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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服200912366 | 審決 | 商標 |
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審決分類 |
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 取り消して登録 X20 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 取り消して登録 X20 |
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管理番号 | 1258217 |
審判番号 | 不服2011-21734 |
総通号数 | 151 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2012-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-10-07 |
確定日 | 2012-06-08 |
事件の表示 | 商願2010- 48463拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願商標は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願商標 本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第20類「椅子」を指定商品として、平成22年6月18日に登録出願されたものである。 第2 原査定の拒絶の理由の要点 原査定は、「本願商標は、『椅子の立体形状』よりなる商標であるから、これをその指定商品である『椅子』に使用しても、単に商品の品質、形状を表すにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 第3 当審における判断 1 商標法第3条第1項第3号該当性について (1)本願商標は、別掲のとおりの構成よりなるものであり、本願商標の形状は、以下の特徴を有している。 ア 全体の構成 大きな輪形の底部、これの左右からS字状及び逆S字状に曲がった2つの脚部を有し、皮革で覆われたゆったりとした座面・背もたれ部・肘掛け部からなる肘掛椅子の立体的形状である。 イ 座面及び背もたれ部 座面は、厚みのあるシートの構造であり、背もたれ部は、皮革で覆われ、頭部があたる部分の左右も幅広くなっていって、ゆったりとした構造である。 ウ 肘掛け部 肘掛け部は、背もたれ部の頭部のあたる部分の左右部分と重なるように伸びており、肘掛けを皮革によって二重に覆っている構造である。 エ 底部及び脚部 底部及び脚部は、大きな輪形の底部、これの左右からS字状及び逆S字状に曲がった2つの脚部を有する特徴のある木製の構造である。 (2)本願商標の上記形状について考察すると、1)背もたれ部と肘掛け部が一体となった、皮革製のゆったりとした構造であること、2)座面が厚みのあるシートの構造であること、3)底部及び脚部は、大きな輪形の底部、これの左右からS字状及び逆S字状に曲がった2つの脚部を有する木製の構造であること等、特徴のある形状を有している。同特徴によって、本願商標は、看者に対し、ゆったりとしたシンプルな印象、及び斬新で洗練された印象を与えているといえる。 他方、本願商標の形状における特徴は、いずれも、すわり心地等の肘掛椅子としての機能を高め、美感を惹起させることを目的としたものであり、本願商標の上記形状は、これを見た需要者に対して、肘掛椅子としての機能性及び美観を兼ね備えた、優れた製品であるとの印象を与えるとしても、それを超えて、上記形状の特徴をもって、当然に、商品の出所を識別する標識と認識させるものとまではいえない。 なお、請求人は、「砂時計形状の脚部台座の特徴や、回転ノブに記載された『STRESSLESS図形商標』が目印になって自他商品識別力があるから商標法第3条第1項第3号には該当しない」旨の主張をしている。 しかしながら、商標法第27条は、「登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならない。」としていることからすれば、出願された商標は、商標見本によって特定されるものである。 そうとすれば、本願の立体商標の商標見本の写真から、請求人のいう回転ノブに記載された「STRESSLESS図形商標」は、明確に確認できないから、上記主張は採用できない。 したがって、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。 2 商標法第3条第2項該当性について (1)立体商標における使用による識別力の獲得 立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは、当該商標ないし商品等の形状、使用開始時期及び使用期間、使用地域、商品の販売数量、広告宣伝のされた期間・地域及び規模、当該形状に類似した他の商品等の存否などの諸事情を総合考慮して判断するのが相当である。 そして、使用に係る商標ないし商品等の形状は、原則として、出願に係る商標と実質的に同一であり、指定商品に属する商品であることを要するというべきである。 