機械器具の部品」について使用している旨主張して乙各号証を提出している。
(1)被請求人提出に係る乙各号証によれば、次のとおり認めることができる。
ア 被請求人であるザ ウォレス バーンズ カンパニーは、アソシエーテッドスプリングコーポレーションの100%子会社であって、バーンズグループインコーポレーテッドの100%子会社であるから、結局、被請求人は、バーンズグループインコーポレーテッドの孫会社に当たり、その営業活動についてはバーンズグループインコーポレーテッドの支配下にあるということができる(乙第1号証)。
そして、使用許諾は商標権者と使用権者の意思表示の合意によって成立することから、被請求人を支配下としているバーンズグループインコーポレーテッドには商標権者から本件商標の商標権について黙示の使用許諾がなされていたものとみるのが自然である。
そうとすれば、バーンズグループインコーポレーテッドは、本件商標の商標権に係る通常使用権者ということができる。
なお、実際の使用にあたっては、同社の事業部門「Hyson Products(ハイソンプロダクト)」の名称を使用していたものと認められる。
また、商標権者と大石機械の間の契約書は提出されていないが、大石機械は通常使用権者と認められるバーンズグループインコーポレーテッド(の事業部門「ハイソンプロダクト」)の商品カタログ(乙第2号証ないし乙第4号証)を作成していること、及びバーンズグループインコーポレーテッド(通常使用権者)は、大石機械に対して同カタログの商品と推認できる商品を販売していることから(乙第14号証ないし乙第19号証)、大石機械も通常使用権者であるとみて差し支えない。
イ 乙第2号証ないし乙第4号証の商品力タログは、いずれも、本件審判の請求の登録(登録日は平成22年9月13日。)前3年以内である2009年(平成21年)11月及び2010年(平成22年)4月に印刷・発行されたものと認められるものであり、これらには、通常使用権者の事業部門「Hyson Products」の表示及び「TANKER(○にRの記号が表示されている)」の商標とともに各種のガスシリンダーが掲載されている。
また、「ハイソンプロダクト」から大石機械への同カタログの商品の販売数量(乙第14証ないし乙第19号証)及び同カタログの体裁からすれば、同カタログは相当数印刷がされ、頒布されたものと推認できる。
そして、本件商標は「TANKER」の欧文字からなり、また、上記商品力タログに表示された商標は、「TANKER(○にRの記号が表示されている)」の文字からなるものであるから、両者はいずれも「TANKER」の文字からなる社会通念上同一の商標といえる。
ウ そうとすれば、本件商標の商標権の通常使用権者と認められるバーンズグループインコーポレーテッド(ハイソンプロダクト)及び大石機械は、本件審判の請求の登録前3年以内に我が国において、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。以下同じ。)を付した商品「ガスシリンダー」を譲渡、輸入したものと認められ、また、該商品の広告に本件商標を付して頒布したものと推認することができる。
(2)しかしながら、通常使用権者が本件商標を使用している商品「ガスシリンダー」は、本件審判請求に係る指定商品「金属加工機械器具及びその部品」の範ちゅうに含まれる商品と認めることはできない。その理由は次のとおりである。
請求人が取り消しを求めている本件商標の指定商品は、第7類「金属加工機械器具及びその部品」であるので、該商品について以下検討する。
ア 商標法施行規則別表(以下「別表」という。)の第7類には、「一 金属加工機械器具」「二 鉱山機械器具」「三 土木機械器具」・・・「十二 プラスチック加工機械器具」「十三 半導体製造装置」「十四 ゴム製品製造機械器具」・・・「二十六 廃棄物圧縮装置 廃棄物破砕装置」「二十七 機械要素(陸上の乗物用のものを除く。)」と並列に記載され、「一 金属加工機械器具」に含まれる商品として「(九)金属用金型」、「十二 プラスチック加工機械器具」に含まれる商品として「プラスチック用金型」、「十四 ゴム製品製造機械器具」に含まれる商品として「ゴム用金型」がそれぞれ例示され、また、「二十七 機械要素(陸上の乗物用のものを除く。)」に含まれる商品として「(一)軸 軸受け 軸継ぎ手 ベアリング」「(二)動力伝導装置」「(三)緩衝器」などが例示されている。
イ このことからすれば、第7類に属する商品は、何を加工するか、何に用いるか(用途)によって商品が大別され、それら商品に用いられる部品についても、「金型」が「金属用金型」「プラスチック用金型」及び「ゴム用金型」のように加工するもの(用途)によって区別され、また、「軸 軸受け 軸継ぎ手 ベアリング」など各種機械に使用される汎用性のある商品(部品)は「機械要素(陸上の乗物用のものを除く。)」に含まれる商品とされているものといえる。
なお、「陸上の乗物用の機械要素」は別表の第12類に記載されている。
ウ そうとすれば、「金属加工機械器具及びその部品」の「その部品」とは、「金属加工機械器具に用いられる部品」であるだけでは足りず、「金属加工機械器具専用の部品」でなければならず、汎用性のある商品(部品)は「機械要素(陸上の乗物用のものを除く。)」の範ちゅうに含まれる商品というべきである。
エ そこで、通常使用権者が本件商標を使用している商品「ガスシリンダー」についてみると、該商品は、それ自体が金属を加工する商品たる「金属加工機械器具」の範ちゅうに含まれる商品でないことは明らかであるから、「金属加工機械器具専用の部品」といえるか否かについてさらに検討すると、次のとおりである。
通常使用権者が本件商標を使用している商品「ガスシリンダー」は、被請求人提出の乙各号証には当該「ガスシリンダー」が「金属加工機械器具専用の部品」である旨の記載が見あたらないこと、乙第2号証の9ページに「自動車用金型での応用例です。」の記載があること、乙第3号証の2ページに「新しいTankerTとTankerSシリーズは貴社のスタンピングに貢献する強さと耐久性を持っています。」の記載があること、乙第4号証の3ページに「自動調心ピストンロッドが通常の金型の動きと偏心に耐える!」の記載があること、乙第8号証に「ハイソンガススプリングは金属型打ち機、射出成型金型及びカスタムマシン用に高度に特化している。」旨の記載があること、乙第13号証の4枚目に「****にお電話下されば、お客様の金属プレス工程での試験運転用に弊社商品をお持ちします。」旨の記載があること、「プレス用機械」には金属のほか、樹脂などを加工対象とするものがあること(甲第3号証)、射出成形金型にはプラスチックなどの樹脂素材を加工するために用いられる金型もあること(甲第4号証)などを総合的にみれば、当該シリンダーは、金属のプレス加工用機械に用いられることは認められるとしても、金属加工機械器具専用のものというより、むしろ各種材料の加工機械器具に使用される汎用性のある商品と判断するのが相当である。
そうとすれば、通常使用権者が本件商標を使用している商品「ガスシリンダー」は、「金属加工機械器具専用の部品」ということはできないから、取消請求に係る指定商品「金属加工機械器具及びその部品」の範ちゅうに含まれる商品と認めることはできない。
他に、本件商標が本件審判請求に係る指定商品に使用されていると認め得る証拠の提出はない。
2 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標の使用をしていることを証明したものとは認められない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2011-12-08 
結審通知日 2011-12-13 
審決日 2012-01-12 
出願番号 商願2001-30555(T2001-30555) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Z07)
最終処分 成立  
前審関与審査官 清川 恵子 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 小畑 恵一
瀧本 佐代子
登録日 2002-05-24 
登録番号 商標登録第4572160号(T4572160) 
商標の称呼 タンカー 
代理人 山崎 和香子 
代理人 村橋 史雄 
代理人 朴 暎哲 
代理人 遠藤 祐吾 
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 
復代理人 齋藤 宗也 
代理人 早津 貴久 
代理人 加藤 義明 

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