もっとも、商品等は、その製造、販売等を継続するに当たって、技術の進歩や社会環境、取引慣行の変化等に応じて、品質や機能を維持するために形状を変更することが通常であることに照らすならば、使用に係る商品等の立体的形状において、ごく僅かに形状変更がされたことや、材質ないし色彩に変化があったことによって、直ちに、使用に係る商標ないし商品等が自他商品識別力を獲得し得ないとするのは妥当ではなく、使用に係る商標ないし商品等にごく僅かな形状の相違、材質ないし色彩の変化が存在してもなお、立体的形状が需要者の目につき易く、強い印象を与えるものであったかなどを総合勘案した上で、立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているか否かを判断すべきである。 (2)本願商標の商標法第3条第2項該当性 ア 請求人(以下「エコーネス社」という場合がある。)の主張、及び当審において提出された証拠(甲1ないし甲100)によれば、以下の事実が認められる。 (ア)本願商標に係る商品形状の完成等 本願商標は、請求人会社が約40年前(1971年)にデザインした第1号の細い管状の円形ベースの「Stressless」椅子(中央支柱)を発展させたものである。その後も研究を重ねて、イエンス・ペーター・エコーネスに雇用されたデザイナーのヤン・リングレンを中心としたエコーネスデザインチームは、1980年に、現在の立体的形状の椅子を作り上げた。この曲げ木の脚部台座を有する椅子は、今日まで約30年にわたるロングセラーの椅子(以下「請求人製品」という。)である。(甲1及び2) 本願商標の形状の特徴は、上記1(1)のとおりであるところ、当該特徴的部分を備えた、請求人が製造・販売する請求人製品は、「Stressless(STRESSLESS・ストレスレス)」椅子という名称で知られており、世界各国で販売されている。 なお、「Stressless」ロゴ、文字商標の「STRESSLESS」及び「ストレスレス」は、商標権者を請求人、指定商品を第20類に属する商品等として、商標登録されている(商標登録第797939号、同第1900222号、同第4194358号:甲4ないし甲7)。また、「STRESSLESS」の商標は、世界各国で約110件登録されている(甲3)。 (イ)本願商標の使用開始時期・使用期間 請求人は、請求人製品の原型をノルウェーで1980年に完成し、その4年後の1984年(昭和59年)12月には、日本に「STRESSLESS」商標及び会社名商標「EKORNES」を商標出願した。 1993(平成5年)年8月からは、大手ベッド販売会社シモンズを代理店にして、請求人製品を本格的に販売している。 請求人製品は、販売開始当初から、ノルウェー国内で一貫生産した製品を、日本で輸入販売している。2004年途中からは、エコーネス株式会社(日本法人)による直接販売に変わった(甲85)。 (ウ)使用地域 請求人製品は、全国的に販売されており、北海道・東北地区、関東地区、東京地区、中部地区、関西地区、中国・四国地区、九州・沖縄地区のそれぞれに取り扱い店舗があり、多数の専用売り場、取扱い百貨店を有する(甲14、甲15の1ないし8)。 提携する家具店は、特に関東、東京、中部、関西に多く、例えば、東京インテリア、島忠、村内ファニチャーアクセス、大塚家具、ナフコツーワンスタイル、SAKODAホームファニシングス等である。取扱い百貨店は、東急百貨店、丸井今井、西武百貨店、高島屋、伊勢丹、三越、東武百貨店、小田急百貨店、大丸、松坂屋、そごう、井筒屋等である。また、東京には、「ストレスレス」椅子を展示した東京ショールームもある(甲16)。 (エ)請求人製品の販売実績 エコーネス社は、北欧最大の家具メーカーで、1934年創業で、家具会社としては約80年の歴史がある。1971年に初代のストレスレス椅子を開発してから、40年ほどになる。世界中のストレスレス椅子の販売実績は、2009年末で600万脚である(甲48)。 同社の2010年の決算では、収益、利益ともに過去最高の結果に達し、年間総収益は、28億7千万クローネで、日本円に換算すると約392億円である。また、世界各国でのマーケットリサーチの結果、ストレスレスブランドは、2011年2月末で、少なくとも7千万人以上の人たちに認知されている(甲49)。 日本の売上げは、1995年から2009年までの15年で5倍ほどに上がった(甲86)。現在、日本では月に1,000脚ほど販売されており、1993年8月から2011年8月まで、計194,944脚が売れている(甲85)。 販売額は、2008年が25億1,855万円、2009年が26億8,005万円、2010年が28億4,818万円である(1ノルウェークローネを17円で計算)。なお、販売価格は、320,250円(商品名「ストレスレス タンパ」)から372,750円(商品名「ストレスレス ベガス」)ほどの高価な商品である(甲11)。 また、日本での販売状況については、いわゆるパーソナルチェアやリクライニングチェアの中では日本のトップシェアである(甲84の2)。 (オ)広告宣伝等 請求人は、請求人製品について、雑誌、新聞等において、広告宣伝を行っており、2004年から2011年までに掲載された雑誌、新聞の状況は、以下のとおりである(甲54の1ないし5、甲58ないし甲77)。 ・2011年の広告掲載雑誌、新聞等 AERA、ホームシアターファイル、日本経済新聞、週刊朝日、サライ、朝日新聞、YANASE LIFE、男の隠れ家、PRESIDENT、GOLF、DAZZLE ・2010年の広告掲載雑誌、新聞等 婦人画報、朝日新聞、銀座線外苑前駅構内ポスター、日経ビジネス同梱誌PRIV、日経メディカル同梱誌MOMENTUM、日経ヘルスケア同梱誌MOMENTUM、日経トップリーダー同梱誌MOMENTUM、日本経済新聞、VISA、男の隠れ家、ホームシアターファイル、クロワッサン Premium、家庭画報、日本経済新聞 夕刊、ミセス、DAZZLE、日経ビジネス 特別版 二人の時間、IMPRESSION GOLD ・2009年の広告掲載雑誌、新聞等 日経ビジネス 特別版 二人の時間、MOMENTUM、美STORY、I’m home、家庭画報、YANASE LIFE plaisir、讀賣新聞(夕刊)、Stereo Sound、HERS、サライ、和樂、日経ビジネス同梱媒体「DIGNIO」、日本経済新聞(夕刊)、ゴルフダイジェスト、朝日新聞(首都圏版)夕刊、特選 Home Ideas、月刊C ・2008年の広告掲載雑誌、新聞等 GOETHE、男の隠れ家、日経ビジネス同梱媒体「DIGNIO」、ヤナセライフプレジール、日経おとなのOFF、サライ、日経ビジネス同梱媒体「TOKYO STORY」、SEVEN SEAS、マンスリーM ・2007年の広告掲載雑誌、新聞等 マンスリーM、日経ビジネス、Pen、東京大人のウォーカー、Lapita、ENGINE、asia spa Japan、スカンジナビア航空機内誌SCANORAMA ・2006年の広告掲載雑誌、新聞等 男の隠れ家、スカンジナビア航空機内誌SCANORAMA、大人のウォーカー、PRESIDENT、男の隠れ家、I’m home ・2004年及び2005年の広告掲載雑誌、新聞等 PRESIDENT、百楽、月刊ランティエ、サライ、男の隠れ家、ELLEDECO、ゼクシィインテリア、日経Woman、東洋ファーニチャー家具企業要覧 そして、広告には必ず請求人製品の写真が掲載されており、読者において、請求人製品の上記形状の特徴を認識できるような態様で紹介されている。 なお、本願商標を掲載した雑誌、書籍等の発行部数は、男の隠れ家(15万部)、サライ(18万部)、PRESIDENT(26万部)、日経ビジネス(31万部)(但し、2011年は24万部)、ホームシアターファイル(10万部)、IMPRESSION GOLD(37万部)など、実に多岐にわたり、発行部数も非常に多い。 また、請求人製品は、インターネットによる販売店のホームページでの広告や島忠、大塚家具などのチラシによって販売されている(甲50ないし甲53)。 そして、これも必ず請求人製品の写真が掲載されており、見る者において、請求人製品の上記形状の特徴を認識できるような態様で紹介されている。 イ 上記アで認定した事実を総合すると、以下のとおりである。 (ア)本願商標の特徴的形状を備えた請求人製品(肘掛椅子)は、請求人により1980年(昭和55年)に発売されて以来、材質や色彩、サイズにバリエーションはあるものの、その形状の特徴的部分において変更を加えることなく、継続的に販売されている。 (イ)請求人製品は、日本国内において、1984年(昭和59年)ころ販売が始まり、1993年(平成5年)ころから大手ベッド販売会社シモンズを代理店にして、本格的に販売がなされた。 請求人製品は、全国的に販売されており、北海道・東北地区、関東地区、東京地区、中部地区、関西地区、中国・四国地区、九州・沖縄地区のそれぞれに取り扱い店舗があり、多数の専用売り場、取扱い百貨店を有する。 また、日本での売上げは、1995年から2009年までの15年で5倍ほどに上がっており、現在、日本では月に1,000脚ほど販売されている。そして、1993年8月から2011年8月まで、計194,944脚が売れている。 販売額は、2008年が25億1,855万円、2009年が26億8,005万円、2010年が28億4,818万円であり、販売価格は、32万円から37万円ほどの高価な商品である。 (ウ)請求人製品は、日本国内においても、雑誌等の記事で紹介され、いわゆるパーソナルチェアやリクライニングチェアの中では日本のトップシェアである。また、請求人は、請求人製品について、広告宣伝及び自社ショールームにおいて展示するなど、請求人製品の周知性を高めるための活動を継続して行った。こうした継続的な広告宣伝活動等により、請求人製品は、広く一般需要者にも知られるものとなっているということができる。 上記に挙げた事実及び前記1(1)の事実に照らすと、1)背もたれ部と肘掛け部が一体となった、皮革製のゆったりとした構造であること、座面が厚みのあるシートの構造であること、底部及び脚部は、大きな輪形の底部、これの左右からS字状及び逆S字状に曲がった2つの脚部を有する木製の構造であること等、特徴的な形状を有していること、2)1980年に販売が開始(日本国内では昭和59年ころ)されて以来、ほぼ同一の形状を維持しており、長期間にわたって、雑誌等の記事で紹介され、広告宣伝等が行われ、多数の商品が販売されたこと、3)その結果、需要者において、本願商標ないし請求人製品の形状の特徴の故に、何人の業務に係る商品であるかを、認識、理解することができる状態となったものと認めるのが相当である。 ウ 以上のとおり、本願商標は、使用により、自他商品識別力を獲得したものというべきであるから、商標法第3条第2項により商標登録を受けることができるものである。 3 結論 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものの、同法第3条第2項により商標登録を受けることができるものであるから、原査定は取消しを免れない。 その他、本願について拒絶の理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲(本願商標) 第1図 第2図 第3図 第4図 |
審決日 | 2012-05-25 |
出願番号 | 商願2010-48463(T2010-48463) |
審決分類 |
T
1
8・
13-
WY
(X20)
T 1 8・ 17- WY (X20) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 岩本 和雄 |
特許庁審判長 |
渡邉 健司 |
特許庁審判官 |
井出 英一郎 高橋 謙司 |
代理人 | 牧 レイ子 |
代理人 | 牧 哲郎 |
代理人 | 菊谷 公男 |